特許第6776345号(P6776345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6776345-円形脱毛症の治療 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776345
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】円形脱毛症の治療
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20201019BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20201019BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C07D519/00 311
   A61K31/519
   A61P17/14
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-515582(P2018-515582)
(86)(22)【出願日】2016年9月22日
(65)【公表番号】特表2018-528238(P2018-528238A)
(43)【公表日】2018年9月27日
(86)【国際出願番号】EP2016072531
(87)【国際公開番号】WO2017050891
(87)【国際公開日】20170330
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】15186644.9
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】特願2015-190849(P2015-190849)
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508069752
【氏名又は名称】レオ ファーマ アクティーゼルスカブ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ミケル・シエラ
(72)【発明者】
【氏名】トーア・ラブダ
(72)【発明者】
【氏名】谷本 敦男
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 雄一
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/013785(WO,A1)
【文献】 特開2011−46700(JP,A)
【文献】 特開2014−224109(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリル又はその製薬上許容される塩を有効成分とする、円形脱毛症の治療剤又は予防剤。
【請求項2】
治療剤又は予防剤が外用剤である、請求項1に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項3】
外用剤が軟膏である、請求項1又は2に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項4】
軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、請求項3に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項5】
軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、請求項3に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項6】
軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、請求項3に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項7】
有効成分が1.7mg/cmの分量で投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項8】
有効成分が1日2回の塗布にて投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の治療剤又は予防剤。
【請求項9】
有効成分が12週間1日2回の塗布にて投与されるように用いられることを特徴とする、請求項8に記載の治療剤又は予防剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの新規医薬用途に関する。より詳細には、本発明は、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを含有する円形脱毛症治療剤又は予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
円形脱毛症(AA)は、しばしば自然に消える頭皮の円形の斑点から、一生継続しうる完全な脱毛の症状に及ぶ脱毛を生じる自己免疫疾患である。FDAに認可されたAAの治療は現在存在せず、重度の疾患を有する患者の治療レジメンは経験的であり、しばしば不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−46700号公報(日本たばこ産業株式会社)
【特許文献2】国際公開第2011/013785号公報(日本たばこ産業株式会社)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】MCELWEE, KJ et al. Experimental induction of alopecia areata-like hair loss in C3H/HeJ mice using full-thickness skin grafts. J Invest Dermatol. Nov 1998, Vol. 111, No. 5, pages 797-803
【発明の概要】
【0005】
(A):
本発明が解決しようとする課題は、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの新規医薬用途を提供することである。
本発明者らは、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが円形脱毛症の治療又は予防に有効であること、および3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが円形脱毛症治療用外用剤又は円形脱毛症予防用外用剤として有効であることを初めて見出し、本発明を完成させた。
【0006】
具体的には、本発明は以下の局面を含む。
[1]以下の化学構造式:
【化1】

で表される化合物又はその製薬上許容される塩を有効成分とする、円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0007】
[2]円形脱毛症治療剤又は予防剤が外用剤である、[1]に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0008】
[3]外用剤が軟膏である、[2]に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0009】
[4][3]の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、[3]に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0010】
[5][3]の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、[3]に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0011】
[6][3]の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、[3]に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0012】
本発明は、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの新規医薬用途を提供する。
【0013】
本発明はまた、円形脱毛症治療における、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの使用を提供する。
【0014】
本発明はさらに、1日2回の塗布にて投与される前記使用を提供する。
本発明はさらに、30mg/gの濃度で投与される前記使用を提供する。
本発明はさらに、10mg/gの濃度で投与される前記使用を提供する。
本発明はさらに、5mg/gの濃度で投与される前記使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】C3H/HeJマウス脱毛症モデルにおける、化合物Aによる発毛の促進を表す図。(実施例1)
図2】C3H/HeJマウス脱毛症モデルにおける、化合物Aによる発毛の促進を表す図。(実施例2)
【0016】
本明細書で用いられる用語および表現を以下に定義する:
以下の化学構造式:
【化2】

で表される化合物は、化合物Aと称される。
【0017】
化合物Aの化学名は3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルである。
化合物Aは特許文献1および2の製造例6に記載される方法に従って製造することができる。
化合物AはJAKを阻害することが知られている。
【0018】
「製薬上許容される塩」は、化合物Aの任意の非毒性塩であってもよく、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、およびアミノ酸との塩などが挙げられる。
【0019】
無機酸との塩としては塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸との塩などが挙げられる。
有機酸との塩としてはシュウ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸との塩などが挙げられる。
無機塩基との塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
有機塩基との塩としてはメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミンとの塩などが挙げられる。
アミノ酸との塩としてはリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸との塩などが挙げられる。
【0020】
周知の方法に従って、化合物Aと無機塩基、有機塩基、無機酸、有機酸又はアミノ酸とを反応させることにより、各々の塩が得られうる。
【0021】
化合物Aは同位体(例えば、H、14C、35S等)で標識されていてもよい。
好ましくは、化合物A又はその製薬上許容される塩は、実質的に精製された、化合物A又はその製薬上許容される塩である。さらに好ましくは、80%以上の純度に精製された、化合物A又はその製薬上許容される塩である。
【0022】
「医薬組成物」としては錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤、乳化剤および懸濁剤などの経口剤、又は外用剤、坐薬、注射剤、点眼剤、経鼻剤および経肺剤等の非経口剤が挙げられる。「医薬組成物」の好ましい例としては、外用剤が挙げられる。「医薬組成物」のさらに好ましい例は、軟膏である。
【0023】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤の技術分野において公知の方法に従って、化合物A又はその製薬上許容される塩を、少なくとも1種の製薬上許容される担体と、適宜、適量混合することによって、製造される。医薬組成物中の化合物A又はその製薬上許容される塩の含量は、剤形、投与量などにより異なるが、例えば、組成物全体の0.1〜100重量%である。例えば、含量は組成物全体の0.25、0.30、0.50、0.75、1.0、1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、2.75、3.00、3.25、3.50、3.75又は4.00重量%である。医薬組成物中の化合物A又はその製薬上許容される塩の好ましい含量は、組成物全体の0.3重量%、0.5重量%、1重量%、又は3重量%である。ここで、各数値は0.25の幅で増大、又は減少してもよい。好ましくは、各数値は0.1の幅で増大又は減少してもよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語「有効量」は、患者の治療が未治療と比較して、有効であるのに十分な投薬量を意味する。
本明細書で用いられる用語、化合物の「治療上有効量」は、示される疾患およびその合併症の臨床症状を治療、軽減又は部分的に抑止するのに十分な分量を意味する。これを達成するのに十分な分量を、「治療上有効量」と定義する。各目的についての有効量は、疾患又は傷害の重篤度、並びに対象の体重および全身状態によって決まる。
【0025】
「製薬上許容される担体」としては、製剤素材として慣用の様々な有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば、固形製剤における賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤および滑沢剤、液体製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤、並びに、半固形製剤における基剤、乳化剤、湿潤剤、安定剤、安定化剤、分散剤、可塑剤、pH調節剤、吸収促進剤、ゲル化剤、防腐剤、充填剤、溶解剤、溶解補助剤、および懸濁化剤が挙げられる。さらに必要に応じて、保存剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの添加物を用いてもよい。
【0026】
「賦形剤」としては乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、トウモロコシデンプン、デキストリン、微結晶セルロース、結晶セルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム等が挙げられる。
「崩壊剤」としてはカルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース等が挙げられる。
【0027】
「結合剤」としてはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、結晶セルロース、白糖、デキストリン、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、アラビアゴム等が挙げられる。
「流動化剤」としては軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
「滑沢剤」としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
「溶剤」としては精製水、エタノール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
【0029】
「溶解補助剤」としてはプロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
「懸濁化剤」としては、塩化ベンザルコニウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。
【0030】
「等張化剤」としてはブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、D−マンニトール等が挙げられる。
「緩衝剤」としてはリン酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
「無痛化剤」としてはベンジルアルコール等が挙げられる。
「基剤」としては水、動物油又は植物油(例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ゴマ油、ヒマシ油、スクワラン等)、低級アルコール(例えば、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、フェノール等)、高級脂肪酸およびそのエステル、ロウ類、高級アルコール、多価アルコール、炭化水素類(例えば、白色ワセリン、流動パラフィン、パラフィン、固形パラフィン等)、親水ワセリン、精製ラノリン、吸水軟膏、加水ラノリン、親水軟膏、デンプン、プルラン、アラビアゴム、トラカガントガム、ゼラチン、デキストラン、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル(例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)、プロピレングリコール、マクロゴール(例えば、マクロゴール200〜600等)、およびそれらの2種以上の組合せが挙げられる。好ましくは、基剤は白色ワセリン、固形パラフィンおよびスクワランの組合せである。
【0032】
「保存剤」としてはパラオキシ安息香酸エチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸等が挙げられる。
「抗酸化剤」としては亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0033】
「着色剤」としては食用色素(例えば、食用赤色2号又は3号、食用黄色4号又は5号等)、β−カロテン等が挙げられる。
「甘味剤」としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アルパルテーム等が挙げられる。
【0034】
担体は、好ましくは、白色ワセリン、固形パラフィンおよびスクワランの組合せである。白色ワセリン、固形パラフィンおよびスクワランは、それぞれ70〜90重量%、5〜10重量%、および5〜20重量%の配合比率で組み合わせることができる。好ましい製剤例は化合物A、白色ワセリン、5±2重量%の固形パラフィン及び10±2重量%のスクワランを含有する。
【0035】
本発明の医薬組成物は、ヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等)並びにヒトに対しても、経口的又は非経口的(例えば、局所、直腸、静脈投与等)に投与することができる。投与量は対象、疾患、症状、剤形、投与ルート等により異なるが、例えば、有効成分である化合物Aの含量として、1日あたり、通常約0.01mg〜1gの範囲である。当該用量は、1回で、又は数回に分けた用量で投与してもよい。
【0036】
外用剤は、剤形などに応じて、例えば、塗布、塗擦又は噴霧により適用できる。外用剤の患部への適用量は、有効成分の含有量などに応じて選択でき、外用剤は、例えば1日1回又は数回に分けて適用できる。好ましい適用は、1日1回又は1日2回である。
【0037】
語句「JAK」は、JAKファミリーに属するJAK1、JAK2、JAK3およびTYK2のうち1つ以上の酵素をいう。
語句「JAKを阻害する」とは、JAKの機能を阻害してその活性を消失又は減弱することを意味し、JAKファミリーに属する1つ以上の酵素を阻害することを意味する。
語句「JAKを阻害する」は、好ましくは「ヒトJAKを阻害する」ことをいう。機能の阻害又は活性の消失もしくは減弱は、好ましくはヒトの臨床適用の場面で行われる。
【0038】
「JAK阻害剤」とは、JAKを阻害する任意の物質であることができ、例えば、低分子化合物、核酸、ポリペプチド、タンパク質、抗体、ワクチン等であってよい。「JAK阻害剤」は、好ましくは「ヒトJAK阻害剤」である。
JAK阻害剤は、好ましくは、化合物A又はその製薬上許容される塩であり、さらに好ましくは化合物Aである。
【0039】
本明細書で用いられる用語、治療は症状の改善、重症化の防止、寛解の維持、再燃の防止、および再発の防止を含む。用語、予防は症状の発症を抑制することをいう。
【0040】
用語、治療はまた、疾患、障害もしくは病状の進行の遅延、症状および合併症の改善、軽減もしくは緩和、並びに/又は疾患、障害もしくは病状の治癒もしくは除去も含みうる。用語、治療はまた、疾患、病状又は障害を治療するための、患者の管理およびケアを意味してもよい。
本明細書で用いられる用語、疾患、障害および病状は交互に用いられ、ヒトの正常な生理学的状態ではない、患者の状態を特定する。
【0041】
本発明の一態様としては、治療上有効量の3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを哺乳動物に投与することを特徴とする、円形脱毛症の治療又は予防方法が挙げられる。
本発明の一態様としては、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルおよび製薬上許容される担体を含む、円形脱毛症の治療又は予防のための医薬組成物が挙げられる。
【0042】
本発明の一態様としては、円形脱毛症の治療又は予防のための、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの使用が挙げられる。
【0043】
哺乳動物とは、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル等であり、好ましくはヒトである。
ヒトとは、好ましくは医療を必要とする有病者である。
本発明は、好ましくは、化合物Aを含有する、円形脱毛症治療剤又は予防剤である。
本発明は、好ましくは、化合物Aおよび製薬上許容される担体を含む医薬組成物である。
【0044】
(B):
3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリル(化合物A)は、JAKキナーゼ阻害剤として、特許文献1および2に既に記述されていた。1つの局面として、本発明は脱毛症の外用療法における効果を記載する。当該化合物は、30mg/gの活性化合物、白色ワセリン、固形パラフィンおよびスクワランを含む軟膏に製剤化してもよい。脱毛症の治療は、少なくとも1日2回の塗布でありうる。治療期間は少なくとも12週間でありうる。
【0045】
このように、本発明は以下の局面を提供する:
1.円形脱毛症の治療に用いるための3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリル。
2.円形脱毛症の外用療法に用いるための、前記に記載の化合物。
3.12週間、1日2回の塗布にて投与される、前記の局面のいずれかに記載の化合物。
4.軟膏にて投与される、前記の局面のいずれかに記載の化合物。
5.30mg/gの濃度で投与される、前記の局面のいずれかに記載の化合物。
6.10mg/gの濃度で投与される、前記の局面のいずれかに記載の化合物。
7.5mg/gの濃度で投与される、前記の局面のいずれかに記載の化合物。
【0046】
本発明は以下を提供する:
8.対象に3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを投与することによって、治療を必要とする対象の円形脱毛症を治療する方法。
9.投与が外用である、前記6に記載の方法。
10.投与が12週間1日2回の投与である、前記6又は7のいずれかに記載の方法。
11.前記6に記載の化合物が軟膏にて投与される、前記6から8のいずれかの局面に記載の方法。
12.当該化合物が30mg/gの濃度で投与される、前記6から9のいずれかに記載の方法。
13.当該化合物が10mg/gの濃度で投与される、前記6から9のいずれかに記載の方法。
14.当該化合物が5mg/gの濃度で投与される、前記6から9のいずれかに記載の方法。
【0047】
また、本発明は以下を提供する:
15.円形脱毛症の治療剤の製造における、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの使用。
16.投与が外用である、前記11に記載の使用。
17.投与が12週間1日2回の投与である、前記11又は12のいずれかに記載の使用。
18.当該化合物が軟膏にて投与される、前記11から13のいずれかに記載の使用。
19.当該化合物が30mg/gの濃度で投与される、前記11から14のいずれかに記載の使用。
20.当該化合物が10mg/gの濃度で投与される、前記11から14のいずれかに記載の使用。
21.当該化合物が5mg/gの濃度で投与される、前記11から14のいずれかに記載の使用。
【0048】
前記の局面に記載される、本発明のいずれかの局面において、本発明はまた以下を提供する:
200cmから700cm
又は頭皮面積の30%から100%の塗布面積サイズ。
前記の局面に記載される、本発明のいずれかの局面において、本発明はまた以下を提供する:
化合物A1.7mg/cmの用量範囲。
【0049】
本発明および前記の局面のいずれかに関連する実施態様において、本発明の以下の実施態様が好ましい:
好ましい実施態様において、Visit2(Day1、ベースライン)からVisit6(12週、治療の終了)までに、SALTスコアの変化がある。
別の好ましい実施態様において、報告された有害事象による安全性プロファイル、曝露および標準安全性データは許容可能である。
【0050】
別の実施態様において、以下のパラメーターが(独立して、又は同時に)改善される:
−SALTスコア絶対値
−ベースラインからのSALTスコアの変化
−ベースラインからのSALTスコアの変化率
−ベースライン(Day1、ベースライン)と比較して、Visit6(12週、治療の終了)におけるSALTスコアが少なくとも50%減少する事象
−毛髪の長さ
−発毛速度
−毛髪の相対的な太さ
−毛髪の種類(産毛、終毛)
−毛色
−標準写真に基づく毛髪の再成長の包括的アセスメント
−毛髪の再成長の主観的包括的アセスメント(SGA)
−円形脱毛症のクオリティ・オブ・ライフからの評価項目の導出
−治療満足度質問表からの評価項目の導出
【0051】
円形脱毛症は炎症誘発性脱毛の最も一般的な要因である。それは、T細胞によって媒介される自己免疫性の脱毛症であり、一般的に頭皮に禿げた部分を生じる。当該疾患は予測不可能な経過があり、長期間の寛解をもたらす治癒又は満足のいく治療法の選択肢は、現在存在しない。円形脱毛症は、クオリティ・オブ・ライフおよび自尊心に大きな悪影響を及ぼし、新たな効果的な治療の選択肢には、満たされていない大きな医療ニーズがある。米国では、円形脱毛症は約450万人の人々が罹患し、罹患率は0.1%から0.2%であると推定される。脱毛の臨床症状は変化する。最も一般的な症状は、頭部に1つ以上の禿げた限局性の斑点を有する円形脱毛症(90%)である。一般的に、罹患した皮膚は、炎症の徴候がない。短く脆弱な毛(いわゆるエクスクラメーション・ポイント)が、しばしば病斑周辺に見られる。約7%の患者が、頭髪全体の脱毛を伴う全頭脱毛症、又は頭皮および体の脱毛を伴う全身性脱毛症に進行しうる。数人の患者は、びまん性円形脱毛症又は着色した毛髪の優先的な脱毛を経験する。爪の変化が患者の20%に見られる。毛の自発的な再成長は、1年以内に、特に軽度の症例で、50%の患者に起こりうる。現在の根拠に基づく治療は、局所(注入を含む)又は全身性コルチコステロイド、およびジフェニルシクロプロペノンおよびジニトロクロロベンゼンなどの感作物質に限られる。しかしながら、長期の使用はしばしば許容されておらず、効果は満足のいくものではない。メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンA又はアザチオプリンなどの全身性免疫抑制剤が効果的である根拠はない。また、局所的なタクロリムス、寒冷療法又は紫外線Aと、ソラレン(PUVA)の経口投与との組み合わせについての、確実な根拠もない。効果的な治療法が存在せず、患者のクオリティ・オブ・ライフにしばしば破壊的な影響をもたらすため、満足のいく結果又は安全性を裏付ける証拠がないにもかかわらず、多くの患者は重大な薬物副作用の危険を冒し、様々な治療の適応外治療を試みることを厭わない。
【0052】
本発明は、12週間にわたる、円形脱毛症の対象の脱毛治療において、1日2回、30mg/gの化合物Aを含む外用軟膏の有効性を、軟膏ビヒクルと比較した臨床試験を提供する。本発明は前記の治療を用いた、円形脱毛症の安全な治療を提供する。
【0053】
発毛の基準として以下のパラメーターを定義する:
−治療中の、SALTスコアによる毛髪の再成長の時間経過(絶対値、絶対的変化、変化率)(SALTスコアの詳細については以下を参照されたい)
−標準写真を用いた治療中の包括的アセスメントおよび独立した専門家のレビューによる毛髪の再成長
−治療中の毛髪の長さ、発毛速度、相対的な太さ、毛髪の種類、および色
【0054】
また、主観的な基準としては:
−治療中の毛髪の再成長の主観的包括的アセスメント(SGA)
−ベースラインおよび治療の終了時における、円形脱毛症のクオリティ・オブ・ライフの質問表
−治療の終了時における、薬物療法についての治療満足度質問表
−定常状態(治療4週間)における全身の薬物動態
【0055】
好ましい実施態様において、Visit2(Day1、ベースライン)からVisit6(12週、治療の終了)までに、SALTスコアの変化がある。
別の好ましい実施態様において、報告された有害事象による安全性をプロファイル、曝露および標準安全性データは許容可能である。
【0056】
別の実施態様において、以下のパラメーターが改善される:
−SALTスコア絶対値
−ベースラインからのSALTスコアの変化
−ベースラインからのSALTスコアの変化率
−ベースライン(Day1、ベースライン)と比較して、Visit6(12週、治療の終了)におけるSALTスコアが少なくとも50%減少する事象
−毛髪の長さ
−発毛速度
−毛髪の相対的な濃さ
−毛髪の種類(産毛、終毛)
−毛色
−標準写真に基づく毛髪の再成長の包括的アセスメント
−毛髪の再成長の主観的包括的アセスメント(SGA)
−円形脱毛症のクオリティ・オブ・ライフからの評価項目の導出
−治療満足度質問表からの評価項目の導出
【実施例】
【0057】
実施例1
実験1.C3H/HeJマウス脱毛症モデルにおける、化合物Aによる発毛の促進
C3H/HeJマウス脱毛症モデル(非特許文献1)を用いて、化合物Aによる発毛促進作用を評価した。
全身性脱毛症を自然発症したリタイアC3H/HeJJclマウス(日本クレア株式会社)より直径2〜2.5cmの皮膚サンプルを採取し、8週齢の雌性C3H/HeJJclマウス(日本クレア株式会社)の各背部に移植した。手術の20週間後、全身に脱毛症を生じたマウスを選抜し、担体、1重量%の被験物質、3重量%の被験物質又は対照物質を1日1回、78日間、背部に50μLずつ塗布した。塗布開始日をDay1とした。用いた担体は、白色ワセリン、固形パラフィン、スクワランを85:5:10の配合比で含む混合物であった。化合物Aを被験物質として用いた。ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏(0.12%)を対照物質として用いた。
【0058】
Day1、Day7、Day15、Day29、Day43、Day57、Day71、およびDay79に、各マウスの背部の発毛指数(Hair Growth Index(HGI))を測定した。各マウスのHGIは、発毛状態の程度(スコア;0:no hair,1:stubble, short broken hairs,2:sparse intermediate length hairs,3:normal length and density hairs)及び各発毛状態の程度を有する皮膚面積の割合(%)を肉眼で比べ、発毛状態の程度(スコア)と各発毛状態の程度を有する皮膚面積の割合(%)の積を算出し、次いで、その積をすべて合計することにより計算した。
結果を図1に示す。
【0059】
実施例2
実験2.C3H/HeJマウス脱毛症モデルにおける化合物Aによる発毛の促進
C3H/HeJマウス脱毛症モデル(非特許文献1)を用いて、化合物Aによる発毛促進作用を評価した。
全身性脱毛症を自然発症したリタイアC3H/HeJJclマウス(日本クレア株式会社)より直径2cmの皮膚サンプルを採取し、8週齢の雌性C3H/HeJJclマウス(日本クレア株式会社)の各背部に移植した。手術の20〜22週間後、全身に脱毛症を生じたマウスを選別し、担体、0.3重量%の被験物質、3重量%の被験物質又は対照物質を1日1回、84日間、背部に50μLずつ塗布した。塗布開始日をDay1とした。用いた担体は、白色ワセリン、固形パラフィン、スクワランを85:5:10の配合比で含む混合物であった。化合物Aを被験物質として用いた。ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏(0.12%)を対照物質として用いた。
【0060】
Day1、Day19、Day29、Day43、Day57、Day71、およびDay85に、各マウスの背部の発毛指数(HGI)を測定した。各マウスのHGIは、発毛状態の程度(score;0:no hair,1:stubble, short broken hairs,2:sparse intermediate length hairs,3:normal length and density hairs)および各発毛状態の程度を有する皮膚面積の割合(%)を肉眼で比べ、発毛状態の程度(スコア)と各発毛状態の程度有する皮膚面積の割合(%)の積を算出し、次いで、その積を全て合計することによって計算した。
結果を図2に示す。
【0061】
実施例3
臨床試験:
本臨床試験は、円形脱毛症の対象に、軟膏中の化合物A30mg/gおよび化合物A軟膏ビヒクルを、12週間にわたり1日2回塗布するように設計した、二群二施設前向き無作為化二重盲検ビヒクル対照並行群第二相試験である。
【0062】
Visit1(スクリーニング)において、頭皮面積の少なくとも30%に影響する円形脱毛症(SALTスコア=30)を有する、全35人の適格対象を、1日2回の30mg/gの化合物A軟膏による積極的治療と、1日2回の化合物A軟膏ビヒクルとに、それぞれ2:1の比で無作為化した。登録された対象の最大30%が、全頭脱毛症又は全身性脱毛症として分類されなければならない。
臨床試験を、スクリーニング段階(4週間)、治療段階(12週間)、および追跡段階(12週間)に分ける。
【0063】
対象を、Visit1(Visit2(Day1、ベースライン)の28日前まで)においてスクリーニングする。有効性評価は、Visit2、Visit4(4週)、Visit5(8週)、およびVisit6(12週、治療の終了)において行う。安全性評価は、Visit2、Visit3(2週)、Visit4(4週)、Visit5(8週)、およびVisit6(12週、治療の終了)、およびVisit7(2週間の追跡、試験の終了)において、並びにDay3における電話訪問によって行う。
探索的評価のため、皮膚パンチ生検および質問表は、Visit2(Day1、ベースライン)およびVisit6(12週、治療の終了)において行う。
【0064】
治療段階(Day1から12週)
Visit2(Day1、ベースライン)において、対象の適格性およびインフォームド・コンセントを再確認し、ベースラインの記録のため、評価を行う。無作為化の前に、参加に不適格であることが分かった(スクリーニングの失敗)対象は、試験終了書類に記入する。対象を無作為化し、治験薬(IP)の投与を指示する。
【0065】
IPを含むチューブを使用前後に秤量する。対象にIP投与および服薬コンプライアンスを記録するための日記を渡す。対象の頭皮から皮膚生検1および皮膚生検2を採取する。
【0066】
塗布部位の反応、有害事象(AE)について調べるため、また、IPの使用に関する質問に対処するため、Day3に電話訪問が予定される。塗布部位の反応又は、IPに関連する、もしくは関連する可能性のあるAEがある場合、あるいはそれ以外で、医師によって必要であると考えられる場合、評価のために予定外の訪問が計画される。対象が関連のないAE(例えば、膝の痛み)を訴えた場合は、併用薬と共にAEとして記録し報告する。
Visit3(2週)において、生検傷を確認し、縫合糸を取り除く。さらに、安全性を評価し、記録する。
【0067】
Visit4(4週)、Visit5(8週)、およびVisit6(12週、治療の終了)において、有効性および安全性評価を記録する。Visit6においても、対象の頭皮から皮膚生検3を採取する。返却されたIPを秤量し、対象の治療日記を調査することによって、服薬コンプライアンスを確認する。Visit6(12週、治療の終了)以外において、新たなIPおよび日記を配布する。
【0068】
追跡段階:(2週間の追跡、試験の終了)
Visit7(2週間の追跡、試験の終了)において、Visit6(12週)からの生検傷を確認し、縫合糸を除去する。さらに、AEおよび併用薬を評価し、記録する。対象は試験終了書類に記入する。試験終了(Visit7)時の対象に、進行中の重篤でないAEが存在する場合、予定外の訪問を計画する。
【0069】
サンプルサイズ
合計で35人の対象を、試験において無作為化した。医師の臨床的経験から、約15%が治療の終了の前に脱落し、30人の対象が主要な評価項目について評価可能であると推定される。スクリーニングの失敗(すなわち、インフォームド・コンセントに署名したが、無作為化されていない)は20%と推定され、そのため44人の対象をスクリーニングする必要がある。試験から脱落した対象は、交代しない。
【0070】
無作為化
ICFに署名した適格な対象を、無作為化したスケジュールに従って、化合物A軟膏30mg/g、又は化合物A軟膏ビヒクルのいずれかでの治療に、2:1の比で分配する。
対象をAT又はAUとして、2:1の比で分類することを確実にするため、ATでもAUでもないと分類された(すなわち、斑点型)円形脱毛症と、AT又はAUとして分類された円形脱毛症とで層別化した、層別無作為化法を用いる。AT又はAUとして分類された対象の層は、無作為化した対象の最大30%に相当しうる。
【0071】
盲検化
試験は二重盲検法として行われる。試験評価がバイアスなく進行することを確実にするため、現場スタッフも対象も、割り当てられたIPの特性を知らない。IPの容器およびラベルはその正体の証拠を含まない。
【0072】
対象の適格性
治験責任(分担)医師は、全ての適格基準を満たし、試験に参加することで不当な不利益を被らず、プロトコルに従うと予測されうる対象のみを無作為化すべきである。臨床試験についての対象の適格性は、組み入れ基準および除外基準に従って、Visit1(スクリーニング)およびVisit2(Day1、ベースライン)において確認しなければならない。
【0073】
組み入れ基準
本臨床試験における対象の組み入れには、以下の全ての基準を満たさなければならない:
1.対象は、臨床試験について口頭および書面での情報を受け取った後、インフォームド・コンセントに署名し、日付を記入しなければならない。
2.18から65歳の男性および女性の対象。
3.Visit1(スクリーニング)およびVisit2(Day1、ベースライン)において、治験責任(分担)医師によって判断され、少なくとも30%の頭皮が罹患した、中程度から重度の頭皮円形脱毛症(斑点型、全頭、全身性脱毛症)の、明らかな臨床診断を受けた対象。
4.Visit1(スクリーニング)において、少なくとも6ヶ月間の脱毛。期間の上限はない。
5.Visit1又はVisit2において、進行中の有意な脱毛又は毛髪の再成長の証拠がない。
6.女性の対象は、以下のいずれかでなければならない:
a.妊娠する可能性がない、閉経後(少なくとも1年)、又は確認できる不妊の病歴(例えば、対象に子宮がない)、あるいは
b.妊娠の可能性はあるが(閉経後1年未満の女性を含む)、曝露前に尿妊娠検査で陰性が確認されていれば、妊娠はないとする。
【0074】
妊娠可能な女性の対象(および彼らの男性パートナー)、および男性の対象(および彼らの妊娠可能な女性パートナー)は、組み入れからIPの最後の投与後1週間まで、妊娠を避けるために高い効果のある避妊方法(パール指数<1%)を積極的に用いなければならない。女性および男性の避妊に適切な方法を以下に定義する:
1.無作為化(Visit2)前の少なくとも1回の月経周期間の排卵抑制に関連する配合(エストロゲンおよびプロゲストーゲンを含む)ホルモン避妊法(経口、膣内、経皮)。
2.無作為化(Visit2)前の少なくとも1回の月経周期間の子宮内避妊器具(IUD)。
3.無作為化(Visit2)前の少なくとも1回の月経周期間の子宮内ホルモン放出システム(IUS)。
4.卵管結紮。
5.精管切除又は精管切除したパートナー(そのパートナーは当該対象にとって唯一のパートナーであるべきである)。
6.性的禁欲(対象の好ましいライフスタイルに合致する場合)。
7.病歴、身体検査、心電図(ECG)、バイタルサイン(血圧、心拍数および体温)および臨床検査評価によって判断して、十分に管理された疾患(例えば、高血圧、糖尿病、および甲状腺疾患)を含む全体的に良好な健康状態。
8.対象は、試験の間、治療中の頭部の毛髪を切断しないことを受け入れなければならない。
【0075】
除外基準
1.妊娠又は授乳中の女性。
2.現状で毛髪の自然な再成長の徴候がある。
3.びまん性円形脱毛症。
4.中程度から重度の男性型脱毛症(ノーウッド−ハミルトン段階IV−VIおよびルードヴィヒ段階IIおよびIII)の併発。
5.Visit1(スクリーニング)前の6ヶ月以内、又は試験中に、甲状腺疾患の治療が変更される又は変更が予想される対象。
6.無作為化前6週間以内に、免疫抑制剤(例えば、メトトレキサート、シクロスポリン、アザチオプリン)、クロロキン誘導体、コルチコステロイドを用いた全身治療、又は医師の意見で、毛髪の再成長に影響しうる他のいずれかの全身治療(喘息又は鼻炎に対して、最大で1mgのプレドニゾンに相当する吸引又は経鼻ステロイドは用いてもよい)。
7.無作為化前5半減期以内および少なくとも4週間以内の生物学的製剤。
8.無作為化前のいずれかの時点における、全身性JAK阻害剤ルキソリチニブ(ジャカヒ(Jakafi)(登録商標)/ジャカビ(登録商標))、トファシチニブ(ゼルヤンツ(登録商標))。
9.無作為化前の4週間以内の、PUVA、UVB療法、Exim−laserおよび他の光に基づく療法。
10.無作為化前4週間以内の、局所免疫療法(ジフェニルシクロプロフェノンおよびジニトロクロロベンゼンなど)、アントラリン、ジトラノール、又は病巣内コルチコステロイド。
11.無作為化前2週間以内の、ピメクロリムス、タクロリムス、カルシポトリオール、WHO群IからIVのコルチコステロイド、ミノキシジルを用いた局所療法、ハーブエキスなどの代替療法、又は医師の意見で頭皮における毛髪の再成長に影響しうるいずれかの局所療法。
12.無作為化前2週間以内の、局所性又は全身性抗生物質の使用。
13.治験薬の成分に対する、過敏症が分かっている又はその疑いがある。
14.重度の腎不全又は重度の肝障害が分かっているまたはその疑いがある。
15.基底細胞癌以外の癌の病歴を有する対象。
16.免疫不全疾患(例えば、リンパ腫、HIV、ウィスコット−アルドリッチ症候群)の病歴を有する対象。
17.Visit1(スクリーニング)における、著しく異常なECG、すなわち、PR間隔>220ms、QRS間隔>110ms又は補正QT間隔(Bazett)QTcB>470ms(女性)、450ms(男性)。
18.Visit1(スクリーニング)における最大15分の休息後の臥位血圧>140/90mmHg又は<90/50mmHg。
19.Visit1(スクリーニング)における最大15分の休息後の臥位心拍数>100心拍数(bpm)又は<50bpm。
20.Visit1(スクリーニング)において、体温(耳、鼓膜)>37.5c又は<35.5c。
21.既知の肝機能不全又はスクリーニング時に検査された肝機能不全(例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]、およびガンマグルタミルトランスペプチダーゼ[GGT]>正常時の上限の2倍)。
22.試験評価に干渉しうる、又は対象の安全性の懸念をもたらしうる併発症の病歴。
23.いずれかの他の介入臨床試験に現在参加している。
24.無作為化前4週間以内又は5半減期以内のいずれか長い方に、いずれかの非市販薬(すなわち、登録後に未だ臨床使用に利用可能になっていない薬剤)を用いた治療を受けた対象。
25.以前に本試験において無作為化された。
26.対象が、臨床試験プロトコルに従いそうにないことが分かっている、又は医師によってそう判断される(例えば、アルコール依存症、薬物依存症、又は精神病状態)。
27.皮膚生検処置に対していずれかの禁忌を有する対象:例えば、局所麻酔薬、局所防腐薬に対するアレルギー、出血傾向、抗凝固薬による治療、創傷治癒不良の病歴、および迷走神経性低血圧又は失神の病歴(任意の皮膚生検サンプリング処置に参加する対象のみに適用)。
28.医師の判断によって決定される、臨床的に重要であり、対象の安全性又は試験結果の解釈に影響しうる、身体的、生体、検査又はECG所見のいずれかの異常。
【0076】
試験中の制限
試験の間、除外基準で認めないと定義されている薬物の使用は許可されていない。円形脱毛症以外の病状の同時治療は、投薬量を変化させないことが可能であれば、試験の間継続してもよい。
【0077】
SALTスコアの計算方法
全頭皮の頭皮面積% 円形脱毛症面積%のアセスメント 加重面積%
左側18%(A1)0−100%(B1)A1*B1=C1
右側18%(A2)0−100%(B2)A2*B2=C2
頸部24%(A3)0−100%(B3)A3*B3=C3
頭頂部40%(A4)0−100%(B4)A4*B4=C4
SALTスコアΣC(1−4)=SALTスコア
【0078】
全体的な毛髪の再成長の包括的アセスメント
全体的な毛髪の再成長の包括的アセスメントは、訪問時に治験責任(分担)医師が撮った標準写真を独立に専門家パネルがレビューすることによって評価する。対象の毛髪の再成長は、Visit2(ベースライン)の写真とその後の訪問の写真との同時評価に基づいて分類する。毛髪の再成長の程度は、以下に詳細に記述するように、分類し、採点する。
【0079】
ベースラインと比較した全体的な毛髪の再成長の包括的アセスメント
eCRFに記録される再成長カテゴリースコア
非常に悪化 −3
中程度に悪化 −2
少し悪化 −1
変化なし 0
少し改善 +1
中程度に改善 +2
非常に改善 +3
【0080】
毛髪の長さ、太さおよび色
Visit2(Day1、ベースライン)およびVisit4(4週)、Visit5(8週)、Visit6(12週、治療の終了)において、医師は、皮膚鏡検査法による評価(10×倍率)によって、毛髪の再成長の徴候を評価する。医師は、平均的な毛髪の長さ(mm)、対象の正常な毛髪と比較した毛髪の太さ、毛髪の種類、毛髪の色、対象の正常な頭皮の毛髪の色に対する相対的な色を評価するために、代表的な治療領域を選択する。
全頭脱毛症および全身性脱毛症の対象には、相対評価は適用しない。毛髪が皮膚鏡検査で測定できる長さを超えている場合は、通常の定規を用いる。毛髪の成長速度は、評価間の時間間隔に基づいて計算する。
【0081】
再生した毛髪の医師の評価
頭皮からの毛髪の長さ(mm)
1日あたりの毛髪の成長速度(長さ)(mm/日)
対象の正常な頭皮の毛髪に対する、再生した毛髪の相対的な太さ:非常に細い、やや細い、同程度の太さ、太い産毛型の毛髪、終毛
再成長した毛髪の色:絶対的な色 黒、茶、赤、ブロンド、グレー、白。
対象の正常な頭皮の毛髪に対する相対的な色:非常に明るい、わずかに明るい、同じ色、暗い。
【0082】
対象の評価:
ベースラインからの毛髪の再成長の主観的包括的アセスメント
Visit4(4週)、Visit5(8週)およびVisit6(12週、治療の終了)において、主観的包括的アセスメント(SGA)を用いて、Visit2(Day1、ベースライン)から生じた毛髪の再成長の程度を評価することを対象に求める。治験責任(分担)医師は、毛髪の再成長のカテゴリーおよびスコアを説明し、対象はeCRFに記録するカテゴリーを述べる。対象は医師の前で毛髪の再成長を評価する。
【0083】
毛髪の再成長の主観的包括的アセスメント:
再成長のスコアのカテゴリー
0 再成長なし
1 <25%の再成長
2 25%〜49%の再成長
3 50%〜74%の再成長
4 75%〜99%の再成長
5 100%の再成長
【0084】
患者報告結果
円形脱毛症の対象における、患者報告結果の評価のための、一般的に許容された方法は存在しない。本臨床試験において、有効な円形脱毛症クオリティ・オブ・ライフ質問表(AAQLI)を、Visit2(Day1、ベースライン)およびVisit6(12週、治療の終了)において用いる。対象の薬物療法についての治療満足度質問表(TSQM II)を、Visit6(12週、治療の終了)において用いる。さらに、探索質問表(LEO質問表)がLEO社によって開発され、患者の行動および優先傾向にさらに対処している。
【0085】
治験薬(IP):
化合物A軟膏30mg/g組成物(微細化された化合物Aの懸濁液):
【表1】

化合物A軟膏ビヒクル組成物:
【表2】
【0086】
投与
投与経路:外用(皮膚)
IP塗布面積:Visit2(Day1)における頭皮の脱毛(円形脱毛症)のある領域および脱毛のない周囲の領域およそ1cm(3/8インチ)。治療領域において毛髪の再成長が観察された場合、治療は治療の終了まで継続する。試験中に新たな領域に脱毛が発症した場合、それらもまた治療する。
塗布面積のサイズ:200cmから700cm(頭皮面積の30%から100%に相当)
【0087】
用量範囲mg/cm:化合物A軟膏30mg/gで1.7mg/cm、又は化合物A軟膏を12週間で1日2回塗布の投与頻度に相当する、全体領域を覆う薄層
吸収時間:対象は、ウィッグ、ヘアピース、又は閉塞する可能性のある物質を適用する前に、軟膏を吸収させるために15分間待たなければならない。
1日の投与の時間:朝および晩(好ましくは、12時間間隔、最低でも6時間間隔)。
1日の最大用量の合計:IP[mg]化合物A軟膏2380mg。
1日の最大用量の合計:API 化合物A71.4mg。
【0088】

上記記載に従い、本発明者らは特に以下を提供する:
項1 以下の化学構造式:
【化3】

で示される化合物又はその製薬上許容される塩を有効成分とする、円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項2 円形脱毛症治療剤又は予防剤が外用剤である、項1に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項3 外用剤が軟膏である、項2に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項4 項3の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、項3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項5 項3の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、項3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0089】
項6 項3の軟膏における3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、項3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項7 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが30mg/gの濃度で投与される、項1から3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項8 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが10mg/gの濃度で投与される、項1から3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項9 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが5mg/gの濃度で投与される、項1から3に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項10 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを1日2回の塗布にて投与する、項1から9に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
【0090】
項11 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを12週間1日2回の塗布にて投与する、項10に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項12 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを、200cmから700cmの面積に1日2回の塗布にて投与する、項1から11に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項13 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを1.7mg/cmの分量で1日2回の塗布にて投与する、項1から12に記載の円形脱毛症治療剤又は予防剤。
項14 以下の化学構造式:
【化4】

で示される化合物又はその製薬上許容される塩を、製薬上許容される担体と共に含む、円形脱毛症の治療用医薬組成物。
項15 医薬組成物が外用剤である、項14に記載の医薬組成物。
【0091】
項16 医薬組成物が軟膏である、項14又は15に記載の医薬組成物。
項17 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、項16に記載の医薬組成物。
項18 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、項16に記載の医薬組成物。
項19 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、項16に記載の医薬組成物。
項20 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが30mg/gの濃度で投与される、項14から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0092】
項21 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが10mg/gの濃度で投与される、項14から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項22 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが5mg/gの濃度で投与される、項14から16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項23 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1日2回の塗布にて投与される、項14から22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項24 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが12週間1日2回の塗布にて投与される、項23に記載の医薬組成物。
項25 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが、200cmから700cmの面積にて投与される、項14から24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0093】
項26 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1.7mg/cmの分量で投与される、項14から25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
項27 円形脱毛症の治療に用いるための3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリル。
項28 円形脱毛症の外用療法に用いるための、項27に記載の化合物。
項29 1日2回の塗布にて投与される、項27又は28に記載の化合物。
項30 12週間1日2回の塗布にて投与される、項29に記載の化合物。
【0094】
項31 軟膏にて投与される、項27から30のいずれか1項に記載の化合物。
項32 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、項31に記載の化合物。
項33 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、項31に記載の化合物。
項34 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、項31に記載の化合物。
項35 30mg/gの濃度で投与される、項27から31のいずれか1項に記載の化合物。
【0095】
項36 10mg/gの濃度で投与される、項27から31のいずれか1項に記載の化合物。
項37 5mg/gの濃度で投与される、項27から31のいずれか1項に記載の化合物。
項38 化合物が200cmから700cmの面積にて投与される、項27から37のいずれか1項に記載の化合物。
項39 化合物が1.7mg/cmの分量で投与される、項27から38のいずれか1項に記載の化合物。
項40 円形脱毛症の治療用医薬組成物の製造における、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの使用。
【0096】
項41 医薬組成物が外用医薬組成物である、項40に記載の使用。
項42 医薬組成物が軟膏である、項41に記載の使用。
項43 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、項42に記載の使用。
項44 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、項42に記載の使用。
項45 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、項42に記載の使用。
【0097】
項46 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが30mg/gの濃度で投与される、項40から42のいずれか1項に記載の使用。
項47 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが10mg/gの濃度で投与される、項40から42のいずれか1項に記載の使用。
項48 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが5mg/gの濃度で投与される、項40から42のいずれか1項に記載の使用。
項49 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1日2回の塗布にて投与される、項40から48のいずれか1項に記載の使用。
項50 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが12週間1日2回の塗布にて投与される、項49に記載の使用。
【0098】
項51 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが200cmから700cmの面積にて投与される、項40から50のいずれか1項に記載の使用。
項52 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1.7mg/cmの分量で投与される、項40から51のいずれか1項に記載の使用。
項53 治療が必要な対象における円形脱毛症の治療方法であって、前記対象に、治療上有効量の3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルを投与することを特徴とする方法。
項54 投与が外用である、項53に記載の方法。
項55 外用投与が軟膏である、項54に記載の方法。
【0099】
項56 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が0.3重量%である、項55に記載の方法。
項57 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が1重量%である、項55に記載の方法。
項58 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの濃度が3重量%である、項55に記載の方法。
項59 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが30mg/gの濃度で投与される、項53から55のいずれか1項に記載の方法。
項60 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが10mg/gの濃度で投与される、項53から55のいずれか1項に記載の方法。
【0100】
項61 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが5mg/gの濃度で投与される、項53から55のいずれか1項に記載される方法。
項62 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1日2回の塗布にて投与される、項53から61のいずれか1項の記載の方法。
項63 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが12週間1日2回の塗布にて投与される、項62に記載の方法。
項64 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが200cmから700cmの面積にて投与される、項53から63のいずれか1項に記載の方法。
項65 3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルが1.7mg/cmの分量で投与される、項56から64のいずれか1項に記載の方法。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、円形脱毛症を標的疾患とする、3−[(3S,4R)−3−メチル−6−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)−1,6−ジアザスピロ[3.4]オクタン−1−イル]−3−オキソプロパンニトリルの新規医薬用途を提供する。
図1
図2