特許第6775982号(P6775982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000002
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000003
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000004
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000005
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000006
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000007
  • 特許6775982-梁の耐火構造及び梁の耐火方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775982
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】梁の耐火構造及び梁の耐火方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   E04B1/94 D
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-70606(P2016-70606)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-179959(P2017-179959A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】針金 奏一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良清
(72)【発明者】
【氏名】井田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】大藤 崇司
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−013224(JP,A)
【文献】 特開平02−296946(JP,A)
【文献】 実公昭52−024985(JP,Y1)
【文献】 実開昭60−015505(JP,U)
【文献】 特開2015−031085(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0051431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/94
E04F13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部とウエブ部とで構成されたH形鋼である梁の耐火構造であって、
前記梁には、前記フランジ部に対して取付けられている梁取付部と、該梁取付部から延出する耐火部材固定部と、を備えた取付金物が備えられており、
前記ウエブ部と前記フランジ部とで形成される空間である梁空間には、分割構成された複数の耐火部材のうちの一部である一つの一方耐火部材の少なくとも一部分が挿入され、
前記梁は、前記取付金物及び前記一方耐火部材と共に、複数の前記耐火部材のうちの他部である他方耐火部材により被覆されており
前記取付金物は、一方の前記フランジ部の外側面に取付けられる第1取付金物と、他方の前記フランジ部の内側面に取付けられる第2取付金物と、を有して構成されており、
前記第1取付金物を構成する前記耐火部材固定部は、前記梁取付部から、他方の前記フランジ部と離れる方向に起立する第1起立部と、該第1起立部の端部から前記フランジ部と平行となるように前記梁から離れる方向に延出する第1延出部と、を有して構成され、
前記第2取付金物を構成する前記耐火部材固定部は、前記梁取付部から一方の前記フランジ部方向へと起立する第2起立部として構成されるものであり、
前記他方耐火部材のうち、前記フランジ部の小口間に亘ると共に小口を被覆するように配置されている部分の外側から、締結部材が前記他方耐火部材と前記第1起立部を貫通し、かつ、締結部材が前記他方耐火部材と前記第2起立部を貫通していることを特徴とする梁の耐火構造。
【請求項2】
前記他方耐火部材のうち、一方の前記フランジ部の外側面を覆うように配置された部分の外側からは、前記第1延出部へ向けて締結部材が貫通していることを特徴とする請求項に記載の梁の耐火構造。
【請求項3】
前記耐火部材は、
前記他方耐火部材を構成し、他方の前記フランジ部を、その外側面から、他方の前記フランジ部の小口を覆うように包み込む第1の耐火部材と、
前記一方耐火部材である第2の耐火部材と、
前記他方耐火部材を構成し、前記フランジ部間に亘るように配置された第3の耐火部材と、
前記他方耐火部材を構成し、一方の前記フランジ部の外側面を被覆する第4の耐火部材と、に分割構成されており、
前記第3の耐火部材における他方の前記フランジ部側の端部と、前記第1の耐火部材における他方の前記フランジ部の小口を被覆して延びる端部と、を通り、前記第3の耐火部材の外側から前記第2起立部に向けて締結部材が貫通し、
前記第3の耐火部材における一方の前記フランジ部側の端部を通り、一方の該フランジ部の外側から、前記第1起立部に向けて締結部材が貫通し、
前記第4の耐火部材の外側から、前記第1延出部に向けて、締結部材が貫通していることを特徴とする請求項又は請求項に記載の梁の耐火構造。
【請求項4】
前記第1の耐火部材における他方の前記フランジ部の小口を被覆して延びる端部は、前記第2起立部の外側面に当接しており、
前記第3の耐火部材における一方の前記フランジ部側の端部は、前記第1起立部に当接していることを特徴とする請求項に記載の梁の耐火構造。
【請求項5】
前記第2の耐火部材及び前記第3の耐火部材は、前記梁の長手方向に複数個並列しており、
隣接する前記第2の耐火部材間に形成される、前記フランジ部間を渡る方向に延びる境界部は、
隣接する前記第3の耐火部材間に形成される、前記フランジ部間を渡る方向に延びる境界部と、連通しない位置に配置されていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の梁の耐火構造。
【請求項6】
H形鋼である梁に対し、耐火部材を取付けることにより、梁の耐火性能を向上させるための方法であって、
前記梁を構成するフランジ部に対して取付けられる梁取付部と、該梁取付部から延出する耐火部材固定部と、を備えた取付金物を、前記フランジ部に対して取付ける金物取付工程と、
分割構成された複数の前記耐火部材のうちの一部である一つの一方耐火部材の少なくとも一部分を、前記梁を構成するウエブ部と前記フランジ部とで形成される空間である梁空間に挿入し、複数の前記耐火部材のうちの他部である他方耐火部材により、前記取付金物と共に前記梁の外周部分を覆う耐火部材配設工程と、を行い、
前記金物取付工程においては、
前記梁取付部から他方の前記フランジ部と離れる方向に起立する第1起立部と、該第1起立部の端部から前記フランジ部と平行となるように前記梁から離れる方向に延出する第1延出部と、を有する前記耐火部材固定部を備えた第1取付金物を、一方の前記フランジ部の外側面に対して取付けることと、
前記梁取付部から一方の前記フランジ部方向へと起立する第2起立部を有する前記耐火部材固定部を備えた第2取付金物を、他方の前記フランジ部の内側面に取付けることとし、
前記耐火部材配設工程においては、前記他方耐火部材のうち、前記フランジ部の小口間に亘ると共に小口を被覆するように配置されている部分の外側から、締結部材を前記他方耐火部材と前記第1起立部に対して貫通させ、かつ、締結部材を前記他方耐火部材と前記第2起立部に対して貫通させることを特徴とする梁の耐火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火部材を使用した梁の耐火構造及び梁の耐火方法に係り、特に、施工性と耐火基準を双方満足することが可能となった梁の耐火構造及び梁の耐火方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅においては、耐火対策を講じることが義務付けられることがある。
例えば、鋼製梁(H形鋼等)においては、様々な方式で、耐火基準に合致するよう耐火対策が構築されている(例えば、特許文献1乃至特許文献4等参照)。
特許文献1には、鉄鋼材の耐火被覆構造が開示されている。
特許文献1の技術においては、鉄鋼材(H形鋼)の周囲を囲うように耐火板が配置される構成をとる。
【0003】
また、特許文献2の技術では、H形鋼の両フランジ部間及びウエブ部にて形成される空間に、耐火性能を有する矩形状板を嵌合させる構成をとる。
この技術は、H形鋼の両フランジ部間及びウエブ部にて形成される空間に、耐火ボードを嵌め込む構成であるが、この耐火ボードの下端側には、鉤状の挟持部を有する金物が取付けられており、この金物でH形鋼のフランジを挟持することで、H形鋼に対して耐火ボードを取付ける構成である。
【0004】
また、特許文献3の技術では、梁のH形鋼の両フランジ部間及びウエブ部にて形成される空間に、ロックウールを嵌め込み、H形鋼の両フランジの外面にはケイ酸カルシウム板を配置している。そして、ロックウールの外側面を覆うと共に、両ケイ酸カルシウム板の外側面架橋するように配置される平面視略コ字形状の被覆板2枚によってロックウール及びケイ酸カルシウム板が固定されるようになっている。
つまり、平面視略コ字形状の被覆板2枚を中合わせに対面させることで、内部に直方体状の空間を形成し、この空間に、ロックウールとケイ酸カルシウム板と共にH形鋼を配置することとなる。そして、2枚の被覆板の突き合わせ部分を結合板で留め付けることにより、ロックウールとケイ酸カルシウム板は、H形鋼に対して固定される。この被覆板は積層構造となっており、外側は金属板及び内側は熱膨張性耐火材で構成されている。
【0005】
更に、特許文献4の技術では、耐火被覆材をH形鋼の梁に保持できるランナー固定金具が開示されている。
このランナー固定金具は、平板上の取付け部(下地材を取付ける部分)と、この端部からU字状に屈曲して折り返されるように延出するブラケットにより形成されている。この取付け部からは、ボルトの脚部が突出している。このボルトの脚部は、取付け部に形成された雌ネジに螺合した状態で、上方へ向けて起立している。なお、このボルトの脚部は、ブラケットの端部側に覆われる位置に、このブラケット端部側に向けて突出しており、ブラケットの端部側において、そのボルトの脚部の直上には蝶ネジが螺合する雌ネジが形成されている。
施工する際には、耐火被覆材が取付けられた梁のフランジ端部をブラケットが挟み込むように、当該ランナー固定金具を差し込んだ後、ボルト及び蝶ネジをねじ込み(つまり、下方から上方に向けてボルトをねじ込むと共に、上方から下方に向けて蝶ネジをねじ込み)、ボルト上端部と蝶ネジ上端部とで、梁のフランジを挟持する。このとき、ボルト及び蝶ネジは、耐火被覆材を押し破って進行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−003288号公報
【特許文献2】特開2011−021346号公報
【特許文献3】特開2013−256844号公報
【特許文献4】特許第3477005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、鋼製の梁(特に、H形鋼)に耐火性の部材を配置するための技術は、かねてより様々に提案されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、耐火板を鉄鋼材に取付けるために、溶接ピンを使用する必要がある。このため、このような取付方法であると、溶接作業を行う必要性があり、煩雑となる。また、通常作業員とは別の専門工が必要となり、スケジュール調整の必要がある。また、特に、狭小な空間に配置された梁(例えば、直近に外壁が控えている梁等)に耐火施工する場合には、作業空間が小さく、溶接作業自体が極めて困難であり作業効率が悪い。
このため、溶接作業を回避するために、特許文献2乃至特許文献4に開示されたような技術が提案されているが、特許文献2の技術では、H形鋼のフランジ小口を耐火材で覆うことができず、耐火性という面からは好ましくない。
更に、特許文献3及び特許文献4の技術では、溶接作業を必要とすることなく、H形鋼で構成された梁の小口を覆うことができるが、特許文献3の技術では、積層構造を有する被覆材であると共に、梁の長手方向全長に亘って覆う必要があり、コスト的に不利である。また、大きな被覆材2枚を、ロックウール及びケイ酸カルシウム板が配置された梁を挟み込むように配置した後、結合板で係止するという、大掛かりな作業が必要であり、作業性が良好とはいえない。
また、特許文献4の技術では、耐火被覆材が配置された梁のフランジにブラケットに挟み込む際には、作業員が耐火被覆材を保持しながら作業を行う必要があり、特に高所作業においては、作業性が良好とはいえない。更に、梁に外壁等が迫っている狭小箇所における作業は極めて困難である。
このように、従来技術において、良好な施工性及び高い耐火性を双方具備した技術はなく、これらを兼ね備えた技術の開発が求められていた。
つまり、更なる高い耐火性を備えるためには、梁全体を効率良く耐火被覆材で覆うことが重要であり、特に、H形鋼のフランジ小口等まできめ細かく覆うことが望ましい。
しかしながら、実際の現場での作業においては、高所での作業であったり狭小地での作業であったりと、施工することが困難な箇所も少なくない。
このため、更なる高い耐火性を備えるだけではなく、施工性もまた良好となる技術の開発が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、鋼製の梁に対して容易に施工可能であると共に、耐火性能を向上させることが可能な梁の耐火構造及び梁の耐火方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明に係る梁の耐火構造によれば、フランジ部とウエブ部とで構成されたH形鋼である梁の耐火構造であって、前記梁には、前記フランジ部に対して取付けられている梁取付部と、該梁取付部から延出する耐火部材固定部と、を備えた取付金物が備えられており、前記ウエブ部と前記フランジ部とで形成される空間である梁空間には、分割構成された複数の耐火部材のうちの一部である一つの一方耐火部材の少なくとも一部分が挿入され、前記梁は、前記取付金物及び前記一方耐火部材と共に、複数の前記耐火部材のうちの他部である他方耐火部材により被覆されており、前記取付金物は、一方の前記フランジ部の外側面に取付けられる第1取付金物と、他方の前記フランジ部の内側面に取付けられる第2取付金物と、を有して構成されており、前記第1取付金物を構成する前記耐火部材固定部は、前記梁取付部から、他方の前記フランジ部と離れる方向に起立する第1起立部と、該第1起立部の端部から前記フランジ部と平行となるように前記梁から離れる方向に延出する第1延出部と、を有して構成され、前記第2取付金物を構成する前記耐火部材固定部は、前記梁取付部から一方の前記フランジ部方向へと起立する第2起立部として構成されるものであり、前記他方耐火部材のうち、前記フランジ部の小口間に亘ると共に小口を被覆するように配置されている部分の外側から、締結部材が前記他方耐火部材と前記第1起立部を貫通し、かつ、締結部材が前記他方耐火部材と前記第2起立部を貫通していることにより解決される。
また、上記課題は、本発明に係る梁の耐火方法によれば、H形鋼である梁に対し、耐火部材を取付けることにより、梁の耐火性能を向上させるための方法であって、前記梁を構成するフランジ部に対して取付けられる梁取付部と、該梁取付部から延出する耐火部材固定部と、を備えた取付金物を、前記フランジ部に対して取付ける金物取付工程と、分割構成された複数の前記耐火部材のうちの一部である一つの一方耐火部材の少なくとも一部分を、前記梁を構成するウエブ部と前記フランジ部とで形成される空間である梁空間に挿入し、複数の前記耐火部材のうちの他部である他方耐火部材により、前記取付金物と共に前記梁の外周部分を覆う耐火部材配設工程と、を行い、前記金物取付工程においては、前記梁取付部から他方の前記フランジ部と離れる方向に起立する第1起立部と、該第1起立部の端部から前記フランジ部と平行となるように前記梁から離れる方向に延出する第1延出部と、を有する前記耐火部材固定部を備えた第1取付金物を、一方の前記フランジ部の外側面に対して取付けることと、前記梁取付部から一方の前記フランジ部方向へと起立する第2起立部を有する前記耐火部材固定部を備えた第2取付金物を、他方の前記フランジ部の内側面に取付けることとし、前記耐火部材配設工程においては、前記他方耐火部材のうち、前記フランジ部の小口間に亘ると共に小口を被覆するように配置されている部分の外側から、締結部材を前記他方耐火部材と前記第1起立部に対して貫通させ、かつ、締結部材を前記他方耐火部材と前記第2起立部に対して貫通させることにより解決される。
【0010】
このように、本発明に係る梁の耐火構造では、梁に取付金物が備えられる共に、耐火部材は分割されて使用される。
このように、分割された耐火部材は、その一部が梁空間に挿入される。これにより、梁と耐火部材のうちの一部とで略角柱状の外形を有することとなり、この略角柱状の外形を、取付部材と共に、耐火部材のうちの他部で被覆する構成とした。
なお、本発明は、梁に対して施される耐火構造であるため、「略角柱状の外形」は、長手方向(通常、水平方向)に延びる側面を有する略角柱状の外形となる。そして、「被覆される」のは、この外形の側面相当部分(4面)のみであってもよいし、両底面を含む全体(6面)であってもよい。好ましくは、この外形の側面相当部分(4面)は被覆し、両底面は必要に応じて被覆するよう構成されているとよい。
このように構成されているため、梁空間は耐火部材で充填されると共に、H形鋼のフランジ部小口を含む梁外周を効果的に被覆することができる。
更に、耐火部材のうちの他部の外側からは、取付部材の耐火部材固定部に向けて締結部材が貫通している。これは、つまり、当該部分にて耐火部材のうちの他部が梁に取付けられているということであり、この構造は、外側から、締結部材を耐火部材固定部に向けて打ち込むことによって簡易に実現される。また、このとき、梁取付部から延出している耐火部材固定部に、耐火部材のうちの他部を取付けることができるため、フランジ部の小口よりも、耐火部材のうちの他部の端部を、耐火部材固定部側(延出側であり、通常上下方向であってフランジ部と離れる方向)へと延出させることができる。
つまり、フランジ部の小口から、耐火部材のうちの他部の端部を離して配置することができ、よって、この小口部分に境界部(つまり、間隙)を位置させない配置が可能となる。よって、小口部分の耐火性能をより向上させることができる。
以上のように、本発明に係る梁の耐火構造は、溶接等の特殊な作業無しに容易に実現できる構造となる。
【0011】
このとき、具体的な構成としては、本発明に記載のように、前記他方側耐火部材のうち、一方の前記フランジ部の外側面を覆うように配置された部分の外側からは、前記第1延出部へ向けて締結部材が貫通していると好適である。
また、本発明に記載のように、前記耐火部材は、前記他方耐火部材を構成し、他方の前記フランジ部を、その外側面から、他方の前記フランジ部の小口を覆うように包み込む第1の耐火部材と、前記一方耐火部材である第2の耐火部材と、前記他方耐火部材を構成し、前記フランジ部間に亘るように配置された第3の耐火部材と、前記他方耐火部材を構成し、一方の前記フランジ部の外側面を被覆する第4の耐火部材と、に分割構成されており、前記第3の耐火部材における他方の前記フランジ部側の端部と、前記第1の耐火部材における他方の前記フランジ部の小口を被覆して延びる端部と、を通り、前記第3の耐火部材の外側から前記第2起立部に向けて締結部材が貫通し、前記第3の耐火部材における一方の前記フランジ部側の端部を通り、一方の該フランジ部の外側から、前記第1起立部に向けて締結部材が貫通し、前記第4の耐火部材の外側から、前記第1延出部に向けて、締結部材が貫通していると好適である。
このように、取付部材と耐火部材が構成されていると、高い耐火性能を実現できると共に、本発明に係る耐火構造を構築する際には、その作業が容易となる。
【0012】
また、本発明に記載のように、前記第1の耐火部材における他方の前記フランジ部の小口を被覆して延びる端部は、前記第2起立部の外側面に当接しており、前記第3の耐火部材における一方の前記フランジ部側の端部は、前記第1起立部に当接していると、第1起立部と第3の耐火部材との間に無駄な空間ができず、また、締結部材で締結する際も作業が容易となる。
更に、本発明に記載のように、前記第2の耐火部材及び前記第3の耐火部材は、前記梁の長手方向に複数個並列しており、隣接する前記第2の耐火部材間に形成される、前記フランジ部間を渡る方向に延びる境界部は、隣接する前記第3の耐火部材間に形成される、前記フランジ部間を渡る方向に延びる境界部と、連通しない位置に配置されていると、第3の耐火部材の境界部分から梁方向へと侵入しようとする炎や熱が、梁へと直接侵入することを防止することができるため好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、施工性を向上させるために耐火部材を分割して配置しても、高い耐火性能を実現することができる。
また、梁のフランジ部に固定された取付部材により、鋼製の梁に対する耐火構造の構築が容易となる。特に、梁の両フランジ部の小口を、確実に被覆することができ、耐火性能をより向上させることができる。
また、本発明においては、特に、外壁に近接するような狭小な場所に梁が配置されている場合であっても、耐火構造の構築が容易であり、作業性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る耐火構造が設置される箇所を示す斜視説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る取付金物を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る取付金物を梁に配置した状態を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る梁の小口に対する耐火構造の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る耐火構造を示す一部切欠き図である。
図6】本発明の一実施形態に係る取付金物を複数個梁に取付けた際の側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る耐火構造の形成方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、鋼製の梁に対して容易に施工可能であると共に、耐火性能を向上させることが可能な梁の耐火方法及び梁の耐火構造に関するものである。
以下には、本発明の具現化例として、鋼製の梁に対して施される耐火構造と、この耐火構造を形成する方法に関して説明する。
【0016】
図1乃至図7は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は耐火構造が設置される箇所を示す斜視説明図、図2は取付金物を示す斜視図である。この取付金物は、梁に対して固定されるものである。また、図3は取付金物を梁に配置した状態を示す説明図、図4は梁の小口に対する耐火構造の説明図である。図4(a)には、本実施形態に係る耐火構造を示し、図4(b)には、比較例を示している。更に、図5は耐火構造を示す一部切欠き図、図6は取付金物を複数個梁に取付けた際の側面図、図7は耐火構造の形成方法を示す説明図である。
【0017】
<好適な適用箇所の具体例について>
本実施形態に係る耐火構造Sは、外壁との距離が少ない位置に配置された梁に対して良好に適用される。
また、図1に示すように、梁Hが外壁パネルによって囲まれるような構造である袖壁Wにおいては、特に好適に適用される。
このような袖壁Wは、パネル化された外壁である外壁パネルが使用される場合、建方工事終了時点では、外装材まで仕上がった状態となり、このため、梁Hは外壁パネルによって囲まれる。このような状態では、梁Hへ耐火構造を形成することは困難であるため、袖壁Wでは、建方工事中に耐火構造を形成する必要がある。よって、以下の実施形態では、建方工事中に、建方工事を行っている作業員が、溶接等の作業を行うことなく容易に耐火構造を実現できると共に、高い耐火性能を実現する技術を開示する。
【0018】
<梁の構成について>
本実施形態に係る梁Hについて説明する。
本実施形態に係る梁Hは、H形鋼であり、平行に対面して配設される矩形板状のフランジ部H1,H1と、これらフランジ部H1,H1の中央を架橋するウエブ部H2と、を有して構成されている。
そして、これらの構成により、縦断面がH字形状の鋼材の梁Hとなっている。
説明の便宜上、2枚のフランジ部H1,H1とウエブ部H2とで囲まれた略直方体形状の空間を「梁空間K」とすると、この梁空間Kは、ウエブ部H2の両面側に2個形成されることとなる。
また、フランジ部H1のうち、ウエブ部H2が形成される側を向く面を「フランジ部内側面H1a」と記し、反対側を向く面を「フランジ部外側面H1b」と記す。
【0019】
<取付金物の構成について>
次いで、図2により、取付金物1について説明する。
本実施形態に係る取付金物1は、第1取付金物11と、第2取付金物12と、の二種類から構成されている。
図2(a)に第1取付金物11を示し、図2(b)に第2取付金物12を示した。
図2(a)に示すように、第1取付金物11は、矩形平板状の第1梁取付部11aと、この第1梁取付部11aの一辺から第1梁取付部11aに対して垂直なるように起立する矩形状の第1起立部11bと、この第1起立部11bの端辺(第1梁取付部11aと連続する辺と対向する辺)から第1起立部11bに対して垂直となるように延出する第1延出部11cと、を有して構成されている。
また、第1延出部11cは、第1起立部11bに対して第1梁取付部11aが延びている方向と反対側の方向に向かって延出している。
なお、第1起立部11b、第1延出部11cが、「耐火部材固定部」に相当し、第1梁取付部11aが「梁取付部」に相当する。
【0020】
図2(b)に示すように、第2取付金物12は、矩形平板状の第2梁取付部12aと、この第2梁取付部12aの一辺から第2梁取付部12aに対して垂直なるように起立する矩形状の第2起立部12bと、を有して構成された略L字形状の部材である。
なお、第2起立部12bが、「耐火部材固定部」に相当し、第2梁取付部12aが「梁取付部」に相当する。
【0021】
<梁と取付金物との接合について>
以上のように構成された取付金物1は、梁Hのフランジ部H1に接合される。
説明のため、具体的な梁Hを想定し、よって、図3に上下の方向をつける。
梁Hは、フランジ部H1,H1が上下方向に対向するように配置される。
第1取付金物11は、上方に配置されるフランジ部H1のフランジ部外側面H1b(つまり、フランジ部H1の天面)に取付けられる。
第1取付金物11は、第1起立部11bが上方に延び、第1延出部11cが外側(梁Hから水平方向に離れる方向)へと延出するように方向付けられて、第1梁取付部11aと第1起立部11bとの境界部分がフランジ部H1の端辺(長手方向に延びる端辺)に整合するように取付けられる。本実施形態においては、第1梁取付部11aをフランジ部外側面H1b(つまり、フランジ部H1の天面)に溶接することにより両者を予め接合している。しかしながら、これに限られることはなく、締結部材等により、梁Hに予め締結する構成であってもよい。
そして、第1取付金物11は、上方に配置されるフランジ部H1の両端辺(長手方向に延びる端辺)に対し、各々取付けられる。
【0022】
また、第2取付金物12は、下方に配置されるフランジ部H1のフランジ部内側面H1aに取付けられる。
第2取付金物12は、第2起立部12bが上方に延びるように方向付けられて、第2梁取付部12aと第2起立部12bとの境界部分がフランジ部H1の端辺(長手方向に延びる端辺)に整合するように取付けられる。本実施形態においては、第2梁取付部12aをフランジ部内側面H1aに溶接することにより両者を予め接合している。しかしながら、これに限られることはなく、締結部材等により、梁Hに予め締結する構成であってもよい。
そして、第2取付金物12は、下方に配置されるフランジ部H1の両端辺(長手方向に延びる端辺)に対し、各々取付けられる。
【0023】
なお、本実施形態においては、図3(b)に示すように、第1取付金物11及び第2取付金物12は、各々複数使用される。
本実施形態においては、第1取付金物11の直下には、第2取付金物12が配置されるように構成され、これらは、フランジ部H1の長手方向に沿って所定間隔をもって複数個取付けられている。
また、本実施形態においては、取付金物1は、梁HとなるH形鋼に予め溶接された状態で建方工事の現場へと搬入される。よって、後述するが、耐火部材2の配設途中で溶接を行う必要がない。
【0024】
<耐火構造について>
図4及び図5により、梁Hの耐火構造Sについて説明する。
図4(a)が、本実施形態に係る耐火構造Sの例であり、図4(b)は、第1起立部11b及び第2起立部12bが形成された意味を説明するための比較例を示したものである。また、図5には、梁Hの耐火構造Sを斜視図により示しているが、説明のため、一部を切り欠いて図示している。
【0025】
なお、本実施形態においては、第2耐火部材23,23が設置され、略角柱形状の外形を有することとなった梁H及び第2耐火部材23,23の、長手方向に延びる側面相当部分(4面)を、第1下張耐火部材21,第1上張耐火部材22,第3下張耐火部材24,第3上張耐火部材25,第4下張耐火部材26,第4上張耐火部材27で被覆する構成を例示したが、これに限られることはない。つまり、略角柱形状の外形の底面相当部分もまた被覆されていてもよい。これは、例えば、他の新たな耐火部材を底面相当部分に配置してもよいし、上記の第2耐火部材23以外の耐火部材2のうちのいずれかの長手方向長さを延長し、底面相当部分を巻き込むように施工してもよい。
好ましくは、この外形の側面相当部分(4面)は被覆し、両底面は必要に応じて被覆するよう構成されているとよい。
【0026】
本実施形態に係る耐火部材2は、第1下張耐火部材21、第1上張耐火部材22、第2耐火部材23,23(「第2の耐火部材」に相当)、第3下張耐火部材24,24、第3上張耐火部材25,25、第4下張耐火部材26、第4上張耐火部材27、で構成されている。
なお、本実施形態においては、上記のように分割構成された例を示したが、第1下張耐火部材21と第1上張耐火部材22(「第1の耐火部材」に相当)、第3下張耐火部材24と第3上張耐火部材25(「第3の耐火部材」に相当)、第4下張耐火部材26と第4上張耐火部材27(「第4の耐火部材」に相当)、は一体形成されていてもよい。また更に、第2耐火部材23と第3下張耐火部材24が一体形成されていてもよいし、第2耐火部材23と、第3下張耐火部材24と、第3上張耐火部材25とが一体形成されていてもよい。
また、特許請求の範囲に記載のように、「一方耐火部材」と「他方耐火部材」とに分類した場合、第2耐火部材23が「一方耐火部材」に相当し、その他が「他方耐火部材」に相当する。
第1下張耐火部材21は、下方に配置されるフランジ部H1のフランジ部外側面H1bを覆うように配置され、第1上張耐火部材22は、この第1下張耐火部材21を外側から覆うように設置されている。このとき、第1上張耐火部材22は、第1下張耐火部材21の底面から側面に亘って包み込むように覆設される。そして、この第1上張耐火部材22の上端部は、第2取付金物12の第2起立部12bが配置されている位置まで延びている。このため、第1上張耐火部材22の端部側は、下方に設置されたフランジ部H1の小口H11を覆うこととなる。
【0027】
また、第2耐火部材23,23は、梁空間K,Kに内挿されている。なお、図4では、第2耐火部材23とウエブ部H2との間には、空隙が形成されているが、これに限られず、空隙は形成されていなくてもよい。
更に、第3下張耐火部材24は、第2耐火部材23の外側を覆うように配置されており、この第3上張耐火部材25は第3下張耐火部材24の外側と、第1上張耐火部材22の端部側該側面と、を覆うように配置されている。
なお、第3下張耐火部材24及び第3上張耐火部材25は、2個の第2耐火部材23双方の外側に配置される。以下、左右対象に配置される構成は同様であるので、2個の部分で挟まれた空間を説明する場合等、説明が必要な箇所以外は、片側の説明に留める。
【0028】
このように配置されていることにより、下方に設置されたフランジ部H1の小口H11(下方のフランジ部H1の小口H11)は、第1上張耐火部材22と第3上張耐火部材25と、により二重に耐火被覆される。更に、上方に設置されたフランジ部H1の小口H11(上方のフランジ部H1の小口H11)は、第3下張耐火部材24と第3上張耐火部材25と、により二重に耐火被覆される。
また、比較例として、取付金物1を使用せずに、耐火部材2をブロック化して複数配置する構成を図4(b)に示した。
このように構成されていると、梁Hの各部を効果的に耐火被覆することができるが、小口H11に近接する箇所(破線にて囲った部分)には、上下方向に接する耐火部材間の境界部分が水平に走っている。
【0029】
しかしながら、本実施形態においては、第1起立部11bの存在により(これに、締結部材である締結部材Pを締結する構成としたため)、第3下張耐火部材24の上端面及び第3上張耐火部材25の上端面と、第4上張耐火部材27の下面との間に形成される水平方向に走る境界部を小口H11から上方へと離すことができる(境界部が上方に持ち上げられる)。
同様に、第2起立部12bの存在により(これに、締結部材Pを締結する構成としたため)、第1上張耐火部材22の上端面と第3下張耐火部材24の下端面との間に形成される水平方向に走る境界部を小口H11から上方へと離すことができる(境界部が上方に持ち上げられる)。
本実施形態においては、このように、境界部を上下の小口H11から離したため、小口H11に対する耐火性能をより高くすることができる。
【0030】
また、第1取付金物11が配置されている部分においては、第3下張耐火部材24の上端部は、第1起立部11bと第1延出部11cとで形成される内角部分に沿うように配置されている。つまり、第3下張耐火部材24の上端部の内側面は、第1起立部11bの外側面に当接し、第3下張耐火部材24の上端面(天面)は、第1延出部11cの下方面に当接している。更に、第3上張耐火部材25の上端面(天面)は、第1延出部11cの下方面に当接している。
【0031】
なお、第3下張耐火部材24の下方側は、第1ビスP1により、第2取付金物12を構成する第2起立部12bに留め付けられている。つまり、第3下張耐火部材24の下方側には、その外側から第3下張耐火部材24を通って第2起立部12bに向かうように第1ビスP1が打ちこまれており、これにより、第3下張耐火部材24の下方側は、第2取付金物12を介して梁Hに取付けられる。
【0032】
また、第3上張耐火部材25は、その下方が第2取付金物12を構成する第2起立部12bに留め付けられ、上方が第1取付金物11を構成する第1起立部11bに留め付けられている。
詳しくは、第3上張耐火部材25の下方及び第1上張耐火部材22の上端側は、第2ビスP2により、第2取付金物12を構成する第2起立部12bに留め付けられている。つまり、第3上張耐火部材25の下方側には、その外側から、第3上張耐火部材25及び第1上張耐火部材22の上端部を通って第2起立部12bに向かうように第3ビスP3が打ちこまれており、これにより、第3上張耐火部材25の下方側は、第1上張耐火部材22と共に第2取付金物12を介して梁Hに取付けられることとなる。
【0033】
更に、第3下張耐火部材24の上方及び第3上張耐火部材25の上方は、第3ビスP3により、第1取付金物11を構成する第1起立部11bに留め付けられている。つまり、第3上張耐火部材25の上方側には、その外側から、第3上張耐火部材25及び第3下張耐火部材24の上端部を通って第1起立部11bに向かうように第3ビスP3が打ちこまれており、これにより、第3上張耐火部材25の上方側は、第3下張耐火部材24と共に第1取付金物11を介して梁Hに取付けられることとなる。
【0034】
更に、上方のフランジ部H1の天面部分、つまり、第1起立部11b,11b間の空間には、第4下張耐火部材26が挿入されている。これにより、上方のフランジ部外側面H1bは、第4下張耐火部材26で覆われる。
そして、第3下張耐火部材24,24の上端面、第3上張耐火部材25,25上端面、第4下張耐火部材26の上端面を覆うように、第4上張耐火部材27が取付けられる。
第4上張耐火部材27は、第4ビスP4により、第1取付金物11を構成する第1延出部11cに留め付けられている。つまり、第4上張耐火部材27の幅方向両端には、その外側(上方)から第4上張耐火部材27を通って第1延出部11cに向かうように第4ビスP4が打ちこまれ、これにより、第4上張耐火部材27は、第1取付金物11を介して梁Hに取付けられる。
以上のように、取付金物1が固定された梁Hに対して、耐火部材2が配置されて、耐火構造Sを構築している。
【0035】
また、本実施形態においては、更に耐火性能を高めるために、耐火部材2の長手方向の配置もまた改良している。
図5は、この配置が見えるよう、一部を切り欠いて図示している。
通常、使用される耐火部材2は、梁Hの長さの全体を被覆できる長尺状のものが使用されるのではなく、長手方向に複数の耐火部材2が並列するように取付ける。
本実施形態においては、単に、複数の耐火部材2を長手方向に並列させるのではなく、図5に示すように一定の規則性を持って並列させている。
【0036】
本実施形態においては、長手方向に隣接する第2耐火部材23,23間の境界部を「第1境界部U1」、同様に第3下張耐火部材24,24間の境界部を「第2境界部U2」、同様に第3上張耐火部材25,25間の境界部を「第3境界部U3」と、各々記す。
本実施形態においては、幅方向(長手方向と垂直な方向)に直接重なる耐火部材2,2同士の境界部Uは、幅方向に整合する位置にない(連続しない)ように構成されている。
つまり、幅方向に直接重なる第2耐火部材23及び第3下張耐火部材24においては、第1境界部U1と第2境界部U2とは、幅方向に整合しない(連続しない)よう構成されている。同様に、幅方向に直接重なる第3下張耐火部材24及び第3上張耐火部材25においては、第2境界部U2と第3境界部U3とは、幅方向に整合しない(連続しない)よう構成されている。
このように構成されているので、第1境界部U1、第2境界部U2,第3境界部U3は、幅方向に連続することがなく、よって、外側から梁Hに対して直接炎や熱が吹き込むことを有効に防止することができる。
なお、これに限られることはなく、第1境界部U1、第2境界部U2、第3境界部U3全てが幅方向に連続する構成でなければ足りるものである。
【0037】
<梁の耐火方法について>
次いで、図6及び図7により、梁Hに対して耐火部材2を配置して耐火構造Sを形成する方法について説明する。
図7には、耐火部材2の施工順序を説明している。
まず、梁Hに対して、複数個の第1取付金物11及び第2取付金物12を溶接する。
これは、前述したように、上方のフランジ部H1のフランジ部外側面H1b(天面)に第1梁取付部11aを溶接することにより、第1取付金物11は取付けられ、下方のフランジ部H1のフランジ部内側面H1aに第2梁取付部12aを溶接することにより、第2取付金物12が取付けられる。なお、向きは、前述の通り、第1取付金物11は、第1延出部11cが幅方向外側に向かって延出するように規定されて取付けられ、第2取付金物12は、第2起立部12bが上方に向かって起立するように規定されて取付けられる。なお、第1取付金物11は、第1梁取付部11aと第1起立部11bとの境界部分が、上方のフランジ部H1の長手方向に延びる端辺に沿うように配置され、第2取付金物12は、第2梁取付部12aと第2起立部12bとの境界部分が下方のフランジ部H1の長手方向に延びる端辺に沿うように配置される。
そして、図6に示すように、これら第1取付金物11と第2取付金物12とは、フランジ部H1,H1に対して、長手方向に沿って所定間隔毎に複数個溶接されている。
【0038】
このように、図6及び図7(a)に示すように、まず、複数の第1取付金物11及び第2取付金物12をフランジ部H1,H1に溶接する。なお、上述した通り、第1取付金物11及び第2取付金物12の固定方法は、溶接に限られるものではなく、例えば、ボルトによる締結等、必要な強度が確保できる方法であれば、どのような方法で固定されていてもよい。
【0039】
次いで、図7(b)に示すように、下方のフランジ部H1のフランジ部外側面H1bに第1下張耐火部材21を配置し、これを下方から覆うように、第1上張耐火部材22を配置する(図7(c)参照)。このとき、その両上端部が、第2起立部12bの位置まで到達するように、第1上張耐火部材22を配置する。
次いで、図7(d)に示すように、第2耐火部材23を、梁空間K,Kに挿入する。
【0040】
次いで、図7(e)に示すように、第2耐火部材23の外側を覆うように、第3下張耐火部材24を配置する。このとき、第3下張耐火部材24の下端面が、第1上張耐火部材22の上端面と接し、第3下張耐火部材24の上端付近が第1起立部11bの外側面に接すると共にその上端面が第1延出部11cの下面に接するように配置する。
そして、この状態で、第1ビスP1を、第3下張耐火部材24の下方外側から第3下張耐火部材24を通って第2起立部12bに向かうように打ちこみ、これにより、第3下張耐火部材24の下方側を、第2取付金物12を介して梁Hに取付ける。
【0041】
次いで、図7(f)に示すように、第3下張耐火部材24及び第1上張耐火部材22の一部(屈曲して上方向に延出している部分)の外側を覆うように、第3上張耐火部材25が配置される。
そして、この状態で、第2ビスP2を、第3上張耐火部材25の下方外側から、第3上張耐火部材25及び第1上張耐火部材22の上端部(屈曲して上方向に延出している部分の上方端部)を通って第2起立部12bへと打ちこみ、これにより、第3上張耐火部材25の下方側を、第1上張耐火部材22と共に第2取付金物12を介して梁Hに取付ける。
同様に、この状態で、第3ビスP3を、第3上張耐火部材25の上方外側から、第3上張耐火部材25及び第3下張耐火部材24の上端部を通って第1起立部11bへと打ち込み、これにより、第3上張耐火部材25の上方側を、第3下張耐火部材24と共に第1取付金物11を介して梁Hに取付ける。
【0042】
次いで、図7(g)に示すように、上方のフランジ部H1の天面部分、つまり、第1起立部11b,11b間の空間に、第4下張耐火部材26を挿入する。
そして、図7(h)に示すように、第3下張耐火部材24,24の上端面、第3上張耐火部材25,25上端面、第4下張耐火部材26の上端面を覆うように、第4上張耐火部材27を配置する。
そして、この状態で、第4ビスP4を、第4上張耐火部材27の幅方向両端外側(上方)から第4上張耐火部材27を通って第1延出部11cへと打ちこみ、これにより、第4上張耐火部材27を、第1取付金物11を介して梁Hに取付ける。
以上のように、取付金物1が固定された梁Hに対して、耐火部材2を配置及び固定していき、耐火構造Sを構築する。
【0043】
以上のように、上記実施形態に係る梁Hの耐火構造Sでは、耐火部材2を複数に分割し、これらを順次配置していく構成にした。
そして、この際、梁Hに予め取付金物1を複数個配置しておくことで、耐火部材2を固定するに際し、溶接ピン等は利用せず、締結部材Pによる締結にて簡易に耐火部材2を固定することができる。
また、この取付金物1を使用することで、梁Hの小口H11近方に分割配置された耐火部材の境界部(横目地となる部分)が配置されることを有効に防止することができる。このため、耐火性能がより一層向上する。
更に、本実施形態においては、耐火部材2を配置する際に、縦目地となる部分が連続しないように構成している。
つまり、幅方向に積層する各耐火部材2の縦目地が同じ位置に配置されないように、ずらしている。
このため、外側から梁Hへと炎や熱が直接吹き込むことを有効に防止し、より高い耐火性能を実現することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 取付金物
11 第1取付金物
11a 第1梁取付部(梁取付部)
11b 第1起立部(耐火部材固定部)
11c 第1延出部(耐火部材固定部)
12 第2取付金物
12a 第2梁取付部(梁取付部)
12b 第2起立部(耐火部材固定部)
2 耐火部材
21 第1下張耐火部材(他方耐火部材、第1の耐火部材)
22 第1上張耐火部材(他方耐火部材、第1の耐火部材)
23 第2耐火部材(一方耐火部材、第2の耐火部材)
24 第3下張耐火部材(他方耐火部材、第3の耐火部材)
25 第3上張耐火部材(他方耐火部材、第3の耐火部材)
26 第4下張耐火部材(他方耐火部材、第4の耐火部材)
27 第4上張耐火部材(他方耐火部材、第4の耐火部材)
H 梁
H1 フランジ部
H1a フランジ部内側面
H1b フランジ部外側面
H11 小口
H2 ウエブ部
K 梁空間
P 締結部材
P1 第1ビス
P2 第2ビス
P3 第3ビス
P4 第4ビス
W 袖壁
S 耐火構造
U 境界部
U1 第1境界部
U2 第2境界部
U3 第3境界部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7