【実施例】
【0017】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1は本発明の嵌合部分防砂構造を有するワイヤハーネスを示す図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、
図2は本発明の嵌合部分防砂構造を示す断面図、
図3は
図2の発泡体の斜視図、
図4は
図2のA−A線断面図、
図5は
図2のB−B線断面図、
図6はプロテクタアッパーとプロテクタロアーとを嵌合させる直前の状態を示す断面図、
図7は導電路が一本の場合の状態を示す断面図である。
【0018】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車やエンジンで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用する。
【0019】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0020】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0021】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0022】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないのは勿論である。
【0023】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、
図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。ワイヤハーネス15における引用符号19はハーネス本体を示す。また、引用符号20はコネクタを示す。また、引用符号21はプロテクタを示す。
【0024】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス8、9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として高圧のワイヤハーネス9を挙げて以下に説明をする。先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0025】
<ワイヤハーネス9の構成について>
図1(a)及び
図2において、車両床下11を通って配索される長尺なワイヤハーネス9は、ハーネス本体22と、このハーネス本体22の両端末(ハーネス端末13)にそれぞれ配設されるシールドコネクタ14(外部接続手段)とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス9は、これ自身を所定位置に配索するための図示しないクランプと、車両床下11の貫通孔に合わせて配設される図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0026】
<ハーネス本体22の構成について>
図1(a)及び
図2において、ハーネス本体22は、二本の長尺な導電路23と、この二本の導電路23を収容・保護する複数の外装部材24と、この複数の外装部材24を繋ぐように設けられる複数のプロテクタ25とを備えて構成される。
【0027】
<導電路23について>
図2、
図4、及び
図5において、導電路23は、導電性の導体26と、この導体26を被覆する絶縁性の絶縁体27と、シールド機能を発揮させるための編組28(シールド部材)とを備えて構成される。すなわち、導電路22は、シースの存在しないものが採用される(一例であるものとする)。導電路23は、これにシースが存在しないことから、その分、軽量になるのは勿論である(導電路23は長尺であることから、従来例に比べ大幅に軽量化を図ることができるのは勿論である)。
【0028】
<導体26について>
図2、
図4、及び
図5において、導体26は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体26に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば丸単心となる導体構造であり、この場合、導電路自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体26は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体27が押出成形される。
【0029】
<絶縁体27について>
図2、
図4、及び
図5において、絶縁体27は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体26の外周面に押出成形される。絶縁体27は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体27は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0030】
<編組28について>
図2、
図4、及び
図5において、編組28は、導電路23の最外層として設けられる。このような編組28は、導電性を有する極細の素線を編んで筒状に形成される。また、編組28は、絶縁体27の一端から他端にかけて外周面全体を覆うような形状及びサイズに形成される。尚、編組28に限らず金属箔等をシールド部材として用いてもよいものとする。
【0031】
<外装部材24について>
図2において、外装部材24は、絶縁性を有する樹脂の成形にて一本の真っ直ぐな管体形状のものに形成される(使用前は真っ直ぐである)。また、外装部材24は、腹割きなしの形状に形成される(別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される))。さらに、外装部材24は、二本の導電路23を収容することができるように断面円形状に形成される(導電路23が二本の場合、例えば断面長円形状であってもよいものとする)。
【0032】
このような外装部材24は、可撓性を有する可撓管部29と、導電路23をストレートに配索する部分としてのストレート管部30とを有する(この構成は一例であり、例えば全て可撓管部29であってもよいものとする)。可撓管部29とストレート管部30は、管軸方向に複数形成される。また、これら可撓管部29とストレート管部30は、交互に配置形成される。
【0033】
<可撓管部29について>
図2において、可撓管部29は、車両取付形状(ワイヤハーネス9の配索先の形状)に合わせて配置される。また、可撓管部29は、車両取付形状に合わせた長さにも形成される。可撓管部29の長さは一定でなく、車両取付形状に合わせて必要な長さにそれぞれ形成される。このような可撓管部29は、ワイヤハーネス9の梱包状態や輸送時、さらには車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができるように形成される。すなわち、可撓管部29は、撓ませて曲げ形状にすることができるとともに、真っ直ぐな元の状態(樹脂成形時の状態)に戻すことも当然にできるように形成される。本実施例の可撓管部29は、蛇腹凹部及び蛇腹凸部を有する蛇腹管形状に形成される(一例であるものとする)。また、本実施例の可撓管部29は、この端部31がプロテクタ25の外嵌部分として形成される。
【0034】
<ストレート管部30について>
図2において、ストレート管部30は、可撓管部29のような可撓性を持たない部分として形成される。また、ストレート管部30は、梱包状態や輸送時、さらには経路配索時において曲がらない部分としても形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。ストレート管部30は、長い直管形状に形成される。このようなストレート管部30の外周面は、凹凸のない形状に形成される(一例であるものとする)。
【0035】
ストレート管部30は、可撓管部29と比べ、リジッドな部分に形成される。このようなストレート管部30は、車両取付形状に合わせた位置や長さに形成される。尚、複数あるうちの一番長いストレート管部30は、本実施例において、車両床下11に配置される部分として形成される。
【0036】
<プロテクタ25について>
図1(a)、
図2、
図4、及び
図5において、プロテクタ25は、樹脂製の筐体であって、プロテクタアッパー32と、プロテクタロアー33とを備えて構成される。尚、本実施例のプロテクタ25は模式図であるが、詳細な形状に関しては、本明細書の「技術分野」の欄で挙げた「特許文献1の特開2010−51042号公報」が参考になるものとする。
【0037】
プロテクタアッパー32と、プロテクタロアー33は、外装部材24の端部31を挟み込む部分として嵌合端部34をそれぞれ有する。嵌合端部34は、外装部材24との連結部分として形成される。このような嵌合端部34の内面側には、可撓管部29の蛇腹凹部に係合する二つの係合凸部35が形成される。また、嵌合端部34の内面側には、本発明の特徴部分になる発泡体36も設けられる。係合凸部35は、半円弧状の鍔部分に形成される。係合凸部35は、係合のための部分の他に、例えば砂よりも大きな異物の侵入を阻止する部分としても形成される。
【0038】
<発泡体36について>
図3ないし
図6において、発泡体36は、略スポンジ状の部材であって、二つの係合凸部35よりも内方の図示位置に配設される。本実施例の発泡体36は、例えば発泡ゴム(EPDMゴムを発泡させたものなど)にて
図3に示す形状に形成されたものが採用される。また、発泡体36は、若干の粘着性を有するものが採用される。さらに、発泡体36は、外装部材24の端部31とこの端部31から引き出された二本の導電路23とに接し且つ潰され且つ隙間を埋めることができるようなものが採用される。尚、発泡体36の発泡は、独立気泡構造のもの、連続気泡構造のもののいずれであってもよいが、例えば外装部材24内に仮に水分が溜まり、これを抜くことができるようにするのであれば、後者の方の構造がよいものとする(この場合、プロテクタ25に例えば水抜き孔を形成し、ここから外部へと排水すればよい)。
【0039】
図3において、発泡体36には、前後、左右方向にのびる切り込み37が複数形成される。別な言い方をすれば、碁盤の目状の切り込み37が形成される。この切り込み37は、外装部材24の端部31と二本の導電路23とに接し且つ潰され且つ隙間を埋め易くするために形成される。切り込み37があることにより、発泡体36には複数の四角柱状の部分38が形成される。この四角柱状の部分38は、基端がベース部分39に連続した状態になっており、上下方向に潰れたり元の状態に戻ったりするのは勿論のこと、前後左右の方向に傾いたり、捩れたりすることができるように形成される(つまり、本実施例の発泡体36は、単なる直方体形状(矩形のブロック形状)の略スポンジではないように形成される)。
【0040】
図4及び
図5において、発泡体36は、プロテクタアッパー32の内面全体(一対の側面40及び天井面41)に接するように形成される。また、プロテクタロアー33もこの内面全体(一対の側面42及び底面43)に接するように形成される。この他、発泡体36は、複数の切り込み37がある面がプロテクタアッパー32及びプロテクタロアー33の側壁端部44から若干突出する(
図6参照)ような高さに形成される。
【0041】
<ハーネス本体22の製造及び嵌合部分防砂構造45について>
図6において、二本の導電路23を複数の外装部材24に順次挿通し、この後に隣り合う外装部材24同士を繋ぐようにプロテクタ25を嵌合させると、ハーネス本体22の製造が完了する。プロテクタ25の嵌合は、外装部材24の端部31をプロテクタアッパー32とプロテクタロアー33とで挟み込むようにして行われる。プロテクタ25の嵌合が完了すると、
図2、
図4、及び
図5に示す如く、発泡体36は外装部材24の端部31との隙間を埋める。また、発泡体36は、外装部材24の端部31から引き出された二本の導電路23の外面との隙間を埋めるとともに、二本の導電路23同士の間に生じた隙間も埋める。これにより、本発明の嵌合部分防砂構造45が形成されて隙間が塞がれた状態になる。従って、例えば砂等が外部から上記の嵌合部分を介して外装部材24の内部に侵入しようとしてもこれを阻止することができる。
【0042】
<本発明の効果について>
以上、
図1ないし
図6を参照しながら説明をしてきたように、本発明の嵌合部分防砂構造45を採用すれば、例えばテープ巻きを施すのみの場合と比べ、外装部材24内への砂等の混入をし難くすることができるという効果を奏する。そして、以上から分かるように本発明の嵌合部分防砂構造45によれば、例えば走行中の振動により二本の導電路23が振れたとしても外装部材24内に砂等がないことから、導電路23の損傷を起こり難くすることができるという効果を奏する。
【0043】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【0044】
以上の説明では、導電路23が二本並んだ状態の例であったが、これに限らず三本横並びの状態や、
図7に示す如く一本の状態であってもよいものとする。
図7から分かるように、導電路23が一本であっても本発明の嵌合部分防砂構造45が形成されて隙間が塞がれた状態になることから、例えば砂等が外部から嵌合部分を介して外装部材24の内部に侵入しようとしてもこれを阻止することができる。