特許第6775986号(P6775986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775986
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】中栓および中栓を備える容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20201019BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B65D47/20 110
   B65D83/00 G
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-72626(P2016-72626)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-178437(P2017-178437A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】百合 宏哲
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−016909(JP,A)
【文献】 特表平11−508215(JP,A)
【文献】 特開2003−072816(JP,A)
【文献】 特開昭53−025185(JP,A)
【文献】 米国特許第05234138(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円錐台形状の外形を有する本体部、および前記本体部の上面に設けられた少なくとも2つの突起部を備える中栓であって、
前記本体部の上面は、十字のスリットから構成された吐出部が設けられた平坦な中央部、および、外周から前記中央部に向かって下方に傾斜した傾斜部からなり、逆円錐台形状を有しており、
前記本体部は内部に前記スリットによって外部と連通する空洞を有し、前記空洞は略円錐台形状を有し、上面が逆円錐台形状を有しており、
前記突起部は、前記本体部の傾斜部の一部分に配置されており、上端から前記中央部に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、
前記突起部に上方から力が作用すると、前記突起部の傾斜面が前方に倒れ、前記本体部の上面が凹むように変形することにより、前記スリットが開いて前記吐出部として機能することを特徴とする中栓。
【請求項2】
前記本体部の中央部の底面は平坦な面を有することを特徴とする請求項1に記載の中栓。
【請求項3】
前記本体部の上面の傾斜部に前記突起部が対向するように2つ配置されている場合、前記突起部に上方から力が作用した時に、対向する前記突起部は上端が互いに近づいて接触することを特徴とする請求項1または2に記載の中栓。
【請求項4】
前記本体部の上面の傾斜部に前記突起部が3つ以上配置されている場合、前記突起部に上方から力が作用した時に、隣接する前記突起部は上端の一部が互いに接触することを特徴とする請求項1または2に記載の中栓。
【請求項5】
前記突起部が互いに対向して配置されており、前記十字のスリットの少なくとも1つが、1つの前記突起部から対向するもう1つの前記突起部に向かって延伸するように配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中栓。
【請求項6】
前記突起部の垂直方向の断面形状が略三角形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中栓。
【請求項7】
前記本体部の下方に略円筒形の部分が設けられ、前記略円筒形の部分に容器への取り付けに使用される取付部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の中栓。
【請求項8】
前記中栓が、弾性変形可能な材質からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の中栓。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の中栓を備えたことを特徴とする容器。
【請求項10】
前記中栓が口部に取り付けられた容器本体、および前記容器本体に着脱可能な蓋を有することを特徴とする請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記蓋には、前記蓋を閉めた時に、前記中栓の吐出部と当接する突起が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記中栓を前記容器本体の口部に固定するための固定具を有し、
前記固定具は、円筒形の側面と、中央に開口を有する上面とを有し、前記側面の内周面には前記容器本体の口部の外周面と係合する係合部が形成され、前記上面の開口の周囲が、前記中栓に設けられた鍔状の取付部を上方から前記口部の上端に押さえ付けて前記中栓が固定されることを特徴とする請求項10または11に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中栓および中栓を備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
薬品、化粧水などの液体または流動体が収容され、前記液体または流動体を吐出するために、容器の口部に吐出部を有する中栓を取り付けた容器が用いられている。このような容器において前記中栓に力を加えて吐出部から液体等を排出する構造としては、様々な形態がこれまでに用いられている。特に、患部等に先端を押し付けながら液体等を吐出する容器の場合、先端に吐出部だけではなく、患部等と接触する突起状の部材を設けたものが存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、注出口から突出した上下動可能なノズル部材を有する中栓が開示されており、前記ノズル部材を患部に押し当てると、前記ノズル部材が下方に移動することによって、注出口から薬液が吐出される構造が開示されている。また、特許文献2には、ドーム形状の弁部にスリットからなる弁機構を設け、弁部の中央に設けた突起を押すことでスリットが開く構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−143587号公報
【特許文献2】特開2003−72816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように上下動可能なノズルを用いた中栓では、部品数が多くなり構造が複雑になるという問題があり、また、構造が複雑になるとノズル部材の可動不良が生じるという問題があった。
【0006】
特許文献2の構造では、突起に力を加えるとドーム形状の弁部が変形することでスリットが開く構造を用いており、特許文献1よりも簡単な構造を実現しているが、粘性度が高い液体の場合、スリットが十分に開かないと液体が吐出されないことから、突起に対して力を過剰に加えてしまい、いわゆる、ボタ落ちと呼ばれる、液体等が突然大量に吐出されるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、中栓として必要な密閉性を確保しながら、粘性度の高い内容物であっても、スムーズに吐出することができ、さらにボタ落ちを生じることが無い、中栓および前記中栓を備える容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の中栓は、略円錐台形状の外形を有する本体部、および前記本体部の上面に設けられた少なくとも2つの突起部を備える中栓であって、前記本体部の上面は、中央部に十字のスリットから構成された吐出部を備え、前記吐出部に向かって下方に傾斜したすり鉢状を有しており、前記突起部は、前記本体部の上面の下方に傾斜した部分に配置されており、上端から前記中央部に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、前記突起部に上方から力が作用すると、前記突起部の傾斜面が前方に倒れ、前記本体部の上面が凹むように変形することにより、前記スリットが開いて前記吐出部として機能することを特徴とする。
【0009】
前記本体部の上面の中央部は上面および底面共に平坦な面を有し、前記平坦な面内に前記スリットが位置している。
【0010】
前記本体部の上面に前記突起部が対向するように2つ配置されている場合、前記突起部に上方から力が作用した時に、対向する前記突起部は上端が互いに近づいて接触し、前記本体部の上面に前記突起部が3つ以上配置されている場合は、前記突起部に上方から力が作用した時に、隣接する前記突起部は上端の一部が互いに接触する。
【0011】
前記突起部が互いに対向して配置されており、前記十字のスリットの少なくとも1つが、1つの前記突起部から対向するもう1つの前記突起部に向かって延伸するように配置されている。
【0012】
前記突起部の垂直方向の断面形状を略三角形とする。
【0013】
前記本体部の下方に略円筒形の部分が設けられ、前記略円筒形の部分に容器への取り付けに使用される取付部を備える。
【0014】
前記中栓が、弾性変形可能な材質からなることが好ましい。
【0015】
本発明の容器は、前記中栓を備えることを特徴とし、前記中栓が口部に取り付けられた容器本体、および前記容器本体に着脱可能な蓋を有しており、前記蓋には、前記蓋を閉めた時に、前記中栓の吐出部と当接する突起が設けられている。
【0016】
前記中栓を前記容器本体の口部に固定するための固定具を有し、前記固定具は、円筒形の側面と、中央に開口を有する上面とを有し、前記側面の内周面には前記容器本体の口部の外周面と係合する係合部が形成され、前記上面の開口の周囲が、前記中栓に設けられた鍔状の取付部を上方から前記口部の上端に押さえ付けて前記中栓が固定される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の中栓は、略円錐台形状の外形を有する本体部、および前記本体部の上面に設けられた少なくとも2つの突起部を備える中栓であって、前記本体部の上面は、中央部に十字のスリットから構成された吐出部を備え、前記吐出部に向かって下方に傾斜したすり鉢状を有しており、前記突起部は、前記本体部の上面の下方に傾斜した部分に配置されており、上端から前記中央部に向かって下方に傾斜する傾斜面を有し、前記突起部に上方から力が作用すると、前記突起部の傾斜面が前方に倒れ、前記本体部の上面が凹むように変形することにより、前記スリットが開いて前記吐出部として機能することにより、粘性度の高い液体であっても、スムーズに吐出部から吐出することができる。
【0018】
また、本発明の中栓は、前記本体部の上面に前記突起部が対向するように2つ配置されている場合、前記突起部に上方から力が作用した時に、対向する前記突起部は上端が互いに近づいて接触し、前記本体部の上面に前記突起部が3つ以上配置されている場合は、前記突起部に上方から力が作用した時に、隣接する前記突起部は上端の一部が互いに接触することにより、過剰な力が作用しても吐出部の開き具合を制御することができるので、ボタ落ちと呼ばれる、液体等が突然大量に吐出される現象を防止することができる。
【0019】
本発明の容器は、上述したように本発明の中栓に関する効果を奏する。また、本発明の容器は、容器本体と着脱可能な蓋を有し、蓋を閉めた時に、前記中栓の吐出部と当接する突起が設けられていることにより、蓋を閉じている時に容器に収容された液体の漏出を防ぐことができる。さらに、中栓を容器本体の口部に固定するための固定具を有することで、中栓を容器に着脱可能に取り付けることができ、容器内の液体の補充を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態の中栓の斜視図である。
図2】第1の実施形態の中栓の互いに直交する2方向の断面図である。
図3】第1の実施形態の中栓の平面図である。
図4】第1の実施形態の中栓の正面図である。
図5】(a)は吐出部が開いた状態の第1の実施形態の中栓の断面図であり、(b),(c)は、(a)からさらに吐出部が開いた状態の中栓の互いに直交する2方向の断面図である。
図6】左半分が蓋を開けた状態の本発明の容器の断面図であり、右半分が蓋を開けた状態の本発明の容器の正面図である。
図7】蓋を閉じた状態の本発明の容器の断面図である。
図8】第2の実施形態の中栓の斜視図である。
図9】第2の実施形態の中栓の断面図である。
図10】第2の実施形態の中栓の平面図である。
図11】吐出部が開いた状態の第2の実施形態の中栓の断面図である。
図12】吐出部が開いた状態の第2の実施形態の中栓の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の中栓および容器について図を用いて以下に詳細に説明する。図1〜5が本発明の第1の実施形態の中栓1に関する図面であり、図6,7が前記中栓1を備える容器11の図面である。
【0022】
本発明の中栓1は、薬品等の液体または流動体を吐出するために、容器の口部に取り付けられるものであり、図1〜4に示すように、略円錐台形状の外形を有する本体部2、および前記本体部2の上面に対向するように設けられた2つの突起部3を備える。図1,2に示すように、前記本体部2の上面は、スリット6からなる吐出部が設けられた平坦な中央部5、および、外周から前記中央部5に向かって下方に傾斜した傾斜部4を有し、前記傾斜部4に前記突起部3が配置されている。
【0023】
前記突起部3は、図2(a)に示すように、上端から前記中央部5に向かって傾斜する傾斜面、および上端から前記本体部2の上端の外周に向かって傾斜する傾斜面を有し、垂直方向の断面形状が三角形である。そして、前記突起部3の前記中央部5に向かう傾斜面には、前記中央部5の外周に沿って窪みが形成されている。図3に示すように、2つの前記突起部3は互いに対向し、上端が互いに平行となるように配置されている。
【0024】
前記突起部3の形状は、少なくとも上端から前記中央部5に向かって傾斜する傾斜面を有すればよく、上端から前記本体部2の上端の外周に向かって傾斜する傾斜面は曲面、折れ曲がった面でも可能であり、この場合、垂直方向の断面形状は三角形以外となる。また、前記突起部3の個数についても、2つに限定するものではなく、3つ以上とすることも可能であり、4つの場合については、第2の実施形態で説明する。
【0025】
図3に示すように、前記吐出部は、略円形の平面形状を有する前記中央部5の中心に、十字に形成されたスリット6からなり、前記スリット6が開くことで液体等を吐出するための前記吐出部として機能する。十字の前記スリット6は、十字の1つの直線が一方の突起部3から他方の突起部3へと延伸するように配置されている。そして、前記スリット6は前記中央部5の表面から底面へと貫通しているが、図2に示すように、通常は閉じた状態となっている。
【0026】
前記中栓1は、さらに、前記本体部2の下方に、接続部9、円筒部7、取付部8が設けられており、これらは、主に、前記中栓1を容器に固定する際に用いられる。前記接続部9は、前記本体部2の下端から前記円筒部7に向かって径が広がるように傾斜した部分であり、前記円筒部7の下方の外周を取り囲むフランジの形態で取付部8が設けられ、前記取付部8の上面には、全前記円筒部7の外周に沿って環状の窪み10が設けられている。前記中栓1の容器本体への取り付け方法については後で詳細に説明する。
【0027】
前記中栓1は、前記本体部2、前記突起部3、前記接続部9、前記円筒部7、および、前記取付部8が一体形成されており、図2に示すように、内部に空洞を有している。そして、本発明の中栓1は、前記突起部3に力が加えられた時に変形して液体等が通過可能となり、力が加えられないときに液体等が通過できないという吐出部の動きをスムーズに行うために、弾性変形可能な材質で成形されていることが好ましい。前記中栓1が弾性変形可能な材質で一体成形されることにより、簡便に製造することが可能となる。
【0028】
次に、前記中栓1の吐出部の開閉動作について説明する。前記中栓1は、何も力が加えられていない状態では、図2に示すように、スリット6が閉じた状態であり、この状態では前記スリット6を液体等は通過することができない。
【0029】
前記中栓1の突起部3を患部等に押し付けることによって、前記突起部3に上方から力を加えると、前記中栓1は弾性変形可能な材質で形成されているために前記突起部3を中心に変形が生じる。前記突起部3の上方から作用する力によって、2つの前記突起部3が、図5(a)に矢印で示すように、互いに対向する傾斜面が前方へと倒れるように動く。前記中栓1は、前記突起部3のこのような動きによって前記中央部5が下方へと押されながら、図5(a)に矢印で示すように、左右方向に引っ張られるように変形し、同時に、前記本体部2の外周面が内側へと倒れながら外側に膨らむように変形し、その結果、上面が凹むように変形する。そして、図5(a)に示すように、前記スリット6は、下方が開いた略逆V字型形状の断面へと変形する。
【0030】
このように、前記スリット6が変形した状態では、前記本体部2内から液体等が前記スリット6を通過することが可能となり、前記スリット6は吐出部として機能し始める。図5(a)の状態から、前記突起部3に引き続き上方から力を加えることで、前記中栓1をさらに変形させることができる。
【0031】
図5(a)の状態から、さらに前記突起部3に上方から力を加えると、2つの前記突起部3の上端が互いに近づくように前記中栓1は変形し、図5(b)に示すように、2つの前記突起部3の上端は互いに当接した状態となる。この時、前記中央部5がさらに左右方向に引っ張られるように前記中栓1は変形しており、前記スリット6はさらに、下方が開くことから、液体が通過し易くなり、粘性度の高い液体であってもスムーズに吐出部から吐出され、吐出量も図5(a)の状態よりも増加する。
【0032】
図5(b)の状態では、吐出部の上方を2つの前記突起部3が塞いだ状態となっているが、前記傾斜部4の前記突起部3が存在しない方向に、図5(c)に矢印で示すような通路が存在し、前記スリット6から吐出された液体は前記通路を通って外部へと吐出されることで、吐出部として十分機能する。図5(a)の状態では、対向する2つの前記突起部3の間には空間が存在することから、前記吐出部から吐出された液体は2つの前記突起部3の間を通って吐出されることになる。
【0033】
図5(a)および図5(b)の状態から、前記突起部3への上方からの力を解除すると、前記中栓1の変形は元に戻り、前記スリット6は再び閉じられ、図2の状態に戻るので、吐出部は閉じた状態となり、液体等は通過できなくなる。このように、前記スリット6は変形することで開閉する弁として機能し、吐出部の開閉が行われる。
【0034】
前記中栓1は、図5(b)のように対向する2つの突起部3が上端で当接した状態から、さらに力を加えた場合、前記突起部3を含めた前記中栓1をさらに弾性変形させることも可能であることから、前記スリット6をさらに開くことも可能である。しかしながら、前記中栓1は、図5(b)の状態からの変形は、図2の状態から図5(b)の状態への変形に比べると、変形速度は大きく低下し、変形量も少なくなる。
【0035】
このような前記中栓1の変形は、前記本体部2が略円錐台形状を有し、略三角形状の断面を有する前記突起部3が前記本体部2の傾斜部4に設けられていることにより、よりスムーズに行われる。また、前記中央部5は、上面および底面が平坦な面であることにより、前記スリット6が開き易くなっている。前記中栓1の変形は、主に、前記本体部2より上で行われるが、前記接続部9および前記円筒部7も多少は変形する。
【0036】
前記中栓1の変形は、弾性変形可能な材質の特性を利用することが好ましい。弾性変形可能な材質としては、エラストマー、シリコンなどを用いることができる。このような材質を用いて一体形成することで、本発明の中栓1の変形はスムーズに行われるようになる。
【0037】
本発明の中栓1は、前記突起部3に力が作用して変形すると、対向する前記突起部3の上端が互いに当接することから、過剰な力が加えられても前記スリット6が開き過ぎるのを防止することができるので、ボタ落ちを防ぐことができる。そして、前記突起部3の大きさ、傾斜面の角度、対向する突起部3の間隔などを調節することで、スリット6の開き具合を調節することも可能である。
【0038】
次に、本発明の容器11について説明する。本発明の容器11は、図6,7に示すように、前記中栓1を容器本体14に取り付けたものであり、前記容器本体14、前記中栓1、および、蓋15から構成され、前記中栓1を利用して前記容器本体14内の液体等を吐出することができる。図6,7に示すように、前記中栓1は、前記容器本体14に嵌合された口部13に固定具12を用いて容器本体14に着脱可能に取り付けられており、前記蓋15はねじ係合によって前記容器本体14に開閉可能に取り付けられている。
【0039】
前記固定具12は、円筒形の側面と中央に開口を有する上面とを有する。さらに前記固定具12には、前記側面の内周面に前記容器本体14に設けられた口部13の外周面と係合する係合部が形成され、前記上面の開口の周囲は、前記中栓1の取付部8を上方から押さえ付ける部材として機能する。そして、前記開口の周囲の下面には下方に突出する環状の突起17が形成され、前記環状の突起17が前記中栓1の取付部8の窪み10に挿入される。
【0040】
前記固定具12による中栓1の固定方法について説明する。前記中栓1を前記口部13の上端に配置し、前記固定具12を前記中栓1の上方から前記口部13と係合させる。この時、前記中栓1の取付部8は前記固定具12によって上方から押さえ付けられ、同時に、前記固定具12の環状の突起17が前記取付部8の窪み10に上方から挿入されていることから、前記固定具12によって前記中栓1が固定される。この時、前記中栓1は、前記接続部9、前記本体部2および前記突起部3が前記固定具12の開口から上方に突出し露出された状態で固定されている。このようにして前記固定具12によって前記中栓1が容器本体14に固定されると、前記中栓1は前記容器11から容器本体14内の液体等を吐出可能となる。前記中栓1を固定した後、前記蓋15を閉めると、本発明の容器11が完成する。
【0041】
前記中栓1の前記容器本体14への取り付け方法については他の方法を用いることも可能であり、例えば、固定具等の部材を用いないで、直接、前記中栓1を容器本体14に嵌め込んで固定することも可能である。固定具についても他の構造を用いることが可能である。
【0042】
前記蓋15の内面には、前記中栓1の中央部5の上面に当接する、略円柱形状の下方に突出した突起16が形成されている。前記突起16は前記蓋15を閉めた時に、図7に示すように、対向する前記突起部3の間に挿入されて前記中央部5の上面と当接することで、前記中栓1の吐出部を閉じる機能を生じる。前記中央部5は、上面および平面を平坦な面で構成しているために、前記容器本体14内の液体によって前記中央部5の底面に大きな力が作用した場合、前記スリット6が開く方向に変形する可能性があるが、前記突起16が前記吐出部を上から押えることで、このような前記中央部5の変形を抑制して、前記中栓1の吐出部の密閉状態を向上させ、前記容器11内の液体等が漏出することを確実に防止することができる。
【0043】
前記突起16は、前記中央部5の上面に当接した時、その側面の一部は、前記突起部3の傾斜面に設けられた窪み内に位置している。このように、前記突起部3の傾斜面に設けられた窪みは、前記突起16の形状に合わせて形成すればよく、前記突起16の大きさによっては、傾斜面に窪みを設けないことも可能である。
【0044】
このように前記中栓1を備える本発明の容器11は、従来よりも簡単な構造の中栓1により、粘性度の高い液体であってもスムーズに液体を吐出することができ、さらに、前記中栓1によるマッサージ機能を有することも可能である。例えば、容器11を薬品の用途として使用する場合、中栓1の突起部3を身体に押し付けて薬品を吐出しながら突起部3によってマッサージを効果的に行うことが可能となる。その他にも、患部に液体等を吐出しながらマッサージを行うことが求められる薬品、化粧品等の容器としても使用可能であり、その他にも様々な用途に用いることが可能である。
【0045】
容器11にマッサージ機能を付加する場合、前記中栓1の突起部3の数、形状、大きさ等を変更し、刺激の強さ等を変えることも可能である。例えば、前記突起部3の先端の幅を狭くし、刺激を強くすることも可能である。
【0046】
次に、第2の実施形態の中栓21について、説明する。図8〜12に示すように、前記中栓21は、略円錐台形状の外形を有する本体部22、および前記本体部22の上面に等間隔で配置された4つの突起部23を備える。図8,9,10に示すように、前記本体部22の上面は、スリット26からなる吐出部が設けられた平坦で矩形の中央部25、および、外周から前記中央部25に向かって下方に傾斜した傾斜部24を有し、前記傾斜部24に前記突起部23が等間隔で配置されている。
【0047】
前記中栓21は、さらに、前記本体部22の下方に、接続部29、円筒部27、上面に窪み30を有する取付部28が設けられているが、これらの部材は、主に、前記中栓21を容器に固定する際に用いられ、第1の実施形態の中栓1の接続部9、円筒部7、上面に窪み10を有する取付部8と同じ形態であることから詳細な説明は省略する。
【0048】
前記突起部23は、図9に示すように、上端から前記中央部25に向かって傾斜する傾斜面、および上端から前記本体部22の上端の外周に向かって傾斜する傾斜面を有し、垂直方向の断面形状が三角形である。そして、図10示すように、4つの前記突起部23が等間隔で前記本体部22の上面の傾斜部24に等間隔で配置されている。
【0049】
図10に示すように、前記吐出部は、略矩形の平面形状を有する前記中央部25の中心に、十字に形成されたスリット26からなり、前記スリット26が開くことで液体等を吐出するための前記吐出部として機能する。十字の前記スリット26は、十字の2つの直線がぞれぞれ一方の突起部23から他方の突起部23へと延伸するように配置されている。そして、前記スリット26は前記中央部25の表面から底面へと貫通しているが、図11に示すように、通常は閉じた状態となっている。
【0050】
前記中栓21は、前記本体部22、前記突起部23、前記接続部29、前記円筒部27、および、前記取付部28が、弾性変形可能な材質、例えば、エラストマー、シリコンなどを用いて一体形成されている。
【0051】
次に、前記中栓21の吐出部の開閉動作について説明する。前記中栓21は、何も力が加えられていない状態では、図9に示すように、スリット26が閉じた状態であり、この状態では前記スリット26を液体等は通過することができない。
【0052】
前記中栓21の突起部23に上方から力を加えると、前記中栓21は弾性変形可能な材質で形成されているために前記突起部23を中心に変形が生じる。前記突起部23の上方から作用する力によって、4つの前記突起部23が、図11に矢印で示すように、内側の傾斜面が前方へと倒れるように動く。前記突起部23のこのような動きによって前記中央部25は、図11に矢印で示すように、左右方向に引っ張られるように変形し、同時に、前記本体部22の外周面が内側へと倒れながら外側に膨らむように変形し、その結果、上面が凹むように変形する。そして、前記突起部23は、図12に示すように、その上端が隣接する前記突起部23と当接した状態となる。
【0053】
この時、図11に示すように、前記スリット26は、下方が開いた略逆V字型形状の断面へと変形している。このように、前記スリット26が変形した状態では、前記本体部22内から液体等が前記スリット26を通過することが可能となり、前記スリット26は吐出部として機能する。
【0054】
またこの時、前記中栓21は、図10に示すように、4つの前記突起部23は、吐出部の上方を塞いでおらず、図12に示すように、矩形の開口が形成されていることから、前記開口が液体の通路となり、この通路を通じて液体が吐出されることになる。
【0055】
図11,12の状態から、前記突起部23への上方からの力を解除すると、前記中栓21の変形は元に戻り、前記スリット26は再び閉じられ、図9,10の状態に戻るので、吐出部は閉じた状態となり、液体等は通過できなくなる。このように、前記スリット26は変形することで開閉する弁として機能し、吐出部の開閉が行われる。
【0056】
前記中栓21は、図12に示すように、前記突起部23の上端が隣接する他の突起部23の上端と当接した状態から、さらに力を加えた場合、前記突起部23を含めた前記中栓21をさらに弾性変形させることも可能であり、これにより、前記スリット26をさらに開くことも可能である。しかしながら、前記中栓21は、図12の状態からの変形は、図9,10の状態から図11,12の状態への変形に比べると、変形速度は大きく低下し、変形量も少なくなる。
【0057】
このように、第2の実施形態の中栓21も、スムーズに変形することで、前記スリット26が開き易く、粘性度の高い液体であってもスムーズに吐出することができる。また、中栓21は、力が作用して変形すると隣接する突起部23の上端が互いに当接することから、過剰な力が加えられても前記スリット26が開き過ぎるのを防止することができるので、ボタ落ちを防ぐことができる。そして、前記スリット26の上方に通路が存在することから、粘性度の高い液体であってもスムーズに外部へと吐出することができる。
【0058】
本発明の中栓は、略円錐台形状の本体部、前記本体部の傾斜部に設けられた複数の突起部、平坦な中央部を用いることにより、吐出部のスリットがスムーズに開閉することにより、粘性度の高い液体であっても、確実に吐出することができ、また、突起部の先端が互いに当接することにより、スリットの開き具合を調節することができるので、ボタ落ちを防止することも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,21 中栓
2,22 本体部
3,23 突起部
4,24 傾斜部
5,25 中央部
6,26 スリット
7,27 円筒部
8,28 取付部
9,29 接続部
10,30 窪み
11 容器
12 固定具
13 口部
14 容器本体
15 蓋
16 突起
17 環状の突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12