【実施例】
【0075】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0076】
合成例1:ブロックコポリマー1の調製
以下のようにして、ジメチルアクリルアミド(DMAA)とグリシジルメタクリレート(GMA)とのブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))を調製した。なお、以下では、上記にて調製したブロックコポリマーを、「p(DMAA−b−GMA)」または「ブロックコポリマー1」と称する。
【0077】
アジピン酸2塩化物72.3g中に50℃でトリエチレングリコール29.7gを滴下した後、50℃で3時間、塩酸を減圧除去して、オリゴエステルを得た。次に、得られたオリゴエステル22.5gにメチルエチルケトン4.5gを加え、これを、水酸化ナトリウム5g、31質量%過酸化水素6.93g、界面活性剤としてのジオクチルホスフェート0.44g及び水120gよりなる溶液中に滴下し、−5℃で20分間反応させた。得られた生成物は、水洗、メタノール洗浄を繰り返した後、乾燥させて、分子内に複数のパーオキサイド基を有するポリ過酸化物を(PPO)を得た。
【0078】
続いて、このPPOを0.5g、グリシジルメタクリレート(GMA)を9.5g、さらにベンゼン(溶媒)を30g混合して、65℃で2時間、減圧下で撹拌しながら重合した。重合後に得られた反応物をジエチルエーテルで再沈殿して、分子内にパーオキサイド基を有するポリGMA(PPO−GMA)を得た。
【0079】
続いて、得られたPPO−GMA0.48g(GMA 3.38mmol相当)を重合開始剤として、ジメチルアクリルアミド3.34g(37.1mmol)をジメチルスルホキシド90gに溶解し、80℃で5時間、窒素雰囲気下で重合させた。重合後に得られた反応物をヘキサンで再沈殿して回収し、DMAAを構成単位とした親水性ドメインと、グリシジルメタクリレートを構成単位とした反応性ドメインとを有するブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー(1))を得た。
【0080】
参考例1:密着力の評価
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした。
【0081】
別途、アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加して、アンダーコート液(1)を調製した。また、芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートファインタック CT−5020(DIC株式会社製)を、樹脂分9質量%の濃度になるようにアセトンに添加し、アセトン溶液を調製した。このアセトン溶液に、架橋剤(DIC株式会社製、FINETACK HARDENER D40)を、アクリル樹脂に対して15質量%になるように添加して、アンダーコート液(2)を調製した。なお、アンダーコートファインタック CT−5020について、下記方法に従って、芳香族系粘着付与剤の含有量を測定したところ、粘着付与剤が、アクリル樹脂に対して、約42質量%の割合で含まれていることを確認した。また、上記アンダーコートファインタック CT−5020に含まれる芳香族系粘着付与剤は、デヒドロアビエチン酸を有するロジン樹脂およびスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合樹脂の混合物である。
【0082】
(粘着付与剤の定量試験)
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)をアセトンで払拭して、基材(基材A)を準備した。次に、芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートファインタック CT−5020(DIC株式会社製)を、樹脂分20質量%の濃度になるようにアセトンを添加し、アセトン溶液を調製した。このアセトン溶液に上記基材Aを浸漬し、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材B)。風乾後、基材Bを80℃のオーブンで5時間加熱することによって、基材A(変性ポリエチレンシート)表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材C)。さらに、この基材Cのアンダーコート層を10gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で40℃で24時間抽出した。所定時間抽出した後、DMF抽出液にヘキサン10g添加し、分液操作を行った。上記分液操作を5回繰り返し、分液操作を終了した。これにより、DMF溶液にはアクリル樹脂が、およびヘキサン溶液には粘着付与剤が、それぞれ、含まれる。
【0083】
上記分液操作終了後、アクリル樹脂を含むDMF溶液および粘着付与剤を含むヘキサン溶液をそれぞれ乾固し、乾燥残留物の質量を測定した。その結果、アクリル樹脂を含むDMF溶液の乾燥残留物は36.5mgであり、粘着付与剤を含むヘキサン溶液の乾燥残留物は15.0mgであった。よって、アンダーコート層における粘着付与剤の含有量はアクリル樹脂100質量部に対して42質量部となる。上述したように、アンダーコート層中の粘着付与剤の含有量は、アセトン溶液における粘着付与剤の含有量と実質的に同等である。このため、アンダーコートファインタック CT−5020(DIC株式会社製)は、アクリル樹脂100質量部に対して約42質量部の割合で粘着付与剤を含む。
【0084】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液を調製した。
【0085】
上記にて調製したアンダーコート液(1)および(2)に、それぞれ、上記基材を浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材(1−1)、基材(2−1))。風乾後、この基材(1−1)及び基材(2−1)を、それぞれ、60℃のオーブンで1時間加熱することによって、基材(変性ポリエチレンシート)の表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材(1−2)、基材(2−2))。その後、この基材(1−2)及び基材(2−2)を、それぞれ、上記にて調製した塗布液にコート液へ浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材(1−3)、基材(2−3))。風乾後、この基材(1−3)及び基材(2−3)を、それぞれ、80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層をアンダーコート層上に形成した(医療用具(1)、医療用具(2))。なお、上述したように、医療用具(2)では、アンダーコート層中の芳香族系粘着付与剤の含有量は、アクリル樹脂に対して、約42質量%である。
【0086】
上記のようにして得られた医療用具(1)及び(2)について、クロスカット試験(JIS K5600−5−6:1999(ISO2409:1992))をもとに、アンダーコート層と親水性ポリマーを含む表面潤滑層との密着力の評価を行った。
【0087】
結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、クロスカット試験スコアは6段階で分類され、数値が小さいほど、はがれが少ない(密着力が高い)ことを意味する。
【0088】
下記表1に示されるように、粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有するアンダーコート層を有する医療用具(2)は、粘着付与剤を含まずアクリル樹脂のみを含有するアンダーコート層を有する医療用具(1)に比して、アンダーコート層と表面潤滑層との密着性が高いことが示される。
【0089】
【表1】
【0090】
参考例1−1:医療用具1の製造
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした(基材1)。
【0091】
非芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートBPS6074HTF(トーヨーケム株式会社製、非芳香族系粘着付与剤の含有量:アクリル樹脂に対して5〜15質量%(カタログ値))を、樹脂分10質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、アンダーコート液1を調製した。
【0092】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液Aを調製した。
【0093】
上記基材1を上記にて調製したアンダーコート液1に浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材1−1)。風乾後、この基材1−1を60℃のオーブンで1時間加熱することによって、基材1(変性ポリエチレンシート)の表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材1−2)。その後、この基材1−2を、上記にて調製した塗布液Aに浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材1−3)。風乾後、この基材1−3を80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層をアンダーコート層上に形成した(医療用具1)。
【0094】
実施例1−2:医療用具2の製造
デヒドロアビエチン酸を有するロジン樹脂(芳香族系粘着付与剤)及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートBPS6574HTF(トーヨーケム株式会社製、芳香族系粘着付与剤の含有量:アクリル樹脂に対して10〜20質量%(カタログ値))を、樹脂分10質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、アンダーコート液2を調製した。
参考例1−1において、アンダーコート液1の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液2を使用した以外は、
参考例1−1と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具2)。
【0095】
実施例1−3:医療用具3の製造
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした(基材1)。
【0096】
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターK125)をアクリル樹脂100質量部に対して1質量部になるように添加して、アンダーコート液3を調製した。
【0097】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液Aを調製した。
【0098】
上記基材1を上記にて調製したアンダーコート液3に浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材3−1)。風乾後、この基材3−1を60℃のオーブンで1時間加熱することによって、基材1(変性ポリエチレンシート)の表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材3−2)。その後、この基材3−2を、上記にて調製した塗布液A浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材3−3)。風乾後、この基材3−3を80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層をアンダーコート層上に形成した(医療用具3)。
【0099】
実施例1−4:医療用具4の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターU115)をアクリル樹脂100質量部に対して3質量部になるように添加して、アンダーコート液4を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液4を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具4)。
【0100】
実施例1−5:医療用具5の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して10質量部になるように添加して、アンダーコート液5を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液5を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具5)。
【0101】
実施例1−6:医療用具6の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して20質量部になるように添加して、アンダーコート液6を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液6を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具6)。
【0102】
実施例1−7:医療用具7の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して50質量部になるように添加して、アンダーコート液7を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液7を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具7)。
【0103】
実施例1−8:医療用具8の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して60質量部になるように添加して、アンダーコート液8を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液8を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具8)。
【0104】
実施例1−9:医療用具9の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して70質量部になるように添加して、アンダーコート液9を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液9を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具9)。
【0105】
実施例1−10:医療用具10の製造
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした(基材1)。
【0106】
芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートファインタック CT−5020(DIC株式会社製、芳香族系粘着付与剤の含有量:アクリル樹脂に対して、約42質量%;以下同様)を、樹脂分9質量%の濃度になるようにアセトンに添加し、アンダーコート液10を調製した。なお、上述したように、アンダーコートファインタック CT−5020は、芳香族系粘着付与剤を、アクリル樹脂に対して約42質量%の割合で含む(上記参考例1参照)。また、上記アンダーコートファインタック CT−5020に含まれる芳香族系粘着付与剤は、デヒドロアビエチン酸を有するロジン樹脂およびスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとの共重合樹脂の混合物である(以下同様)。
【0107】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液Aを調製した。
【0108】
上記基材1を上記にて調製したアンダーコート液10に浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材10−1)。風乾後、この基材10−1を60℃のオーブンで1時間加熱することによって、基材1(変性ポリエチレンシート)の表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材10−2)。その後、この基材10−2を、上記にて調製した塗布液Aに浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材10−3)。風乾後、この基材10−3を80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層をアンダーコート層上に形成した(医療用具10)。
【0109】
実施例1−11:医療用具11の製造
芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有したアンダーコートファインタック CT−5020(DIC株式会社製)を、樹脂分9質量%の濃度になるようにアセトンに添加し、アセトン溶液を調製した。このアセトン溶液に、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(DIC株式会社製、FINETACK HARDENER D40)を、アクリル樹脂に対して15質量%になるように添加して、アンダーコート液11を調製した。実施例1−10において、アンダーコート液10の代わりに、上記にて調製したアンダーコート液11を使用した以外は、実施例1−10と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具11)。
【0110】
実施例1−12:医療用具12の製造
ポリアミドエラストマー(エムスケミー・ジャパン株式会社製 グリルフレックス(登録商標)ELG5660)シート(18mm×40mm×1mm)をアセトンで払拭して、基材とした(基材2)。
【0111】
実施例1−11において、基材1の代わりに、上記基材2を使用した以外は、実施例1−11と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材2上に形成した(医療用具12)。
【0112】
実施例1−13:医療用具13の製造
SUS304シート(18mm×40mm×1mm)をアセトンで払拭して、基材とした(基材3)。
【0113】
実施例1−11において、基材1の代わりに、上記基材3を使用した以外は、実施例11と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材3上に形成した(医療用具13)。
【0114】
実施例1−14:医療用具14の製造
ポリビニルピロリドン(PVP)(東京化成工業株式会社製、K−90製)及び自己架橋性水系ウレタン樹脂(三井化学株式会社製、タケラック(登録商標)WS−5000)を、それぞれ、3.5質量%の濃度になるようにエタノールに添加し、塗布液B(PVP:ウレタン樹脂=1:1(質量比))を調製した。
【0115】
実施例1−11において、塗布液Aの代わりに、上記にて調製した塗布液Bを使用した以外は、実施例1−11と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(医療用具14)。
【0116】
実施例1−15:医療用具15の製造
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした(基材1)。
【0117】
スチレンブタジエンゴム(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、製品番号:182907)を、樹脂分4質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をスチレンブタジエンゴム100質量部に対して20質量部になるように添加して、アンダーコート液15を調製した。
【0118】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液Aを調製した。
【0119】
上記基材1を上記にて調製したアンダーコート液15に浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材15−1)。風乾後、この基材15−1を60℃のオーブンで1時間加熱することによって、基材1(変性ポリエチレンシート)の表面にアンダーコート層を形成(固定化)した(基材15−2)。その後、この基材15−2を、上記にて調製した塗布液Aに浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(基材15−3)。風乾後、この基材15−3を80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層をアンダーコート層上に形成した(医療用具15)。
【0120】
比較例1−1:比較医療用具1の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加して、比較アンダーコート液1を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製した比較アンダーコート液1を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(比較医療用具1)。
【0121】
比較例1−2:比較医療用具2の製造
アクリル樹脂(DIC株式会社製、ファインタック CT−6020)を、樹脂分15質量%の濃度になるようにアセトンに添加した後、芳香族系粘着付与剤であるテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、YSポリスターT100)をアクリル樹脂100質量部に対して90質量部になるように添加して、比較アンダーコート液2を調製した。実施例1−3において、アンダーコート液3の代わりに、上記にて調製した比較アンダーコート液2を使用した以外は、実施例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(比較医療用具2)。
【0122】
比較例1−3:比較医療用具3の製造
変性ポリエチレン(三菱化学株式会社製 モディック(登録商標)M512)シート(18mm×40mm×1mm)(変性PEシート)をアセトンで払拭して、基材とした(基材1)。
【0123】
合成例1にて製造したブロックコポリマー(DMAA:GMA=11:1(モル比))(ブロックコポリマー1)を、3.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加し、塗布液Aを調製した。
【0124】
上記基材1を上記にて調製した塗布液Aに浸漬して間もなく、15mm/secの速さにて引上げてコーティングを行い、30分間風乾した(比較基材3)。風乾後、この比較基材3を80℃のオーブン中で5時間反応させることによって、表面潤滑層を基材1上に形成した(比較医療用具3)。
【0125】
比較例1−4:比較医療用具4の製造
ポリアミドエラストマー(EMS製 グリルフレックス(登録商標)ELG5660)シート(18mm×40mm×1mm)をアセトンで払拭して、基材とした(基材2)。
【0126】
比較例1−3において、基材1の代わりに、上記基材2を使用した以外は、比較例1−3と同様にして、表面潤滑層を基材2上に形成した(比較医療用具4)。
【0127】
比較例1−5:比較医療用具5の製造
SUS304シート(18mm×40mm×1mm)をアセトンで払拭して、基材とした(基材3)。
【0128】
比較例1−3において、基材1の代わりに、上記基材3を使用した以外は、比較例1−3と同様にして、表面潤滑層を基材3上に形成した(比較医療用具5)。
【0129】
比較例1−6:比較医療用具6の製造
ポリビニルピロリドン(PVP)(東京化成工業株式会社製、K−90)及び自己架橋性水系ウレタン樹脂(三井化学株式会社製、タケラック(登録商標)WS−5000)を、それぞれ、3.5質量%の濃度になるようにエタノールに添加し、塗布液B(PVP:ウレタン樹脂=1:1(質量比))を調製した。
【0130】
比較例1−3において、塗布液Aの代わりに、上記にて調製した塗布液Bを使用した以外は、比較例1−3と同様にして、表面潤滑層を基材1上に形成した(比較医療用具6)。
【0131】
比較例1−7:比較医療用具7の製造
スチレンブタジエンゴム(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製、製品番号:182907)を、樹脂分4質量%の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に添加して、比較アンダーコート液7を調製した。
【0132】
実施例1−14において、アンダーコート液14の代わりに、上記にて調製した比較アンダーコート液7を使用した以外は、実施例14と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材1上に形成した(比較医療用具7)。すなわち、本比較例では、実施例1−14において、芳香族系粘着付与剤(YSポリスターT100)を添加しなかった以外は実施例1−14と同様である。
【0133】
実施例2−1:医療用具16の製造
変性ポリエチレン(東ソー製、ニチポロン ZF260)チューブ(直径(φ)1.0mm,長さ5cm)(変性ポリエチレンチューブ)をアセトンで払拭して、基材とした(基材4)。
【0134】
実施例1−11において、基材1の代わりに、上記基材4を使用した以外は、実施例1−11と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材4上に形成した(医療用具16)。
【0135】
実施例2−2:医療用具17の製造
変性ポリエチレン(東ソー製 ニチポロン ZF260)チューブ(直径(φ)1.0mm,長さ5cm)(変性ポリエチレンチューブ)をアセトンで払拭して、基材とした(基材4)。
【0136】
実施例1−10において、基材1の代わりに、上記基材4を使用した以外は、実施例1−10と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材4上に形成した(医療用具17)。
【0137】
実施例2−3:医療用具18の製造
変性ポリエチレン(東ソー製 ニチポロン ZF260)チューブ(直径(φ)1.0mm,長さ5cm)(変性ポリエチレンチューブ)をアセトンで払拭して、基材とした(基材4)。
【0138】
実施例1−14において、基材1の代わりに、上記基材4を使用した以外は、実施例1−14と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材4上に形成した(医療用具18)。
【0139】
比較例2−1:比較医療用具8の製造
変性ポリエチレン(東ソー製 ニチポロン ZF260)チューブ(直径(φ)1.0mm,長さ5cm)(変性ポリエチレンチューブ)をアセトンで払拭して、基材とした(基材4)。
【0140】
比較例1−3において、基材1の代わりに、上記基材4を使用した以外は、比較例1−3と同様にして、アンダーコート層及び表面潤滑層を順次基材4上に形成した(比較医療用具8)
。
上記
参考例1−1
ならびに実施例1−2〜1−15及び2−1〜2−3で製造した医療用具1〜18および上記比較例1−1〜1−7及び2−1で製造した比較医療用具1〜8について、下記方法に従って、耐久性(表面潤滑層の耐久性)を評価した。
【0141】
[耐久性評価]
各医療用具(以下、単に「サンプル」とも略記する)について、下記方法にしたがって、
図1に示される摩擦測定機20を用いて、表面潤滑層の摺動抵抗値(gf)を測定し、耐久性を評価した。
【0142】
すなわち、各サンプル16をシャーレ12中に固定し、サンプル16全体が浸る高さの水17中に浸漬した。このシャーレ12を、
図1に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20の移動テーブル15に載置した。円柱状ポリエチレン(PE)端子(φ10mm、R1mm)13をサンプル16に接触させ、端子13上に、サンプル16がシート形状の場合は450g、サンプル16がチューブ形状の場合は50gの荷重14をかけた。速度16.7mm/sec、移動距離2cmの設定で、移動テーブル15を水平に50回往復移動させた際の摺動抵抗値(gf)を測定した。1往復目から50往復目までの摺動抵抗値を往復回数毎に平均し、摺動抵抗値(gf)としてグラフにプロットすることにより、50回の繰り返し摺動に対する潤滑耐久性を評価した。なお、各試験において、1個のサンプルについて試験を行った。また、摺動抵抗値(gf)は低いほど表面潤滑性に優れることを意味する。
【0143】
上記医療用具1〜18および比較医療用具1〜8の結果を、それぞれ、
図2〜22に示す。また、
図2〜27の結果を下記基準に従って評価し、その結果を下記表2に要約する。なお、下記表2中、「変性PE」は、変性ポリエチレンを示す。また、下記表2中、「p(DMAA−b−GMA)」は、上記合成例1と同様にして製造したブロックコポリマー1(DMAA:GMA=11:1(モル比))を示す。
【0144】
(サンプル16がシート形状の場合の判定基準)
×:摺動回数が5〜29回で、摺動抵抗値が30gf以上である;
△:摺動回数が30〜49回で、摺動抵抗値が30gf以上である;
○:摺動回数が50回で、摺動抵抗値が30gfに達しない。
【0145】
(サンプル16がチューブ形状の場合の判定基準)
× 摺動回数が1回〜5回で、摺動抵抗値が10gf以上に達する
△ 摺動回数が6〜49回で、摺動抵抗値が10gf以上に達する
○ 摺動回数が50回で、摺動抵抗値が10gfに達しない
【0146】
【表2-1】
【0147】
【表2-2】
【0148】
【表2-3】
【0149】
上記表2及び
図2〜7から、本発明の医療用具1〜15は、粘着付与剤を含まないアンダーコート層を有する比較医療用具1及び7、粘着付与剤を過剰に含むアンダーコート層を有する比較医療用具2、ならびにアンダーコート層を持たない比較医療用具3〜6及び8に比して、潤滑性及び耐久性(潤滑維持性)が有意に向上することが分かる。
【0150】
図2では、非芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有するアンダーコート層を有する医療用具1(
参考例
1−1)では、50回往復移動において徐々に摺動抵抗値が増大し、摺動回数35回付近で摺動抵抗値が30gfを超えている。一方、
図3では、芳香族系粘着付与剤及びアクリル樹脂を含有するアンダーコート層を有する医療用具2(実施例
1−2)では、50回往復後においても良好な潤滑性を維持している。これから、粘着付与剤として芳香族系粘着付与剤を用いることによって、表面潤滑層の耐久性(潤滑性を維持する効果)をより向上できることが考察される。
【0151】
図4〜10から、粘着付与剤含有量がアクリル樹脂100質量部に対して1〜70質量部であると、医療用具は、50回往復後においても良好な潤滑性を維持している(医療器具の表面潤滑層は耐久性に優れる)ことが分かる。一方、
図17及び
図18に示されるように、粘着付与剤含有量がアクリル樹脂100質量部に対して0質量部または90質量部であると、初期の段階で摺動抵抗値が30gfを超え、潤滑性を維持する効果が低い。このことから、粘着付与剤含有量がアクリル樹脂100質量部に対して90質量部未満である必要があり、特に1〜70質量部であれば、医療用具の表面潤滑層は十分良好な潤滑性及び耐久性を発揮できると考察される。
【0152】
図12〜14より、基材が変性ポリエチレンシート、ポリアミドエラストマーシート及びSUS304シートである医療用具すべてにおいて、50回往復後においても良好な潤滑性を維持していることが分かる。また、
図12〜14と
図19〜21とのそれぞれの比較により、アンダーコート層を設けることによって、表面潤滑層の耐久性を有意に向上できることが分かる。以上の結果から、本発明の医療用具の表面潤滑層は、基材の種類にかかわらず、アンダーコート層を設けることで、優れた潤滑性及び耐久性を発揮できることが考察される。
【0153】
図11及び
図12では、アンダーコート層に架橋剤を添加する如何にかかわらず、耐久性に大きな差異は認められない。一方、
図24と25との比較では、架橋剤をアンダーコート層に添加する(
図24)の方が耐久性に優れることが分かる。このことから、より高負荷をかけた場合には、親水性ポリマーとしてDMAAとGMAとのブロック共重合体を使用した方が、架橋剤をアンダーコート層に添加することにより、耐久性をより顕著に向上できることが考察される。
【0154】
図15より、親水性ポリマーとしてポリビニルピロリドンを使用した場合であっても、50回往復後においても良好な潤滑性を維持できることが分かる。一方、
図22に示されるように、アンダーコート層を設けない場合には、初回から摺動抵抗値が増大することが示される。以上の結果から、本発明の医療用具の表面潤滑層は、親水性ポリマーの種類にかかわらず、アンダーコート層を設けることで、優れた潤滑性及び耐久性を発揮できることが考察される。なお、
図12及び
図15との比較では、親水性ポリマーでの耐久性の差はあまり認められない。一方、
図24及び
図26との比較から、より高負荷をかけた場合には(接触している面積に対しての負荷がより高い条件では)、親水性ポリマーとしてDMAAとGMAとのブロック共重合体を使用した方が、ポリビニルピロリドンを使用した場合に比して、優れた耐久性を発揮できることが考察される。
【0155】
図16より、ベースポリマーとしてスチレンブタジエンゴムを使用した場合であっても、50回往復後においても良好な潤滑性を維持できることが分かる。一方、
図23に示されるように、アンダーコート層に粘着付与剤を添加しない場合には、初期の段階(摺動回数が15回程度)で摺動抵抗値が30gfを超えることが示される。以上の結果から、本発明の医療用具の表面潤滑層は、ベースポリマーの種類にかかわらず、アンダーコート層を設けることで、優れた潤滑性及び耐久性を発揮できることが考察される。