(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ISO 11443により測定される前記ポリカーボネート組成物の溶融粘度が、前記ジグリセロールエステルにより低減される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ポリカーボネート組成物の流動性を改善することに関する。
【0002】
本発明の文脈において、用語「ポリカーボネート組成物」とは、ポリカーボネートを主成分として含んでなる組成物を意味すると理解されるべきである。用語「ポリカーボネート」とはホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方を含むとここでは理解されるべきである。これらポリカーボネートは通常の様態で直鎖状または分岐鎖状であってもよい。本発明によればポリカーボネートの混合物を使用してもよい。
【0003】
好ましくは、本発明の文脈において「透明」とはポリカーボネート組成物が、400nm〜800nmの範囲において、少なくとも86%、より好ましくは少なくとも88%の、4mmの厚さに対するISO 13468により測定される透過性を示すことを意味すると理解されるべきである。
【0004】
特に、薄肉のケーシング、例えば、ウルトラブック(ultrabook)またはスマートブック、の場合、均一な肉厚を有する成分を実現し得るために低い溶融粘度が必要である。
【0005】
ビスフェノールAジホスフェート(BDP)が流動性向上のために、即ち、所望の効果を達成するために10重量%超の含量で習慣的に用いられる。しかしながら、これは著しく耐熱性を低減させる。
【0006】
ジグリセロールエステル類は、例えばJP 2011108435 A、JP 2010150457 AおよびJP 2010150458 Aにおいて記載されているように、透明組成物中の静電気防止剤として使用されている。JP 2009292962 Aには、エステルが少なくとも20個の炭素原子を有する特定の態様が記載されている。JP 2011256359 Aには、ジグリセロールエステル含有難燃性UV安定性静電気防止組成物が記載されている。しかしながら、それらに記載された幾つかの組成物は、溶融不安定性、熱にさらされた場合のポリマー分解を示す。EP 0994155は、テトラグリセロールの完全エステルのポリカーボネート組成物への添加を記載している。
【0007】
従って本発明の特定の目的は、透明ポリカーボネート組成物の流動性を、同時に良好な溶融安定性を達成しながら改善することである。
【0008】
驚くべきことに、今やこの目的は、ジグリセロールエステル類の使用により達成されることが見出された。特に驚くべきは、ジグリセロールエステル類は、メルトエステル交換反応法により製造されたポリカーボネートを安定させることにも好適であることである。
【0009】
ジグリセロールエステルが添加されたポリカーボネート組成物は、ジグリセロールエステルを除いて同一の成分を含んでなる同等の組成物と比べて、改善したレオロジー特性とともに良好な溶融安定性、即ち、DIN EN ISO 1133(300℃の試験温度、質量1.2kgにて)により測定されるより高いメルトボリュームフローレート(MVR)、ISO 11443により測定される改善した溶融粘度、およびASTM E 313により測定されるより低い黄色指数(YI)によって測定可能な改善した光学特性を示す。これら組成物は、さらに、ISO 306により測定されるビカット(Vicat)軟化温度VST/B50により測定可能な良好な耐熱性を示す。
【0010】
同様に、4mmの厚さに対する、ISO 13468により測定される、400〜800nmの波長で改善した透過率も観察された。
【0011】
ポリカーボネート組成物は、好ましくは0.2〜1.0重量%、非常に特に好ましくは0.3〜0.6重量%のジグリセロールエステルを含んでなる。
【0012】
ジグリセロールエステル類の添加によって熱安定性がもたらされ、具体的には、全体の剪断速度に対して溶融粘度の低減を示す透明ポリカーボネート組成物は、好ましくは以下を含んでなる:
A)20.0重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.01重量%〜3.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%および非常に特に好ましくは0.3〜0.6重量%のジグリセロールエステル、
C)0.0重量%〜1.0重量%の熱安定剤熱安定剤
D)0.0重量%〜10.0重量%の追加添加剤。
【0013】
組成物は、好ましくはさらなる成分を含まず、成分A)〜D)は合計して100重量%となる。
【0014】
この様なポリカーボネート組成物が、以下からなる場合、特に好ましい:
A)20.0重量%〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.01重量%〜3.0重量%、一層より好ましくは0.2〜1.0重量%、非常に特に好ましくは0.3〜0.6重量%のジグリセロールエステルおよび
C)場合により最大1.0重量%の熱安定剤および
D)場合により最大10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、有機顔料、無機顔料、カーボンブラックおよび/もしくは染料の群からの着色料、無機充填剤である二酸化チタン、硫酸バリウムならびに/またはレーザーマーキング用添加剤の群からの1つ以上の追加添加剤。
【0015】
この態様では、D)が場合により最大10.0重量%の酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、有機顔料および/もしくは染料の群からの着色料ならびに/またはレーザーマーキング用添加剤の群からの1つ以上の追加添加剤を表すことが特に好ましい。
【0016】
ジグリセロールエステルおよびホスフェートの添加後、ポリカーボネート組成物が以下の成分:
A)20.0重量%〜99.0重量%、特に好ましくは75.0重量%〜99.0重量%および非常に特に好ましくは95.0〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.01重量%〜3.0重量%のジグリセロールエステルおよび
C)場合により最大1.0重量%の熱安定剤および
D)場合により最大10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、有機顔料、無機顔料、カーボンブラックおよび/もしくは染料の群からの着色料および無機充填剤である二酸化チタン、硫酸バリウムならびに/またはレーザーマーキング用添加剤の群からの1つ以上の追加添加剤
D−2)0.001〜0.1重量%のホスフェート
を含んでなり、ここで成分A)〜D)(D−2を含む)の合計が100重量%となる場合が非常に特に好ましい。
【0017】
さらに、ジグリセロールエステルおよびリン酸トリイソオクチルの添加後、ポリカーボネート組成物が以下の成分:
A)20.0重量%〜99.0重量%、特に好ましくは75.0重量%〜99.0重量%および非常に特に好ましくは95.0〜99.0重量%の芳香族ポリカーボネート、
B)0.01重量%〜3.0重量%のジグリセロールエステルおよび
C)場合により最大1.0重量%の熱安定剤および
D)場合により最大10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、有機顔料、無機顔料、カーボンブラックおよび/もしくは染料の群からの着色料および無機充填剤である二酸化チタン、硫酸バリウムならびに/またはレーザーマーキング用添加剤の群からの1つ以上の追加添加剤ならびに
D−2)0.001〜0.1重量%のリン酸トリイソオクチル、
を含んでなり、ここで成分A)〜D)(D−2を含む)の合計が100重量%となる場合が好ましい。
【0018】
この場合におけるジグリセロールエステル成分は、好ましくはモノラウリン酸ジグリセロールである。さらに、D)が場合により最大10.0重量%の、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、有機顔料および/もしくは染料の群からの着色料ならびに/またはレーザーマーキング用添加剤の群からの1つ以上の追加添加剤を表すことが好ましい。
【0019】
本発明の方法により流動性が改善される組成物は成形品を製造するために使用することが好ましい。組成物は、ISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される、3〜60cm
3/10分およびより好ましくは6〜50cm
3/10分のメルトボリュームフローレート(MVR)ならびに室温にてDIN EN ISO 179により測定される60kJ/m
2超のシャルピー衝撃耐性を有することが好ましい。
【0020】
透明ポリカーボネート組成物中でのジグリセロールエステル類の使用は、光学特性の改善も提供する。ジグリセロールエステルの添加により、ASTM E 313(観察角(Beobachter):10/光タイプ:D65、厚さ4mmの試料用)により測定される黄色指数Y.I.が同時に低下しながら、4mmの厚さに対するISO 13468により測定される透過率が増加する。この効果は、ホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチル、を組成物に添加することによっても増強する。
【0021】
本発明の組成物の個々の成分は、下記において特により詳説される。
【0022】
成分A
流動性を改善するためにジグリセロールエステルが添加された組成物中に含まれてなるポリカーボネートは、ジフェノール類、カルボン酸誘導体、場合により連鎖停止剤および分岐形成剤から通常の方法で製造される。
【0023】
ポリカーボネートの製造に関連する具体例は、近年およそ40年にわたり多数の特許文献において開示されている。ここでは例えば、Schnell, "Chemistry and Physics of Polycarbonates", Polymer Reviews, Volume 9, Interscience Publishers, New York, London, Sydney 1964、D. Freitag, U. Grigo, P.R. Mueller, H. Nouvertne, BAYER AG, " Polycarbonates " in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Volume 11, Second Edition, 1988, pages 648-718および最後にU. Grigo, K. Kirchner and P.R. Mueller " Polycarbonate" in Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch, Volume 3/1, Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester, Carl Hanser Verlag Munich, Vienna 1992, pages 117 - 299を参照する。
【0024】
芳香族ポリカーボネートは、例えば、界面法により、場合により連鎖停止剤の使用により、かつ場合により三官能性または三官能性以上の分岐形成剤の使用により、ジフェノール類を炭酸ハリド、好ましくはホスゲンと、および/または芳香族ジカルボニルジハリド、好ましくはベンゼンジカルボニルジハリドと反応させることによって製造される。ジフェノール類の、例えば、炭酸ジフェノールとの反応による溶融重合法を介した製造も同様に可能である。
【0025】
ポリカーボネートの製造に好適なジフェノール類の例として、ハイドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(ヒドロキシフェニル) 硫化物、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル) スルホキシド、α,α'-ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼン、イサチンまたはフェノールフタレインの誘導体に由来するフタルイミジン、ならびにそれらの環アルキル化化合物、環アリール化化合物および環ハロゲン化化合物が挙げられる。
【0026】
好ましいジフェノール類は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジメチルビスフェノールA、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0027】
特に好ましいジフェノール類は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびジメチルビスフェノールAである。
【0028】
これらおよびさらなる好適なジフェノール類は、例えば、US−A 3 028 635、US−A 2 999 825、US−A 3 148 172、US−A 2 991 273、US−A 3 271 367、US−A 4 982 014およびUS−A 2 999 846において、DE−A 1 570 703、DE−A 2063 050、DE−A 2 036 052、DE−A 2 211 956およびDE−A 3 832 396において、FR−A 1 561 518において、"H. Schnell, Chemistry and Physics of Polycarbonates, Interscience Publishers, New York 1964" のモノグラフにおいて、同様にJP−A 62039/1986、JP−A 62040/1986およびJP−A 105550/1986において記載されている。
【0029】
ホモポリカーボネートの場合、1種のみのジフェノールが使用され、コポリカーボネートの場合、2種以上のジフェノール類が使用される。
【0030】
好適なカルボン酸誘導体の例として、ホスゲンまたは炭酸ジフェニルが挙げられる。
【0031】
ポリカーボネートの製造に使用してもよい好適な連鎖停止剤は、モノフェノール類である。好適なモノフェノール類の例として、フェノール自体、クレゾール類、p−tert−ブチルフェノール、クミルフェノール等のアルキルフェノール類およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
好ましい連鎖停止剤は、直鎖状または分岐鎖状、好ましくは未置換C
1〜C
30アルキル基を有するかまたはtert−ブチルを有する、一置換または多置換のフェノールである。特に好ましい連鎖停止剤は、フェノール、クミルフェノールおよび/またはp−tert−ブチルフェノールである。
【0033】
使用する連鎖停止剤の含量は、各場合に使用されたジフェノールのモルに対して、好ましくは0.1〜5モル%である。連鎖停止剤の添加は、カルボン酸誘導体との反応の前、間または後に実施してもよい。
【0034】
好適な分岐形成剤は、ポリカーボネート化学において通常の三官能性または三官能性以上の化合物、具体的には、3価以上のフェノール系OH基を有するものである。
【0035】
好適な分岐形成剤の例として、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタン および1,4−ビス((4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼンおよび 3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールが挙げられる。
【0036】
場合により使用する分岐形成剤の含量は、各場合に使用されたジフェノールのモルに対して、好ましくは0.05モル%〜2.00モル%である。
【0037】
分岐形成剤は、水性アルカリ相においてジフェノール類および連鎖停止剤とともに当初に充填しても、あるいはホスゲン化の前に有機溶媒中に溶液として添加しても、どちらでもよい。エステル交換反応法の場合、分岐形成剤は、ジフェノール類と一緒に使用される。
【0038】
特に好ましいポリカーボネート類は、ビスフェノールAに基づいたホモポリカーボネート、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに基づいたホモポリカーボネートならびに2つのモノマー、ビスフェノールAおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに基づいたコポリカーボネートである。
【0039】
添加剤の投入を容易にするために、成分Aは粉末、ペレットまたは粉末とペレットの混合物の形態で使用することが好ましい。
【0040】
使用するポリカーボネートは、異なるポリカーボネートの混合物(例えばポリカーボネートA1とA2)であってもよい。
【0041】
ポリカーボネートの総量に対する芳香族ポリカーボネートA1の含量は、25.0〜85.0重量%、好ましくは28.0〜84.0重量%、特に好ましくは30.0〜83.0重量%であり、ここでこの芳香族ポリカーボネートはビスフェノールAに基づき、かつISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される、好ましくは7〜15cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、より好ましくは8〜12cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRおよび特に好ましくは8〜11cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有する。
【0042】
ポリカーボネートの総量に対する粉体芳香族ポリカーボネート A2の含量は、3.0〜12.0重量%、好ましくは4.0〜11.0重量%、特に好ましくは3.0〜10.0重量%であり、ここでこの芳香族ポリカーボネートは好ましくはビスフェノールAに基づき、かつISO 1133(試験温度300℃、質量1.2kg)により測定される、好ましくは3〜8cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、より好ましくは4〜7cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有し、特に好ましくは6cm
3/10分のメルトボリュームフローレートMVRを有する。
【0043】
好ましい態様において、本発明のポリカーボネートは、一般式の構造単位:
【化1】
[式中、
R
1は、水素またはC1−C4アルキルであり、
R
2は、C1−C4アルキルであり、
nは、0、1、2または3であり、かつ
R
3は、C1−C4アルキル、アラルキルまたはアリールである。]
からなる群から選択されるモノマー単位またはそれらのブレンドを含んでならない。
【0044】
成分B
流動促進剤として使用したジグリセロールエステル類は、カルボン酸のエステル類であり、ここでは多様なカルボン酸に基づくジグリセロールエステルが好適である。エステル類は、ジグリセロールの異なる異性体に基づいていてもよい。モノエステル類と同様に、ジグリセロールポリエステル類を使用してもよい。純粋化合物の代わりに混合物を使用することも可能である。
【0045】
本発明に従い使用したジグリセロールエステルのもととなる(die Basis fur)ジグリセロールの異性体は以下である。:
【化2】
【0046】
これら異性体の一置換または多置換の類似体は、本発明により用いられるジグリセロールエステル類として使用してもよい。流動助剤として使用可能な混合物は、ジグリセロール反応物および例えば348g/モル(モノラウレート)または530g/モル(ジラウレート)の分子量を有する、それに由来するエステル最終産物からなる。
【0047】
本発明による組成物に含まれてなるジグリセロールエステル類は、好ましくは、6〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和または不飽和モノカルボン酸に由来する。好適なモノカルボン酸の例として、カプリル酸(C
7H
15COOH、オクタン酸)、カプリル酸(C
9H
19COOH、デカン酸)、ラウリン酸(C
11H
23COOH、ドデカン酸)、ミリスチン酸(C
13H
27COOH、テトラデカン酸)、パルミチン酸(C
15H
31COOH、ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(C
16H
33COOH、ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(C
17H
35COOH、オタデカン酸)、アラキジン酸(C
19H
39COOH、エイコサン酸)、ベヘン酸(C
21H
43COOH、ドコサン酸)、リグノセリン酸(C
23H
47COOH、テトラコサン酸)、パルミトレイン酸(C
15H
29COOH、(9Z)−ヘキサデカ−9−エン酸)、ペトロセリン酸(C
17H
33COOH、(6Z)−オクタデカ−6−エン酸)、オレイン酸(C
17H
33COOH、(9Z)−オクタデカ−9−エン酸)、エライジン酸(C
17H
33COOH、(9E)−オクタデカ−9−エン酸)、リノール酸(C
17H
31COOH、(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン酸)、アルファ−またはガンマ−リノレン酸(C
17H
29COOH、(9Z,12Z,15Z)−オクタデカ−9,12,15−トリエン酸および(6Z,9Z,12Z)−オクタデカ−6,9,12−トリエン酸)、アラキドン酸(C
19H
31COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z)−エイコサ−5,8,11,14−テトラエン酸)、ティムノドン酸(C
19H
29COOH、(5Z,8Z,11Z,14Z,17Z)−エイコサ−5,8,11,14,17−ペンタエン酸)およびセルボン酸(C
21H
31COOH、(4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z)−ドコサ−4,7,10,13,16,19−ヘキサエン酸)が挙げられる。特に好ましいのは、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸および/またはオレイン酸である。
【0048】
式(I)の少なくとも1種のエステルが、ジグリセロールエステル成分として存在している場合、特に好ましい。
【化3】
[式中、
R=COC
nH
2n+1および/またはR=COR’であり、
ここで、nは整数であり、R’は、分岐鎖状アルキル基または分岐鎖状または非分岐鎖状アルケニル基であり、C
nH
2n+1は、脂肪族飽和直鎖状アルキル基である。]
【0049】
例えば、nが6〜24の整数であり、従ってC
nH
2n+1がn−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルである場合、好ましい。n=8〜18、特に好ましくは10〜16、非常に特に好ましくは12の場合がより好ましい(348g/モルの分子量を有するモノラウリン酸ジグリセロール異性体が、混合物中の主生成物として特に好ましい)。本発明によれば、上記で言及したエステル基は、好ましくはジグリセロールのその他の異性体中にも存在している。
【0050】
従って、異なるジグリセロールエステルの混合物を考慮してもよい。
【0051】
好ましく使用したジグリセロールエステル類は、少なくとも6、特に好ましくは 6〜12のHLB値を有し、ここで用語HLB値とは、いわゆる「親水−親油バランス」を指し、以下のとおりのグリフィン(Griffin)方式によって計算される:
HLB=20×(1−M
親油性/M)、
[式中、
M
親油性 は、ジグリセロールエステルの親油性画分のモル質量であり、かつ
Mは、ジグリセロールエステルのモル質量である]。
【0052】
ジグリセロールエステルの含量は、0.01〜3.0重量%、好ましくは0.10〜2.0重量%、より好ましくは0.15〜1.50重量%、および特に好ましくは0.20〜1.0重量%、非常に特に好ましくは0.3〜0.6重量%である。
【0053】
成分C
好ましくは、好適な熱安定剤は、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(Irgafos(商標)168)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフィナイト、プロピオン酸オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)(Irganox(商標)1076)、ジホスホン酸ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトール(Doverphos(商標)S−9228)、ジホスホン酸ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトール(ADK STAB PEP-36)である。当該熱安定剤は、単独または混合物として使用される(例えば、Irganox(商標)B900(1:3の比でのIrgafos(商標)168とIrganox(商標)1076の混合物)またはIrganox(商標)B900/Irganox(商標)1076とのDoverphos(商標)S−9228)。好ましくは、熱安定剤は0.003〜0.2 重量%の含量で使用される。
【0054】
成分D
同様に存在していてもよいのは、最大10.0重量%、好ましくは0.10〜8.0重量%、特に好ましくは0.2〜3.0重量%のその他の通常添加剤 (「追加添加剤」)である。追加添加剤の群には、熱安定剤は含まれず、その理由はこれらが上記にて成分Cとして記載されているからである。
【0055】
このような添加剤は、ポリカーボネートに通常添加されているように、具体的には、ポリカーボネートに慣例的な量での、EP−A 0 839 623、WO−A 96/15102、EP−A 0 500 496または"Plastics Additives Handbook", Hans Zweifel, 5th Edition 2000, Hanser Verlag, Munichに記載されている、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、光散乱剤、有機顔料等や無機顔料カーボンブラックおよび/または染料等を含む着色料、二酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤および/またはレーザーマーキング用添加剤である。これら添加剤は、単独でまたはさもなければ混合物として添加してもよい。好ましくは、このような混合物はポリカーボネートに慣例的な量での、酸化防止剤、紫外線吸収剤、IR吸収剤、静電気防止剤、蛍光増白剤、有機顔料および/または染料等の着色料および/またはレーザーマーキング用添加剤 である。
【0056】
好ましい添加剤は、400nm未満の非常に低い透過率および400nm超の非常に高い透過率を有する特定の紫外線安定剤である。本発明による組成物に使用する特に好ましい紫外線安定剤は、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノンおよび/またはアリール化シアノアクリレートである。
【0057】
特に好ましい紫外線吸収剤は、2−(3’,5’−ビス(1,1−ジメチルベンジル)−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(商標)234、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(tert−オクチル)フェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin(商標)329、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾールイル)−2−ヒドロキシ−5−tert−オクチル)メタン(Tinuvin(商標)360、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール(Tinuvin(商標)1577、ルートウィヒスハーフェン、BASF)等のヒドロキシベンゾトリアゾール類、同様に2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン(Chimassorb(商標)22、ルートウィヒスハーフェン、BASF)および2−ヒドロキシ−4−(オクチルオキシ)ベンゾフェノン(Chimassorb(商標)81、ルートウィヒスハーフェン、BASF)等のベンゾフェノン類、2,2−ビス[[(2−シアノ−1−オキソ−3,3−ジフェニル−2−プロペニル)オキシ]メチル]−1,3−プロパンジイルエステル(9CI)(Uvinul(商標)3030、ルートウィヒスハーフェン、BASF AG)、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル−4,6−ジ(4−フェニル)フェニル−1,3,5−トリアジン(Tinuvin(商標)1600、ルートウィヒスハーフェン、BASF)、テトラエチル−2,2’−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート(Hostavin(商標)B-Cap、Clariant AG)またはN−(2−エトキシフェニル)−N’−(2−エチルフェニル)エタンジアミド(Tinuvin(商標)312、CAS番号.23949−66−8、ルートウィヒスハーフェン、BASF)である。
【0058】
特に好ましい特定の紫外線安定剤は、Tinuvin(商標)360、Tinuvin(商標)329 および/またはTinuvin(商標)312であり、非常に特に好ましいのは、Tinuvin(商標)329およびTinuvin(商標)312である。
【0059】
これら紫外線吸収剤の混合物を使用することも可能である。
【0060】
組成物が、組成物全体に対して、最大0.8重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%およびより好ましくは0.1重量%〜0.4重量%の含量で紫外線吸収剤を含んでなる場合が好ましい。
【0061】
本発明による組成物は、エステル交換反応安定剤としてホスフェート類またはスルホン酸エステル類を含んでなっていてもよい。好ましくは、少なくとも1種のホスフェートが含有されている。好ましくは、このホスフェートは、有機ホスフェートである。より好ましくは、当該組成物は、リン酸トリイソオクチルを安定剤として含んでなる。驚くべきことに、少なくとも1つのジグリセロールエステルの、少なくとも1つのホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチルとの組み合わせを用いることにより、改善した流動性だけでなく、改善した光学特性も示すポリカーボネート組成物を得ることができると見出された。具体的には、これによって増加した透過率、より低いヘイズおよびより低いY.I.を示す組成物を得ることができる。
【0062】
組み合わせを用いることにより、個々の成分の使用と比較して、これら光学特性が特に改善される(相乗効果)。
【0063】
ホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチルは、組成物全体に対して0.001〜0.1、特に好ましくは0.002〜0.08および非常に特に好ましくは0.005〜0.05重量%の含量で使用することが好ましい。
【0064】
本発明によれば、ホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチルは、成分D)に属するとして処理される(通常D−2と称する)。しかしながら、当該成分は好ましくは任意ではない。任意である成分D)に言及する全ての記載は、この場合、必須である、ホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチルを除き、D)として言及される全てのその他の成分に関係する。
【0065】
好ましくは、組成物は離型剤(例えば、GMS)を含まない。グリセロールエステル自体が離型剤として作用する。
【0066】
組成物が、少なくとも1つの熱安定剤(成分C)、および場合により、追加添加剤(成分D)として、エステル交換反応安定剤、具体的にはホスフェート、好ましくはリン酸トリイソオクチル、または紫外線吸収剤を含んでなる場合、特に好ましい。
【0067】
成分A〜Dを含んでなるポリカーボネート組成物は、個々の成分の組み合わせ、混合および均一化により、特に均一化は、好ましくは剪断力の適用によりメルト中で実施し、混和の通常の方法によって製造される。組み合わせおよび混合は紛体プレミックスの使用によりメルト均一化の前に実行してもよい。
【0068】
成分B〜Dと、ペレットまたはペレットと粉末のプレミックスを使用することも可能である。
【0069】
同様に使用可能なのは、好適な溶媒中で混合している成分の溶液から生成されたプレミックスであり、この場合、溶液中で均一化してその後溶媒を除去することも可能である。
【0070】
具体的には、本発明による組成物の成分B〜Dは、通常の方法またはマスターバッチとしてポリカーボネート中に取り込みが可能である。
【0071】
マスターバッチを使用して成分B〜Dを取り込む場合、単独または混合物としてが好ましい。
【0072】
本文脈において、本発明による組成物は、混合し得、均一化し得、続けて、スクリュー押出機(例えば、ZSK二軸 押出機、混練機あるいはBrabenderまたはBanburyの圧延機等の慣例的な装置で押出得る。押出後、押出物を冷却し、粉末状にしてもよい。同様に、個々の成分をプレミックスし、かつ、次いで残留出発材料を単独および/または同様に混合して添加することも可能である。
【0073】
メルト中でプレミックスを組み合わせて混ぜることは、同様に射出成形機の可塑化装置中で達成してもよい。この場合、メルトは後続の工程で直接的に成形品へ変換される。
【0074】
プラスチック材料成形物は、射出成形によって製造することが好ましい。
【0075】
ポリカーボネート組成物は多層システムを製造するのに好適である。これは、ポリカーボネート組成物を、プラスチック材料から作られた成形品の上の1つ以上の層に適用することを含んでなる。適用は、成形品の成形と同時または直後に実施してもよい(例えば、ホイルインサート成形、共押出または多成分射出成形による)。しかしながら、成形済みの本体に適用してもよい(例えば、フィルムでの積層、既存の成形品の被覆的なオーバー成形または溶液での被覆による)。
【0076】
流動性向上のために添加したジグリセロールエステルを含んでなるポリカーボネート組成物は、例えば、ベゼル、ヘッドライトカバーまたはフレーム、レンズおよびコリメータまたはライトガイドの自動車部門における部品を製造するため、ならびに電気/電子(EE)部門およびIT部門におけるフレーム部品を製造するため、具体的には、厳しい流動性条件(薄肉用途)に従う用途に好適である。当該用途の例として、スクリーンまたはハウジング、例えば、ウルトラブックまたはLEDディスプレイ技術用フレーム(例えば、OLEDディスプレイまたはLCDディスプレイ、その他に電子インク装置)が挙げられる。さらなる用途は、スマートフォン、タブレット、ウルトラブック、ノートブックまたはノート型パソコン等の携帯通信端末のハウジング部品だけでなく、衛星ナビゲーション、スマートウォッチまたは心拍計、同様に薄肉設計の電気的用途、例えば家庭用および業務用ネットワークシステム およびスマートメーターハウジング部品である。