特許第6775963号(P6775963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6775963タービングランド蒸気供給システム及びこの運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775963
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】タービングランド蒸気供給システム及びこの運用方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/04 20060101AFI20201019BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20201019BHJP
   F01D 11/06 20060101ALI20201019BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   F01D11/04
   F01D25/00 M
   F01D11/06
   F01D25/16 J
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-31178(P2016-31178)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-150332(P2017-150332A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 泰一
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−227303(JP,A)
【文献】 特開平06−185304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/04
F01D 25/00
F01D 11/06
F01D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主蒸気ラインから供給される高温蒸気によって駆動する蒸気タービンのグランド部にグランド蒸気を供給するタービングランド蒸気供給システムであって、
前記高温蒸気とは異なる供給源から供給され、且つ、前記高温蒸気よりも低温の低温蒸気と、前記高温蒸気との混合蒸気を、前記グランド蒸気として、前記グランド部に供給可能に構成され、
前記グランド蒸気を貯留するグランド蒸気レシーバと、
前記低温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給する低温蒸気供給ラインと、
前記蒸気タービンの前記グランド部と前記グランド蒸気レシーバとを連通するグランド蒸気流通ラインと、
前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給するための主蒸気分岐ラインと、を備え、
前記主蒸気ラインは、前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気の流れをON/OFFするための操縦弁を含み、
前記タービングランド蒸気供給システムは、前記操縦弁から漏洩する前記高温蒸気を流す第1主蒸気漏洩ラインをさらに備え、
前記蒸気タービンが高負荷運転時から停止時又は低負荷運転時に変更された場合に、前記主蒸気分岐ラインを介して、前記高温蒸気が前記グランド蒸気レシーバに供給されるように構成された
ことを特徴とするタービングランド蒸気供給システム。
【請求項2】
前記主蒸気分岐ラインは、前記操縦弁、又は、前記主蒸気ラインにおける前記操縦弁よりも上流側に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項3】
前記主蒸気分岐ラインは、前記高温蒸気の圧力を減圧する蒸気減圧装置を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項4】
前記蒸気減圧装置は、複数のオリフィスを直列的に設けて構成される多段オリフィスからなる
ことを特徴とする請求項3に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項5】
前記低温蒸気供給ラインは、前記高温蒸気と前記低温蒸気とを混合する蒸気混合装置を含み、
前記主蒸気分岐ラインは、前記蒸気混合装置に接続される
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項6】
前記低温蒸気供給ラインは、前記蒸気混合装置よりも上流側に位置する逆止弁を含む
ことを特徴とする請求項5に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項7】
前記主蒸気分岐ラインは、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整可能な蒸気流量調整弁を含み、
前記低温蒸気供給ラインの前記蒸気混合装置の下流側には、前記蒸気混合装置で混合された混合蒸気の温度を検出する温度検出器が設けられ、
前記温度検出器により検出された前記混合蒸気の温度が、所定の温度範囲となるように、前記蒸気流量調整弁を制御する制御装置をさらに備える
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記所定の温度範囲の上限温度が、前記蒸気タービンの高負荷運転時における前記蒸気タービンの前記グランド部の温度であり、前記所定の温度範囲の下限温度が、前記蒸気タービンの高負荷運転時における前記蒸気タービンの前記グランド部の温度よりも100℃低い温度であるように設定される
ことを特徴とする請求項7に記載のタービングランド蒸気供給システム。
【請求項9】
主蒸気ラインから供給される高温蒸気によって駆動する蒸気タービンのグランド部をシールするグランド蒸気を供給するためのタービングランド蒸気供給システムの運用方法であって、
前記タービングランド蒸気供給システムは、
前記グランド蒸気を貯留するグランド蒸気レシーバと、
前記高温蒸気とは異なる供給源から供給され、且つ、前記高温蒸気よりも低温の低温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給する低温蒸気供給ラインと、
前記蒸気タービンの前記グランド部と前記グランド蒸気レシーバとを連通するグランド蒸気流通ラインと、
前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給するための主蒸気分岐ラインと、を備え、
前記主蒸気ラインは、前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気の流れをON/OFFするための操縦弁を含み、
前記タービングランド蒸気供給システムは、前記操縦弁から漏洩する前記高温蒸気を流す第1主蒸気漏洩ラインをさらに備え、
前記蒸気タービンが高負荷運転時から停止時又は低負荷運転時に変更された場合に、前記主蒸気分岐ラインを介して、前記高温蒸気が前記グランド蒸気レシーバに供給されるように構成され、
前記主蒸気分岐ラインは、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整可能な蒸気流量調整弁を含み、
前記低温蒸気供給ラインは、前記高温蒸気と前記低温蒸気とを混合する蒸気混合装置を含み、
前記タービングランド蒸気供給システムの運用方法は、
前記蒸気混合装置で混合された混合蒸気の温度を検出する温度検出ステップと、
前記混合蒸気の温度が、所定の温度範囲となるように、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整する流量調整ステップと、を備える
ことを特徴とするタービングランド蒸気供給システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補機や雑用等に用いられる低温蒸気を蒸気タービンのタービングランドのシール蒸気として供給可能なタービングランド蒸気供給システム及びこの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンのタービングランド部にシール用のグランド蒸気を供給する方法として、例えば、蒸気タービンを駆動させる高温蒸気が流れる主蒸気ラインからシール蒸気供給ラインを分岐させ、このシール蒸気供給ラインを介して高温蒸気を蒸気タービンのグランド部に供給する方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のシール蒸気供給方法は、タービン駆動時において、高温蒸気をシール蒸気供給ラインに設けられた減温器で冷却して蒸気タービンのグランド部に供給している。このため、特許文献1に記載のものは、タービン駆動時に必要な高温蒸気の一部をグランド部に供給するので、高温蒸気を無駄にし、且つ減温器が必要であるので、コストの増大を招く。
【0004】
そこで、図5に示すように、蒸気タービン10のグランド部10aに供給される低温蒸気LSを、高温蒸気HSが流れる主蒸気ライン3とは別系統の低温蒸気供給ライン25から供給することが考えられる。そして、この低温蒸気の供給源として、例えば、船側の所掌となる船内の補機に供給する船内雑用蒸気であるメイクアップ蒸気を利用することが考えられる。ここで、図5は、本発明の比較形態にかかるタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
【0005】
この図5に記載された別系統の低温蒸気供給ライン25は、補助ボイラ等で生成されて船内の補機等で使用されるメイクアップ蒸気(低温蒸気LS)を流すラインである。このメイクアップ蒸気(低温蒸気LS)は、低温蒸気供給ライン25からグランド蒸気レシーバ20に流入する。そして、グランド蒸気レシーバ20に貯留されるグランド蒸気が、グランド蒸気流通ライン30を介して、グランド部10aに供給される。これにより、蒸気タービン10のタービン駆動時に高温蒸気HSの一部をグランド部10aに供給する必要が無くなる。高温蒸気HSをわざわざ冷やして使用することはエネルギーの無駄となるが、メイクアップ蒸気(低温蒸気LS)を利用することで、高温蒸気HSを冷やす必要がなくなり、エネルギーの無駄を防止することができる。また、減温器が不要となってコストの増大を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−270403号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わると、蒸気タービン内の圧力は低下する。このため、グランド蒸気レシーバ20に貯留されているメイクアップ蒸気がグランド蒸気流通ライン30を介して、グランド蒸気としてグランド部に供給される。これにより、グランド部がシールされる。
【0008】
しかしながら、メイクアップ蒸気の温度は、一般的に蒸気タービンに供給される高温蒸気の温度と比較して低い。したがって、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わったときに、グランド部の温度が例えば約370℃であり、メイクアップ蒸気の温度が例えば約175℃である場合、このメイクアップ蒸気をグランド蒸気としてグランド部に供給すると、グランド部のパッキン環が冷やされて縮み、タービンロータとパッキン環とが接触する虞がある。
【0009】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、このような従来技術の状況の基になされた発明であって、その目的とするところは、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わった際に、グランド蒸気によってグランド部のパッキン環が縮んでタービンロータとパッキン環とが接触する虞がないタービングランド蒸気供給システム及びこの運用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システムは、
主蒸気ラインから供給される高温蒸気によって駆動する蒸気タービンのグランド部にグランド蒸気を供給するタービングランド蒸気供給システムであって、
前記高温蒸気とは異なる供給源から供給され、且つ、前記高温蒸気よりも低温の低温蒸気と、前記高温蒸気との混合蒸気を、前記グランド蒸気として、前記グランド部に供給可能に構成される。
【0011】
上記(1)に記載のタービングランド蒸気供給システムによれば、蒸気タービンのグランド部に供給されるグランド蒸気は、高温蒸気よりも低温の低温蒸気と高温蒸気との混合蒸気をグランド蒸気として、グランド部に供給可能であるので、グランド蒸気は、低温蒸気の温度よりも高い温度となる。よって、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わったときに、この低温蒸気と高温蒸気との混合蒸気をグランド蒸気としてグランド部に供給することで、グランド部がグランド蒸気によって急冷されることによるグランド部のパッキン環の縮みを抑制することができる。このため、タービンロータとパッキン環とが接触する虞を防止可能なタービングランド蒸気供給システムを実現できる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記グランド蒸気を貯留するグランド蒸気レシーバと、
前記低温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給する低温蒸気供給ラインと、
前記蒸気タービンの前記グランド部と前記グランド蒸気レシーバとを連通するグランド蒸気流通ラインと、
前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給するための主蒸気分岐ラインと、を備えるように構成されている。
【0013】
上記(2)に記載のタービングランド蒸気供給システムによれば、グランド蒸気レシーバと低温蒸気供給ラインとグランド蒸気流通ライン主蒸気分岐ラインによって、高温蒸気よりも温度の低い混合蒸気をグランド蒸気として、グランド部に供給することができる。よって、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わったときに、この低温蒸気と高温蒸気との混合蒸気をグランド蒸気としてグランド部に供給することで、グランド部がグランド蒸気によって急冷されることによるグランド部のパッキン環の縮みを抑制することができる。このため、タービンロータとパッキン環とが接触する虞を防止可能なタービングランド蒸気供給システムを実現できる。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記主蒸気ラインは、前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気の流れをON/OFFするための操縦弁を含み、
前記主蒸気分岐ラインは、前記操縦弁、又は、前記主蒸気ラインにおける前記操縦弁よりも上流側に接続されるように構成されている。
【0015】
蒸気タービンに供給される高温蒸気は、操縦弁がOFFであっても、主蒸気ラインにおける操縦弁の上流側までは常に供給されている。このため、上記(3)に記載の実施形態によれば、操縦弁のON/OFFに関わらず、主蒸気ラインを流れる高温蒸気を、主蒸気分岐ラインを介してグランド蒸気レシーバに供給することが出来る。また、操縦弁より上流側の主蒸気ラインは、船側の所掌とされる場合が多い。このため、主蒸気分岐ラインを操縦弁に接続する構成とすることで、機関側が所掌する範囲内で主蒸気分岐ラインを設けることが出来る。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記主蒸気分岐ラインは、前記高温蒸気の圧力を減圧する蒸気減圧装置を含むように構成される。
【0017】
上記(4)に記載の実施形態によれば、主蒸気分岐ラインは、高温蒸気の圧力を減圧する蒸気減圧装置を含む。例えば、高温蒸気の絶対圧力が約100ataであり、低温蒸気供給ラインを流れる低温蒸気の絶対圧力が約4〜5ataである場合のように、高温蒸気と低温蒸気の圧力差が大きいと、高温蒸気と低温蒸気との混合がし難くなる。そこで、主蒸気分岐ラインに蒸気減圧装置を設けることで、高温蒸気の圧力を低下させることができる。従って、高温蒸気と低温蒸気の圧力差が小さくなり、高温蒸気と低温蒸気との混合を容易にすることができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記蒸気減圧装置は、複数のオリフィスを直列的に設けて構成される多段オリフィスからなるように構成される。
【0019】
上記(5)に記載の実施形態によれば、多段オリフィスによって高温蒸気を所定の圧力まで確実に減圧することが出来るとともに、例えば蒸気減圧装置として圧力調整弁を用いる場合と比べて、上記減圧装置のコストを安価にすることができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)から(5)のいずれか1項に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記低温蒸気供給ラインは、前記高温蒸気と前記低温蒸気とを混合する蒸気混合装置を含み、
前記主蒸気分岐ラインは、前記蒸気混合装置に接続されるように構成される。
【0021】
主蒸気分岐ラインから低温蒸気ラインに供給される高温蒸気は、その圧力や流量によって低温蒸気ラインを流れる低温蒸気との混合状態が変化する。このため、上記(6)に記載の実施形態によれば、低温蒸気供給ラインが蒸気混合装置を含むことで、高温蒸気の圧力や流量が変化した場合であっても、高温蒸気と低温蒸気とを一定の混合状態にすることができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記低温蒸気供給ラインは、前記蒸気混合装置よりも上流側に位置する逆止弁を含むように構成される。
【0023】
主蒸気ラインを流れる高温蒸気は、低温蒸気供給ラインを流れる低温蒸気よりも一般的に高圧である。このため、上記(7)に記載の実施形態によれば、高圧の高温蒸気が主蒸気分岐ラインを介して蒸気混合装置に流入した場合に、高圧の高温蒸気が蒸気混合装置を介してグランド蒸気流通ラインの上流側へ逆流することを防止することができる。
【0024】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記主蒸気分岐ラインは、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整可能な蒸気流量調整弁を含み、
前記低温蒸気供給ラインの前記蒸気混合装置の下流側には、前記蒸気混合装置で混合された混合蒸気の温度を検出する温度検出器が設けられ、
前記温度検出器により検出された前記混合蒸気の温度が、所定の温度範囲となるように、前記蒸気流量調整弁を制御する制御装置をさらに備えるように構成される。
【0025】
上記(8)に記載の実施形態によれば、制御装置は、温度検出器により検出された混合蒸気の温度が、所定の温度範囲となるように、蒸気流量調整弁を制御し、主蒸気分岐ラインを流れる高温蒸気の流量を調整する。このため、グランド蒸気レシーバに供給される蒸気の温度を所定の温度範囲内にすることができる。
【0026】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)に記載のタービングランド蒸気供給システムにおいて、
前記制御装置は、
前記所定の温度範囲の上限温度が、前記蒸気タービンの高負荷運転時における前記蒸気タービンの前記グランド部の温度であり、前記所定の温度範囲の下限温度が、前記蒸気タービンの高負荷運転時における前記蒸気タービンの前記グランド部の温度よりも100℃低い温度であるように設定される。
【0027】
上記所定の温度範囲の下限温度を、蒸気タービンの高負荷運転時における蒸気タービンのグランド部の温度に近づけるほど、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わる際に発生するパッキン環の縮みは抑制される。しかしながら、一方において、温度範囲が狭くなるため、蒸気流量調整弁が頻繁に作動するハンチングが発生する虞が高くなる。本発明者らが鋭意研究したところ、上記所定の温度範囲の下限温度を、蒸気タービンの高負荷運転時における蒸気タービンのグランド部の温度よりも100℃低い温度に設定しても、グランド部のパッキン環の縮みを抑制でき、タービンロータとパッキン環との接触を防止できることを確認した。よって、所定の温度範囲の上限温度および下限温度を上記(9)に記載の実施形態のとおり設定することで、タービンロータとパッキン環との接触を防止できるとともに、蒸気流量調整弁においてハンチングが発生することを防止できる。
【0028】
(10)本発明の少なくとも一つの実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システムの運用方法は、
主蒸気ラインから供給される高温蒸気によって駆動する蒸気タービンのグランド部をシールするグランド蒸気を供給するためのタービングランド蒸気供給システムの運用方法であって、
前記タービングランド蒸気供給システムは、
前記グランド蒸気を貯留するグランド蒸気レシーバと、
前記高温蒸気とは異なる供給源から供給され、且つ、前記高温蒸気よりも低温の低温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給する低温蒸気供給ラインと、
前記蒸気タービンの前記グランド部と前記グランド蒸気レシーバとを連通するグランド蒸気流通ラインと、
前記主蒸気ラインを流れる前記高温蒸気を前記グランド蒸気レシーバに供給するための主蒸気分岐ラインと、を備え、
前記主蒸気分岐ラインは、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整可能な蒸気流量調整弁を含み、
前記タービングランド蒸気供給システムの運用方法は、
前記蒸気混合装置で混合された混合蒸気の温度を検出する温度検出ステップと、
前記混合蒸気の温度が、所定の温度範囲となるように、前記主蒸気分岐ラインを流れる前記高温蒸気の流量を調整する流量調整ステップと、を備える。
【0029】
上記(10)に記載のタービングランド蒸気供給システムの運用方法によれば、上記(1)に記載の実施形態と同様の効果を奏する。また、温度検出ステップによって、蒸気混合装置で混合された混合蒸気の温度を検出し、流量調整ステップによって、混合蒸気の温度が所定の温度範囲となるように主蒸気分岐ラインを流れる高温蒸気の流量を調整する。このため、低温蒸気供給ラインを流れる混合蒸気の温度を所定の温度範囲内にすることが可能なタービングランド蒸気供給システムの運用方法を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、蒸気タービンが高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わった際に、グランド蒸気によってグランド部のパッキン環が縮んでタービンロータとパッキン環とが接触する虞がないタービングランド蒸気供給システム及びこの運用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービンの高負荷運転時におけるグランド蒸気の流れを説明するためタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる蒸気タービンの停止時又は低負荷運転時におけるグランド蒸気の流れを説明するためタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる主蒸気分岐ラインの主蒸気ラインに対する接続位置を説明するためのタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
図5】本発明の比較形態にかかるタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。また、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システムの系統図であり、図2は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービンの高負荷運転時におけるグランド蒸気の流れを説明するためタービングランド蒸気供給システムの系統図であり、図3は、本発明の一実施形態にかかる蒸気タービンの停止時又は低負荷運転時におけるグランド蒸気の流れを説明するためタービングランド蒸気供給システムの系統図である。
【0034】
本発明の一実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システム1は、図1に示すように、主蒸気ライン3から供給される高温蒸気HSによって駆動する蒸気タービン10のグランド部10aをシールするグランド蒸気GSを供給するためのものである。先ず、タービングランド蒸気供給システム1について具体的に説明する前に、タービングランド蒸気供給システム1が適用される蒸気タービン10の全体構成について説明する。
【0035】
図示した実施形態のタービングランド蒸気供給システム1は、例えば、LNG船等の船舶の推進用の舶用主機タービン設備に用いられる。蒸気タービン10は、舶用主機タービン設備の主動力機として用いられ、例えば、再熱式の蒸気タービンであり、HPタービン11と、IPタービン(中圧側タービン)13と、LPタービン(低圧側タービン)15と、ASTタービン17と、を備えている。
【0036】
HPタービン11には、主蒸気ライン3を介して主ボイラ43から高温蒸気HSが供給され、これによりHPタービン11が回転駆動される。HPタービン11から排気された蒸気は再加熱されてIPタービン13に供給される。IPタービン13は、再加熱された蒸気により回転駆動される。IPタービン13とHPタービン11とは共通の第1軸12に設けられている。
【0037】
LPタービン15には、IPタービン13から排気される蒸気が供給され、これによりLPタービン15が回転駆動される。LPタービン15から排気された蒸気は凝縮されて復水となる。ASTタービン17は、船舶が後進する際に用いられ、主蒸気ライン3の途中から枝分かれした後進用主蒸気ライン45を介して主ボイラ43からの高温蒸気HSが直接供給され、これによりASTタービン17が回転駆動されるようになっている。また、ASTタービン17とLPタービン15とは共通の第2軸16に設けられている。
【0038】
第1軸12及び第2軸16は、プロペラに繋がる主軸に連結されて、主軸を介してプロペラが回転して船舶の推進力が得られるようになっている。
【0039】
次に、本発明の一実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システム1について、具体的に説明する。本発明の一実施形態にかかるタービングランド蒸気供給システム1は、図1に示したように、グランド蒸気レシーバ20と、低温蒸気供給ライン25と、グランド蒸気流通ライン30と、主蒸気分岐ライン40と、を備えて構成される。
【0040】
グランド蒸気レシーバ20は、蒸気タービン10のグランド部10aをシールするためのグランド蒸気GSを貯留するものである。図示した実施形態では、グランド蒸気レシーバ20は、HPタービン11とLPタービン15との間に配設されている。また、グランド蒸気レシーバ20に貯留されるグランド蒸気GSの圧力を一定にするため、グランド蒸気レシーバ20に連通するグランド蒸気排気ライン47には、一定以上の圧力となった蒸気を排出するスピル弁48が設けられている。
【0041】
低温蒸気供給ライン25は、高温蒸気HSとは異なる供給源23から供給され、且つ、高温蒸気HSよりも低温の低温蒸気LSをグランド蒸気レシーバ20に供給するためのものである。図示した実施形態では、高温蒸気HSの供給源(主ボイラ43)とは異なる供給源23である小型ボイラから供給される低温蒸気LS(メイクアップ蒸気)が流通する。この低温蒸気LSは、船側の所掌となる船内の補機や雑用等に用いられる蒸気であり、本実施形態では、この低温蒸気LSをグランド部10aのシール蒸気として利用する場合を示している。
【0042】
グランド蒸気流通ライン30は、蒸気タービン10のグランド部10aとグランド蒸気レシーバ20とを連通するためのものである。図示した実施形態では、グランド蒸気流通ライン30は、HPタービン11のグランド部11aとグランド蒸気レシーバ20と連通する第1グランド蒸気流通ライン31と、IPタービン13のグランド部13aとグランド蒸気レシーバ20と連通する第2グランド蒸気流通ライン32と、LPタービン15のグランド部15aとグランド蒸気レシーバ20と連通する第3グランド蒸気流通ライン33と、ASTタービン17のグランド部17aとグランド蒸気レシーバ20と連通する第4グランド蒸気流通ライン34とを備える。
【0043】
主蒸気分岐ライン40は、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSをグランド蒸気レシーバ20に供給するためのものである。図示した実施形態では、主蒸気分岐ライン40は、前進用操縦弁50、又は、主蒸気ライン3における前進用操縦弁50よりも上流側に接続されている。前進用操縦弁50は主蒸気ライン3の下流側に設けられている。前進用操縦弁50については後述する。
【0044】
また、図示した実施形態では、前進用操縦弁50と第3グランド蒸気流通ライン33とは、第1主蒸気漏洩ライン53を介して接続されている。また、HPタービン11及びIPタービン13の入口には、ノズル弁55が設けられている。このノズル弁55は主蒸気ライン3に連通し、主蒸気ライン3から流入する高温蒸気HSの流量を加減する。また、ノズル弁55から漏洩する高温蒸気HSは、第1グランド蒸気流通ライン31に接続された第2主蒸気漏洩ライン57、及び第2グランド蒸気流通ライン32に接続された第3主蒸気漏洩ライン58に流通するように構成されている。
【0045】
また、図示した実施形態では、ASTタービン17の入口には、後進用操縦弁60を介して後進用主蒸気ライン45が接続されている。後進用操縦弁60は、後進用主蒸気ライン45から流入される主蒸気の圧力と流量を調整する。後進用操縦弁60には、主蒸気ライン3から供給されて漏洩する主蒸気をグランド蒸気レシーバ20に流すための第4主蒸気漏洩ライン59が接続されている。
【0046】
このように構成されたタービングランド蒸気供給システム1において、蒸気タービン10の高負荷運転時における蒸気の流れについて、図2を参照しながら説明する。蒸気タービン10の高負荷運転時には、図2に示すように、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSが蒸気タービン10(HPタービン11、IPタービン13、LPタービン15)内を流れるとともに、その一部が蒸気タービン10のグランド部10a(11a、13a、15a、17a)から流出する。そして、グランド部10aから流出した高温蒸気HSは、グランド蒸気流通ライン30(31、32、33,34)を介してグランド蒸気レシーバ20に流入する。本実施形態では、高負荷運転時において、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSの温度は、例えば約555℃であり、グランド部10a(11a、13a、15a、17a)の温度は約370℃である。
【0047】
一方、蒸気タービン10が高負荷運転時から停止時又は低負荷運転に変更された場合には、図3に示すように、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSは、前進用操縦弁50、主蒸気分岐ライン40及び低温蒸気供給ライン25を介してグランド蒸気レシーバ20に供給される。また、低温蒸気LS(メイクアップ蒸気)は、低温蒸気供給ライン25を介してグランド蒸気レシーバ20に供給される。このため、低温蒸気LSと高温蒸気HSはグランド蒸気レシーバ20で混合された蒸気となり、この混合された蒸気は高温蒸気HSの温度(例えば、約555℃)よりも低く且つ低温蒸気LS(例えば、約175℃)の温度より高い温度(例えば、約300℃、運転状況によって、270℃〜370℃の範囲に変動する。)になって、グランド蒸気としてグランド蒸気流通ライン30(31、32、33、34)を通って蒸気タービン10のグランド部10aに供給される。ここで、蒸気タービン10が高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わったときには、この低温蒸気LSと高温蒸気HSとの混合蒸気KSがグランド蒸気としてグランド部10a(11a、13a、15a、17a)に供給される。
【0048】
このように、本実施形態のタービングランド蒸気供給システム1は、グランド蒸気GSを貯留するグランド蒸気レシーバ20と、高温蒸気HSとは異なる供給源23から供給され、且つ、高温蒸気HSよりも低温の低温蒸気LSをグランド蒸気レシーバ20に供給する低温蒸気供給ライン25と、蒸気タービン10のグランド部10aとグランド蒸気レシーバ20とを連通するグランド蒸気流通ライン30と、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSをグランド蒸気レシーバ20に供給するための主蒸気分岐ライン40と、を備えている。このため、蒸気タービン10が高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わったときに、グランド部10aの温度は高温蒸気HSの温度に近い温度であり、グランド蒸気GSの温度は低温蒸気LSの温度よりも高い温度になっているので、グランド蒸気GSをグランド部10aに供給してもグランド部10aの急冷によるパッキン環の縮みを抑制することができる。これにより、タービンロータとパッキン環とが接触する虞を防止可能なタービングランド蒸気供給システム1を実現することができる。
【0049】
また、幾つかの実施形態では、図2及び図3に示すように、主蒸気ライン3は、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSの流れをON/OFFするための前進用操縦弁50を含み、主蒸気分岐ライン40は、前進用操縦弁50、又は、主蒸気ライン3における前進用操縦弁50よりも上流側に接続される。図示した実施形態では、主蒸気ライン3の下流側に前進用操縦弁50が設けられている。前進用操縦弁50は、蒸気タービン10が高負荷運転時には(図2参照)、前進用操縦弁50を全開状態にして主蒸気ライン3からの高温蒸気HSをHPタービン11及びIPタービン13に供給する。また、蒸気タービン10が低負荷運転時には(図3参照)、前進用操縦弁50の開度を小さくして主蒸気ライン3からの高温蒸気HSを低流量にした状態でHPタービン11、IPタービン13及び主蒸気分岐ライン40に供給する。また蒸気タービン10が停止時には(図3参照)、前進用操縦弁50を閉じた状態にして、主蒸気ライン3からHPタービン11、IPタービン13及び主蒸気分岐ライン40への主蒸気の供給を遮断するように構成されている。
【0050】
なお、前進用操縦弁50に接続される主蒸気分岐ライン40は、前進用操縦弁50の本体内に収容された弁体よりも上流側の本体内に形成された蒸気室内に連通するように接続される。このため、主蒸気分岐ライン40は、前進用操縦弁50がOFF状態(弁体が閉止している状態)であっても蒸気室を介して主蒸気ライン3に連通しており、高温蒸気HSは蒸気室を介して主蒸気分岐ライン40に流通可能である。
【0051】
このように、蒸気タービン10に供給される高温蒸気HSは、前進用操縦弁50がOFF状態であっても、主蒸気ライン3における前進用操縦弁50の上流側までは常に供給されている。このため、上記の実施形態によれば、前進用操縦弁50のON/OFFに関わらず、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSを、主蒸気分岐ライン40を介してグランド蒸気レシーバ20に供給することが出来る。また、前進用操縦弁50より上流側の主蒸気ライン3は、船側の所掌とされる場合が多い。このため、主蒸気分岐ライン40を前進用操縦弁50に接続する構成とすることで、機関側が所掌する範囲内で主蒸気分岐ライン40を設けることが出来る。
【0052】
また、幾つかの実施形態では、主蒸気分岐ライン40は、高温蒸気HSの圧力を減圧する蒸気減圧装置62を含む。図示した実施形態では、例えば、高温蒸気HSの絶対圧力が約100ataであり、低温蒸気供給ライン25を流れる低温蒸気LSの絶対圧力が約4〜5ataである場合のように、高温蒸気HSと低温蒸気LSの圧力差が大きいと、高温蒸気HSと低温蒸気LSとの混合がし難くなる。そこで、主蒸気分岐ライン40に蒸気減圧装置62を設けることで、高温蒸気HSの圧力を低下させることができる。従って、高温蒸気HSと低温蒸気LSの圧力差が小さくなり、高温蒸気HSと低温蒸気LSとの混合を容易にすることができる。
【0053】
また、図示した実施形態では、蒸気減圧装置62は、複数のオリフィスを直列的に設けて構成される多段オリフィスからなるように構成される。多段オリフィスによって高温蒸気HSを所定の圧力まで確実に減圧することが出来るとともに、例えば蒸気減圧装置62として圧力調整弁を用いる場合と比べて、上記減圧装置のコストを安価にすることができる。
【0054】
また、幾つかの実施形態では、低温蒸気供給ライン25は、高温蒸気HSと低温蒸気LSとを混合する蒸気混合装置65を含み、主蒸気分岐ライン40は、蒸気混合装置65に接続されるように構成される。図示した実施形態では、蒸気混合装置65は、低温蒸気供給ライン25の上流側に設けられ、蒸気混合装置65に主蒸気分岐ライン40が接続されている。
【0055】
主蒸気分岐ライン40から低温蒸気供給ライン25に供給される高温蒸気HSは、その圧力や流量によって低温蒸気供給ライン25を流れる低温蒸気LSとの混合状態が変化する。そこで、低温蒸気供給ライン25が蒸気混合装置65を含むことで、高温蒸気HSの圧力や流量が変化した場合であっても、高温蒸気HSと低温蒸気LSとを一定の混合状態にすることができる。
【0056】
また、幾つかの実施形態では、低温蒸気供給ライン25は、蒸気混合装置65よりも上流側に位置する逆止弁67を含むように構成される。図示した実施形態では、逆止弁67は低温蒸気供給ライン25の上流側から下流側への流れを許容する一方、下流側から上流側への流れを遮断するように構成されている。
【0057】
主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSは、低温蒸気供給ライン25を流れる低温蒸気LSよりも高圧である。このため、高温蒸気HSが主蒸気分岐ライン40を介して蒸気混合装置65に流入した場合、高温蒸気HSが蒸気混合装置65を介して低温蒸気供給ライン25の上流側へ逆流する虞がある。そこで、蒸気混合装置65よりも上流側に位置する逆止弁67を設けることで、低温蒸気供給ライン25における高温蒸気HSの逆流を防止することができる。
【0058】
また、幾つかの実施形態では、主蒸気分岐ライン40は、主蒸気分岐ライン40を流れる高温蒸気HSの流量を調整可能な蒸気流量調整弁69を含み、低温蒸気供給ライン25の蒸気混合装置65の下流側には、蒸気混合装置65で混合された混合蒸気KSの温度を検出する温度検出器71が設けられ、温度検出器71により検出された混合蒸気KSの温度が、所定の温度範囲となるように、蒸気流量調整弁69を制御する制御装置73をさらに備える。図示した実施形態では、蒸気流量調整弁69は弁の開度を調整可能な電磁式等の流量制御弁である。蒸気流量調整弁69の開度が制御装置73によって制御される。
【0059】
制御装置73は、温度検出器71により検出された混合蒸気KSの温度が、所定の温度範囲となるように、蒸気流量調整弁69を制御し、主蒸気分岐ライン40を流れる高温蒸気HSの流量を調整する。このため、グランド蒸気レシーバ20に供給される蒸気の温度を所定の温度範囲内にすることができる。
【0060】
また、幾つかの実施形態では、制御装置73は、所定の温度範囲の上限温度が、蒸気タービン10の高負荷運転時における蒸気タービン10のグランド部10a(11a、13a、15a、17a)の温度であり、所定の温度範囲の下限温度が、蒸気タービン10の高負荷運転時における蒸気タービン10のグランド部10a(11a、13a、15a、17a)の温度よりも100℃低い温度であるように設定される。
【0061】
上記所定の温度範囲の下限温度を、蒸気タービン10の高負荷運転時における蒸気タービン10のグランド部10aの温度(例えば約370℃)に近づけるほど、蒸気タービン10が高負荷運転から停止又は低負荷運転に切り替わる際に発生するパッキン環の縮みは抑制される。しかしながら、一方において、温度範囲が狭くなるため、蒸気流量調整弁69が頻繁に作動するハンチングが発生する虞が高くなる。本発明者らが鋭意研究したところ、上述した所定の温度範囲の下限温度を、蒸気タービン10の高負荷運転時における蒸気タービン10のグランド部10aの温度よりも100℃低い温度に設定しても、グランド部10aのパッキン環の縮みを抑制でき、タービンロータとパッキン環との接触を防止できることを確認した。よって、所定の温度範囲の上限温度および下限温度を上述した実施形態のとおり設定することで、タービンロータとパッキン環との接触を防止できるとともに、蒸気流量調整弁69においてハンチングが発生することを防止できる。
【0062】
また、幾つかの実施形態では、タービングランド蒸気供給システム1は、グランド蒸気GSを貯留するグランド蒸気レシーバ20と、高温蒸気HSとは異なる供給源23から供給され、且つ、高温蒸気HSよりも低温の低温蒸気LSをグランド蒸気レシーバ20に供給する低温蒸気供給ライン25と、蒸気タービン10のグランド部10aとグランド蒸気レシーバ20とを連通するグランド蒸気流通ライン30と、主蒸気ライン3を流れる高温蒸気HSをグランド蒸気レシーバ20に供給するための主蒸気分岐ライン40と、を備え、主蒸気分岐ライン40は、主蒸気分岐ライン40を流れる高温蒸気HSの流量を調整可能な蒸気流量調整弁69を含み、タービングランド蒸気供給システム1の運用方法は、蒸気混合装置65で混合された混合蒸気KSの温度を検出する温度検出ステップと、混合蒸気KSの温度が、所定の温度範囲となるように、主蒸気分岐ライン40を流れる高温蒸気HSの流量を調整する流量調整ステップと、を備える。
【0063】
このような実施形態によれば、温度検出ステップによって、蒸気混合装置65で混合された混合蒸気KSの温度を検出し、流量調整ステップによって、混合蒸気KSの温度が所定の温度範囲となるように低温蒸気供給ライン25を流れる高温蒸気HSの流量を調整する。このため、低温蒸気供給ライン25を流れる混合蒸気KSの温度を所定の温度範囲内にすることが可能なタービングランド蒸気供給システム1の運用方法を実現できる。
【0064】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。図4は、本発明の他の実施形態にかかる主蒸気分岐ライン40の主蒸気ライン3に対する接続位置を説明するためのタービングランド蒸気供給システム1の系統図である。例えば、前述した実施形態では、主蒸気分岐ライン40を前進用操縦弁50に接続した場合を示したが、図4(a)に示すように、主蒸気分岐ライン40は前進用操縦弁50に接続されたドレンライン81に接続されて、前進用操縦弁50を介してドレンライン81に連通している。図示した実施形態では、ドレンライン81には上流側から下流側へ向かってオリフィス82、流量調整弁83、フラッシュチャンバ84が設けられている。この場合、ドレンライン81は、前進用操縦弁50の本体内に収容された弁体よりも上流側の本体内に形成された蒸気室内に連通するように接続される。このため、ドレンライン81は弁体の開閉に拘わらずに主蒸気ライン3に連通して、高温蒸気HSは、蒸気室を介してドレンライン81に流通可能である。
【0065】
また、図4(b)に示すように、主蒸気分岐ライン40は前進用操縦弁50に接続された主蒸気ライン3のうち前進用操縦弁50よりも上流側の主蒸気ライン3に接続されてもよい。
【0066】
また、低温蒸気供給ライン25には、混合蒸気KSの流通を許容又は遮断する流量調整弁77を設けてもよい。図示した実施形態では、流量調整弁77はON/OFF弁であり、混合蒸気が必要なときだけ開弁するように構成される。流量調整弁77は、開閉検知センサ79(例えば、リミットスイッチ)によって流量調整弁77の開閉状態が検知されてもよい。この場合、開閉検知センサ79によって流量調整弁77が開状態であることを検知されているときに、制御装置73は蒸気流量調整弁69の開度を制御する。また、低温蒸気供給ライン25の流量調整弁77と蒸気混合装置との間の低温蒸気供給ライン25上には、上流側から下流側に向かってドレンセパレータ85及びYストレーナ86が設けられてもよい。この場合、低温蒸気供給ライン25を流れる蒸気に含まれる水分がドレンセパレータ85によって分離・除去され、また蒸気に含まれる異物やごみがYストレーナ86によって除去される。そして、異物等の除去時に流出する蒸気はドレンライン81に送られる。
【符号の説明】
【0067】
1 タービングランド蒸気供給システム
3 主蒸気ライン
5 歯車減速機
10 蒸気タービン
10a、11a、13a、15a、17a グランド部
11 HPタービン
12 第1軸
13 IPタービン
15 LPタービン
16 第2軸
17 ASTタービン
20 グランド蒸気レシーバ
23 供給源
25 低温蒸気供給ライン
30 グランド蒸気流通ライン
31 第1グランド蒸気流通ライン
32 第2グランド蒸気流通ライン
33 第3グランド蒸気流通ライン
34 第4グランド蒸気流通ライン
40 主蒸気分岐ライン
43 主ボイラ
45 後進用主蒸気ライン
47 グランド蒸気排気ライン
48 スピル弁
50 前進用操縦弁
53 第1主蒸気漏洩ライン
55 ノズル弁
57 第2主蒸気漏洩ライン
58 第3主蒸気漏洩ライン
59 第4主蒸気漏洩ライン
60 後進用操縦弁
62 蒸気減圧装置
65 蒸気混合装置
67 逆止弁
69 蒸気流量調整弁
71 温度検出器
73 制御装置
75 主蒸気連通ライン
77、83 流量調整弁
79 開閉検知センサ
81 ドレンライン
82 オリフィス
84 フラッシュチャンバ
85 ドレンセパレータ
86 Yストレーナ
GS グランド蒸気
HS 高温蒸気
KS 混合蒸気
LS 低温蒸気
図1
図2
図3
図4
図5