(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ヨークの配置基準面に対する前記第1ヨークの実配置面の傾斜方向、および前記第2ヨークの配置基準面に対する前記第2ヨークの実配置面の傾斜方向を、それぞれ各ヨークの傾斜方向とするとき、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの傾斜方向の後方側に位置する積層された前記板状部材の径方向外周端の位置が、
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの傾斜方向の前方側に位置する積層された前記板状部材の径方向外周端の位置に対し、径方向外方に突出している
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの内周端の周方向一端側または他端側の少なくとも一方に、周方向で隣接する他の第1ヨークおよび第2ヨークの内周端同士の干渉を避ける切欠部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【背景技術】
【0002】
自転車の前照灯や尾灯等に電力を供給するため、車輪の回転によって発電する発電機が広く普及している。このような発電機には様々な構造のものが存在するが、ハブ軸に取り付けられる、いわゆるハブダイナモが知られている。
一般に、ハブダイナモは、車輪側に永久磁石を備えたロータを配設し、そのロータが、ハブ軸側に設けたステータの周囲にて回転することで、ステータに備わるコイルで発電する。
【0003】
このハブダイナモにおけるステータとして、コイルが巻回されたコイルボビンの軸方向一方側と他方側に複数の第1ヨークと複数の第2ヨークを配置し、第1ヨークの外周側磁極部(ティース部)と第2ヨークの外周側磁極部(ティース部)とが円周方向に交互に並ぶように、第1ヨークおよび第2ヨークをコイルボビンに組み付けたクローポール型のものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のハブダイナモでは、第1ヨークおよび第2ヨークの各ヨークが、磁性体からなる複数の平坦な板状部材をコイルの半径方向と直交する方向に積層した積層ヨークとして構成されており、それぞれ側面視コ字状をなしている。
すなわち、第1ヨークは、コイルの外周側に位置してコイルの軸方向一端側から軸方向他端側に先端を延ばした外周側磁極部と、コイルの内周側に位置してコイルの軸方向一端側から軸方向他端側に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部と、コイルの軸方向一端側において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部と内周側磁極部の基端同士を連結する連結部と、を有する側面視コ字形をなしている。
【0005】
また、第2ヨークは、コイルの外周側に位置してコイルの軸方向他端側から軸方向一端側に先端を延ばした外周側磁極部と、コイルの内周側に位置してコイルの軸方向他端側から軸方向一端側に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部と、コイルの軸方向他端側において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部と前記内周側磁極部の基端同士を連結する連結部と、を有する側面視コ字形をなしている。
そして、コイルの内周側において、第1ヨークの内周側磁極部の先端と第2ヨークの内周側磁極部の先端とを当接させ、それにより、第1ヨークと第2ヨークとが磁気的に接続されている。
【0006】
ところで、上記の第1ヨークおよび第2ヨークは、円周方向に交互に並ぶと共に、コイルの中心から見て放射状に半径方向に沿って配置されている。従って、隣接する第1ヨークと第2ヨークの内周側磁極部の位置は、円周方向にずれている。このため、第1ヨークと第2ヨークの内周側磁極部が周方向に密に配列されている場合であっても、1つの第1ヨークの内周側磁極部の先端は、隣接する2つの第2ヨークの内周側磁極部の先端に跨がって当接することになる。同様に、1つの第2ヨークの内周側磁極部の先端は、隣接する2つの第1ヨークの内周側磁極部の先端に跨がって当接することになる。つまり、第1ヨークの内周側磁極部と第2ヨークの内周側磁極部は、1対2の関係で互いに当接することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のハブダイナモのステータを実際に組み立てる場合、コイルボビンに対して、軸方向一方側から第1ヨークを挿入し、軸方向他方側から第2ヨークを挿入する。その際、例えば、第1ヨークの内周側磁極部の先端が当接する2つの第2ヨークの内周側磁極部のうち、一方の第2ヨークの内周側磁極部の挿入方向寸法が他方の第2ヨークの内周側磁極部の挿入方向寸法より短い場合(つまり、隣接する2つの第2ヨークの内周側磁極部の挿入方向寸法にバラツキがある場合)、以下のようなことがある。
【0009】
すなわち、第1ヨークの内周側磁極部の先端は、挿入方向寸法の長い一方の第2ヨークの内周側磁極部の先端にのみ当接し、他方の第2ヨーク内周側磁極部の先端には当接せずに、第1ヨークの内周側磁極部の先端と他方の第2ヨーク内周側磁極部の先端との間に隙間が生じることがある。このように、寸法公差等による当接面のバラツキにより、ヨーク同士の突き合せ部に隙間が生じると、ヨークの鉄損が大きくなり、性能が低下する可能性がある。
【0010】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ヨークの寸法的なバラツキを吸収することができて、ヨーク同士の当接面に隙間が生じないようにして、性能の向上が図れるようにしたハブダイナモを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係るハブダイナモは、車輪と共に回転するハブシェルおよび該ハブシェルの胴部内周に円周状に配置された永久磁石を有するロータと、前記車輪を回転自在に支持するハブ軸に回転不能に固定されると共に、前記ハブシェルの内部に収容された状態で前記永久磁石の内周側に配置され、前記ロータの回転により交番電流を出力するリング状のコイルを有したステータと、を具備するハブダイナモにおいて、前記ステータは、ステータコアとして、前記リング状のコイルを包囲するように軸方向一方側と軸方向他方側に配置され、且つ、周方向に間隔をあけて放射状に配置されると共に周方向に交互に配置された複数の第1ヨークおよび複数の第2ヨークを有し、前記第1ヨークは、前記コイルの外周側に位置して前記コイルの軸方向一端側から軸方向他端側に先端を延ばした外周側磁極部と、前記コイルの内周側に位置して前記コイルの軸方向一端側から軸方向他端側に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部と、前記コイルの軸方向一端側において直線状に延在し前記外周側磁極部と前記内周側磁極部の基端同士を連結する連結部と、を有し、前記第2ヨークは、前記コイルの外周側に位置して前記コイルの軸方向他端側から軸方向一端側に先端を延ばした外周側磁極部と、前記コイルの内周側に位置して前記コイルの軸方向他端側から軸方向一端側に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部と、前記コイルの軸方向他端側において直線状に延在し前記外周側磁極部と前記内周側磁極部の基端同士を連結する連結部と、を有し、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークは、磁性体からなる複数の平坦な板状部材を積層した積層ヨークとして構成され、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの配置に際し、前記ステータの外周面上に、周方向に間隔をおいて交互に前記第1ヨークの配置位置および第2ヨークの配置位置が設定され、前記ハブ軸の中心軸線と前記第1ヨークの前記外周側磁極部における外周面側の周方向中央とを含む平面が前記第1ヨークの配置基準面として設定されると共に、前記第1ヨークの配置基準面に対して周方向一方側に傾斜した平面が前記第1ヨークの実配置面として設定されることにより、前記第1ヨークの実配置面
の同一面上に前記第1ヨーク
の前記外周側磁極部、前記内周側磁極部、および前記連結部が配置され、前記ハブ軸の中心軸線と前記第2ヨークの前記外周側磁極部における外周面側の周方向中央とを含む平面が前記第2ヨークの配置基準面として設定されると共に、前記第2ヨークの配置基準面に対して周方向他方側に傾斜した平面が前記第2ヨークの実配置面として設定されることにより、前記第2ヨークの実配置面
の同一面上に前記第2ヨーク
の前記外周側磁極部、前記内周側磁極部、および前記連結部が配置され、前記第1ヨークの実配置面と前記第2ヨークの実配置面との交差線上において、前記第1ヨークの前記内周側磁極部の先端と前記第2ヨークの前記内周側磁極部の先端とが当接していることを特徴とする。
【0012】
この構成においては、半径方向に沿った平面上ではなく、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面)上にヨークを配置しているので、第1ヨークの内周側磁極部と第2ヨークの内周側磁極部とを1対1の関係で当接させることができる。従って、ヨークの寸法公差等によるバラツキにより第1ヨークと第2ヨークの当接面に隙間が生じるのを無くすことができ、当接面の密着度を高めることができる。その結果、ヨークの磁気的接続を安定させて鉄損を減少することができる。また、第1ヨークと第2ヨークの接続が1対1の関係でできることにより、出力を100%の状態から例えば75%、50%、25%と下方に調整する際に、第1ヨークと第2ヨークを同じ個数だけ減らせばよくなり、ヨークの必要本数を少なく済ませることができる。
【0013】
本発明に係るハブダイナモにおいて、前記ステータは、非磁性材料よりなるコイルボビンを有し、該コイルボビンは、前記コイルが巻回された円筒状の胴部と、該胴部の軸線方向両端部外周に設けられた第1フランジおよび第2フランジと、を有し、前記第1フランジに、前記第1ヨークの軸方向一端部が係合されることにより前記第1ヨークを前記第1ヨークの実配置面上に位置決めするガイド部が設けられ、前記第2フランジに、前記第2ヨークの軸方向他端部が係合されることにより前記第2ヨークを前記第2ヨークの実配置面上に位置決めするガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成においては、コイルボビンの第1フランジのガイド部に第1ヨークの軸方向一端部を係合させることにより、第1ヨークを第1ヨークの実配置面上に位置決めすることができる。また、コイルボビンの第2フランジのガイド部に第2ヨークの軸方向一端部を係合させることにより、第2ヨークを第2ヨークの実配置面上に位置決めすることができる。従って、第1ヨークおよび第2ヨークをコイルボビンに組み付けることで、コイルボビンに巻回されたコイルとヨークの位置関係を適正に定めることができる。
【0015】
本発明に係るハブダイナモにおいて、前記ガイド部は、前記第1フランジの軸方向端部に設けられ、前記第1ヨークの前記連結部が嵌まることにより前記第1ヨークを前記第1ヨークの実配置面上に位置決めする第1ヨーク連結部ガイド溝と、前記第2フランジの軸方向端部に設けられ、前記第2ヨークの前記連結部が嵌まることにより前記第2ヨークを前記第2ヨークの実配置面上に位置決めする第2ヨーク連結部ガイド溝と、を有することを特徴とする。
【0016】
この構成においては、コイルボビンの軸方向端部に設けられた第1ヨーク連結部ガイド溝および第2ヨーク連結部ガイド溝のそれぞれに、各ヨークの連結部を嵌めることにより、ヨークを適正に位置決めしながらコイルボビンに組み付けることができる。
【0017】
本発明に係るハブダイナモにおいて、前記ガイド部は、前記第1フランジの外周面に設けられ、前記第1ヨークの前記外周側磁極部が嵌まることにより前記第1ヨークを前記第1ヨークの実配置面上に位置決めする第1ヨーク外周側ガイド溝と、前記第2フランジの外周面に設けられ、前記第2ヨークの前記外周側磁極部が嵌まることにより前記第2ヨークを前記第2ヨークの実配置面上に位置決めする第2ヨーク外周側ガイド溝と、を有することを特徴とする。
【0018】
この構成においては、コイルボビンの外周面に設けられた第1ヨーク外周側ガイド溝および第2ヨーク外周側ガイド溝のそれぞれに、各ヨークの外周側磁極部を嵌めることにより、ヨークを適正に位置決めしながらコイルボビンに組み付けることができる。
【0019】
本発明に係るハブダイナモは、前記第1ヨークの配置基準面に対する前記第1ヨークの実配置面の傾斜方向、および前記第2ヨークの配置基準面に対する前記第2ヨークの実配置面の傾斜方向を、それぞれ各ヨークの傾斜方向とするとき、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの傾斜方向の後方側に位置する積層された前記板状部材の径方向外周端の位置が、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの傾斜方向の前方側に位置する積層された前記板状部材の径方向外周端の位置に対し、径方向外方に突出していることを特徴とする。
【0020】
この構成においては、複数枚の板状部材を積層した第1ヨークおよび第2ヨークの外周縁(各ヨークの外周側磁極部の外周縁)と永久磁石の内周面との間の隙間(エアギャップ)の均一化に貢献することができる。
【0021】
すなわち、ヨークを半径方向に対して傾斜して配置すると、傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材の径方向外周端の位置より、前記ヨークの傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材の径方向外周端の位置の方が径方向内方に引っ込んだ形になる。つまり、傾斜方向の前方側の位置における積層板状部材の径方向外周端と永久磁石の内周との間の隙間(エアギャップ)より、傾斜方向の後方側の位置における積層板状部材の径方向外周端と永久磁石の内周との間の隙間(エアギャップ)の方が大きくなり、エアギャップに偏りが生じる。
【0022】
そこで、上記のように、各ヨークの傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材の径方向外周端の位置に対し、ヨークの傾斜方向の後方側に位置する前記積層板状部材の径方向外周端の位置を、径方向外方に突出させる。つまり、永久磁石に対向する面のヨークの外周縁の寸法を調整する。そうすることにより、各ヨークの外周縁と永久磁石の内周面との間の隙間(エアギャップ)の均一化を図ることができ、その結果、発電効率を高めることができる。
なお、各ヨークの傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材の径方向外周端の位置に対し、ヨークの傾斜方向の後方側に位置する前記積層板状部材の径方向外周端の位置を、径方向外方に突出させる方法としては、傾斜方向の前方側と後方側に積層する板状部材の寸法を異ならせたり、傾斜方向の前方側と後方側に積層する板状部材の積層位置をずらしたりする方法を採用することができる。
【0023】
本発明に係るハブダイナモは、前記第1ヨークおよび前記第2ヨークの内周端の周方向一端側または他端側の少なくとも一方に、周方向で隣接する他の第1ヨークおよび第2ヨークの内周端同士の干渉を避ける切欠部が設けられていることを特徴とする。
【0024】
この構成においては、隣接するヨークの内周部同士の干渉を避けることができて、ヨークを円周方向に密に配置することが可能になる。すなわち、放射状にヨークを配置した場合、隣接するヨークの内周部が干渉することにより、ヨークの配置個数に制限が生じることがある。そこで、上記のように干渉を避ける切欠部を設けることにより、ヨークの配置個数を増やせるようになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るハブダイナモによれば、半径方向に沿った平面上ではなく、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面)上にヨークを配置しているので、第1ヨークの内周側磁極部と第2ヨークの内周側磁極部とを1対1の関係で当接させることができる。従って、ヨークの寸法公差等によるバラツキにより第1ヨークと第2ヨークの当接面に隙間が生じるのを無くすことができ、当接面の密着度を高めることができる。その結果、ヨークの磁気的接続を安定させて鉄損を減少することができる。また、第1ヨークと第2ヨークの接続が1対1の関係でできることにより、出力を100%の状態から75%、50%、25%と下方に調整する際に、第1ヨークと第2ヨークを同じ個数だけ減らせばよくなり、ヨークの必要本数を少なく済ませることができ、軽量化およびコストダウンに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態におけるハブダイナモの取付概要図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるハブダイナモの側面図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるハブダイナモの断面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータユニットの斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータユニットの側面図である。
【
図6】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータのコイルボビンの斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータのコイルボビンにコイルを巻いた状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの斜視半断面図である。
【
図11】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの軸方向から見た図であり、(a)は
図6のEA矢視図、(b)は
図6のEB矢視図である。
【
図12】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための軸方向から見た1組のヨークとコイルボビンの図である。
【
図13】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための図で、(a)は第1ヨークと第2ヨークを組み合わせる前の状態を示す斜視図、(b)は第1ヨークと第2ヨークを組み合わせた後の状態を示す斜視図、(c)は
図13(b)のF矢視図である。
【
図14】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの各ヨークの構成を説明するための図で、(a)はヨークを構成する1枚の板状部材の斜視図、(b)は板状部材を積層して構成したヨークの斜視図、(c)は連結部側から見たヨークの斜視図である。
【
図15】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの隣接ヨーク間の干渉の問題を説明するための図である。
【
図16】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの各ヨークの外周縁と永久磁石の内周面との間のエアギャップの問題を説明するための図で、(a)はヨークが斜めに配置されることでエアギャップにバラツキが生じることを説明するための図、(b)はエアギャップの均一化を図るためにヨークを構成する各板状部材の外周縁の位置を調節した状態を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態におけるハブダイナモの効果の説明図で、(a)は第1ヨークと第2ヨークが1対1の関係で当接していることにより当接面に隙間が生じない本実施形態の例を示す図、(b)は第1ヨークと第2ヨークが1対2の関係で当接していることにより当接面に隙間が生じる可能性があることを示す比較例を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態におけるハブダイナモのヨークの配置個数の説明図で、第1ヨークと第2ヨークを全数配備した100%出力時の状態を示す図である。
【
図19】本発明の実施形態におけるハブダイナモのヨークの配置個数の説明図で、第1ヨークと第2ヨークを25%間引きした75%出力時の状態を示す図である。
【
図20】本発明の実施形態におけるハブダイナモのヨークの配置個数の説明図で、第1ヨークと第2ヨークを50%間引きした50%出力時の状態を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態におけるハブダイナモの効果を比較例と比べて示す説明図で、(a)は50%出力時の実施形態の場合のヨークの必要個数を示す図、(b)は50%出力時の比較例の場合のヨークの必要個数を示す図、(c)は25%出力時の実施形態の場合のヨークの必要個数を示す図、(d)は25%出力時の比較例の場合のヨークの必要個数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、ハブダイナモ10の取付概要図である。なお、以下の説明では、本発明に係るハブダイナモ10を自転車1のハブ軸11に取り付け、自転車1の前照灯4に電力を供給する場合について説明する。この前照灯4には、ランプとして、フィラメント式の電球ではなく、LEDランプが使用されている。
【0028】
(ハブダイナモの取付態様)
図1に示すように、自転車1の前輪5は、フレームの一部を構成するフロントフォーク3によりハブ軸11を介して回転可能に軸支されている。ハブ軸11は、両側がフロントフォーク3にナット(不図示)等により回転不能に締結固定されている。ハブ軸11の軸方向中央の大部分には、ハブダイナモ10が、ハブ軸11と同軸に取り付けられている。このハブダイナモ10は、前輪5の側方に配置された前照灯4に電力を供給するものとして設けられている。
【0029】
ハブダイナモ10は、前輪5のスポーク2に接続されて前輪5と共に、ハブ軸11の周囲を回転するロータ20(後述)と、ロータ20の内周側に位置する状態でハブ軸11に回転不能に取り付けられたステータ101(後述)と、を備えている。
以下、ハブ軸11の中心軸線Oの軸方向を単に軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、中心軸線O周りに沿った方向を周方向という。なお、ハブ軸11のうち、少なくともステータ101(後述)が取り付けられた部分よりも軸方向外側に位置する部分には、フロントフォーク3にハブダイナモ10を固定するための雄ねじ部(不図示)が形成されている。
【0030】
(ロータ)
図2は、ハブダイナモ10の側面図である。
図3は、ハブダイナモ10の断面図である。
図2、
図3に示すように、ロータ20は、ハブシェル30を主体に構成されている。ハブシェル30は、略有底円筒状に一体成形された円筒状の胴部(筒部)31および胴部31の軸方向他方Q側(
図3における右側)の第2のエンドプレート33と、胴部31の軸方向一方P側(
図3における左側)の開口を塞ぐ第1のエンドプレート32と、からなる。第1のエンドプレート32は、胴部31に圧入固定されている。
【0031】
ハブシェル30の軸方向一方P側および軸方向他方Q側の外周には、径方向外側に向かって張り出すフランジ部34が形成されている。各フランジ部34には、軸方向に貫通する支持孔34aが周方向に等間隔で複数形成されている。支持孔34aには、
図1に示すように、前輪5のリム5aから内径側に延在する複数のスポーク2の内側端部が係合されている。なお、左右のフランジ部34の支持孔34aは、半ピッチ分だけ周方向に位相がずれて配置されている。
【0032】
第1のエンドプレート32および第2のエンドプレート33の内周には、それぞれベアリング(軸受)35、36の外輪が嵌合されている。そして、ハブシェル30を主体として構成されるロータ20は、ベアリング35、36を介してハブ軸11に回転可能に支持されることで、前輪5の回転と共にハブ軸11を中心に回転するようになっている。すなわち、ロータ20は、前輪5を回転可能に支持するハブとして機能している。
【0033】
ハブシェル30の胴部31の内周には、円筒状のリングヨーク21を介して、例えばフェライト等により形成された永久磁石22が配置されている。リングヨーク21は、磁性金属材料(例えば、鉄)よりなる。リングヨーク21を例えば鉄製にすることにより、ハブシェル30をアルミ製として軽量化できる。永久磁石22は、リングヨーク21の内周に密着した状態で配置され、接着剤等により貼付されている。永久磁石22を、胴部31の内周面に沿って円筒状に配置することにより、永久磁石22は、ステータ101の外周面全体を覆っている。
【0034】
なお、永久磁石22は、周方向に複数に分割された状態でハブシェル30の胴部31の内周に組み込まれている。この円筒状に配置された永久磁石22の内周面には、等間隔でN極およびS極の磁極が周方向に沿って交互に着磁されており、後述する第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの外周部と対向している。
【0035】
ハブ軸11の軸方向中間部には大径部が形成されており、その大径部の外周にステータ101が取り付けられている。
図3〜
図5に示すように、ステータ101は、その軸方向両端部に配したプレート部材41、43を介してスリーブナット42および締付ナット44によりハブ軸11に位置決め固定されている。これらハブ軸11およびステータ101などにより、ステータユニット100が構成されている。
【0036】
ステータユニット100の軸方向一方P側に配置されたスリーブナット42の外周には、一方のベアリング35の内輪が嵌合されている。このベアリング35よりも軸方向外側にはコネクタ50が設けられ、コネクタ50の軸方向外側にはナット51が配置されている。このナット51がハブ軸11に螺合されることで、コネクタ50がハブ軸11に固定されると共に、ベアリング35を介してハブ軸11にハブシェル30の一端側が回転自在に支持されている。
【0037】
また、ハブ軸11の軸方向他方Q側には、別のスリーブナット45が配置されており、このスリーブナット45の外周には、他方のベアリング36の内輪が嵌合されている。このベアリング36より軸方向外側にはカバー46が設けられ、カバー46の内周部にはナット47が配置されている。このナット47がハブ軸11に螺合されることで、カバー46がハブ軸11に固定されると共に、ベアリング36を介してハブ軸11にハブシェル30の他端側が回転自在に支持されている。
【0038】
(ステータ)
次にステータ101の詳細について説明する。
図6は、ステータ101の構成を示す斜視図である。
図7は、ステータ101の構成を示す分解斜視図である。
図6および
図7に示すように、ステータ101は、ハブ軸11が挿通される合成樹脂製(非磁性材料製)の筒状のコイルボビン110と、コイルボビン110に巻かれたリング状のコイル140と、コイル140を内側に包囲するように組み立てられたクローポール型のステータコア120と、により構成されている。これらハブ軸11、コイルボビン110、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、同軸上に配置されている。
【0039】
ここでは、クローポール型のステータコア120を構成する要素として、軸方向一方P側に複数の第1ヨーク120Aが配設され、軸方向他方Q側に複数の第2ヨーク120Bが配設されている。これら複数の第1ヨーク120Aおよび複数の第2ヨーク120Bは、周方向に一定間隔をあけて放射状に配置されると共に、周方向に交互に並ぶように配置されている。そして、各ヨーク120A、120Bの外周部が、若干の間隙(エアギャップ)をあけて、永久磁石22の内周面22a(
図3参照)と対向するように構成されている。
【0040】
ヨーク120A、120Bの個数(極数)は、永久磁石22の磁極数に関連して設定されている。本実施形態では、第1ヨーク120Aが16個、第2ヨーク120Bが16個の合計32個が一定間隔で設けられている。図示しないが、コイル140には配線が接続されており、配線はハブ軸11に沿って外部へと引き出されている。
【0041】
(コイルボビン)
図8は、コイルボビンの斜視図である。
図9は、コイルボビンにコイルを巻いた状態を示す斜視図である。
図8および
図9に示すように、コイルボビン110は、外周にコイル140が巻回される円筒状の胴部111と、胴部111の軸方向一方P側および軸方向他方Q側の端部外周に径方向外方に張り出すように設けられた第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bと、を有している。
【0042】
第1フランジ112Aの軸方向外側端面には、ガイド溝113Aが設けられている。第1フランジ112Aの外周面には、ガイド溝113Aに対応する位置に、このガイド溝113Aに連通する係合溝114Aが設けられている。これらガイド溝113Aおよび係合溝114Aは、コイルボビン110に、第1ヨーク120Aを位置決めして取り付けるためのものである。
また、第2フランジ112Bの軸方向外側端面には、ガイド溝113Bが設けられている。第2フランジ112Bの外周面には、ガイド溝113Bに対応する位置に、このガイド溝113Bに連通する係合溝114Bが設けられている。これらガイド溝113Bおよび係合溝114Bは、コイルボビン110に、第2ヨーク120Bを位置決めして取り付けるためのものである。
【0043】
さらに、第1フランジ112Aの外周面および第2フランジ112Bの外周面には、それぞれ各係合溝114A、114Bの周方向の中間に位置させて、相手側の第2ヨーク120Bおよび第1ヨーク120Aの先端を支持する支持溝115A、115Bが設けられている。すなわち、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bが周方向に一定間隔で交互に配置されることから、第1フランジ112Aの係合溝114Aの周方向の位置と第2フランジ112Bの支持溝115Bの周方向の位置とが合致し、第2フランジ112Bの係合溝114Bの周方向の位置と第1フランジ112Aの支持溝115Aの周方向の位置とが合致している。これらガイド溝113A、113B、係合溝114A、114B、支持溝115A、115Bの詳細については後述する。
【0044】
(ヨーク)
図10は、ステータの斜視半断面図、
図11は、ステータの軸方向から見た図であり、(a)は、
図6のEA矢視図、(b)は、
図6のEB矢視図である。
図12は、ステータの第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための軸方向から見た1組のヨークとコイルボビンの図である。
図13は、第1ヨークと第2ヨークの配置角度を説明するための図で、(a)は、第1ヨークと第2ヨークを組み合わせる前の状態を示す斜視図、(b)は、第1ヨークと第2ヨークを組み合わせた後の状態を示す斜視図、(c)は、
図13(b)のF矢視図である。
図14は、各ヨークの構成を説明するための図で、(a)は、ヨークを構成する1枚の板状部材の斜視図、(b)は、板状部材を積層して構成したヨークの斜視図、(c)は、連結部側から見たヨークの斜視図である。
【0045】
図13(a)〜
図13(c)に1組の第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの組み合わせ例を取り出して示すように、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bは、コイルボビン110に組み付けられる向きが逆であるだけで、同じ構造のものであり、側面視コ字形をなしている。
【0046】
すなわち、
図13(a)〜
図13(c)および
図7に示すように、第1ヨーク120Aは、コイル140の外周側に位置してコイル140の軸方向一端側(P側)から軸方向他端側(Q側)に先端を延ばした外周側磁極部121と、コイル140の内周側に位置してコイル140の軸方向一端側(P側)から軸方向他端側(Q側)に向けた中間位置まで先端123aを延ばした内周側磁極部123と、コイル140の軸方向一端側(P側)において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部121と内周側磁極部123の基端同士を連結する連結部122と、を有している。
【0047】
同様に、第2ヨーク120Bは、コイル140の外周側に位置してコイル140の軸方向他端側(Q側)から軸方向一端側(P側)に先端を延ばした外周側磁極部121と、コイル140の内周側に位置してコイル140の軸方向他端側(Q側)から軸方向一端側(P側)に向けた中間位置まで先端を延ばした内周側磁極部123と、コイル140の軸方向他端側(Q側)において半径方向に沿って直線状に延在し外周側磁極部121と内周側磁極部123の基端同士を連結する連結部122と、を有している。
【0048】
外周側磁極部121の径方向外周縁は、ハブ軸11と実質的に平行に配置されている。外周側磁極部121は、その径方向内周縁が先端に行くほど径方向外周縁に近づくように先窄まり形状に形成されている。外周側磁極部121の先端部では、径方向内周縁と径方向外周縁とが互いに平行になっている。つまり、外周側磁極部121の径方向内周縁は、基端から先端に行く途中まで斜めに形成され、先端部で径方向外周縁に平行に形成されている。内周側磁極部123の径方向内周縁および径方向外周縁は、外周側磁極部121の外周縁と平行に形成されている。
【0049】
図10に示すように、各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123は、コイル140の内周側に位置するようにコイルボビン110の内周に挿入され、コイルボビン110の胴部111の内周面とハブ軸11の外周面との間に位置している。そして、周方向に密に配列された各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123によって囲まれるステータ中心孔150(
図11参照)にハブ軸11が貫通固定されている(
図4参照)。
【0050】
(板状部材)
ここで、
図14(a)〜
図14(c)に示すように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bの各々は、鉄等の磁性体からなる複数の平坦な板状部材130を板厚方向(コイル140の半径方向と直交する方向)に積層した積層ヨーク(積層体)として構成されている。板状部材130(積層板状部材とも言う)の材料としては、例えば、表面に酸化被膜が形成された珪素鋼板(より詳しくは無方向性珪素鋼板)が採用されている。これら板状部材130は、プレス等にて板材を打ち抜き成形したものであり、ヨーク120A、120Bの形成に際して曲げ加工は施されておらず、平坦な板体として構成されている。
【0051】
個々の板状部材130は、
図14(a)に示すように、略コの字型の鉄片であり、対応する二辺をなす外周側磁極部131および内周側磁極部133と、それらを連結する一辺となる連結部132と、を有している。
各板状部材130の基本的な形状は同じであり、
図14(b)および
図14(c)に示すように、これら所定枚数の板状部材130を板厚方向に積層することにより、板状部材130の外周側磁極部131によりヨーク120A、120Bの外周側磁極部121が構成されている。また、板状部材130の内周側磁極部133により、ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123が構成されている。さらに、板状部材130の連結部132によりヨーク120A、120Bの連結部122が構成されている。本例では、各ヨーク120A、120Bは、7枚の板状部材130を積層することで構成されている。
【0052】
第1ヨーク120A、120Bは、
図7に示すように、外周側磁極部121が外径側に来るようにコイルボビン110に、軸方向から見て放射状に組み付けられている。第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、周方向に一定の間隔(本例では、中心角=360°/32)をおいて交互に並ぶように配設されている。
【0053】
ここで重要なことは、
図11〜
図13に示すように、各ヨーク120A、120Bが、単に半径方向に沿った平面上に配設されるのではなく、半径方向に対して傾斜した平面(後述するヨークの実配置面)上に配置されていることである。
【0054】
前述したように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bは、円周方向に交互に並ぶと共にコイル140の中心から見て放射状に配置されている。従って、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bが単に半径方向に沿った平面上に配設されていると、隣接する第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の位置は円周方向にずれることになる。そうすると、隣接する第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123を、1対1で磁気的に接続することはできない。
【0055】
そこで、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bが、半径方向に対して傾斜した平面上に配置されている。すなわち、
図11(a)、
図11(b)および
図12に示すように、まず、各ヨーク120A、120Bの配置に際して、ステータ101の外周面上に、周方向に間隔(θ=11.25°=360°/32)をおいて、交互に第1ヨークの配置位置QAおよび第2ヨークの配置位置QBが設定されている。
【0056】
次に、
図11(a)および
図12に示すように、ハブ軸の中心軸線Oと、第1ヨーク120Aの外周側磁極部121における外周面の周方向中央QA(以下、第1ヨークの配置位置QAという)と、を含む平面が第1ヨークの配置基準面SA0として設定される。これに加え、第1ヨークの配置位置QAを含みハブ軸の中心軸線Oに平行で、且つ第1ヨークの配置基準面SA0に対して周方向一方側RAに角度αAだけ傾斜した平面が、第1ヨークの実配置面SA1として設定されている。そして、第1ヨークの実配置面SA1上に、第1ヨーク120Aが配置されている。
【0057】
また、
図11(b)および
図12に示すように、ハブ軸の中心軸線Oと、第2ヨーク120Bの外周側磁極部121における外周面の周方向中央QB(以下、第2ヨークの配置位置QBという)と、を含む平面が、第2ヨークの配置基準面SB0として設定される。これに加え、第2ヨークの配置位置QBを含みハブ軸の中心軸線Oに平行で、且つ第2ヨークの配置基準面SB0に対して周方向他方側RBに角度αBだけ傾斜した平面が、第2ヨークの実配置面SB1として設定されている。そして、第2ヨークの実配置面SB1上に、第2ヨーク120Bが配置されている。
【0058】
この場合、隣接する第1ヨーク120Aの配置位置QAと第2ヨーク120Bの配置位置QBとの間隔はθ=11.25°(=360°/32)であるから、第1ヨークの実配置面SA1および第2ヨークの実配置面SB1の、各配置基準面SA0、SB0に対する傾斜角度αA、αBは、αA=αB=5.625°(=11.25°/2)よりも小さい、例えば5°に設定されている。
【0059】
そして、第1ヨークの実配置面SA1と第2ヨークの実配置面SB1との交差線SC(
図12参照)上において、
図13(a)の矢印FP、FQのように組み合わせることにより、
図13(b)、(c)に示すように、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123の先端123aと第2ヨーク120Bの内周側磁極部123の先端123aとが互いに当接させられている。これにより、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とが、1対1の関係で磁気的に接続される。
【0060】
上述のように各ヨーク120A、120Bが、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SB1)上に配置される関係から、以下のようなことがいえる。
すなわち、
図11および
図12に示すように、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各ガイド溝113A、113Bも、それらの延在方向が半径方向に対して同様の傾斜角度αA、αBを持つように形成されている。
【0061】
また、係合溝114A、114Bは、ガイド溝113A、113Bの傾斜に倣うように形成されている。相手側のヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の先端を収容支持する支持溝115A、115Bについては、周方向に位置が対応する係合溝114B、114Aの寸法精度を優先するように若干の余裕をもって形成されている。
【0062】
組み付けの際には、
図7に示すように、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bを、軸方向一方P側及び軸方向他方Q側から交互にコイルボビン110に挿入する。すなわち、各ヨーク120A、120Bの連結部122を、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各ガイド溝113A、113Bに嵌める。また、各ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の基端を、コイルボビン110の第1フランジ112Aおよび第2フランジ112Bの各係合溝114A、114Bに嵌める。
【0063】
さらに、各ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の先端を、コイルボビン110の相手側の第2フランジ112Bおよび第1フランジ112Aの各各係合溝114A、114Bに収容する。また、各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123を、コイルボビン110の内周面に沿って挿入し、各ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123の先端同士を突き合わせて当接させる。これにより、コイル140を包囲するようにヨーク120A、120Bが装着される。
【0064】
以上のように組み付けられることにより、第1ヨーク120Aの外周側磁極部121と第2ヨーク120Bの外周側磁極部121とが、コイルボビン110の胴部111に巻回されたリング状のコイル140の外周側において、円周方向に間隔をあけて交互に配置される。また、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とが、コイルボビン110の胴部に巻回されたリング状のコイル140の内周側に配置される。
【0065】
その際、コイルボビン110の第1フランジ112Aのガイド溝113Aは、第1ヨーク120Aを第1ヨークの実配置面SA1上に位置決めする役目を果たす。また、第2フランジ112Bのガイド溝113Bは、第2ヨーク120Bを第2ヨークの実配置面SB1上に位置決めする役目を果たす。そして、複数のヨーク120A、120Bは、コイルボビン110に対して回転しないように保持される。
【0066】
次に、各ヨーク120A、120Bの細部について述べる。
図15は、隣接ヨーク間の干渉の問題を説明するための図である。
図16は、各ヨークの外周縁と永久磁石の内周面との間のエアギャップの問題を説明するための図で、(a)は、ヨークが斜めに配置されることでエアギャップにバラツキが生じることを説明するための図、(b)はエアギャップの均一化を図るためにヨークを構成する各板状部材の外周縁の位置を調節した状態を示す図である。
【0067】
(隣接するヨークの内周端の干渉回避)
図15に示すように、ヨーク120A、120Bを円周方向に間隔をおいて軸方向から見て放射状に配列すると、隣接するヨーク120Aの内周側磁極部123が密に並ぶことになり、互いに干渉する可能性が出てくる。そこで、本実施形態では、内周側磁極部123の周方向一端側または他端側の少なくとも一方に、隣接するヨーク120Aの内周端同士の干渉を避ける切欠部135が設けられている。他方のヨーク120Bについても同様である。
【0068】
ここでは、第1ヨーク120Aの配置基準面SA0に対する第1ヨークの実配置面SA1の傾斜方向、および第2ヨーク120Bの配置基準面SB0に対する第2ヨークの実配置面SB1の傾斜方向を、各ヨークの傾斜方向と定義する。また、積層した7枚の板状部材130を、傾斜方向の前方側から後方側にそれぞれ区別した符号130−1〜130−7で示すことにする。
そうした場合、ヨーク120A(120B)の傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−1)の径方向内周端の位置が、ヨーク120A(120B)の傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−7)の径方向内周端の位置よりも径方向外方にあるように、積層された板状部材130の寸法が決められている。
【0069】
すなわち、
図14(c)に示すように、第1ヨーク120A(120B)の傾斜方向の前端に位置する板状部材130−1の径方向寸法K1は、この板状部材130−1の次に前側に位置する板状部材130−2の径方向寸法K2よりも、寸法K3だけ小さく設定されている。また、板状部材130−2の径方向寸法K2は、この板状部材130−2よりも傾斜方向後方に位置する板状部材130−3〜130−7の径方向寸法K4よりも、寸法K5だけ小さく設定されている。
これにより、板状部材130−1〜130−7を積層した際に、ヨーク120A(120B)の内周側磁極部123の内周端の傾斜方向の前端に、隣のヨーク120A(120B)の内周側磁極部123の内周端との干渉を避ける切欠部135が確保される。
【0070】
なお、干渉の可能性の程度によっては、板状部材130−2〜130−7の径方向寸法を同一に設定し、傾斜方向の最前端に位置する板状部材130−1の径方向の寸法K1のみ、他の板状部材130−2〜130−7の径方向寸法よりも短く設定してもよい。また、例えば、傾斜方向の最前端の板状部材130−1から3番目の板状部材130−3以降の径方向寸法も、傾斜方向の後方に位置する板状部材130−3〜130−7ほど、径方向寸法が長くなるように設定してもよい。
【0071】
このように、ヨーク120A(120B)の傾斜方向前側の内周端に切欠部135が設けられることにより、周方向に並べられる複数のヨーク120A(120B)間の間隔を密にしても干渉を避けることができるようになる。言い換えると、ヨーク120A(120B)の配置間隔を小さくして多数個のヨーク120A(120B)を配設することができるようになる。
【0072】
(ヨークの外周端の問題回避)
次に、各ヨーク120A、120Bの外周端の問題について述べる。
前述したように、ヨーク120A、120Bを半径方向に対して傾斜して配置すると、
図16(a)に示すように、傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−1)の径方向外周端の位置より、ヨーク120A、120Bの傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−7)の径方向外周端の位置の方が径方向内方に引っ込んだ形になる。つまり、傾斜方向の前方側の位置における積層板状部材(例えば、前端の板状部材130−1)の径方向外周端と永久磁石22の内周面22aとの間の隙間(エアギャップ)d1より、傾斜方向の後方側の位置における積層板状部材(例えば、後端の板状部材130−7)の径方向外周端と永久磁石22の内周面22aとの間の隙間(エアギャップ)d7の方が大きくなる。この結果、エアギャップd1〜d7に偏りが生じる。実際には、各板状部材130−1〜130−7の外周端と永久磁石22の内周面22aとの間の隙間(エアギャップ)d1〜d7は、d1<d2<d3<d4<d5<d6<d7となる。
【0073】
そこで、本実施形態では、
図16(b)に示すように、各ヨーク120A、120Bの傾斜方向の前方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−1)の径方向外周端の位置より、ヨーク120A、120Bの傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材(例えば、板状部材130−7)の径方向外周端の位置の方が、径方向外方に突出するように設定している。具体的には、各ヨーク120A、120Bの外周側磁極部121の外周縁の外径側への突出寸法を、各ヨーク120A、120Bの傾斜方向の前端に位置する積層された板状部材130−1の最小値m1から、各ヨーク120A、120Bの傾斜方向の後端に位置する積層された板状部材130−7の最大値m2まで、積層順番に従って段階的に変化させていく。そうすることにより、各ヨーク120A、120Bの外周縁と永久磁石22の内周との間の間隙(エアギャップ)d1〜d7を均一化することができる。
【0074】
なお、各ヨーク120A,120Bの傾斜方向の前方側に位置する積層された板状部材130の径方向外周端の位置より、ヨーク120A,120Bの傾斜方向の後方側に位置する積層板状部材の径方向外周端の位置を、径方向外方に突出させる方法としては、以下の方法も採用できる。すなわち、傾斜方向の前方側と後方側に積層する板状部材130の寸法を異ならせたり、傾斜方向の前方側と後方側に積層する板状部材130の積層位置をずらしたりする方法を採用することができる。
【0075】
次に作用について述べる。
(発電の仕組み)
このように構成されたハブダイナモ10の発電は、以下の要領で行われる。
すなわち、前輪5が回転すると、スポーク2により前輪5に接続されたロータ20が前輪5と共にハブ軸11周りに回転し、永久磁石22がステータ101周りを回転する。
【0076】
回転する永久磁石22の磁束により、軸方向一方P側の第1ヨーク120Aの外周側磁極部121がN極、軸方向他方Q側の第2ヨーク120Bの外周側磁極部121がS極となる状態と、軸方向一方P側の第1ヨーク120Aの外周側磁極部121がS極、軸方向他方Q側の第2ヨーク120Bの外周側磁極部121がN極となる状態と、が交互に繰り返される。これにより、両者を磁気的に連結している両ヨーク120A、120Bの内周側磁極部123に交番磁束が発生する。このコイルの内周側に発生する交番磁束によって、ステータ101のコイル140に電流が流れて発電が行われる。
【0077】
この発電時には、交番磁束に加えて、渦電流も発生する。この渦電流は発電効率を低下させるものであるが、本ハブダイナモ10においては、各ヨーク120A、120Bを複数の板状部材130の積層体として構成しているので、渦電流の発生を抑えることができる。
【0078】
本実施形態のハブダイナモにおいては、第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120Bを半径方向に沿った平面(ヨークの配置基準面SA0、SB0)上ではなく、半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SAB1)上に配置している。このため、第1ヨーク120Aの内周側磁極部123と第2ヨーク120Bの内周側磁極部123とを1対1の関係で当接させることができる。
【0079】
従って、
図17(a)に模式化して示すように、ヨーク120A、120Bの寸法公差等によるバラツキにより、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの当接面に、
図17(b)に示すような隙間Gが生じるのを無くすことができ、当接面の密着度を高めることができる。その結果、ヨーク120A、120Bの磁気的接続を安定させて鉄損を減少することができ、効率を向上することが可能になる。
【0080】
また、32極のヨーク120A、120Bの全数を使用した、
図18に示す100%の出力状態から出力を下方側に調整する場合、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bを1対1で接続できることから、必要個数を減らすことができる。例えば、
図18に示す100%出力の状態から、75%に出力をダウンさせる場合、
図19に示すように、ヨーク120A、120Bの個数を3/4に単純に減らせばよい。また、50%に出力をダウンさせる場合、
図20に示すように、ヨーク120A、120Bの使用個数を1/2に単純に減らせばよい。
【0081】
因みに、実施形態の場合、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bの接続が1対1の関係でできることから、出力を100%の状態から例えば50%、25%と下方に調整する際に、
図21(a)および(c)に示すように、第1ヨーク120Aと第2ヨーク120Bとを同じ個数だけ減らせばよく、ヨーク120A、120Bの必要本数を少なく済ませることができる。これに対して比較例(従来公報の例)の場合は、50%出力にする場合でも、一方のヨーク(例えば、第2ヨーク120B)は全数使用せざるを得ないし、25%出力にする場合でも、両ヨーク120A、120Bを全数の半分を使用せざるを得ない。このように、出力調整の際にヨークの必要本数を減らせるので、それだけコスト面や重量面で有利になる。
【0082】
また、本実施形態では、コイルボビン110のフランジ112A、112Bのガイド溝113A、113Bや係合溝114A、114Bにヨーク120A、120Bの軸方向端部を係合させることにより、ヨークを半径方向に対して傾斜した平面(ヨークの実配置面SA1、SB1)上に位置決めすることができる。従って、ヨーク120A、120Bをコイルボビン110に組み付けることで、コイルボビン110に巻回したコイル140とヨーク120A、120Bの位置関係を適正に定めることができる。
【0083】
また、本実施形態では、積層ヨーク(第1ヨーク120Aおよび第2ヨーク120B)を半径方向に対し傾斜して配置した場合にも、ヨーク120A、120Bの外周縁(各ヨークの外周側磁極部121の外周縁)と永久磁石22の内周面22aとの間の隙間(エアギャップ)の均一化に貢献することができる。その結果、発電効率を高めることができる。
【0084】
また、本実施形態では、各ヨーク120A、120Bの内周端の周方向一端側または他端側の少なくとも一方に、隣接するヨークの内周端同士の干渉を避ける切欠部135が設けられている。このため、隣接するヨーク120A、120Bの内周部同士の干渉を避けることができ、ヨーク120A、120Bを円周方向に密に配置することが可能になる。よって、ヨークの配置個数を増やせるようになる。
【0085】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、ヨーク120A、120Bを構成する際の板状部材130の積層枚数は任意に定めてよいし、100%出力時のヨーク120A、120Bの個数も32個に限られるものではない。また、ステータ101の個数も1つに限定されず、2つあるいは3つをハブ軸11上に配置してもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、ステータユニット100は、1つのステータ101により構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つ以上のステータ101をハブ軸11並べて配置してステータユニット100を構成してもよい。この場合、2つのステータ101の位相をずらすことにより、位相のずれた交番電流を生成できる。