(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮影制御回路は、前記本撮影よりも前に行われる予備撮影において、前記収集回路により作成された光子計数データに基づいて、前記撮影計画を決定し、決定した前記撮影計画にしたがって前記本撮影が行われるように制御する、請求項1又は2に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、決定した前記撮影計画に基づく前記本撮影中に、前記収集回路により作成された光子計数データに基づいて、前記撮影計画を更新し、更新した前記撮影計画にしたがって前記本撮影が行われるように制御する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記画像データに基づいて、前記光子計数データを推定し、推定した前記光子計数データに基づいて、前記撮影計画を決定し、決定した前記撮影計画にしたがって前記本撮影が行われるように制御する、請求項1に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、所定の複数の弁別対象物質を弁別するための第1の複数のエネルギービンそれぞれの、前記検出器に入射された前記X線の光子の数を示す第1の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御するとともに、前記第1の光子計数データが示す前記第1の複数のエネルギービンそれぞれの光子の数と、対応する所定の閾値との比較結果に応じて、前記第1の複数のエネルギービンから、前記第1の複数のエネルギービンと少なくとも1つのエネルギービンの幅が異なる第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、切り替えた後の前記第2の複数のエネルギービンそれぞれの前記検出器に入射された前記X線の光子の数を示す第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御する、請求項1〜4のいずれか1つに記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、所定の複数の弁別対象物質を弁別するための第1の複数のエネルギービンそれぞれの、前記検出器に入射された前記X線の光子の数を示す第1の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御するとともに、前記第1の光子計数データが示す前記第1の複数のエネルギービンそれぞれの光子の数から定まる前記第1の複数のエネルギービンそれぞれのノイズ成分と、対応する所定の閾値との比較結果に応じて、前記第1の複数のエネルギービンから、前記第1の複数のエネルギービンと少なくとも1つのエネルギービンの幅が異なる第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、切り替えた後の前記第2の複数のエネルギービンそれぞれの前記検出器に入射された前記X線の光子の数を示す第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御する、請求項1〜4のいずれか1つに記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記第1の複数のエネルギービンそれぞれの光子の数が、対応する所定の閾値を超えている場合には、前記第1の複数のエネルギービンから、前記所定の複数の弁別対象物質以外の他の弁別対象物質を弁別するための前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、前記第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御する、請求項6に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記第1の複数のエネルギービンの中に、光子の数が対応する所定の閾値を超えていないエネルギービンがある場合には、前記第1の複数のエネルギービンから、該対応する所定の閾値を超えていないエネルギービンを含む前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、前記第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御する、請求項6に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記第1の複数のエネルギービンの中に、光子の数が対応する所定の閾値を超えていないエネルギービンがある場合には、前記第1の複数のエネルギービンから、前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、前記第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御し、前記収集回路により作成された前記第1の光子計数データ及び前記第2の光子計数データに基づいて、前記対応する所定の閾値を超えていないエネルギービンの光子の数を算出する、請求項6に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記第1の複数のエネルギービンの中に、光子の数が前記対応する所定の閾値よりも小さい他の閾値を超えていないエネルギービンがある場合には、前記第1の複数のエネルギービンから、光子の数が前記他の閾値を超えていないエネルギービンの幅が大きくされた新たな第2の複数のエネルギービンに切り替えるための前記設定条件を含む前記撮影計画を決定し、前記本撮影において、前記撮影計画にしたがって、前記第1の複数のエネルギービンから前記新たな第2の複数のエネルギービンに切り替えるように前記収集回路を制御するとともに、切り替えた後の前記新たな第2の複数のエネルギービンそれぞれの前記検出器に入射された前記X線の光子の数を示す第2の光子計数データを作成するように前記収集回路を制御する、請求項6に記載のX線診断装置。
前記露光調整制御は、予め設定された照射時間だけX線を照射するように前記X線管を制御する制御、または、露光調整用の検出器で得られた入射X線量を示す電気信号に基づいて、前記電気信号が示す入射X線量が所定の値となった場合に、X線の照射を停止するように前記X線管を制御する制御である、請求項17に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記被検体に対する照射計画に連動したパラメータを用いて、前記X線照射条件を決定し、決定したX線照射条件を含む前記撮影計画を決定する、請求項2に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、撮影対象部位、着目物質又は前記被検体の個体差に応じた照射計画に連動した前記パラメータを用いて、前記X線照射条件を決定し、決定したX線照射条件を含む前記撮影計画を決定する、請求項20に記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記複数のエネルギービンそれぞれの前記X線の光子の数、又は、前記複数のエネルギービンそれぞれの単位時間当たりの前記X線の光子の数に基づいて、前記撮影計画を決定する、請求項1〜21のいずれか1つに記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、複数の関心領域それぞれの前記複数のエネルギービンそれぞれの前記X線の光子の数、又は、複数の関心領域それぞれの前記複数のエネルギービンそれぞれの前記X線の光子の数の合計に基づいて、前記撮影計画を決定する、請求項1〜22のいずれか1つに記載のX線診断装置。
前記撮影制御回路は、前記光子計数データに基づいて、前記撮影計画を決定する際に用いられるパラメータを変更する、請求項1〜25のいずれか1つに記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係るX線診断装置及びX線CT装置の各実施形態を詳細に説明する。なお、各実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。
【0011】
第1の実施形態に係るX線診断装置1は、レントゲン画像を撮影する光子計数型のX線一般撮影システムである。
図1に示すように、X線診断装置1は、撮影装置10と、コンソール装置30とを有する。
【0012】
撮影装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の光子をエネルギービン(エネルギー帯、エネルギー区間)ごとに計数する装置である。撮影装置10は、高電圧発生回路11と、照射装置12と、検出器13と、駆動回路14と、収集回路15とを有する。
【0013】
高電圧発生回路11は、後述するX線管12aにX線を発生させるための高電圧を供給する。高電圧発生回路11は、後述するX線管12aに供給する管電圧や管電流を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線の量(X線量)を調整する。
【0014】
照射装置12は、X線管12aと、線質フィルタ12bと、絞り12cとを備える。X線管12aは、高電圧発生回路11から供給される高電圧により、被検体Pに照射するX線を発生する。例えば、X線管12aは、X線を照射する真空管である。線質フィルタ12bは、X線管12aから照射されたX線のX線量を調節するためのX線フィルタである。例えば、線質フィルタ12bは、X線管12aから被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管12aから曝射されたX線を透過して減衰するフィルタである。線質フィルタ12bは、ウェッジフィルター(wedge filter)や、ボウタイフィルター(bow-tie filter)とも呼ばれる。絞り12cは、線質フィルタ12bによってX線量が調節されたX線の照射範囲を絞り込むためのスリットである。例えば、絞り12cは、スライド可能な4枚の絞り羽根を有し、これら絞り羽根をスライドさせることで、X線管12aが発生したX線を絞り込んで被検体Pに照射させる。なお、照射範囲には、関心領域(ROI(Region Of Interest))が含まれる。
【0015】
駆動回路14は、撮影制御回路33からの制御信号に基づいて、照射装置12及び検出器13の位置を移動させる。また、駆動回路14は、撮影制御回路33からの制御信号に基づいて、線質フィルタ12bをX線管12aの前面に移動させたり、線質フィルタ12bをX線管12aの前面から移動させたりする。また、駆動回路14は、撮影制御回路33からの制御信号に基づいて、絞り12cを制御して、被検体Pに照射させるX線の照射範囲の大きさを変更したり、照射範囲の位置を移動させたりする。
【0016】
検出器13は、照射装置12から照射されたX線の入射に応じて検出信号を出力する。このX線は、例えば、被検体Pを透過したX線である。検出器13は、被検体Pを透過したX線の光子(X線光子)を計数するための複数の検出素子を有する。検出器13は、例えば、複数の検出素子が、所定の方向及び所定の方向と交差する方向に規則的に配置されたX線平面検出器である。検出素子は、シンチレータ、フォトダイオード及び検出回路を有する。検出素子は、入射したX線の光子1つ1つをシンチレータにより光に変換し、この光をフォトダイオードにより電荷に変換する。この電荷は、検出回路によってパルス状の電流に変換される。検出器13は、例えば、このパルス状の電流をアナログ形式の波形データとして収集回路15に出力するか、または、パルス状の電流をデジタル形式の波形データに変換して収集回路15に出力する。かかる波形データは、例えば、時間を横軸、電流値を縦軸とする、各時間の電流値を示す波形のデータである。なお、上述したようなシンチレータ及びフォトダイオードを有する検出素子を備える検出器13は、間接変換型の検出器と称される。
【0017】
また、検出器13は、直接変換型の検出器でもよい。直接変換型の検出器とは、検出素子に入射したX線の光子を直接電荷に変換する検出器である。検出器13が直接変換型の検出器である場合、検出素子は、例えば、テルル化カドミウム(CdTe)系の半導体素子である。検出器13が直接変換型の検出器である場合も、検出器13は、検出回路によって電荷をパルス状の電流に変換し、このパルス状の電流をアナログ形式の波形データとして収集回路15に出力するか、または、パルス状の電流をデジタル形式の波形データに変換して収集回路15に出力する。
【0018】
なお、検出器13は、検出素子が一列に配置された検出器や複数の列に検出素子が配置された検出器であってもよい。この場合、X線診断装置1では、駆動回路14によって検出器13の位置を連続的に又は段階的に移動させながらレントゲン画像の撮影を行う。なお、上述の波形データは、検出信号の一例である。
【0019】
また、検出器13の中に、後述する収集回路15及び画像生成回路36を含めることもできる。この場合には、検出器13は、上述した検出器13の機能に加えて、後述する収集回路15及び画像生成回路36の各機能を有する。また、この場合には、検出器13と収集回路15と画像生成回路36とが一体となる。
【0020】
収集回路15は、例えば、DAS(data acquisition system)により実現される。収集回路15は、撮影制御回路33により指定された複数のエネルギービンそれぞれの光子の計数値を示すデータである光子計数データを作成する。例えば、収集回路15は、検出器13の検出素子ごとに、検出素子から出力された波形データに基づいて、波形データのピークの高さから、光子のエネルギーを算出する。また、収集回路15は、検出器13の検出素子ごとに、検出素子から出力された波形データに基づいて、波形データが有するパルスを計数する。そして、収集回路15は、算出したエネルギーを含むエネルギービンを特定し、パルスの計数値を、特定したエネルギービンにおける光子の数とし、特定したエネルギービンにおける光子の数をレジスタに登録する。このようにして、収集回路15は、撮影制御回路33により指定された複数のエネルギービンそれぞれの、検出素子に入射されたX線の光子の数を数える。すなわち、収集回路15は、検出素子ごとに、複数のエネルギービンそれぞれの、入射されたX線の光子を計数する。
【0021】
そして、収集回路15は、検出素子ごとに、検出素子の位置、撮影制御回路33により指定された複数のエネルギービンそれぞれの光子の計数値を示す光子計数データを撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力する。例えば、収集回路15は、検出素子の位置及び複数のエネルギービンそれぞれの光子の計数値を示す光子計数データを作成し、作成した光子計数データを撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力する。
【0022】
例えば、撮影制御回路33により複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin2」及び「Bin3」が指定された場合、収集回路15は(x,y,Count-Bin1,Count-Bin2,Count-Bin3)という形式の光子計数データを撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力する。ここで、「x」は、検出器13の所定の平面における検出素子の位置をX−Y座標で表した場合のX座標の値である。また、「y」は、検出器13の所定の平面における検出素子の位置をX−Y座標で表した場合のY座標の値である。「Count-Bin1」は、エネルギービン「Bin1」の光子の計数値を指す。同様に、「Count-Bin2」は、エネルギービン「Bin2」の光子の計数値を指し、「Count-Bin3」は、エネルギービン「Bin3」の光子の計数値を指す。なお、検出器13の位置が可変である場合には、収集回路15は、検出素子ごとに、検出素子の位置、撮影制御回路33により指定された複数のエネルギービンそれぞれの光子の計数値に加えて、検出器13の位置を示す光子計数データを作成し、作成した光子計数データを撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力することもできる。
【0023】
このようにして、光子計数データを作成する処理を、エネルギービン弁別処理と呼ぶ。
【0024】
ここで、収集回路15は、例えば、波高弁別器を有する。かかる波高弁別器は、複数のエネルギービンの設定に関する条件である設定条件が登録されたレジスタを参照することにより、複数のエネルギービンを用いて、光子計数データを作成する処理を行うことができる。また、波高弁別器は、撮影制御回路33により複数のエネルギービンが指定されると、レジスタに登録された過去の設定条件を消去した上で、指定された新たな複数のエネルギービンの設定条件をレジスタに登録する。これにより、収集回路15は、光子計数データを作成する処理を行う際に用いる複数のエネルギービンを切り換えることができる。
【0025】
また、収集回路15は、所定の周期で、レジスタから、光子計数データを読み出し、読み出した光子計数データを撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力する。かかる所定の周期の一例としては、1/100秒が挙げられる。例えば、収集回路15が、あるタイミングで、座標(x1,y1)が示す位置にある検出素子について、エネルギービン「Bin1」の光子の計数値が「20」であり、エネルギービン「Bin2」の光子の計数値が「30」であり、エネルギービン「Bin3」の光子の計数値が「40」であること示す光子計数データ(x1,y1,20,30,40)をレジスタから読み出し、読み出した光子計数データ(x1,y1,20,30,40)を撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力した場合について説明する。この場合において、そのタイミングから、1/100秒経過するまでの間に、座標(x1,y1)が示す位置にある検出素子について、エネルギービン「Bin1」に含まれるエネルギーを有するX線の1つの光子が計数されると、レジスタには、光子計数データ(x1,y1,21,30,40)が登録される。そのため、そのタイミングから1/100秒経過したタイミングで、収集回路15は、光子計数データ(x1,y1,21,30,40)をレジスタから読み出し、読み出した光子計数データ(x1,y1,21,30,40)を撮影制御回路33及び画像生成回路36に出力する。このように、収集回路15は、所定の周期で光子計数データを出力する。
【0026】
なお、上述したように、検出器13は、X線が入射すると、入射したX線の光子を電気信号に変換する。この電気信号は、光子が入射した直後に大きな値を持ち、時間の経過とともに減衰する。この電気信号の強度及び減衰速度などを計測することにより、収集回路15は、入射したX線の光子を一つ一つ同定し、そのエネルギーを計測することができる。
【0027】
しかしながら、X線管12aの管電流の電流値が増大し、入射するX線の光子の個数が増大すると、検出器13に入射したX線の光子が電気信号に変換され、その電気信号が減衰しない間に、次のX線の光子が入射して電気信号に変換され、最初に入射したX線の光子由来の電気信号の値に可算される。この現象をパイルアップと呼ぶ。パイルアップが発生すると、収集回路15で、複数の光子が入射されたにも関わらず、高いエネルギーを持った光子が1個入射したと誤って計数され、コンソール装置30で生成される画像の質が劣化してしまう。また、パイルアップが発生すると、ピーク位置の特定が困難となり、ピークの高さも変化するため、光子のエネルギーを正確に算出することが困難となる。
【0028】
そこで、収集回路15は、検出器13から出力された波形データの形式がデジタル形式である場合には、パイルアップの影響を低減させるため、エネルギービン弁別処理を行う前又はエネルギービン弁別処理の実行中に、以下に説明するパルス分解処理(Pulse Decomposition処理)を行う。すなわち、収集回路15は、波形データのうちパイルアップが発生している部分の電流値を適当な時間間隔ごとに取得し、複数のピークの境界を特定する。そして、収集回路15は、取得した複数の電流値及び特定した複数のピークの境界に基づいて、複数のピークにフィッティングを施す。そして、収集回路15は、波形データのうちパイルアップが発生している部分から各フィッティング曲線を1つずつ差し引く。これにより、収集回路15は、波形データのピークの計数及びピークの高さに基づくエネルギーの算出を正確に行うことができる。
【0029】
コンソール装置30は、操作者による操作を受け付けるとともに、撮影装置10によって作成された光子計数データを用いてX線画像を生成する装置である。コンソール装置30は、
図1に示すように、入力回路31と、ディスプレイ32と、撮影制御回路33と、画像生成回路36と、記憶回路37と、システム制御回路38とを有する。
【0030】
入力回路31は、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等によって実現される。入力回路31は、X線診断装置1の操作者からの各種指示や各種設定を受け付け、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御回路38に転送する。例えば、入力回路31は、後述する設定条件及び後述するX線照射条件、並びに、X線画像に対する画像処理条件等を受け付け、受け付けた設定条件及びX線照射条件並びに画像処理条件等をシステム制御回路38に転送する。
【0031】
ディスプレイ32は、操作者によって参照される液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。ディスプレイ32は、システム制御回路38に接続されており、システム制御回路38から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ32は、システム制御回路38による制御のもと、レントゲン画像を操作者に表示したり、入力回路31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。なお、レントゲン画像は、X線画像の一例である。
【0032】
撮影制御回路33は、例えば、プロセッサにより実現される。撮影制御回路33は、システム制御回路38の制御のもと、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15の動作を制御することで、撮影装置10における光子計数データの作成を制御する。例えば、撮影制御回路33は、駆動回路14を制御して、照射装置12及び検出器13をレントゲン画像の撮影に適した位置に移動させ、高電圧発生回路11を制御して、被検体PにX線を照射させる。また、撮影制御回路33は、収集回路15を制御して、下記で説明するように各種の光子計数データを作成させる。
【0033】
画像生成回路36は、例えば、プロセッサにより実現される。画像生成回路36は、収集回路15から出力された光子計数データを取得すると、取得した光子計数データに基づいて、レントゲン画像を生成する。なお、レントゲン画像は、例えば、読影医が診断に使用するために用いられる。例えば、画像生成回路36は、光子計数データに対して物質弁別処理(Material Decomposition処理)を施すことによって、レントゲン画像を生成する。このようなレントゲン画像は、弁別対象物質が弁別された画像である。
【0034】
ここで、物質弁別処理とは、光子計数データに基づいて、レントゲン画像を撮影した領域に含まれる物質の種類、原子番号、密度等を弁別する処理である。このような物質弁別処理により弁別される物質の種類、原子番号、密度等は、読影医が診断を行う上で有用な情報である。画像生成回路36が行う物質弁別処理のアルゴリズムについては、公知の様々な物質弁別処理のアルゴリズムを適用することができる。例えば、かかる物質弁別処理のアルゴリズムでは、N個のエネルギービンが用いられて作成された光子計数データを用いた場合には、エネルギービンの数と同数のN個の弁別対象物質が弁別されたレントゲン画像を生成することができる。
【0035】
そして、画像生成回路36は、生成したレントゲン画像を記憶回路37に出力する。
【0036】
記憶回路37は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。記憶回路37は、画像生成回路36から出力されたレントゲン画像を記憶する。
【0037】
システム制御回路38は、例えば、プロセッサにより実現される。システム制御回路38は、撮影装置10及びコンソール装置30の動作を制御することによって、光子計数型のX線診断装置1を制御する。システム制御回路38は、撮影制御回路33を制御することによって、例えば、撮影装置10における光子計数データの作成を制御し、コンソール装置30を制御することによって、レントゲン画像の生成及び表示を制御する。
【0038】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、内部記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0039】
ここで、撮影制御回路33の動作の一例について説明する。以下、X線診断装置1において、弁別する対象の物質(弁別対象物質)の種類が4種類であり、収集回路15が実行するエネルギービン弁別処理における複数のエネルギービンの数が3つ以下である場合を例に挙げて説明するが、弁別対象物質の種類及びエネルギービンの数はこれに限られない。例えば、以下の説明では、ヨード系造影剤及びガドリニウム系造影剤が被検体Pに投与され、Pt構造物によって被検体Pの脳血管の治療が行われる際に、ヨード系造影剤に含まれるヨード、ガドリニウム系造影剤に含まれるガドリニウム、Pt構造物に含まれる白金、及び、被検体Pの頭蓋の4種類の弁別対象物質を弁別する場合について説明する。なお、Pt構造物としては、ステント、ガイドワイヤ、コイル、マーカーなどが挙げられる。また、Pt構造物に代えて、ナノパーティクル(マイクロバブルコーティング)を造影剤として被検体Pに投与してもよい。この場合には、ナノパーティクルが弁別対象物質となる。
【0040】
撮影制御回路33は、上述したように、収集回路15の動作を制御することで、撮影装置10における光子計数データの作成を制御する。
図2は、第1の実施形態に係る撮影制御回路が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。この撮影制御処理は、入力回路31がユーザから設定条件及びX線照射条件を受け付け、受け付けた設定条件及びX線照射条件を撮影制御回路33が受信した場合に実行される。ここで、設定条件とは、例えば、収集回路15が光子計数データを作成する際に用いられる複数のエネルギービンの設定に関する条件である。また、X線照射条件とは、例えば、照射装置12より照射されるX線に関する条件である。ここで、受け付けた設定条件は、予備撮影及び本撮影のそれぞれにおいて収集回路15を制御する際に最初(制御の開始時)に用いられる条件である。また、受け付けたX線照射条件は、予備撮影及び本撮影のそれぞれにおいて高電圧発生回路11及び駆動回路14を制御する際に最初(制御の開始時)に用いられる条件である。そのため、受け付けた設定条件及びX線照射条件は、予備撮影及び本撮影のそれぞれにおける最初の設定条件及びX線照射条件とも称される。
【0041】
図2の例に示すように、撮影制御回路33は、最初の設定条件及びX線照射条件にしたがって、本撮影よりも前に行われる予備撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する(ステップS101)。
【0042】
例えば、ステップS101において、撮影制御回路33は、X線管12aの管電圧や管電流等が、最初のX線照射条件が示す管電圧や管電流等になるように調整する指示を高電圧発生回路11に出力する。これにより、高電圧発生回路11は、X線管12aの管電圧や管電流等が、最初のX線照射条件が示す管電圧や管電流等になるように調整する。
【0043】
また、ステップS101において、撮影制御回路33は、エネルギービン弁別処理を実行する際に用いられる複数のエネルギービンとして、最初の設定条件が示す複数のエネルギービンを設定して、エネルギービン弁別処理を実行する指示を収集回路15に出力する。これにより、収集回路15は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、最初の設定条件が示す複数のエネルギービンに設定して、エネルギービン弁別処理を実行する。そして、収集回路15は、生成した光子計数データを撮影制御回路33等に出力する。
【0044】
そして、撮影制御回路33は、予備撮影において、収集回路15から出力された光子計数データを受信したか否かを判定する(ステップS102)。光子計数データを受信していない場合(ステップS102:No)には、撮影制御回路33は、再び、ステップS102の処理を行う。一方、撮影制御回路33は、光子計数データを受信した場合(ステップS102:Yes)には、以下に説明する処理を行う。すなわち、撮影制御回路33は、受信した光子計数データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する(ステップS103)。
【0045】
そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する(ステップS104)。
【0046】
なお、撮影制御回路33は、ステップS103において、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件のうち、設定条件のみを決定し、ステップS104において、決定した設定条件を含む撮影計画を決定してもよい。また、撮影制御回路33は、ステップS103において、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件のうち、X線照射条件のみを決定し、ステップS104において、決定したX線照射条件を含む撮影計画を決定してもよい。すなわち、撮影制御回路33は、ステップS103において、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件の少なくとも1つを決定し、ステップS104において、決定したX本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件の少なくとも1つを含む撮影計画を決定してもよい。後述する他の実施形態においても同様である。
【0047】
そして、撮影制御回路33は、決定した撮影計画にしたがって予備撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する(ステップS105)。
【0048】
そして、撮影制御回路33は、決定した撮影計画と、決定した撮影計画での撮影の開始タイミング(撮影タイミング)とを対応付けて記憶回路37に格納する(ステップS106)。ここでいう撮影タイミングとは、例えば、予備撮影の開始のタイミングから、決定した撮影計画にしたがって予備撮影を行うように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御したタイミングまでの時間である。なお、予備撮影の開始のタイミングとは、例えば、上述したステップS101において、予備撮影における最初の撮影計画にしたがって予備撮影を行うように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御したタイミングを指す。
【0049】
そして、撮影制御回路33は、全てのエネルギービンについて、光子の数が、後述する対応する閾値を超えたか否かを判定する(ステップS107)。全てのエネルギービンについて、光子の数が、対応する閾値を超えた場合(ステップS107:Yes)には、全てのエネルギービンにおいて、1枚のレントゲン画像を作成する際に必要な光子の数が得られたものと考えられる。このため、撮影制御回路33は、予備撮影を終了し、次のステップS108に進む。一方、全てのエネルギービンのうち少なくとも1つのエネルギービンについて、光子の数が、対応する閾値を超えていない場合(ステップS107:No)には、ステップS102に戻る。このように、予備撮影は、全てのエネルギービンにおいて、1枚のレントゲン画像を作成する際に必要な光子の数が得られるまで行われる。
【0050】
すなわち、撮影制御回路33は、光子計数データを受信するたびに、ステップS103において、受信した光子計数データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。ここで、光子計数データを受信する時間間隔は、上述した所定の周期と同一である。また、撮影制御回路33は、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定するたびに、ステップS104において、撮影計画を決定する。また、撮影制御回路33は、撮影計画を決定するたびに、ステップS105において、決定した撮影計画にしたがって予備撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。また、撮影制御回路33は、予備撮影を行うように制御するたびに、ステップS106において、決定した撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて記憶回路37に格納する。
【0051】
上述したステップS101〜S107の処理により、予備撮影において、1枚のレントゲン画像を作成する際の本撮影における撮影計画が決定される。
【0052】
例えば、上述した最初の撮影計画にしたがって予備撮影を行うように制御され、最初の撮影計画での予備撮影により得られた光子計数データに基づいて撮影計画Aが決定され、撮影計画Aにしたがって予備撮影を行うように制御され、撮影計画Aでの予備撮影により得られた光子計数データに基づいて撮影計画Bが決定され、撮影計画Bにしたがって予備撮影を行うように制御され、撮影計画Bでの予備撮影により得られた光子計数データに基づいて撮影計画Cが決定され、撮影計画Cにしたがって予備撮影を行うように制御された場合について説明する。ここで、予備撮影の開始から、撮影計画Aにしたがって予備撮影を行うように制御するまでの時間を0.01秒とする。また、予備撮影の開始から、撮影計画Bにしたがって予備撮影を行うように制御するまでの時間を0.02秒とする。また、予備撮影の開始から、撮影計画Cにしたがって予備撮影を行うように制御するまでの時間を0.03秒とする。この場合には、撮影制御回路33は、0.01秒と撮影計画Aとを対応付けて記憶回路37に格納する。また、撮影制御回路33は、0.02秒と撮影計画Bとを対応付けて記憶回路37に格納する。また、撮影制御回路33は、0.03秒と撮影計画Cとを対応付けて記憶回路37に格納する。
【0053】
そして、全てのエネルギービンにおいて、1枚のレントゲン画像を作成する際に必要な光子の数が得られると、撮影制御回路33は、本撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。この際、撮影制御回路33は、予備撮影において決定した撮影計画にしたがって本撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御し(ステップS108)、撮影制御処理を終了する。
【0054】
例えば、予備撮影において、0.01秒と撮影計画A、0.02秒と撮影計画B、及び、0.03秒と撮影計画Cが対応付けられて記憶回路37に格納された場合について説明する。この場合には、本撮影において、撮影制御回路33は、まず、記憶回路37から、これらの情報を読み取る。そして、撮影制御回路33は、最初の撮影計画にしたがって本撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。次に、撮影制御回路33は、本撮影の開始から、0.01秒経過したタイミングで、撮影計画Aにしたがって、本撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。次に、撮影制御回路33は、本撮影の開始から、0.02秒経過したタイミングで、撮影計画Bにしたがって、本撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、本撮影の開始から、0.03秒経過したタイミングで、撮影計画Cにしたがって、本撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御する。
【0055】
なお、画像生成回路36は、本撮影により得られた光子計数データに対して物質弁別処理を施すことによって、レントゲン画像を生成する。生成されたレントゲン画像は、例えば、システム制御回路38の制御により、ディスプレイ32に表示される。
【0056】
ここで、設定条件を決定する設定条件決定方法の一例について説明する。
図3〜
図8を参照して、具体的な例を挙げて説明する。
図3は、4種類の弁別対象物質のそれぞれの入射X線エネルギーと、断面積との関係の一例を示すグラフである。
図4、
図6〜
図8は、複数のエネルギービンの一例を示す図である。また、
図5は、設定条件決定方法を模式的に示した図である。
【0057】
図3に例示するグラフは、横軸が入射X線エネルギーの大きさを示し、縦軸が断面積の大きさを示す。
図3に例示するように、ヨード系造影剤に含まれるヨード(Iodine)では、入射X線照射エネルギーが33keV程度の場合に、急激に断面積が不連続的に変化する。したがって、ヨードは、入射エネルギーが33keV程度の場合に、X線の吸収係数が不連続的に変化する物質である。すなわち、ヨードの吸収端は、33keV程度である。また、ガドリニウム系造影剤に含まれるガドリニウム(Gadolinium)では、入射X線照射エネルギーが50keV程度の場合に、急激に断面積が不連続的に変化する。したがって、ガドリニウムは、入射エネルギーが50keV程度の場合に、X線の吸収係数が不連続的に変化する物質である。すなわち、ガドリニウムの吸収端は、50keV程度である。また、Pt構造物に含まれる白金(Pt)では、入射X線照射エネルギーが80keV程度の場合に、急激に断面積が不連続的に変化する。したがって、白金は、入射エネルギーが80keV程度の場合に、X線の吸収係数が不連続的に変化する物質である。すなわち、白金の吸収端は、80keV程度である。また、被検体Pの頭蓋(Bone)では、入射エネルギーが0keVから140keVの間では、なだらかに断面積が変化する。したがって、被検体Pの頭蓋は、入射エネルギーが0keVから140keVの間では、なだらかにX線の吸収係数が変化する物質である。
【0058】
図4には、最初の設定条件の一例が示されている。
図4の例に示す最初の設定条件は、エネルギービン弁別処理を実行する際に用いられるエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」を示す。すなわち、撮影制御回路33は、予備撮影において、まず、最初の設定条件にしたがって、エネルギービン弁別処理を実行する際に用いられる複数のエネルギービンとして、エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」を設定して、エネルギービン弁別処理を実行する指示を収集回路15に出力する。ここで、
図4に例示する複数のエネルギービンについて説明する。
図4に例示するように、複数のエネルギービンは、0keV〜140keVの範囲のエネルギービンを、ヨードの吸収端「33keV」に対応する閾値70とガドリニウムの吸収端「50keV」に対応する閾値71とで分割したものである。エネルギービン「Bin1」は、0keV以上33keV未満の範囲のエネルギービンである。エネルギービン「Bin2」は、33keV以上50keV未満の範囲のエネルギービンである。エネルギービン「Bin3」は、50keV以上140keV未満の範囲のエネルギービンである。
【0059】
ここで、
図4に例示するエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」のそれぞれには、閾値α1,α2,α3が設定されている。エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」が用いられたエネルギービン弁別処理によって作成された光子計数データに対して画像生成回路36により物質弁別処理が施された場合には、物質弁別処理によって3種類の弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」が弁別される。具体的には、エネルギービン「Bin1」において閾値α1よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin2」において閾値α2よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin2」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin3」において閾値α3よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin3」における関心領域内の光子の数の平均値)が多い場合には、物質弁別処理によって弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」を弁別することができる。したがって、複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin2」及び「Bin3」は、3種類の弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」を弁別するためのものである。
【0060】
なお、エネルギービン「BinN(N=1,2,・・・)」における関心領域内の光子の数(計数値)の平均値とは、エネルギービン「BinN」における関心領域内の複数の検出素子の光子の数の平均値を指す。また、複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin2」及び「Bin3」は、第1の複数のエネルギービンの一例である。
【0061】
収集回路15は、上述の指示を受信すると、光子が計数される複数のエネルギービンを、エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」に設定して、エネルギービン弁別処理を実行する。すなわち、収集回路15は、検出素子ごとに、撮影制御回路33により指定されたエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」それぞれの光子の計数値を示すデータである光子計数データを作成する。なお、このような光子計数データは、第1の光子計数データの一例である。そして、収集回路15は、生成した光子計数データを撮影制御回路33に出力する。
【0062】
そして、撮影制御回路33は、光子計数データを受信すると、次の処理を行う。すなわち、撮影制御回路33は、光子計数データが示すエネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」が、閾値α1を超えているか否かを判定し、光子計数データが示すエネルギービン「Bin2」における光子の数の平均値「Count-Bin2」が、閾値α2を超えているか否かを判定するとともに、光子計数データが示すエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値「Count-Bin3」が、閾値α3を超えているか否かを判定する。
【0063】
(ケース1)
光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合(ケース1)について説明する。この場合には、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されていないと考えられる。このため、撮影制御回路33は、
図5に例示するように、収集回路15に対して光子が計数される複数のエネルギービンを現状のまま維持させるための設定条件、例えば、現状のエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」を設定するための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。これにより、収集回路15は、現状のエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」を維持する。なお、
図5中「L」は、対応する閾値以下であることを示し、「H」は、対応する閾値を超えたことを示す。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0064】
(ケース2)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合(ケース2)について説明する。この場合にも、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されていないと考えられる。このため、撮影制御回路33は、
図5に例示するように、収集回路15に対して光子が計数される複数のエネルギービンを現状のまま維持させるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって、予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0065】
(ケース3)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合(ケース3)について説明する。この場合にも、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されていないと考えられる。このため、撮影制御回路33は、
図5に例示するように、収集回路15に対して光子が計数される複数のエネルギービンを現状のまま維持させるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって、予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0066】
(ケース4)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと撮影制御回路33が判定した場合(ケース4)について説明する。この場合にも、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されていないと考えられる。このため、撮影制御回路33は、
図5に例示するように、収集回路15に対して光子が計数される複数のエネルギービンを現状のまま維持させるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって、予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0067】
(ケース5)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと判定した場合(ケース5)について説明する。この場合には、撮影制御回路33は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、
図6に例示するような複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin4」、「Bin5」に切り替える(設定する)ための設定条件を決定する。なお、閾値72は、白金の吸収端「80keV」に対応する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。これにより、収集回路15は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin4」及びエネルギービン「Bin5」に切り替えて、エネルギービン弁別処理を実行する。すなわち、収集回路15は、検出素子ごとに、撮影制御回路33により指定されたエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin4」及びエネルギービン「Bin5」それぞれの光子の計数値を示すデータである光子計数データを作成し、作成した光子計数データを撮影制御回路33等に出力する。なお、かかる光子計数データは、第2の光子計数データの一例である。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0068】
エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin4」及びエネルギービン「Bin5」のそれぞれには、閾値α1,α4,α5が設定されている。エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin4」及びエネルギービン「Bin5」が用いられたエネルギービン弁別処理によって作成された光子計数データに対して画像生成回路36により物質弁別処理が施された場合には、物質弁別処理によって3種類の弁別対象物質「ヨード」、「頭蓋」、「白金」が弁別される。具体的には、エネルギービン「Bin1」において閾値α1よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin4」において閾値α4よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin4」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin5」において閾値α5よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値)が多い場合には、物質弁別処理によって弁別対象物質「ヨード」、「頭蓋」、「白金」を弁別することができる。したがって、複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin4」及び「Bin5」は、3種類の弁別対象物質「ヨード」、「頭蓋」、「白金」を弁別するためのものである。また、複数のエネルギービン「Bin1」、「Bin4」及び「Bin5」は、第2の複数のエネルギービンの一例である。
【0069】
(ケース6)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと判定した場合(ケース6)について説明する。この場合には、撮影制御回路33は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、
図7に例示するような複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」、「Bin5」に切り替えるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。これにより、収集回路15は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、エネルギービン「Bin6」、エネルギービン「Bin7」及びエネルギービン「Bin5」に切り替えて、エネルギービン弁別処理を実行する。すなわち、収集回路15は、検出素子ごとに、撮影制御回路33により指定されたエネルギービン「Bin6」、エネルギービン「Bin7」及びエネルギービン「Bin5」それぞれの光子の計数値を示すデータである光子計数データを作成し、作成した光子計数データを撮影制御回路33等に出力する。なお、かかる光子計数データは、第2の光子計数データの一例である。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0070】
エネルギービン「Bin6」、エネルギービン「Bin7」及びエネルギービン「Bin5」のそれぞれには、閾値α6,α7,α5が設定されている。エネルギービン「Bin6」、エネルギービン「Bin7」及びエネルギービン「Bin5」が用いられたエネルギービン弁別処理によって作成された光子計数データに対して画像生成回路36により物質弁別処理が施された場合には、物質弁別処理によって3種類の弁別対象物質「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」が弁別される。具体的には、エネルギービン「Bin6」において閾値α6よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin7」において閾値α7よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin5」において閾値α5よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値)が多い場合には、物質弁別処理によって弁別対象物質「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することができる。したがって、複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」及び「Bin5」は、3種類の弁別対象物質「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別するためのものである。また、複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」及び「Bin5」は、第2の複数のエネルギービンの一例である。
【0071】
(ケース7)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると判定した場合(ケース7)について説明する。この場合には、ケース6と同様に、撮影制御回路33は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、先の
図7に例示するような複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」、「Bin5」に切り替えるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0072】
(ケース8)
また、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと判定した場合(ケース8)について説明する。この場合には、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されている。そのため、この場合には、撮影制御回路33は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、
図8に例示するような複数のエネルギービン「Bin8」、「Bin5」に切り替えるための設定条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。これにより、収集回路15は、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンを、エネルギービン「Bin8」及びエネルギービン「Bin5」に切り替えて、エネルギービン弁別処理を実行する。すなわち、収集回路15は、検出素子ごとに、撮影制御回路33により指定されたエネルギービン「Bin8」及びエネルギービン「Bin5」それぞれの光子の計数値を示すデータである光子計数データを作成し、作成した光子計数データを撮影制御回路33等に出力する。なお、かかる光子計数データは、第2の光子計数データの一例である。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0073】
エネルギービン「Bin8」及びエネルギービン「Bin5」のそれぞれには、閾値α8,α5が設定されている。エネルギービン「Bin8」及びエネルギービン「Bin5」が用いられたエネルギービン弁別処理によって作成された光子計数データに対して画像生成回路36により物質弁別処理が施された場合には、物質弁別処理によって1種類の弁別対象物質「白金」が弁別される。具体的には、エネルギービン「Bin8」において閾値α8よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin8」における関心領域内の光子の数の平均値)が多く、エネルギービン「Bin5」において閾値α5よりも計数された光子の数(エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の計数値の平均値)が多い場合には、物質弁別処理によって弁別対象物質「白金」を弁別することができる。したがって、複数のエネルギービン「Bin8」及び「Bin5」は、1種類の弁別対象物質「白金」を弁別するためのものである。また、複数のエネルギービン「Bin8」及び「Bin5」は、第2の複数のエネルギービンの一例である。
【0074】
そして、撮影制御回路33は、ケース5〜ケース8のそれぞれにおいて、エネルギービン弁別処理において光子が計数される複数のエネルギービンが切り替えられた収集回路15から所定の周期で出力される光子計数データを受信する度に、次の処理を行う。すなわち、撮影制御回路33は、物質弁別処理によって4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったか否かを判断する。
【0075】
例えば、ケース5では、既に、「Bin2」及び「Bin3」については、物質弁別処理において弁別対象物質の弁別に必要な光子が計数されている。このため、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、エネルギービン「Bin4」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin4」が閾値α4を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたか否かを判定する。エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、エネルギービン「Bin4」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin4」が閾値α4を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたと判定した場合には、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断する。一方、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であるか、エネルギービン「Bin4」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin4」が閾値α4以下であるか、又は、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5以下であると判定した場合には、撮影制御回路33は、まだ、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど光子の数が多くなっていないと判断する。
【0076】
また、ケース6では、既に、「Bin1」及び「Bin3」については、物質弁別処理において弁別対象物質の弁別に必要な光子が計数されている。このため、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6を超え、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたか否かを判定する。エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6を超え、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたと判定した場合には、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断する。一方、エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6以下であるか、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7以下であるか、又は、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5以下であると判定した場合には、撮影制御回路33は、まだ、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど光子の数が多くなっていないと判断する。
【0077】
また、ケース7では、既に、「Bin1」及び「Bin2」については、物質弁別処理において弁別対象物質の弁別に必要な光子が計数されている。このため、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6を超え、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたか否かを判定する。エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6を超え、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたと判定した場合には、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断する。一方、エネルギービン「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」が閾値α6以下であるか、エネルギービン「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」が閾値α7以下であるか、又は、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5以下であると判定した場合には、撮影制御回路33は、まだ、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど光子の数が多くなっていないと判断する。
【0078】
また、ケース8では、既に、物質弁別処理によって弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」を弁別することができるほど多くの光子が計数されているため、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin8」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin8」が閾値α8を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたか否かを判定する。エネルギービン「Bin8」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin8」が閾値α8を超え、かつ、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5を超えたと判定した場合には、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断する。一方、エネルギービン「Bin8」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin8」が閾値α8以下であるか、又は、エネルギービン「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」が閾値α5以下であると判定した場合には、撮影制御回路33は、まだ、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど光子の数が多くなっていないと判断する。
【0079】
そして、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断した場合には、予備撮影を終了するために、予備撮影における照射装置12によるX線の照射を終了するように高電圧発生回路11を制御する。
【0080】
以上、設定条件を決定する設定条件決定方法の一例について説明した。上述したような設定条件決定方法で決定された設定条件を含む撮影計画にしたがって本撮影が行われる。
【0081】
ここで、本撮影において、1枚のレントゲン画像の撮影中に、上述したケース6において
図7に例示するような複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」、「Bin5」に切り替えられた場合について説明する。この場合において、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断したときには、「Bin2」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin2」を、次のように算出する。すなわち、撮影制御回路33は、「Bin6」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin6」から、「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」を引いた差を、「Bin2」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin2」として算出する。そして、撮影制御回路33は、算出した「Count-Bin2」の平均値を画像生成回路36に出力する。これにより、画像生成回路36において、物質弁別処理により、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能となる。
【0082】
また、本撮影において、1枚のレントゲン画像の撮影中に、上述したケース7において
図7に例示するような複数のエネルギービン「Bin6」、「Bin7」、「Bin5」に切り替えられた場合について説明する。この場合において、撮影制御回路33は、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能なほど各エネルギービンの光子の数が多くなったと判断したときには、「Bin3」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin3」を、次のように算出する。すなわち、撮影制御回路33は、「Bin7」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin7」と、「Bin5」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin5」との和を、「Bin3」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin3」として算出する。そして、撮影制御回路33は、算出した「Count-Bin3」の平均値を画像生成回路36に出力する。これにより、画像生成回路36において、物質弁別処理により、4種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を弁別することが可能となる。
【0083】
上述したように、撮影制御回路33は、予備撮影において、次のような条件を決定する。すなわち、撮影制御回路33は、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」が弁別されることが可能な設定条件を決定する。そのため、画像生成回路36は、決定された設定条件を含む撮影計画に基づく本撮影により得られる光子計数データを用いた物質弁別処理によって、全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」を精度良く弁別することができる。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができる。
【0084】
次に、X線照射条件を決定するX線照射条件決定方法の一例について説明する。撮影制御回路33は、予備撮影において、収集回路15から所定の周期で送信される光子計数データを受信するたびに、本撮影におけるX線照射条件を決定する。第1の実施形態に係る撮影制御回路33は、例えば、本撮影におけるX線照射条件として、X線管12aの電圧や電流に関するX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって、本撮影が行われるように、高電圧発生回路11及び駆動回路14を制御する。すなわち、撮影制御回路33は、撮影計画にしたがって本撮影が行われるように、高電圧発生回路11及び駆動回路14を介して、照射装置12を制御する。
【0085】
図9は、X線照射条件決定方法を模式的に示した図である。ここでは、エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」が設定され、エネルギービン弁別処理を実行する収集回路15から出力された光子計数データに基づいて、撮影制御回路33がX線照射条件を決定する場合について説明する。
【0086】
本実施形態では、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件、管電流を小さくするためのX線照射条件、管電圧を高くするためのX線照射条件、及び、管電圧を低くするためのX線照射条件の4種類のX線照射条件を決定する。
【0087】
まず、管電流について考える。管電流が大きくなると、X線管12aから放出されるX線光子の数が増加する。管電流が大きくなると、すべてのエネルギービンについて、光子の数が、おおむね同じ割合で増大する。
【0088】
これに対して、管電圧が大きくなると、X線管12aから放出されるX線光子のエネルギーが増大する。照射されるX線のエネルギーのピークが高エネルギー側にシフトすることになるので、高エネルギーのエネルギービンでの光子の計数値の増加率(カウントレート、単位時間当たりの光子の数)が増加し、逆に低エネルギーのエネルギービンでの光子の計数値の増加率が減少する。
【0089】
同様に、管電圧が小さくなると、X線管12aから放出されるX線光子のエネルギーが減少するので、高エネルギーのエネルギービンでの光子の計数値の増加率が減少し、逆に低エネルギーのエネルギービンでの光子の計数値の増加率が増大する。
【0090】
これらのことを踏まえて、撮影制御回路33は、予備撮影において、光子計数データを受信するたびに、以下で説明する処理を行う。例えば、撮影制御回路33は、まず、光子計数データが示すエネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値「Count-Bin1」が、閾値α1を超えているか否かを判定し、光子計数データが示すエネルギービン「Bin2」における光子の数の平均値「Count-Bin2」が、閾値α2を超えているか否かを判定するとともに、光子計数データが示すエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値「Count-Bin3」が、閾値α3を超えているか否かを判定する。
【0091】
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができるほど多くの光子が計数されている。そのため、この場合には、撮影制御回路33は、管電流及び管電圧を現状のまま維持させるためのX線照射条件を決定する。例えば、撮影制御回路33は、現状の管電流及び管電圧をX線照射条件として決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、高電圧発生回路11等を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0092】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、低エネルギーのエネルギービンでは十分な光子の数が計数されているのに対して、高エネルギーのエネルギービンでは、光子の数が不足している。よって、撮影制御回路33は、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0093】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、管電圧を高くしても低くしてもうまくいかないと考えられるため、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0094】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、低エネルギーのエネルギービンでは十分な光子の数が計数されているのに対して、高エネルギーのエネルギービンでは、光子の数が不足している。よって、撮影制御回路33は、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0095】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、高エネルギーのエネルギービンでは十分な光子の数が計数されているのに対して、低エネルギーのエネルギービンでは、光子の数が不足している。よって、撮影制御回路33は、管電圧を低くするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0096】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2を超え、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、管電圧を高くしても低くしてもうまくいかないと考えられるため、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0097】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えたと撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、高エネルギーのエネルギービンでは十分な光子の数が計数されているのに対して、低エネルギーのエネルギービンでは、光子の数が不足している。よって、撮影制御回路33は、管電圧を低くするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0098】
また、
図9に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下であると撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、全てのエネルギービンについて、光子の数が不足しているので、管電流を大きくして、全体的な光子の数を増やす必要がある。そこで、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、収集回路15を制御する。そして、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件を含む撮影計画と、撮影タイミングとを対応付けて、記憶回路37に格納する。
【0099】
以上、設定条件を決定するX線照射条件決定方法の一例について説明した。上述したようなX線照射条件決定方法で決定されたX線照射条件を含む撮影計画にしたがって本撮影が行われる。このような本撮影では、光子の数が十分でないエネルギービンでの計数値が増加するようにX線照射条件を適応的に変更する。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、被ばく量を低減させることができる。
【0100】
以上、第1の実施形態に係るX線診断装置1について説明した。第1の実施形態に係るX線診断装置1によれば、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、また、被ばく量を低減させることができる。したがって、第1の実施形態に係るX線診断装置1は、高い利便性を有する。
【0101】
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。第1の実施形態では、一部のエネルギービンの光子の数の平均値が対応する閾値以下であると判定されたとき、「管電流を大きくする」又は「管電圧を変化させる」ためのX線照射条件を決定する場合について説明した。第1の実施形態の第1の変形例では、そのような状況において、第1の実施形態と異なるX線照射条件を決定する。
図10は、第1の実施形態の第1の変形例に係るX線照射条件決定方法を模式的に示した図である。
【0102】
図10において、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下である場合、及び、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えた場合以外の場合において決定されるX線照射条件は、先の
図9に示す場合において決定されるX線照射条件と同様である。
図9の例では、『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下である場合』では、管電圧を高くするためのX線照射条件が決定される。また、
図9の例では、『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えた場合』では、管電圧を低くするためのX線照射条件が決定される。
【0103】
一方、第1の実施形態の第1の変形例では、
図10の例に示すように、上述した双方の場合で、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。すなわち、X線エネルギーのピークをシフトするのではなく、全てのエネルギービンの光子の計数値を底上げすることで、全てのエネルギービンで、必要な光子のカウント数を確保できるようにする。
【0104】
(第1の実施形態の第2の変形例)
また、上述した第1の実施形態では、撮影制御回路33が、各エネルギービンにおける関心領域内の光子の数の平均値が対応する閾値より高いか低いかの2段階で、設定条件を決定する場合について説明した。しかしながら、各エネルギービンにおける関心領域内の光子の数の平均値を3以上の多段階のレベルに分類し、分類結果に応じて、設定条件を決定してもよい。そこで、このような実施形態を第1の実施形態の第2の変形例として説明する。
【0105】
図11は、第1の実施形態の第2の変形例に係る設定条件決定処理の一例を説明するための図である。
図11は、エネルギービンごとに、関心領域内の光子の数の平均値を多段階のレベルに分類する方法の一例を説明するための図である。関心領域内の光子の数の平均値xに対して、各エネルギービンに、さらに、閾値Cが設定される。閾値Cは、第1の実施形態で説明した各エネルギービンに設定される閾値α1〜α8よりも小さい値である。なお、以下、閾値α1〜α8を区別することなく説明する場合には、閾値αと表記する。
【0106】
関心領域内の光子の数の平均値xが閾値Cよりも大きく閾値α以下となるエネルギービンの数が1つである場合(カウントレベル「L1」の場合)には、撮影制御回路33は、上述のケース5及びケース7のうち、光子の数の平均値xと閾値αとの条件が合致するケースで説明した内容の処理を行う。
【0107】
また、関心領域内の光子の数の平均値xが閾値C以下となるエネルギービンの数が1つである場合(カウントレベル「L2」の場合)には、このエネルギービンでは、ほとんど光子が計数されていないと考えられる。そのため、より多くの光子が迅速に計数されるように、このエネルギービンの幅を大きくして、エネルギービン弁別処理が行われることが好ましい。そこで、撮影制御回路33は、上述のケース5の場合に、カウントレベル「L2」となったときには、エネルギービン「Bin1」の幅が大きくされた複数のエネルギービン(「Bin1’」、「Bin4」、「Bin5」)を用いてエネルギービン弁別処理を行うように収集回路15を制御する。これにより、より多くの光子を迅速に計数することができる。なお、「Bin1’」は、エネルギービン「Bin1」の幅を大きくしたエネルギービンを指す。
【0108】
また、撮影制御回路33は、上述のケース7の場合に、カウントレベル「L2」となったときには、エネルギービン「Bin7」の幅が大きくされた複数のエネルギービン(「Bin6」、「Bin7’」、「Bin5」)を用いてエネルギービン弁別処理を行うように収集回路15を制御する。これにより、より多くの光子を迅速に計数することができる。なお、「Bin7’」は、エネルギービン「Bin7」の幅を低エネルギー側に大きくしたエネルギービンを指す。
【0109】
このように第1の実施形態の第2の変形例によれば、光子の数の平均値xが閾値α以下であっても、平均値xが閾値αに近いのか、それとも、平均値xが閾値C以下となるようなかなり小さい値であるのかによって、収集回路15がエネルギービン弁別処理を行う際に用いるエネルギービンの幅を適切に変化させる。したがって、第1の実施形態の第2の変形例によれば、より短い時間で、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができる。
【0110】
また、第1の実施形態の第2の変形例によれば、光子の数の平均値xが閾値C以下である場合に、収集回路15がエネルギービン弁別処理を行う際に用いるエネルギービンの幅を未知の弁別対象物質を弁別可能な幅のエネルギービンに変化させることもできる。この場合には、弁別対象物質が未知である場合などに有効である。
【0111】
(第1の実施形態の第3の変形例)
第1の実施形態の第3の変形例として、予備撮影及び本撮影の開始時の設定条件及びX線照射条件並びに撮影計画が、保持された照射計画(駆動計画、X線照射計画)ごとに、予め設定されて(プリセットされて)いても良い。例えば、撮影制御回路33は、被検体Pに対する照射計画に連動したパラメータを用いて、X線照射条件を決定し、決定したX線照射条件を含む撮影計画を決定する。ここで、照射計画に連動したパラメータとして、例えば、注目部位(物質)、検査、患者体型、患者年齢等が挙げられる。一例として、撮影制御回路33は、撮影対象部位、着目物質又は被検体Pの個体差に応じた照射計画に連動したパラメータを用いて、X線照射条件を決定する。
【0112】
ここで、照射計画とは、撮影対象、被検体の固体差、用いる造影剤の種類、被検体の年齢等の情報を考慮し、照射するX線の照射時間、強度、エネルギー及び範囲等のX線照射条件や、弁別対象物質を定めた計画のことを言う。
【0113】
なお、撮影対象等の違いにより、適切なX線照射条件は異なる。第1の例として、胸部を撮影する場合と腕を撮影する場合では、適切なX線の照射条件(管電圧、管電流)が異なる。撮影対象部位によって、X線の吸収率が異なり、また、撮影対象部位の厚みが異なるからである。第2の例として、被検体Pの固体差に応じて、適切なX線の照射条件が異なる。例えば、太っている人と、痩せている人では、体厚が異なるため、照射すべきX線のエネルギー及び、強さが異なる。第3の例として、造影撮影に用いる造影剤の種類や、物質弁別処理において注目する物質(弁別対象物質)の種類によっても、適切なX線の照射条件が異なる。
【0114】
従って、照射計画に連動して、開始時の設定条件及びX線照射条件、並びに、撮影計画をプリセットしておくことで、撮影対象等に応じて適切な撮影をすることが可能になる。
【0115】
(第1の実施形態の第4の変形例)
各エネルギービンにおける関心領域内の光子の数の平均値を3以上の多段階のレベルに分類し、分類結果に応じて、きめ細やかにX線照射条件を決定してもよい。そこで、このような実施形態を第1の実施形態の第4の変形例として説明する。
【0116】
図12及び
図13は、第1の実施形態の第4の変形例に係るX線照射条件決定処理の一例を説明するための図である。
【0117】
図12は、エネルギービンごとに、関心領域内の光子の数の平均値を多段階のレベルに分類する方法の一例を示す。関心領域内の光子の数の平均値xに対して、各エネルギービンに、さらに、第1の閾値「C1」、第2の閾値「C2」、第3の閾値「C3」、第4の閾値「C4」が設定される。閾値C1〜C3は、第1の実施形態で説明した各エネルギービンに設定される閾値αよりも小さい値である。また、C1〜C4の大小関係について説明すると、C1<C2<C3<α<C4である。
図12に示す例では、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の平均値xが閾値C1よりも小さい場合には、対応するエネルギービンのカウントレベルが「L1」であると判定する。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値C1以上であり、かつ、閾値C2未満である場合には、対応するエネルギービンのカウントレベルが「L2」であると判定する。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値C2以上であり、かつ、閾値C3未満である場合には、対応するエネルギービンのカウントレベルが「L3」であると判定する。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値αを超え、かつ、閾値C3以上であるとともに閾値C4未満である場合には、対応するエネルギービンのカウントレベルが「H1」であると判定する。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値C4以上である場合には、対応するエネルギービンのカウントレベルが「H2」であると判定する。
【0118】
全てのエネルギービンについて、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値α以下である場合、すなわち、全てのエネルギービンのカウントレベルが「L1」、「L2」及び「L3」のいずれかである場合、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。
【0119】
第1の実施形態の第4の変形例では、この場合に、撮影制御回路33は、更にどの程度光子の数が足りないかに応じて、
図13に示すように、大きくさせる管電流の量を変化させる。
【0120】
全てのエネルギービンについて、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値α以下である場合において、一つ以上のエネルギービンのカウントレベルが「L1」であるとき、管電流が必要量に比べ大幅に不足していると考えられる。このため、撮影制御回路33は、管電流を現在の管電流に比べて0.5mA増加させるためのX線照射条件を決定する。また、全てのエネルギービンについて、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値α以下である場合において、全てのエネルギービンのカウントレベルが、「L1」でなく、かつ、「L2」が1つ以上ある場合には、管電流は必要量に比べて中程度不足しているので、撮影制御回路33は、管電流を現在の管電流に比べて0.2mA増加させるためのX線照射条件を決定する。また、全てのエネルギービンのカウントレベルが「L3」である場合には、管電流は微小な量だけ不足しているので、撮影制御回路33は、管電流を現在の管電流に比べて0.1mA増加させるためのX線照射条件を決定する。
【0121】
このように、各エネルギービンについて、X線の光子の数を多段階のカウントレベルに分類することで、きめ細かい制御をすることができ、被検体Pの被ばく量を抑えることができる。
【0122】
(第1の実施形態の第5の変形例)
また、記憶回路37が、本撮影において制御に用いた撮影計画の履歴を示す履歴情報を記憶し、撮影制御回路33が、決定した撮影計画にしたがって本撮影を行うように制御するたびに、記憶回路37に記憶された履歴情報に、撮影計画を登録してもよい。これにより、履歴情報には、実際に本撮影において制御に用いた撮影計画の履歴が登録される。ユーザは、この履歴情報を参照することで、実際に本撮影において制御に用いた撮影計画を把握することができる。そこで、このような実施形態を第1の実施形態の第5の変形例として説明する。
【0123】
図14は、履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。
図14の例に示すように、履歴情報は、「Time」、「X−Ray kV」、「X−Ray mA」、「(X0,Y0,X1,Y2)」及び「タイプ」の各項目を有する。
【0124】
「Time」の項目には、本撮影を開始したタイミングから、本撮影において撮影計画にしたがって制御を行ったタイミングまでの時間が登録される。「X−Ray kV」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間にX線管12aが制御された、単位を「kV」とする管電圧の大きさが登録される。「X−Ray mA」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間にX線管12aが制御された、単位を「mA」とする管電流の大きさが登録される。
図15は、照射領域の一例を示す図である。「(X0,Y0,X1,Y2)」には、
図15に示すように、照射領域のX−Y座標における原点に最も近い位置(X0,Y0)が登録されるとともに、照射領域のX−Y座標における原点に最も遠い位置(X1,Y1)が登録される。「タイプ」の項目には、同一のレコードの「Time」の項目に登録された時間に用いた線質フィルタ12bの識別子が登録される。例えば、
図14の例に示す履歴情報の1番目のレコードは、時間「0」の場合に、撮影制御回路33が、管電圧が「90」kVとなり、管電流が「100」mAとなるように流れるように、高電圧発生回路11を介してX線管12aを制御し、照射領域のXY座標における原点に最も近い位置が(0,0)となり、最も遠い位置が(1024,1024)となるように絞り12cを制御し、識別子「1」が示す線質フィルタ12bをX線管12aの前面に移動させるように制御したことを示す。なお、X線管12aの出力(X線出力)をモニタできる他の検出器を用いて、X線出力をモニタリングするようにしてもよい。
【0125】
(第1の実施形態の第6の変形例)
第1の実施形態では、撮影制御回路33が、本撮影よりも前に行われる予備撮影において設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する場合について説明した。しかしながら、撮影制御回路33は、更に、予備撮影において決定した撮影計画に基づく本撮影中に、収集回路15から出力された光子計数データに基づいて、撮影計画を更新し、更新した撮影計画にしたがって本撮影が行われるように制御してもよい。
【0126】
例えば、撮影制御回路33は、予備撮影において決定した撮影計画に基づく本撮影中に、定期的に、収集回路15から出力される光子計数データに基づいて設定条件及びX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、予備撮影において決定した設定条件及びX線照射条件を、本撮影中に決定した設定条件及びX線照射条件で更新する。そして、撮影制御回路33は、本撮影中に、更新後の設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定し、決定した撮影計画にしたがって本撮影が行われるように、高電圧発生回路11及び駆動回路14を介して照射装置12を制御するとともに収集回路15を制御する。これにより、本撮影中に、リアルタイム(ON−TIME)で、収集回路15が出力した光子計数データに基づいて設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画にしたがって本撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御するフィードバック制御が行われる。これにより、多くの弁別対象物質を更に高精度で推定することができ、また、被ばく量を更に低減させることができる。したがって、第1の実施形態の第6の変形例に係るX線診断装置は、更に高い利便性を有する。
【0127】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態及び各変形例では、撮影制御回路33が、エネルギービンごとに、関心領域内の光子の数の平均値xと、閾値αとを比較して、比較結果に応じて撮影計画を決定する場合について説明した。しかしながら、撮影制御回路33は、複数のエネルギービンそれぞれの関心領域内の光子の数の平均値xから定まる複数のエネルギービンそれぞれのノイズ成分と、対応する所定の閾値との比較結果に応じて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定してもよい。そこで、このような実施形態を第2の実施形態として説明する。
【0128】
まず、ノイズ成分の算出方法の一例について説明する。例えば、撮影制御回路33は、エネルギービンごとに、ノイズ成分を算出する。具体例を挙げて説明すると、撮影制御回路33は、収集回路15から出力された光子計数データに基づいて、エネルギービンごとに、関心領域内の全ての検出素子に対応する全てのX線の光子の数と、関心領域内の光子の数の平均値xとから、関心領域内の光子の数のばらつきを示す標準偏差をノイズ成分として算出する。ここで、関心領域内の光子の数のばらつきが大きいほど、ノイズ成分は大きくなる。したがって、標準偏差が大きいほど、ノイズ成分が大きくなる。なお、所定の周期で、光子計数データが収集回路15から出力されるので、撮影制御回路33は、更に、時間軸方向における複数の光子計数データに基づいて、ノイズ成分を算出してもよい。すなわち、撮影制御回路33は、同一の検出素子において経時的な関心領域内の光子の数の平均値のばらつきも加味して、ノイズ成分を算出してもよい。
【0129】
なお、第2の実施形態では、エネルギービンごとに、ノイズ成分との比較に用いられる閾値が定められている。ここで、上述した第1の実施形態及び各変形例では、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値αを超えた場合に、対応するエネルギービンにおいて、1枚のレントゲン画像を生成するのに必要なX線の光子の数が十分である場合について説明した。一方、ノイズ成分は、レントゲン画像を生成する際に、なるべく小さいことが望ましい。そこで、第2の実施形態に係る撮影制御回路33は、エネルギービンごとに、ノイズ成分が対応する閾値以下であるか否かを判定し、判定結果に応じて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。以下、撮影制御回路33が、本撮影における設定条件を決定する例について説明するが、同様の方法で、撮影制御回路33は、本撮影におけるX線照射条件を決定することができる。
【0130】
図16は、第2の実施形態に係る設定条件決定方法を模式的に示した図である。
図16と先の
図5とを比較すると、「L」と「H」が入れ替わっている。これは、ノイズ成分が対応する閾値以下である場合に、対応するエネルギービンにおいて、ノイズ成分の大きさが、レントゲン画像が生成される際に許容できる大きさであると考えられるからである。
【0131】
図16の例に示すケース9〜16のうち、ケース9を例に挙げて説明する。すなわち、エネルギービン「Bin1」のノイズ成分が、対応する閾値を超え、エネルギービン「Bin2」のノイズ成分が、対応する閾値を超え、エネルギービン「Bin3」のノイズ成分が、対応する閾値を超えたと撮影制御回路33が判定した場合について説明する。この場合には、全てのエネルギービンにおいてノイズ成分が大きいため、画像生成回路36が実行する物質弁別処理によって、3種類の全ての弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」について弁別することができないと考えられる。このため、撮影制御回路33は、
図16に例示するように、収集回路15に対して光子が計数される複数のエネルギービンを現状のまま維持させるための設定条件、例えば、現状のエネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」を設定するための設定条件を決定する。ケース10〜16についても同様に、撮影制御回路33は、
図16の例に示す設定条件を決定する。
【0132】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、撮影制御回路33が、収集回路15から出力された光子計数データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する場合について説明した。しかしながら、撮影制御回路33は、過去に、X線診断装置1、他のX線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、又は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置により生成された被検体Pの画像データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定してもよい。そこで、このような実施形態を第3の実施形態として説明する。
【0133】
ここで、第3の実施形態では、上述した被検体Pの画像データが、記憶回路37に記憶されている。
【0134】
図17は、第3の実施形態に係る撮影制御回路が実行する撮影制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0135】
図17の例に示すように、撮影制御回路33は、被検体Pの画像データを記憶回路37から取得する(ステップS201)。なお、被検体Pの画像データが外部の装置に保持されている場合には、撮影制御回路33は、外部の装置から被検体Pの画像データを取得してもよい。
【0136】
そして、撮影制御回路33は、取得した画像データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する(ステップS202)。例えば、ステップS202において、撮影制御回路33は、被検体Pの画像データから、既知である弁別対象物質の特性を用いて、検出素子ごとの複数のエネルギービンそれぞれの光子の数を示す光子計数データを推定する。そして、撮影制御回路33は、推定した光子計数データに基づいて、上述した第1の実施形態及び各変形例と同様の方法で、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。また、ステップS202において、撮影制御回路33は、仮に、決定した設定条件及びX線照射条件にしたがって予備撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御した場合の撮影タイミングを推定する。
【0137】
そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する(ステップS203)。そして、撮影制御回路33は、決定した撮影計画と、推定した撮影タイミングとを対応付けて記憶回路37に格納する(ステップS204)。そして、撮影制御回路33は、決定した撮影計画にしたがって、本撮影を行うように、高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御し(ステップS205)、撮影制御処理を終了する。
【0138】
以上、第3の実施形態について説明した。第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、また、被ばく量を低減させることができる。したがって、第3の実施形態に係るX線診断装置は、高い利便性を有する。
【0139】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第1の実施形態では、撮影制御回路33が、関心領域内の光子の数の平均値xに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する場合について説明した。第4の実施形態では、撮影制御回路33が、関心領域内の光子の数の平均値x以外の量(情報)に基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する場合について説明する。
【0140】
第4の実施形態では、撮影制御回路33が、複数のエネルギービンそれぞれの単位時間当たりの計数値(例えば、関心領域内の複数の検出素子のエネルギービンごとの単位時間当たりの光子の計数値の平均値(以下、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値と称する))に基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。
【0141】
関心領域内の光子の数の平均値ではなく、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値を用いることの意義の一例として、例えば、上述したパルスパイルアップの対策をすることができることがあげられる。
【0142】
パルスパイルアップが起こる確率は、X線の光子が単位時間に入射する個数が大きくなればなるほど大きくなる。従って、例えば、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値を用いて、第1の実施形態と同じようにX線照射条件を決定しつつ、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値が所定の閾値を超えたときには、それ以上管電流を増加させないように制御することで、パルスパイルアップ対策を行うことができる。
【0143】
また、撮影制御回路33は、管電流の値を変化させるためのX線照射条件を決定するか管電圧の値を変化させるためのX線照射条件を決定するかの判断基準として、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値を用いることができる。例えば、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値が所定の閾値以下である場合には、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値が所定の閾値を超えた場合には、これ以上の管電流の増加はパルスパイルアップを招くと考えられるため、管電圧を変化させるためのX線照射条件を決定する。
【0144】
上述したように、第4の実施形態では、被ばく量を低減することができるとともに、パルスパイルアップが発生する確率も低減させることができる。
【0145】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第1〜第4の実施形態では、撮影制御回路33が、管電圧や管電流等のX線管12aの電圧や電流に関するX線照射条件を決定する場合について説明した。第5の実施形態では、撮影制御回路33は、X線管12aの線質フィルタ12bの制御に関するX線照射条件を決定し、線質フィルタ12bの制御に関するX線条件を含む撮影計画を決定する。
【0146】
線質フィルタ12bは、上述したように、特定のエネルギーのX線をカットするために使用されるフィルタであり、例えば、アルミニウム等が用いられる。線質フィルタ12bは、典型的には軟線(波長が長くエネルギーが低いX線)をカットするために用いられる。撮影制御回路33は、エネルギービンごとの光子の計数値に基づいて、線質フィルタ12bを用いるか否かを制御することによっても、被検体Pの被ばく量を低減させることができる。
【0147】
図18及び
図19は、第5の実施形態に係る撮影制御処理の一例を説明するための図である。なお、線質フィルタ12bは、エネルギー値が、エネルギービン「Bin1」の範囲に含まれるX線を、選択的にカットするものとする。第5の実施形態に係る撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin2」及びエネルギービン「Bin3」については、第1の実施形態と同様に、関心領域内の光子の数の平均値が対応する閾値を超えているか否かを判定する。エネルギービン「Bin1」に関しては、
図18に示す判定条件を用いてカウントレベルの判定を行う。
【0148】
図18は、第5の実施形態において、撮影制御回路33が、線質フィルタ12bに対応するエネルギービン「Bin1」に対して、関心領域内の光子の数の平均値を、どのようなカウントレベルに割り振るかを説明するための図である。ここで、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値を「x」、第1の閾値を「C1」、第2の閾値を「C2」とする。C1とC2との大小関係は、C1<α1<C2である。撮影制御回路33は、第1の閾値C1よりも、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値xが小さい場合、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルを「L」と判定する。また、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値xが、第1の閾値C1以上であり、かつ、第2の閾値C2未満である場合、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルを「H1」と判定する。また、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値xが、第2の閾値C2以上である場合、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルを「H2」と判定する。
【0149】
図19は、第5の実施形態における線質フィルタ制御の一例を説明するための図である。エネルギービン「Bin1」のカウントレベルが「H1」であり、エネルギービン「Bin2」における関心領域内の光子の数の平均値が閾値α2を超え、かつ、エネルギービン「Bin3」における関心領域内の光子の数の平均値が閾値α3以下である場合には、撮影制御回路33は、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定する。管電圧を高くするためのX線照射条件に基づく本撮影では、管電圧が高電圧側にシフトされ、X線のエネルギーが高エネルギー側にシフトされる。管電圧が高電圧側にシフトされる結果、X線のエネルギーが全体的に高エネルギー側にシフトされる。このため、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値は、今後、あまり増加しなくなると考えられる。
【0150】
次に、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルが「H2」であり、エネルギービン「Bin2」における関心領域内の光子の数の平均値が閾値α2を超え、かつ、エネルギービン「Bin3」における関心領域内の光子の数の平均値が閾値α3以下である場合には、撮影制御回路33は、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルが「H1」である場合と同様に、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定する。管電圧を高くするためのX線照射条件に基づく本撮影では、エネルギービン「Bin1」における関心領域内の光子の数の平均値の増加が抑制されることを織り込んでもなお、エネルギービン「Bin1」のカウントレベルが「H2」であることから、エネルギービン「Bin1」については、十分な光子の数が得られている。従って、エネルギービン「Bin1」については、もはやX線の照射は必要でない。そこで、撮影制御回路33は、管電圧を高くするとともに、線質フィルタ12bをX線管12aの前面に移動させてエネルギー値がエネルギービン「Bin1」の範囲に含まれるX線を選択的にカットさせるためのX線照射条件を決定する。かかるX線照射条件に基づく本撮影によれば、線質フィルタ12bにより、被検体Pへのエネルギー値がエネルギービン「Bin1」の範囲に含まれるX線の照射を抑制することができる。
【0151】
上述したように、第5の実施形態では、例えば、光子の数に基づいて管電圧及び管電流を変更する制御とともに、線質フィルタ12bを使用するか否かを制御することで、エネルギー値がエネルギービン「Bin1」に含まれるX線が不必要に被検体Pに照射されることを抑制することができる。すなわち、不要な被ばくを抑制することができる。なお、光子の数ではなく、単位時間当たりの光子の数に基づいて、管電圧及び管電流を変更する制御とともに、線質フィルタ12bを使用するか否かを制御してもよい。
【0152】
(第6の実施形態)
第1〜第5の実施形態では、撮影制御回路33が、一つの関心領域内のエネルギービンごとの光子の数の平均値、又は、単位時間当たりの光子の数の平均値に基づいて、撮影計画を決定する場合について説明した。第6の実施形態では、複数の関心領域が存在する場合について説明する。第6の実施形態では、撮影制御回路33は、複数の関心領域それぞれの複数エネルギービンごとの光子の数の平均値を基に、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。
【0153】
また、第6の実施形態では、撮影制御回路33が、X線管12aの管電圧、管電流及び線質フィルタ12bに関するX線照射条件だけでなく、絞り12c又は露光調整制御に関するX線照射条件を決定する。ここで、絞り12cに関するX線照射条件とは、例えば、絞り12cにより、X線管12aから照射されるX線が照射される空間的範囲を制御するためのX線照射条件である。X線が照射される空間的範囲を制御することで、被検体Pに照射されるX線の量を制御することができる。また、露光調整制御に関するX線照射条件とは、同様に、被検体Pに照射されるX線の量を制御するためのX線照射条件であるが、典型的には、X線が照射される時間を制御することにより照射されるX線の量を制御することに力点が置かれている。一例としては、露光調整制御は、予め設定された照射時間だけX線を照射するように照射装置12を制御することを指す。他の例としては、露光調整制御は、露光(露出)調整用の検出器(図示せず)で得られた入射X線量を示す電気信号に基づいて、電気信号が示す入射X線量が所定の値となったら、X線の照射を停止するように照射装置12を制御することを指す。
【0154】
図20は、第6の実施形態に係る撮影制御処理の一例を説明するための図である。
図20の例では、撮影制御回路33が絞り12cに関するX線照射条件を決定する。また、第6の実施形態では、領域1及び領域2の二つの関心領域が設定されており、絞り12cが、領域2に照射されるX線を遮断することにより、領域2に照射されるX線の量を制御する。撮影制御回路33は、領域1内の複数エネルギービンごとの光子の数の平均値、及び、領域2内の複数エネルギービンごとの光子の数の平均値に基づいて、X線照射条件を決定する。
【0155】
まず、エネルギービン「Bin1」において領域1内の光子の数の平均値が閾値α1を超え、エネルギービン「Bin1」において領域2内の光子の数の平均値が閾値α1を超え、エネルギー「Bin2」において領域1内の光子の数の平均値が閾値α2を超え、エネルギービン「Bin2」において領域2内の光子の数の平均値が閾値α2を超え、エネルギー「Bin3」において領域1内の光子の数の平均値が閾値α3以下であり、エネルギービン「Bin3」において領域2内の光子の数の平均値が閾値α3以下である場合について説明する。この場合には、撮影制御回路33は、
図20の上段に示すように、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定する。次に、
図20の上段に示す、領域1及び領域2のそれぞれについての各エネルギービンにおける光子の数の平均値と閾値との関係から、
図20の下段に示す、領域1及び領域2のそれぞれについての各エネルギービンにおける光子の数の平均値と閾値との関係に変化した場合、すなわち、領域2に関しては全てのエネルギービンにおける光子の数の平均値が閾値を超えている場合、領域2に関してはもはやこれ以上のX線照射が不要であるから、撮影制御回路33は、管電圧を高くするとともに、絞り12cにより領域2に照射されるX線を遮断するためのX線照射条件を本撮影におけるX線照射条件として決定する。
【0156】
このように、第6の実施形態に係るX線診断装置は、絞り12cに関するX線照射条件を決定することで、被ばく量を効果的に低減させることができる。なお、撮影制御回路33は、複数の関心領域それぞれで、複数のエネルギービンごとの計数値の合計に基づいて、本撮影における絞り12cに関するX線照射条件を決定してもよい。また、撮影制御回路33は、関心領域内の光子の数の単位時間当たりの平均値に基づいて、本撮影における絞り12cに関するX線照射条件を決定してもよい。
【0157】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態では、撮影制御回路33が、2種類以上のX線照射条件を決定し、決定した2種類以上のX線照射条件を含む撮影計画を決定する。
【0158】
図21は、第7の実施形態に係る撮影制御処理の一例を説明するための図である。
図21の例に示すように、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下である場合、及び、光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えた場合以外の場合において決定されるX線照射条件は、先の
図9及び
図10に示す場合において決定されるX線照射条件と同様である。『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下である場合』では、
図9の例では、管電圧を高くするためのX線照射条件が決定され、
図10の例では、管電流を大きくするためのX線照射条件が決定される。また、『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えた場合』では、
図9の例では、管電圧を低くするためのX線照射条件が決定され、
図10の例では、管電流を大きくするためのX線照射条件が決定される。
【0159】
一方、第7の実施形態に係る撮影制御回路33は、
図21の例に示すように、『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1を超え、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3以下である場合』には、管電圧を高くするとともに管電流を大きくするためのX線照射条件を本撮影におけるX線照射条件として決定する。
【0160】
また、第7の実施形態に係る撮影制御回路33は、
図21の例に示すように、『光子の数の平均値「Count-Bin1」が閾値α1以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin2」が閾値α2以下であり、光子の数の平均値「Count-Bin3」が閾値α3を超えた場合』には、管電圧を低くするとともに管電流を大きくするためのX線照射条件を本撮影におけるX線照射条件として決定する。
【0161】
第7の実施形態では、撮影制御回路33が、2種類以上のX線照射条件を決定し、決定した2種類以上のX線照射条件を含む撮影計画を決定することで、決定した撮影計画に基づく本撮影において、精密なX線照射条件の制御を行なうことができる。なお、第7の実施形態では、X線照射条件の履歴を示す履歴情報に、撮影制御回路33が、領域1及び領域2のそれぞれの位置を示す情報を登録する。
【0162】
(第7の実施形態の第1の変形例)
第7の実施形態の第1の変形例では、撮影制御回路33が、管電圧及び管電流の値を同時に制御する場合において、管電圧及び管電流の値をどのような値に定めるかを、所定の方法で算出する。
図22は、第7の実施形態の第1の変形例を説明するための図である。
図22の例は、管電圧及び管電流の値を算出する方法の一例を示す。
【0163】
図22は、撮影制御回路33が、管電圧を管電圧変化量δVだけ変化させるとともに管電流を管電流変化量δIだけ変化させるためのX線照射条件を決定することを示す。管電流をIとし、X線のエネルギーをEとする場合の、X線カウント数fを、管電流及びX線のエネルギーの関数としてf(E,I)と定義する。
【0164】
X線の被ばく量Pは、管電圧変化量δV及び管電流変化量δIが定まれば一意的に定まるから、被ばく量Pは、δV及びδIの関数となる。よって、本撮影のために必要な所定の条件を満たすという制約条件のもと、P(δV,δI)を最小化することで目的関数が得られる。ここで、「本撮影のために必要な所定の条件を満たす」ための十分条件の一例として、例えば、「管電圧及び管電流を変化させたときの、エネルギー値が低いほうからi番目のエネルギービンにおける光子の数の予想平均値Xiが、i番目のエネルギービンに対して設定された閾値Thiを上回る」という条件が考えられる。
【0165】
予想平均値Xiは、「Xi=Ci×(1+Ai×δV+Bi×δI)」の式によって算出される。ここで、Ciは、エネルギー値が低いほうからi番目のエネルギービンにおける光子の数の平均値であり、Ai及びBiは、係数である。
【0166】
ここで、Ciは現在の平均値であり、係数Ai、Biについては、「Xi=f(E+δV,I+δI)≒f(E,I)+δV×∂f/∂E+δI×∂f/∂I」であることに注意すると、管電流I及びX線のエネルギーEの関数としてのX線カウント数fから、容易に求めることができる。
【0167】
制約条件及び目的関数の両者が、δV及びδIの関数として一意的に定まるから、線形計画法、最小二乗法、ラグランジュの未定乗数法、変分法等、所定の方法を用いることにより、撮影制御回路33は、適切な管電圧変化量δV及び管電流変化量δIを算出することができる。その結果、撮影制御回路33は、管電圧を管電圧変化量δVだけ変化させるとともに管電流を管電流変化量δIだけ変化させるためのX線照射条件を決定することができる。第7の実施形態の第1の変形例では、撮影制御回路33は、本撮影において変化させる管電圧及び管電流の量を高精度に算出することができる。
【0168】
(第7の実施形態の第2の変形例)
第7の実施形態の第2の変形例では、撮影制御回路33が、複数の種類の情報を用いて、どのような設定条件及びX線照射条件を決定するかを判断する。すなわち、第7の実施形態の第2の変形例では、撮影制御回路33は、関心領域内のエネルギービンごとの光子の数の平均値、関心領域内のエネルギービンごとの単位時間当たりの光子の数の平均値、関心領域内の全エネルギービンの光子の数の平均値の合計、及び、関心領域内の全エネルギービンの単位時間当たりの光子の数の平均値の合計のうち、2種類以上の情報をもとに、どのような設定条件及びX線照射条件を決定するかを判断する。
【0169】
図23は、第7の実施形態の第2の変形例を説明するための図である。
図23は、第7の実施形態の第2の変形例において、撮影制御回路33が実行するX線照射条件決定方法の一例を示す。第7の実施形態の第2の変形例においては、撮影制御回路33は、例えば、関心領域内のエネルギービンごとの光子の数の平均値、及び、関心領域内のエネルギービンごとの単位時間当たりの光子の数の平均値の両方を用いて、X線照射条件を決定する。
【0170】
ここで、関心領域内のエネルギービン「Bin1」における光子の数の平均値、関心領域内のエネルギービン「Bin1」における単位時間当たりの光子の数の平均値、関心領域内のエネルギービン「Bin2」における光子の数の平均値、及び、関心領域内のエネルギービン「Bin2」における単位時間当たりの光子の数の平均値が、それぞれ、対応する閾値以下となっている場合について説明する。
【0171】
この場合において、
図23の例に示すように、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値(カウント数)が、対応する閾値以下であり、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における単位時間当たりの光子の数の平均値(カウントレート)も、対応する閾値以下である場合には、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。
【0172】
また、
図23の例に示すように、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値(カウント数)が、対応する閾値を超え、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における単位時間当たりの光子の数の平均値(カウントレート)も、対応する閾値を超える場合には、撮影制御回路33は、次の処理を行う。すなわち、撮影制御回路33は、管電圧を低くするためのX線照射条件を決定する。
【0173】
また、
図23の例に示すように、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値(カウント数)が、対応する閾値以下であり、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における単位時間当たりの光子の数の平均値(カウントレート)が、対応する閾値を超える場合について説明する。この場合、カウントレートが閾値を超えており、これ以上管電流を大きくした場合、パルスパイルアップを引き起こす可能性がある。従って、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件ではなく、管電圧を低くするためのX線照射条件を決定する。
【0174】
また、
図23の例に示すように、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における光子の数の平均値(カウント数)が、対応する閾値を超え、関心領域内のエネルギービン「Bin3」における単位時間当たりの光子の数の平均値(カウントレート)が、対応する閾値以下である場合について説明する。この場合、カウントレートに関しては閾値以下であることから、管電流を大きくしても、パルスパイルアップが起こる可能性が低い。したがって、撮影制御回路33は、管電圧を低くするとともに、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定する。
【0175】
このように、第7の実施形態の第2の変形例に係るX線診断装置は、複数の種類の情報を、X線照射条件を決定するための判断材料として用いる。これにより、第7の実施形態の第2の変形例では、より精密に、X線照射条件を決定することができる。なお、第7の実施形態の第2の変形例は、関心領域が複数設定されている場合には、各関心領域で、上述したようにX線照射条件を決定しても良い。また、第7の実施形態の第2の変形例において、関心領域が複数設定されている場合には、撮影制御回路33は、各関心領域内の全エネルギービンの光子の数の平均値の合計、及び、各関心領域内の全エネルギービンの単位時間当たりの光子の数の平均値の合計に基づいて、各関心領域でX線照射条件を決定してもよい。
【0176】
(第8の実施形態)
第1〜第7の実施形態及び各変形例において、管電圧の制御量や管電流の制御量等が固定値である場合について説明した。第8の実施形態では、管電圧の制御量や管電流の制御量等の各種の制御量を変更する例を説明する。第8の実施形態に係るX線診断装置では、撮影制御回路33は、光子計数データに応じて、管電圧の制御量や管電流の制御量等を変更する。
図24は、第8の実施形態に係る撮影制御処理の一例を説明するための図である。
【0177】
ここで、エネルギービン「Bin1」、エネルギービン「Bin2」、及び、エネルギービン「Bin3」の3つのエネルギービンが収集回路15に設定されている場合について説明する。また、ここでは、全てのエネルギービンについて、関心領域内の光子の数の平均値xが、閾値α以下であるものとする。すなわち、全てのエネルギービンのカウントレベルが「L1」、「L2」及び「L3」のいずれかであるものとする。また、第8の実施形態では、上述した第1の実施形態の第4の変形例と同様に、撮影制御回路33が、各エネルギービンのカウントレベルが、「L1」、「L2」及び「L3」のいずれであるのかを判定する。そして、撮影制御回路33は、エネルギービンのカウントレベルに応じて、管電流の制御量を決定する。
【0178】
ここで、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件に、現在の制御量を含める。現在の制御量の初期値としては、例えば、「0mA」という量が与えられる。撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件を決定すると、現在の制御量を更新する。例えば、現在の制御量が0mAで、3つのエネルギービンのカウントレベルの中に、「L1」が一つ以上ある場合には、撮影制御回路33は、現在の制御量を「x」とすると、変更後の制御量として「x+0.5」を算出する。すなわち、現在の制御量が「0mA」である場合には、変更後の制御量は、「0+0.5=0.5mA」となる。したがって、3つのエネルギービンのカウントレベルの中に、「L1」が一つ以上ある場合には、撮影制御回路33は、管電流を現在の管電流よりも「0.5mA」増加させるようなX線照射条件を決定する。このとき、撮影制御回路33は、変更後の制御量を、現在の制御量としてX線照射条件に含める。
【0179】
そして、例えば、現在の制御量が0.5mAである場合に、撮影制御回路33が、新たな光子計数データを収集回路15から取得したとする。このとき、管電流が増加したことにより、3つのエネルギービンのカウントレベルの中に、「L1」がなく、かつ、「L2」が1つ以上ある状態になった場合について説明する。この場合、撮影制御回路33は、現在の制御量を「x」とすると、変更後の制御量として「x+0.2」を算出する。ここで、現在の制御量が「0.5mA」であるので、変更後の制御量は、「0.5+0.2=0.7mA」となる。よって、撮影制御回路33は、管電流を、現在の管電流から0.7mA増加させるようなX線照射条件を決定するとともに、現在の制御量として「0.7mA」をX線照射条件に含める。
【0180】
また、例えば、現在の制御量が0.5mAである場合に、撮影制御回路33が、新たな計数データを収集回路15から取得したとする。このとき、管電流が増加したことにより、3つのエネルギービンのカウントレベルが、すべて「L3」になった場合について説明する。この場合、撮影制御回路33は、現在の制御量を「x」とすると、変更後の制御量として「x+0.1」を算出する。ここで、現在の制御量が「0.5mA」であるので、変更後の制御量は、「0.5+0.1=0.6mA」となる。よって、撮影制御回路33は、管電流を、現在の管電流から0.6mA増加させるようなX線照射条件を決定するとともに、現在の制御量として「0.6mA」をX線照射条件に含める。
【0181】
次に、撮影制御回路33が、管電流を大きくするためのX線照射条件以外のX線照射条件を決定した場合における動作について説明する。この場合に、撮影制御回路33は、管電流を大きくするためのX線照射条件に含まれる現在の制御量を、初期値にリセットする。例えば、現在の制御量が「0.6mA」である場合に、撮影制御回路33が、管電流を小さくするためのX線照射条件や、管電圧を高くするためのX線照射条件を決定すると、管電流を大きくするためのX線照射条件に含まれる現在の制御量は、「0mA」となる。同時に、撮影制御回路33は、管電流を小さくするためのX線照射条件や、管電圧を高くするためのX線照射条件に含まれる現在の制御量を、所定の値に更新する。
【0182】
撮影制御回路33は、X線照射条件に含まれる現在の制御量を、光子計数データに応じて、動的に変更させることで、現在のX線照射条件がどのようなものであっても、最適なX線照射条件へと、早く近づけさせることができる。例えば、現在の電圧値が20keVであったとして、最適な電圧値が、20.1keV又は50keVである場合について説明する。制御量が0.1keVであった場合、20.1keVには、1回のX線照射条件の決定で到達できる一方、50keVには、(50−20)/0.1=300回のX線照射条件の決定を要する。一方、制御量が10keVである場合、50keVへは、3回のX線照射条件の決定で到達できる一方、1回当たりの制御量が大きすぎて、20.1keVを超えてしまい、20.1keVには到達することができない。
【0183】
一方、撮影制御回路33は、光子計数データに応じて、制御量を動的に変更させる場合、例えば、変更後の制御量として、現在の制御量に0.1keVを加える場合、制御量が加速度的に増加する結果、20.1keVには1回、50keVには24回で到達することができる。すなわち、第8の実施形態の第1の変形例では、X線照射条件の制御量を動的に変更させることで、最適なX線照射条件へと速やかに近づけることができ、被ばく量を更に低減させることができる。
【0184】
(第8の実施形態の変形例)
第8の実施形態の変形例として、撮影制御回路33が、制御量の代わりに、設定条件及びX線照射条件を決定する際に用いられるパラメータを、動的に変更しても良い。第8の実施形態の変形例では、撮影制御回路33は、光子計数データに基づいて、パラメータを変更することで、撮影計画を決定する際の動作を変更する。
【0185】
動的に変更されるパラメータの一例としては、撮影計画を決定する時間間隔が挙げられる。例えば、第8の実施形態の変形例では、撮影計画を決定する時間間隔が「1秒間」であり、関心領域内の複数のエネルギービンそれぞれにおける単位時間当たりの光子の数の平均値に対して、閾値が設定されている。そして、第8の実施形態の変形例では、撮影制御回路33は、少なくとも1つのエネルギービンにおける単位時間当たりの光子の数の平均値が、閾値を超えている場合、光子の数が急激に上昇していると判断し、時間間隔を「0.5秒間」に変更して、撮影計画を決定する。
【0186】
第8の実施形態の変形例では、例えば、関心領域内のエネルギービンにおける単位時間当たりの光子の数の平均値に応じて、撮影計画を決定する時間間隔を動的に短縮することで、被ばく量を確実に低減させることができる。
【0187】
(第9の実施形態及び第10の実施形態)
第1〜第8の実施形態及び各変形例では、X線診断装置として、被検体Pが立った状態で撮影する、いわゆる立位撮影台方式でX線一般撮影を行う装置を一例として説明した。しかし、第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明した内容は、X線一般撮影を行う装置以外のX線診断装置にも適用可能である。
図25は、第9の実施形態を説明するための図であり、
図26は、第10の実施形態を説明するための図である。
【0188】
ここで、
図25は、第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明した内容を適用可能なX線診断装置として、上部消化管検査用のX線一般撮影装置の構成例を示している。また、
図26は、第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明した内容を適用可能なX線診断装置として、マンモグラフィの構成例を示している。なお、
図25及び
図26では、説明を簡単にするため、
図1に示すX線診断装置1を構成する複数の処理回路それぞれに対応する処理回路に対して同一の符号を付与している。
【0189】
図25に例示する上部消化管検査用のX線一般撮影装置は、例えば、天井に設置された照射装置12から、下向きにX線が照射され、被検体Pが横になるベッドの裏側に設置された検出器13が、X線の入射に応じて検出信号を出力する。ここで、上部消化管検査用のX線一般撮影装置は、照射装置12及びベッドが臥位から立位、立位から臥位等、様々な状態に移動されることで、例えば、被検体Pの上部消化管の造影撮影が行われる。かかる構成の元、
図25に例示する臥位撮影台方式のX線一般撮影装置が、第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明した撮影制御処理を行うことで、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、被ばく量を低減させることができる。このため、
図25に例示する臥位撮影台方式のX線一般撮影装置は、高い利便性を有する。
【0190】
また、
図26に例示するマンモグラフィは、照射装置12から、圧迫板及び撮影台で挟み込まれて伸展された被検体Pの乳房20に対してX線が照射される。そして、
図26に例示するマンモグラフィは、撮影台の裏側に設置された検出器13が、X線の入射に応じて検出信号を出力する。通常、マンモグラフィを用いた検査では、左右それぞれの乳房20を撮影台に抑えつけて圧迫し、所定の厚みになったところで、例えば、左右それぞれ撮影方向を変えて2枚ずつ、合計で4枚撮影する。かかる構成の元、
図26に例示するマンモグラフィが、第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明した撮影制御処理を行うことで、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、被ばく量を低減させることができる。このため、
図26に例示するマンモグラフィは、高い利便性を有する。
【0191】
(第11の実施形態)
第1〜第10の実施形態及び各変形例では、X線診断装置が静止画としてのX線画像を生成する例を説明した。これに対して、第11の実施形態では、X線透視撮影を行うX線診断装置において、複数のエネルギービンそれぞれの計数データに基づいて、収集回路15がエネルギービン弁別処理を行う際に用いる複数のエネルギービンの適応的変更、及び、X線照射条件の適応的変更が行われる場合について説明する。
【0192】
ここで、X線透視撮影とは、X線を用いてリアルタイムに観察部位を時系列に沿って撮影することを言う。X線透視撮影装置としてのX線診断装置は、複数の撮影時間で時系列に沿った複数の静止画を生成し、生成した複数の静止画を、順次表示することで、X線透視画像の動画表示を行う。例えば30fpsの場合、X線透視撮影装置は、1秒間当たり30フレーム(30個)の静止画を撮影する。そして、X線透視撮影装置は、所定のフレーム数の静止画、例えば、3フレームの静止画を用いて1フレームの静止画を新たに生成する。
【0193】
第11の実施形態に係るX線診断装置は、例えば、あるフレームにおいて得られた計数データを基に、次のフレームにおいて収集回路15が光子計数データを作成するための設定条件及びX線照射条件を決定する。
【0194】
図27は、第11の実施形態に係るX線診断装置の構成例を示すブロック図である。なお、
図27では、説明を簡単にするため、
図1に示すX線診断装置1を構成する複数の処理回路それぞれに対応する処理回路に対して同一の符号を付与している。
図27に例示するX線診断装置は、アンギオ(血管造影)検査等を行う装置であり、照射装置12及び検出器13を保持するCアームを有し、駆動回路14は、Cアームを回転及び移動させる。
図27に例示するX線診断装置は、被検体Pがベッドに載置した状態で、透視撮影に適したX線照射角度となるまで、Cアームが回転及び移動される。また、
図27に例示するX線診断装置は、被検体Pがベッドに載置した状態で、Cアームが様々な位置に回転及び移動されることで、複数のX線照射角度で透視撮影を行う。
【0195】
かかる構成の元、第11の実施形態に係る収集回路15は、光子計数データを複数フレームに渡って作成する。そして、第11の実施形態に係る撮影制御回路33は、あるフレームの撮影において収集回路15が作成した光子計数データに基づいて、次のフレームの撮影において収集回路15が光子計数データを作成する際に用いられる複数のエネルギービンを決定する。すなわち、撮影制御回路33は、次のフレームの撮影において収集回路15が光子計数データを作成する際に用いられる複数のエネルギービンを収集回路15に設定させるための設定条件を決定する。また、撮影制御回路33は、あるフレームの撮影において収集回路15が作成した光子計数データに基づいて、次のフレームの撮影におけるX線照射条件を決定する。そして、撮影制御回路33は、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する。なお、撮影制御回路33は、設定条件及びX線照射条件の少なくとも1つを決定してもよい。
図28は、第11の実施形態に係る撮影制御処理の一例を説明するための図である。
【0196】
図28の横軸は時刻「t」を表し、フレーム1の静止画、フレーム2の静止画、フレーム3の静止画が時系列に沿って順次生成されることを示している。また、
図28で、フレーム1、フレーム2、フレーム3それぞれからの下向きの矢印は、X線照射から、各フレームでの画像が生成されるまでの処理の流れを概念的に表したものである。すなわち、一つのフレームにおいて、第1の段階として、X線が被検体Pに照射される。第2の段階として、被検体Pを透過したX線を、検出器13が検出する。第3の段階として、収集回路15が、検出器13からの出力信号に基づいて光子計数データを作成する。第4の段階として、撮影制御回路33が、光子計数データを用いて、第1の実施形態と同様の方法で、次のフレームの撮影における設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する。すなわち、撮影制御回路33は、次のフレームの撮影における撮影計画を決定する。
【0197】
なお、1フレーム分のX線照射が終了すると、画像生成回路36は、収集回路15から受け渡された光子計数データを基に、物質弁別処理により、1枚のX線画像を生成する。そして、画像生成回路36は、所定数のX線画像、例えば、3枚のX線画像を元に、新たに、1枚のX線画像を生成する。生成されたX線画像は、必要に応じて、記憶回路37に保存され、或いは、システム制御回路38の制御によりディスプレイ32で表示される。
【0198】
ここで、1フレーム分のX線照射が終了すると、第11の実施形態に係る撮影制御回路33は、収集回路15から受け渡された光子計数データを基に、次のフレームの撮影における設定条件及びX線照射条件を決定する。第11の実施形態では、撮影制御回路33は、1フレーム分のX線照射が終了したのち、次のフレームにおいて、決定した設定条件にしたがって、複数のエネルギービンを用いて光子計数データを作成するように収集回路15を制御する。また、撮影制御回路33は、次のフレームにおいて、決定したX線照射条件にしたがって撮影を行うように、高電圧発生回路11及び駆動回路14を介して、照射装置12を制御する。
【0199】
例えば、
図28に示すように、フレーム1においてX線照射が終了すると、撮影制御回路33は、フレーム2における設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件にしたがって複数のエネルギービンを用いて光子計数データを作成するように収集回路15をフィードバック制御する。また、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって撮影を行うように、照射装置12をフィードバック制御する。また、画像生成回路36は、フレーム1に対応する静止画を生成する。次に、フレーム2において、X線照射が開始され、その後X線照射が終了すると、撮影制御回路33は、フレーム3における設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件にしたがって複数のエネルギービンを用いて光子計数データを作成するように収集回路15をフィードバック制御する。また、撮影制御回路33は、決定したX線照射条件にしたがって撮影を行うように、照射装置12をフィードバック制御する。また、画像生成回路36は、フレーム2に対応する静止画を生成する。この処理が、撮影終了まで繰り返される。そして、画像生成回路36は、3枚の静止画を用いて、新たな1枚の静止画を生成する。この静止画がX線透視画像の連続撮影において用いられる。
【0200】
このような処理を行うことで、第11の実施形態では、X線透視画像の連続撮影においても、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、被ばく量を低減させることができる。このため、
図27に例示する第11の実施形態に係るX線診断装置は、高い利便性を有する。
【0201】
(第11の実施形態の第1の変形例)
第11の実施形態では、撮影制御回路33のフィードバック制御が、1フレームの終了ごとに行われる場合について説明した。しかし、第11の実施形態の第1の変形例では、撮影制御回路33は、更に、1フレームの間で、リアルタイムで定期的に設定条件及びX線照射条件を決定し、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画にしたがって撮影が行われるように高電圧発生回路11、駆動回路14及び収集回路15を制御するフィードバック制御を行いつつ、1フレームが終了すると、次のフレームにおける設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を決定する。ここで、撮影制御回路33が、1フレームの間で、リアルタイムで定期的に設定条件及びX線照射条件を決定する方法として、上述した第1〜第8の実施形態及び各変形例で説明したいずれかの方法が採用される。
【0202】
第11の実施形態の第1の変形例では、X線透視画像の連続撮影において、フレーム間だけでなく、フレーム内でも計数データに基づくフィードバック制御を行うことで、多くの弁別対象物質を更に高精度で推定することができ、被ばく量を更に低減することができる。したがって、第11の実施形態の第1の変形例に係るX線診断装置は、更に高い利便性を有する。
【0203】
(第11の実施形態の第2の変形例)
第11の実施形態の第2の変形例では、撮影制御回路33は、あるフレームで決定したX線照射条件が、以降の連続した複数フレーム(例えば、3フレーム)において変更する必要がなかった場合、最適なX線照射条件が決定されたと判断して、設定条件及びX線照射条件を決定する処理を行わないようにする。一方、あるフレームで決定した設定条件及びX線照射条件を順次変更した場合には、設定条件及びX線照射条件を決定する処理を継続する。
【0204】
第11の実施形態の第2の変形例では、撮影制御回路33は、設定条件及びX線照射条件が安定して最適であると判断した場合は、この設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画を維持して、不要な撮影制御処理を行うことを回避することができる。なお、第11の実施形態の第2の変形例では、設定条件及びX線照射条件が安定して最適であると判断した場合であっても、例えば、10フレームごとに、設定条件及びX線照射条件を変更する必要があるか否かを判定し、必要がある場合は、再度、設定条件及びX線照射条件を決定しても良い。
【0205】
(第11の実施形態の第3の変形例)
第11の実施形態の第3の変形例では、撮影制御回路33は、設定条件及びX線照射条件が安定して最適であると判断した場合でも、バックグランド処理として、設定条件及びX線照射条件を変更する必要があるか否かを継続して判定し、必要がある場合は、再度、設定条件及びX線照射条件を決定する。これにより、設定条件及びX線照射条件が安定している場合において、途中で何らかの事態が発生して設定条件及びX線照射条件が不安定になった場合にも、適切に撮影を行うことができる。
【0206】
(第12の実施形態)
第1〜第11の実施形態及び各変形例では、撮影制御処理が、X線診断装置において行われる場合について説明した。しかし、第1〜第11の実施形態及び各変形例で説明した撮影制御処理は、X線CT装置で行われてもよい。
図29は、第12の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示すブロック図である。
【0207】
第12の実施形態に係るX線CT装置は、架台装置としての撮影装置100、寝台装置200、及び、コンソール装置300を備える。撮影装置100は、例えば、高電圧発生回路110、照射装置120、検出器130、架台駆動回路140、収集回路150、回転フレーム151を備える。照射装置120は、X線管120a、線質フィルタ120b及び絞り120cを有する。高電圧発生回路110は、
図1の高電圧発生回路11に対応する。また、照射装置120は、
図1の照射装置12に対応する。また、X線管120aは、
図1のX線管12aに対応する。また、線質フィルタ120bは、
図1の線質フィルタ12bに対応する。また、絞り120cは、
図1の絞り12cに対応する。また、収集回路150は、
図1の収集回路15に対応する。ただし、X線CT装置では、回転フレーム151により、照射装置120と検出器130とが被検体Pを挟んで対向するように支持され、回転フレーム151は、架台駆動回路140によって被検体Pを中心した円軌道にて高速に回転する。
【0208】
X線管120aは、X線を照射する。また、検出器130は、X線の入射に応じて検出信号を出力する。収集回路150は、エネルギービン弁別処理を実行して、複数のエネルギービンそれぞれの光子の数を示す光子計数データを作成する。収集回路150は、複数の管球位相(複数のビュー)それぞれにおいて、光子計数データを作成する。ここで、収集回路150は、例えば、(x,y,Count-Bin1,Count-Bin2,Count-Bin3,view)という形式のデータを撮影制御回路330及び前処理回路340に出力する。ここで、「view」は、X線が照射された際のビューを指す。例えば、ビューとは、X線管120a、被検体P及び検出器130の相対的位置関係のことを言う。
【0209】
また、
図29に示すように、寝台装置200は、被検体Pを載せる装置であり、天板220と、寝台駆動装置210とを有する。天板220は、被検体Pが載置されるベッドであり、寝台駆動装置210は、天板220をZ軸方向へ移動して、被検体Pを回転フレーム151内に移動させる。
【0210】
また、
図29に示すように、コンソール装置300は、入力回路310、ディスプレイ320、撮影制御回路330、前処理回路340、画像再構成回路360、記憶回路370及びシステム制御回路380を備える。
【0211】
入力回路310及びディスプレイ320は、
図1の入力回路31及びディスプレイ32に対応する。また、撮影制御回路330は、
図1の撮影制御回路33に対応し、後述するシステム制御回路380の制御のもと、撮影装置100及び寝台装置200の動作を制御することで、撮影装置100における光子計数データの作成を制御する。第12の実施形態では、撮影制御回路330は、収集回路150で作成された光子計数データに基づいて、本撮影における設定条件及び本撮影におけるX線照射条件を決定する。なお、撮影制御回路330については、後述する。
【0212】
前処理回路340は、収集回路150から送信された光子計数データに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、投影データを生成する。
【0213】
記憶回路370は、前処理回路340により生成された投影データを記憶する。すなわち、記憶回路370は、X線CT画像データを再構成するための投影データ(補正済み計数データ)を記憶する。また、記憶回路370は、再構成したX線CT画像や、各種画像処理により生成した画像を記憶する。
【0214】
画像再構成回路360は、記憶回路370が記憶する投影データを用いて、撮影部位における画像(X線CT画像)を再構成する。再構成方法としては、種々の方法があり、例えば、逆投影処理が挙げられる。また、逆投影処理としては、例えば、FBP(Filtered Back Projection)法による逆投影処理が挙げられる。また、画像再構成回路360は、逐次近似法により、再構成処理を行っても良い。また、画像再構成回路360は、X線CT画像や、再構成前の投影データに対して各種画像処理を行なうことで、単色X線画像や密度画像、実効原子番号画像等様々な画像を生成する。かかる画像処理としては、例えば、再構成画像レベルや、投影データレベルでの物質弁別処理が挙げられる。画像再構成回路360は、再構成したX線CT画像や、各種画像処理により生成した画像を記憶回路370に格納する。
【0215】
システム制御回路380は、撮影装置100、寝台装置200及びコンソール装置300の動作を制御することによって、X線CT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御回路380は、撮影制御回路330を制御することで、撮影装置100で行なわれるCTスキャンを制御する。また、システム制御回路380は、前処理回路340や、画像再構成回路360を制御することで、コンソール装置300における画像再構成処理や画像生成処理を制御する。また、システム制御回路380は、記憶回路370が記憶する各種画像データを、ディスプレイ320に表示するように制御する。
【0216】
ここで、X線診断装置で得られる1方向(1ビュー)での光子計数データ(又は、画像)は、X線CT装置で得られる1方向での光子計数データに基づく投影データと見なすことができる。X線CT装置は、回転フレーム151を回転させることにより、X線管120a、被検体P及び検出器130の間の互いの位置関係を少しずつ変えながら撮影して、複数方向の光子計数データを作成し、複数方向の光子計数データから生成した複数方向の各エネルギービンの投影データを再構成することで、様々な画像を生成する。
【0217】
X線CT装置では、例えば、回転フレーム151が1回転すると、1フレーム分の投影データが収集される。ここで、撮影開始時から、回転フレーム151の最初の1回転を第1サイクル、回転フレーム151の2回目の1回転を第2サイクルと呼ぶ。例えば、第12の実施形態では、第1サイクルにおいてよび撮影が行われ、第2サイクル以降で本撮影が行われる。
【0218】
撮影制御回路330は、第1サイクルにおける複数のビューそれぞれにおいて作成された光子計数データに基づいて、第2サイクルの対応するビューそれぞれにおいて、収集回路150が光子計数データを作成する際に用いられる複数のエネルギービンの設定に関する設定条件、及び、照射装置120により照射されるX線の条件であるX線照射条件を決定する。例えば、撮影制御回路330は、第1サイクルにおけるビュー「V1」において作成された光子計数データに基づいて、第2サイクルにおけるビュー「V1」において、収集回路150が光子計数データを作成する際に用いられる複数のエネルギービンを設定するための設定条件を決定する。また、撮影制御回路330は、第1サイクルにおけるビュー「V1」において作成された光子計数データに基づいて、第2サイクルにおけるビュー「V1」で照射装置120により照射されるX線の条件であるX線照射条件を決定する。
【0219】
そして、撮影制御回路330は、第2サイクルにおける各ビューにおいて、決定した設定条件及びX線照射条件を含む撮影計画にしたがって、高電圧発生回路110、架台駆動回路140及び収集回路150を制御する。例えば、撮影制御回路330は、第2サイクルにおけるビュー「V1」において、決定した設定条件にしたがって本撮影を行うように、収集回路150を制御する。また、撮影制御回路330は、第2サイクルにおけるビュー「V1」において、決定したX線照射条件にしたがって本撮影を行うように、高電圧発生回路110を制御する。撮影制御回路330は、第2サイクル以降のサイクルに対して、全てのビューまたは少なくとも1つのビューにおいて、上記の制御をX線CT画像の撮影が終了するまで繰り返す。これにより、画像再構成回路360は、4種類の弁別対象物質「ヨード」、「ガドリニウム」、「頭蓋」、「白金」が弁別された画像を再構成する。
【0220】
また、撮影制御回路330は、第1サイクルで得られた複数のビューそれぞれでの各エネルギービンにおける光子の計数値の統計値(最小値、最大値、平均値、中央値等)、又は、単位時間当たりの光子の計数値の統計値を用いて、第2サイクルにおける設定条件及びX線照射条件を決定してもよい。または、撮影制御回路330は、第1サイクルで得られた複数のビューそれぞれでの各エネルギービンにおける光子の計数値、又は、単位時間当たりの光子の計数値の統計値を用いて、第2サイクルにおける各ビューにおける設定条件及びX線照射条件を決定してもよい。
図30A及び
図30Bは、第12の実施形態に係るX線CT装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
図30A及び
図30Bには、横軸をビューとし、縦軸を管電圧とするグラフが示されている。
図30Aには、第1サイクルにおける各ビューにおける管電圧の大きさを示すグラフ80が示されている。
図30Bには、グラフ80に加えて、第2サイクルにおける各ビューにおける管電圧の大きさを示すグラフ81が示されている。例えば、撮影制御回路330は、第1サイクルにおいて、各ビューにおける管電圧の大きさが、
図30Aのグラフ80が示す各ビューにおける管電圧の大きさとなるようにX線管120aを制御する。そして、撮影制御回路330は、第1サイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギービンにおける光子の計数値に基づいて、第2サイクルにおいて、各ビューにおける管電圧の大きさが、
図30Bのグラフ81が示す各ビューにおける管電圧の大きさとなるようにX線管120aを制御する。撮影制御回路330は、上記の処理をX線CT画像の撮影が終了するまで、繰り返す。
【0221】
また、撮影制御回路330は、あるサイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギービンにおける光子の計数値の平均値に基づいて、次のサイクルにおける天板220のZ軸方向の移動を制御することもできる。例えば、撮影制御回路330は、あるサイクルで得られた複数のビューそれぞれにおける各エネルギービンにおける光子の計数値の平均値に基づいて、次のサイクルにおける天板220のZ軸方向の移動量をビューごとに算出し、算出した移動量分だけ天板220をZ軸方向に移動させるためのX線照射条件をビューごとに決定する。そして、撮影制御回路330は、次のサイクルにおいて複数のビューそれぞれで、対応するX線照射条件にしたがって寝台駆動装置210を制御する。これにより、寝台駆動装置210は、算出した移動量分だけ天板220をZ軸方向に移動させる。
【0222】
このように、第12の実施形態では、第1〜第11の実施形態及び各変形例で説明した撮影制御処理を、X線CT装置が実行することで、フォトンカウンティングCTにおいても多くの弁別対象物質を高精度で推定することができる。また、第12の実施形態によれば、第1〜第11の実施形態及び各変形例と同様に、被ばく量を低減させることができる。よって、第12の実施形態に係るX線CT装置は、高い利便性を有する。
【0223】
(第13の実施形態)
また、第1〜第12の実施形態及び各変形例で説明した撮影制御処理を、デュアルエナジーX線CT装置に実行させてもよい。そこで、このような実施形態を第13の実施形態として説明する。デュアルエナジーX線CT装置は、X線管から照射されるX線のエネルギーを2種類に分けて1周ごとに切り替えて照射(例えば、1周目は140[keV]、2周目は80[keV])して、異なるエネルギーのスペクトルを合成して、サイノグラムを生成する。デュアルエナジーX線CT装置は、2種類のエネルギーのうち高いほうのエネルギーを有するX線をX線管から照射した場合の収集回路の出力を、高エネルギーのエネルギービンの光子の計数値とみなし、低いほうのエネルギーを有するX線をX線管から照射した場合の収集回路の出力を、低エネルギーのエネルギービンの光子の計数値とみなして、第1〜第12の実施形態及び各変形例と同様に、撮影制御処理を実行する。
【0224】
第13の実施形態によれば、第1〜第12の実施形態及び各変形例と同様に、多くの弁別対象物質を高精度で推定することができ、被ばく量を低減させることができる。よって、第13の実施形態に係るデュアルエナジーX線CT装置は、高い利便性を有する。
【0225】
なお、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0226】
また、上記の第1〜第13の実施形態及び各変形例で説明した各種の方法は、予め用意された制御プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この制御プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この制御プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0227】
以上述べた少なくとも一つの実施形態又は変形例によれば、高い利便性を有することができる。
【0228】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。