【実施例】
【0035】
(ばね材料)
(ばね材料No.1)
ばね材料No.1は、C:0.46%(以下、特に明記しない限り質量%とする)、Si:0.2%、Mn:0.75%、P:0.01%、Ni:0.012%、Cr:0.02%、不純物としてAl:0.002%、S:0.002%、Ca:23質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。ばね材料の化学組成の分析はJIS G 0321に基づいて行った。これは以下のばね材料においても同様である。なお、後述するように、ばね材料No.1並びに以下のばね材料No.2〜No.4及びばね材料No.7は本発明のばね材料に相当し、製造時に脱酸剤としてSiとCaとの合金を用いたものである。一方、ばね材料No.5及びNo.6は本発明のばね材料には相当せず、製造時に脱酸剤としてAlを用いたものである。ばね材料No.1の組成を、以下のばね材料No.2〜No.7の組成も含めて、ばね材料の項末尾の表1に示す。
【0036】
(ばね材料No.2)
C:0.55%、Si:0.2%、Mn:0.65%、P:0.013%、Ni:0.012%、Cr:0.015%、不純物としてAl:0.003%、S:0.011%、Ca:20質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0037】
(ばね材料No.3)
C:0.63%、Si:0.24%、Mn:0.69%、P:0.014%、Ni:0.012%、Cr:0.04%、不純物としてAl:0.003%、S:0.006%、Ca:25質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0038】
(ばね材料No.4)
C:0.82%、Si:0.19%、Mn:0.4%、P:0.02%、Ni:0.01%、Cr:0.014%、不純物としてAl:0.003%、S:0.004%、Ca:19質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0039】
(ばね材料No.5)
C:0.61%、Si:0.24%、Mn:0.64%、P:0.013%、Ni:0.01%、Cr:0.04%、不純物としてAl:0.02%、S:0.005%、Ca:23質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0040】
(ばね材料No.6)
C:0.86%、Si:0.2%、Mn:0.43%、P:0.013%、Ni:0.012%、Cr:0.015%、不純物としてAl:0.02%、S:0.011%、Ca:23質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0041】
(ばね材料No.7)
C:0.85%、Si:0.2%、Mn:0.42%、P:0.013%、Ni:0.012%、Cr:0.015%、不純物としてAl:0.003%、S:0.011%、Ca:18質量ppmを含み、残部がFeであるものを用いた。
【0042】
【表1】
【0043】
(評価試験)
(ばね材料評価試験1 ばね材料の板厚)
上記した各ばね材料は、熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍処理されたものであり、特に冷間圧延においては多段圧延機で圧延されたものである。多段圧延機としては、16ロールの6段センヂミア圧延機を用いた。なお、多段圧延機はこれに限定されず、20段センヂミア圧延機等に代表される、高い板厚精度で圧延できる各種の圧延機を使用できる。
【0044】
各ばね材料として、上記した冷間圧延により板厚1mmを目標値として製造したものと板厚2mmを目標値として製造したものをそれぞれ100個ずつ準備し、各ばね材料の板厚を実測した。その結果、ばね材料No.1〜ばね材料No.4及びばね材料No.7の板厚は、板厚1mmを目標値として製造したものについては全て0.99mm〜1.01mmの範囲に入り、板厚2mmを目標値として製造したものについては全て板厚2.015mm〜1.985mmの範囲に入った。このため、本発明のばね材料であるばね材料No.1〜ばね材料No.4及びばね材料No.7に関し、板厚0.1mm以上1mm以下を目標値として製造したものについては公差±0.01の範囲に入り、板厚1mmを超え2mm以下を目標値として製造したものについては公差±0.015の範囲に入ることがわかる。つまり、本発明のばね材料は板厚の精度に優れる。
【0045】
(ばね)
(ばねNo.1)
板厚2mmのばね材料No.1及び板厚1mmのばね材料No.1にオーステンパ処理を行い、ばねNo.1を製造した。
【0046】
具体的には、各板厚のばね材料No.1につき、50mm角のテストピースを準備した。そして各テストピースについて、オーステナイト化温度860℃で20分間加熱した後に溶融塩中にて冷却時間1秒以内でテンパー温度350℃にまで降温し、そのまま20分間保持するオーステンパ処理を行った。
【0047】
(ばねNo.2)
ばねNo.1と同様に、板厚2mmのばね材料No.2及び板厚1mmのばね材料No.2につき各々50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについてオーステナイト化温度850℃で20分間加熱した後に溶融塩中にてテンパー温度350℃で20分間保持するオーステンパ処理を行うことでばねNo.2を製造した。
【0048】
(ばねNo.3)
ばねNo.1と同様に、板厚2mmのばね材料No.3及び板厚1mmのばね材料No.3につき各々50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについてオーステナイト化温度840℃で20分間加熱した後に溶融塩中にてテンパー温度350℃で20分間保持するオーステンパ処理を行うことでばねNo.3を製造した。
【0049】
(ばねNo.4)
ばねNo.1と同様に、板厚2mmのばね材料No.4及び板厚1mmのばね材料No.4につき各々50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについてオーステナイト化温度830℃で20分間加熱した後に溶融塩中にてテンパー温度350℃で20分間保持するオーステンパ処理を行うことでばねNo.4を製造した。
【0050】
(ばねNo.5)
ばねNo.1と同様に、板厚2mmのばね材料No.5及び板厚1mmのばね材料No.5につき各々50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについてオーステナイト化温度840℃で20分間加熱した後に溶融塩中にてテンパー温度350℃で20分間保持するオーステンパ処理を行うことでばねNo.5を製造した。
【0051】
(ばねNo.6)
ばねNo.1と同様に、板厚2mmのばね材料No.6及び板厚1mmのばね材料No.6につき各々50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについてオーステナイト化温度830℃で20分間加熱した後に溶融塩中にてテンパー温度350℃で20分間保持するオーステンパ処理を行うことでばねNo.6を製造した。
【0052】
(ばねNo.7)
ばねNo.1〜ばねNo.6と同様に、板厚2mmのばね材料No.7及び板厚1mmのばね材料No.7につき50mm角のテストピースを準備し、各テストピースについて850℃で20分間保持後、油中で180℃/秒の冷却速度で冷却を行う焼入れを行い、その後380℃で30分間焼戻しすることでばねNo.7を製造した。
【0053】
ばねNo.1〜ばねNo.7につき、ばね材料の種類及び熱処理の条件を以下の表2に示す
【0054】
【表2】
【0055】
(評価試験)
(ばね材料評価試験2 オーステナイト結晶粒度番号の測定)
ばねNo.1〜ばねNo.7につき、オーステナイト結晶粒度番号を測定した。測定方法としてはJIS G 0551に規定される方法を用いた。なお、ばね材料のオーステナイト結晶粒度番号は、ばねのオーステナイト結晶粒度番号で代替可能である。オーステナイト結晶粒度番号の測定結果を上記表1に示す。なお、代表的な本発明のばね材料の断面の電子顕微鏡像を
図1に示す。
図1に示すばね材料は、JIS G 0551 付属書の徐冷法によってオーステナイト結晶粒の結晶粒界を出現させたものである。具体的には、ばね材料を900℃で10分間加熱した後に750℃まで徐冷し、その後空冷したものである。
図1において線状に白く見える部分が結晶粒界であり、当該結晶粒界で区画された結晶粒の大きさをJIS G 0551に規定される方法により測定し、算出した結晶粒径は32.0μm程度であり、オーステナイト結晶粒度番号は7.0番であった。
【0056】
表1に示すように、ばね材料No.1〜ばね材料No.4及びばね材料No.7については、オーステナイト結晶粒が非常に大きく、オーステナイト結晶粒度番号は8番であった。表1に示すように、これらのばね材料の元素組成は本発明のばね材料の元素組成の範囲内である。したがって、ばね材料No.1〜ばね材料No.4及びばね材料No.7は本発明のばね材料に相当すると言える。
【0057】
一方、ばね材料No.5及びばね材料No.6については、オーステナイト結晶粒が小さく、オーステナイト結晶粒度番号は12番又は12.5番と、何れも10番以上であった。また、表1に示すように、これらのばね材料の元素組成は本発明のばね材料の元素組成の範囲外であり、特にAl含有量が多い。したがって、ばね材料No.5及びばね材料No.6は本発明のばね材料には相当しないと言える。換言すると、ばね材料No.5及びばね材料No.6は従来のばね材料と言える。
【0058】
また、この結果から、ばね材料No.1〜No.4及びばね材料No.7のオーステナイト結晶粒は大きいが、ばね材料No.5及びばね材料No.6のオーステナイト結晶粒は微細であることがわかる。
【0059】
(評価試験)
(ばね評価試験1 ばねの硬さ測定)
板厚1mmのばねNo.1〜No.7及び板厚2mmのばねNo.1〜No.7につき、JIS Z 2244、ISO6507−1、ISO6507−4に基づいてビッカース硬さを測定した。測定位置は、上記50mm角のテストピースを上面視した時に中央に位置するB点と、同じく上面視した時にテストピースの端面から中央部側に5mm入った位置のA点と、の2点とした。
【0060】
ばねNo.1、ばねNo.2、ばねNo.4、ばねNo.6及びばねNo.7については、板厚1mm及び板厚2mmの各ばねのビッカース硬さを、上記A点における板厚方向の中央位置、及び、上記B点における板厚方向の中央位置の2点でそれぞれ一度ずつ測定した。つまり、A点を通る位置で各テストピースを切断し、その断面における板厚方向の中央位置のビッカース硬さを各々測定した。また、B点を通る位置で各テストピースを切断し、その断面における板厚方向の中央位置のビッカース硬さを各々測定した。
ばねNo.3及びばねNo.5については、測定位置A点、B点の各々につき、板厚方向における複数の位置のビッカース硬さを測定した。詳しくは、上記と同様に各テストピースを切断し、一方の表面からの板厚方向の距離が0.02mm、0.05mm、0.1mm、0.15mm、0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.6mm、1mm、1.4mm、1.5mm、1.7mm、1.8mm、1.85mm、1.9mm、1.95mm及び1.98mmとなる各点のビッカース硬さを各々測定した。
ばねの硬さ測定の測定結果を後述する他の機械的特性とともに表3に示す。
更に、ばねNo.3及びばねNo.5については、板厚1mmのテストピース、板厚2mmのテストピースの各々につき、測定位置A点と測定位置B点とに場合分けして、上記一方の表面からの板厚方向の距離とビッカース硬さとの関係を評価した。各テストピースにおける一方の表面からの板厚方向の距離とビッカース硬さとの関係を表すグラフを、
図2〜
図5に示す。なお、
図2は板厚2mmのばねNo.3についてのグラフであり、
図3は板厚2mmのばねNo.5についてのグラフであり、
図4は板厚1mmのばねNo.3についてのグラフであり、
図5は板厚1mmのばねNo.5についてのグラフである。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、板厚2mmのばねNo.5及びばねNo.6は端部であるA点のビッカース硬さに対して中央部であるB点のビッカース硬さが非常に小さい。つまり、板厚2mmのばねNo.5及びばねNo.6においては、ばねの中央部が好適にベイナイト変態していないと考えられる。これは、上記したようにばね材料No.5及びばね材料No.6のオーステナイト結晶粒が微細であることに由来すると考えられる。
【0063】
これに対して、ばねNo.1〜No.4では板厚及び測定位置を問わず、ビッカース硬さが400Hv以上である。つまり、本発明のばね材料を用いたばねNo.1〜No.4は何れも好適にベイナイト変態していると考えられる。これは、上記したようにばね材料No.1〜No.4のオーステナイト結晶粒が大きいことに由来すると考えられる。
【0064】
つまり、オーステナイト結晶粒度番号10番未満の本発明のばね材料を用いると、オーステンパ処理を好適に行うことができ、硬さに優れるばねを製造できると言える。なお、本発明のばね材料におけるオーステナイト結晶粒は、大きい方が良い。したがって、本発明のばね材料のオーステナイト結晶粒度番号は、小さい方が良く、具体的には、オーステナイト結晶粒度番号9番以下であるのが好ましく、9番未満であるのがより好ましく、8番以下であるのが更に好ましい。
【0065】
なお、
図4及び
図5に示すように、板厚1mmのばね材料を用いたばねにおいては、A点及びB点を含むばねの板幅方向の全域でビッカース硬さが400Hv以上であり、かつ、図中横軸で示されるばねの板厚方向の全域でもビッカース硬さが400Hv以上である。これに対して、
図2及び
図3に示すように、板厚2mmのばね材料を用いたばねにおいては、本発明のばね材料No.3を用いたばねNo.3では板幅方向及び板厚方向の全域でビッカース硬さが400Hv以上であるのに比べて、従来のばね材料No.5を用いたばねNo.5では板幅方向及び板厚方向の中央部においてビッカース硬さが400Hvに満たない。
【0066】
つまり、オーステナイト結晶粒度番号が10番以上であるばね材料を用いると、オーステンパ処理を好適に行うことができず、硬さに優れるばねを製造できると言い難い。
【0067】
(ばね評価試験2 ばねの組織観察)
ばねNo.1〜No.6につき、断面の電子顕微鏡像を撮像して、その組織が如何なるものであるか観察した。その結果、ばねNo.1〜No.6の組織はベイナイト組織であることが確認された。板厚2mmのばねNo.3のB点の表面から板厚方向に1mm離れた位置における電子顕微鏡像を
図6に示す。また、板厚2mmのばねNo.5のB点の表面から板厚方向に1mm離れた位置での電子顕微鏡像を
図7に示す。ベイナイト組織は、
図6及び
図7に示すように、略針状の構造体を有する。ここで言う針状とは、長針状、短針状を問わず、更に、棒状、リボン状、繊維状等の長細い形状全般を含む概念である。
【0068】
ベイナイトは、フェライト相とセメンタイト相とが混在してなるとされ、本発明においては上記の針状の構造体を有するものをベイナイトとみなす。より具体的には、(1)炭素鋼の電子顕微鏡像において確認される最大長さ1μm以上の針状の構造体を有し、(2)当該針状の構造体に外接する長方形の長辺の長さと、当該長方形の短辺の長さとの関係において、長辺の長さが短辺の長さの3倍以上であるものを、本発明におけるベイナイトと規定する。また、「ベイナイト組織を有する」とは、顕微鏡像に100μm角の任意の正方形の領域をとり、当該領域中に上記に特定された針状の構造体が10以上確認される場合を、「ベイナイト組織を有する」とし、当該領域中に当該針状の構造体が確認されない場合、及び、確認された当該針状の構造体が9以下である場合を「ベイナイト組織を有さない」と規定する。
ばねNo.1〜No.6は何れもベイナイト組織を有している。
【0069】
ばねNo.1〜No.7はその材料であるばね材料No.1〜No.7と同じ元素組成であり、ばねNo.1〜No.4については「質量%で、C:0.4%以上0.9%以下、Si:0.1%以上0.35%以下、Mn:0を超え1%以下、P:0%を超え0.03%以下、Ni:0%を超え0.25%以下、Cr:0%を超え0.3%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、前記不純物のうちAl:0.005%以下である」という本発明のばねの元素組成に適合する。また、上記したように、ばねNo.1〜No.4はベイナイト組織を有し、ビッカース硬さが400Hv以上である。したがって、ばねNo.1〜No.4は本発明のばねであると言える。
【0070】
また、ばねNo.5及びばねNo.6については、その元素組成が本発明のばねで規定する元素組成と異なり、ビッカース硬さもまた本発明のばねで規定する範囲外である。このため、ばねNo.5及びばねNo.6は本発明のばねでないと言える。ばねNo.5及びばねNo.6は従来のばね材料を用いた従来品のばねと言うこともできる。更に、ばねNo.7については、元素組成及びビッカース硬さにおいて本発明のばねと同程度であるが、ベイナイトを有さないために、本発明のばねでないと言える。更に、ばねNo.7が、後述するばねの引張強さ、0.2%耐力、伸び及び疲労限度においても、本発明のばねNo.1〜No.4を大きく下回る。このことによっても、ばねNo.7が本発明のばねと大きく異なることが裏付けられる。
【0071】
(ばね評価試験3 ばねのその他の機械的特性)
板厚1mmかつ10mm×100mmのばねNo.1〜No.7につき、JIS Z 2275に基づいてばねの機械的特性を測定した。具体的な測定項目は、ばねの引張強さ、0.2%耐力、伸び、及び、疲労限度である。疲労限度は板ばね曲げ疲労試験機を使用し、その他の試験条件は、ヤング率206.000MPa、振り角5°、負荷応力400〜1350MPa、打ち切り回数1×10
7回であった。結果を上記の表3に示す。また、ばねNo.3及びばねNo.5については疲労限度を算出する際に用いたS−N線図を
図8に示す。
【0072】
表3に示すように、本発明のばねNo.1〜No.4は、ばねの引張強さ、0.2%耐力、伸び、疲労限度の何れにおいても優れた機械的特性を有する。
【0073】
なお、本発明のばね材料を焼入れ及び焼戻ししたばねNo.7については、本発明のばね材料にオーステンパ処理を行ったばねNo.1〜No.4と同程度の硬さであったものの、その他の機械的特性についてはオーステンパ処理によって得られたばねNo.1〜No.6を大きく下回る結果であった。このことによっても、ばねNo.7が本発明のばねと大きく異なることが裏付けられる。
【0074】
さらに、表3に示すばねの機械的特性を考慮すると、本発明のばねは、引張強さが1400N/mm
2以上、0.2%耐力が1300N/mm
2以上、伸びが6%以上、1〜10
7回まで繰り返し負荷を加えた時にみられる疲労限度が390MPa以上、の何れかを満足するのが良いと言える。また、これらの複数を満足するのがより好ましく、全てを満たすのが特に好ましいと言える。
図8のS−N線図に示されるように、本発明のばねNo.3と、従来品のばねNo.5との耐久性を比較すると、ばねNo.3はばねNo.5に比べて応力振幅が大きく、サイクル経過に伴う応力振幅の低下も少なく、更に疲労限度が大きい。つまり、本発明のばねNo.3は従来品のばねNo.5に比べて耐疲労特性に優れるといえる。
【0075】
(ばね評価試験4 ばねの破面観察)
電子顕微鏡により、疲労破壊したばねNo.3及びばねNo.5の破面を観察した。その結果、従来品のばねNo.5の内部には高硬度介在物である粒状のAl
2O
3が生成しており、当該介在物を起点としてばねの内部から破壊が生じていることが確認された。また、本発明のばねNo.3には破壊の起点付近にこの種の介在物は存在せず、ばねの表面から破壊が生じていることが確認された。この結果から、脱酸剤として用いたAlを多く含む従来品のばねNo.5に比べ、脱酸剤としてAlを用いなかった本発明のばねNo.3は、破壊の起点となる介在物が少なく、その結果、耐疲労特性に優れると推測される。
【0076】
(ばねの実施例)
以下、上記したばねNo.1〜No.4の何れかに所定形状を付与して製造し得る、実施例のホースクランプ、皿ばね、トレランスリングについて図示する。
【0077】
図9に示す実施例のホースクランプ、
図10に示す実施例の皿ばね、及び、
図11に示す実施例のトレランスリングは、何れも、上記の本発明のばね材料の何れかをプレス成形しその後オーステンパ処理することで製造できる。
【0078】
図9は実施例のホースクランプを模式的に表す斜視図であり、
図10は実施例の皿ばねを模式的に表す斜視図であり、
図11は実施例のトレランスリングを模式的に表す斜視図である。