【実施例】
【0016】
先ず始めに、
図3に示すように、トンネル100には、列車200が、入口(坑口)101から高速で突入し、その反対側となる出口(坑口)102から退出する。このように、列車200が高速でトンネル100内に突入した際には、パルス状の圧力波となるトンネル微気圧波W2が、出口102から外部に向けて放射されるときがある。そこで、本発明に係る負圧波発生装置1は、例えば、トンネル100の出口102付近に設けられており、上記トンネル微気圧波W2に対して、負圧波W3を発生させることにより、そのトンネル微気圧波W2を低減可能となっている。
【0017】
図1に示すように、負圧波発生装置1は、円筒状をなす真空容器11を有している。この真空容器11の前端部11aには、円形をなす開口部11bが開口されている。また、真空容器11内には、円盤状をなす弁体12が、開口部11bに対して、進退可能に支持されている。この弁体12は、開口部11bと同軸状に配置されており、当該開口部11bを開閉可能となっている。
【0018】
弁体12の中心部には、弁軸13の前端が嵌入されており、この弁軸13の軸方向中間部には、保持板14が嵌入されている。一方、真空容器11の内周面には、複数の支持フレーム15,16が、その中心部に向けて延びるように支持されている。そして、支持フレーム15,16の先端は、弁軸13を軸方向に摺動可能に支持している。即ち、弁体12の開閉方向は、弁軸13の軸方向、及び、開口部11bの中心軸方向と一致している。
【0019】
また、支持フレーム15の後面には、環状をなす磁石収納部材17が、弁軸13を中心として支持されている。この磁石収納部材17内には、複数の電磁石18が、弁軸13の径方向外側で、且つ、弁軸13の周方向に所定の間隔で収納されている。これらの電磁石18は、保持板14と軸方向において対向しており、その内部に励磁電流が流されると、保持板14を吸着可能となっている。そして、磁石収納部材17には、保持板14が電磁石18を軸方向外側から覆うように当接可能となっている。
【0020】
これに対して、支持フレーム16の前面には、環状をなすストッパ部材19が、弁軸13を中心として支持されている。このストッパ部材19は、ゴムやウレタン等の弾性材料から形成されており、保持板14と軸方向において対向している。つまり、ストッパ部材19は、軸方向に伸縮可能となっており、その前端に当接した保持板14のそれ以上の後退を規制すると共に、その当接時における衝撃を吸収可能となっている。なお、ストッパ部材19として、ショックアブソーバ等の緩衝器や、油圧ダンパを採用しても構わない。
【0021】
更に、真空容器11の後端中心部には、油圧シリンダ20が、弁軸13と同軸状に設けられている。この油圧シリンダ20は、ピストンロッド20aを軸方向に伸縮可能としている。つまり、油圧シリンダ20のピストンロッド20aは、弁軸13の後端面を押圧可能となっている。
【0022】
そして、真空容器11には、ポンプ接続口11cが形成されており、このポンプ接続口11cには、真空ポンプ21が接続されている。これにより、真空ポンプ21を駆動させることにより、真空容器11内を所定の圧力(真空状態)に維持することができる。このように、真空容器11の内圧を、外気の圧力(大気圧)よりも低圧とすることによって、弁体12に対して内外圧力差が作用することになり、その内外圧力差を利用して、弁体12の開動作を行うようにしている。
【0023】
ここで、
図2に示すように、開口部11bの内周縁における上流側端部(上流側角部)は、所定の曲率半径を有するR形状をなしており、その内周縁における上流側端部よりも下流側の部位は、凹凸(段差)が無い平坦をなしている。これに対して、弁体12の外周縁における上流側端部(上流側角部)は、所定の曲率半径を有するR形状をなしており、その外周縁における上流側端部よりも下流側の部位は、凹凸(段差)が無い平坦をなしている。このような、弁形状(バルブ形状)及び通気口形状(ポート形状)を採用することにより、外気が開口部11bと弁体12との間の開口を通過する際の流動音を抑えることができる。
【0024】
よって、弁体12を開ける場合には、先ず、真空ポンプ21を駆動させて、真空容器11内を真空状態に維持する。これにより、弁体12には、内外圧力差が作用することになる。
【0025】
次いで、電磁石18への通電を停止することにより、当該電磁石18による保持板14への吸着力を解放する。これにより、弁体12は、作用する内外圧力差によって、自然と開くことになり、この弁体12が開くと同時に、開口部11bから負圧波W3が発生する。
【0026】
即ち、電磁石18による保持板14への吸着力が解放されると、弁体12は、真空容器11の内外圧力差のみによって開くことになり、負圧波W3が発生する。
【0027】
そして、弁体12の開動作に伴って、弁軸13と共に後退した保持板14は、ストッパ部材19に当接した後、そのストッパ部材19を押し込むことにより停止する。これにより、弁体12が全開状態となる。このとき、弁体12の開動作に伴って発生した衝撃は、ストッパ部材19によって吸収される。
【0028】
また、弁体12を閉める場合には、先ず、油圧シリンダ20のピストンロッド20aを伸長させて、弁軸13の後端面をそのピストンロッド20aによって押圧する。これにより、弁軸13が軸方向に前進するため、弁体12は、開口部11bに着座して、全閉状態となる。
【0029】
これと同時に、弁体12の閉動作に伴って、弁軸13と共に前進した保持板14は、ストッパ部材19から離脱して、磁石収納部材17に当接した後、電磁石18に吸着される。これにより、弁軸13の軸方向への移動が規制されることになり、弁体12の全閉状態が保持される。
【0030】
以上より、
図3に示すように、列車200が高速でトンネル100の入口101に突入すると、当該トンネル100内における入口101側において、列車200の前方に圧縮波W1が発生する。この圧縮波W1は、発生後直ちに、トンネル100内を出口102に向けて音速で伝播した後、その圧縮波W1の一部が、パルス状の圧力波となるトンネル微気圧波W2として、出口102から外部に向けて放射される。
【0031】
これと同時に、負圧波発生装置1を駆動させて、パルス状の負圧波W3を発生させる。これにより、正のパルス波となるトンネル微気圧波W2に対して、負のパルス波となる負圧波W3を干渉させることができるため、当該トンネル微気圧波W2が低減される。
【0032】
具体的には、トンネル微気圧波W2が放射されると、電磁石18による保持板14への吸着力を解放する。これにより、真空容器11内は、真空ポンプ21の駆動によって予め真空状態に維持されているため、全閉状態の弁体12は、真空容器11の内外圧力差によって開き始める。このように、弁体12が開くと、負圧波W3が開口部11bから発生して、トンネル微気圧波W2が低減される。
【0033】
このとき、弁体12の開動作は、ばね等の付勢部材による付勢力を使用することなく、真空容器11の内外圧力差のみによって行われるため、弁体12は静かに開く。また、外気が開口部11bと弁体12との間の開口を通過する際には、当該外気が滑らかに流れるため、流動音の発生が抑制されている。
【0034】
次いで、真空容器11内が外気によって満たされると、油圧シリンダ20を駆動させて、弁体12を閉め始める。そして、弁体12が開口部11bに着座して、当該弁体12が全閉状態になると、真空ポンプ21を駆動させて、真空容器11内を真空状態に維持する。これにより、負圧波発生装置1は、次回放射されるトンネル微気圧波W2に対して、待機状態となる。
【0035】
従って、本発明に係る負圧波発生装置1によれば、弁体12を、真空容器11の内外圧力差のみを利用して、開けるようにすることにより、摩擦音や衝突音等の可聴音の発生を抑制しつつ、トンネル微気圧波W2を低減させることができる。また、上述した弁形状及び通気口形状を採用することにより、外気が開口部11bと弁体12との間の開口を通過する際の流動音を抑えることができる。