(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電源に全波整流回路を接続し、その直流出力端子側に直流スイッチ回路を介して共振インダクタLと共振キャパシタCで構成するLC共振回路に接続し、前記共振キャパシタの両端から直流出力を得る交流―直流変換回路において、
前記直流スイッチ回路を前記LC共振回路の共振周期あるいはその整数倍の周期で決まる一定の期間オンした後、正常に次の共振動作ができるに必要な期間以上のオフ期間を与えてスイッチングさせるスイッチング動作の繰り返し電圧波形を前記LC共振回路に加えることにより、前記直流スイッチ回路に流れる振動電流が零あるいはほぼ零に近い値で前記直流スイッチ回路をスイッチング動作させることを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1記載のAC-DCコンバータにおいて、前記全波整流回路を前記交流電源が単相交流の場合は単相ブリッジ整流回路とし、前記交流電源が三相交流の場合は三相ブリッジ整流回路で構成することを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1から2記載のAC-DCコンバータにおいて、前記直流スイッチ回路を単独のスイッチまたはスイッチに逆流阻止ダイオードを接続し、これと前記共振インダクタに対するフリーフォイーリングダイオードとで構成することを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1から3記載のAC-DCコンバータにおいて、前記共振キャパシタに対してインダクタまたはインダクタとキャパシタで構成される直流フィルタ回路を出力側に配置して負荷に接続することを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1から4記載のAC-DCコンバータにおいて、直流スイッチ回路のスイッチング動作による交流電源電流へのスイッチング調波成分を除去するために、前記全波整流回路の直流側または交流側にインダクタとキャパシタとで構成するフィルタ回路を入力側に接続することを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1記載のAC-DCコンバータにおいて、請求項2から5記載の回路構成を付加することにより、優れたスイッチング制御特性が得られることを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1から6記載のAC-DCコンバータにおいて、前記直流スイッチ回路によるオン、オフスイッチング動作の繰り返し電圧波形列からなる給電期間と、前記直流スイッチ回路をスイッチング周期に同期させてオフさせる無給電期間との制御周期に対する給電期間の割合のデユーティー制御により直流電圧を制御することを特徴とするAC-DCコンバータ。
請求項1から6記載のAC-DCコンバータにおいて、前記直流スイッチ回で前記LC共振回路の共振周期あるいはその整数倍の周期より決まる一定の期間オンした後、正常に次の共振動作ができるに必要な期間以上のオフ期間を調整するスイッチング周波数制御により直流電圧を制御することを特徴とするAC-DCコンバータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ソフトスイッチングに関する先行技術文献のうち、(
【非特許文献1】)、(
【特許文献2】)は、LC共振回路による零電流スイッチ作用を用いているが、いずれもスイッチングの周期毎に共振キャパシタの電圧を零まで放電させるため、電源からのスイッチを投入する度に、負荷電流の軽重に関わらず大きな振動電流が流れることが課題となっている。
【0011】
さらに、調光制御などの出力電圧を制御するためには、共振キャパシタの電圧を零まで放電させてから、電源からのスイッチを投入するまでの期間を制御することとなっており、出力電圧が大幅に変化すると共にスイッチ投入時の問題を生じる。
【0012】
また、(
【特許文献1】)、(
【非特許文献2】)には、LED照明用駆動電源の開発内容についての詳細な説明の中で、電解コンデンサレス化、高力率駆動、調光機能等の課題の解決策が述べられているが、効率面等では改善の余地があり、価格にも直結する回路構成の複雑さなどは今後の解決すべき課題となっている。
【0013】
これらに対して(
【特許文献3】)は、高周波方形波電圧形インバータを用いたソフトスイッチング制御回路による絶縁型DC-DCコンバータであり、共振電流が負荷電流に応じて変化させられるので、軽負荷時における共振電流による通電損失を抑えることができるため、小型、軽量、高効率化が期待できる大変有益なDCDC変換制御技術であるといえる。
【0014】
しかしながら、絶縁と大きな電圧変化を目的として用いる変圧器は、方形波電圧形インバータの制御上、動作磁束レベルを下げて変圧器を小型化する上で変圧器の偏磁する可能性がでてくるため出力電圧制御等が難しくなる恐れがある。
【0015】
また、市販される台数が極めて多く低価格な電源構成が要求されるLED駆動電源などの応用においては、(
【特許文献3】)は主回路構成が複雑化するため、サイズやコスト面での課題が生じる。
【0016】
一方、整流回路電源は、一般に交流電源から全波整流回路、平滑フィルタ回路を経た後、直流出力電圧電流を制御する回路構成からなっており、平滑フィルタ回路には大容量電解コンデンサが用いられることが多い。
【0017】
このため、交流電源ラインにフィルタ回路が挿入されていても、電解コンデンサを充電する大きなパルス状の電流が流れるため、実用化する上で交流電流波形歪が問題となる場合は、整流電源の制御に加えて波形改善のために力率改善回路が用いられている。
【0018】
このため、一般の整流電源では、上述したスイッチング制御に伴う課題に加えて、主回路構成が複雑化し、電解コンデンサを用いることによる寿命の問題や、装置の小型軽量化のネックになるなど課題も多い。
【課題を解決するための手段】
【0019】
図1は、本発明で用いる直流電源に対して電流共振型ソフトスイッチング動作をさせるDC-DCコンバータの基本回路である。
【0020】
同図において、スイッチを零電流の状態でオンすると、Lr,Crによる共振電流が流れ、その振動電流が再び零あるいはほぼ零になるとき、スイッチをオフさせることにより、零電流でスイッチをオン、オフさせることができる。
【0021】
図中のダイオードD1は、スイッチが逆阻止耐圧を有さない場合、共振電流を逆流させないために用いているものであり、ダイオード整流回路出力から直接このスイッチ回路が繋がれている場合などでは不要である。
【0022】
また、ダイオードD2は共振インダクタに電流が完全に零になる前にスイッチをオフする事がある場合があっても、電流経路を確保するために用いているもので、正常なソフトスイッチング動作においては不要である。
【0023】
図2は、
図1に示す本発明のソフトスイッチング制御基本回路のスイッチング動作波形を示したもので、同図(a)は負荷が重い時、同図(b)は負荷が軽いときの動作波形である。
【0024】
同図より、スイッチSのオン,オフ信号に対応して、両ケースとも、共振振動電流irと共振キャパシタの端子電圧vrの波形を示しており、スイッチSがオンした時点から電流が零から立ち上がり、電流が零に低下した時点でスイッチをオフする動作になっていることが確認できる。
【0025】
両ケースの動作波形から、負荷が重いときは大きな共振電流が流れるため、共振キャパシタの電圧変化も大きく変化するが、負荷が軽くなると共振キャパシタの電圧変化は少なく、無負荷時には共振キャパシタの電圧は電源電圧と一致するので、それらの差電圧はなくなり共振電流は流れなくなることがわかる。
【0026】
この点が、従来からの電流型ソフトスイッチング制御と大きく異なるところであり、本発明で用いる整流回路動作の大きな特徴のひとつである。
【0027】
この基本動作だけでは、出力電圧電流を直接制御することはできないが、出力電圧を変える方法として次の2つが考えられる。
【0028】
図3は、一つの出力電圧の制御法としてデューティー制御による基本動作波形を示しており、ソフトスイッチング動作をさせるためのLC共振回路の共振周期オンした後、オフ動作を入れる給電繰り返しパルス列の出力期間Tonの後に、周期的にスイッチングパルス列にオフ期間を入れることにより、制御周期Tに対するTonの割合を示す デューティー(KD=Ton/T)制御により平均出力電圧が制御できる
【0029】
同図(a)は、給電繰り返しパルス列の出力期間Ton と制御周期T=が等しい100%出力時の動作波形であり、同図(b),(c)は、制御周期内でのデユーティー(KD=Ton/T)を変えたときの波形であり、LC共振回路への印加電圧を変えることによって、直流出力電圧の平均値を変えられることを示している。
【0030】
なお、このスイッチをオフさせる期間のタイミングは、この電圧制御機関においてもソフトスイッチング動作ができるように一定のスイッチングパルス幅に同期させる必要があるため、一定の制御周期では段階的な電圧出力制御となる。
【0031】
しかし、制御周期が極端に長くなる場合を除いては、出力電圧を検出して一定の基準値に一致するような通流幅制御ループを組み、出力される信号をスイッチングパルスの周波数と同期させたスイッチング信号で制御することにより連続的な電圧制御が可能となる。
【0032】
もう一つの電圧制御手法として、
図4にはスイッチング周波数制御による基本動作波形を示しており、LC共振周期で決まる一定のパルス幅の出力パルスを出力するオン期間Tonのオフ期間Toffを含む制御周期T (=Ton+Toff) に対する割合(KF=Ton/T)を変えることでて平均出力電圧が制御できる。
【0033】
スイッチング周波数制御は、スイッチングパルス信号にLC共振周期で決まる一定のパルス幅を設定して、スイッチングパルスの周波数を一定のパルス幅が確保できる周波数より低い周波数においては連続的に出力電圧を制御することができる。
【0034】
本発明のAC-DCコンバータは、上述した電流型ソフトスイッチング制御回路の直流電源部が単相電源の場合は単相全波整流回路、三相電源の場合は三相全波整流回路に置き換えるだけで構成することができる。
【0035】
図5は、単相整流電源としてのAC-DCコンバータの主回路構成であり、この回路構成においてはスイッチ回路に直列に接続した逆流防止ダイオードD1は整流回路でその機能をカバーすることができるので必ずしも必要としないが、整流回路の直流出力端にフィルタ用キャパシタが接続される場合などでは必要となる。
【0036】
図6は、
図5のAC-DCコンバータのスイッチング制御動作の概要波形であり、交流電源eaを全波整流回路で整流した電圧に対し、スイッチをLC共振回路の共振周期とほぼ一致する一定期間オンさせた後、オフさせるスイッチング動作を繰り返すことにより得られる電圧波形easをLC共振回路に加えることにより、交流電圧の瞬時波形に比例した振幅の共振電流irが流れ、その電流が交流電源の半周期毎に切り替わり図示するような交流電流iaの波形となる。
【0037】
交流電源電圧波形が正弦波形の場合、共振電流irによる交流電流iasの振幅も図示するように正弦波状に変化し、その大きさは交流電源電圧の大きさと負荷の軽重によって変化する。
【0038】
一方、負荷電流は共振キャパシタのフィルタ動作により、共振電流波形irより緩やかに変動する電流が流れることとなり、インダクタを通すことにより、共振電流によるスイッチング調波成分は除かれ、流れる電流ioは正弦波電流の絶対値波形となる。
【0039】
なお、負荷がLED照明や電熱器などの場合は、このような共振電流や脈動電流が流れても照明や熱源としては問題となることは少なく、直流側フィルタ回路を接続することなく共振キャパシタの両端電圧から直接接続することができ、回路構成は更に簡単化できる。
【0040】
一方、交流電源電流は、交流電源電圧波形が正弦波形で共振電流の周波数が高い場合は、AC-DCコンバータの交流電源側にフィルタ回路を入れることで、簡単に交流電源電圧波形isを正弦波形iaにすることができる。
【0041】
このように、本発明のAC-DCコンバータは交流電源が単相電源の場合は、交流側および直流出力側に共振電流に対するフィルタ回路を付加する事によって、直流出力電流波形および交流電流波形ともに、全波整流回路の直流回路に抵抗が接続した場合とほぼ同様の動作波形で働かせることができ、交流電源電流波形は交流電源電圧波形と同じ正弦波にすることができる。
【0042】
図7は、このAC-DCコンバータの電圧制御をかけたときの動作波形として、(a)無制御の場合と、上述した(b)デューティー制御および(c)スイッチング周波数制御をかけたときの共振回路に印加される電圧波形easの概念図を模式的に示したものである。
【0043】
このとき、電圧波形easに対応して共振電流irが流れるが、フィルタ回路を通すことにより、図中点線で示すような平均的な電圧波形easに比例した大きさの正弦波電流が流れる。
【0044】
次に、
図8は三相整流電源としてのAC-DCコンバータの主回路構成であり、上述した単相電源を三相電源に、単相全波整流回路を三相全波整流回路に置き換えるだけで簡単に構成することが出来る。
【0045】
本発明のAC-DCコンバータの三相整流電源としての電圧制御動作は、単相整流電源の場合と同様に1個のスイッチ回路によるソフトスイッチング制御とあわせて実現することが出来る。
【0046】
図9は、本発明のAC-DCコンバータのスイッチング制御動作の概要波形であり、交流電源eaを全波整流回路で整流した電圧に対し、スイッチをLC共振回路の共振周期とほぼ一致する一定期間オンさせた後、スイッチをオフさせるスイッチング動作を繰り返すことにより得られる電圧波形easをLC共振回路に加えることにより、単相電源の場合に比べて脈動が少ない共振電流irが流れ、各相の電流波形iaは、図示するように120度通流幅の共振パルス列波形となる。
【0047】
このように、本発明のAC-DCコンバータは交流電源が三相整流電源の場合においても、単相整流電源の場合と同様に、交流側および直流出力側に共振電流のスイッチングパルス成分を除去するフィルタ回路を付加することによって、三相全波整流回路の直流回路に抵抗が接続した場合の電圧電流波形とほぼ同様の動作波形で働かせることができる。
【0048】
本発明のAC-DCコンバータの三相整流電源においても、単相整流電源の場合と同様の上述した2つの電圧制御手法(デューティー制御とスイッチング周波数制御)を適用する事ができる。
【発明の効果】
【0049】
以上、本発明のAC-DCコンバータは、全波整流回路からの整流電圧を1個のスイッチ回路を介してLC共振回路に加えることにより、負荷電流に応じた大きさで共振電流を流すことができ、共振電流が零電流の時点でスイッチのオン、オフ制御できるため、スイッチング損失やスイッチングノイズの低減が出来ることが本発明の最も大きな特徴となっている。
【0050】
そして、本発明のAC-DCコンバータによる単相整流電源および三相整流電源の整流電源としての制御動作波形が、交流側および直流出力側に共振電流のスイッチングパルス成分を除去するフィルタ回路を付加することによって全波整流回路の直流側に抵抗負荷が接続されたと同様の優れた動作波形で電圧電流が制御できることも発明の大きな効果である。
【0051】
このため、本発明のAC-DCコンバータによる単相整流電源および三相整流電源は、一般の整流回路が直流回路に大きな電解コンデンサが接続されているのに対し、特別な負荷の場合を除いて電解コンデンサは用いずに主回路を構成出来きるため、寿命の観点や整流電源装置の小型軽量化につながり装置構成上の改善効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図6】単相AC-DCコンバータ回路の共振制御動作波形
【
図7】単相AC-DCコンバータ回路の電圧制御動作波形
【
図9】三相AC-DCコンバータ回路の共振制御動作波形
【
図10】交流側入力フィルタと直流出力フィルタ付き単相AC-DCコンバータ回路
【
図11】整流側入力フィルタと直流出力フィルタ付き単相AC-DCコンバータ回路
【
図12】交流整流側入力フィルタと直流出力フィルタ付き単相AC-DCコンバータ回路
【
図13】交流整流側入力フィルタ付き三相AC-DCコンバータ基本回路
【
図14】整流側入力フィルタと直流出力フィルタ付き三相AC-DCコンバータ回路
【
図15】交流整流側入力フィルタと直流出力フィルタ付き三相AC-DCコンバータ回路
【
図16】入出力フィルタ付き単相AC-DCコンバータの制御システム
【
図17】ソフトスイッチング制御のシミュレーション解析回路
【
図19】負荷変化時ソフトスイッチング制御動作波形
【
図20】単相AC-DCコンバータのシミュレーション解析回路
【
図21】抵抗負荷時の単相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図22】デューティー制御時の単相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図23】スイッチング周波数制御時の単相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図24】LED負荷時の単相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図25】LED負荷電圧制御時の単相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図26】三相AC-DCコンバータのシミュレーション解析回路
【
図27】抵抗負荷時の三相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図28】電圧制御時の三相AC-DCコンバータのシミュレーション結果
【
図29】抵抗負荷時の単相AC-DCコンバータの実験結果
【
図30】LED負荷時の単相AC-DCコンバータの実験結果
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明のAC-DCコンバータによる単相整流電源および三相整流電源としての交流側および直流出力側に共振電流のスイッチングパルス成分を除去するフィルタ回路を付加した構成例を示す。
【0054】
図10は、
図5のソフトスイッチングAC-DCコンバータ回路に対して、直流出力側にインダクタLdとキャパシタCdによるLCフィルタ回路(250)を、交流電源側にインダクタLaとキャパシタCaによるLCフィルタ回路(210)を付加した本発明のAC-DCコンバータによる単相整流電源回路を示している。
【0055】
直流負荷側及び交流電源側の双方にフィルタ回路を接続することによって、共振電流によるスイッチングパルス成分が除去でき、直流出力電流ioは正弦波の絶対値波形、交流電流iaは正弦波波形で働かせることが出来る。
【0056】
なお、直流出力側のフィルタ回路構成としては、必ずしもフィルタ回路を接続する必要がない場合や、フィルタ回路をインダクタLdだけ住む場合が多いが、単相交流電源の絶対値波形による脈動が問題となる負荷の場合には電解コンデンサなど大きなキャパシタCdを付加することで対処できる。
【0057】
一方、交流電源側のフィルタ回路構成については、
図11に示すようにLCフィルタ回路を直流側に配置するケースや
図12に示すようにキャパシタCaのみ全波整流回路の直流側に配置するケースが考えられる。
【0058】
また、交流電源には電源ラインインダクタンスも存在するので、
図10,11の回路に対してインダクタやキャパシタを交流側と直流側に配置するケースも考えられる。
【0059】
次に、本発明のAC-DCコンバータによる三相整流電源の構成においても、基本的には単相整流電源の場合と同様に、直流出力側と交流電源側にフィルタ回路を配置することにより、共振電流のスイッチングパルス成分を除去することが出来る。
【0060】
この場合、直流側フィルタの回路構成は変わらないが、三相整流電源の場合は単相整流電源に比べて脈動が少ないため
図13に示すように、直流出力側のフィルタ回路は接続せず交流電源フィルタ回路(210)のみを接続することで十分実用化できるものと思われる。
【0061】
図14は、
図13の回路に対して直流出力側にもフィルタ回路(250)を付加した回路構成を、
図15は、交流電流のフィルタ回路の構成としてインダクタLaは交流電源側、キャパシタCaは全波整流回路の直流側に配置する回路構成を示している。
【0062】
本発明のAC-DCコンバータの単相整流電源、三相整流電源は、共振電流のスイッチングパルス成分を除去する直流出力側および交流電源側のフィルタ回路構成は、上述したように様々な回路構成が考えられるが、LC共振動作をさせるスイッチング周波数は一般に高く設定されるため、これらフィルタ回路は比較的小さなインダクタ、キャパシタで構成することができる。
【0063】
なお、単相整流電源の脈動が問題となる負荷に接続する場合などを除いては、本発明の整流電源は、直流フィルタとして大きなキャパシタCdは必ずしも必要としないため、電解コンデンサレスで主回路を構成することができ、装置の小型軽量化に適しているといえる。
【0064】
本発明のAC-DCコンバータは、上述したLC共振制御によるソフトスイッチング制御ができるとともに、 (a)デューティー制御あるいは(b)スイッチング周波制御による電圧制御機能もソフトスイッチング制御動作のもと実現することができる。
【0065】
図16は、本発明のAC-DCコンバータによる単相整流電源システムを示しており、
図12に示す主回路構成(200)と、電圧制御機能として(a)デューティー制御あるいは(b)スイッチング周波制御を含むスイッチング制御信号発生部(400)から構成できる。
【0066】
なお、整流電源としての出力電流一定制御や出力電圧一定制御などは、出力電流や出力電圧を検出してそれらの基準値と比較制御する信号を制御信号発生部(400)への電圧制御信号入力に加える制御部を付加することで可能となる。
【0067】
本発明のAC-DCコンバータによる三相整流電源の制御システムは、上述した単相整流電源の主回路構成を三相整流電源に置き換えるだけで、容易に構成する事ができる。
【実施例1】
【0068】
シミュレーション解析により、電流型ソフトスイッチング制御の基本制御動作を確認する。
【0069】
図17は、
図1に示す直流電圧元に対する電流型ソフトスイッチング制御の基本回路であり、図中に示す電圧電流波形の記号や回路記号に対して以下に示す回路パラメータを基準としてシミュレーション解析を行った。
【0070】
直流電源電圧EB=100Vを加え、LE共振回路の定数として、共振インダクタンスLr=30uH、共振キャパシタンスCr=0.55uFとして、スイッチング周波数fs=40kHz,スイッチングパルス幅は共振回路の共振周期をもとにTw=23usに設定して基本動作確認を行った。
【0071】
図18は、本発明によるソフトスイッチング制御の基本動作を確認したシミュレーション結果であり、直流スイッチのオン、オフするスイッチング信号に対する各部動作波形であり、共振電流ir,共振電圧vr、スイッチ素子にかかる電圧vsとスイッチング素子に流れる電流isおよび出力電流ioの波形を示している。
【0072】
スイッチングタイミングをLC共振回路の共振周期Toに対して、同図(a)はスイッチのオン期間をほぼ共振周期とし、同図(b)はほぼその整数倍とした場合のシミュレーション結果を示しており、スイッチ素子にかかる電圧vsとスイッチング素子に流れる電流isの動作波形から、共振周期、2倍周期の両制御動作においても、零電流でスイッチング動作ができていることがわかる。
【0073】
図19は、本発明によるソフトスイッチング動作波形として、直流スイッチのオン、オフするスイッチング信号Sに対する各部動作波形であり、共振電流ir, 共振電圧vr、出力電圧voおよび出力電流ioの波形を示している。
【0074】
同図(a)は負荷抵抗R=10Ω、同図(b)は負荷抵抗R=20Ωと変化せたときの共振電流irの波形から、負荷が軽くなると共振電流irの振幅も半減し、負荷電流に応じて共振電流が変化出来るため、ており、従来の共振型DC-DCコンバータと異なり、軽負荷時における共振電流による通電損失の問題が少なく零電流スイッチング制御が実現できていることが確認できる。
【実施例2】
【0075】
本発明のAC-DCコンバータの単相整流電源としてのソフトスイッチング制御の基本動作をシミュレーション解析結果により確認する。
【0076】
図20は、
図12に示した単相整流電源回路であり、図中に示す電圧電流波形の記号や回路記号に対して以下に示す回路パラメータを基準としてシミュレーション解析を行った。
【0077】
交流電源電圧の実効値Ea=100Vのもと、共振回路定数は上述した基本回路の定数と同じとし、交流ラインのインダクタLa=1mH,ダイオード整流回路の直流出力側のキャパシタCa=10uF,直流出力側フィルタインダクタLd=1mHとして、抵抗負荷R=10Ωを基準とした。
【0078】
図21は、抵抗負荷時の本発明による単相AC-DCコンバータの基本動作のシミュレーション結果であり、直流スイッチのオン、オフするスイッチング信号に対する各部動作波形として、共振電流ir,共振電圧vr、出力電流ioおよび交流電源電流iaの波形を示している。
【0079】
同図(a)は単相整流電源としての全体動作波形であり、直流負荷として抵抗負荷が接続されてる場合は、全波整流回路に抵抗が接続された場合と同様に、直流電流は正弦波の絶対値波形、交流電流は、交流電源の正弦波電圧と同じ波形の電流が流れて動作することがわかる。
【0080】
同図(b)は、交流電圧がピーク値付近の動作の時間軸を拡大して示したもので、スイッチ素子へのスイッチング信号が切り替わる時点で、共振電流irが零になっており、零電流スイッチングが行われている様子が確認出来る。
【0081】
次に、本発明のAC-DCコンバータの単相整流電源において、回路定数は変えず出力電圧制御をかけたときの動作波形をシミュレーション解析により確認する。
【0082】
図22は、
図20の回路に示した同じシミュレーション条件のもと、デューティー制御をかけたときの動作波形である。
【0083】
同図は、デューティー制御率を80%(KD=0.8)としたときの結果であり、同図(b)は時間軸を拡大したスイッチング動作波形を示しており、スイッチング信号がオフ期間は共振電流irが流れず、共振キャパシタの電圧vrに零となる期間が入ることにより、出力電圧の平均値が制御されることを示している。
【0084】
図21(a)の100%の結果と比べて、出力電圧が80%に制御されるため、出力電流io,電源電流iaはいずれも80%の大きさに制御されていることがわかる。
【0085】
また、
図23は、
図20の回路に示した同じシミュレーション条件で、スイッチングパルス幅は一定のもとスイッチング周波数制御をかけたときの動作波形である。
【0086】
同図はスイッチング周波数制御率を80%(KF=0.8)としたときの結果であり、デューティー制御の場合と同様に、出力電圧が80%に制御されるため、出力電流io,電源電流iaはいずれも80%の大きさに制御されていることがわかる。
【0087】
同図(b)は時間軸を拡大したスイッチング動作波形であり、スイッチング周波数制御率を下げるに伴い、スイッチング信号の繰り返し波形のオフ期間が広がるため、周期的な動作が安定に繰り返されて動作することがわかる。
【0088】
なお、いずれの電圧制御動作においても、
図22(b),
図23(b)に示すスイッチング動作波形から、スイッチはいずれも共振電流irが零になった時点で行われており、ソフトスイッチング動作のもとで電圧制御ができていることが確認できる。
【0089】
次に、本発明のAC-DCコンバータの単相整流電源において、直流負荷を上記の抵抗負荷時と同じ回路条件のもと、抵抗負荷をLED負荷に変えたシミュレーション解析結果を示す。
【0090】
図24は、LED負荷をダイオード電圧降下値VF=50V,直列抵抗R=10Ωとして模擬して行った動作波形を示している。
【0091】
抵抗負荷のみを接続する場合に比べて、LED負荷の順電圧降下による逆バイアス電圧がかかり交流電圧が低いときは電流が流れることができず、交流電源電流は正弦波の中央付近だけ流れ、零電圧付近は流れない特徴的な電流波形となる。。
【0092】
この場合は、交流電流波形は正弦波とはならないが、一般のコンデンサインプット形整流回路の電流波形に比べて交流電流波形の歪は小さく抑えることが出来る。
【0093】
なお、本発明のAC-DCコンバータの単相整流電源でLED負荷を駆動する場合は、交流電源周波数の2倍の周波数の電力脈動を生じるので、直流出力側に平滑用インダクタだけでなく平滑用キャパシタを付加するだけで照明におけるチラツキの問題も解決することが期待できる。
【0094】
同図(a)は直流出力側に平滑用キャパシタを用いていないときの直流電流波形に対して、同図(b)は大きな電解コンデンサCd=2000uFを接続したときの直流電流波形の脈動は大幅に低減されていることが確認できる。
【0095】
次に、電解コンデンサを接続した同図(b)の動作条件のもとで、LED照明器の調光制御のために電圧制御をかけたときの動作波形を
図25に示す。
【0096】
同図は、電圧制御率を80%としたときの結果であり、同図(a)はデューティー制御、同図(b)はスイッチング周波数制御をかけたときの結果であり、両制御ともLED負荷への電流の大きさが小さくなりLEDの調光制御できている様子がわかる。
【0097】
なお、一般に普及していた蛍光灯照明器具では、交流電源電圧の零近辺で一時的に消灯していても、実用上からはあまりチラツキの問題は生じていなかったことから、寿命の観点からも電解コンデンサを接続しないでもLED照明器として実用化出来るものと思われる。
【実施例3】
【0098】
本発明のAC-DCコンバータの三相整流電源として、三相交流電源に対し1個のスイッチによるソフトスイッチング制御の基本動作をシミュレーション解析結果により確認する。
【0099】
図26は、
図14に示した交流電源電流に対するフィルタ回路を整流回路の直流側に配置した三相整流電源のシミュレーション回路であり、図中に示す電圧電流波形の記号や回路記号に対して以下に示す回路パラメータを基準とした。
【0100】
三相交流電源電圧の実効値Ea=100Vのもと、共振回路定数は上述した基本回路定数と同じとし、整流回路の直流出力側に配置するLCフィルタ回路のインダクタLa=1mH,キャパシタCa=10uF,直流出力側フィルタにはインダクタLd=1mHのみ接続し、R=10Ωの抵抗負荷を接続したときの三相整流電源のシミュレーション解析を行った。
【0101】
図27は、三相AC-DCコンバータの全体動作波形であり、同図(a)より交流電流波形iaは三相全波整流回路の直流出力端に抵抗負荷が接続されている時と同様に、60度毎に電流振幅が少し脈動する120度通電幅の電流iaが流れていることが分かる。
【0102】
同図(b)は、交流電圧がピーク値付近の動作の時間軸を拡大して示したもので、スイッチ素子へのスイッチング信号が切り替わる時点で、共振電流irが零になっており、零電流スイッチングが行われている様子が確認出来る。
【0103】
図28は、出力電圧制御率を80%としたときの結果であり、同図(a)はデューティー制御、同図(b)はスイッチング周波数制御による制御結果であり、直流出力電流および交流電流が出力電圧制御率に比例して制御されていることがわかる。
【0104】
三相全波整流電源の場合は、単相全波整流電源に比べて直流電流波形の脈動は小さいため、LEDのような負荷が接続されても直流出力側に平滑用電解コンデンサを接続することなく抵抗負荷が接続されたときと同様の動作波形が得られる。
【実施例4】
【0105】
本発明のAC-DCコンバータ単相整流電源を試作し、抵抗負荷の場合とLED負荷の場合について実験を行った実測結果を以下に示す。
【0106】
図29は、
図10の主回路構成による単相整流電源に対して、交流電圧Ea=100V,共振インダクタLr=16uH,共振キャパシタCr=2.2uF,スイッチング周波数fs=22.5kHz, スイッチングパルス幅Tw=37usに設定して,抵抗負荷R=100 Ωでの実験により得られた動作波形を示している。
【0107】
同図(a)は、交流電圧vaと交流電流iaの動作波形、同図(b)は直流出力電圧vd,直流出力電流idの波形であり、いずれもシミュレーション解析結果と同様の動作波形が得られ、出力100Wで約95%を超える高い効率で動作できることが確かめられている。
【0108】
図30は、抵抗負荷をLED負荷に変更し、交流電圧をEa=60Vとした他は、上記と同じ回路動作条件のもとで実験んしたときの動作波形を示している。
【0109】
同図より、正弦波の交流電圧に対してLEDダイオードの電圧降下分の約50Vの逆バイアス電圧がかかるため、電圧がそれ以上になると電流io,iaが流れている様子が分かる。
【0110】
本発明のAC-DCコンバータ単相整流電源の実験結果から、抵抗負荷及びLED]負荷に対してシミュレs−ション結果と同様に優れた制御動作波形が得られるとともに、ソフトスイッチング制御によるスイッチング損失やスイッチングノイズの低減効果も確認できた。
【解決手段】高力率AC−DCコンバータは、単相、三相システムともに、1個のスイッチング素子によりLC共振周期で決まる一定の期間スイッチをオンするオン期間と、共振動作が維持できるに必要なオフ期間と組み合わせたスイッチング電圧波形をLC共振回路に加える手段をとっており、零電流でのスイッチング動作を可能とし、共振電流も負荷電流の大きさに応じた大きさで働かせることができる。