(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776382
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構
(51)【国際特許分類】
F16G 11/10 20060101AFI20201019BHJP
A01M 23/34 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
F16G11/10 A
A01M23/34
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-18216(P2019-18216)
(22)【出願日】2019年2月4日
(65)【公開番号】特開2020-125803(P2020-125803A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2019年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(73)【特許権者】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【審査官】
小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−028115(JP,U)
【文献】
実開平04−114154(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0182040(US,A1)
【文献】
実開昭62−150957(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 11/10
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁をテーパー形状とする外円筒体と、外円筒体内部で摺動可能とした内円筒体と、内円筒体の中心部を挿通するワイヤと、内円筒体の周壁に穿孔して内周面が内側から外側に向かって狭窄状のテーパーとした複数のボール遊嵌孔と、
ボール遊嵌孔に内円筒体に対してワイヤの挿通方向に移動可能に遊嵌され、内円筒体のボール遊嵌孔と外円筒体のテーパー部が対応する位置関係になった際に内円筒体の中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとよりなるワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構。
【請求項2】
スプリングにより内円筒体を外円筒体のテーパー形状の内壁方向に移動付勢したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構。
【請求項3】
ストッパーボールは表面に摩擦係数の高い表面処理をしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワイヤ挿通パイプ中に挿貫したワイヤを一方向には流通させるがその逆方向には固定して逆流通できないように構成したワイヤ固定機構に関する。
【0002】
従来、例えば、害獣の捕獲をする際に使用するトラップ機構は害獣の脚体が踏板を踏むと踏板の降下作動によってトラップワイヤが縮径して踏板を踏んだ害獣の脚体を捕縛するという原理が使用されている。
【0003】
かかるトラップ機構においてはトラップワイヤが縮径して踏板を踏んだ害獣の脚体を捕縛するワイヤはワイヤ挿通パイプ中を挿貫しており、ワイヤ挿通パイプ中にはワイヤが一定方向には自由に挿貫できるがその逆方向では固定されて流通しないワイヤ固定機構が必要になる。
なぜならば、ワイヤが害獣の脚体を捕縛した時にはその捕縛状態を維持するための固定機構がワイヤ挿通パイプ中で必要になる。
【0004】
かかる固定機構はワイヤをループ部方向に引張って自由端から引出し可能であるがその反対方向、すなわち、ワイヤ自由端方向には移動しない逆通不可、いわゆる、逆止弁的な機能である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−297849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる逆止弁機能に類似する機構を用いるとしても流通する対象がワイヤという細紐固体形状であるために液体の逆止弁機能とは異なる複雑な逆止機能を有する構造を使用しなければならない。しかも、形状のハンディなワイヤ挿通パイプ中に逆方向固定の機構を収納構成することは困難であった。
【0007】
この発明では、テーパー形状の二重パイプの周壁間に複数のストッパーボールを介在して該ボールの離隔作動によりワイヤが逆流通しないように固定するワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内壁をテーパー形状とする外円筒体と、外円筒体内部で摺動可能とした内円筒体と、内円筒体の中心部を挿通するワイヤと、内円筒体の周壁に穿孔し
て内周面が内側から外側に向かって狭窄状のテーパーとした複数のボール遊嵌孔と、
ボール遊嵌孔に
内円筒体に対してワイヤの挿通方向に移動可能に遊嵌され内円筒体のボール遊嵌孔と外円筒体のテーパー部が対応する位置関係になった際に内円筒体の中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパ―ボールとよりなるワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構を提供せんとする。
【0009】
また、スプリングにより内円筒体を外円筒体のテーパー形状の内壁方向に移動付勢したことを特徴とする。
【0011】
また、ストッパ―ボールは表面に摩擦係数の高い表面処理をしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、内壁をテーパー形状とする外円筒体と、外円筒体内部で摺動可能とした内円筒体と、内円筒体の中心部を挿通するワイヤと、内円筒体の周壁に穿孔し
て内周面が内側から外側に向かって狭窄状のテーパーとした複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に
内円筒体に対してワイヤの挿通方向に移動可能に遊嵌され、内円筒体のボール遊嵌孔と外円筒体のテーパー部が対応する位置関係になった際に内円筒体の中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパ―ボールとより構成したので、ワイヤを一方向に引張ると内円筒体は外円筒体のテーパー部から離反してストッパーボールがボール遊嵌孔から外円筒
体に移動自在になりワイヤの表面とストッパーボールとの接触が離反してワイヤは自在に内円筒体を挿通自在となる。
他方、ワイヤを反対方向に引張ると内円筒体は外円筒体のテーパー部方向に移動して互
いのテーパー部が一体に密着し、ストッパーボールが外円筒体のテーパー部により強制的
に内方に押しやられてワイヤ表面と圧接状態となる。すなわち、ストッパーボールはボー
ル遊嵌孔からワイヤ方向に移動してワイヤの表面とストッパーボールとは圧接状態となり
ワイヤは固定されワイヤは反対方向に移動不能状態となる。かかる状態では外円筒体と内
円筒体とワイヤとは三者それぞれ一体の固定状態となる効果がある。
このようにワイヤの引張り方向を一定の方向に流通可能としながら他方向には固定され
て固定停止状態に構成できるので、例えば、害獣のトラップ構造において脚体を捕縛する
ループ部ワイヤの引張弛緩操作に簡便な構造で確実な操作が可能となる効果がある。
また、ボール遊嵌孔の内周面は内側から外側に向かって狭窄状のテーパーとし、内円筒体に対してワイヤの挿通方向に移動可能に遊嵌され、内円筒体のボール遊嵌孔と外円筒体のテーパー部が対応する位置関係になった際に内円筒体の中心部を挿通するワイヤ表面を圧接する構成により、ストッパーボールと内円筒体の内周面との間に隙間を生じ、ワイヤの移動規制時やワイヤの移動規制解除時に内円筒体内をストッパーボールが移動しやすくなり、ストッパーボールによるワイヤの移動規制および移動規制の解除が迅速に行える効果がある。
【0013】
請求項2の発明によれば、スプリングにより内円筒体を外円筒体のテーパー形状の内壁方向に移動付勢したことにより、ワイヤの引張り方向を一定の方向に流通可能としながら他方向には固定されてより迅速にかつ確実に固定停止状態とすることができる効果がある。
【0015】
請求項
3の発明によれば、ストッパーボールは表面に摩擦係数の高い表面処理をしたことにより、ワイヤとストッパーボールとの押圧接触が確実に行えると共にワイヤの停止機能を確実に行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態におけるワイヤ固定機構を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるワイヤ固定機構を示す図であり、(a)は天面図、(b)は底面図、(c)は側面図を示している。
【
図3】本発明の実施形態におけるワイヤ固定機構の逆止構造を示す断面図であり、(a)はワイヤ移動を解放した状態を示す図であり、(b)はワイヤ移動を規制した状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるワイヤ固定機構におけるストッパーボールの動きを示す図であり、(a)はワイヤの移動を規制する方向に移動する際のストッパーボールの動きを示し、(b)はワイヤの移動を規制する方向に移動する際のストッパーボールの動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、内壁をテーパー形状とする外円筒体と、外円筒体内部で摺動可能とした内円筒体と、内円筒体の中心部を挿通するワイヤと、内円筒体の周壁に穿孔した複数のボール遊嵌孔と、ボール遊嵌孔に遊嵌自在で、内円筒体のボール遊嵌孔と外円筒体のテーパー部が対応する位置関係になった際に内円筒体の中心部を挿通するワイヤ表面を圧接するストッパーボールとより構成したワイヤ挿通パイプにおけるワイヤの一方向流通を固定するワイヤ固定機構を要旨とする。
【0018】
また、スプリングにより内円筒体を外円筒体のテーパー形状の内壁方向に移動付勢したことを特徴とする。
【0019】
また、ボール遊嵌孔の内周面は内側から外側に向かって狭窄状のテーパーとしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の実施例を図面に基づき詳説する。
基本的に本発明は、
図1に示すように、内円筒体10と外円筒体20との組み合わせよりなり外円筒体20のテーパー部21においてストッパーボール12を介在した構造とする。
【0021】
外円筒体20は内壁をテーパー形状とすると共に、内円筒体10は外円筒体20内部で摺動可能に構成している。
内円筒体10の中心部にはワイヤWを挿通しており、内円筒体10の周壁には複数のボール遊嵌孔11を穿孔している。ボール遊嵌孔11の内周面は内側から外側に向かって狭窄状のテーパーに構成している。
【0022】
ボール遊嵌孔11にはワイヤW表面を圧着固定するストッパーボール12を遊嵌している。ストッパーボール12は表面に摩擦係数の高い表面処理をしている。
また、内円筒体10の天端には外円筒体20の天端との間にスプリング30を介設することで内円筒体10を外円筒体20の内壁であるテーパー部21に移動付勢している。
【0023】
この発明の作用について具体的に詳説する。
ワイヤ固定機構Aは、
図2に示すように、ワイヤWを内円筒体10の中空部13に挿通して外円筒体20に内円筒体10を収納する。
この際に内円筒体10は、
図3(a)、(b)に示すように、スプリング30の付勢により外円筒体の先端部に位置している。すなわち、外円筒体20の内周壁のテーパー部21と内円筒体10の外周壁14とが密着した嵌着状態となる。
【0024】
この状態でワイヤWを先端方向に引張ると内円筒体10は、
図4(a)、(b)に示すように、ワイヤWと共に外円筒体20の先端部方向に移動する。すなわち、内円筒体10のボール遊嵌孔11と外円筒体20のテーパー部21が対応する位置関係になったときに内円筒体10の中心部を挿通するワイヤW表面に当接するストッパーボール12は、外円筒体20のテーパー部21によって内方のワイヤW表面に圧接状態となる。その圧接付勢力によってワイヤWは、ストッパーボール12表面に食い込み固定状態となる。
【0025】
他方、ワイヤWが上記と反対方向に引っ張られると内円筒体10はワイヤWに付随して外円筒体20の基端部方向に移動してストッパーボール12がワイヤW表面から離反してワイヤWの固定状態を解除しワイヤWは自在に一定方向に摺動可能となる。
【0026】
このようにワイヤWの引っ張る方向に応じてストッパーボール12とワイヤWとの圧接形態が変わりストッパーボール12の移動位置、すなわち、ワイヤWの引っ張り方向によりワイヤWの固定状態からワイヤWの自由な流通形態に変更可能となる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0028】
10 内円筒体
11 ボール遊嵌孔
12 ストッパーボール
13 中空部
14 外周壁
20 外円筒体
21 テーパー部
30 スプリング
A ワイヤ固定機構
W ワイヤ