(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記比較が、前記試料応答曲線の曲率を表す係数を前記一連の係数と比較することと、前記試料応答曲線の傾斜を表す係数を前記一連の係数と異なる第2の一連の係数と比較することを含み、
前記検出が、前記試料応答曲線の曲率を表す前記係数の前記比較と、前記試料応答曲線の傾斜を表す前記係数の前記比較とに基づいて、体液試料内の一時誤りを検出することを含む、請求項1に記載のシステム。
前記一時誤り検出アプリケーションが、前記プロセッシング一時誤り検出器によって、体液試料内の前記分析物の濃度に対応する前記試料応答曲線の前記係数に基づいて前記一連の係数を修正するように実行可能である、請求項5に記載のシステム。
一連の係数ライブラリを更に含み、前記ライブラリが、体液試料内の一時誤りを検出するために使用される特定の分析物に関する一連の係数を提供する、請求項12に記載の自動臨床分析機器。
前記分析物濃度測定アプリケーションが、センサ通信モジュール、データ点記録モジュール、データ点選択モジュール、曲線適合モジュール、外挿モジュール、検証モジュール、分析物濃度報告モジュール、及び曲線適合品質モジュールのうちの1つ又は複数を更に含む、請求項12に記載の自動臨床分析機器。
【発明を実施するための形態】
【0030】
説明
添付図面と共に読むべき以下の説明によって本発明がより完全に理解される。この説明では、本発明の様々な実施形態の中で同様の番号が同様の要素を指す。この説明の中で、特許請求の範囲に記載の本発明を実施形態に関して説明する。本明細書に記載する方法及びシステムは例示に過ぎず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなしに改変を加えることができることを当業者なら容易に理解されよう。
【0031】
図1a及び
図1bは、患者から採取される体液試料(例えば全血)内のカリウム、クロライド、ナトリウム、グルコース、乳酸、クレアチニン、クレアチン、尿素、O2、CO2等の分析物を測定するための自動臨床分析機器102の一例を示す。この自動臨床分析機器は、以下センサ140と全般的に呼ぶ1つ又は複数のセンサ140A〜Nと通信するように概して構成される。自動臨床分析機器の様々な例において、センサ140は、分析物に曝露されることに応じて電圧測定信号又は電流測定信号を生成する電気化学センサであり得る。様々な例において、第1のセンサ140Aが体液試料内の第1の分析物に応答することができ、第2のセンサ140Bが体液試料内の第2の分析物に応答することができ、n番目のセンサ140Nは体液試料内のn番目の分析物に応答することができ、その後も同様に続く。センサ140に関する更なる詳細を以下に示す。
【0032】
オペレータ(例えば医療従事者)が体液試料を自動臨床分析機器102内に投入し、特定の分析物に関する試料測定過程(分析)を開始する。具体的には、この操作は自動臨床分析機器102に通信可能に結合されるキーボードやマウス等のユーザインタフェース170を使用してプロセスを開始する。分析物の体液試料を分析する際、自動臨床分析機器102は体液試料内の一時誤りを検出することができる。
限定的でなく、体液試料内の気泡、血栓、他の妨害物質
、装置の状態変化、および測定環境の変化を含む、一時誤りは試料測定における誤り、例えば分析物の誤った濃度の原因となり得る。センサの応答曲線の形状に基づく、体液試料内の一時誤りを検出するための手法を以下に記載する。
【0033】
センサ140は、体液試料内の分析物を感知することに応答して信号を生成する。生成される信号はセンサの応答曲線を作成するために使用され得る(以下でより詳細に説明する)。応答曲線は、対数方程式及び二次方程式を含む方程式によって数学的に表すことができる。方程式の例は、応答曲線の曲率を表す係数、応答曲線の傾斜を表す係数、又はその両方を含み得る。
【0034】
方程式の係数が一連の係数内に収まる場合、応答曲線は「良い」形状を有するものとして定められる。方程式の係数が一連の係数から外れる場合、応答曲線は「悪い」形状を有するものとして定められる。センサ140の応答曲線が良い形状を有する場合、自動臨床分析機器102は体液試料内に一時誤りがないと判定する。センサ140の応答曲線が悪い形状を有する場合、自動臨床分析機器102は体液試料内に一時誤りがあると判定する。自動臨床分析機器102は、体液試料内に一時誤りがあるかどうかをオペレータに知らせる。例えばその通知は、自動臨床分析機器102に通信可能に結合されるディスプレイ172を使用してオペレータに提示される。
【0035】
分析物を分析する際、自動臨床分析機器102は、センサ140によって生成される信号に基づいて分析物の濃度を決定することもできる。好都合の例では、以下でより詳細に説明するように、試料処理能力を高めるための手法に従って分析物の濃度が決定される。自動臨床分析機器102は、分析物の濃度を例えばディスプレイ172によってオペレータに知らせる。一部の事例では、自動臨床分析機器102が体液試料内の一時誤りを検出すると、自動臨床分析機器102は試料測定過程を停止し、分析物の濃度を明らかにしない。
【0036】
図1a及び
図1bについて続け、自動臨床分析機器102は、プロセッサ104、メモリ106、プロセッシング一時誤り検出器108、分析物濃度測定アプリケーション110、一時誤り検出アプリケーション128、及び一連の係数ライブラリ130を含む。自動臨床分析機器102の一部の例では、プロセッサ104がプロセッシング一時誤り検出器108を含む。メモリ106は、分析物濃度測定アプリケーション110、一時誤り検出アプリケーション128、及び一連の係数ライブラリ130を記憶する。自動臨床分析機器102の動作については、プロセッシング一時誤り検出器108及び一時誤り検出アプリケーション128についての解説から開始して以下でより詳細に説明している。分析物濃度測定アプリケーション110については本開示の後半で解説している。
【0037】
プロセッシング一時誤り検出器又は単純に「一時誤り検出器」108は、一時誤り検出アプリケーション128を実行する。図示のように、一時誤り検出アプリケーション128の一例は、センサの応答曲線の形状に基づく体液試料内の一時誤りを検出するための特定の機能又はタスクを実行するように構成される比較モジュール150及び検出モジュール152を含む。他の例は更に多くの又は少ないモジュールを含む。一時誤り検出器108の動作については、
図9の機能ブロック図及び
図10の流れ図に関して以下で説明している。
【0038】
図9は、一時誤り検出器108の一例を示す。一時誤り検出器108は、図示のように通信可能に結合される比較モジュール150及び検出モジュール152を含む。一時誤り検出器108は、センサの応答曲線を表す方程式156を受信するためのインタフェース154を更に含む。一部の使用事例では、分析物濃度測定アプリケーション110によって決定されるときインタフェース154が方程式156を受信する。有利には、このことは体液試料内の一時誤りの実時間の又はほぼ実時間の検出を可能にする。例えば自動臨床分析機器102は、検出される一時誤りを試料測定過程中にオペレータに知らせる。他の使用事例では、インタフェース154が過去に決定された方程式を受信する。試料の一括(即ち複数の)処理が望ましい場合、一時誤りの非同期検出が有益であり得る。例えば、一時誤りを検出するために別個の器具によって決定された方程式が自動臨床分析機器102に送信される。図示のように、一連の係数ライブラリは体液試料内の一時誤りを検出するために使用される特定の分析物に関する一連の係数158を提供する。
【0039】
図10は、体液試料内の一時誤りを検出するためのルーチン500の一例を示す。ルーチン500は、応答曲線を表す方程式156が比較モジュール150に与えられる操作502から始まる。応答曲線は、体液試料内の特定の分析物を感知するセンサに関するものであり、参照し易いように「試験中の応答曲線」と呼ぶ。方程式156は、試験中の応答曲線の曲率を表す係数、試験中の応答曲線の傾斜を表す係数、又はその両方を含み得る。
【0040】
操作504で、比較モジュール150の好都合の例が(曲率又は傾斜を表す)係数を一連の係数158に対して比較する。比較操作504については
図11aに関してより詳細に説明する。
図11aは、とりわけ体液試料内の酸素を感知するセンサに関する一連の係数602の一例のグラフ表現を示す。係数値をグラフの横軸上に示し、酸素濃度値をグラフの縦軸上に示す。一連の係数602は、酸素濃度の変化と共にどちらも変わる下限604及び上限606を含む。
【0041】
図示のように、点Aは下限604未満の係数値を有し、一連の係数602の外側にある。点Bは上限606を上回る係数値を有し、一連の係数602の外側にある。点A及び点Bは一連の係数602の外側にあるので、比較モジュール150はこれらの点の何れかの係数値を有する試験中の応答曲線は悪い形状を有すると判定する。点Cは下限604と上限606との間の係数値を有し、一連の係数602の内側にある。点Cが一連の係数602の内側にあるので、比較モジュール150は点Cの係数値を有する試験中の応答曲線は良い形状を有すると判定する。
【0042】
図9及び
図10に戻り、操作506で、比較結果160(即ち試験中の応答曲線が良い形状を有するのか悪い形状を有するのか)に基づき、検出モジュール152が体液試料内に一時誤りがあるかどうかを検出し、検出162(即ち一時誤りが検出されたか検出されなかったか)を返す。試験中の応答曲線の係数が一連の係数の内側にある場合、検出モジュール152の好都合の例は体液試料内に一時誤りがないと識別する。試験中の応答曲線の係数が一連の係数の外側にある場合、検出モジュール152は体液試料内に一時誤りがあると識別する。ルーチン500は、検出モジュール152が検出162(即ち一時誤りが検出されたか検出されなかったか)を返す操作508で終わる。
【0043】
試験中の応答曲線が良い形状を有するのか悪い形状を有するのかを判定するとき2つ以上の係数を考慮することにより、一時誤り検出器108の有用性を更に高めることができる。一時誤り検出器108の好都合の例では、比較モジュール150が、試験中の応答曲線の曲率を表す係数を第1の一連の係数と比較し、試験中の応答曲線の傾斜を表す係数を第2の一連の係数と比較する。検出モジュール152は、曲率の比較結果(第1の比較)及び傾斜の比較結果(第2の比較)に基づいて体液試料内に一時誤りがあるかどうかを判定する。検出モジュール152は、それらの結果を例えば等しいように又は異なるように重み付けすることによって組み合わせる。検出過程内に追加の決定要素又は因子を含めることが有利であり、その理由はそのように含めることで一時誤りを更なる粒度で検出できるようになるからである。
【0044】
体液試料内の一時誤りを検出すると、自動臨床分析機器102の好都合の例が試料測定過程を終了し、視覚アラーム及び/又は可聴アラームによって(例えば
図1のモニタ172によって)技師(オペレータ)に報告する。このアラームは、一時誤り検出器108がその分析物についてその体液試料に関する一時誤りを検出したことを技師に知らせる。自動臨床分析機器102の別の例は試料測定過程を続行し、その分析物に関する体液試料の結果が潜在的に一時誤りによって損なわれていることを視覚アラーム及び/又は可聴アラームによって(例えば
図1のモニタ172によって)技師(オペレータ)に知らせる。
【0045】
以下でより詳細に説明するように、体液試料内に一時誤りがないと判定すると、自動臨床分析機器102の別の好都合の例が方程式156に基づいて体液試料内の分析物の濃度を決定する。有利にはこの形態は、濃度が不正確に計算されることを引き起こし得る一時誤りがない場合にのみ濃度を計算することにより、処理時間及び資源を節約することができる。
【0046】
自動臨床分析機器102の別の例は、方程式156に基づいて体液試料内の分析物の濃度を両方決定し(以下でより詳細に説明する)、体液試料内に一時誤りがあるかどうかを検出する。有利には、自動臨床分析機器102のこの例は、決定した濃度内に一時誤りがあるかどうかを識別し、有用性自動臨床分析機器102を改善する。
【0047】
次に、過去に収集された試料から一連の係数を作成するための手続きの一例について、
図11aから
図11cに関して説明する。過去に収集された試料は、体液試料及び様々な濃度における特定の分析物の標準水溶液を含む。過去に収集された試料のそれぞれの分析物濃度を測定する。次いで、許容可能な分析物精度限界の範囲内に含まれるように試料測定を検証する。当然ながら、この検証は幾つかの良く知られている技法の何れか1つ、例えば幾つかの同一の分析機器を使用して同じ試料を試験することに従って実行され得る。この手続きの例は或る特定の検証技法に限定されない。
【0048】
応答曲線を表す方程式を決定することを含め、過去に収集された試料の分析物濃度を測定する間に生成される応答曲線を分析する。同様の又は同じ測定分析物濃度を有する過去に収集された試料(例えばプラスマイナス5パーセントの濃度を有する試料は同様と見なす)に関連する方程式の係数について平均係数を決定する。応答曲線の下限及び上限を決定するために、様々な測定分析物濃度に関する平均係数を使用する。
【0049】
図11aを参照し、図中に示す各データ点は特定の分析物濃度に関する平均係数である。一例として、特定の分析物濃度に関する平均係数608では、一連の係数602の下限点610が、平均係数608からの負の標準偏差の選択された第1の数612として定められる。一連の係数602の上限点614は、平均係数608からの標準偏差の選択された第2の数616として定められる。一部の例では、標準偏差(又はシグマ)の選択された数が4から6であり得る。標準偏差の選択された第1の数及び選択された第2の数(612、616)は、分析物に応じて同じでも(即ち同じ大きさを有しても)異なっても(即ち異なる大きさを有しても)良い。様々な分析物濃度のそれぞれについて、対象濃度における一連の係数602の下限点及び上限点を同じように決定する。
【0050】
一連の係数602の下限604は、下限点を通る最良適合線を計算することによって決定される。一連の係数602の上限606は、上限点を通る最良適合線を計算することによって決定される。見て分かるように、下限604及び上限606は酸素濃度と共に変化する。例えば100の酸素濃度において、下限は−30であり上限は+45である。酸素濃度が500に変わると、一連の係数の下限が−85に変わり、上限が+10に変わる。
【0051】
分析物にもよるが、一連の係数の下限及び/又は上限は分析物の濃度変化に対して不変であり得る(即ち限界が分析物濃度と共に変化しない)。例えば
図11bは、ナトリウムに関する一連の係数640の一例を示し、ここでは下限642及び上限644がナトリウム濃度と共に変化しない。全てのナトリウム濃度について、下限642は−1.75に固定され、上限644は3に固定されている。
図11cは、グルコースに関する一連の係数660の一例を示す。一連の係数660の下限662はグルコース濃度と共に変化せず、−2に固定されている。一連の係数660の上限664はグルコース濃度と共に変化する。一連の係数660の上限664は、グルコース濃度の増加と共に(ほぼ)線形に増加する。
【0052】
次に、体液試料等の試料内の分析物を分析するためのセンサの終点応答時間を予測することを含む、自動臨床分析機器内の試料処理能力を高めるための手法、及び外れ値を検出し曲線適合方程式内のパラメータに条件を付けることによって測定信頼性を改善するための手法に移る。本明細書に記載の様々な実施形態によれば、本発明は、試料に曝露されることに応じてセンサによって生成されるデータ信号から導出される曲線適合方程式を決定することによってセンサの終点応答を外挿するための技法について説明する。様々な実施形態において、曲線適合方程式は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという一般形式を有する二次対数多項式であり、式中、a、b、及びcは、変換されたデータ点に基づいて求められる多項式係数であり、s(t)は特定の時点tにおける計算されたセンサ出力である。これにより試料分析システムは、試料を分析し、試料内でセンサによって測定される分析物の濃度を決定するために、センサの終点応答時間の全持続時間が終了するのを待つ必要がなくなり得る。更に、センサ応答時間、つまり試料曝露時間を短縮することによってセンサの回復にかかる時間であるセンサ回復時間も短縮され、処理量を増やすことが可能になる。
【0053】
本教示を更に説明するために以下の定義を与える。
【0054】
本明細書で使用するとき「臨界点」は局所的極点及び変曲点を指す。
【0055】
本明細書で使用するとき「局所的極点」は、一次導関数が存在し且つゼロである関数内の点を指す。
【0056】
本明細書で使用するとき「変曲点」は、二次導関数が符号を変える関数内の点を指す。
【0057】
本明細書で使用するとき「外れ値」は、残りのデータから数値的に遠い試料データ点を指す。
【0058】
本明細書で使用するとき「残差」とは、試料データ点と曲線適合方程式によって得られる推定関数値との差である。
【0059】
本明細書で使用するとき「スチューデント化残差」とは、残差をその標準偏差の推定値で除算して得られる量である。
【0060】
本明細書で使用するとき「DFFITS」とは、統計的回帰内の点の影響度を定量化する式である。古典的定義では、DFFITSはスチューデント化残差を
【数1】
倍したものに等しく、式中、h
iiはその点のテコ値であり、テコ値h
iiは、i番目の適合値に対してi番目の観察値y
iによって及ぼされるテコ値の大きさを識別するハット行列Hの要素h
iiとして定義される。統計的回帰内の点の影響度を定量化する式の別のバージョンは、回帰適合から個別点を除去することによって生じる外挿点における変化を示す測度である。かかる測度の例は次式:
【数2】
の通りであり、式中、55は外挿点に対応する時間である。log(t)における線形適合の場合(Aはハット行列に関係する行列であり、A=(X
T*X)
−1として定められる)、
【数3】
が成立する。log(t)における二次適合の場合。上記の式は古典的なDFITTS又はDFFITS
2の変形である。
【0061】
本明細書で使用するとき「DFFITS」は、回帰適合から個別点を除去することによって生じる外挿点における変化を示す古典的定義又は測度を指す。
【0062】
本明細書で使用するとき、投影行列と呼ばれることもある「ハット行列H」は、観察値のベクトルを適合値のベクトルにマップする行列である。
【0063】
図1aに戻り、分析物濃度測定アプリケーション110はセンサ140と通信するように概して構成され得る。分析物濃度測定アプリケーション110は、試料内の分析物の濃度を決定するための特定の機能又はタスクを実行するように構成される1つ又は複数のモジュールを含み得る。様々な実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション110は、センサ通信モジュール112、データ点報告モジュール114、データ点選択モジュール116、曲線適合モジュール118、外挿モジュール120、検証モジュール122、分析物濃度報告モジュール124、及び曲線適合品質モジュール126を含み得る。様々な実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション110は、追加のタスクを実行するための追加のモジュールを含むことができ、又は上記のモジュールの一部だけを含み得ることを理解すべきである。
【0064】
分析物濃度測定アプリケーション110は、試料内の分析物に曝露されるときセンサによって生成されるデータ信号を受信し、データ信号から抽出されるデータ点を記録し、時間の関数の尺度上、一実施形態では時間の対数関数の尺度上のデータ点を評価し、評価されるデータ点に一致する曲線を決定し、センサの終点応答を外挿するために利用できる曲線適合方程式を決定し、センサの外挿された終点応答に基づいて分析物の濃度を正確に推定するように概して構成され得る。
【0065】
様々な実施形態において、センサ通信モジュール112はセンサ140からデータ信号を受信するように構成され得る。センサが電気化学センサであり得る一部の実施形態では、データ信号はアンペア単位で測定され得る電流測定出力又はボルト単位で測定され得る電圧測定出力を表し得る。様々な実施形態において、これらのデータ信号は経時変化する可能性があり、時間の経過と共に最終的に安定する出力値を概して生成し得る。安定した出力値は、典型的にはセンサの終点応答であり得る。分析物に曝露されることに応じてデータ出力信号を生成できる任意の種類のセンサがセンサ140として利用され得ることを理解すべきである。
【0066】
データ点記録モジュール114は、生成されるデータ信号からデータ点を捕捉して記録するように構成され得る。データ点は、自動臨床分析機器102のメモリ内に又は分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能な他の任意の記憶媒体に記憶され得る。様々な実施形態において、データ点記録モジュール114は、n番目の固定期間ごとにデータ信号の測定値を記録し得る。固定期間は、分析物濃度測定アプリケーション110によって事前に定義され得る。固定期間は、既存のシステムの技術的制限によって定義されても良く、或る特定の範囲に限定されることは意図しないことを理解すべきである。但し一部の実施形態では、固定期間は1ミリ秒から数秒の範囲に及び得る。代替的実施形態では、データ点記録モジュール114が無作為の又は可変の期間後にデータ信号の測定値を記録し得る。
【0067】
データ点選択モジュール116は、記録されたデータ点から関連するデータ点を選択するように構成され得る。様々な実施形態において、データ点選択モジュール116は、時間の関数の尺度上、一実施形態では時間の対数関数の尺度上にプロットされるとき、選択されるデータ点に密に適合し、且つ許容限界内のセンサの終点応答の予測ももたらす曲線を分析物濃度測定アプリケーションが決定することを可能にし得るデータ点を選択することができる。様々な実施形態において、最も正確な結果を与え得るデータ点が経験的に決定される時間範囲から選択されても良く、センサ及び分析物の特性に応じて異なり得る。
【0068】
様々な実施形態において、データ点選択モジュール116は、記録されたデータ点から動体領域時間範囲に対応する一連のデータ点を選択し得る。動体領域時間範囲とは、データ点がセンサ応答の動体領域内にある任意の時間範囲を指す。典型的には、動体領域は、センサが分析物に曝露される第1の時点から、センサによって生成されるデータ信号がそのセンサの終点応答と実質的に同様でない第2の時点、即ちセンサ応答が平衡に達する前までに生じる。言い換えれば、センサによって生成されるデータ信号がセンサの終点応答と実質的に同様になると、そのデータ信号は平衡領域内で生成されている。様々な実施形態において、データ点選択モジュール116は、動体領域時間範囲の一部に対応する一連のデータ点を選択し得る。一実施形態では、この時間範囲はセンサが分析物に曝露されてから約15秒後に開始し得る。更に、この時間範囲はセンサが分析物に曝露されてから約30秒後に終了し得る。どのデータ点を選択するのかに関する更なる詳細を
図4に関して以下に示す。
【0069】
一実施形態では、曲線適合モジュール118が、選択されたデータ点を時間の関数の尺度、一実施形態では時間の対数関数の尺度に変換するように構成されても良く、それにより変換されたデータ点を時間の関数の尺度上で評価することができる。曲線適合モジュールはその後、評価されたデータ点に密に一致する曲線を決定し得る。曲線適合モジュールは、回帰分析法や最小二乗法等の従来の曲線適合方法を使用し得る。
【0070】
様々な実施形態において、曲線を表す方程式(曲線適合方程式とも呼ばれる)は時間の関数、一実施形態では時間の対数(log(t))の多項式であり、臨界点が生じる時間の関数(一実施形態では時間の対数)の所定値が与えられ、その所定値は多項式係数間の関係を提供する。
【0071】
様々な実施形態において、曲線適合モジュール118は、選択されたデータ点を時間の対数関数の尺度上にプロットし、プロットされたデータ点に密に一致し又は適合する曲線を決定し得る。
【0072】
曲線を決定すると、曲線適合モジュールはその曲線に対応する曲線適合方程式を決定することができる。様々な実施形態において、曲線適合方程式はs(t)=a
*(log(t))
∧2+b
*log(t)+cの形式であり、式中tは時間を表し、a、b、及びcは二次多項式の適合パラメータであり、臨界点は極点であり、所定値(V)はb=−2aVの形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供し、適合パラメータa及びcは最初のセンサ応答に基づいて決定される。使用されるセンサ構成ごとに経験的に決定されるa、b、及びcの正確な値は分析物の濃度、試料の大きさ、温度、センサ機器構成の幾何学的配置、及び他のパラメータに部分的に依存する。
【0073】
一例では本発明がその例に限定されず、臨界点が生じる時間の所定値は終点が望ましい時間であるように選択される。本発明の限定ではない他の例では、終点時間を上回る時間が所定時間として選択され得る。
【0074】
外挿モジュール120は、曲線の平衡領域内の時間について曲線適合方程式を解くことによってセンサの終点応答を外挿するように構成され得る。様々な実施形態において、分析物濃度測定アプリケーション102は、経験的方法を利用して曲線の平衡領域内の時間を求め、次いで、曲線適合方程式を解くための既定の時間として決定した平衡領域時間を記憶することができる。
【0075】
検証モジュール122は、変動係数(CV)と決定係数(R
2)とを決定することにより、計算された終点応答を検証するように構成され得る。変動係数(CV)及び決定係数(R
2)を決定するための以下の公式は当技術分野で良く知られており、計算される終点応答を検証するために検証モジュール122によって使用され得る。
【0076】
CV=標準偏差(y
i)/平均(y
i)、及び
R
2=1−(合計((y
i−f
i)
2)/(合計((y
i−平均(y
i))
2)、
式中、y
i及びf
iはそれぞれ、指定された時点における観察値及び計算値である。
【0077】
曲線適合品質モジュール126は、分析物に対応する曲線適合方程式を決定しその有用性を改善するように構成され得る。1つ又は複数の実施形態では、曲線適合品質モジュール126は、曲線適合方程式が得られた後で以下に記載の分析を行うように構成され得る。曲線適合品質モジュール126は、最大残差を有する外れ値候補を決定するように構成され得る。スチューデント化残差やディクソン法等、最大残差を有する外れ値候補を決定するための従来の方法を使用することができる。最大残差を有する外れ値候補が選択されると、その外れ値候補の残差が残差限界と比較される。残差限界は過去の経験、分析的考察、又は他の手法から事前に決定することができる。外れ値候補の残差が残差限界を上回る場合、その外れ値候補は外れ値として分類される。最大残差を有する外れ値候補の残差が残差限界以下である場合、曲線適合品質モジュール126は、同様の残差を有する他の残差候補も残差限界内にあることから、別のモジュールに操作を渡すことができる。外れ値候補が外れ値として分類される場合、曲線適合品質モジュール126は、外れ値が曲線適合方程式のパラメータに及ぼす影響の測度を得るように構成される。これだけに限定されないが、クック距離、DFFITS、DFBETAS等の外れ値の影響の測度を得るための従来の方法を使用することができる。外れ値の影響の測度は所定の測度限界と比較される。測度限界は過去の経験、分析的考察、又は他の手法から事前に決定することができる。外れ値の影響の測度が所定の測定限界を上回る場合、最初にゼロに設定される外れ値カウントが増分され、この外れ値カウントが所定の外れ値限界と比較され、その外れ値がデータ点から除去される。データ点から外れ値又は外れ値候補を除去することによって1組の修正されたデータ点が得られ、上記の分析が再び実行される。
【0078】
本開示により、センサ応答時間が短縮されるので試料曝露時間も短縮されることを理解すべきである。試料曝露時間が短縮される結果、センサ、特にこれだけに限定されないがグルコース及び乳酸を測定するためのセンサを含む酵素センサのセンサ回復時間を短縮することができる。センサがより速く回復し得るので、処理量の増大を実現することができる。
【0079】
例証
以下の例示的実施形態は本発明を更に説明するために示すが、本発明はこれらの例示的実施形態だけに限定されないことに留意すべきである。
【0080】
分析物濃度記録モジュール124は、計算された終点応答を用いて試料内の分析物の濃度を決定し、CV及びR
2が許容限界内にないと検証モジュール122が判定する場合、分析物の濃度をフラグと共に報告する。逆に、CV及びR
2が許容限界内にある場合、分析物濃度記録モジュール124は分析物の濃度をフラグなしで報告し得る。本発明の方法に従って測定され得る分析物は、これだけに限定されないが、例えばヘマトクリット、カルシウム、カリウム、クロライド、ナトリウム、グルコース、乳酸、クレアチニン、クレアチン、尿素のイオン濃度、O2及び/若しくはCO2の分圧、又はそのためにセンサが存在する他の任意の分析物を含む。様々な実施形態において、フラグは、フラグや記号として視覚的に表わされ得るデータビット、ビープ音やトーンとして聴覚的に表わされ得るデータビット、又はCV若しくはR
2が許容限界内にないことを利用者に示し得る他の任意の明示手段によるデータビットであり得る。
【0081】
次に
図2を参照し、グルコース濃度を測定するためのセンサによって生成される実験データに関する電圧対時間の一例示的グラフが示されている。特にこのグラフは、センサ140によって生成されるデータ信号から捕捉される一連のデータ点202A〜Nを示している。これらのデータ点は、電圧、電流、電荷等の出力値を示す。様々な実施形態において、生成された信号からのデータ点を時間の経過と共に記録し、時間に対してプロットすることができる。
図2に示すグラフは、記録されたデータ点202A〜Nを時間に対してプロットすることによって生成される。この実施形態では、データ点が毎秒記録される。但し、様々な実施形態においてデータ点は1秒を下回る又は1秒を上回る時間間隔において記録され得る。
【0082】
1秒未満の時間間隔でデータ点を記録することによって生成されるデータが増え、そのことはより正確なプロットを可能にし得るが更なる計算資源を利用する可能性もあり、それはシステム資源によっては望ましくない場合があることを理解すべきである。或いは、1秒を大幅に上回る時間間隔で記録されるデータ点はより不正確なグラフをもたらし得る。何れにせよ、データ点間の時間間隔の長さは、センサの終点応答時間、計算資源に関する制限、センサ及び分析物の性質等の様々な要因に基づいて決定され得る実装上の選択である。
【0083】
次に
図3を参照し、
図2の実験的なグルコースデータの一部を使用する電圧対時間の対数関数の一例示的グラフが示されている。上記のように、センサから受信されるデータ信号に対応するデータ点が記録されると、データ点選択モジュール116が記録されたデータ点から関連するデータ点を選択し得る。次いで、選択されたデータ点は底10や自然対数等の対数目盛に変換され得る。データ点を対数目盛に変換すると、変換されたデータ点302A〜Nが電圧値対時間の対数関数としてプロットされる。
【0084】
図3に示すように、変換されたデータ点302A〜Nが電圧対時間の対数関数の尺度上にプロットされると、グラフ300が示され得る。これにより、曲線適合モジュール118が変換されたデータ点302A〜Nに密に一致する曲線306を決定できるようになる。次いで曲線適合モジュール118は、センサ技術に利用される既存の曲線適合方程式よりも単純な曲線適合方程式を曲線306に基づいて決定することができる。既存の曲線適合方程式は非線形方程式の根を見つけることを必要とするのに対し、本明細書で開示する技法はかかる根を見つけることを必要としない。非線形方程式の根を見つけることは計算的に負荷が大きく、高い処理量を有するシステムを扱う場合、その問題の深刻さが一層明らかとなる。その結果、非線形方程式の根を見つけることを必要としない曲線適合方程式を利用することにより、自動臨床分析機器10は既存のシステムよりも少ない計算資源を必要とする。より少ない計算資源を必要とすることは、これだけに限定されないが処理量の増大、製造費の削減、並びに物理的及びエネルギフットプリントの低減を含む既存のシステムに勝る様々な利点をもたらす。更に、データ点をプロットしたりデータ点に適合する曲線を描いたりする必要なしに曲線適合方程式を決定することができるので、表示するステップは不要であり得ることを理解すべきである。
【0085】
様々な実施形態によれば、曲線適合方程式は典型的には以下の一般形式を有する二次対数方程式とすることができ、
s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+c
式中、a、b、及びcは変換されたデータ点に基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は特定の時点tにおける計算されたセンサ出力である。一実施形態では、臨界点が生じる時間の対数の所定値が与えられ、その所定値は多項式係数間の関係を提供する。使用されるセンサ構成ごとに実験的に又は分析的に(例えば回帰分析を使用して)決定されるa、b、及びcの正確な値は分析物の濃度、試料の大きさ、温度、センサトランスデューサ構成の幾何学的配置、及び他のパラメータに部分的に依存する。一例では、臨界点は極点であり、所定値(V)はb=−2aVの形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供し、適合パラメータa及びcは曲線適合技法(これだけに限定されないが回帰分析法や最小二乗法等)によってセンサ応答に基づいて決定される。或るセンサ構成についてa、b、及びcの値が決定されると、曲線適合方程式を使用して試料内の分析物の濃度を素早く推定することができる。本発明によれば、分析物の濃度を決定するためにセンサが最終的な読取値を提供するのを待つ必要がない。
【0086】
変換されるデータ点を選択することが曲線適合方程式の精度を決定する上で重要な役割を果たすことを理解すべきである。しかし、従来の常識は曲線適合を決定するのに利用されるデータ点の数が多いほど良いと示唆する。
【0087】
本発明は、その常識が必ずしも本当ではないことを開示する。むしろ、データ点の選択元範囲の方が重要な役割を果たし得る。様々な実施形態において、時間の対数関数の尺度に変換されるように選択されるデータ点は、分析物がセンサに最初に曝露されてから15〜30秒後から生成されるデータ点だった。他の実施形態では、分析物がセンサに最初に曝露されてから15〜35秒後からのデータ点が使用されたが、精度に大きな改善は見られなかった。同様に、分析物がセンサに最初に曝露されてから10〜25秒後からのデータ点も使用されたが、十分に正確ではない幾らかの結果をもたらした。選択されるデータ点は、幾つかある要因の中で特にセンサ及び分析物の種類と終点応答時間に基づいて変わり得ることを理解すべきである。様々な実施形態において、データ点を選択するための時間範囲は経験的方法によって決定され得る。
【0088】
上記のように、センサ応答曲線の平衡領域内の時間について方程式を解くことによってセンサの終点応答値を計算することができる。曲線適合方程式を使用して終点の分析物に関係する値が計算されると、例えば較正値(例えば割当量、較正点、差分値等)を含む方法を使用し、終点応答値が分析物の濃度に対応する値に変換される。
【0089】
次に
図4を参照し、試料内の分析物の濃度を推定するための一例示的論理流れ図が示されている。ルーチン400は、センサ140が分析物を含む試料に曝露される操作402から始まる。上記のように、電気化学センサ140は試料内の分析物の濃度レベルに応答し得る。
【0090】
ルーチン400は、操作402から、センサ140が分析物への曝露に応じて1つ又は複数のデータ信号を生成し得る操作404に進む。様々な実施形態において、データ信号は、電圧、電流、電荷、又は他の任意の種類の測定可能な出力の形を取り得る。分析物に曝露されている間、これらのデータ信号がセンサ140によって継続的に生成される。
【0091】
ルーチン400は、操作404から、データ点記録モジュール114がデータ信号からデータ点を記録し得る操作406に進む。これらのデータ点が記録される粒度は、幾つかある要因の中で特にセンサの種類、分析物の量、試料の大きさ、温度によって決定され得る。一実施形態では、データ信号が毎秒記録される。但し、これらのデータ点が記録される頻度は1データ点/秒よりも多くても少なくても良いことを理解すべきである。データ点は、自動臨床分析機器102のメモリ内に記憶することができ、又は分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能な場所に遠隔的に記憶することができる。
【0092】
ルーチン400は、操作406から、データ点選択モジュール116がデータ点記録モジュール114によって記録されたデータ点の一部を選択し得る操作408に進む。様々な実施形態において、データ点選択モジュール116は、未来の或る時点に外挿されるとき、センサ140の実際の結果に近似する結果を生成する方程式を有する曲線を決定するのをプロット時に助け得るデータ点を選択することができる。様々な実施形態において、データ点選択モジュール116は任意の数のデータ点を選択し得る。データ点の選択時にデータ点選択モジュール116が考慮する必要がある相殺バランスがある。選択するデータ点が多すぎると、外れ値の数も増える可能性があり、適合される曲線の精度に悪影響を及ぼすことがあり、更にはあまりに遠い未来のデータ点を選択することは、自動臨床分析機器102が分析物の濃度を決定し得る時間を遅らせる可能性がある。とりわけ、記録される最初の幾つかのデータ点を選択することは、自動臨床分析機器102に不正確な結果を生成させ得る。その理由は、分析物に最初に曝露されるとき、センサ140が幾つかある不所望の影響の中で特に雑音信号を発生させる可能性があるからである。従って、経験的方法に基づき、センサ140の最初の応答後に動体領域から選択されるデータ点が、精度に関して大幅に妥協することなしに最短時間で分析物の濃度を決定する必要性のバランスを取りながら、最も正確な結果をもたらし得る。
【0093】
ルーチン400は、操作408から、曲線適合モジュール118が特定の時点に対応する出力値を有する選択されたデータ点を時間の対数関数の単位に変換する操作410に進む。様々な実施形態において、対数目盛の底は、底10又は自然対数(ln e)であり得る。そうすることにより、プロットされる変換済みのデータ点によって生成される曲線がより正確になる可能性があり、既存の曲線適合方程式よりも少ないデータ点を利用する。
【0094】
ルーチン400は、操作410から、曲線適合モジュール118が変換されたデータ点をグラフ上にプロットし得る操作412に進む。様々な実施形態において、Y軸はセンサ140によって生成されるデータ信号から得られる出力値であり、X軸は時間の対数関数である。ルーチン400は、操作412から、曲線適合モジュール118がプロットされたブラフの曲線適合方程式を明らかにし得る操作414に進む。様々な実施形態において、曲線適合モジュール118は、s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+cという形式を有する二次対数多項式である曲線適合方程式を明らかにすることができ、式中、a、b、及びcは、変換されたデータ点に基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は特定の時点tにおける計算されたセンサ出力である。使用されるセンサ構成ごとに実験的に又は分析的に決定されるa、b、及びcの正確な値は分析物の濃度、試料の大きさ、温度、構成の幾何学的配置、及び他のパラメータに部分的に依存する。データ点に適合する曲線を決定するために、曲線適合モジュールは必ずしもデータ点をプロットしなくても良いことを理解すべきである。一部の実施形態では、曲線適合モジュール118は、データ点をプロットする必要なしにデータ点に適合する曲線を決定することができ得る。選択されたデータ点に適合する曲線及び対応する方程式を決定するために、市販の曲線適合ソフトウェアを利用することができる。
【0095】
ルーチン400は、操作414から、外挿モジュール120が平衡領域内の時間について曲線適合方程式を解くことによってセンサ140の計算された終点応答を外挿する操作416に進む。ルーチン400は、操作416から、検証モジュール122が精度に関して終点応答を検証する操作418に進む。一部の実施形態によれば、検証プロセスは、上記の変動係数(CV)及び決定係数(R
2)の式を使用し、CV及びR
2を決定することを含む。
【0096】
ルーチン400は、操作418から、CV及びR
2が自動臨床分析機器102によって事前に定められる許容限界内にあるかどうかを検証モジュール122が判定する操作420に進む。様々な実施形態において、これらの限界はCV及びR
2が許容範囲内に収まることを可能にすることができ、そのことは当業者によって知られ得る。一実施形態では、この限界はR
2が0.98から1の間に収まることを可能にし得る。決定係数(R
2)はデータと曲線適合関数とが如何に良く一致するのかを示す。R
2の値が近いほど一致度が高い。
【0097】
操作420において、CV、R
2、又はCVとR
2との両方が許容限界内にないと検証モジュール122が判定する場合、ルーチン400は操作422に進み、操作422では分析物濃度報告モジュール124が外挿された終点応答を使用して分析物の濃度を決定し、その結果が許容限界内にないことを示すフラグと共に分析物の濃度を報告する。
【0098】
但し、操作420においてCVとR
2との両方が許容限界内にあると検証モジュール122が判定する場合、ルーチン400は操作424に進み、操作424では分析物濃度報告モジュール124が外挿された終点応答を使用して分析物の濃度を決定し、分析物の濃度をフラグなしで報告する。ルーチン400は、操作422及び424から、操作426で終了する。
【0099】
様々な実施形態によれば、センサ140を較正するためのシステムを提供することが望ましい場合がある。センサを製造する際の不正確を修正し、それにより製造の時間と費用を低減するために、分析物の濃度を測定するための自己較正システムを使用することができる。加えて、自己較正システムは、自動臨床分析機器102のセンサ又は他の部品によって生成される小さな雑音を補償するために使用され得る。
【0100】
図5aを参照し、曲線適合方程式を決定しその有用性を改善するための一例示的流れ図が示されている。ルーチン400のもう1つの例は、センサ140が分析物を含む試料に曝露される操作402から始まる。上記のように、電気化学センサ140は試料内の分析物の濃度レベルに応答し得る。
【0101】
ルーチン400は、操作402から、センサ140が分析物への曝露に応じて1つ又は複数のデータ信号を生成し得る操作404に進む。様々な実施形態において、データ信号は、電圧、電流、電荷、又は他の任意の種類の測定可能な出力の形を取り得る。分析物に曝露されている間、これらのデータ信号がセンサ140によって継続的に生成される。次いでルーチン400は、上記のように操作406から410を経る。
【0102】
ルーチン400は、操作410から、選択されたデータ点の曲線適合方程式が決定される操作415に進む。曲線適合方程式は、これだけに限定されないが回帰分析法や最小二乗法等の従来の方法によって決定され得る。様々な実施形態によれば、曲線適合方程式は典型的には以下の一般形式を有する二次対数方程式とすることができ、
s(t)=a(log(t))
2+b(log(t))+c
式中、a、b、及びcは変換されたデータ点に基づいて決定される多項式係数であり、s(t)は特定の時点tにおける計算されたセンサ出力である。一実施形態では、臨界点が生じる時間の対数の所定値が与えられ、その所定値は多項式係数間の関係を提供する。使用されるセンサ構成ごとに実験的に又は分析的に(例えば回帰分析を使用して)決定されるa、b、及びcの正確な値は分析物の濃度、試料の大きさ、温度、センサトランスデューサ構成の幾何学的配置、及び他のパラメータに部分的に依存する。一例では、臨界点は局所的極点であり、所定値(V)はb=−2aVの形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供し、適合パラメータa及びcはセンサ応答に基づいて決定される。
【0103】
ルーチン400は、操作415から、外挿モジュール120が平衡領域内の時間について曲線適合方程式を解くことによってセンサ140の計算された終点応答を外挿する操作416に進む。ルーチン400は、操作416から、曲線適合品質モジュール126が曲線適合方程式を決定しその有用性を改善する操作430に進む。操作430に関する論理流れ図の実施形態を
図6a、
図6b、
図7a、
図7cに示す。
【0104】
分析物のデータを分析するための論理流れ図の別の実施形態を
図5bに示す。上記のように、
図1に示す自動臨床分析機器102内のモジュールの一部だけを使用する実施形態が本発明の範囲に含まれる。曲線適合方程式が外挿に使用されない場合でも、データ点に関する適合を表す曲線が使用され得る数多くの自動臨床分析機器がある。外挿が存在しない実施形態もこれらの教示の範囲に含まれることを強調するために、
図5bに示す実施形態では操作416を省略している。
【0105】
曲線適合方程式を決定しその有用性を改善するための論理流れ図の一実施形態を
図6a及び
図6bに示す。
図6aを参照し、図示の論理流れ図は、
図5a又は
図5bに示す流れ図から得られる曲線適合及びデータ点から、又は
図1のデータ点記録モジュール114、データ点選択モジュール116、及び曲線適合モジュール118から等しく得られる曲線適合及びデータ点から始まる。外れ値カウントは最初にゼロに設定される。最大残差を有する外れ値候補が決定される(操作440)。次いでこの論理流れ図は、外れ値候補の残差を所定の残差限界と比較することに進む(操作444)。次いで、外れ値候補の残差が所定の残差限界と比較される。最大残差を有する外れ値候補の残差が所定の残差限界以下である場合、他の任意の外れ値候補がより小さい残差を有し、所定の残差限界内にあるので操作が停止する。外れ値候補の残差が所定の残差限界を上回る場合、最大残差を有する外れ値候補が外れ値として分類される(操作448)。次いでこの論理流れ図は、曲線適合方程式のパラメータに対する外れ値の影響の測度を得ることに移る(操作450)。この論理流れ図は
図6bへと続く。
図6bを参照し、曲線適合方程式のパラメータに対する外れ値の影響の測度(操作450で得られる)が所定の測度限界と比較される。曲線適合方程式のパラメータに対する外れ値の影響の測度と所定の測度限界との比較が、曲線適合方程式のパラメータに対して外れ値が有意の影響を及ぼすことを示す場合、外れ値カウントが1増分され(操作454)、その外れ値カウントが所定の外れ値数限界と比較され(操作458)、その外れ値がデータ点から除去される(操作460)。外れ値カウントが外れ値数よりも大きい場合、そのデータ集合は見直しのために識別される。次いでこの論理流れ図は、外れ値が除去された新たな1組のデータ点を形成する(操作464)。一例では、その新たな1組のデータ点を曲線適合モジュール118内で使用し、曲線適合方程式のための新たな1組の曲線適合パラメータが得られる。次いでこの論理流れ図は、データ点の新たなデータ集合について最大残差を有する新たな外れ値候補を決定することに戻る(
図6aの操作440)。曲線適合方程式のパラメータに対する外れ値の影響の測度と所定の測度限界との比較が、曲線適合方程式のパラメータに対して外れ値が有意の影響を及ぼさないことを示す場合、この論理流れ図は、外れ値候補が除去された新たな点のデータ集合の形成に進む(操作464)。一例では、その新たな1組のデータ点を曲線適合モジュール118内で使用し、曲線適合方程式のための新たな1組の曲線適合パラメータが得られる。次いでこの論理流れ図は、データ点の新たなデータ集合について最大残差を有する新たな外れ値候補を決定することに戻る(
図6aの操作440)。ルーチン400の別の例は、全ての外れ値が識別されるまで続行するが、外れ値カウントが所定の外れ値数限界を上回る場合ルーチン400は停止され得る。
【0106】
曲線適合方程式を決定しその有用性を改善するための論理流れ図の一例示的実施形態を
図7a及び
図7bに示す。
図7aを参照し、図示の論理流れ図は、
図5a又は
図5bに示す流れ図から得られる曲線適合及びデータ点から、又は
図1のデータ点記録モジュール114、データ点選択モジュール116、及び曲線適合モジュール118から等しく得られる曲線適合及びデータ点から始まる。外れ値カウントは最初にゼロに設定される。外れ値カウントは最初にゼロに設定される。最大スチューデント化残差を有する外れ値候補が決定される(操作470)。次いでこの論理流れ図は、外れ値候補のスチューデント化残差を所定のスチューデント化残差限界と比較することに進む(操作474)。最大スチューデント化残差を有する外れ値候補のスチューデント化残差が所定のスチューデント化残差限界以下である場合、他の任意の外れ値候補がより小さいスチューデント化残差を有し、所定の残差限界内にあるので操作が停止する。外れ値候補のスチューデント化残差が所定のスチューデント化残差限界を上回る場合、最大スチューデント化残差を有する外れ値候補が外れ値として分類される(操作478)。次いでこの論理流れ図は、外れ値のDFFITS値を得ることに移る(操作480)。この論理流れ図は
図6bへと続く。
図7bを参照し、操作480で得られた外れ値のDFFITS値が所定のDFFITS限界と比較される。外れ値のDFFITS値と所定のDFFITS限界との比較が、曲線適合方程式のパラメータに対して外れ値が有意の影響を及ぼすことを示す場合、外れ値カウントが1増分され(操作484)、その外れ値カウントが所定の外れ値数限界と比較され(操作488)、その外れ値がデータ点から除去される(操作490)。外れ値カウントが外れ値数よりも大きい場合、そのデータ集合は見直しのために識別される。次いでこの論理流れ図は、外れ値が除去された新たな点のデータ集合を形成する(操作494)。一例では、その新たな1組のデータ点を曲線適合モジュール118内で使用し、曲線適合方程式のための新たな1組の曲線適合パラメータが得られる。次いでこの論理流れ図は、データ点の新たなデータ集合について最大スチューデント化残差を有する新たな外れ値候補を決定することに戻る(
図7aの操作470)。外れ値のDFFITS値と所定のDFFITS限界との比較が、曲線適合方程式のパラメータに対して外れ値が有意の影響を及ぼさないことを示す場合、この論理流れ図は、外れ値候補が除去された新たな点のデータ集合の形成に進む(操作494)。一例では、その新たな1組のデータ点を曲線適合モジュール118内で使用し、曲線適合方程式のための新たな1組の曲線適合パラメータが得られる。次いでこの論理流れ図は、データ点の新たなデータ集合について最大残差を有する新たな外れ値候補を決定することに戻る(
図7aの操作470)。ルーチン400の別の例は、全ての外れ値が識別されるまで続行するが、外れ値カウントが所定の外れ値数限界を上回る場合ルーチン400は停止され得る。
【0107】
ナトリウム濃度を測定するセンサによって生成される実験データに関する電圧対時間の一例示的グラフ表現を
図8aに示す。この例示的グラフ表現は、ナトリウムセンサ140によって生成されるデータ信号からの一連のデータ点捕捉を示す。図示のデータ点は、この例示的グラフ表現ではミリボルト単位で示されている出力値を示す。a=0であるax
2+bx+c形式の曲線適合方程式が曲線適合モジュール118から得られる。曲線適合方程式内で図示されている例示的グラフ表現では、−0.1126x−280.24である。以下で開示する例示的実施形態では、最大残差を有する外れ値候補を決定することが、最大スチューデント化残差を有するデータ点を決定することによって実行され、外れ値の影響の測度を得ることがDFFITS値を得ることによって実行される(この例示的実施形態では、DFFITSとは回帰適合から個別点を除去することによって生じる外挿点における変化を示す測定を指す)。スチューデント化残差限界の絶対値は5であり、スチューデント化残差は我々が外れ値と見なす値よりも大きい絶対値を有する。DFFITS限界の絶対値は0.04であり、この限界を上回る如何なるDFFITS絶対値も、外れ値が曲線適合方程式のパラメータに対して有意の影響を有すること及び除去されるべきことを示す。外れ値の最大数は2に等しいように設定される。試料が3つ以上の外れ値を有する場合、その試料は誤りと見なされ得るので見直し対象として確保される。以下の表1は、測定を行った更新時間ごとのセンサ出力、スチューデント化残差、及びDFFITS値を示す。
【0109】
表1から見て取れるように、28秒時点におけるスチューデント化残差は最大絶対値−33.7を有し、最大絶対値を有するスチューデント化残差がスチューデント化残差の絶対的に限界よりも大きい。28秒時点における値は外れ値として分類される。最大絶対値を有するスチューデント化残差のDFFITS値は0.499であり、DFFITS限界の外側にある。そのため、この外れ値は除去される。外れ値カウントが1に設定される。
【0110】
図8bは、28秒時点における外れ値が除去された状態の
図8a内のデータの例示的グラフ表現を示す。28秒時点における外れ値が除去された状態で、データ集合についてa=0であるax
2+bx+c形式の曲線適合方程式が曲線適合モジュール118から得られる。曲線適合方程式内で図示されている例示的グラフ表現では、0.9299x−281.55である。以下の表2から見て取れるように、16秒時点におけるスチューデント化残差は最大絶対値−38.7を有し、最大絶対値を有するスチューデント化残差がスチューデント化残差の絶対的に限界よりも大きい。16秒時点における値は外れ値として分類される。最大絶対値を有するスチューデント化残差のDFFITS値は−0.5であり、DFFITS限界の外側にある。そのため、この外れ値は除去される。外れ値カウントが2に設定される。
【0112】
図8cは、28秒時点における外れ値が除去され且つ16秒時点における外れ値が除去された状態の
図8a内のデータの例示的グラフ表現を示す。28秒時点における外れ値が除去され且つ16秒時点における外れ値が除去された状態で、データ集合についてa=0であるax
2+bx+c形式の曲線適合方程式が曲線適合モジュール118から得られる。曲線適合方程式内で図示されている例示的グラフ表現では、0.7705x−281.33である。以下の表3から見て取れるように、全てのスチューデント化残差値が限界内にあり、DFFITS計算は不要である。外れ値カウントは、外れ値数限界よりも大きくない。
【0114】
外れ値の検出が完了した後、最後の適合パラメータ群の各適合パラメータa=0、b=0.7705、及びc=−281.33が対応する適合パラメータ限界と比較される。それらのパラメータの何れか1つがそのパラメータの適合パラメータ限界の外側にある場合、その試料は誤りと見なされ得るので見直し対象として確保される。3つのパラメータの全てが対応する適合パラメータ限界内にある場合、外挿が行われ、その試料の結果が報告される。
図8a〜
図8cに示した例示的実施形態では、パラメータ「b」の適合パラメータ限界は0.6から1.0であり、パラメータ「c」の適合パラメータ限界は−290から−260である。最後の適合パラメータ群の適合パラメータのそれぞれa=0、b=0.7705、及びc=−281.33を適合パラメータ限界と比較し、最後の適合パラメータ群の適合パラメータそれぞれの各々が対応する適合パラメータ限界内にある。そのため、試料の値が報告される。最初の2つの適合パラメータ群の適合パラメータが対応する適合パラメータ限界と比較される場合、それらの適合パラメータは適合パラメータ限界の外側にあると認められることに留意すべきである。
【0115】
様々な実施形態によれば、本明細書の開示内容は電気化学センサの重要な応答時間を決定するための時間を短縮するために利用され得る。一部の実施形態では、電気化学センサは拡散制御応答環境内で、pO2、pCO2、グルコース、及び乳酸の濃度レベルを計算する等の目的で使用され得る。加えてこの方法論は、Na、K、Cl、Ca等のイオン選択性電極の終点検出にも使用され得る。一部のセンサは速い応答を概して示し、従って終点センサ応答予測が不要な場合もあるが、曲線適合は依然として有用であり、曲線適合方程式の決定及び改善は依然として重要であり得る。