【課題を解決するための手段】
【0015】
上記及びその他の目的は、特許請求の範囲において定義され、かつ、本明細書中以下に記載されるような、本発明又はその実施形態によって達成されている。
本発明又はその実施形態は多くのさらなる利点を有することが見出されており、そのような利点は以降の説明から当業者に明らかとなろう。
【0016】
本発明のカニューレアセンブリキットを使用することにより、外科医は、手術部位に対する手術機器の配置状態についての非常に良好又は実に優れた視認度であって、これにより結果として機器の制御を高める視認度を得ることが可能であり、このことは手術中に誤りを犯す危険性を低減し、かつ同時に低侵襲性手術手技のために必要な時間を縮小する可能性もある、ということが見出されている。
【0017】
術者が比較的穏やかな方法で手術機器を動かすためには、切開部を通るアクセスポートを提供するためのカニューレ(時にはスリーブとも呼ばれる)を提供することが標準的である。カニューレは、例えば把持具、剪刀、ステープラーなどのような手術機器を後で配置するための入り口として機能する。通常、カニューレは、カニューレのアクセスポートを通して一時的に挿入されたオブチュレータ(obturator)を使用することにより、切開部を通じて挿入される。オブチュレータ及びカニューレを含んでなるセットは套管針と呼ばれる。オブチュレータは金属又はプラスチックの先鋭であるか又は刃を持たないチップであってよい。オブチュレータが先鋭なチップを含んでなる場合、このチップは切開部を形成するために術者によって使用されうる。オブチュレータが刃を持たないタイプのチップである場合、術者は少なくとも皮膚最上層を切り開くためにメスを使用し、その場所で後に套管針が切開部を通じて押し通されることが可能である。套管針が切開部を通じて押し通されると、オブチュレータが除去されてカニューレはこの時点でアクセスポートを形成する。カニューレは通常、気体の漏出に対しては密封しかつ機器を受け入れるための、1以上のシールを含んでなる。
【0018】
本発明のカニューレアセンブリキットは好都合には、1以上のシール、例えば、2009年8月1日にmddiadminによってメディカル・デバイス・アンド・ダイアグノスティック・インダストリー(Medical Device And Diagnostic Industry)www.mddionline.comに投稿された記事「腹腔鏡検査法の動向:シーリング技術(Trends in Laparoscopy:Sealing Technology)」に記載されたシールを含んでなる。
【0019】
先端側(distal)及び基端側(proximal)という用語はカニューレの配向に関して解釈されるべきである。
「〜より先端側の」という言葉は「〜より先端側方向の位置に配置構成された」を意味する。「先端側に配置構成された」という言葉は手術機器の先端部より先端側に配置構成されたことを意味する。
【0020】
用語「ほぼ、実質的に(substantially)」は本明細書中において、通常の製品の差異及び許容差が含まれることを意味するものとされるべきである。
用語「約」は一般に、計測の不確かさのうちに入るものが含まれることを確実に示すために使用される。用語「約」は、範囲において使用されたとき、本明細書中では計測の不確かさのうちに入るものがその範囲に含まれることを意味するものとされるべきである。
【0021】
「リアルタイム」という言葉は、本明細書中において、術者にリアルタイム情報を戻すために、コンピュータが、絶えず変化しているデータを受け取りかつ任意選択で他のデータ、例えば所定のデータ、参照データ、推定データ(定数データ若しくは1分を超える頻度で変化しているデータのような非リアルタイムのデータであってもよい)と組み合わせて処理するのに必要とする時間を意味するために使用される。「リアルタイム」には、発生から最大5秒まで、好ましくは1秒以内、より好ましくは0.1秒以内などの短時間の遅延が含まれうる。
【0022】
用語「術者」は、外科医、又はロボット外科医すなわち患者に腹腔鏡手術を実施するようにプログラムされたロボットを示すために使用される。
用語「手術機器」は、本明細書中において、手術腔内の組織に対して手術を実施するようになされた手術用具、例えば、把持具、縫合糸把持具、カッター、シーラー、ステープラー、クリップアプライヤ、剥離鉗子、剪刀、剪断機、吸引器具、クランプ器具、電極、凝固用デバイス、掻爬器、アブレータ、メス、持針器(needle holder)、把針器(needle driver)、へら、鉗子、生検器具及び開創器具又はこれらの組み合わせ、を含んでなる腹腔鏡ツールを意味する。
【0023】
強調されるべきなのは、用語「〜を含んでなる(comprises)/〜を含んでなる(comprising)」は、本明細書中で使用されるとき、オープンな用語として解釈されることになっている、すなわち該用語は、具体的に挙げられた(1以上の)特徴、例えば(1以上の)要素、(1以上の)ユニット、(1以上の)整数、(1以上の)ステップ、(1以上の)構成成分及びこれらの(1以上の)組み合わせの存在を明示するものとされるべきであるが、ただし1以上の他の挙げられた特徴の存在又は追加を妨げない、ということである。
【0024】
説明又は特許請求の範囲の全体を通じて、単数形は、文脈からそうでないことが指定又は要求されないかぎり、複数形を包含する。
実施形態において、本発明のカニューレアセンブリキットは低侵襲性手術での使用に適した套管針の一部を構成するようになされている。カニューレアセンブリキットは、カニューレ及びパターン生成部材を含んでなる。カニューレは先端部及び基端部を有し、基端部から先端部へと延びる長尺状カニューレシャフト部分及び前記長尺状カニューレシャフト部分を通るアクセスポートを含んでなり、手術機器の手術用具がアクセスポートを通して挿入されることが可能であるようになっている。
【0025】
好都合には、カニューレアセンブリキットはその基端部に、該キットが切開部を通じて挿入された後でカニューレアセンブリキットを適所に保持するためのフランジ部分を含んでなる。
【0026】
使用時、カニューレシャフト部分の先端部は切開部を通じて、例えばオブチュレータの先端部と一緒に挿入され、任意選択でフランジ部分を含んでなる基端部は切開部の外側にとどまってカニューレの安全な位置決めを保証する。フランジ部分は任意の形状又は大きさを有しうる。カニューレシャフト部分は、任意の横断面形状、例えば円形、卵形又は例えば先行技術のカニューレの横断面形状のように角のある形状を有しうる。
【0027】
以降においてカニューレアセンブリキットはその基端部にフランジ部分を備えて説明されるが、しかしながら、そのようなフランジ部分は、特にカニューレアセンブリキットが後述のようにロボットの一部であるか又はロボットによって操作されるようになされている場合は省略されうる。
【0028】
パターン生成部材はパターン光源及び投影器を含んでなり、パターン光源は光パターンを投影するために投影器に作動可能に接続されている。パターン生成部材のうち少なくとも投影器は、カニューレのカニューレシャフト部分に少なくとも一時的に固着されるように構成される。好ましくは、パターン生成部材のうち少なくとも投影器は、カニューレのカニューレシャフト部分に固着されて投影器とカニューレシャフト部分との間に実質的な剛性接続を形成するように構成される。
【0029】
用語「アクセスポート」は、手術機器を通して挿入せしめることが可能なポートを意味する。アクセスポートは、シール又は遮断物、すなわち手術機器がアクセスポートに挿入されていない時に完全に又は部分的にアクセスポートを閉塞するか又はアクセスポートの空所を満たす蓋及び類似のもののうち少なくともいずれかを、含んでなることができる。シール、遮断物及びシールのうち少なくともいずれかは、望ましからぬ量の気体が漏れて体腔を収縮させることがないようにする。手術機器がアクセスポートに挿入されていないとき、シール又は遮断物は好都合には気体の望ましからぬ漏出に対して封をする。
【0030】
用語「剛性接続」は、堅固に接続している要素の間の相対位置が正常な使用の間は実質的に一定であることを保証する接続を意味する。
本発明のアセンブリキットは主として組み立てられていない状態で説明されているが、本発明はアセンブリキットの組み立てられた相応物も含むように解釈されるべきである。
【0031】
使用時、投影器は、カニューレシャフト部分のアクセスポートを通して挿入された手術機器の動きのうち少なくとも一部と相関した方法で動かされることになり、かつ、それにより投影器から投影される光パターンの像は変化することになり、それにより、手術部位に対する手術機器の配置状態に関する視覚情報が術者に提供される。
【0032】
好都合には、パターン生成部材のうち少なくとも投影器はカニューレのカニューレシャフト部分に少なくとも一時的に固着されるように構成されて、アクセスポートを通して挿入された手術機器の手術用具のいかなる横方向の動きも投影器の相関した動きをもたらすように、かつ、それにより、例えば内視鏡のようなスコープのカメラを介してスクリーン上に画像化可能な投影された光パターンの反射像の相関した変化をもたらすようになっている。反射されるパターンの変化は、本明細書中において記録パターン又は記録可能パターンとも呼ばれる。
【0033】
「相関した変化」又は「相関した動き」という言葉は、手術機器の所与の横方向の動きが、投影される光パターン及び投影器それぞれの所与の及び/又は対応する変化又は動きを生じるような、手術機器の横方向の動きに対応する変化又は動きを意味する。実施形態において、手術機器の動きは投影される光パターン及び投影器それぞれの変化又は動きの連動をもたらしうる。投影される光パターンの変化は、本明細書中において、カニューレより先端側に配置構成された表面上に見られる投影された光の反射像の変化を意味するように使用される。
【0034】
上記したパターンは、低侵襲性手術が実施される体腔の内壁(本明細書中では手術部位とも呼ばれる)に到達することになる。
手術部位は多くの場合、非常に湾曲していて起伏のある表面を含んでなるが、このことはパターンが手術部位上に反映されるのでパターンの形状から見て明らかとなろう。投影器は、手術部位の輪郭及び局所解剖学的構造(topography)のうち少なくともいずれか並びに手術機器の配置状態を、光パターンの間接的映像に基づいて術者が推定することが可能であるように、手術部位のエリアに光パターンを投影することになる。
【0035】
実施形態において、パターン生成部材のうち少なくとも投影器はカニューレのカニューレシャフト部分に少なくとも一時的に固着されるように構成されて、カニューレのどのような傾斜する動きも投影器の相関した動きをもたらし、かつ、それにより投影される光パターンの反射像の相関した変化をもたらすようになっている。実施形態において、投影された光パターンの反射像はカメラによって受け取られる。カメラは実施形態において、カニューレに取り付けられてもよいし、カニューレの一部を形成してもよい。カメラは、任意選択で、反射光のモニタリングのために配置構成されたカニューレの先端部に取り付けられてもよい。カメラをカニューレに固着させるか又はカニューレと一体化させることにより、カメラによって組織を損傷するいかなる危険性も低減されうる。さらに、カメラは術者又は手術助手によって保持される必要はない。実施形態において、カメラはカニューレのシャフト部分に対して枢動可能であるように取り付けられる。これにより、術者は任意の所望の方向にカメラの角度を決めることが可能である。
【0036】
実施形態において、カメラは内視鏡のようなスコープに取り付けられる。カメラは、記録された信号をスクリーンに伝送すること、及び、記録された信号を、手術機器を操作するように構成されたロボットに伝送すること、のうち少なくともいずれか一方を行うことができる。実施形態において、カメラは、手術機器を操作するように構成されたロボットの一部を形成する。記録された信号は、時間遅れが可能なかぎり小さくなることを確実にするために、リアルタイム速度で伝送されうることが好ましい。
【0037】
実施形態において、カメラは、記録された信号を外科医又は低侵襲性手術の観察者に見えるスクリーンへとリアルタイムで伝送するように構成される。
実施形態において、パターン生成部材の投影器は、光パターンの少なくとも一部分が先端側方向に投影されるように、カニューレのカニューレシャフト部分に少なくとも一時的に固着されるように構成される。
【0038】
先端側方向とは、本明細書中では、アクセスポートの中心軸に対して、又は(中心軸が直線でない場合は)アクセスポート出口における中心軸への接線に対して、平行であるか又は任意の方向に最大で90度までである、方向であることを意味する。実施形態において、用語「先端側方向」は、アクセスポートの中心軸に対して、又は(中心軸が直線でない場合は)アクセスポート出口における中心軸への接線に対して、平行であるか又は任意の方向に最大で90度までである、方向を意味するために使用される。好都合には、光パターンの少なくとも一部分は、アクセスポートの中心軸と平行な方向に対して、又はアクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線に対して、平行であるか又は最大で30度までである方向に投影され、かつ、好ましくは、光パターンの少なくとも一部分は、アクセスポートの中心軸又はアクセスポート出口における中心軸への接線と平行な方向に対して、平行であるか又は最大で15度までである、例えばアクセスポートの中心軸又はアクセスポート出口における中心軸への接線と平行な方向に対して最大で10度までである、方向に投影される。
【0039】
アクセスポート出口とは、カニューレシャフト部分の先端部におけるアクセスポートの出口である。
以下にさらに説明されるように、実施形態において、カニューレは屈曲可能であるか屈曲しているかのうち少なくともいずれかであり、かつ、そのような状況では先端側方向はカニューレの先端部に関して決定されるべきである。ある種の外科的処置については、カニューレが非常に高度に、例えば最大で180度まで、例えば最大約90度までなど、屈曲しているか又は屈曲可能であることが望ましい。先端側方向は、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線と平行な方向±最大で45度まで、例えば±最大で30度まで、例えば±最大で15度までとして決定される。カニューレが屈曲可能であるか屈曲しているかのうち少なくともいずれかであり、かつ、同時にアクセスポート出口を含んでなる端部区間において直線状である場合、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線は、アクセスポート出口を含んでなる端部区間における中心軸と同一である。
【0040】
実施形態において、パターン生成部材の投影器は、光パターンの少なくとも一部分が基端側方向に、例えば先端側方向とは反対の方向に投影されるように、カニューレのカニューレシャフト部分に少なくとも一時的に固着されるように構成される。この実施形態は、手術部位の目標物がアクセスポートを通して挿入された手術機器に対して横方向に位置している場合に特に好都合である。
【0041】
実施形態において、パターン生成部材の投影器はカニューレシャフト部分の先端部に少なくとも一時的に固着されるように構成される。
好都合には、カニューレシャフト部分の先端部は先端側アクセスポート出口を有し、かつ、先端側アクセスポート出口の近くに末端縁を含んでなる。末端縁は任意選択で先端側アクセスポート出口の枠となる。パターン生成部材の投影器は、末端縁に少なくとも一時的に固着されるように、好ましくは末端縁への剛性接続を形成するように構成される。投影器は、先端側方向に光パターンを投影するように、好ましくは光パターンの少なくとも一部分が、アクセスポートの中心軸と平行な方向に対して、平行であるか又は最大で45度までである方向に投影されるように、配置構成されることが好ましい。実施形態において、投影器は、アクセスポートの中心軸と平行な方向に対して平行であるか又は最大で30度までである先端側方向に、例えばアクセスポートの中心軸と平行な方向に対して平行であるか又は最大で15度までである方向に、例えばアクセスポートの中心軸と平行な方向に対して平行であるか又は最大で10度までである方向に、光パターンを投影するように配置構成される。
【0042】
実施形態において、光パターンの少なくとも一部分は、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線と平行な方向に対して、平行であるか又は最大で45度までである方向に投影される。実施形態において、投影器は、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線に対して平行であるか又は最大で30度までである先端側方向に、例えば、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線に対して平行であるか又は最大で15度までである方向に、例えば、アクセスポート出口におけるアクセスポートの中心軸への接線に対して平行であるか又は最大で10度までである方向に、光パターンを投影するように配置構成される。
【0043】
末端縁は、好都合には、カニューレシャフト部分の先端部の、アクセスポートを画成している内側表面とカニューレシャフト部分の外側表面との間に延在する縁部である。実施形態において、末端縁は、アクセスポートの中心軸及びアクセスポート出口におけるアクセスポートへの接線のうち少なくともいずれか一方に対して実質的に直交する。実施形態において、末端縁は、アクセスポートの中心軸及びアクセスポート出口におけるアクセスポートへの接線のうち少なくともいずれか一方に対して90度より大きな角度、例えば中心軸及びアクセスポート出口におけるアクセスポートへの接線のうち少なくともいずれか一方に対して100〜125度の角度を有する。
【0044】
カニューレアセンブリキットは、数個の投影器及び数個のパターン生成部材のうち少なくともいずれかを含んでなることができる。
実施形態において、パターン生成部材は、2以上の投影器であって、パターン光源が光パターンを投影するために作動可能に接続されている投影器を含んでなる。パターン生成部材のうち少なくとも投影器は、カニューレのカニューレシャフト部分に、好ましくは互いに距離をおいて、例えば先端側アクセスポート出口の対角側の末端縁において、少なくとも一時的に固着されるように構成される。
【0045】
パターン光源は、前記投影器のそれぞれのために光を2以上の分画に分割すること及びフィルタ選別することのうち少なくともいずれか一方を行う、スプリッタ及びフィルタのうち少なくともいずれかを含んでなることが可能であり、2以上の光部分は、例えば出力、波長、波長プロファイルに関して、等しくてもよいし異なっていてもよい。2以上の投影器は、例えばパターンの形状又は大きさに関して、等しくてもよいし互いに異なっていてもよい。
【0046】
実施形態において、カニューレアセンブリキットは2以上のパターン生成部材を含んでなる。2以上のパターン生成部材は、例えば出力、波長、波長プロファイル、パターンの形状又は大きさに関して等しくてもよいし互いに異なっていてもよい。
【0047】
実施形態において、カニューレシャフト部分は、手術機器がアクセスポートを通して挿入されることを可能にするために外科的切開部を通じて挿入されるようになされたアクセス区間を含んでなり、アクセス区間は少なくとも部分的に剛性であり、好ましくはカニューレシャフト部分のアクセス区間全体又はカニューレシャフト部分全体が実質的に剛性である。カニューレシャフト部分の剛性は、カニューレシャフト部分が傾斜する動き(例えばアクセスポートに挿入された機器の傾斜によるもの)を受けたときに投影器が相関して動かされることになり、かつ、それにより、例えばカニューレに取り付けられたか若しくは一体化されたカメラ及びスコープのカメラのうち少なくともいずれかを介してスクリーン上に画像化されるか又はロボットに伝送されることが可能な、投影された光パターンの反射像の相関した変化をもたらすこと、を確実にする。
【0048】
記録された信号は、時間遅れが可能なかぎり小さくなることを確実にするために、リアルタイムで伝送されうることが好ましい。
用語「アクセス区間」は、完全に又は部分的に切開部に挿入されるようになされた、カニューレシャフト部分の長さ区間を表わすために使用される。注目されるべきなのは、剛性の区間は1以上の層を、例えば非剛性材料のシールを含んでなることができることである。
【0049】
実施形態において、少なくともアクセス区間は、アクセスポートに機器が挿入されていないときは折り畳み(collapsible)、それにより気体がアクセスポートを介して脱出するのを防止し、よって患者体内の腹部又はその他の手術腔の収縮を防止する、シール及び隔離物(isolation)のうち少なくともいずれかを含んでなることにより折り畳み可能である。
【0050】
実施形態において、少なくともアクセス区間は折り畳み可能な材料でできていることにより折り畳み可能であり、そのような少なくともアクセス区間は、アクセスポートに機器が挿入されていないときは少なくとも部分的に折り畳まれる。
【0051】
実施形態において、カニューレシャフト部分は、手術機器がアクセスポートを通して挿入されるのを可能にするために外科的切開部を通して挿入されるようになされたアクセス区間を含んでなり、アクセス区間は折り畳み可能である。好都合には、カニューレシャフト部分のうち少なくともアクセス区間は、エラストマー(例えばゴム)のような非剛性材料でできている。
【0052】
剛性は25℃で測定される。
原則として、カニューレシャフト部分は直線状であってもよいし屈曲していてもよい。カニューレシャフト部分が実質的に剛性である場合、カニューレシャフト部分は比較的直線に近いか又は任意選択で比較的柔らかい曲線をなして屈曲していることが望ましい。
【0053】
カニューレシャフト部分が直線状である場合、アクセスポートは通常は同様に直線状になる。
実施形態において、パターン生成部材はカニューレシャフト部分から取り外し可能である。
【0054】
好ましくは、パターン生成部材のうち少なくとも投影器は、クリックロック、スリーブロック、ねじ錠、回転錠、くさび錠又はこれらの組み合わせによってカニューレシャフト部分に一時的に固着されるように構成される。
【0055】
好都合には、パターン光源はカニューレシャフト部分に固着されないか又は固着されるようになされていない。実施形態において、パターン光源はカニューレのフランジ部分に固着されるか又は固着されるようになされている。作動可能な接続は、原則として、任意の種類の1又は複数の導波素子、例えば光ファイバ、1以上のレンズ、ミラー、分割器、照準器、増幅器又は任意の他の適切な光学素子であってよい。パターン光源と投影器との間の光学的接続は、光ファイバによって提供されることが好ましい。
【0056】
投影器のみがカニューレシャフト部分に取り付けられる場合、パターン光源を含むパターン生成部材の残りの部分は滅菌を必要とせずに再使用されうる。
実施形態において、パターン生成部材のうち少なくとも投影器及びパターン光源は、スリーブによってカニューレに一時的に固着される。
【0057】
実施形態において、パターン生成部材の全ての構成要素はスリーブに一時的に固着される。パターン生成部材の構成要素は、投影器及びパターン光源並びに任意選択の動力源及び1以上の制御素子のうち少なくともいずれか、例えば後述されるパターン光源制御ユニットなど、を含んでなる。
【0058】
実施形態において、パターン生成部材のうち少なくとも投影器はカニューレに恒久的に固着される。
実施形態において、パターン光源及び任意選択のバッテリはカニューレシャフト部分に固着されるか又は固着されるようになされる。
【0059】
実施形態において、パターン光源及び任意選択のバッテリは外部光源ユニット内に配置構成され、かつ、投影器に、例えば光ファイバを介して、直接接続されて、又は自由空間光通信の使用によって、光学的に接続される。
【0060】
実施形態において、パターン光源は投影器に距離をおいて配置構成されるようになされ、パターン光源は好ましくは、カニューレに対し距離をおいて位置決めされるようにかつ光ファイバを含んでなる接続手段を介して投影器に好都合に接続されるように配置構成された、パターン光源ハウジングに組み込まれ、好ましくは、光ファイバはポリマーのカバーによって保護されている。
【0061】
実施形態において、パターン生成部材のうち少なくとも投影器はスリーブの中に組み込まれるか又はスリーブに取り付けられる。スリーブは、投影器を含んでなるスリーブ末端縁部分を含んでなることが好ましい。スリーブはカニューレシャフト部分に取り付けられるように構成される。任意選択で、スリーブは、望ましからぬ気体漏出を最小限にするための外側シール及び内側シールのうち少なくともいずれか一方に相当する。スリーブは好都合にはフランジ部分に固着されるか又は固着可能である。実施形態において、パターン光源は、スリーブがフランジ部分に取り付けられる場合はスリーブの基端部においてスリーブ内に組み込まれるか又はスリーブに取り付けられる。
【0062】
スリーブは、ポリマー材料及び金属のうち少なくともいずれかを含む任意の材料を含んでなることができる。好ましくは、スリーブは、親水性でありかつ好都合には低摩擦である外側表面を有する。実施形態において、スリーブは摩擦を低減するためにコーティングを、例えばPTFE又はパリレンのコーティングを含んでなる。実施形態において、スリーブの表面にはプラズマ処理及び塩素化のうち少なくともいずれか一方が施されている。
【0063】
好都合には、スリーブは、エラストマー、例えば1以上の熱可塑性エラストマー、ゴム及びシリコーンのうち少なくともいずれかでできている。好ましい材料は、ポリイソプレン、シリコーン、ブチル‐エチレンプロピレン(ジエン)ポリマー及びスチレンブタジエンゴムのうち少なくともいずれかを含んでなる。
【0064】
実施形態において、カニューレは投影器を取り付けるための取り付け用貫通穴を含んでなり、好ましくは取り付け用貫通穴は、投影器がカニューレシャフト部分の先端部に又は先端部に隣接して取り付けられることが可能であるように、カニューレシャフト部分を通って延びる。それにより投影器は、カニューレが外科的切開部を通じて挿入された後で前記取り付け用貫通穴を介して取り付けられることが可能である。
【0065】
実施形態において、スリーブは、カニューレが外科的切開部を通じて挿入される前に又は挿入された後で投影器を取り付けるための取り付け用貫通穴を含んでなる。
実施形態において、パターン生成部材のうち少なくとも投影器はカニューレシャフト部分に恒久的に固着され、好ましくは、投影器は、カニューレと一体化されて一体型カニューレアセンブリを形成する。
【0066】
パターン光源は原則として、所望のパターンを提供することが可能な任意の種類の光源であってよい。光源は可干渉性光源であっても非干渉性光源であってもよい。
用語「可干渉性(コヒーレント)光」は本明細書中においてレーザー光を表わすために使用される一方、「非干渉性光」にはそのコヒーレンス度に関係なく任意の非レーザー光が含まれる。比較的高いコヒーレンス度を備えた非干渉性光(部分干渉性光と呼ばれることもある)が好まれる場合が多い、というのも、可干渉性光が非常に明るいパターンを提供する一方で、非干渉性光源は一般に可干渉性光よりはるかに低いコストで得ることが可能であるからである。
【0067】
実施形態において、パターン光源は可干渉性光源、例えば半導体光源、例えばレーザーダイオード光源及びVCSEL光源のうち少なくともいずれかなどである。
実施形態において、パターン光源は非干渉性光源であり、好ましくは、光源は半導体光源、例えば発光ダイオード(LED)などである。
【0068】
好都合には、光パターンは、少なくとも1つの、レーザー及びLEDのうち少なくともいずれか一方によって生成される。レーザー及びLED(発光ダイオード)は、それらが十分に輪郭の明確な光パターンを生成することが可能であり、かつ、波長及び従って色を選ぶことが可能であって、パターンが遠隔の映像内で増強されるようになっている、例えば光パターンがモニタ上ではっきり目に見えてかつ増強されているか、コンピュータによる認識、復号及び映像処理のうち少なくともいずれかのために容易に検知可能であるようになっているかのうち少なくともいずれかであるので、好都合である。
【0069】
パターン光源は好都合には、比較的狭いバンド幅を有することにより狭いバンド幅の高輝度光を提供し、同時に比較的低い光エネルギーを放射している。手術対象部位の望ましからぬ加熱を回避すること、並びに同時に、見通しの悪化、及びカメラによる記録を歪曲する可能性のある望ましからぬ副次反射像又は誤反射像(side or error reflections)の発生、のうち少なくともいずれか一方の危険性が低いことは、いずれも好都合である。
【0070】
実施形態において、パターン光源は、最大で約50nmまで、例えば1nm〜約40nmのバンド幅(半値全幅、FWHM)を有する。好ましくは、パターン光源の狭いバンド幅は約25nm以下、例えば約10nm以下などである。
【0071】
実施形態において、パターン光源は、例えば400nm〜2600nmのバンド幅範囲内で少なくとも1オクターブにわたる、スーパーコンティニウム光源のような広帯域光源である。シリカファイバ中で伝送される2600nm超の光は強く減弱されることになろう。
【0072】
実施形態において、パターン光源は、約10nm〜約400nm、例えば約200〜約400nmのUV領域内の少なくとも1つの電磁波波長を放射するように構成される。
実施形態において、パターン光源は、約400nm〜約700nm、例えば約500〜約600nmの可視領域内の少なくとも1つの電磁波波長を放射するように構成される。
【0073】
実施形態において、パターン光源は、約700nm〜約1mm、例えば約800〜約2500nmのIR領域内の少なくとも1つの電磁波波長を放射するように構成される。
実施形態において、パターン光源は、2以上の区別された波長又は波長バンド幅を放射するように構成され、かつ、好都合には、パターン光源は前記の区別された波長又は波長バンド幅の間で切り替わるように構成される。
【0074】
より低波長、例えば600nm未満の光は、手術を受けるエリアを照らすために放射される(通常は内視鏡のようなスコープから放射される)照明光とは視覚的に区別されるように、比較的高い出力を必要とする。
【0075】
実施形態において、パターン光源は、可視領域内の少なくとも1つの波長を含んでなる。
実施形態において、パターン光源は、UV又はIR領域のような不可視領域内の少なくとも1つの波長を含んでなる。パターン光源が不可視領域内の波長を含んでなる場合、そのような波長は好都合にはカメラシステムによって検知され、かつ例えばデジタル処理によって、術者に表示するために可視波長に変換される。
【0076】
実施形態において、パターン生成部材は、同等又は異なるバンド幅を有する2以上のパターン光源を含んでなり、2以上のパターン光源は好ましくは投影器に作動可能に接続される。
【0077】
この2以上のパターン光源は互いに独立に操作可能である、すなわちそれらは独立に、例えば非手動のユニットを使用するか又はフランジ部分に組み込まれたユニットにより、点灯及び消灯されることが可能である。
【0078】
実施形態において、2以上のパターン光源は別個の投影器に接続されることが可能である。
一般に望ましいのは、(1又は複数の)パターン光源は、点灯及び消灯されることが可能であり、かつ任意選択で、パターン光源制御ユニットを使用して、波長及び強度のうち少なくともいずれか一方を改変することが可能であることである。実施形態において、パターン光源制御ユニットは非手動式ユニット、例えばペダル又は音声起動型制御ユニットであり、それにより単純な方式で術者は光パターンを制御することが可能である。実施形態において、パターン光源制御ユニットはフランジ部分に組み込まれる。
【0079】
実施形態において、(1又は複数の)パターン光源はロボットによって、例えばロボットの一部であることによって、制御される。パターン光源制御ユニットは好都合にはコンピュータ制御式であってよい。
【0080】
好都合には、パターン光源は、可視性のパターンを生成するのに十分であるが望ましからぬ量の熱が生成されうるほどには高すぎない、パターン生産出力を提供するように配置構成される。好ましくは、パターン光源は、最大で約100mWまで、例えば少なくとも約0.1mW、例えば約1〜約100mW、例えば約3mW〜約50mWのパターン生産出力を提供するように配置構成される。好ましくは、パターン生産出力は調整可能である。パターン生産出力は投影器の生産出力として測定される。
【0081】
好都合には、パターン光源は波長及び出力のうち少なくともいずれか一方において調節可能であり、かつ、カニューレアセンブリキットはパターン光源を調節するための調節器を含んでなり、好ましくはアクセスポートを通して挿入された手術機器の動きがパターン生成部材の協調的調節へと調節器を始動させるようになっている。調節は好都合には、アクセスポートを通して挿入された手術機器の先端部における基端方向への、又はその逆の動きが、パターン生成部材の協調的調節へと調節器を始動させるように、実施される。実施形態において、調節器は、手術機器の先端部における基端方向への、又はその逆の動きが、パターン光源の光の強さを上下に調節し、かつ/又は、パターン光源の波長を変更するように、カニューレシャフト部分の内壁に配置構成された、調節可能なボタンである。(1又は複数の)パターン光源がロボットによって制御される実施形態では、ロボットは好都合には、アクセスポートを通して挿入された手術機器を制御してもよいしこのような機器を含んでなることも可能であり、かつ、パターン光源を調節するための調節器も好都合にはロボットの一部であってもよいし又は少なくともロボットによって制御されうる。
【0082】
好都合には、パターン生成部材の投影器は、位相光学素子(phase optic element)、空間光変調器、高次(multi−order)回折レンズ、ホログラフィックレンズ、反射鏡の配置構成物(mirror arrangement)、コンピュータ制御型の光学素子、及びコンピュータ制御型の機械式光学素子(mechanically optical element)、例えばmems(微小電気機械)素子、のうち少なくともいずれかを含んでなる。
【0083】
位相光学素子は好都合には回折光学素子(DOE)であってよい。
実施形態において、位相光学素子は周期的強度分布を有する画像を生成することが可能である。
【0084】
回折光学素子は当分野において良く知られており、例えば、その光学的機能のために複雑な微細構造を備えた表面を利用することができる。微細構造を備えた表面起伏のプロファイルは2以上の表面準位を有する。表面構造は、溶融シリカ若しくは他の種類のガラスにエッチングされるか、又は様々なポリマー材料に浮き彫り加工される。加えて、回折光学素子は、レンズ、プリズム又は非球面のような屈折光学素子とほとんど同一の光学的機能を実現することが可能であるが、それらははるかに小さくて軽い。DOEはレーザーへの適用には限定されず、LED又は他の光源からの部分干渉性光も変調されることが可能である。
【0085】
実施形態において、DOEは米国特許出願公開第2013/0038836号明細書に記載された通り、例えば米国特許出願公開第2013/0038836号明細書の、
図1に示された通り、及び[0015]部分に記載された通り、のうち少なくともいずれか一方である。
【0086】
実施形態において、回折光学素子は、「高次回折(multi−order diffractive)」レンズ、例えばレンズの屈折力が光の波長に正比例する単一の回折次数を利用する従来の回折光学素子レンズ、を含んでなる。
【0087】
投影器は、所望のパターンを提供するための任意の種類のビーム操作用の素子、例えば、レンズ及び/又はミラー及び/又は分割器及び/又はフィルタ及び/又は照準器を含んでなることができる。
【0088】
実施形態において、投影器は空間光変調器を含んでなる。空間光変調器は、例えばパターンカバーの透過性を例えばコンピュータ変調によって変調することにより光パターンを変調するように構成される。実施形態において、空間光変調器は、パターン光源からの光の強度及び位相のうち少なくともいずれか一方を変調してそれにより放射される光パターンを変調するように、配置構成される。
【0089】
カニューレが望ましい小切開部を通じて挿入可能であることを確実にするためには、パターン生成部材の一部であって切開部の中への挿入に先立ちカニューレシャフト部分に取り付けられることになっている部分が比較的小さいことが、一般に望ましい。
【0090】
好都合には、パターン生成部材の投影器は、パターン生成部材がカニューレシャフト部分に固着されたときにアクセスポートの中心軸に垂直な最大延在エリアを有し、最大延在エリアは、最大で約8cm
2、例えば最大で約4cm
2、例えば最大で約2cm
2、例えば約0.01〜約1cm
2、例えば約0.1〜約0.5cm
2である。好ましくは、パターン生成部材の投影器は先端側のアクセスポート出口付近の末端縁において少なくとも一時的に固着されるように構成され、かつ投影器は好ましくは、投影器が末端縁を越えて横方向に、又は末端縁を越えて横方向に最大5mmまでは、延在しないように形作られる。
【0091】
実施形態において、パターン生成部材の投影器は光が放射されることになっている投影器面を有し、かつ、投影器は枢動可能であり、したがってこのような投影器は、投影器面が先端側方向に面していない第1の折り畳み配置状態から投影器面が先端側方向に面している第2の配置状態へと枢動式に折り畳み解除されることが可能である。それにより、カニューレは投影器が第1の折り畳み配置状態にあるときに切開部へと挿入されることが可能であり、かつ、その後で投影器はその第2の配置状態へと折り畳み解除されることが可能である。任意選択で、折り畳み解除は、カニューレが切開部を通じて挿入された後でカニューレシャフト部分の内壁の解除ボタンを例えば手術機器によって(例えば手術機器の傾斜によって)始動させることにより行われて、投影器がその第2の配置状態へと例えばばね機構によって折り畳み解除されるようになっていることが可能である。
【0092】
パターンは任意の所望の形状を有しうる。
実施形態において、投影器は、手術機器が専ら手術機器の長手方向軸を伴って周方向に動かされているときにはパターンが実質的に静止したままであるように、カニューレシャフト部分に固着されるか又は固着されるようになされる。
【0093】
実施形態において、カニューレシャフト部分に固着されたときの投影器は、アクセスポートの中心軸に直交する表面に投影されたときに多くとも10回の回転対称性を有するパターンを放射するように構成され、好ましくは、パターンは多くとも8回の回転対称性を有する。
【0094】
完全に回転対称ではないが最大で10回までの回転対称性を有するそのようなパターンは、ユーザに手術部位に対する手術機器の配置状態に関して一層良好な視覚情報を与える。
【0095】
実施形態において、パターン生成部材の投影器は、アーチ形状、環形状又は半環形状の線、複数の角度をなした線、及び符号化された構造化光の構成のうち少なくともいずれかを含んでなるパターンを放射するように構成される。実施形態において、パターンは、格子線、例えば平坦な表面に放射されたときに実質的に平行な線を任意選択で含んでなる斜交平行パターン、を含んでなる。
【0096】
手術機器の横方向の動きに起因する格子線の変化は、例えば、突出した表面のような体腔の輪郭、並びに/又は、手術野の輪郭及び局所解剖学的形状のうち少なくともいずれか、を推定するために使用されることが可能である。手術機器の動きの際の、角度並びに斜交及び/又は平行する格子線間の距離の変化は、例えば、手術機器の配向を決定するために使用されることが可能である。
【0097】
「手術野」、「手術部位」及び「手術対象部位」は本明細書中では互換的に使用される。
実施形態において、光パターンは複数の光ドットを含んでなる。手術機器が動かされると、ドット間の配置状態及び距離のうち少なくともいずれか一方は変化することになり、このことは手術機器の配置状態及び手術野のエリア輪郭を術者が推定する能力をさらに一層増強する。
【0098】
実施形態において、パターン生成部材は、予め選択された構成に整列された様々な形状及び/又は大きさを備えた複数の光ドットを含んでなる、符号化された構造化光の構成を含んでなるパターンを放射するように構成される。符号化された構造化光の構成を含んでなるパターンは、対象とする表面の局所解剖学的形状を測定するのに特に適している。
【0099】
符号化された構造化光の構成を含んでなるパターンは、例えば、サルビ(Salvi)ら、「パターン・コディフィケーション・ストラテジーズ・イン・ストラクチャード・ライト・システムズ(Pattern codification strategies in structured light systems)」、パターン・レコグニション(Pattern Recognition)、2004年4月、第37巻、第4号、p.827−849に記載されている。
【0100】
実施形態において、カニューレシャフト部分に固着された投影器は、手術機器の本体部分の長手方向軸に垂直な表面に投影されたときに複数の角度をなした線を含んでなるパターンを、放射するように構成される。好都合には、このようなパターンは、1組以上の平行線を含んでなる格子のような、格子線を含んでなる。
【0101】
アクセスポートの中心軸に直交する表面に投影されたときにパターンが角度をなした線を有する場合、アクセスポートに挿入された手術機器の傾斜は、例えばそのような角度をなした線の変化によって、例えば、その線のうち1以上の変形によって、線の角度の変化によって、及び/又は、線の間の距離の変化によって、観察されることが可能である。
【0102】
パターンは、好都合には、手術機器及び手術機器の動きについての良好な視知覚を保証するために十分に大きい。
同時に、投影器がカニューレシャフトに固着されるので、手術中の投影器と組織との間の直接的な接触の危険性は比較的小さく、また、ほとんどの手技について投影器は、内視鏡よりも低侵襲性手術の際の清浄化を必要としないことが見出されている。
【0103】
実施形態において、パターン生成部材の投影器は、パターンであって、カニューレシャフト部分の先端部から約80mmの距離にありカニューレシャフト部分の中心軸に垂直な平坦な表面に向かって放射されたとき、最大で約225cm
2の、例えば最大で約100cm
2の、例えば最大で約9cm
2の、格子面積を有するパターンを放射するように構成されている。
【0104】
フランジ部分はハンドル部を含んでなり、フランジ部分はオブチュレータに一時的に固着されるための手段を含んでなる。
実施形態において、カニューレはフランジ部分及びカニューレシャフト部分を通る2以上のアクセスポートを含んでなる。それにより、数個の手術機器を同時に挿入することが可能である。
【0105】
実施形態において、カニューレは、2以上のカニューレシャフト部分と、フランジ部分及びカニューレシャフト部分を通るアクセスポートであってそれぞれのアクセスポートの各々を通して手術機器を挿入するのに適したアクセスポートとを含んでなる。
【0106】
実施形態において、カニューレアセンブリキットは投影器を清浄化するための清浄化要素を含んでなる。実施形態において、清浄化要素は、投影器の拭浄及び洗浄のうち少なくともいずれか一方を行うために配置構成された拭浄要素の形態である。実施形態において、清浄化要素は、気体又は液体のような流体を用いた投影器への噴霧及び吹付けのうち少なくともいずれか一方を行うために配置構成された噴霧要素の形態である。適切な清浄化要素の一例は、米国特許第8,397,335号明細書に記載された清浄化デバイスのようなものである。
【0107】
実施形態において、カニューレは、外科医によって操作されるように、すなわち、手術部位へのアクセスポートを提供するために患者の切開部に取り付けられるように、なされている。
【0108】
実施形態において、カニューレは、ロボットによって操作されるように、すなわち、手術部位へのアクセスポートを提供するためにロボットを使用して患者の切開部に取り付けられるように、なされている。
【0109】
実施形態において、カニューレはロボットの一部である。
本発明はさらに、低侵襲性手術で使用される套管針アセンブリキットも含んでなる。套管針アセンブリキットは、上述されるようなカニューレアセンブリと、オブチュレータとを含んでなる。オブチュレータは原則としてはカニューレと共に使用されるように構成された任意の種類のオブチュレータであってよい。
【0110】
オブチュレータは先端部と基端部とを有し、かつ、その基端部のヘッド部分、その先端部のチップ部分、及びヘッド部分とチップ部分との間を延びる剛性のオブチュレータシャフト部分を含んでなり、カニューレ及びオブチュレータは互いに相関していて、オブチュレータのチップ部分はカニューレのアクセスポートを通って挿入することが可能であり、かつ、オブチュレータのヘッド部分はカニューレのフランジ部分に一時的に固着されることが可能であるようになっており、好ましくはカニューレとオブチュレータとの間の出入開口部の中にシールが形成されるようになっている。
【0111】
好都合には、オブチュレータは、カニューレアセンブリキット及びオブチュレータが組み立てられた状態にあるときに少なくとも部分的に投影器をカバーするようにカニューレアセンブリキットの投影器と関連付けられた、投影器保護装置を含んでなる。それにより、投影器は、切開部を通した套管針アセンブリの挿入の間、投影器保護装置によって保護されることが可能である。投影器保護装置は、好都合には、前記カニューレアクセスポートからオブチュレータを抜去するとオブチュレータの空洞部に少なくとも部分的に送り込まれるように配置構成される。
【0112】
カニューレアセンブリキット及びオブチュレータは、オブチュレータのチップ部分がカニューレシャフト部分のアクセスポートを通して実質的に完全に挿入されたときには組み立てられた状態であり、かつ、カニューレアセンブリキット及びオブチュレータは、前記カニューレアクセスポートからオブチュレータを抜去すると解体される。
【0113】
実施形態において、投影器保護装置は、投影器を少なくとも部分的にカバーしている第1の配置状態から、オブチュレータの空洞部に少なくとも部分的に送り込まれている第2の配置状態へと枢動式に折り畳まれるように配置構成される。第2の配置状態から第1の配置状態への折り畳みは、例えば、オブチュレータのチップ部分をカニューレシャフト部分のアクセスポートを通して実質的に完全に挿入した後に、手動で実施されることが可能であり、また第1の配置状態から第2の配置状態への折り畳みは、例えば、単にアクセスポートからオブチュレータを抜去することによるか、第1の配置状態の投影器保護装置を一時的に保持している保持機構を解除することによるかのうち少なくともいずれか一方により、実施されることが可能である。
【0114】
実施形態において、投影器保護装置は、投影器を少なくとも部分的にカバーしている第1の配置状態から、オブチュレータの空洞部に少なくとも部分的に送り込まれている第2の配置状態へと径方向に移動されるように配置構成される。この径方向の移動は、例えば、ばね装置、並びに投影器保護装置を第1の配置状態及び第2の配置状態のうちの一方に一時的に保持する保持機構、のうち少なくともいずれか一方により提供されうる。
【0115】
本発明はさらに、上述のようなカニューレアセンブリキットに適したスリーブアセンブリを含んでなる。スリーブアセンブリはスリーブ及びパターン生成部材を含んでなる。パターン生成部材はパターン光源及び投影器を含んでなり、パターン光源は、光パターンを投影するために投影器に作動可能に接続される。パターン生成部材のうち少なくとも投影器は、スリーブに少なくとも一時的にかつ堅固に固着されるように構成され、スリーブは、投影器を含んでなるスリーブ末端縁部分を含んでなることが好ましい。
【0116】
スリーブは好都合には上述された通りであってよい。
実施形態において、スリーブはカニューレの少なくともカニューレシャフト部分を実質的に完全にカバーするように構成される。実施形態において、スリーブはカニューレのカニューレフランジ部分の少なくとも一部をカバーするように構成される。
【0117】
本発明はさらに、上述のようなカニューレアセンブリキット、手術機器、カメラ及びコンピュータシステムを含んでなる、低侵襲性手術システムに関する。
カメラは単眼カメラであってもよいしステレオカメラであってもよい。実施形態において、低侵襲性手術システムは、画像データの記録に適した2台以上のカメラを含んでなる。低侵襲性手術システムは、前記画像データを結合又は多重化するように構成されうる。
【0118】
実施形態において、カメラは例えば上述のようなカニューレに取り付けられるか又はカニューレと一体化される。
カメラは好都合には、電荷結合素子(CCD)画像センサ、又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサを含んでなることができる。
【0119】
実施形態において、カメラはスコープに取り付けられる。スコープは、本明細書中において、任意の適切なスコープ、例えば内視鏡、腹腔鏡、関節鏡(anarthroscope)、胸腔鏡、胃鏡、結腸鏡、喉頭鏡、気管支鏡(broncoscope)、膀胱鏡又はこれらの組み合わせなどを意味するために使用される。実施形態において、スコープは内視鏡である。実施形態において、スコープは腹腔鏡である。
【0120】
実施形態において、低侵襲性手術システムは、2台以上のカメラ、例えばカニューレに取り付けられたか又はカニューレと一体化された少なくとも1台のカメラと、スコープに取り付けられたか又はスコープと一体化された少なくとも1台のカメラとを含んでなる。
【0121】
低侵襲性手術システムは、1以上の照明要素、例えばスコープに取り付けられたか又はスコープと一体化された照明要素をさらに含んでなることができる。
低侵襲性手術システムは、低侵襲性手術データの生成及び低侵襲性手術の実施のうち少なくともいずれか一方に使用されうる1以上のセンサを追加で含んでなることができる。そのような1以上のセンサには、発光式センサ、機械式センサ、電気センサなどが挙げられる。実施形態において、1以上のセンサは、位置追跡センサ、加速度計、ジャイロスコープ及びその他の動作感知デバイスのうち少なくともいずれかを含んでなる。
【0122】
好都合であるのは、カニューレアセンブリキットの投影される光パターンが、任意選択の他の照明光源及びセンサ光源のうち少なくともいずれかには含まれない少なくとも1つの波長を含んでなることである。
【0123】
低侵襲性手術システムの手術機器は、好都合には、把持具、縫合糸把持具、カッター、シーラー、ステープラー、クリップアプライヤ、剥離鉗子、剪刀、剪断機、吸引器具、クランプ器具、電極、凝固用デバイス、掻爬器、アブレータ、メス、持針器、把針器、へら、鉗子、生検器具及び開創器具、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0124】
コンピュータシステムは、低侵襲性手術データの収集及び低侵襲性手術の実施のうち少なくともいずれか一方のためのハードウェア及びソフトウェアを含んでなることができる。
【0125】
コンピュータシステムは、データ通信状態にあるか又はデータ通信するようになされている1以上のハードウェア要素を含んでなることができる。
実施形態において、コンピュータシステムはカメラから画像データを受け取るためにカメラとのデータ通信状態にある。コンピュータシステムは、手術機器のリアルタイムの配置状態データを測定すること、カニューレアセンブリキットによって放射された光パターンを反射している表面のリアルタイムの局所解剖学的データを測定すること、及びカニューレアセンブリキットによって放射された光パターンを反射している表面のリアルタイムの輪郭を測定することのうち少なくともいずれかのためにプログラムされる。
【0126】
実施形態において、コンピュータシステムは、測定されたデータを、ロボット、データベース、及び表示されるためのモニタのうち少なくともいずれかに伝送するように構成される。
【0127】
実施形態において、手術機器は、ロボットの一部を形成するか、又はロボットによって操作されるようになされる。コンピュータシステムは、測定されたデータをロボットに伝送するように構成されることが好ましい。実施形態において、コンピュータシステム又はコンピュータシステムの少なくとも一部はロボットの一部を形成する。
【0128】
実施形態において、カニューレアセンブリキットは、コンピュータによって制御されるようになされているか又はコンピュータの一部を形成する。
本発明はさらに、患者の皮膚領域より下方の体内構造中の対象手術部位の低侵襲性手術を実施する方法に関する。実施形態において、該方法は、
・上述のようなカニューレアセンブリキットを挿入する皮膚領域を通る切開部を提供することを含んでなる、手術対象部位へのアクセスポートを提供するステップと、
・アクセスポートを通して手術機器を挿入するステップと、
・アクセスポートを通して、又は手術対象部位への追加のアクセスポートを通して、カメラ要素を挿入するステップと、
・カニューレアセンブリキットが光パターンを放射している場合は、その投影器を提供するステップと、
・手術対象部位から反射された光パターンの画像データをカメラによって記録するステップと、
・低侵襲性手術を実施するために手術機器を動かす一方で、記録された画像データに基づいたフィードバックを同時に受け取るステップと
を含んでなる。
【0129】
実施形態において、該方法は、
・上述のようなカメラを備えたカニューレアセンブリキットを挿入する皮膚領域を通る切開部を提供することを含んでなる、手術対象部位へのアクセスポートを提供するステップと、
・アクセスポートを通して手術機器を挿入するステップと、
・カニューレアセンブリキットが光パターンを放射している場合は、その投影器を提供するステップと、
・手術対象部位から反射された光パターンの画像データをカメラによって記録するステップと、
・低侵襲性手術を実施するために手術機器を動かす一方で、記録された画像データに基づいたフィードバックを同時に受け取るステップと
を含んでなる。
【0130】
実施形態において、該方法は、上述のような低侵襲性手術システムを使用することにより低侵襲性手術を実施することを含んでなる。
低侵襲性手術を実施する方法は、術者すなわち外科医、及びロボットのうち少なくともいずれか一方によって実施されうる。
【0131】
例えば実施形態において、外科医は切開及びカニューレアセンブリキットの挿入を実施しておりかつロボットは残りの方法ステップを実施している。
実施形態において、低侵襲性手術を実施する方法全体がロボットによって実施される。記録された画像データは、表示するためにモニタに同時伝送されて、観察者、例えば監督者、外科医、及び訓練生のうち少なくともいずれかがロボットにより実施される低侵襲性手術を観察することが可能であるようになっていてもよい。
【0132】
範囲及び好ましい範囲を含む本発明の特徴はすべて、そのような特徴を組み合わせない特定の理由がないかぎり、本発明の範囲内で様々な方法で組み合わされることが可能である。
【0133】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながらさらに説明する。