(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776110
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】シーソースイッチ構造
(51)【国際特許分類】
H01H 23/04 20060101AFI20201019BHJP
H01H 23/30 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
H01H23/04 A
H01H23/30
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-238796(P2016-238796)
(22)【出願日】2016年12月8日
(65)【公開番号】特開2018-97941(P2018-97941A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 宏和
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/097107(WO,A1)
【文献】
特開平10−269897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 23/04
H01H 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチパネルに回動可能に支持されたスイッチノブを上方からの操作力によって回動させ、回動方向によって一対のプッシュスイッチを選択的にオンオフさせるシーソースイッチ構造において、
前記スイッチパネルは、開口部を構成する前後両側壁と、前記両側壁の対向位置に設けられた一対の軸受部とを備え、
前記スイッチノブは、前記開口部に嵌合され、前記上方からの操作力が作用する頂部を備えた操作部と、前記操作部の左右中央から前記スイッチパネルの前記両側壁に沿ってそれぞれ下方に延設された立直板と、前記各立直板の非対向面に形成され、前記一対の軸受部にそれぞれ係合される回動軸と、前記操作部の左右方向の両側から下方に突設され、前記回動軸周りに互いに上下逆方向に回動する一対の押圧棒とを備え、
前記一対のプッシュスイッチは、前記一対の押圧棒に対応する位置に設けられ、
さらに、
前記スイッチパネルの前記両側壁は、下部に底板部を備え、
前記一対の軸受部は、前記両側壁に形成され、かつ前記底板部に向かう長孔であり、
前記立直板は、前記回動軸の軸断面より大形の構造を有することを特徴とするシーソースイッチ構造。
【請求項2】
前記立直板は、前記回動軸と同心で前記回動軸の軸径より大径の下端部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシーソースイッチ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチパネルに回動可能に支持されたスイッチノブを外部からの操作力を受けて回動させ、回動方向によって一対のプッシュスイッチを選択的にオンさせるシーソースイッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、外部からの操作を受け付けて各種の機能や処理の切換乃至は変更等を行うスイッチを備えた器具、装置が多種類知られている。これらの器具、装置に適用されるスイッチとして、シーソースイッチ構造が汎用されている。例えば特許文献1には、中央に開口部が穿設され、開口部の両側に立設された一対の側片の対向位置にそれぞれ軸受を設けたタッチパネルと、前記開口部に嵌合され、前記軸受に軸支された回動軸を有する、下向きにされた箱形状を有するスイッチノブとを備え、このスイッチノブを外部からの操作力によって回動させることで、前記回動軸を挟んで両側に立設された一対の押圧棒が、回動方向によって対応配置されたプッシュスイッチを選択的にオンさせるシーソースイッチ構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―4273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載のシーソースイッチ構造では、一対の側片間に設けられた開口部にスイッチノブを押し込み、側片の撓みを利用して軸受に回動軸を嵌め込むようにしたものであるため、スイッチ操作時の押下方向の力に弱く、回動軸が軸受から脱落する虞がある。また、押圧力は、回動軸に作用するため、剪断強度面での対応が望まれる。
【0005】
一方、撓みを利用した回動軸の軸受への押し込み作業に代えて、軸受を有する側壁をスイッチパネルとは別パーツにして、まず別パーツに回動軸を嵌合させ、その状態で、別パーツをスイッチパネルの本体に取り付ける態様が考えられる。しかし、その場合には、別パーツ部品や固定用の部品等が必要となり、部品点数の増加、取り付け作業の増大を招く。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、強度を確保しつつ、部品点数が少なく、組み立て作業が容易なシーソースイッチ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシーソースイッチ構造は、スイッチパネルに回動可能に支持されたスイッチノブを上方からの操作力によって回動させ、回動方向によって一対のプッシュスイッチを選択的にオンオフさせるシーソースイッチ構造において、前記スイッチパネルは、開口部を構成する前後両側壁と、前記両側壁の対向位置に設けられた一対の軸受部とを備え、前記スイッチノブは、前記開口部に嵌合され、前記上方からの操作力が作用する頂部を備えた操作部と、前記操作部の左右中央から前記スイッチパネルの前記両側壁に沿ってそれぞれ下方に延設された立直板と、前記各立直板の非対向面に形成され、前記一対の軸受部にそれぞれ係合される回動軸と、前記操作部の左右方向の両側から下方に突設され、前記回動軸周りに互いに上下逆方向に回動する一対の押圧棒とを備え、前記一対のプッシュスイッチは、前記一対の押圧棒に対応する位置に設けられたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明によれば、スイッチノブの操作部から立直板が延設された構造であるため、回動軸を含む立直板を別パーツとする従来構成と比べて部品点数が少なくて済む。また、スイッチノブをスイッチパネルの開口部に押し込む際に、立直板の撓みを利用して回動軸を軸受部と係合するようにしたので、取り付け作業も容易となる。また、スイッチパネルの両側壁に軸受部を構成したため強度が補強され、軸受部が外部からの押下力を受けても、軸受部側が撓んで、回動軸が脱落するということが可及的に防がれる。
【0009】
また、前記一対の軸受部は、前記両側壁に形成された長孔である。この構成によれば、軸受部の構造が簡素となり、製造も容易となる。
【0010】
また、前記スイッチパネルの前記両側壁は下部に底板部を備え、前記一対の軸受部は、前記底板部に向かう長孔であり、前記立直板は、前記回動軸の軸断面より大形の構造を有することを特徴とするものである。この構成によれば、回動軸ではなく、回動軸より大きな構造部分で外部からの押圧力を受け止めるため、強度が確保される。
【0011】
また、前記立直板は、前記回動軸と同心で前記回動軸の軸径より大径の下端部を備えたことを特徴とするものである。この構成によれば、下端部が大径であっても、下端部と底板とは1点で当接するので、強度確保を図りつつ、スイッチの押圧操作がスムーズとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強度を確保しつつ、部品点数が少なく、組み立て作業が容易なシーソースイッチ構造を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るシーソースイッチ構造の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】回動軸と軸受である長孔との係合を説明する正面断面図で、(a)は第1実施形態における図、(b)は従来構造を示す図である。
【
図3】立直板の下端部が大径形状の場合の側面図である。
【
図4】スイッチノブの他の構造を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すシーソースイッチ構造10は、例えばタッチディスプレイと通信するタッチペンの表面適所に露出して適用され、ページ送り、戻しスイッチなどに用いられるものである。あるいは、操作パネル部等の適所に、外部から操作可能に配置される態様でもよい。なお、各図に示すように、前後方向をX、左右方向をY、上下方向をZとして表す。
【0015】
シーソースイッチ構造10は、配線基板11と、スイッチパネル12と、スイッチノブ13とを備えている。配線基板11上には、同一構成を有する一対のタクトスイッチ14A,14Bが所定の間隔を置いて装着されている。
【0016】
タクトスイッチ14A,14Bは、それぞれスイッチ本体14aと、押しボタン部14bとを有し、押しボタン部14bの先端を上端部14cという。スイッチ本体14aは、公知のように内部に図略のバネが設けられ、このバネが押しボタン部14bを常に上方に付勢している。押しボタン部14bが上方から押下されると、押しボタン部14bはバネに抗して押し下げられる。タクトスイッチ14A,14Bは、モーメンタリ型のプッシュスイッチであり、押しボタン部14bを押下した時にオンする。一対のタクトスイッチ14A,14Bは、後述するように選択的にオンされる。
【0017】
スイッチパネル12は、上方が開口した直方体の箱形状を有する。開口部12aの周囲には所定幅の鍔部12Aが形成されている。箱形状は、鍔部12Aの内側端縁から下方に、互いに対向する側壁で四方を囲まれて構成されている。側壁は、長手方向の前後側壁12b、12bと、短手方向の左右側壁12c、12cとから構成されている。なお、X方向を前後方向とし、Y方向を左右方向とし、Z方向を上下方向乃至は高さ方向とする。
【0018】
側壁12b、12cは、高さ寸法が同一で、底部には底板12dが形成されている。各側壁12bの左右方向中間位置には、高さ方向のほぼ中央から下方に亘って長孔12eが穿設されている。長孔12eは、幅寸法が、後述する回動軸13cの軸径より僅かに大径で、回動軸13cが遊嵌可能にされ、軸受として機能する。
【0019】
また、底板12dの前後方向の中央、かつ左右方向の両端側の対称位置には、一対の貫通孔12fが穿設されている。一対の貫通孔12fの左右方向における穿設位置は、配線基板11上のタクトスイッチ14A,14Bの装着位置と対応している。貫通孔12fの寸法は、後述する押圧棒13dの軸径より大径である。なお、また、貫通孔12fは円形の他、左右方向の長孔形状でもよい。貫通孔12fが左右方向に長孔である態様では、前後方向の寸法は、押圧棒13dの軸径より僅かに大きく、一方、左右方向の寸法は、押圧棒13dの回動時の左右方向のおける変位分を考慮して押圧棒13dの軸径より大きく設定すればよい。
【0020】
スイッチノブ13は、頂部に板状で長方形の操作部13aを備えている。操作部13aの上面視形状は、スイッチパネル12の開口部12aの形状に対応し、僅かに小形サイズに形成されて、上方から開口部12a内に遊嵌可能にされている。操作部13aの左右方向の中央位置で、かつ前後端縁には、所定厚及び所定幅を有する板状の立直部13bが下方に向けて延設されている。立直部13bは、下端部113bが曲線形状等、好ましくは円弧形状とされている。また、立直部13bは、いわゆる爪形状をなし、厚さ方向(前後方向)に対して多少撓む弾性を有している。各立直部13bの下端部113bの円弧形状の中心には、それぞれ前後方向外側(非対向側)に立設された回動軸13cを有する。
【0021】
回動軸13cの軸長は、
図2(a)に示すように、スイッチノブ13がスイッチパネル12に係合された状態で、長孔12eの肉厚に対応するように設定されている。例えば、
図2(a)では、回動軸13cの先端が長孔12eの肉厚の半分あたりに位置するように設定されている。このように立直部13bの厚さ、回動軸13cの軸長、長孔12eの肉厚、及び開口部12aの前後方向寸法を適宜に設定することで、立直部13bを撓ませつつ、スイッチノブ13を上方から開口部12a内に押し込んで、回動軸13cを長孔12eに嵌合支持させることができる。
【0022】
また、回動軸13cと下端部113bとの高さ方向の位置関係、及び立直部13bの高さを適宜に設定することで、回動軸13cが長孔12eに嵌合された状態で下端部113bが底板12dの上面に当接する(
図2(a)参照)。回動軸13cが長孔12eに嵌合された状態で、操作部13aの左右方向の一方側が上方から押下されると、スイッチノブ13が回動軸13cを中心に回動する。このとき、スイッチノブ13が回動しても、下端部113bが常に底板12dに当接するため、押下力に抗してスイッチノブ13がスイッチパネル12から脱落することがなくなる。また、下方への押圧力が底板12dで受け止めるため、立直部13bや前後側壁12bが変形したりすることはなく、不良化、破損等が防止される。
【0023】
これに対し、
図2(b)は、従来の構造を示している。回動軸13cが、円形孔112eに嵌合されている。この場合、下方への押圧力が回動軸13cと円形孔112eとの接触位置に掛かり、回動軸13cに剪断力が働くため、スイッチノブ13が脱落の虞がある。他方、回動軸13cを太くすると、強度は増すものの摩擦の増加により操作感を損なうため好ましくない。
【0024】
また、操作部13aの上面のうち、左右方向の中央を境にして一方側の表面を押圧部Aとし、他方側の表面を押圧部Bとする。押圧部A,Bの下面側には下方に延びる一対の押圧棒13dが立設されている。一対の押圧棒13dの立設位置は、スイッチノブ13に外部からの力が作用しない中立位置にあるとき、タクトスイッチ14A,14Bの装着位置の上方に位置するように設定されている。一対の押圧棒13dの長さは同一であり、押圧部A,Bの一方が上方から押圧された場合、一対の押圧棒13dは回動軸13c周りに同方向に回動し、一方の押圧棒13dの先端部13eがタクトスイッチ14A(または14B)の押しボタン部14bの上端部14cを押下し、他方の押圧棒13dがタクトスイッチ14B(または14A)の押しボタン部14bから、より上方に離反する。これによって、タクトスイッチ14A,14Bの一方が選択的にオンする。なお、スイッチノブ13は、図略の付勢部材で能動的に中立位置に維持する態様としてもよい。
【0025】
上記構成において、配線基板11とスイッチパネル12とがハウジング等を介して固定されると、配線基板11とスイッチパネル12とは平行に配置され、各押圧棒13dの先端部13eが、各押しボタン部14bの上端部14cにそれぞれ当接、乃至は高さ方向に僅かに離間した位置になる。そして、例えば、押圧部Aを指で押下すると、スイッチノブ13が回動軸13cを軸として回動し、これに伴って押圧部A側の押圧棒13dの先端部13eが、タクトスイッチ14Aの押しボタン部14bを押し下げる。逆に、押圧部Bが押下された場合、タクトスイッチ14Bの押しボタン部14bを押し下げる。
【0026】
従って、押圧部Aを指で押下すると、押下した瞬間、タクトスイッチ14Aがオンの状態になり、押圧部Bを指で押下すると、押下した瞬間、タクトスイッチ14Bがオンの状態になる。
【0027】
図3は、立直部13bを幅広にした場合の図である。立直部13bは、幅の広狭に関わらず、下端部113bと底板12dとが一点で当接するため、立直部13bを幅広とすることで、強度が維持され、かつ操作感を損なわずに済む。
【0028】
図4は、スイッチノブ13の他の構造を示している。スイッチノブ13の左右の押圧棒13dは、例えばタクトスイッチ14A,14Bの装着間隔によっては、その間の寸法を調整せざるを得ない場合がある。例えば
図4において、押圧棒13dは、操作部13aの左右方向端部から、さらにはみ出した部位で下方に立設されている。押圧棒13dが操作部13aの左右方向端部からはみ出してしまう部位に、上蓋15を被せることで、前記はみ出し部位が覆われて見栄えが良好に維持される。
【0029】
なお、第1実施形態では、長孔12eを底板12dまで達する切欠形状としたが、これに代えて、前後側壁12bの途中までの孔としてもよい。
【0030】
また、第1実施形態では、立直部13bの下端部113bを円弧形状としたが、正確な円弧形状に限定されず、スイッチノブ13のスムーズな回動が可能な範囲で、楕円形状の一部乃至は他の曲線形状を採用してもよい。
【0031】
また、第1実施形態では、タクトスイッチを用いて説明したが、スイッチはプッシュ式のスイッチであれば、必ずしもタクトスイッチである必要はない。他の形式のプッシュスイッチでもよい。
【0032】
また、第1実施形態では、モーメンタリ型のタクトスイッチを用い、押下した瞬間のみオンとなるものを用いて説明したが、プッシュ式のスイッチであれば、押下している間、オンとなり、押下していない間、オフとなるものであってもよい。モーメンタリ型の他に、オルタネイト型のプッシュスイッチであってもよい。
【0033】
また、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
10 シーソースイッチ構造
11 配線基板
12 スイッチパネル
12b 側壁
12d 底板
12e 長孔(軸受部)
12f 孔
13 スイッチノブ
13a 操作部
13b 立直部
113b 下端部
13d 押圧棒
A,B 押圧部
14A,14B タクトスイッチ