(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
色管理の対象物の所定の場所に設けられた、複数の印刷色の色パッチから構成される管理用パッチが撮像された撮像画像から、前記複数の印刷色の各々におけるRGB値を抽出するRGB値抽出部と、
前記印刷色毎の前記RGB値を対象三刺激値に変換する三刺激値変換部と、
環境光の三刺激値に対する前記対象三刺激値の比を変数として所定の式により、前記印刷色毎の対象インキ傾き係数、前記三刺激値に対する予め設定された参照三刺激値の比を変数として所定の関数により参照インキ傾き係数の各々を算出するインキ傾き係数算出部と、
前記対象インキ傾き係数及び参照インキ傾き係数の各々から、対象比色トーン値、参照比色トーン値を所定の式により、算出する比色トーン算出部と、
前記対象比色トーン値と、前記参照比色トーン値と、印刷した紙の比色トーン値とを用いて、前記色パッチそれぞれの印刷色の濃度を、所定の式により算出する印刷色濃度算出部と
を備えることを特徴とする印刷色評価システム。
前記インキ傾き係数算出部が、前記対象三刺激値と前記予め印刷した前記印刷色を測定して求めた前記参照三刺激値との各々から、前記印刷色毎の対象インキ傾き係数、参照インキ傾き係数それぞれを求め、
比色トーン算出部が、対象インキ傾き係数及び前記参照インキ傾き係数の各々を用い、対象比色トーン値、参照比色トーン値それぞれを求め、
前記印刷色濃度算出部が、参照比色トーン値に対する比色トーン値の比と、前記予め印刷した印刷色の印刷を測定して求めた測定濃度とを用いて、前記印刷色の各々の濃度を求める
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷色評価システム。
RGB値抽出部が、色管理の対象物の所定の場所に設けられた、複数の印刷色の色パッチから構成される管理用パッチが撮像された撮像画像から、前記複数の印刷色の各々におけるRGB値を抽出するRGB値抽出過程と、
三刺激値変換部が、前記印刷色毎の前記RGB値を対象三刺激値に変換する三刺激値変換過程と、
インキ傾き係数算出部が、環境光の三刺激値に対する前記対象三刺激値の比を変数として所定の式により、前記印刷色毎の対象インキ傾き係数、前記三刺激値に対する予め設定された参照三刺激値の比を変数として所定の関数により参照インキ傾き係数の各々を算出するインキ傾き係数算出過程と、
比色トーン算出部が、前記対象インキ傾き係数及び参照インキ傾き係数の各々から、対象比色トーン値、参照比色トーン値を所定の式により、算出する比色トーン算出過程と、
印刷色濃度算出部が、前記対象比色トーン値と、前記参照比色トーン値と、印刷した紙の比色トーン値とを用いて、前記色パッチそれぞれの印刷色の濃度を、所定の式により算出する印刷色濃度算出過程部と
を含むことを特徴とする印刷色評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による印刷色評価システムについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による印刷色評価システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図1において、印刷色評価システム10は、評価制御部101、カラープロファイル作成部102、RGB値抽出部103、三刺激値変換部104、インキ傾き係数算出部105、比色トーン算出部106、印刷濃度算出部107、評価値算出部108、画像記憶部109、参照印刷色データベース110及び印刷色履歴データベース111の各々を備えている。この印刷色評価システム10は、例えばスマートフォンにインストールされたアプリケーションのプログラムが起動され、スマートフォンのメモリ上において構成される機能部である。
【0014】
評価制御部101は、管理用パッチの撮像画像のデータを読み込み、撮像画像識別情報を付して、印刷色履歴データベース111における撮像画像テーブルに書き込んで記憶させる。また、評価制御部101は、印刷色評価システム10内の各部の制御を行なう。
カラープロファイル作成部102は、撮像されたカラーチェッカーを基に、印刷色評価システム10に撮像画像を撮像する画像撮像装置のカラープロファイルを作成する。このカラープロフィアルは、例えば、ICC(International Color Consortium)プロファイルであり、画像撮像装置の供給するRGB値を絶対基準の三刺激値(X,Y,Z)に変換するために用いる。また、カラープロファイル作成部102は、求めたカラープロファイルを参照印刷色データベース110に対して書き込んで記憶させる。
【0015】
図2は、印刷色履歴データベース111における撮像画像テーブルの構成例を示す図である。撮像画像テーブルの各レコードには、撮像画像識別情報の欄に対応して、撮像画像データインデックスと、対象印刷装置識別情報と、撮像日時との欄が設けられている。
撮像画像識別情報は、撮像画像の各々を識別するための識別情報である。撮像画像データインデックスは、印刷色履歴データベース111における撮像画像のデータが書き込まれている領域のアドレスを示す情報である。対象印刷装置識別情報は、撮像画像に撮像されている管理用パッチを印刷した、印刷色の変動の管理を行なう対象の印刷装置の各々を識別する識別情報である。撮像日時は、撮像画像識別情報の示す撮像画像を撮像した日時を示す情報である。
【0016】
すなわち、評価制御部101は、撮像画像のデータが管理対象の対象印刷装置識別情報及び撮像した日時である撮像日時(新聞の場合付け日)ととともに、撮像装置から供給されることにより、撮像画像のデータを印刷色履歴データベース111の所定の領域に書き込む。そして、評価制御部101は、撮像画像識別情報に対応させて、撮像画像のデータを書き込んだ印刷色履歴データベース111の領域のアドレスである撮像画像データインデックスと、対象印刷装置識別情報、撮像日時それぞれを、上記撮像画像データテーブルに書き込んで記憶させる。
【0017】
図3は、印刷色の管理対象の印刷物に設けられた管理用パッチの一例を示す図である。本実施形態においては、
図3の管理用パッチにより、例えば、印刷物として新聞紙の印刷色の変動の管理を行なう。
図3の管理用パッチ500は、複数の異なる色が印刷された印刷色パッチから構成されている。例えば、管理用パッチは、網点面積率が50%のシアン(Cyan50%)が印刷された領域、網点面積率が100%のシアン(Cyan100%)が印刷された領域、網点面積率が100%の(Cyan100%)の上に100%のマゼンタ(Magenta100%)が印刷された領域、網点面積率が100%のシアン(Cyan100%)の上に100%のイエロー(Yellow100%)が印刷された領域、網点面積率が50%の黒(Black50%)が印刷された領域、網点面積率が50%のマゼンタ(Magenta50%)が印刷された領域、網点面積率が100%のマゼンタ(Magenta100%)が印刷された領域、網点面積率が100%のマゼンタ(Magenta100%)の上に100%のイエロー(Yellow100%)が印刷された領域、網点面積率が100%の黒(Black100%)が印刷された領域、網点面積率が50%の(Cyan50%)の上に40%のマゼンタ(Magenta40%)さらにその上に40%のイエロー(Yellow40%)が印刷された領域、網点面積率が50%のイエロー(Yellow50%)が印刷された領域、網点面積率が100%のイエロー(Yellow100%)が印刷された領域それぞれ、すなわち印刷色パッチそれぞれから構成されている。また、印刷色が印刷される媒体である紙自体の領域、すなわちシアン、マゼンタ、イエロー、黒の各々の印刷の網点面積率が0%の領域についても、Paper領域として、以下の説明に用いる。
【0018】
図1に戻り、RGB値抽出部103は、管理用パッチ500の撮像画像から、各印刷色パッチの印刷色のRGB値を抽出し、印刷色それぞれを識別する対象印刷色識別情報に対応させ、印刷色履歴データベース111における印刷色履歴テーブルに書き込んで記憶させる。この印刷色履歴テーブルは、印刷色履歴データベース111において、撮像日時及び対象印刷装置毎に設けられている。
例えば、RGB値抽出部103は、撮像画像における網点面積率が100%のシアン(Cyan100%)が印刷された領域のRGB値を抽出する。そして、RGB値抽出部103は、この領域の印刷色である網点面積率が100%のシアンを識別する対象印刷色識別情報に対応させ、抽出したRGB値を印刷色履歴テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0019】
また、RGB値抽出部103は、撮像画像において、管理用パッチ500の外側の画像領域において、すなわちPaper領域におけるRGB値の抽出(管理用パッチ500が印刷された媒体の紙自体のRGB値の抽出)も行い、所定の対象印刷色識別情報に対応させて、印刷色履歴テーブルに対して書き込んで記憶させる。このRGB値の抽出する際、RGB値抽出部103は、例えば、同一の管理用パッチ500の撮像画像を5枚用いて、撮像画像におけるノイズの除去処理を行なう。RGB値抽出部103は、撮像画像毎に管理用パッチ500における印刷色パッチの各々のRGB値のヒストグラムを求め、このヒストグラムを撮像画像の5枚分で加算して、総合ヒストグラムを生成する。このヒストグラムは、RGB値毎に作成されており、横軸に階調度が示され、縦軸にそれぞれの階調度の画素数が示されている。そして、RGB値抽出部103は、予め設定された数値(画素数)以下の階調度をノイズとして除去した後、撮像画像における管理用パッチ500の各印刷色の領域のRGB値を抽出する。
【0020】
図4は、印刷色履歴データベース111における印刷用評価テーブルの構成例を示す図である。印刷用評価テーブルの各レコードには、対象印刷色識別情報の欄に対応して、対象RGB値と、対象三刺激値、対象インキ傾き係数と、対象比色トーン値、対象印刷色濃度と、対象印刷色評価値との各々の欄が設けられている。
対象印刷色識別情報は、管理用パッチ500の各印刷色パッチにおける印刷色(網点面積率が100%のシアン(Cyan100%)など)を識別する識別情報である。対象三刺激値(X2,Y2,X2)は、撮像画像に撮像された管理用パッチ500における各色彩色パッチの印刷色のRGB値(R,G,B)を,カラープロファイルを用いて変換して求めた三刺激値である。対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)は、対象三刺激値を所定の関係式により変換して求めた係数である。
【0021】
対象比色トーン値は、CTV(Colorimetric Tone Value)であり、対象インキ傾き係数を用いて所定の関係式により求める。また、対象比色トーン値は、対象三刺激値に対応したPrintColorValueと示す場合もある。対象印刷色濃度は、対象比色トーン値を用いて、所定の関係式により求めた、管理用パッチ500における印刷色パッチの濃度である。対象印刷色評価値は、印刷色パッチの濃度を用いて、所定の関係式により求めた、管理用パッチ500における印刷色パッチのドットゲイン及び2次色のトラッピングの各々である。上述した印刷用評価テーブルにおける、所定の関係式により求める各々の数値については後述する。
【0022】
図5は、参照印刷色データベース110における参照用評価テーブルの構成例を示す図である。印刷用評価テーブルの各レコードには、参照印刷色識別情報の欄に対応して、印刷色濃度と、参照三刺激値、測定光源、参照インキ傾き係数、参照比色トーン値との各々の欄が設けられている。
参照印刷色識別情報は、管理用パッチ500の印刷色の変動を管理する際に標準値として用いる、参照用に紙に印刷された管理用パッチ500の各印刷色に対応した印刷色それぞれ(例えば、網点面積率が100%のシアン(Cyan100%)など)を識別する識別情報である。印刷色濃度は、上述した実際に印刷された印刷色の各々を濃度計で測定した濃度値である。参照三刺激値(X1,Y1,Z1)は、例えば、印刷された各印刷色の印刷部分からの反射光を分光感度別に抽出して求めた三刺激値である。測定光源は、印刷色濃度及び参照三刺激値を測定した際の、光源環境を示している。例えば、本実施形態においては、D50の光源を用いている。
【0023】
対象インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)は、参照三刺激値(X1,Y1,Z1)を所定の関係式により変換して求めた係数である。対象比色トーン値は、CTV(Colorimetric Tone Value)であり、対象インキ傾き係数を用いて所定の関係式により求める。また、対象比色トーン値は、参照三刺激値に対応したRefColorValueと示す場合もある。この参照用評価テーブルは、管理開始の段階により一回作成されるものであり、評価基準を変更することがなければ、新たに作成されることはない。また、参照濃度及び参照三刺激値の各々は、媒体である紙のみの数値も測定されている。
【0024】
図1に戻り、三刺激値変換部104は、参照印刷色データベース110からカラープロファイルを読み出す。そして、三刺激値変換部104は、読み出したカラープロファイルを用いて、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルから読み出した対象RGB値を順次、対象三刺激値に変換し、求めた対象三刺激値を対象RGB値に対応させて、印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
インキ傾き係数算出部105は、以下の(1)式を用いて、対象三刺激値(X2,Y2,Z2)及び参照三刺激値(X1,Y1,Z1)の各々から、対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)、参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)それぞれを算出する。すなわち、インキ傾き係数算出部105は、対象三刺激値(X2,Y2,Z2)及び参照三刺激値(X1,Y1,Z1)の各々を、(1)式の変数X、Y、Zに対して代入することで、対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)、参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)それぞれを算出する。(1)式については、「A Regression-Based Model of Colorimetric Tone Reproduction for Use in Print Standards、WB Birkett, C Spontelli -TAGA Proceedings, 2005」を参照している。
【0026】
そして、インキ傾き係数算出部105は、算出した対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)を、用いた対象三刺激値(X2,Y2,Z2)に対応させて、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。また、インキ傾き係数算出部105は、算出した参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)を、用いた参照三刺激値(X1,Y1,Z1)に対応させて、参照印刷色データベース110の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。インキ傾き係数は、環境光の三刺激値(refX,refY,refZ)に対する対象三刺激値(X2,Y2,Z2)の比に対応した数値である。
【0027】
比色トーン算出部106は、以下の(2)式を用いて、対象比色トーン値としてPrintColorValueを算出する。すなわち、比色トーン算出部106は、(2)式に対して対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)を代入することにより、対象比色トーン値PrintColorValueを算出する。そして、比色トーン算出部106は、算出した対象比色トーン値PrintColorValueを、用いた対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)に対応させて、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。以下の(2)式において、Lxpaper、Lypaper及びLzpaperの各々は、撮像画像における印刷媒体である紙自体の対象傾き係数である。
【0029】
また、同様に、比色トーン算出部106は、(3)式に対して参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)を代入することにより、参照比色トーン値RefColorValueを算出する。そして、比色トーン算出部106は、算出した参照比色トーン値RefColorValueを、用いた参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)に対応させて、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。以下の(3)式において、LxRefpaper、LyRefpaper及びLzRefpaperの各々は、参照用に印刷色を印刷した紙自体の対象傾き係数である。
【0031】
印刷濃度算出部107は、以下の(4)式を用いて、対象比色トーン値PrintColorValue及び参照比色トーン値RefColorValueの各々を代入することにより、対象印刷色濃度としてDensityを算出する。(4)式において、RefDensityは、参照用に紙に印刷された印刷色を測定して求めた、参照印刷色データベース110の印刷用評価テーブルにおける印刷色濃度である。すなわち、対象印刷色濃度Densityは、参照比色トーン値RefColorValueに対する対象比色トーン値PrintColorValueの比に、印刷色濃度RefDensityを乗じた結果に基づいて算出される。
【0033】
上述した対象印刷色濃度Densityは、
図3に示す管理用パッチ500における印刷色の全て(紙自体の)に対して算出される。そして、印刷濃度算出部107は、対象印刷色識別情報に対応させ、算出した対象印刷色濃度Densityを、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに書き込んで記憶させる。
【0034】
評価値算出部108は、以下の(5)式を用いて、対象網点面積率ToneValueAを求める。
【0036】
上記(5)式において、Density
50%は網点面積率が50%の印刷色の対象印刷色濃度であり、Density
100%は網点面積率が100%の印刷色の対象印刷色濃度であり、Density
paperは紙自体の対象印刷色濃度である。また、(5)式は、ISO( International Organization for Standardization)1267−1に定義されている濃度を算出する式である。例えば、シアンに対する網点面積率を求めると、網点面積率が50%のシアンと、網点面積率が100%のシアンとの各々の対象印刷色濃度を、(5)式に代入して、対象網点面積率ToneValueAが60%として求められた場合、評価値算出部108は、60%(撮像画像から求められた対象網点面積率)−50%(印刷する際に制御値とした網点面積率)=10%として、シアンのドットゲインを10として算出する。
【0037】
また、評価値算出部108は、以下の(6)式を用いて、トラッピング値Tを求める。
【0039】
上記(6)式において、Density
1+2は2つの印刷色が重ね塗りされたパッチの対象印刷色濃度であり、Density
1は重ね塗りにおける下に印刷された印刷色の対象印刷色濃度であり、Density
2は対象印刷色濃度Density
1の印刷色の印刷の上部に印刷された印刷色の対象印刷色濃度である。一般に重ね塗りの順番は、最初にブラック、次にシアン、そして順次マゼンタ、イエローの印刷色の各々が印刷される。例えば、評価値算出部108が、
図3における印刷色がマゼンタ100%とイエロー100%との重ね塗りのパッチにおけるトラッピング値Tを算出する場合を説明する。
【0040】
この場合、評価値算出部108は、(6)式において、Density
1+2がとしてマゼンタ100%とイエロー100%との重ね塗りのパッチの対象印刷色濃度を用い、Density
1としてマゼンタ100%のパッチの対象印刷色濃度を用い、Density
2としてイエロー100%のパッチの対象印刷色濃度を用いて、マゼンタ100%とイエロー100%との重ね塗りのパッチにおけるトラッピング値Tを算出する。そして、評価値算出部108は、対象印刷色識別情報に対応させ、算出したドットゲイン及びトラッピング値の各々を対象印刷色評価値として、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに書き込んで記憶させる。
【0041】
図6は、本実施形態による印刷色評価システム100の管理用パッチの各パッチの対象印刷色濃度及び対象印刷色評価値を求める処理の動作例を示すフローチャートである。
図7は、スマートフォンなどの携帯端末機器の表示画面における本実施形態による印刷色評価システム100の操作画面を示す図である。以下、これら
図6及び
図7を用いて、本実施形態による印刷色評価システム100の動作を説明する。
【0042】
作業者は、スマートフォンのアイコンを操作して、印刷色評価システム100のアプリケーションを起動する。
ステップS101:
上記起動操作により、評価制御部101は、
図7(a)に示す操作画面を、携帯端末機器の表示画面に表示する。
作業者が操作画面におけるアイコン701を操作する(例えば、タッチする)ことにより、評価制御部101は、携帯端末機器のカメラ機能(画像撮像装置)を操作し、
図7(b)に示すように、表示画面700において、撮像対象のカラーチェッカーの確認を行いつつ、カラーチェッカーの撮像画像の撮像を行なう。このとき、作業者が撮像した撮像画像(
図7(c))を、表示画面700において確認し、撮像された撮像画像にカラーチェッカーの画像が完全に含まれているか、あるいはピントが合っていないかなどの判定を行なう。確認の結果、撮像された撮像画像にカラーチェッカーの画像が完全に含まれていない場合、またはピントが合っていない場合、再度撮像を行なう。
【0043】
ステップS102:
カラープロファイル作成部102は、撮像されたカラーチェッカーを基に、印刷色評価システム10に撮像画像を撮像する画像撮像装置のカラープロファイルを作成する。そして、カラープロファイル作成部102は、求めたカラープロファイルを参照印刷色データベース110に対して書き込んで記憶させる。
【0044】
ステップS103:
カラープロファイル作成部102は、作成したカラープロファイルの精度が十分か否かの判定を、階調再現の滑らかさや色相の変化する位置での連続性などを判定することで行なう。このとき、カラープロファイル作成部102は、カラープロファイルの精度が十分であると判定した場合、処理をステップS104へ進める。一方、カラープロファイル作成部102は、カラープロファイルの精度が十分でないと判定した場合、処理をステップS101へ戻して、
図7(a)の操作画面を表示画面700に表示して再撮影を促す。
【0045】
ステップS104:
作業者は、新聞紙において所定の位置に印刷されている管理用パッチ500の撮像を行なう際、例えば、
図7(d)の操作画面において、表示画面700の操作画面において対象印刷装置識別情報記入欄702に対して、評価対象の管理用パッチ500を新聞紙に印刷した印刷装置の対象印刷装置識別情報を入力する。また、作業者は、印刷付け日記入欄703に対して、評価対象の管理用パッチ500を新聞紙に印刷した日時を入力する。
【0046】
評価制御部101は、対象印刷装置識別情報と付け日とが入力されることにより、作業者に対して、新聞紙における管理用パッチ500の撮像を促す。
これにより、作業者は、
図7(e)に示すように、表示画面700において、管理用パッチ500の印刷されている領域704を参照しつつ、新聞紙における管理用パッチ500が印刷されている所定の領域の画像を撮像する。評価制御部101は、撮像した管理用パッチ500の撮像画像を画像記憶部109に対して、一旦、書き込んで記憶させる。このとき、作業者が撮像した撮像画像(
図7(f))を表示画面700において確認し、撮像された撮像画像に管理用パッチ500の画像が完全に含まれているか、あるいはピントが合っていないかなどの判定を行なう。確認の結果、撮像された撮像画像に管理用パッチ500の画像が完全に含まれていない場合、またはピントが合っていない場合、再度撮像を行なう。
【0047】
ステップS105:
作業者は、操作画面において、管理用パッチ500の評価処理を開始するアイコン(不図示)を操作する。
評価制御部101は、評価処理を開始するアイコンが操作されることにより、画像記憶部109から撮像画像を読み出し、印刷色履歴データベース111に書き込んで記憶させ、撮像画像に対して付与した撮像画像識別情報とともに、撮像画像データインデックス、対象印刷装置識別情報、撮像日時の各々を、撮像画像テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0048】
また、評価制御部101は、管理用パッチ500が撮像された撮像画像を用いた印刷色の評価処理を開始する制御を、印刷色評価システム100の各部に対して行なわせる。
RGB値抽出部103は、印刷色履歴データベース111から管理用パッチ500の撮像画像を読み出し、読み出した撮像画像の管理用パッチ500の撮像された領域において、各パッチの印刷色のRGB値を求める。そして、RGB値抽出部103は、抽出したRGB値を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0049】
ステップS106:
三刺激値変換部104は、RGB値抽出部103の抽出した各パッチの印刷色のRGB値である対象RGB値を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルから読み出す。そして、三刺激値変換部104は、読み出した対象RGB値を、対象三刺激値(X2,Y2,Z2)に変換する。三刺激値変換部104は、変換した対象三刺激値(X2,Y2,Z2)を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0050】
ステップS107:
インキ傾き係数算出部105は、三刺激値変換部104が変換した各パッチの対象印刷色の対象三刺激値(X2,Y2,Z2)を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルから読み出す。そして、インキ傾き係数算出部105は、読み出した対象三刺激値(X2,Y2,Z2)を、対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)に(1)式を用いて変換する。インキ傾き係数算出部105は、変換した対象三刺激値(X2,Y2,Z2)を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0051】
また、インキ傾き係数算出部105は、管理用パッチ500の対象印刷色の各々に対応する参照三刺激値(X1,Y1,Z1)それぞれを、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルから読み出す。
そして、インキ傾き係数算出部105は、参照印刷色の参照三刺激値(X1,Y1,Z1)を、参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)に(1)式を用いて変換する。インキ傾き係数算出部105は、変換した参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)を、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0052】
ステップS108:
比色トーン算出部106は、インキ傾き係数算出部105が変換した各パッチの対象印刷色の対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)を、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルから読み出す。そして、比色トーン算出部106は、読み出した対象インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)を、対象比色トーン値PrintColorValueに(2)式を用いて変換する。比色トーン算出部106は、変換した対象比色トーン値PrintColorValueを、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0053】
また、比色トーン算出部106は、インキ傾き係数算出部105が変換した各参照印刷色の参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)を、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルから読み出す。そして、比色トーン算出部106は、読み出した参照インキ傾き係数(Lx1,Ly1,Lz1)を、参照比色トーン値RefColorValueに(3)式を用いて変換する。比色トーン算出部106は、変換した参照比色トーン値RefColorValueを、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0054】
ステップS109:
印刷濃度算出部107は、比色トーン算出部106が変換した各パッチのである対象印刷色の対象比色トーン値PrintColorValueを、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルから読み出す。また、印刷濃度算出部107は、比色トーン算出部106が変換した各参照印刷色の参照比色トーン値RefColorValueを、参照印刷色データベース110の参照用評価テーブルから読み出す。
そして、印刷濃度算出部107は、読み出した対象比色トーン値PrintColorValue及び参照比色トーン値RefColorValueの各々を(4)式に代入し、管理用パッチ500におけるパッチの各々の対象印刷色の対象印刷色濃度Densityを求める。
【0055】
ステップS110:
評価値算出部108は、管理用パッチ500におけるパッチの各々の対象印刷色の対象印刷色濃度Densityを用い、(5)式及び(6)式の各々により、ドットゲイン、トラッピング値Tそれぞれを算出する。
そして、評価値算出部108は、ドットゲイン、トラッピング値Tそれぞれを、対象印刷色評価値として、印刷色履歴データベース111の印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
また、評価制御部101は、表示画面700において、管理用パッチ500の各パッチの印刷濃度、ドットゲイン、トラッピング値などを表示する。
【0056】
上述したように、本実施形態においては、各作業者の携帯端末装置にインストールされたアプリケーション(プログラム)である印刷色評価システムにより、新聞紙に印刷された管理用パッチ500のパッチの各々の印刷色の印刷色濃度及び対象印刷色評価値のそれぞれが求められる。この印刷色濃度及び対象印刷色評価値の各々の履歴を管理し、新聞紙に印刷される印刷色の変動を管理することができる(不図示の履歴管理部)。
また、各印刷工場における印刷装置の各々を集中的に管理する、技術センターなどの管理サーバに、各携帯端末装置から管理用パッチ500のパッチの各々の印刷色の印刷色濃度及び対象印刷色評価値を送信し、この管理サーバにより集中して管理する構成としても良い。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、予め印刷した印刷色の印刷色濃度を基準として参照し、評価の対象の新聞紙などにおける印刷色の管理用パッチの撮像画像から、管理用パッチにおけるパッチの各々に印刷された印刷色の対象印刷色濃度を求めるため、各印刷機の配置されている印刷工場の各々において専用測定機器を用いることなく、各印刷機における印刷色の印刷における印刷色濃度の管理を、管理用パッチを撮像して求めた対象印刷色濃度により簡易に行なうことが可能となる。
【0058】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態による印刷色評価システムについて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態による印刷色評価システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図8において、印刷色評価システム10Aは、評価制御部101、カラープロファイル作成部102、RGB値抽出部103、三刺激値変換部104、インキ傾き係数算出部105、比色トーン算出部106、印刷濃度算出部107、評価値算出部108、画像記憶部109、参照印刷色データベース110、印刷色履歴データベース111A、空間的色知覚モデル変換部112、Lab色空間変換部113及び修正三刺激値変換部114の各々を備えている。
図8の第2の実施形態の構成において、第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してある。以下、第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる構成及び動作の各々を説明する。
【0059】
空間的色知覚モデル変換部112は、参照三刺激値(X1,Y1,Z1)及び対象三刺激値(X2,Y2,Z2)の各々を、一般的な所定の変換式により、表三刺激値と異なる表色系(空間的色知覚モデル)であるCIECAM02のパラメータに変換する。そして、空間的色知覚モデル変換部112は、求めたCIECAM02のパラメータを、印刷色履歴データベース111Aの印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0060】
ここで、CIECAM02のパラメータは、Q(明るさ)、J(明度)、H(色相成分)、h(色相角)M(カラフルネス)、C(クロマ)及び飽和度sの各々である。第1の実施形態においては三刺激値から直接にインキ傾き係数を求めていたが、第2の実施形態においてはCIECAM02に変換した後にインキ傾き係数を求めている。CIECAM02のパラメータから擬似Labを求め、擬似Labから擬似三刺激値に変換することにより、人間の感覚に近い色表現に補正することができる。
しかしながら、CIE1976L
*a
*b
*の表色系は、人間の感覚が、色を正確に表した数値と、実際に見て感じ取った色とにずれがある。このため、近年、CIE1976L
*a
*b
*より人間の感覚に近い、すなわち人間が見て感じ取った色に近い色を数値として表すCIECAM02が用いられる。
【0061】
Lab色空間変換部113は、CIECAM02のパラメータから、以下の(7)式を用いて、擬似CIELabの表色系のパラメータに変換する。
【0063】
上記(7)式において、JはCIECAM02のパラメータの明度であり、CはCIECAM02のパラメータのクロマであり、hはCIECAM02のパラメータの色相角である。この(7)式において算出される擬似Lab値であるL02、a02及びb02の各々のパラメータは、CIE1976L
*a
*b
*のパラメータL
*、a
*及びb
*の各々と異なり、LabのパラメータL、a、bそれぞれに対応して擬似的に求めたパラメータである。この、CIECAM02から擬似的Labの表色系への変換は、三刺激値を最終的に求めるために行なっている。そして、Lab色空間変換部113は、求めた擬似Lab値を、印刷色履歴データベース111Aの印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
【0064】
修正三刺激値変換部114は、一般的な変換式により、擬似Lab値のL02、a02及びb02の各々のパラメータから、擬似的な三刺激値である擬似三刺激値(X02,Y02,Z02)を求める。そして、修正三刺激値変換部114は、求めた擬似三刺激値(X02,Y02,Z02)を、印刷色履歴データベース111Aの印刷用評価テーブルに対して書き込んで記憶させる。
そして、インキ傾き係数算出部105は、(1)式における対象三刺激値(X2,Y2,Z2)を、擬似三刺激値(X02,Y02,Z02)に換えて、インキ傾き係数(Lx2,Ly2,Lz2)を算出する。
以降の処理については、第1の実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0065】
図9は、印刷色履歴データベース111Aにおける印刷用評価テーブルの構成例を示す図である。この
図9において、印刷用評価テーブルの各レコードには、対象印刷色識別情報の欄に対応して、対象RGB値と、対象三刺激値と、CIECAM02パラメータと、擬似Lab値と、擬似三刺激値と、対象インキ傾き係数と、対象比色トーン値と、対象印刷色濃度と、対象印刷色評価値との各々の欄が設けられている。
対象印刷色識別情報と、対象RGB値と、対象三刺激値と、対象インキ傾き係数と、対象比色トーン値と、対象印刷色濃度と、対象印刷色評価値との各々については、第1の実施形態における
図4の印刷色履歴データベース111における印刷用評価テーブルの構成と同様である。CIECAM02パラメータは、すでに述べたQ(明るさ)、J(明度)、H(色相成分)、h(色相角)M(カラフルネス)、C(クロマ)及び飽和度sの各々である。擬似Lab値は、L02、a02及びb02の各々である。擬似三刺激値(X02,Y02,Z02)である。
【0066】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、予め印刷した印刷色の印刷色濃度を基準として参照し、評価の対象の新聞紙などにおける印刷色の管理用パッチの撮像画像から、管理用パッチにおけるパッチの各々に印刷された印刷色の対象印刷色濃度を求めるため、各印刷機の配置されている印刷工場の各々において専用測定機器を用いることなく、各印刷機における印刷色の印刷における印刷色濃度の管理を、管理用パッチを撮像して求めた対象印刷色濃度により簡易に行なうことが可能となる。
また、本実施形態によれば、一旦、人間の見ている感覚と近い色の数値表現ができるCIECAM02に変換した後、対象印刷色濃度を算出しているため、第1の実施形態に比較して、より人間の見ている感覚に近い色の数値を用いて、印刷色の変動の管理を行なうことが可能であるため、人間の見ている感覚での印刷色の変動を管理することができる。
【0067】
また、
図1における印刷色評価システム10と
図8における印刷色評価システム10Aとの各々の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより印刷色の評価の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0068】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0069】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。