特許第6775876号(P6775876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6775876パテ組成物及びこれを用いた補修塗装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775876
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】パテ組成物及びこれを用いた補修塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20201019BHJP
   C09D 5/34 20060101ALI20201019BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20201019BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20201019BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20201019BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C09D201/02
   C09D5/34
   C09D7/61
   C09D7/63
   B05D7/24 301N
   B05D3/12 B
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-71708(P2016-71708)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179232(P2017-179232A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅司
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−207122(JP,A)
【文献】 特開平09−217038(JP,A)
【文献】 特開2015−140423(JP,A)
【文献】 特開2000−226548(JP,A)
【文献】 特公昭56−023664(JP,B1)
【文献】 米国特許第05852094(US,A)
【文献】 特開平01−121341(JP,A)
【文献】 特開2007−224211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/02
C09D 5/34
C09D 7/61
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装前に2以上の成分を混合してパテ組成物を調製するための、多成分系のパテ組成物であって、
分子中に活性メチレン基を2個以上有する化合物(A)、
活性メチレン基より生成するカルボアニオンが求核付加する基を分子中に2個以上有する化合物(B)、
体質顔料(c)を含む顔料成分(C)
及びアミン触媒の有機酸塩を含む硬化触媒成分(D)
を含む組成物であって、
体質顔料(c)の含有量が、化合物(A)及び化合物(B)の不揮発分質量100質量部を基準として80〜300質量部の範囲内にあり、
第1成分(I)及び第2成分(II)混合後の
B型粘度計、回転速度2rpmの条件における粘度が50〜2000Pa・sの範囲内にあることを特徴とするパテ組成物。
【請求項2】
塗装前に2以上の成分を混合してパテ組成物を調製するための、多成分系のパテ組成物であって、
化合物(A)を含む第1成分(I)と、
化合物(B)を含む第2成分(II)と、
を組み合わせてなり、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)が顔料成分(C)を含み、硬化触媒成分(D)が、第1成分(I)又は第2成分(I)に含まれることを特徴とする請求項に記載のパテ組成物。
【請求項3】
塗装前に2以上の成分を混合してパテ組成物を調製するための、多成分系のパテ組成物であって、
化合物(A)及び化合物(B)を含む第1成分(I)と、
硬化触媒成分(D)を含む第2成分(II)と、
を組み合わせてなり、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)が顔料成分(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載のパテ組成物。
【請求項4】
ノンスチレン型である請求項1ないしのいずれか1項に記載のパテ組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の第1成分(I)及び第2成分(II)を混合して得られるパテ組成物。
【請求項6】
塗装体の損傷部に請求項1〜に記載のパテ組成物を充填し、乾燥させた後にパテ層を研磨し、その上に補修用塗料組成物を塗装する補修塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
不飽和ポリエステル樹脂は、一般に、他の樹脂に比べて比較的安価であり、また常温でも短時間で硬化するため作業性に優れ、さらに主原料の選択によって種々のすぐれた物理的および化学的特性を有するため、パテ、塗料、FRP成形品、レジンコンクリート、注型品等の各種用途に使用されている。
【0002】
従来、パテ組成物には不飽和ポリエステル樹脂の反応性希釈剤として、硬化性や物性の面からスチレンモノマーが用いられていた。
【0003】
しかしながら近年、スチレンモノマーが特定化学物質障害予防規則での規制対象となり、スチレンを含まないパテ組成物、いわゆるノンスチレン型パテ組成物を開発することが急務となっている。
【0004】
ノンスチレン型パテ組成物として、例えば特許文献1には、スチレンモノマーに代えてヒドロキシアルキルメタクリレートを反応性希釈剤として用いた不飽和ポリエステル樹脂組成物が記載されている。この組成物によれば、臭気が低く、硬化安定性に優れ、表面乾燥性に優れるものの、基材との付着性が不十分な場合があった。
【0005】
また、特許文献2〜3には、反応性希釈剤として特定の重合性不飽和化合物そして硬化助促進剤として特定の芳香族アミン化合物を含むパテ組成物が開示されており、かかる組成物によれば、表面乾燥性が良好で、上塗り塗装後の仕上がり面も黄変することなく良好な外観を有し、また厚塗りにした際の内部乾燥性にも優れ、基材や上塗り塗料に対する付着性にも優れたパテ層を形成できるものであるが、貯蔵中に組成物の表面が皮張りする現象が起きることがあった。
【0006】
こうした問題点に関して特許文献4〜5にはカルボキシル基のカルボニル部分に共役した共役二重結合を有するカルボン酸化合物を利用した不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されている。かかる組成物によれば貯蔵安定性及び表面乾燥性が共に良好であるが、この組成物を補修用パテとして適用したときに硬化層の表面が研磨し難いという問題点がある。
【0007】
ところで、自動車補修塗装の現場では、車両の損傷部にパテを充填し、内部まで乾燥させ、盛り付けたパテ層の表面が平らになるようにサンドペーパーなどで研磨した後、研磨面にプライマーサーフェーサー等の下塗り塗料を塗装し、未補修部に対して違和感のない色に調色された補修用着色上塗りベース塗料の塗装を行っている。
【0008】
補修塗装の初期工程であるパテ工程では、損傷部にパテ充填後、短時間で乾燥し、作業者を待たせることなく早い段階で研磨作業を行えるようにすることが必要である。しかしながらパテ層の乾燥性があまりにも速すぎると、パテ充填作業が行い難くなる問題があり、パテ組成物の充填作業性、パテ層の乾燥性及び研磨作業性をすべて満足するパテ組成物を設計することは極めて困難であった。
【0009】
【特許文献1】特開2005−162830号公報
【特許文献2】特開2005−206781号公報
【特許文献3】特開2006−206863号公報
【特許文献4】特開2008−63528号公報
【特許文献5】特開2008−115217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に自動車補修塗装用途に有用な、新規なパテ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した課題に関して鋭意検討した結果、活性メチレン基によるカルボアニオンの求核付加反応の速度がパテ組成物に極めて適していること、そして、スチレンを使用しなくても硬化性及び物性に優れたパテ組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、
塗装前に2以上の成分を混合してパテ組成物を調製するための、多成分系のパテ組成物であって、
分子中に活性メチレン基を2個以上有する化合物(A)、
活性メチレン基より生成するカルボアニオンが求核付加する基を分子中に2個以上有する化合物(B)、
体質顔料(c)を含む顔料成分(C)
及びアミン触媒の有機酸塩を含む硬化触媒成分(D)
を含む組成物であって、
体質顔料(c)の含有量が、化合物(A)及び化合物(B)の不揮発分質量100質量部を基準として80〜300質量部の範囲内にあり、
第1成分(I)及び第2成分(II)混合後の
B型粘度計、回転速度2rpmの条件における粘度が50〜2000Pa・sの範囲内にあることを特徴とするパテ組成物、塗装体の損傷部に該パテ組成物を充填し、乾燥させた後にパテ層を研磨し、その上に補修用塗料組成物を塗装する補修塗装方法、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のパテ組成物によれば、常温乾燥又は強制乾燥の条件でも速乾性を有しつつもパテ充填作業性が良好であり、表面乾燥性と硬度に優れたパテ層が得られる。このパテ層の表面は研磨しやすい性質を有し、基材との付着性にも優れており、自動車補修塗装用の下地処理剤として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のパテ組成物は、分子中に活性メチレン基を2個以上有する化合物(A)、活性メチレン基より生成するカルボアニオンが求核付加する基を分子中に2個以上有する化合物(B)及び顔料成分(C)を含有することを特徴とする組成物である。
【0015】
<分子中に活性メチレン基を2個以上有する化合物(A)>
本発明において、活性メチレン基とはメチレン基の少なくとも一方の側(好ましくは両側)に電子吸引性基が結合した基を意味するものであり、電子吸引基としては、カルボニル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスホノ基などが例として挙げられ、特にメチレン基の両側にカルボニル基が結合した基、即ち、−CO−CH−CO−構造が適している。
【0016】
本発明において、このような活性メチレン基を2個以上有する化合物(A)としては、分子中に活性メチレン基を有する以上は、製法、構造等限定されるものではないが、例えば、活性水素濃度が、0.5〜60mol/Kg、好ましくは2〜45mol/Kgの範囲内にある化合物であることが適している。
【0017】
本明細書において活性水素濃度とは、化合物1kg中に含まれる活性メチレン基由来の活性水素原子のモル数である。
【0018】
本発明においてはパテ組成物の研磨性と耐水付着性の点から、化合物(A)の分子量としては重量平均分子量で、100〜100,000、好ましくは200〜50,000の範囲内にあることが適している。
【0019】
本明細書において重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(東ソー社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。この測定において、カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも商品名、東ソー社製)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min、検出器RIという測定条件を使用するものとする。
【0020】
また、化合物(A)は、パテ組成物から形成されるパテ層の表面乾燥性の点から、酸価を有さないかもしくは酸価が10mgKOH/g以下の範囲内にあることが適している。
【0021】
本明細書における酸価は、JIS K 5601(1999)に定められた滴定法による測定値を意味する。
【0022】
本発明において、化合物(A)としては、例えば、ペンタン−2,4−ジオン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、1−メトキシ−2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、4,6−ジオキソヘプタン酸メチルエステル、5,7−ジオキソオクタン酸メチルエステル、ベンゾイル酢酸メチルエステル、ベンゾイル酢酸エチルエステル、ベンゾイル酢酸ブチルエステル、プロピオニル酢酸エチルエステル、プロピオニル酢酸ブチルエステル、ブチリル酢酸メチルエステル、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸イソプロピルエステル、アセト酢酸ブチルエステル、アセト酢酸tert−ブチルエステル、アセト酢酸−(2−メトキシエチル)エステル、アセト酢酸−(2−エチルヘキシル)エステル、アセト酢酸ラウリルエステル、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセト酢酸ベンジルエステル、1,4−ブタンジオールジアセトアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセトアセテート、ネオペンチルグリコールジアセトアセテート、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオールジアセトアセテート、シクロヘキサンジメタノールジアセトアセテート、エトキシ化されたビスフェノールAジアセトアセテート、トリメチロールプロパントリアセトアセテート、グリセロールトリアセトアセテート、ペンタエリスリトールトリアセトアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセトアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラアセトアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサアセトアセテート等の化合物、並びに、ポリオールとアセト酢酸エチルエステルのエステル交換反応によって得られる、アセトアセテート基を含有する重合体、及び、マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステル、マロン酸ジプロピルエステル、マロン酸ジイソプロピルエステル、マロン酸ジブチルエステル、マロン酸ジ(2−エチルヘキシルエステル)、マロン酸ジラウリルエステル等のマロン酸化合物;ポリオールとジアルキルマロネートによって得られる重合体等を挙げることができる。
【0023】
また、分子中に活性メチレン基を2個以上有する重合体としては、アクリル樹脂系化合物、活性メチレン基含有ポリエステル樹脂系化合物、活性メチレン基含有ポリウレタン樹脂系化合物、活性メチレン基含有エポキシ樹脂系化合物、並びにこれら2種以上を組み合わせてなる変性体等を例示することができる。
【0024】
上記活性メチレン基を2個以上有する重合体の構成成分となる活性メチレン基含有化合物としては、例えば、活性メチレン基含有カルボン酸、活性メチレン基含有(メタ)アクリルモノマー等を挙げることができる。
【0025】
活性メチレン基含有カルボン酸としては、例えば、アセト酢酸、マロン酸、シアノ酢酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0026】
上記活性メチレン基含有カルボン酸誘導体のうちエステル化物の具体例としては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸フェニル等のアセト酢酸エステル;マロン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジ−n−プロピル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル等のマロン酸ジエステルを挙げることができ、これらを1種で又は2種以上を組み合わせることもできる。
【0027】
一方、活性メチレン基含有(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、例えば、2−エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミド、2−(N−アセトアセチルアミノエチル)(メタ)アクリレート、2−シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N−(2−プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N−4−(アセトアセトキシメチル)ベンジルアクリルアミド、N−(2−アセトアセトアミドエチル)アクリルアミド、N−(2−アセトアセトアミドエチル)メタクリルアミド等を挙げることができ、これらを1種で又は2種以上を組み合わせることもできる。
【0028】
上記活性メチレン基含有化合物(A)としての活性メチレン基含有ポリエステル樹脂系化合物としては、活性メチレン基含有カルボン酸又はその誘導体とポリオールを含む成分の反応生成物であることができる。
【0029】
上記活性メチレン基含有カルボン酸及びその誘導体と反応させるためのポリオールとしては、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、水素化ビスフェノールA 、ビスフェノールA ジヒドロキシプロピルエーテル、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、ポリウレタンポリオールおよびシリコーンポリオール等のポリオール等を挙げることができる。
【0030】
上記ポリエステル樹脂系化合物としては必要に応じて活性メチレン基含有カルボン酸以外のカルボン酸を構成成分とすることができる。
【0031】
かかるカルボン酸としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸,2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、並びにそれらのジアルキルエステル等の飽和多塩基酸を例示することができる。
【0032】
上記活性メチレン基含有アクリル樹脂系化合物としては、例えば、活性メチレン基含有(メタ)アクリルモノマーと該モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーの共重合体であることができる。
【0033】
上記その他の重合性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーであっても非(メタ)アクリル系モノマーであってもよく、(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレート;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸〕エステル等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド等の第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合した化合物、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物等の水酸基含有(メタ)アクリレート等;ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロキシアルコキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有(メタ)アクリレート:並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
非(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル;「ベオバ−9」、「ベオバ−10」(いずれもシェル化学社製、商品名)等のカルボン酸ビニルエステル;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン:フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル等のフルオロビニルエーテル等を挙げることができる。
【0035】
<活性メチレン基より生成するカルボアニオンが求核付加する基を分子中に2個以上有する化合物(B)>
本発明において化合物(B)は、化合物(A)より生成するカルボアニオンの求核付加体となる基を分子中に2個以上有する化合物であり、活性メチレン基と反応して活性メチレン基の炭素と炭素−炭素結合を形成し得る基であり、かかる求核付加体となる基の具体例としては、例えば、α,β−不飽和カルボニル基、好ましくは(メタ)アクリロイル基を挙げることができる。
【0036】
また、化合物(B)の不飽和基濃度としてはパテ層の研磨性等の観点から、0.1〜20mol/kg、好ましくは1〜15mol/kgの範囲内であることが好適である。
【0037】
なお、本明細書において、不飽和基濃度とは、化合物1kgの中に含有される重合性不飽和基のmol数である。
【0038】
本発明においては、パテ層の表面乾燥性と耐水付着性の点から、化合物(B)の分子量が50〜20,000、好ましくは100〜5,000の範囲内にあることが適している。
【0039】
本発明において化合物(B)は、分子中に上記基を2個以上有する以上は、製法、構造等限定されるものではないが、具体例としては、例えば多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0040】
多官能(メタ)アクリレートとしては、分子中に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、具体的には、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタクリレート)、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロビバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエトキシ化グリセリントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
また、化合物(B)には、フマル酸およびマレイン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸を構成成分とするポリエステル樹脂系化合物またはポリアミド樹脂系化合物;(メタ)アクリロイル基含有アクリル樹脂系化合物等も包含される。
【0042】
本発明のパテ組成物は、上記化合物(A)及び化合物(B)の反応をパテ層の硬化に利用していることを特徴とするものであり、化合物(A)及び化合物(B)の使用割合としては、パテ層の表面硬化性の点から、化合物(A)に含まれる活性メチレン基由来の活性水素1当量に対し、化合物(B)に含まれる不飽和基が0.1〜2.0当量、好ましくは0.3〜1.5当量の範囲内となるように調整されることが適している。
【0043】
<顔料成分(C)>
本発明のパテ組成物は、パテ層の下地隠蔽性及び研磨性の点から顔料成分(C)を含む。顔料成分(C)としては塗料用として用いられる従来公知の顔料を使用できるが、特に好適には、チタン白、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒などの着色顔料;タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラスなどの体質顔料等を挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を併用して使用できる。
【0044】
顔料成分(C)の配合量は、研磨作業性とヘラ付け作業性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)の合計質量100質量部に対して、80〜600質量部、好ましくは90〜300質量部の範囲にあるのが適している。
【0045】
本発明においては顔料成分(C)として体質顔料(c)を必須成分として含み、また、体質顔料(c)の含有量が化合物(A)及び化合物(B)の不揮発分質量100質量部を基準として80〜300質量部にあることを特徴とする。
【0046】
本明細書において不揮発分とは、揮発成分を除いた残存物を意味するものであり、残存物としては常温で固形状であっても液状であっても差し支えない。不揮発分質量は、例えば、乾燥させた時の残存物質量の乾燥前質量に対する割合を不揮発分率とし、不揮発分率を乾燥前の試料質量に乗じることで算出することができる。
【0047】
本発明組成物が体質顔料(c)を含むことによって、耐タレ性が良好で塗装業者にとって作業性に優れたパテ組成物が得られる。
【0048】
上記体質顔料(c)は、好ましくは90〜250質量部、好ましくは100〜180質量部の範囲内で含まれることが適している。
【0049】
体質顔料(c)の含有量が80質量部未満では、パテ充填作業性がし難くなると共に形成されたパテ層の研磨性が不十分となり、一方、300質量部を超えるとパテ充填作業性がし難くなると共に形成されたパテ層の水浸漬後の基材に対する付着性が不十分となるので好ましくない。
【0050】
<硬化触媒成分(D)>
本発明においては、化合物(A)と化合物(B)の反応を促進する硬化触媒成分(D)を含むことが好ましい。かかる硬化触媒成分(D)としては、化合物(A)と化合物(B)の反応を促進する公知の成分を制限なく使用することができる。
【0051】
かかる硬化触媒成分(D)の具体例としては、例えばプロリン、トリアザビシクロデセン(TBD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、ヘキサヒドロメチルピリミドピリジン(MTBD)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、トリエチルアミン(TEA)、トリブチルアミン(TBA)、テトラメチルグアニジン(TMG)、トリエチレンジアミン(TEDA)等のアミン触媒;
上記アミン触媒の有機酸塩;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイド、トリフェニルベンジルフォスフォニウムクロライド等のハロゲン系触媒;
トリフェニルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−デシルホスフィン、トリ−n−ドデシルホスフィン、トリステアリルホスフィンなどのホスフィン系触媒;
ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムターシャリーブトキシド、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウム金属、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、ブチルリチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属系触媒;
ルテニウムシクロオクタジエンシクロオクタトリエン、ヒドリドルテニウムなどのルテニウム系触媒;
三塩化鉄や鉄アセチルアセトナートなどの鉄系触媒;
ニッケルアセチルアセトナート、酢酸ニッケル、ニッケルサリチルアルデヒドなどのニッケル触媒;
銅系触媒;パラジウム系触媒;スカンジウム系触媒;ランタン系触媒;イッテルビウム系触媒;スズ系触媒;
等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明では、パテ充填作業性及びパテ層の乾燥性の観点から硬化触媒成分(D)がアミン触媒、アミン触媒の有機酸塩、ハロゲン系触媒及びホスフィン系触媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらに好ましくは硬化触媒成分(D)が、その成分の一部としてアミン触媒の有機酸塩を含むことが適している。
【0053】
上記有機酸塩としては例えばフェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩などが挙げられ、中でも有機酸アミジン塩が好ましい。有機酸アミジン塩の具体例としては1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(以下DBUと記することがある)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(以下DBNと記することがある)のフェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩などが挙げられ、中でも、DBU−フェノール塩、DBU−オクチル酸塩、DBN−オクチル酸塩等を使用することが好ましい。
【0054】
上記有機酸アミジン塩の市販品としては、「U−CAT SA1」、「U−CAT SA102」、「U−CAT SA106」、「U−CAT SA506」、「U−CAT SA603」、「U−CAT SA1102」(以上、商品名、サンアプロ社製)等が挙げられる。
【0055】
上記硬化触媒成分(D)の配合量としては、パテ充填作業性及びパテ層の乾燥性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)の合計質量100質量部を基準として0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部の範囲内にあることができる。
【0056】
<パテ組成物>
本発明のパテ組成物は、貯蔵安定性の点から多成分系で構成される場合には、使用に際して各成分を混合する。本発明においては、貯蔵安定性の点から、化合物(A)と化合物(B)及び必要に応じて使用される成分(D)とが使用直前に混合されるように、第1成分及び第2成分を調製することが望ましい。また、顔料成分(C)は、第1成分若しくは第2成分のいずれかに、または、第1成分及び第2成分の両方に存在させることが可能である。
【0057】
すなわち、本発明のパテ組成物に含まれる各成分は、パテ組成物の貯蔵安定性を良好にし、また、パテの使用環境や使用用途に柔軟に対応させるという点から、以下のように調製されていることが好ましい。
(1)パテ組成物が、化合物(A)を含む第1成分(I)と、
化合物(B)を含む第2成分(II)と、
を組み合わせてなり、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)が顔料成分(C)を含み、硬化触媒成分(D)が、第1成分(I)又は第2成分(I)に含む。
(2)パテ組成物が、化合物(A)及び化合物(B)を含む第1成分(I)と、
成分(D)を含む第2成分(II)と、
を組み合わせてなり、第1成分(I)及び/又は第2成分(II)が顔料成分(C)を含む。
【0058】
本発明のパテ組成物には、さらに必要に応じて、例えば、重合開始剤、溶剤、脱水剤、防錆剤、ガラスバルーン、プラスチックバルーンなどの中空粒子、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、低収縮剤、酸化防止剤、皮張り防止剤、重合禁止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、強化材、減粘剤等の粘度調節剤、顔料分散剤、改質用樹脂、シランカップリング剤、パラフィン等の空気遮断剤等を配合することができる。
【0059】
これらのうち重合開始剤としては、組成物中にラジカル重合性基を有する場合、ラジカル重合反応の重合開始剤として作用し、パテ層の表面硬化性に寄与することが期待される。このような重合開始剤として具体的にはシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド化合物;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジtert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−ヘキシルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジtert−オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等のパーオキシケタール化合物;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド化合物;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド化合物;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート化合物;tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル化合物の化合物を使用でき、1種で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0060】
以上の通り得られるパテ組成物はスチレンを含まなくても表面乾燥性、内部硬化性に優れたパテ層が得られ、ノンスチレン型として供することができるが、スチレンを含むことを排除するものではない。
【0061】
上記本発明のパテ組成物は、粘度が、50〜2000Pa・sの範囲内にあることを特徴とするものであり、80〜1900Pa・s、好ましくは100〜1800Pa・sの範囲内にあることが適している。
【0062】
パテ組成物の粘度が50Pa・s未満では充填作業時にパテ組成物がタレることがあり、作業性が悪くなるので好ましくない。一方、2000Pa・sを越えると、充填作業時にパテ組成物の伸び性が不十分であり作業性が悪くなり好ましくない。
【0063】
本明細書において粘度は、試料を25℃の温度に調整し、B型粘度計「VISCOMETER TV−22」(商品名、東機産業社製)、No7.ロータを用いて、回転速度2rpmの条件にて測定したものとする。
【0064】
<パテ組成物を用いた補修塗装方法>
本発明のパテ組成物が適用される基材面としては、特に制限はないが、鉄、亜鉛、アルミなどの金属面やその化学処理面、プラスチック、木材など、さらにこれらに塗装された塗装体などが挙げられる。
【0065】
本発明のパテ組成物が多成分系である場合には、第1成分(I)、第2成分(II)及び任意で含むことができるその他の成分を混合してパテを得ることができる。得られるパテ(混合したパテ組成物)は、自動車等の車両等の塗装体の補修塗装に有用である。
【0066】
各成分を混合する方法は、多成分系のパテ組成物の成分を混合する常法に従い行うことができる。
【0067】
該塗装体の損傷部を中心に必要によりその周囲までサンディングを行い、該損傷部に混合したパテ組成物をヘラ等で充填し、常温乾燥または強制乾燥により塗膜内部まで硬化することができる。
【0068】
乾燥条件は具体的には常温乾燥の場合は常温で5時間以上維持するか、強制乾燥の場合は3〜30分のセッティングタイムを取り、40〜120℃の温度で5〜60分間加熱することができる。
【0069】
形成されたパテ層は耐水ペーパーやサンドペーパーなどで研磨され、研磨面に補修用塗料組成物を塗装することができる。
【0070】
補修用塗料組成物としては、アクリルラッカー、アクリルメラミン樹脂系塗料、水酸基含有樹脂とポリイソシアネート化合物を含む2液型のウレタン硬化型塗料、酸−エポキシ硬化型塗料、フッ素樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、アルキドメラミン樹脂系塗料、ポリエステルメラミン樹脂系塗料などの通常使用されている有機溶剤系、水系、粉体等の下塗り塗料、着色ベース塗料、トップクリヤー塗料等特に制限なく使用できる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0072】
<パテ主剤ベース及び硬化剤ベースの製造>
実施例1
容器に、活性メチレン成分としてのマロン酸変性ポリエステル樹脂(A−1)(注)を不揮発分で60部、タルク40部、「U−CAT SA1」(注)3部を配合攪拌し、高速混練機で20分間混合分散させて、パテ組成物(T−1)用の主剤ベースを得た。
次いで別の容器に、トリメチロールプロパントリアクリレート38部、炭酸カルシウム40部を配合攪拌し、高速混練機で20分間混合分散させて、パテ組成物(T−1)用の硬化剤ベースを得た。
【0073】
上記主剤ベース及び硬化剤ベースを、表1記載の割合で混合し、パテ組成物(T−1)を得た。このときの活性メチレン基の活性水素に対するアクリレート基の当量比は1.0であった。
【0074】
実施例2〜29及び比較例1〜4
実施例1において、配合組成を表1〜表9に記載の通りとする以外は同様にして各パテ組成物(T−2)〜(T−33)を得た。表中、活性メチレン成分の配合量は不揮発分表示である。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
【表9】
【0084】
(注)活性メチレン基含有ポリエステル樹脂(A)溶液
ネオペンチルグリコール/ヘキサヒドロフタル酸無水物/マロン酸ジエチル=17.31モル/8.03モル/10.44モルの縮合物の酢酸ブチル溶液、不揮発分90%、重量平均分子量3400、不揮発分あたりの活性メチレン基の活性水素量5.5モル/kg
(注)活性メチレン基含有ポリエステル樹脂(B)溶液
1,6−ヘキサンジオール/トリメチロールプロパン/オレイン酸/マロン酸ジエチル=2.54モル/0.51モル/0.51モル/3.05モル縮合物の酢酸ブチル溶液、不揮発分90%、樹脂の重量平均分子量3800、不揮発分あたりの活性メチレン基の活性水素量8.4モル/kg
(注)活性メチレン基含有アクリル樹脂溶液
アセトアセトキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート=70/20/10共重合体の酢酸ブチル溶液、不揮発分60%、樹脂の重量平均分子量5000、不揮発分あたりの活性メチレン基の活性水素量6.0モル/kg
(注)トリメチロールプロパントリアセトアセテート:活性メチレン基の活性水素量15.5mol/kg
(注)DBN:1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5
(注)U−CAT SA1:商品名、サンアプロ社製、DBU−フェノール塩
(注)U−CAT SA102:商品名、サンアプロ社製、DBU−オクチル酸塩
(注)U−CAT SA1102:商品名、サンアプロ社製、DBN−オクチル酸塩
(注)TBAC: テトラブチルアンモニウムブロミド
(注)TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、分子量338、不飽和基濃度8.9モル/kg
(注)DiTMPTA:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、分子量466.5、不飽和基濃度8.6モル/kg
(注)PETA:ペンタエリスリトールテトラアクリレート、分子量352.3、不飽和基濃度11.4モル/kg
(注)M−315:商品名、東亞合成社製、ヌレート骨格アクリレート、分子量423、不飽和基濃度7.1モル/kg。
【0085】
<評価方法>
(*)粘度
主剤ベース及び硬化剤ベースをそれぞれ25℃に調整した後、B型粘度計「VISCOMETER TV−22」(商品名、東機産業社製)、No7.ロータを用いて、回転速度2rpmの条件にて、主剤ベース及び硬化剤ベースを混合してから10秒以内に測定した。
(*)ヘラ付け性
各主剤パテベースと硬化剤パテベースを混合し、ヘラを用いて試験片にヘラ付けをする。
その時のノビ、ヘラ切れ、ヘラサバキ、タレを調べた。
◎:ノビ、ヘラ切れ、ヘラサバキのすべてが極めて良好、
〇:ヘラ切れ、ヘラサバキが極めて良好、ノビはやや劣るが実用レベル
△:ノビ、ヘラ切れ、ヘラサバキのすべてが若干不良、
×:ノビ、ヘラ切れ、ヘラサバキのすべてが不良。
(*)乾燥性
「SPCC−SB」(日本テストパネル(株)製、鉄板)の表面を耐水ペーパー#240で軽く研磨し、これを基材面とした。上記で得られた各主剤ベース及び硬化剤ベースを混合し、均一化したパテ組成物を各基材面上にヘラで塗布し、ならして2mm厚に塗布したものを試験塗板とした。各試験塗板を常温(20℃)で40分間放置後、各試験塗板表面のタックおよび内部の硬化度合を指触にて調べた。
◎:極めて良好、
〇:良好、
〇△:表面に若干タックありが内部は硬化良好、
△:表面に若干タックあり、内部も若干硬化不良、
×:表面にタックあり、内部も硬化不良。
(*)研磨性
上記各試験塗板の表面を#400耐水ペ−パ−にて研磨し研磨のし易さを評価した。
◎:極めて研磨しやすい、
○:研磨しやすい、
△:若干研磨しづらい、
×:研磨しづらい。
(*)耐水付着性
上記試験塗板を室温(20℃)で6時間放置して乾燥させた後、塗面を#400耐水ペーパーで軽く研磨し、「レタンPG80ホワイトベース」(商品名、アクリルウレタン樹脂系上塗り塗料、関西ペイント(株)社製)を乾燥膜厚50μmになるようにスプレー塗装し、60℃で30分間乾燥させて各塗装板を得た。各塗装板を80℃の水に1日間浸漬した後、水中より取り出し、これを中央部より折り曲げて、折り曲げ部の塗膜状態を観察した。
○:剥離なし、
△:塗膜が鋼板−パテ間から僅かに剥離している、
×:塗膜が鋼板−パテ間から完全に剥離している。