(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1制御弁は、前記油圧ポンプからブームシリンダに流れる作動油の流量を制御するブーム用第1制御弁と、前記油圧ポンプからアームシリンダに流れる作動油の流量を制御するアーム用第1制御弁とを含み、
前記第2制御弁は、前記ブームシリンダから前記作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するブーム用第2制御弁と、前記アームシリンダから前記作動油タンクに流れる作動油の流量を制御するアーム用第2制御弁との少なくとも一方を含む、
請求項1に記載のショベル。
前記制御装置は、前記油圧アクチュエータによって動かされる前記作業要素による掘削が行われているか否かを判定し、掘削が行われていると判定した場合に前記第2制御弁の開口面積を増大させる、
請求項1に記載のショベル。
前記制御装置は、前記油圧アクチュエータから流出する作動油を別の油圧アクチュエータに供給する回生が行われているか否かを判定し、回生が行われていると判定した場合に前記第2制御弁の開口面積を調整して回生量を増大させる、
請求項1に記載のショベル。
下部走行体と、前記下部走行体上に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に搭載されるエンジンと、前記エンジンに連結された油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動されて作業要素を動かす油圧アクチュエータと、を備えたショベルにおけるショベル用コントロールバルブであって、
前記ショベル用コントロールバルブは、
バルブブロックと、
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに流れる作動油の流量を制御する第1スプール弁と、
前記油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する第2スプール弁と、を有し、
前記第1スプール弁及び前記第2スプール弁は、前記ショベル用コントロールバルブの前記バルブブロック内に形成されている、
ショベル用コントロールバルブ。
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプから前記ブームシリンダに流れる作動油の流量を制御するブーム用第1制御弁と、前記油圧ポンプからアームシリンダに流れる作動油の流量を制御するアーム用第1制御弁と、を含み、
前記ブーム用第2制御弁は、前記ブーム用第1制御弁と前記アーム用第1制御弁との間に配置されている、
請求項7に記載のショベル用コントロールバルブ。
前記第1スプール弁は、前記油圧ポンプからブームシリンダに流れる作動油の流量を制御するブーム用第1制御弁と、前記油圧ポンプから前記アームシリンダに流れる作動油の流量を制御するアーム用第1制御弁と、を含み、
前記アーム用第2制御弁は、前記ブーム用第1制御弁と前記アーム用第1制御弁との間に配置されている、
請求項9に記載のショベル用コントロールバルブ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、
図1を参照して、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。
図1は、ショベルの側面図である。
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端に作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載されている。
【0013】
図2は、
図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示す。
【0014】
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、圧力センサ29、コントローラ30、及び、圧力制御弁31を含む。
【0015】
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施例では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
【0016】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。メインポンプ14は、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0017】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施例では、レギュレータ13は、例えば、メインポンプ14の吐出圧、コントローラ30からの制御信号等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0018】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及び圧力制御弁31を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
【0019】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する第1制御弁(第1スプール弁)としての制御弁171〜176と第2制御弁(第2スプール弁)としての制御弁177とを含む。そして、コントロールバルブ17は、それら制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。制御弁171〜176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。コントロールバルブ17は、制御弁177を通じ、油圧アクチュエータから流出する作動油を作動油タンクに選択的に流出させる。制御弁177は、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。
【0020】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0021】
圧力センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。圧力センサ29は、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0022】
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、例えば、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。コントローラ30は、作業内容判定部300及びメータアウト制御部301のそれぞれに対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、それぞれに対応する処理をCPUに実行させる。
【0023】
具体的には、コントローラ30は、各種センサの出力に基づいて作業内容判定部300及びメータアウト制御部301のそれぞれによる処理を実行する。その後、コントローラ30は、作業内容判定部300及びメータアウト制御部301のそれぞれの処理結果に応じた制御信号を適宜にレギュレータ13、圧力制御弁31等に対して出力する。
【0024】
例えば、作業内容判定部300は、アーム5の閉じ動作が掘削作業等の高負荷作業のための動作であるか或いは均し作業等の低負荷作業のための動作であるかを判定する。本実施例では、作業内容判定部300は、アームシリンダ8のボトム側油室の圧力を検出するアームボトム圧センサの検出値が所定値以上の場合に高負荷作業のための動作であると判定する。そして、高負荷作業であると作業内容判定部300が判定した場合、メータアウト制御部301は圧力制御弁31に対して制御指令を出力する。
【0025】
圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。本実施例では、圧力制御弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15からコントロールバルブ17内の制御弁177のパイロットポートに導入される制御圧を調整する電磁弁である。コントローラ30は、例えば、アームシリンダ8のロッド側油室と作動油タンクとを繋ぐ管路に設置されている制御弁177を作動させて制御弁177に関する流路の開口面積を増大させる。この構成により、コントローラ30は、高負荷作業のためにアーム5を閉じる際にアームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに流れる作動油が発生させる圧力損失を低減できる。
【0026】
作業内容判定部300は、ブーム4の下げ動作が高負荷作業のための動作であるか或いは低負荷作業のための動作であるかを判定してもよい。この場合、作業内容判定部300は、ブームシリンダ7のロッド側油室の圧力を検出するブームロッド圧センサの検出値が所定値以上の場合に高負荷作業のための動作であると判定する。そして、高負荷作業であると作業内容判定部300が判定した場合、メータアウト制御部301は圧力制御弁31に対して制御指令を出力する。圧力制御弁31は、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクとを繋ぐ管路に設置されている制御弁177を作動させて制御弁177に関する流路の開口面積を増大させる。この構成により、コントローラ30は、高負荷作業のためにブーム4を下げる際にブームシリンダ7のボトム側油室から作動油タンクに流れる作動油が発生させる圧力損失を低減できる。
【0027】
作業内容判定部300は、ブーム下げ時に回生が行われているか否かを判定してもよい。ブーム下げ時の回生は、例えば、ブームシリンダ7のボトム側油室から流出する作動油をアームシリンダ8のロッド側油室に流入させてアーム5を開く制御である。作業内容判定部300は、例えば圧力センサ29の出力に基づいてブーム下げ時の回生が行われているか否かを判定する。そして、ブーム下げ時の回生が行われていると作業内容判定部300が判定した場合、メータアウト制御部301はブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクとを繋ぐ管路に設置されている制御弁に関する流路の開口面積を低減させる。例えば、メータアウト制御部301は、ブームシリンダ7のボトム側油室から第1制御弁(制御弁175)への作動油の流れを任意の手段で遮断する。そして、圧力制御弁31に対して制御指令を出力し、ブームシリンダ7のボトム側油室と作動油タンクとを繋ぐ管路に設置されている第2制御弁(制御弁177)に関する流路の開口面積を調整する。典型的には、第2制御弁に関する流路の開口面積は、ブーム下げ時の回生が行われていないと判定されたときの第1制御弁に関する流路の開口面積より小さくなるように調整される。この構成により、コントローラ30は、ブームシリンダ7のボトム側油室からアームシリンダ8のロッド側油室に流れる作動油の量(回生量)を増大させることができる。
【0028】
次に
図3を参照し、ショベルに搭載される油圧システムの詳細について説明する。
図3は、
図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。
図3は、
図2と同様に、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン、及び電気制御ラインを、それぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示す。
【0029】
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、
図2のメインポンプ14に対応する。
【0030】
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175A及び176Aを通る作動油ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175B及び176Bを通る作動油ラインである。
【0031】
制御弁171は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Aへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0032】
制御弁172は、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Bへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Bが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0033】
制御弁173は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
【0034】
制御弁174は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
【0035】
制御弁175A、175Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるブーム用第1制御弁としてのスプール弁である。本実施例では、制御弁175Aは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
【0036】
制御弁176A、176Bは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるアーム用第1制御弁としてのスプール弁である。
【0037】
制御弁177Aは、アームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに流出する作動油の流量を制御するアーム用第2制御弁としてのスプール弁である。制御弁177Bは、ブームシリンダ7のボトム側油室から作動油タンクに流出する作動油の流量を制御するブーム用第2制御弁としてのスプール弁である。制御弁177A、177Bは
図2の制御弁177に対応する。
【0038】
制御弁177A、177Bは、最小開口面積(開度0%)の第1弁位置と最大開口面積(開度100%)の第2弁位置とを有する。制御弁177A、177Bは、第1弁位置と第2弁位置との間で無段階に移動可能である。
【0039】
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Aの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する作動油ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Bの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
【0040】
レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、
図2のレギュレータ13に対応する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
【0041】
アーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176A、176Bのパイロットポートに導入させる。具体的には、アーム操作レバー26Aは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Aの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Bの左側パイロットポートに作動油を導入させる。アーム操作レバー26Aは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Aの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Bの右側パイロットポートに作動油を導入させる。
【0042】
ブーム操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。ブーム操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175A、175Bのパイロットポートに導入させる。具体的には、ブーム操作レバー26Bは、ブーム上げ方向に操作された場合に、制御弁175Aの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Bの左側パイロットポートに作動油を導入させる。一方、ブーム操作レバー26Bは、ブーム下げ方向に操作された場合には、制御弁175Aの左側パイロットポートに作動油を導入させることなく、制御弁175Bの右側パイロットポートにのみ作動油を導入させる。
【0043】
圧力センサ29A、29Bは、圧力センサ29の一例であり、アーム操作レバー26A、ブーム操作レバー26Bに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
【0044】
左右走行レバー(又はペダル)、バケット操作レバー、及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、バケット6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、アーム操作レバー26Aと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ29Aの場合と同様、対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
【0045】
コントローラ30は、圧力センサ29A等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13L、13Rに対して制御信号を出力し、メインポンプ14L、14Rの吐出量を変化させる。
【0046】
圧力制御弁31A、31Bは、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15から制御弁177A、177Bのパイロットポートに導入される制御圧を調整する。圧力制御弁31A、31Bは、
図2の圧力制御弁31に対応する。
【0047】
圧力制御弁31Aは、制御弁177Aを第1弁位置と第2弁位置の間の任意の位置で停止できるように制御圧を調整可能である。圧力制御弁31Bは、制御弁177Bを第1弁位置と第2弁位置の間の任意の位置で停止できるように制御圧を調整可能である。
【0048】
ここで、
図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
【0049】
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁176A、176Bのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
【0050】
破線で示されるネガコン圧管路41L、41Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧をレギュレータ13L、13Rに伝達するためのパイロットラインである。
【0051】
レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。本実施例では、レギュレータ13L、13Rは、導入されるネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、導入されるネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
【0052】
具体的には、
図3で示されるように、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
【0053】
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、低下したネガコン圧を受けるレギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
【0054】
上述のような構成により、
図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
【0055】
図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
【0056】
次に
図4〜
図6を参照し、制御弁177A及び制御弁177B(
図4では不可視。)の構成について説明する。
図4はコントロールバルブ17の部分断面図である。
図5は
図4の一点鎖線で示す線分L1を含む平面を−X側から見た制御弁177A及び制御弁177Bの部分断面図である。
図6は
図4の二点鎖線で示す線分L2を含む平面を−X側から見た制御弁176Aの部分断面図である。
図4は、
図5の一点鎖線で示す線分L3と
図6の一点鎖線で示す線分L4とを含む平面を+Z側から見た部分断面図に相当する。
図4の太い実線矢印はセンターバイパス管路40Lにおける作動油の流れを示す。
【0057】
本実施例では、制御弁175A、制御弁176A、制御弁177A、及び制御弁177Bはコントロールバルブ17のバルブブロック17B内に形成されている。制御弁177A及び制御弁177Bは、制御弁175Aと制御弁176Aとの間に配置されている。すなわち、制御弁177A及び制御弁177Bは制御弁175Aの+X側で且つ制御弁176Aの−X側に配置されている。
【0058】
図4に示すように、センターバイパス管路40Lは、制御弁175Aのスプールの下流側で左右2つの管路に分岐し、その後に合流して1つの管路に戻る。そして、1つの管路の状態で次の制御弁176Aに通じている。アーム操作レバー26A及びブーム操作レバー26Bが何れも中立状態の場合、センターバイパス管路40Lを流れる作動油は、
図4の太い実線矢印で示すように、各制御弁のスプールを横切ってその下流側に流れる。
【0059】
制御弁177Bは、
図5に示すように、制御弁177Aの+Z側に配置されている。
図5は、制御弁177Aが開度0%の第1弁位置にあり、制御弁177Bが開度100%の第2弁位置にあることを示す。制御弁177Aは、第1弁位置のときにメータアウト管路45と戻り油管路49との連通を遮断する。そして、圧力制御弁31Aが生成する制御圧の上昇に応じてバネ177Asが収縮すると−Y側に移動してメータアウト管路45と戻り油管路49とを繋ぐ流路の開口面積を増大させる。メータアウト管路45は、アームシリンダ8のロッド側油室と制御弁177Aとを繋ぐ管路である。同様に、制御弁177Bは、第1弁位置のときにメータアウト管路46と戻り油管路49との連通を遮断する。そして、圧力制御弁31Bが生成する制御圧の上昇に応じてバネ177Bsが収縮すると−Y側に移動してメータアウト管路46と戻り油管路49とを繋ぐ流路の開口面積を増大させる。メータアウト管路46は、ブームシリンダ7のボトム側油室と制御弁177Bとを繋ぐ管路である。
【0060】
制御弁176Aのスプールは、
図6の双方向矢印で示すように、アーム操作レバー26Aが閉じ方向に操作された場合に−Y側に移動し、開き方向に操作された場合に+Y側に移動する。アーム操作レバー26Aが操作されている場合、センターバイパス管路40Lの作動油は、制御弁176Aのスプールによって遮断され、その下流側には流れない。制御弁176Aは、パラレル管路42Lがブリッジ管路44Lを介してアームボトム管路47B及びアームロッド管路47Rの何れか一方に選択的に連通可能となるように構成されている。具体的には、スプールが−Y方向に移動すると、センターバイパス管路40Lが遮断される。そして、スプールに形成された溝によってブリッジ管路44Lとアームボトム管路47Bとが連通され、且つ、アームロッド管路47Rと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Lを流れる作動油が接続管路42La、ブリッジ管路44L、及びアームボトム管路47Bを通ってアームシリンダ8のボトム側油室に流入する。また、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油がアームロッド管路47R及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が伸張してアーム5が閉じられる。或いは、スプールが+Y方向に移動すると、センターバイパス管路40Lが遮断される。そして、スプールに形成された溝によってブリッジ管路44Lとアームロッド管路47Rとが連通され、且つ、アームボトム管路47Bと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Lを流れる作動油が接続管路42La、ブリッジ管路44L、及びアームロッド管路47Rを通ってアームシリンダ8のロッド側油室に流入する。また、アームシリンダ8のボトム側油室から流出する作動油がアームボトム管路47B及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が収縮してアーム5が開かれる。
【0061】
次に
図7〜
図9を参照し、コントローラ30が制御弁177Aの開閉を制御する処理(以下、「メータアウト処理」とする。)について説明する。
図7はメータアウト処理の流れを示すフローチャートである。アーム閉じ操作中、コントローラ30は所定の制御周期で繰り返しこのメータアウト処理を実行する。
図8及び
図9は、
図4に対応し、アーム操作レバー26Aが操作されたときのコントロールバルブ17の状態を示す。そして、
図8は高負荷作業が行われているときの状態を示し、
図9は低負荷作業が行われているときの状態を示す。
【0062】
アーム操作レバー26Aがアーム閉じ方向に操作されると、制御弁176Aは
図8及び
図9の矢印AR1で示すように−Y方向に移動してセンターバイパス管路40Lを遮断する。また、制御弁176Aのスプールに形成された溝によってブリッジ管路44Lとアームボトム管路47Bとが連通され、且つ、アームロッド管路47Rと戻り油管路49とが連通される。そして、パラレル管路42Lを流れる作動油が接続管路42La、ブリッジ管路44L、及びアームボトム管路47Bを通ってアームシリンダ8のボトム側油室に流入する。また、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油がアームロッド管路47R及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。その結果、アームシリンダ8が伸張してアーム5が閉じられる。
図8及び
図9は、パラレル管路42L及びブリッジ管路44Lを流れる作動油を太い点線矢印で表す。また、ブリッジ管路44Lからアームボトム管路47Bに流れる作動油、及び、アームロッド管路47Rから戻り油管路49に流れる作動油を太い実線矢印で表す。
【0063】
メータアウト処理では、
図7に示すようにコントローラ30の作業内容判定部300はアーム閉じによる高負荷作業が行われているか否かを判定する(ステップS1)。例えば、アームボトム圧センサの検出値が所定値以上の場合にアーム閉じによる高負荷作業が行われていると判定する。
【0064】
アーム閉じによる高負荷作業が行われていると作業内容判定部300が判定した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30のメータアウト制御部301は、メータアウト管路45と戻り油管路49とを繋ぐ流路の開口面積を増大させる(ステップS2)。本実施例では、メータアウト制御部301は、圧力制御弁31Aに対して電流指令を出力することで、圧力制御弁31Aが生成する制御圧を上昇させる。制御弁177Aは、
図8の矢印AR2で示すように、制御圧の上昇に応じて−Y側に移動し、メータアウト管路45と戻り油管路49とを繋ぐ流路の開口面積を増大させる。その結果、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油は、その大部分がメータアウト管路45及び戻り油管路49を通って作動油タンクに排出される。
図8は、アームロッド管路47Rからメータアウト管路45を通って戻り油管路49に流れる作動油を太い破線矢印で表す。この構成により、コントローラ30は、アームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに作動油を流出させる際に発生する圧力損失を低減でき、高負荷作業の際に油圧エネルギが無駄に消費されてしまうのを防止できる。
【0065】
アーム閉じによる低負荷作業が行われていると作業内容判定部300が判定した場合(ステップS1のNO)、メータアウト制御部301は、メータアウト管路45と戻り油管路49とを繋ぐ流路の開口面積を増大させない。制御弁177Aは、
図9に示すように静止したままとなり、メータアウト管路45と戻り油管路49とを繋ぐ流路を連通させない。その結果、アームシリンダ8のロッド側油室から流出する作動油は、その全てが制御弁176Aのスプールに形成された溝によって連通されるアームロッド管路47Rと戻り油管路49とを繋ぐ流路を通って作動油タンクに排出される。この構成により、コントローラ30は、アームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに流出する作動油の流量を適切に制限することができ、低負荷作業の際にアーム5の動きが過度に速まってしまうのを防止できる。
【0066】
上述の実施例では、コントローラ30は、アーム閉じによる高負荷作業が行われていると判定した場合に制御弁177Aを制御して開口面積を増大させることでアームシリンダ8のロッド側油室から作動油タンクに作動油を流出させる際に発生する圧力損失を低減させる。この処理はブーム下げを伴う高負荷作業が行われていると判定した場合においても実行される。具体的には、コントローラ30は、ブーム下げを伴う高負荷作業が行われていると判定した場合に制御弁177Bを制御して開口面積を増大させることでブームシリンダ7のボトム側油室から作動油タンクに作動油を流出させる際に発生する圧力損失を低減させる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0068】
例えば、上述の実施例では、制御弁177はコントロールバルブ17のバルブブロック17B内に組み込まれている。そのため、バルブブロック17Bの外部に制御弁177を取り付ける必要がなく、制御弁177を含む低コストでコンパクトな油圧システムを実現できる。但し、バルブブロック17Bの外部に制御弁177を取り付ける構成を排除しない。すなわち、制御弁177はバルブブロック17Bの外部に設置されていてもよい。
【0069】
また、上述の実施例では、各油圧アクチュエータに対応する第1スプール弁で個別にブリードオフ制御を実行する構成が採用されているが、センターバイパス管路と作動油タンクとの間に設けられた統一ブリードオフ弁を用いて複数の油圧アクチュエータに関するブリードオフ制御を統一的に実行する構成が採用されてもよい。この場合、各第1スプール弁が中立位置から移動した場合であってもセンターバイパス管路の流路面積が低減しないよう、すなわち、各第1スプール弁がセンターバイパス管路を遮断しないように構成される。この統一ブリードオフ弁が用いられた場合であっても、本願発明の適用に際しては、センターバイパス管路とは別に、パラレル管路が形成される。
【0070】
本願は、2016年3月22日に出願した日本国特許出願2016−057337号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。