(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6776412
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】エレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
B66B7/06 H
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-133531(P2019-133531)
(22)【出願日】2019年7月19日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】黒川 修宏
【審査官】
羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−126708(JP,A)
【文献】
特開2007−1711(JP,A)
【文献】
特開2004−250217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室に設置された巻上機のシーブにかけ渡され、かごとつり合い重りとを連結する主ロープの揺れを抑制するエレベータのロープ制振装置であって、
前記機械室の床面のロープ孔を貫通して設けられ、支点部を介して前記床面に固定され、かつ支点部を支点として揺動可能に取り付けられる枠部と、
前記機械室の床面よりも上方の前記枠部に回転可能に設置された上側ローラと、
前記機械室の床面を貫通した前記枠部の下方に回転可能に設置され、前記上側ローラのローラ径よりも大きく、かつ前記上側ローラの重量よりも重い下側ローラと、
を備えたエレベータのロープ制振装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロープ制振装置において、
前記下側ローラから前記支点部までの距離は、前記上側ローラから前記支点部までの距離よりも長いエレベータのロープ制振装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロープ制振装置を一対備え、各ロープ制振装置は前記主ロープを間にして対向して前記床面のロープ孔に設置されるロープ制振機構。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のロープ制振装置を一対備え、各ロープ制振装置は前記主ロープを間にして対向して前記床面のロープ孔に設置され、かつ、両ロープ制振装置は前記下側ローラ付近で連結されているロープ制振機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの主ロープは、巻上機のシーブにかけ渡され、かごとつり合い重りとを連結している。エレベータの運転中に主ロープが揺れると、乗り心地にも影響する。
【0003】
近年、ビルの高層化に伴い、エレベータの主ロープも長くなってきている。主ロープが長くなると、その揺れも大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5658357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、強風や地震等の発生により建物が揺れ、それに伴って主ロープが大きく揺れると、エレベータの運転に支障を来す。このため、主ロープの揺れを抑制する効果的に抑制する提案が望まれている。
【0006】
本発明の実施形態は、簡易な構成によって主ロープの揺れを効果的に抑制できるエレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、機械室に設置された巻上機のシーブにかけ渡され、かごとつり合い重りとを連結する主ロープの揺れを抑制するエレベータのロープ制振装置であって、機械室の床面のロープ孔を貫通して設けられ、支点部を介して前記床面に固定され、かつ支点部を支点として揺動可能に取り付けられる枠部と、機械室の床面よりも上方の前記枠部に回転可能に設置された上側ローラと、機械室の床面を貫通した前記枠部の下方に回転可能に設置され、上側ローラのローラ径よりも大きく、かつ上側ローラの重量よりも重い下側ローラと、を備えたエレベータのロープ制振装置である。
【0008】
また、ロープ制振装置を一対備え、各ロープ制振装置は前記主ロープを間にして対向して床面のロープ孔に設置されるロープ制振機構である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るエレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構を適用したエレベータの構成図。
【
図2】第1実施形態に係るエレベータのロープ制振装置の構成を示す斜視図。
【
図3】
図2に示すエレベータのロープ制振装置を適用したロープ制振機構の動作説明図。
【
図4】第2実施形態に係るエレベータのロープ制振装置から成るロープ制振機構を示す斜視図。
【
図5】
図4に示すエレベータのロープ制振機構の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、実施形態のエレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構が適用されるエレベータは、機械室2に設けられた巻上機シーブ3及びそらせシーブ4によって主ロープ5を駆動している。主ロープ5は、かご6とつり合い重り7とを連結する。
【0011】
機械室2の機械室床8には、主ロープを昇降路9に垂れ下げるためのロープ孔10が穿設されている。このロープ孔10には、後述するように、実施形態におけるロープ制振装置及びロープ制振機構が設置されている。
【0012】
[第1実施形態]
図2は第1実施形態が適用されるロープ制振装置の構成を示している。
【0013】
図2に示すように、ロープ制振装置21は、左右一対の縦枠から成る枠部21aと、枠部21aの縦枠間に軸21hによって回転自在に配置された上側ローラ21bと、枠部21の下方において枠部21aの縦枠間に軸21jによって回転自在に配置された下側ローラ21cとを備える。
【0014】
また、ロープ制振装置21は、支点部21dとなる箇所に設けられた取付座21gの取付孔21eによって機械室床8に固定され、かつ、ロープ孔10を貫通して設けられている。ロープ制振装置21の支点部21dの縦枠間には、丸棒21fが配置され、支点部21dを中心として振り子状に揺動可能となっている。
【0015】
下側ローラ21cのローラ径は、上側ローラ21bよりも大きく、その重量も重く構成されている。また、下側ローラ21cから支点部21dまでの距離は、上側ローラ21bから支点部21dまでの距離よりも長くなっている。
【0016】
図3に示すように、
図2に示すロープ制振装置21を一対備え、各ロープ制振装置21は主ロープ5を間にして対向して機械室床8のロープ孔10に設置されるロープ制振機構30が構成される。
【0017】
次に、
図3を参照して第1実施形態の作用を説明する。
【0018】
一対のロープ制振装置21が主ロープ5を間にしてロープ孔10に設置され、ロープ制振機構30が構成されている。
【0019】
主ロープ5に揺れ(振動)が無い状態では、図中、全線で示すように、主ロープ5は、各ロープ制振装置21には接触することなく、上下動を繰り返す。
【0020】
地震の発生等により、主ロープ5が図中2点鎖線で示すように軌道22のように揺れると、ロープ5の揺れに伴って、各ロープ制振装置21は、支点部21dを中心に振り子状に揺動運動をする。主ロープ5が上側ローラ21b及び下側ローラ21cに接触すると、下側ローラ21cの揺れ方向とは反対方向に上側ローラ21bが揺れる。すなわち、図中矢印で示すように、各ロープ制振装置21には、下側ローラ21cから上側ローラ21bに向かう力が加わる。この力によって上側ローラ21bは、主ロープ5の揺れ(振動)を抑える方向に振れて主ロープ5の揺れ(振動)を抑制する。このとき、下側ローラ21cの方が上側ローラ21bよりも大きく、その重量も重く構成されている。また、下側ローラ21cから支点部21dまでの距離は、上側ローラ21bから支点部21dまでの距離よりも長くなっている。このため、主ロープ5が揺れた際の振れ幅を効果的に小さくすることができる。
【0021】
なお、第1実施形態では、一対のロープ制振装置21でロープ制振機構30を構成したが、必ずしも一対である必要はない。一台のロープ制振装置21をロープ孔10に設置することでも主ロープ5の揺れを抑制することが期待できる。
【0022】
[第2実施形態]
図4、
図5は第2実施形態の構成を示している。
【0023】
第2実施形態では、ロープ制振装置21を一対備え、各ロープ制振装置21は主ロープ2を間にして対向してロープ孔10に設置され、かつ、両ロープ制振装置21は下側ローラ21c付近で連結されることでロープ制振機構31が構成される。
【0024】
2つの制振装置21の連結は、ローラ連結具32によって2つの枠部21aをボルトで締結する。各ロープ制振装置21の構成は
図2で説明したと同様であるため、その説明は省略する。
【0025】
次に、
図5を参照して第2実施形態の作用を説明する。
【0026】
主ロープ5に揺れ(振動)が無い状態では、図中、全線で示すように、主ロープ5は、各ロープ制振装置21には接触することなく、上下動を繰り返す。
【0027】
地震の発生等により、主ロープ5が図中2点鎖線で示すように軌道22のように揺れると、ロープ5の揺れに伴って、各ロープ制振装置21は、支点部21dを中心に振り子状に揺動運動をする。このとき、2つの制振装置21は、ローラ連結具32によって連結されてロープ制振機構31を構成しているので、複数本の主ロープ5がバラバラに揺れた場合でも、下側ローラ21cによってバラバラな揺れを吸収して揺れ幅を少なくすることができる。
【0028】
このように第2実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、より一層、主ロープの揺れを少なくすることができる。
【0029】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
2…機械室、3…巻上機シーブ、4…そらせシーブ、5…主ロープ、6…かご、7…つり合い重り、8…機械室床、9…昇降路、10…ループ孔、11…コンペンロープ、21…ロープ制振装置、21a…枠部、21b…上側ローラ、21c…下側ローラ、21d…支点部、21e…取付孔、21f…丸棒、21g…取付座、21h,21j…軸、22…主ロープの軌道、30,31…ロープ制振機構
【要約】
【課題】簡易な構成によって主ロープの揺れを効果的に抑制できるエレベータのロープ制振装置及びロープ制振機構を提供する。
【解決手段】機械室2に設置された巻上機シーブ3にかけ渡され、かご6とつり合い重り7とを連結する主ロープ5の揺れを抑制するエレベータのロープ制振装置21であって、機械室2の床面のロープ孔10を貫通して設けられ、支点部21dを介して床面に固定され、かつ支点部を支点として揺動可能に取り付けられる枠部と、機械室床8の床面よりも上方の枠部21aに回転可能に設置された上側ローラ21bと、機械室床8の床面を貫通した枠部21aの下方に回転可能に設置され、上側ローラ21bのローラ径よりも大きく、かつ上側ローラ21bの重量よりも重い下側ローラ21cと、を備える。
【選択図】
図2