(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6775807
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】スライス肉の移載装置
(51)【国際特許分類】
B65B 25/06 20060101AFI20201019BHJP
B65G 47/34 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
B65B25/06 A
B65G47/34
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-127283(P2019-127283)
(22)【出願日】2019年7月9日
【審査請求日】2019年12月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152815
【氏名又は名称】株式会社日本キャリア工業
(72)【発明者】
【氏名】牧野 伸司
(72)【発明者】
【氏名】越智 一志
(72)【発明者】
【氏名】浅井 裕司
【審査官】
杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−329919(JP,A)
【文献】
特開2018−203371(JP,A)
【文献】
特開平04−039214(JP,A)
【文献】
特開2019−104499(JP,A)
【文献】
特開2002−211509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 25/06
B65G 47/34−47/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定枚数のスライス肉から形成されて搬送コンベヤ上で列をなすスライス肉群を、トレー内へ移載させる移載装置を設け、
この移載装置には、スライス肉群におけるスライス肉の重ね方向と直交する方向に沿って出退自在である1枚の受板に、移載ベルトが、受板の上面から受板の先端部で折り返されて受板の下面へ掛け回された移載機具が備えられ、
この移載機具は、スライス肉群が載置される搬送コンベヤの上面よりも、受板の上面が下方の位置になるように配置され、
搬送コンベヤから移載ベルト上に移載されたスライス肉群を、受板を退去させてトレー内へ移載させるように構成されたスライス肉の移載装置であって、
2つの移載機具が備えられ、この2つの移載機具を、受板の先端部それぞれを向かい合わせて左右対称に配設し、
それぞれの受板を互いに遠ざかるように外側方向に向かって退去させて、2条のスライス肉群が移載ベルト上からトレー内へ移載されるように構成されたことを特徴とする
スライス肉の移載装置。
【請求項2】
移載ベルトが、受板の上面側の端部を、移載機具の機枠に保持された上側保持部材に、
受板の下面側の端部を、移載機具の下側保持部材に、
それぞれ係脱可能とされた
請求項1に記載のスライス肉の移載装置。
【請求項3】
受板の上面側の移載ベルト端部には、上側保持部材に係脱可能な上側係合部が形成され、
受板の下面側の移載ベルト端部には、下側保持部材に係脱可能な下側係合部が形成される
請求項2に記載のスライス肉の移載装置。
【請求項4】
移載ベルト両端の係合部は、折り返された先端部が当該移載ベルトに固着されて形成される、移載ベルトに囲われた筒状空間であり、
移載機具の機枠に保持された上側保持部材は、移載ベルトの一端の係合部に挿入されて両端部が機枠の所定位置に着脱自在とされた保持棒であり、
下側保持部材は、少なくとも一方の端部から、移載ベルトの他端の係合部が係脱可能とされた保持板材である
請求項3に記載のスライス肉の移載装置。
【請求項5】
受板と下側保持部材とがタイミングベルトを介して連結され、
受板と下側保持部材とのいずれか一方が駆動されることで、
受板と下側保持部材とが速度比1:2で同方向に駆動される構成とした
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のスライス肉の移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライス肉をトレー内に移載させる移載装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連するスライス肉のトレー内への移載方法としては、例えば出願人による特許文献1に開示されたものがある。この方法によれば、折り畳み線を前にして一部を重ねて鱗列状に並べられコンベヤの終端部まで搬送された1パック分量毎のスライス肉群が、コンベヤの終端部から落下して、コンベヤの終端部下方で待機していたトレーに盛り付けられる。このとき、スライス肉群の姿勢を保持したまま一挙に盛り付けるために、スライス肉群がコンベヤの終端部に達すれば、コンベヤの終端部を比較的急速に後退させてスライス肉群をトレー内に落下させる構成である。
【0003】
特許文献1の方法によれば、肉質や肉の温度によって異なる場合もあるが、スライス肉の厚さが2mmを超えていれば整然とトレーに盛り付けられるものの、2mm以下の場合には、スライス肉の落下時における先頭部分や末尾部分が乱れることがあった。この課題を解決すべく、出願人は特願2018−172016号の提案を行った。この提案には、トレーの内底の幅より狭く形成された移載ベルトにスライス肉群を移載させてから、移載ベルトまたはトレーの少なくともいずれか一方が傾けられて、移載ベルトの先端部とトレーの内底とが近接した状態を維持しながら移載ベルトを後退させて、スライス肉群をトレー内に移載する方法が記載されている。
【0004】
なお、上記提案の中で公知のものとされた、
支持枠に進退自在に支持された移動板の前後方向に掛けまわされるとともに、スライス肉との接触面側の一部が支持枠に固着されていて、進退手段によって移動板が支持枠に対して直線的に進退することに伴い進退するよう構成された移載ベルト、
については、上記提案では詳細が記載されていないが、例えば特許文献2から特許文献4に具体的に開示されている。
【0005】
特許文献2の構成によれば、移載ベルトがリング状に巻回された出退自在の支持板材(本発明における「受板」に相当)を有していて、支持板材を前進させて、支持板材上面側の移載ベルト上に食品などの物体を移載させ、続いて支持板材を後退させることで、移載ベルト上の物体が所望の位置へ移載される。移載ベルトは、支持板材の先端部と後端部とで折り返して巻回配置され、移載ベルトの一方の端部と他方の端部とは支持板材の上面側で重ねられて、移載本体(本発明における「機枠」に相当)に架設された固定部材と押さえ板によって挟み込まれて複数個の固定ネジによって移載本体に固定されている。
【0006】
特許文献3には、移動板(本発明における「受板」に相当)を周回させたベルト(本発明における「移載ベルト」に相当)の両端部を重ね合わせた固定箇所を、凹部と凸部が嵌合される固定具で上下から挟んで固定して、ボルト等の連結具で連結固定する構成が記載されている。また、特許文献4には、スライダ(本発明における「受板」に相当)を周回させたシート(本発明における「移載ベルト」に相当)を二枚の挟持材で挟み込み、両挟持材の両端部を止め具であるクランプレバーで、両挟持材の中間部を止め具であるトグルクランプで、固定する方法が、比較的大きな装置に用いられている例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019−64808号広報
【特許文献2】特開2007−222153号公報
【特許文献3】特開2008−184265号公報
【特許文献4】特開2017−214108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スライス肉が一部を重ねた鱗状に積み重ねられて列をなすスライス肉群を、重ね方向における側方から見ると、先頭部分と末尾部分とは重なっているスライス肉の枚数が少ないために見かけの厚さが薄いといえる。特許文献1の方法によれば、コンベヤの終端部を比較的急速に後退させて、スライス肉群における見かけの厚さの薄い先頭部分が、コンベヤから勢いよく剥がされることでスライス肉群の落下が始まる。剥がされる直前においてスライス肉群は、コンベヤを例えば水平から30度傾けても滑り落ちない程度に粘着していて、剥がされ始めた部分は何にもガイドされることなく空中を落下していくこととなる。このため、スライス肉群の先頭の折り畳み線部分の弾力が大きい場合は、その形状を保ったままコンベヤから剥がされ落下していくので乱れにくい。しかし、スライス肉の厚さが薄いなどのために先頭の折り畳み線部分の弾力が小さい場合は、粘着力に負けてコンベヤからの剥がれ方にばらつきが生じ、先頭部分の形状を保てずに落下していってトレーに接触するため、特に先頭部分の乱れが発生することがあった。
【0009】
出願人による特願2018−172016号の提案によれば、移載ベルトからトレーへ移載され始めたスライス肉群の先頭の部分は、移載ベルトから剥がされた後も略連続的にトレーの内底に接触する。このため、スライス肉の厚さが薄くなっても、スライス肉の重ね方向における先頭部分と末尾部分を含めたスライス肉群全体が乱れにくく、整然とトレーに移載することができる。しかし、スプリングなどの弾性力を用いて付勢させた移載ベルトの先端部をトレーの内底に当てて追従させると、発泡樹脂製のトレーに傷や割れなどが生じる場合がある。これを避けるには、移載ベルトの先端部を、トレーの内底に傷や割れなどを生じさせない程度に弱い力で接触させたり、スライス肉の厚み程度の僅かな間隙を保ってトレー内底の形状に追従させたりするなどの必要がある。これらは、サーボモーターやセンサーなどを組み合わせて、移載ベルトの先端部の押し付け制御や位置制御を行えば実現できるものの、複雑な機構となってしまう。このような機構では、機械の維持管理や毎日の機械清掃がしにくくなったり、機械のコストアップにつながったりするなどの課題があった。
【0010】
移載ベルトのように食品と接触する箇所やそこに近接する箇所は、清潔を保つために毎日の清掃が必須であるが、特許文献2から特許文献4に開示されたように移載ベルトを構成すると、移載ベルトの表裏両面と支持板材(または「移動板」および「スライダ」)を清掃するために移載ベルトを取り外す必要がある。特許文献2から特許文献4に開示された構成によれば、移載ベルトの取り外しは各ネジ類を取り外したり緩めたりするだけで行える。しかしながら、移載ベルトの取り付けにおいては、移載の機能を維持するために、移載ベルトの張り具合と幅方向における位置とが略同等に再現される必要があるが、取り付けにおいてこれらが再現される方法については記載されていない。実際に行えば、特に張り具合の再現が難しく、特許文献4のように比較的大きな移載ベルトでは、張り具合の再現の難度が特に高かった。
【0011】
食料品店などの店頭において、鱗状に積み重ねられたスライス肉群がトレーに盛り付けられた商品は、スライス肉群が整然と盛り付けられていることも商品価値の一部を担うため、現時点では人手による盛り付けが一般的であるが、生産効率や衛生面から自動化が求められている。本発明の目的は、スライス肉の厚さが薄くても簡易な方法と機構でスライス肉群が整然とトレーに移載され、かつ、移載ベルトの張り具合の再現と移載ベルトの着脱とが簡易になされることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、所定枚数のスライス肉から形成されて搬送コンベヤ上で列をなすスライス肉群を、トレー内へ移載させる移載装置を設け、この移載装置には、スライス肉群におけるスライス肉の重ね方向と直交する方向に沿って出退自在である
1枚の受板に、移載ベルトが、受板の上面から受板の先端部で折り返されて受板の下面へ掛け回された移載機具が備えられ、この移載機具は、スライス肉群が載置される搬送コンベヤの上面よりも、受板の上面が下方の位置になるように配置され、搬送コンベヤから移載ベルト上に移載されたスライス肉群を、受板を退去させてトレー内へ移載させるように構成されたスライス肉の移載装置であって、2つの移載機具が備えられ、この2つの移載機具
を、受板の先端部それぞれを向かい合わせて左右対称に配設し、それぞれの受板を互いに遠ざかるように外側方向に向かって退去させて、2条のスライス肉群が移載ベルト上からトレー内へ移載されるように構成されたことを特徴とするスライス肉の移載装置としている。
【0013】
請求項2に記載の発明は、移載ベルトが、受板の上面側の端部を、移載機具の機枠に保持された上側保持部材に、受板の下面側の端部を、移載機具の下側保持部材に、それぞれ係脱可能とされた請求項1に記載のスライス肉の移載装置とした。
【0014】
請求項3に記載の発明は、受板の上面側の移載ベルト端部には、上側保持部材に係脱可能な上側係合部が形成され、受板の下面側の移載ベルト端部には、下側保持部材に係脱可能な下側係合部が形成される請求項2に記載のスライス肉の移載装置とした。
【0015】
請求項4に記載の発明は、移載ベルト両端の係合部は、折り返された先端部が当該移載ベルトに固着されて形成される、移載ベルトに囲われた筒状空間であり、移載機具の機枠に保持された上側保持部材は、移載ベルトの一端の係合部に挿入されて両端部が機枠の所定位置に着脱自在とされた保持棒であり、下側保持部材は、少なくとも一方の端部から、移載ベルトの他端の係合部が係脱可能とされた保持板材である請求項3に記載のスライス肉の移載装置とした。
【0016】
請求項5に記載の発明は、受板と下側保持部材とがタイミングベルトを介して連結され、受板と下側保持部材とのいずれか一方が駆動されることで、受板と下側保持部材とが速度比1:2で同方向に駆動される構成とした請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のスライス肉の移載装置とした。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスライス肉の移載装置は、スライス肉の厚さが薄くなっても、スライス肉の重ね方向と直交する方向に沿って受板を退去させることで、スライス肉群における見かけの厚さが薄い部分の乱れを抑えて整然と、しかも簡易な機構でトレーに移載でき、かつ、移載機具においては、移載ベルトの張り具合の再現と移載ベルトの着脱とが簡易になされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るスライス肉の移載装置の実施例における要部を示す平面図である。
【
図4】
図3の状態に至るために、搬送コンベヤ1の終端部が仮想線の位置から後退して、移載ベルト31にスライス肉群Mが載置された状態の要部を示す。
【
図5】
図1において、受板21が退去するにつれ、スライス肉群Mが落下していく状態を示す。
【
図7】
図5において、受板21の退去が完了し、スライス肉群Mがトレーに移載された状態を示す。
【
図10】
図3において、移載ベルト31に載置されたスライス肉群Mの拡大図である。
【
図11】
図1において、左側に位置する移載機具の実施例における要部を示す平面図であって、受板21が進出した状態を示す。
【
図13】
図11のG−G線断面図であって、受板21の上面側を上側とした図である。
【
図14】
図11の状態から、受板21が退去した状態を示した平面図である。
【
図16】移載ベルト31の側面図であって、各部の比率を変えて示した模式図である。
【
図17】(a)は
図11のH−H線断面図の要部を、(b)は
図14のK−K線断面図の要部を、各部の比率を変えて示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るスライス肉の移載装置および移載機具の実施例について、
図1から
図17に基づき説明する。
【0020】
原料である豚ロース肉が食肉スライサー(図示しない)によってスライスされて得られるスライス肉が、折り畳み手段(図示しない)によって搬送コンベヤ1の搬送方向と直交する方向に折り畳み線をもつように折り畳まれ、折り畳み線を搬送コンベヤ1の下流側に向けて搬送コンベヤ1に載置される。なお、折り畳まれるスライス肉の厚さは1mmから2.5mmが市場の大部分を占めていて、しゃぶしゃぶなどに用いられる。
【0021】
折り畳まれて載置されたスライス肉mが所定の移動量だけ搬送コンベヤ1によって下流側に送られてから、後続のスライス肉mが先行のスライス肉mの一部に重なるよう鱗状に載置される。これを1個のトレー3に盛り付けられる所定枚数の末尾のスライス肉mまで繰り返すと、
図1に示されるようにスライス肉群Mが搬送コンベヤ1に載置される。
【0022】
食肉スライサーと折り畳み手段は、平行に2条列並んだスライス肉mを搬送コンベヤ1に載置するが、1列のスライス肉mを載置することも可能である。2条列または1列のスライス肉群Mと後続のスライス肉群Mとの間には、区切りが明確となるように搬送コンベヤ1が送られて間隔が設けられ、これが繰り返されてスライス肉群Mは搬送コンベヤ1の終端部まで搬送される。本実施例では、2条列のスライス肉群Mを用いて説明する。
【0023】
なお、折り畳み手段は、スライス肉の折り畳む位置を変更することが可能である。折り畳む位置が、スライス肉より外側の位置となるように設定されることで、折り畳まれていないスライス肉m1による鱗状のスライス肉群M1を得ることもできるが、スライス肉m1は多くの場合折り畳まれたスライス肉mより厚くて弾力が大きめであるため移載時に乱れにくい。そのため、本実施例では、折り畳まれたスライス肉mによるスライス肉群Mを用いて説明する。参考として、折り畳まれていないスライス肉m1は、多くの場合3mm以上の厚さで、しょうが焼きやとんかつなどに用いられる。
【0024】
搬送コンベヤ1は、終端部が下流側へ向けて下降するよう緩やかに傾斜されるとともに、
図4に仮想線表示したように、コンベヤ上面に載置された物品の絶対位置を変動させることなく終端部が水平方向に所定距離だけ進退するシャトルコンベヤ(駆動部分などの図示は省略)とされる。なお、
図4における搬送コンベヤ1の傾斜は、およそ21度である。
【0025】
搬送コンベヤ1の終端部における下方には、移載機具10、10が、受板21の進出方向先端部を向かい合わせて左右対称に設けられる。
【0026】
移載機具10について、
図11に示されるように、受板21が
図11の位置に進出、また、
図14の位置に退去する左右方向を出退方向とし、
図11における上側を上流側、下側を下流側として説明する。移載機具10は、機枠11と、受板21と、受板21に掛け回された移載ベルト31と、移載ベルト31の受板21下面の端部を直線状に出退させる下側保持部材41と、受板21と下側保持部材41とを関連させて出退させる連動手段51と、を備える。
【0027】
機枠11は、
図11に示されるように、側板12、12と、側板12、12に架設される下流側板材13と、下流側板材13の略中央部から上流方向に架設される組付用部材14と、組付用部材14の上流側で下流側板材13と平行に延設される上流側板材15と、組付用部材14と平行に架設され移載ベルト31が巻き付けられる円筒部をもつ上側保持部材係止部16と、を備える。組付用部材14は、断面がコの字の板材で、搬送コンベヤ1の機枠に着脱可能に組み付けられるように組付ボルトなどを備える。
【0028】
受板21はステンレス製の薄板であって、下流側は、側板12、12に架設される受板ガイドロッド22が挿通された受板スライダ23、23が固着され、上流側は、受板レール24でスライド可能に支持されていて、出退方向に移動自在とされる。進出方向における受板21先端部は、下面側へ重ねるように折り曲げられてなる丸みを帯びた端部であって、移載ベルト31と摺接可能となるように配慮されている。また、進出方向における受板21後端部は下方へ略45度折り曲げられていて、受板21上面側の移載ベルト31に受板21後端のエッジ部分が当たらないように配慮されている。
【0029】
移載ベルト31は、受板21上面から受板21先端部で折り返され受板21下面へと掛け回される。
また、
図16に示されるように、移載ベルト31の両端部は、それぞれ先端部が折り返されて、移載ベルト31に囲われた筒状空間が形成されるように、当該移載ベルト31に接着されている。両端に形成された筒状空間は、一方が受板21の上面側で上側保持部材34と係脱可能な上側係合部32、他方が受板21の下面側で下側保持部材41と係脱可能な下側係合部33とされる。
【0030】
下側保持部材41は、受板21の下面側から略3mmの間隙を保って出退方向に移動自在とされるステンレス製の薄板(請求項の「保持板材」)であって、下流側には、側板12、12に架設される下側保持部材ガイドロッド42が挿通された下側保持部材スライダ43、43が固着され、上流側は、下側保持部材レール44でスライド可能に支持されている。下側保持部材レール44は、レール部支点ピン18、18によって上流側板材15に回動可能に支持されるとともに、レール部固定ピン19、19によって下側保持部材41の支持位置への固定と解放とが自在である。本実施例におけるレール部固定ピン19、19はインデックスプランジャであって、インデックスプランジャのツマミを操作するだけで下側保持部材レール44の支持位置への固定と解放とが容易に行える。
【0031】
下側保持部材レール44が支持位置から解放されれば、下側保持部材41がその上流側から、下側係合部33に挿入可能となる。下側保持部材41には、下側係合部33の筒状部両端の略1mmずつ外側を規制し、かつ抜けづらく保持する切り欠きが形成されていて、挿入後に下側係合部33の両端を多少変形させながら切り欠きに引っ掛けることで下側係合部33は略定位置に保持され、しかも着脱が容易である。
【0032】
上側保持部材34は、上側係合部32に挿入可能かつ一部に段差をもつ丸棒(請求項の「保持棒」)であって、上側係合部32の筒状部両端の略1mmずつ外側が太い径となされ、移載ベルト31が取り付けられる際には、筒状部両端が径の段差にガイドされることで略定位置に保持される。太い径のさらに外側両端は細い径となされていて、上側保持部材34は上側保持部材係止部16に対して両端略0.5mmずつの間隙をもつ範囲で位置決めされ、上側保持部材固定ピン17、17によって固定される。本実施例における上側保持部材固定ピン17、17はインデックスプランジャであって、インデックスプランジャのツマミを操作するだけで上側保持部材34が容易に上側保持部材係止部16に着脱され、かつ、移載ベルト31は、その幅方向における位置が必要十分に再現される。
【0033】
移載ベルト31の取り付けの際は、移載ベルト31の下側係合部33が下側保持部材41に取り付けられてから、下側保持部材レール44が支持位置へ固定されて下側保持部材41が支持された後に、移載ベルト31が受板21下面から受板21先端部で折り返され受板21上面へ掛け回される。次いで、上側保持部材34が上側係合部32に挿入されてから、移載ベルト31が上側保持部材係止部16の円筒部に巻き付けられるように上側保持部材34が固定される。この手順によれば、移載ベルト31の両端部の位置が取り外し前と略同位置となり、移載ベルト31の張り具合も取り外し前と略同等に再現されることとなる。なお、移載ベルト31の取り外しの際は、上記手順を逆にたどればよい。
【0034】
次に、連動手段51について説明する。受板スライダ23、23に回転自在に軸支されたタイミングプーリー52、52に掛け回されたタイミングベルト53は、その一部が受板ガイドロッド22の略中央部に固着されたタイミングベルト固定体54に固定されている。下側保持部材ガイドロッド42が挿通されたタイミングベルト連結体55は、下側保持部材スライダ43、43に回動自在に挟まれていて、タイミングベルト固定体54から出退両方向に、タイミングベルト53における略等しい長さをもつ位置でタイミングベルト53が固定される。
【0035】
上記の構成によれば、
図17に示されるように、エアシリンダー(図示しない)によって、受板21が機枠11に対して距離Sを移動されると、タイミングベルト53を介して、下側保持部材41が受板21に対して同方向に同じ距離Sを移動されるので、下側保持部材41は機枠11に対して距離2Sを移動されることとなる。つまり、下側保持部材41は、受板21の2倍の速度で同方向に移動されるので、連動手段51によって、受板21に掛け回された移載ベルト31はたるむことなく受板21先端部と常に摺接される。
【0036】
作業終了後の清掃に際しても、前述したように、移載機具10と移載ベルト31との着脱は容易であり、清掃後の移載ベルト31の取り付けに際しても、張り具合の調節は不要である。なお、移載ベルト31において、使用に伴う経時変化や、劣化や破損に伴う交換のために、張り具合の調節が必要となる場合がある。このときは、上側保持部材係止部16が固定されるボルトを緩め、
図12における周方向に回転させてボルトを締めることで、上側保持部材係止部16への移載ベルト31の巻き付け角が変化し、適切な張り具合に調節可能である。
【0037】
上記のように構成された移載機具10における受板21の下方に、搬送コンベヤ1の搬送方向と直行する方向に沿ってトレー3を移送するトレー移送装置2が設けられている。トレー3は、スライス肉群Mがトレーの移送方向における略中央部に移載されるよう、トレー移送装置2によって好適な位置に移送され持ち上げられる。なお、トレー移送装置2は、2条列のスライス肉群M、Mにおいて、対応するトレー3 、3の一方を好適な位置に移送してからトレー移送装置2の移送動作に影響を受けない高さまで持ち上げる。次いで他方を好適な位置に移送して持ち上げることで、2条列のスライス肉群M、Mに対応するトレー3、3の両方がそれぞれに好適な位置に移送される構成である。
【0038】
このように構成された移載装置の本実施例における移載方法を、図に基づき説明する。
図1は搬送コンベヤ1の終端部が
図4に示されるように後退して、搬送コンベヤ1からスライス肉群Mが受板21の上面の移載ベルト31に載置された状態である。なお、搬送コンベヤ1の終端部下面と、受板21の上面の移載ベルト31との間隙は略2mmとされていて、搬送コンベヤ1の終端部を離れ始めたスライス肉群Mの先頭部分以降は、略連続的に受板21の上面の移載ベルト31に接触しながら順次移載されるため、乱れを抑えて整然と移載ベルト31に載置される。また、このとき、トレー3 、3はトレー移送装置2により受板21 、21の下方の好適な位置に移送され持ち上げられている。
【0039】
次いで、受板21をスライス肉mの重ね方向と直交する方向に沿って退去させる。前述のとおり、移載ベルト31はたるむことなく受板21先端部と常に摺接されるため、受板21上面の移載ベルト31はスライス肉群Mの下面と相対的な位置変化を伴わないまま剥がされるように退去されていき、
図5および
図6に示されるようにスライス肉群Mは重ね方向における側方部分から落下し始める。
【0040】
ここで、スライス肉群Mを重ね方向における側方から見た
図10において、スライス肉の重なる枚数が、中央部分の略4枚に比して先頭部分(
図10における左端)と末尾部分(
図10における右端)では2枚と、見かけの厚さが薄くなっている。より具体的には、スライス肉群Mにおける中央部分の見かけの厚さはスライス肉mの重なり具合によって少なければスライス肉3枚分から多ければ6枚分程度であるが、折り畳み線のある先頭部分の見かけの厚さはスライス肉略2枚分、末尾部分の見かけの厚さは折り畳む位置によってスライス肉2枚分または1枚分である。
【0041】
参考として、折り畳まれていないスライス肉m1によるスライス肉群M1においては、中央部分の見かけの厚さはスライス肉2枚分から4枚分程度であり、先頭部分と末尾部分の厚さはスライス肉1枚分である。
【0042】
特許文献1の方法によれば、スライス肉群Mの重ね方向における先頭の折り畳み線部分が搬送コンベヤから略同時に剥がされる。スライス肉は厚さが薄くなるにつれて折り畳み線部分の弾力が小さくなるため、搬送コンベヤにある程度粘着している折り畳み線部分の剥がれ方にばらつきが発生する。加えて、先頭部分が落下中およびトレーに接触する際にも、弾力が小さいために折り畳み線部分を直線的な形状に保ちづらい。これらのことから、厚さが薄いスライス肉のスライス肉群Mは、特に先頭部分を整然とトレーに移載させることが難しい。
【0043】
本実施例においては、スライス肉群Mが側方部分から落下し始めるため、重ね方向における先頭部分と末尾部分は、移載ベルト31から重ね方向と直交する方向(折り畳み線に沿った方向)に順次剥がされながら落下する。このため、スライス肉の厚さが薄くなっても、特に目立つ先頭の折り畳み線部分が直線状の形状を保ちやすく、ひいてはスライス肉群M全体が整然とトレーに移載される。
【0044】
なお、本実施例ではシャトルコンベヤである搬送コンベヤ1の終端部が後退して移載ベルト31にスライス肉群Mを載置するようになしたが、例えば搬送コンベヤは常に終端部を定位置とするコンベヤとされ、搬送コンベヤの終端部における送りに関連させてスライス肉群Mが移載ベルト31上に受け渡されるように、受板21を進出させた移載機具10全体を搬送コンベヤの搬送方向に沿って移動させてもよい。
【0045】
また、本実施例ではトレー移送装置2がトレー3を好適な位置に移送するが、トレー移送装置はトレー3を常に同じ位置に移送し、トレー3に対する好適な位置に移載機具10を移動させてもよい。
【0046】
本発明における、スライス肉群を移載ベルト31からトレー3に整然と移載する装置は、前述した本実施例のように、直線状の動作の組み合わせによる簡易な機構で実現されるため、機械の維持管理や毎日の機械清掃もしやすく、機械のコストも抑えられる。
【0047】
なお、本発明における移載機具10は、本実施例のように、人手で移載するには軟らかくて姿勢や形状などが乱れやすい、鱗状に積み重ねられたスライス肉群の移載に特に有用であるが、移載する物品は限定されない。また、各部の材質や形状は、機能の要件を備えていれば適宜変更できる。
【符号の説明】
【0048】
1 搬送コンベヤ
3 トレー
10 移載機具
11 機枠
21 受板
31 移載ベルト
32 上側係合部
33 下側係合部
34 上側保持部材(保持棒)
41 下側保持部材(保持板材)
53 タイミングベルト
【要約】
【課題】厚さが薄いスライス肉であっても、簡易な機構でスライス肉群が整然とトレーに移載され、かつ、移載ベルトの張り具合の再現と移載ベルトの着脱とが簡易になされる。
【解決手段】受板21上面から受板21先端部で折り返
して受板21下面へ掛け回
した移載ベルト31上に、スライス肉群Mを移載する。移載ベルト31の受板21上面側の端部は移載機具10の機枠11の所定位置に保持されていて、移載ベルト31をたるませることなく受板21の先端部と常に摺接させながら受板21をスライス肉mの重ね方向と直交する方向に沿って退去させることで、スライス肉群Mが重ね方向における側方部分から落下され、下方にあるトレーに整然と移載される。かつ、移載ベルト31の両端に保持部材との係合部を設けたことで、移載ベルトの張り具合の再現と移載ベルトの着脱とが簡易になされる。
【選択図】
図1