(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら互いに異なる種類の複数の吐出流路を分岐して設けると、流路抵抗が互いに異なるため、流路抵抗の大きい吐出流路から所望量の流体を吐出させることが困難となる。特に、流路抵抗の差が大きい場合にはその現象が顕著であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、互いに異なる流路抵抗の吐出流路が分岐して設けられていても、構造上流路抵抗が高くなる吐出流路から所望量の流体を吐出させることができる水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の水栓は、流路抵抗が異なる複数の吐出流路が分岐して設けられた水栓において、前記複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減する抵抗差低減手段を備え
、前記複数の吐出流路は、湯水を吐出するカラン吐出流路と、ミストを吐出するミスト吐出流路と、を備え、前記湯水と前記ミストを同時に吐出可能に構成され、少なくとも前記カラン吐出流路に前記抵抗差低減手段が設けられていることを特徴としている。
【0007】
本発明の水栓によれば、流路抵抗が異なる複数の吐出流路における流路抵抗の差を抵抗差低減手段により低減している。そのため、流体の一次側からの流れを分岐して複数の吐出流路から吐出する際、そのままでは流路抵抗が高くて所望の吐出量が得られない吐出流路から、より多くの流体を吐出させることができる。これにより、流路抵抗が高い吐出流路を含む複数の吐出流路から所望のバランスで流体を吐出させることが可能となる。
したがって、互いに流路抵抗の異なる複数の吐出流路が分岐して設けられていても、構造上流路抵抗が高くなる吐出流路から所望量の流体を吐出させることができる水栓を提供できる。
【0008】
本発明の水栓では、前記抵抗差低減手段は、少なくとも一つの前記吐出流路の流路抵抗を変更可能な抵抗可変手段を有していてもよい。
このような水栓によれば、抵抗可変手段により吐出流路の流路抵抗を可変にしたため、吐出流路の流路抵抗を調整することで、複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させて各吐出流路の内圧を調整することができる。そのため、分岐して設けられた各吐出流路の流量を調整して所望のバランスで流体を吐出させることができる。
【0009】
本発明の水栓では、前記抵抗可変手段は、前記吐出流路に空気を取込む空気取込部
と、前記空気取込部の下流側に配された多孔部材と、を有
し、前記空気取込部は、前記複数の吐出流路のうち、流路抵抗が小さい流路に設けられ、流体中の気泡が前記多孔部材の孔を一時的に閉塞するように構成されていてもよい。
このような水栓によれば、空気取込部により吐出流路を流れる流体(液体)中に空気を取込むことで流体中に気泡を形成させることができる。その結果、流体に含まれる気泡により一時的に吐出流路が塞がれることとなり、流体の流れを阻害して流路抵抗を一時的に増加させることができる。したがって、複数の吐出流路の内、流路抵抗が低い流路に空気取込部を設けることにより、複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させて各吐出流路の内圧を調整できる。
【0010】
本発明の水栓では、前記空気取込部がエゼクタで構成されていてもよい。
このような水栓によれば、空気取込部がエゼクタで構成されているため、吐出流路の流体の流れにより空気を取込むことができ、空気を取り込むための動力が不要である。そのため空気取込部の構成を簡素化できる。
【0011】
本発明の水栓では、前記空気取込部が前記空気の取込口の開口面積を変更可能な開口可変部を有していてもよい。
このような水栓によれば、空気の取込口の開口面積を可変にしているため、開口面積を調整することで空気の取込量を容易に調整することができる。
【0012】
本発明の水栓では、前記抵抗差低減手段が少なくとも一つの前記吐出流路の流路断面積を変更可能な断面積可変手段を有していてもよい。
このような水栓によれば、断面積可変手段により吐出流路の流路断面積を可変にしたため、吐出流路の流路断面積を調整することで流路抵抗を調整でき、複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させて各吐出流路の内圧を調整することができる。そのため、分岐して設けられた各吐出流路の流量を調整して所望のバランスで流体を吐出させることができる。
【0013】
本発明の水栓では、前記断面積可変手段が少なくとも一つの前記吐出流路に配置され、互いに隣接して前記吐出流路内の流体の流れで相対回転する第1の板及び第2の板を有し、前記第1の板及び前記第2の板は、相対回転により互いに重なる位置に連通開口部と閉塞部とが形成されていてもよい。
このような水栓によれば、第1の板及び第2の板が吐出流路内の流体の流れで相対回転することで、一方の板の連通開口部が他方の板の連通開口部と閉塞部とに交互に重なる。そのため、第1の板と第2の板との位置関係によって流路断面積を増減させることができる。これにより吐出流路の流路抵抗を調整でき、複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させて各吐出流路の内圧を調整することができる。
【0014】
本発明の水栓では、前記断面積可変手段が少なくとも一つの前記吐出流路に設けられ、開度を調整可能な弁を有していてもよい。
このような水栓によれば、開度(開閉量)を調整可能な弁により吐出流路の断面積を可変にしたため、弁の開度を調整することで流路断面積を調整することができる。これにより吐出流路の流路抵抗を調整して、複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させることができ、各吐出流路の内圧を調整することができる。
【0015】
本発明の水栓では、前記抵抗差低減手段が一次側の流れを分配して前記複数の吐出流路への流入量を変更可能な分配量可変手段を有
し、前記分配量可変手段は、一次側の流路と前記カラン吐出流路との間を連通する開口の開口面積を調整可能な板状体を備えていてもよい。
このような水栓によれば、分配量可変手段により一次側の流れを分配して複数の吐出流路への流入量を可変にしたため、複数の吐出流路への流入割合を調整でき、これにより複数の吐出流路における流路抵抗の差を低減させることが可能で各吐出流路の内圧を調整することができる。そのため分岐して設けられた各吐出流路の流量を調整して所望のバランスで流体を吐出させることが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の吐出流路における流路抵抗の差を抵抗差低減手段により低減するので、互いに流路抵抗の異なる複数の吐出流路が分岐して設けられていても、構造上流路抵抗が高くなる吐出流路から所望量の流体を吐出させることができる水栓を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものであり、長さ、幅及び厚みの比率などは実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。また、本実施形態における「流体」は、「湯または水などの液体」を示している。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について
図1〜
図4を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る水栓を備えた浴室の概略平面図、
図2は水栓の斜視図、
図3は水栓の吐出管における先端部の断面図、
図4は水栓の動作を説明する断面図である。
【0020】
図1に示すように、ユニットバスなどの浴室1内には浴槽11と、浴槽11に給湯可能な水栓20と、洗い場に設けられたカウンター12と、カウンターに設けられてシャワー又はカランに切替可能なシャワー水栓13と、を備えている。
図2に示すように、水栓20には吐出管21が設けられ、吐出管21の先端に、後述するミスト吐出流路23及びカラン吐出流路25を備えた複合吐出具27が装着されている。この複合吐出具27により、浴槽11に給湯しながら、ミストを浴室1内に供給することができる。つまり、水栓20に複合吐出具27を取り付けることにより、浴槽11のお湯張りをしながら、ミストで浴室1内の暖房を行うことができる。
なお、水栓20の設置位置については適宜変更可能であり、例えば、浴槽専用として、浴槽11のみに湯水を吐出可能な位置に設けてもよい。また、浴槽11と洗い場の兼用水栓として浴室1内に水栓を1箇所のみ設置するようにしてもよい。さらに、浴槽11の自動お湯張り機能を有している場合には、洗い場専用の水栓(シャワー水栓)のみを設置してもよい。いずれの場合にしても、水栓の吐出管21の先端に複合吐出具27を装着することにより、湯水の吐出だけでなくミストを浴室1内に供給して浴室1内の暖房を行うことができるように構成されていればよい。
【0021】
図3に示すように、複合吐出具27は、吐出管21の一次側流路29と連通した端部開口に液密に固定された本体部31を備えている。本体部31には、一端側が一次側流路29と連通するように開口したミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とが形成されている。本体部31を吐出管21に固定した状態では、ミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とが一次側流路29から分岐して設けられている。
【0022】
ミスト吐出流路23の他端側には流体旋回部28が形成されている。流体旋回部28は、所定の流速で流体が通過することで他端側端部のミスト吐出口24からミストを噴出するように構成されている。
具体的には、流体旋回部28は、ミスト吐出流路23内に旋回流を形成するフィンが設けられ、旋回流が小径のミスト吐出口24から噴出されることでミストが形成されるように構成されている。ミスト吐出流路23は、カラン吐出流路25に比べて流路抵抗が大きくなっている。
【0023】
カラン吐出流路25は、他端側端部のカラン吐出口26に設けられて吐出する水や湯などの流体を整流化する整流部33と、ミスト吐出流路23との流路抵抗の差を低減するための抵抗差低減手段40と、を備えている。
整流部33は、多数の孔34を有するメッシュ等の多孔部材35を備え、多孔部材35に流体(湯水)を透過させて外部へ吐出するように構成されている。
【0024】
本実施形態では、抵抗差低減手段40として、流路抵抗を可変にすることができる抵抗可変手段41を用いている。この抵抗可変手段41としては、カラン吐出流路25に空気を取込む空気取込部43を備えたエゼクタ45を用いている。
エゼクタ45は、一次側からの流体の流れにより負圧部46を形成し、負圧により本体部31の外部に開口した空気取込口47から空気を吸引し、カラン吐出流路25を流れる流体中(湯水中)に空気を取り込んで、流体内に多数の気泡を形成することができる。
【0025】
流体中に気泡が存在することで、該気泡が多孔部材35の孔34(整流部33)を通過しようとするため、その際に孔34を通過する流体量が一時的に制限される。その結果、カラン吐出流路25の流路抵抗が一時的に増加することになる。
したがって、抵抗可変手段41を用いてカラン吐出流路25の流路抵抗を増加させることにより、ミスト吐出流路23の流路抵抗との差を低減することができる。
【0026】
このような水栓20を用いて浴槽11に給湯すると、まず
図4(a)に示されるように、吐出管21の一次側流路29を通過した流体が、複合吐出具27の一端側においてミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とに分岐してそれぞれの流路に流入する。
するとミスト吐出流路23の流路抵抗がカラン吐出流路25の流路抵抗に比べて大きいため、開始時には、カラン吐出流路25に湯が流れやすく、ミスト吐出流路23のミスト吐出口24から吐出されるミストは少量となる。
【0027】
その後、流体がカラン吐出流路25を十分な流速で流れることで、エゼクタ45を介して空気が流体に取り込まれる。すると、
図4(b)に示すように、流体中に気泡が形成され、該気泡が整流部33の多孔部材35の孔34を一時的に閉塞することにより流体の流れが阻害される。そして、カラン吐出流路25の流路抵抗が増大し、ミスト吐出流路23とカラン吐出流路25との流路抵抗の差が低減される。
その結果、ミスト吐出流路23に流体が流入し易くなり、ミストをより多量に噴出することができる。このミストにより、例えば浴室の暖房効果を実現できる。
【0028】
以上のような第1実施形態の水栓20によれば、カラン吐出流路25の流路抵抗とミスト吐出流路23の流路抵抗との差を抵抗可変手段41(抵抗差低減手段40)により低減できる。そのため一次側流路29からの流体の流れを分岐してカラン吐出流路25のカラン吐出口26とミスト吐出流路23のミスト吐出口24とから吐出する際、そのままでは流路抵抗が高くて所望の吐出量が得られないミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から、より多くのミストを吐出させることができる。これによりミスト吐出口24およびカラン吐出口26のいずれの吐出口からも、所望のバランスで湯及びミストを吐出させることが可能である。換言すれば、抵抗可変手段41によりカラン吐出流路25の流路抵抗を調整することで、ミスト吐出流路23との流路抵抗の差を低減して内圧を容易に調整することができる。
【0029】
また、この水栓20によれば、抵抗可変手段41がカラン吐出流路25に空気を取込む空気取込部43を備えているため、流体(湯)中に含まれる気泡により流体の流れを阻害してカラン吐出流路25の流路抵抗を増加させることができる。特に、本実施形態の水栓20によれば、抵抗可変手段41がエゼクタ45で構成されているため、カラン吐出流路25内の流体の流れで自然に空気を取込むことができる。つまり、簡易な構成のエゼクタ45を設けることにより、動力を用いることなく空気をカラン吐出流路25内に取り込むことが可能であり、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23との流路抵抗の差を容易に低減することができる。
【0030】
(第1実施形態の変形例)
図5は、第1実施形態の変形例である。この変形例は、空気取込部43において空気取込口47の開口面積を可変にした開口可変部48を有している。その他は第1実施形態と同様である。
【0031】
このような変形例の水栓20であっても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。しかも空気取込口47の開口面積を可変にしているため、開口面積を調整することで空気の取込量を容易に、かつ、自由に調整できる。
例えば、
図5(a)のように開口面積を大きくすることで空気の取込量を多くして、流体(湯)中の気泡量を多くすることができる。すると、整流部33において多孔部材35の多数の孔34を気泡により一時的に閉塞することで、カラン吐出流路25の流路抵抗をより増加させることができる。一方、
図5(b)のように開口面積を小さくすることで空気の取込量を少なくして、流体(湯)中の気泡量を少なくすることができる。すると、整流部33において多孔部材35の孔34を一時的に閉塞する気泡の量が少ないため、カラン吐出流路25の流路抵抗を
図5(a)の場合より低減させることができる。
したがって、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23とにおける流路抵抗の差を自在に調整して、ミストの吐出量を容易に調整することができる。
【0032】
なお、
図5(a)、(b)においては、空気取込口47の大きさ自体が変わっているように記載されているが、このような構成ではなく、空気取込口47の外周に、空気取込口47の一部を閉塞させることができるような部材を設け、該部材を動かすことにより空気取込口47の開口面積を可変できるようにしてもよい。
【0033】
また、第1実施形態は本発明の範囲において適宜構成を変更可能である。例えば、空気取込部43としてエゼクタ45を用いたが、例えばエアポンプ等を用いてカラン吐出流路25に空気を強制的に取り込ませてもよい。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について
図6〜
図9を用いて説明する。
図6は本実施形態に係る水栓の吐出管における先端部の断面図、
図7は本実施形態の水栓の断面積可変手段における回転羽根車及び散水板の平面図、
図8は本実施形態の水栓の断面積可変手段における回転羽根車及び散水板の連通状態を示す図、
図9は本実施形態の水栓の断面積可変手段における回転羽根車及び散水板の閉塞状態を示す図である。
【0035】
第2実施形態では、
図6に示すように、抵抗差低減手段40として、第1実施形態の抵抗可変手段41の空気取込部43を設ける代わりに、カラン吐出流路25に流路断面積を可変にするための断面積可変手段51を設けている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
断面積可変手段51は、カラン吐出流路25を塞ぐように配置され、互いに隣接してカラン吐出流路25内の流れで相対回転する第1の板及び第2の板としての散水板53及び回転羽根車54を有している。回転羽根車54はカラン吐出流路25内に設けられた回転軸部材57の軸部57aに対して回転可能に取り付けられており、該軸部57aを中心に回転するように構成されている。なお、本実施形態では、散水板53及び回転羽根車54がカラン吐出流路25全体を塞ぐ大きさで形成されているが、一部を塞ぐ大きさで形成されていてもよい。
【0036】
図7(a)に示すように、散水板53は、カラン吐出流路25の流体の流れ方向と直交する方向に配置される平面視円形の板状部材を有している。散水板53は、複合吐出具27の本体部31に支持固定されている。散水板53には、貫通孔からなる連通開口部55aが中心軸C周りの円周方向に略等間隔に複数形成されており(本実施形態では4箇所)、隣り合う連通開口部55a,55a間が平坦な閉塞部56aとなっている。
【0037】
図7(b)に示すように、回転羽根車54は、散水板53と流体の流れ方向に沿う方向に隣接して対向配置される平面視円形の板状部材からなり、散水板53に対して中心軸C周りに回転自在に配置されている。この回転羽根車54は、散水板53の連通開口部55aと同じ円周上に同じピッチで、散水板53の連通開口部55aより小さい連通開口部55bが形成されている。そして、隣り合う連通開口部55b,55b間が閉塞部56bとなっている。
【0038】
散水板53と回転羽根車54とはカラン吐出流路25における流体の流れにより相対回転可能に形成されている。具体的には、回転羽根車54の上流側の表面には羽根が形成されており、該羽根に流体が接触することにより、回転羽根車54が中心軸C周りに回転できるように構成されている。また、散水板53は本体部31に支持固定されているため、流体が流れることにより散水板53と回転羽根車54とは相対回転する。
散水板53と回転羽根車54とが相対回転すると、
図8(a)のように散水板53の連通開口部55aと回転羽根車54の連通開口部55bとが重なる位置に配置された状態では、
図8(b)のように、カラン吐出流路25内の流体(湯)が断面積可変手段51を通過してカラン吐出口26から吐出される。
一方、
図9(a)のように、散水板53の連通開口部55aと回転羽根車54の閉塞部56bとが重なるとともに、散水板53の閉塞部56aと回転羽根車54の連通開口部55bとが重なる位置に配置された状態では、
図9(b)のように、カラン吐出流路25内の流体(湯)は断面積可変手段51により閉塞され、吐出されない。
つまり、この断面積可変手段51では散水板53と回転羽根車54との相対回転により、カラン吐出流路25内の流体の流れ方向と直交する断面積が連続的に変化するように構成されている。
【0039】
このような水栓20により浴槽11に給湯する場合には、
図8(a)、(b)のように断面積可変手段51においてカラン吐出流路25の断面積が最大となるときには、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から吐出されるミストの量が少なくなり、カラン吐出流路25から浴槽11に給湯する流量が多くなる。
一方、
図9(a)、(b)のように断面積可変手段51でカラン吐出流路25の断面積が最小(面積ゼロ)となって閉塞したときには、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から吐出されるミストの量が多くなり、カラン吐出流路25から浴槽11に給湯する流量が少なくなる。
そして、回転羽根車54は、流体が流れることにより散水板53に対して常に相対回転しているため、断面積可変手段51に形成される開口面積は連続的に変化することになる。つまり、流体(湯)を流している間、ミストと湯をバランスよく供給することができる。
【0040】
以上のような第2実施形態の水栓20においても、第1実施形態と同様に、カラン吐出流路25の流路抵抗とミスト吐出流路23の流路抵抗との差を断面積可変手段51(抵抗差低減手段40)により低減できる。そのため一次側流路29からの流体の流れを分岐してカラン吐出流路25のカラン吐出口26とミスト吐出流路23のミスト吐出口24とから吐出する際、そのままでは流路抵抗が高くて所望の吐出量が得られないミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から、より多くのミストを吐出させることができる。これによりミスト吐出口24とカラン吐出口26のいずれの吐出口からも、所望のバランスで湯及びミストを吐出させることが可能である。換言すれば、断面積可変手段51によりカラン吐出流路25の流路断面積を可変にしているため、カラン吐出流路25の流路断面積により容易に流路抵抗を調整でき、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23との内圧を容易に調整できる。
【0041】
さらに、第2実施形態の水栓20では、散水板53及び回転羽根車54がカラン吐出流路25内の流体の流れで相対回転することで流路断面積を連続的に増減でき、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23とにおける流路抵抗の差を容易に低減させることができる。
【0042】
なお、第2実施形態も本発明の範囲において適宜構成を変更可能である。例えば、上記の断面積可変手段51では回転羽根車54の回転により、複数の連通開口部55aが同時に開口するとともに同時に閉塞するように構成したが、開口部の大きさを調整し、連通開口部55a,55bの一部が開口するとともに他の一部が閉塞するように構成したものであってもよい。また、本実施形態では、散水板53を本体部31に支持固定したが、散水板53も本体部31に対して回転可能に支持してもよい。
また上記では、各連通開口部55aを円形の孔として形成したが、回転羽根車54及び散水板53の連通開口部55a,55bの形状は何ら限定されない。
さらに上記では、抵抗差低減手段40として、第1実施形態の抵抗可変手段41の代わりに、断面積可変手段51を設けたが、第1実施形態の抵抗可変手段41と第2実施形態の断面積可変手段51との両方を組み合わせて設けることも可能であり、さらに他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0043】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について
図10を用いて説明する。
図10は第3実施形態における水栓の先端部の断面図である。
この水栓20では、抵抗差低減手段40として、第1実施形態のような抵抗可変手段41のエゼクタ45を設ける代りに、カラン吐出流路25に断面積可変手段151を設けている。この実施形態における断面積可変手段151としては、開度を調整可能なボールバルブなどの弁58を設けている。
【0044】
このような水栓20では、
図10(a)に示すように、弁58の開度を大きくすると、カラン吐出流路25の流路抵抗を小さくすることになり、カラン吐出口26から浴槽11に給湯される流量を多くして、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から浴室1内に供給されるミストの吐出量を少なくすることができる。
一方、
図10(b)に示すように、弁58の開度を小さくすると、カラン吐出流路25の流路抵抗を大きくすることになり、カラン吐出口26から浴槽11に給湯される流量を少なくして、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)から浴室1内に供給されるミストの吐出量を多くすることができる。
【0045】
このような水栓20においても、第2実施形態と同様に、ミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とから所望のバランスでミストと湯を吐出させることが可能である。
また、第3実施形態の水栓によれば、開度を調整可能な弁58によりカラン吐出流路25の断面積を可変にしたため、容易に流路断面積を調整できてミスト吐出流路23とカラン吐出流路25との流路抵抗の差を低減(調整)することができる。
【0046】
なお、第3実施形態も本発明の範囲において適宜構成を変更可能である。例えば、本実施形態の構成(断面積可変手段151)と、他の実施形態における抵抗差低減手段40とを組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について
図11を用いて説明する。
図11は第4実施形態における水栓の先端部の断面図である。
この水栓20では、抵抗差低減手段40として、吐出管21の一次側流路29からミスト吐出流路23へ流入する流体量と、一次側流路29からカラン吐出流路25へ流入する流体量とのバランスを可変にした分配量可変手段61を設けている。
【0048】
分配量可変手段61は、一次側流路29と本体部31との間に設けられた略板状の部材で構成されており、一次側流路29と本体部31の流路(ミスト吐出流路23およびカラン吐出流路25)とを連通させるための貫通孔(開口部65)が形成されている。また、分配量可変手段61は、吐出管21に対して相対移動させることができ、一次側流路29とミスト吐出流路23との連通開口面積、および、一次側流路29とカラン吐出流路25との連通開口面積を可変できるように構成されている。つまり、分配量可変手段61の位置を調整することにより、ミスト吐出流路23へ供給する流量とカラン吐出流路25へ供給する流量とを容易に調整することができる。
【0049】
具体的には、本実施形態の分配量可変手段61は、一次側流路29に沿ってスライド可能に配置され、端部に形成された操作部62が水栓20の吐出管21から突出した板状体63を備えている。板状体63には一次側流路29とミスト吐出流路23及びカラン吐出流路25との間を連通及び閉塞可能な開口部65が形成されている。
【0050】
板状体63は、操作部62によりスライドさせることで、一次側流路29とミスト吐出流路23との間を連通する開口面積と、一次側流路29とカラン吐出流路25との間を連通する開口面積と、を容易に調整することができる。そのためこれらの開口面積を調整することで、一次側流路29からミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とに分配する流体量を調整することが可能である。
【0051】
この実施形態では、
図11(a)に示すように、開口部65がミスト吐出流路23のみを臨むように位置させることで、流体の全量がミスト吐出流路23に流入し、大量のミストを浴室1内に吐出することができる。
また、
図11(b)に示すように、開口部65の大半がミスト吐出流路23を臨むように(カラン吐出流路25にはわずかに臨むように)位置させることで、カラン吐出流路25(カラン吐出口26)から浴槽11に少量の湯を供給しつつ、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)からミストを多量に吐出させることができる。
さらに、
図11(c)に示すように、開口部65の大半がカラン吐出流路25を臨むように(ミスト吐出流路23にはわずかに臨むように)位置させることで、カラン吐出流路25(カラン吐出口26)から浴槽11に多量の湯を供給しつつ、ミスト吐出流路23(ミスト吐出口24)からも少量のミストを吐出させることができる。なお、この場合は、ミストを吐出可能な圧力及び流速でミスト吐出流路23に流体(湯)を流入させればよい。
そして、
図11(d)に示すように、開口部65がカラン吐出流路25のみを臨むように位置させることで、流体の全量がカラン吐出流路25に流入し、浴槽11に大量の湯を供給することができる。
【0052】
第4実施形態の水栓20によれば、分配量可変手段61により一次側流路29からの流体をカラン吐出流路25とミスト吐出流路23へ分配できるようにした。つまり、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23への流体の流入量を可変にしたため、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23とへの流入割合を容易に調整できる。そのため、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23における流路抵抗の差を低減させることが可能で、各吐出流路23,25の内圧を容易に調整できる。そのため分岐して設けられたカラン吐出流路25とミスト吐出流路23との流量を調整して所望のバランスで湯とミストを吐出させることが可能である。
【0053】
なお、第4実施形態も本発明の範囲において適宜構成を変更可能である。例えば、本実施形態の構成(分配量可変手段61)と、他の実施形態における抵抗差低減手段40とを組み合わせて用いてもよい。
さらに上記第1乃至第4実施形態では、主として分岐した複数の流路のうち、流路抵抗の低いカラン吐出流路25に対し、流路抵抗を増加させる手段を用いることで、ミスト吐出流路23から吐出させるミストの量を増やす構成を説明したが、特に限定されるものではなく、流路抵抗の高いミスト吐出流路23の流路抵抗を低下する手段を採用することも可能であり、カラン吐出流路25とミスト吐出流路23との流路抵抗の差を低減できる限り適宜選択可能である。
また、上記第1乃至第4実施形態では、何れもカラン吐出流路25から吐出させた湯を浴槽11に使用したが、浴槽11以外に使用することも可能である。
【0054】
また、本実施形態では、ミスト吐出流路23とカラン吐出流路25とを備えた複合吐出具27について説明したが、吐出流路が2つ以上形成されたものに採用してもよく、用途についても特に限定されない。
さらに、本実施形態の複合吐出具27は、水栓20の吐出管21に対してネジで着脱できるものであってもよい。この場合、新品の水栓20に用いるだけでなく、既存設置された水栓にも取り付けることができ、容易に浴室1内にミストを供給する機能を付加することができる。
そして、本実施形態の複合吐出具27は、水栓20の吐出管21の先端に取り付けた場合の説明をしたが、それに限らず、給湯配管の途中に設置してミストが吐出できるようにしてもよい。