(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る除染実施方法が除染対象にする原子力プラントの概略構成図である。
【0016】
1.原子炉再循環系統200(PLR系統;Primary Loop Recirculation System)
まず、原子炉圧力容器13(RPV;Reactor Presser Vessel)、PLR系統200及びその周辺の基本構造について説明する。
沸騰水型原子炉プラント100においては、炉心10を囲む炉心シュラウド11とこれを囲むRPV13の間に、スリーブ状のダウンカマ14が形成される。ダウンカマ14には例えば16台又は20台のジェットポンプ16が環状に配置される。
【0017】
炉心10の上方には、炉心上部プレナムを覆うシュラウドヘッド17が設けられる。そして、シュラウドヘッド17の上方に気水分離器18が設けられる。さらに、気水分離器18の上方には蒸気乾燥器19が設けられる。
RPV13の頭頂部には、RPV13内に一次冷却材などの液体を散布するRHRヘッドスプレイ管26が設けられている。
【0018】
RPV13の外側には、PLR系統200が2系統設けられる。RPV13内下方のダウンカマ14からPLR系統200に流入した一次冷却材は、PLR系統200に設けられたPLRポンプ21によって昇圧される。PLRポンプ21に流入する一次冷却材の流量は、PLRポンプ21のそれぞれ吸入口に設けられたPLR吸入弁22及び吐出口に設けられたPLR吐出弁23で調整される。
【0019】
この一次冷却材は、再循環水入口ノズル24を経てジェットポンプ16に導かれ、ジェット駆動流体としてジェットポンプ16のノズルから噴出し、ダウンカマ14上部の環状部の一次冷却材を吸い込んでジェット流になる。
【0020】
ジェットポンプ16から噴出した一次冷却材は、炉心10を通過中に加熱され、気液混合の二相流となる。気水分離器18内に送られた気液混合流は、蒸気と水とに分離され、蒸気はさらに蒸気乾燥器19で湿分が取り除かれたのち、RPV13上部の蒸気出口ノズル27から流出する。
【0021】
また、気水分離器18及び蒸気乾燥器19で分離された水は、炉心シュラウド11とRPV13の壁面との間を流下してジェットポンプ16に吸い込まれ、炉内循環を繰り返す。
【0022】
このような一次冷却材の循環ループ内では、炉心10の通過で放射化された腐食生成物は、PLR系統200の構成機器(21〜24)を含む上述した各種機器に付着・堆積して放射線源になる。よって、廃炉時における作業員の被ばく線量低減対策のために、汚染した配管・機器などに対して化学除染等を適用することが必要になる。
【0023】
各実施形態に係る除染実施方法は、このようなRPV13又はこのRPV13を含むPLR系統200を主な対象にして化学除染を行うものである。
【0024】
各実施形態では、上述したRHRヘッドスプレイ管26及びPLR系統200が本設の系統である。各図では、これら本設の系統を太い破線で表記している。
また、説明の簡略化のため、RPV13に接続されている他の本設の系統は省略している。また、図中においてRPV13を中心にして高い対称性を有して紙面左右に設けられた構成を左右区別して「左側PLR系統200L」などと、適宜「右側」、「左側」の語を付して呼ぶ。
【0025】
2.仮設循環系統300A
次に、第1実施形態に係る除染実施方法を実施するための仮設循環系統300Aについて説明する。
仮設循環系統300Aは、主に、RPV13の下方と上方とを接続して、仮設循環ポンプ25で除染液を下方から上方へ又は上方から下方へ循環させる系統である。
【0026】
以下、仮設循環系統300Aの具体例について説明する。
RPV13の下方側では、仮設循環系統300Aは、例えば炉底部28の制御棒駆動装置ハウジング29及びRPVボトムドレンライン31に接続される。以下、この配管を炉底配管32という。
【0027】
また、仮設循環系統300Aは、左右の各PLR系統200に、例えばそれぞれPLR吐出弁23を挟むように2箇所で配管が接続される。これら2本の配管のうち、PLRポンプ21とPLR吐出弁23との間に接続された配管をPLRボトム配管33という。また、他方の配管をPLRミドル配管34という。
【0028】
この右側PLRミドル配管34Rは、分岐して左右連結配管34Cを介して左側PLRミドル配管34Lに接続される。この右側PLRミドル配管34Rを流通する除染液を左側PLRミドル配管34Lに供給することができる。この分岐して左側PLRミドル配管34Lに接続される配管を、以下、左右連結配管34Cという。なお、図中の左右連結配管34C上に記載された2箇所の丸Aは、互いに連続していることを示す。
【0029】
左右連結配管34Cには、左右連結弁37が設けられる。また、右側PLRミドル配管34Rにおいて、左右連結配管34Cの分岐点とPLR系統200の接続点との間には、PLRミドル弁38が設けられる。
【0030】
右側PLRミドル配管34Rは、蒸気出口ノズル27に接続される蒸気ノズル接続配管39にT字状に接続される。蒸気ノズル接続配管39には、除染液を循環させるための仮設循環ポンプ25が設けられる。
【0031】
右側PLRミドル配管34Rは、蒸気ノズル接続配管39において、仮設循環ポンプ25と蒸気出口ノズル27との間に接続される。また、蒸気ノズル接続配管39には、除染液の循環を逆転させるための第1逆流配管41が、仮設循環ポンプ25を挟むように環状に接続される。第1逆流配管41には、順流循環時には閉止される第1逆流弁42が設けられる。
【0032】
また、蒸気ノズル接続配管39から、RHRヘッドスプレイ管26に接続されるヘッドスプレイ管接続配管44が分岐する。ヘッドスプレイ管接続配管44には、ヘッドスプレイ管接続弁46が設けられる。また、蒸気ノズル接続配管39において、右側PLRミドル配管34Rの接続点とヘッドスプレイ管接続配管44の接続点との間には、蒸気ノズル弁47が設けられる。
【0033】
一方、前述の炉底配管32及びPLRボトム配管33(33L,33R)は、いずれも除染液回収配管48に接続される。この除染液回収配管48は、RPV13の上方まで延長されて、仮設循環ポンプ25の上流側において蒸気ノズル接続配管39に接続される。
【0034】
この除染液回収配管48には、除染液の状態を最適に維持するための複数の機器が接続される。
具体的には、例えば、
図1に示されるように、熱交換器49、薬剤調製部50、オゾン発生器51、除染剤分解部52、フィルタ53、及びイオン交換部54が設けられる。
【0035】
これらの機器(49〜54)のうち、除染剤分解部52、フィルタ53、及びイオン交換部54で構成される浄化機構57は、除染液の浄化が必要な場合にのみ稼働すればよい。よって、
図1に示されるように、浄化機構57を接続するとともに浄化弁59を有する浄化系統58を除染液回収配管48に環状に接続するのが好ましい。そして、必要時にのみ浄化弁59を開放して、浄化系統58上の浄化ポンプ55を起動して除染液を浄化系統58内に誘導する。
【0036】
また、第2逆流弁61を有する第2逆流配管62が、仮設循環ポンプ25に並列になるように、右側PLRミドル配管34Rと除染液回収配管48とを接続する。
また、除染液回収配管48のうち、第2逆流配管62の接続点と蒸気ノズル接続配管39の接続点との間に、第3逆流弁63が設けられる。
【0037】
また、RPV13には、ガス処理機構65を備えRPV13内に蓄積したガスを排出する排ガス処理系統64が接続される。除染にオゾンガス等を使用してRPV13内にガスが発生する場合、この排ガス処理系統64からガスが排出される。
【0038】
なお、以上説明した仮設循環系統300Aは、必ずしも、全ての構成が含まれていなくてもよい。上述の構成のうち、以下で説明する各実施形態に係る除染実施方法が実施可能になる構成が含まれていれば、構成として十分である。
【0039】
また、上記構成の説明は、仮設循環系統300Aに配置された弁及びポンプ等の各構成機器、及び配管の設置数及び位置を限定するものではない。つまり、上述の構成には弁等が適宜追加されてもよい。
【0040】
3.除染実施方法
次に、
図2及び
図3を用いて、第1実施形態に係る除染実施方法について説明する。
図2は、第1実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
また、
図3は、第1実施形態に係る除染実施方法を示すフローチャートである。
【0041】
第1実施形態に係る除染実施方法では、まず、RPV13が除染液の流路になるように除染経路を構築する(S11)。
第1実施形態では、
図2に示されるように、炉底配管32を除染液の流通経路に含み、PLR系統200を除染径路に含まない例で説明する。
【0042】
具体的には、例えば第3逆流弁63、蒸気ノズル弁47、ヘッドスプレイ管接続弁46、及び炉底配管32に設けられた炉底弁69が開放される。一方、PLR吸入弁22、PLR吐出弁23、左右連結弁37、PLRミドル弁38、第1逆流弁42、第2逆流弁61、及び浄化弁59は、閉止される。
なお、黒塗りの弁は閉状態、白塗りの弁は開状態を表す。
【0043】
炉心燃料は、原子炉停止後にRPV13から搬出されている。一方、ジェットポンプ16、炉心シュラウド11、気水分離器18、及び蒸気乾燥器19等の炉内機器は内蔵された状態であってよい。
ただし、気水分離器18及び蒸気乾燥器19は、除染実施時には既に搬出されている場合もある。これら気水分離器18及び蒸気乾燥器19の有無は、第1実施形態に係る除染実施方法の効果に大きな影響はない。
【0044】
次に、RPV13内を除染液で浸漬させる(S12)。
薬剤調製部50から薬剤が投入された除染液が、RHRヘッドスプレイ管26又は左側蒸気出口ノズル27LからRPV13内に供給されてRPV13内に貯められる。
【0045】
次に、炉底弁69を開放して、RPV13内に貯められた除染液を炉底配管32へ引き抜く(S13)。
炉底部28には、不溶解成分のスラッジが堆積していることが多い。
このスラッジは、元来線流速が遅くなる傾向にある炉底部28の除染液の流れを阻害して、線流速を不足させることに加え、炉底部28への除染液の接触も阻害する。
【0046】
そこで、除染範囲における除染液回収配管48への除染液の回収箇所を、炉底配管32の接続点である炉底部28にして、堆積したスラッジを直接回収する。
炉底部28からスラッジを回収することで、炉底部28の除染液に線流速を付加することに加え、除染液を炉底部28に接触させて除染効率を向上させることができる。
【0047】
炉底配管32から抜き出された除染液は、除染液回収配管48に回収される(S14)。
回収された除染液は、蒸気ノズル接続配管39に到達するまでに、熱交換器49で加温又は冷却して温度調整がなされる。同時に、薬剤調製部50で調製された還元剤その他の薬剤の除染液中の含有量が調製ポンプ45によって調整される。
また、酸化剤がオゾンの場合、オゾン発生器51からガスミキサ75を介してオゾンが混入される。
【0048】
そして、除染液は、蒸気ノズル接続配管39及びRHRヘッドスプレイ管26から、除染液をRPV13に返還される(S15)。
なお、RPV13への返還箇所は、RPV13の上方であれば特に蒸気ノズル接続配管39又はRHRヘッドスプレイ管26に限定されない。
【0049】
ところで、除染液の循環時には、化学除染の対象部位における除染液の流速に応じて除染液の通水時間を調整するのが好ましい。
通常、供用中のプラントの系統除染では、その後に続く点検作業工程へ影響するため、極力短時間での除染が求められる。しかし、廃止措置の場合は時間的制約が少ないため、除染液の線流速が遅い部位は通水時間を長くとることができる。そこで、仮設循環ポンプ25の出力を加味して、流速が遅い場合には通水時間は長くし、反対に流速が速い場合には通水時間は短くする。
【0050】
また、除染液に酸化剤及び還元剤を用い、化学除染は酸化工程と還元工程とを交互に切り替えながら除染することが望ましい。酸化剤には、例えばオゾン又は過マンガン酸塩を用いる。
【0051】
還元剤には、有機酸にシュウ酸、ギ酸、ビルビン酸、グリオキシル酸、マロン酸、マレイン酸、クエン酸の少なくともいずれかを使用するのが望ましい。
廃炉前除染を対象にしている各実施形態に係る除染実施方法は、除染液が接触する構成材への影響を考慮する必要性が低い。よって、除染液に添加する薬剤は、除染効果又は扱いやすさを主に考慮して選択すればよい。
【0052】
通常、還元工程を含む化学除染では、還元剤としてシュウ酸が好適に用いられる。シュウ酸は、分解可能な有機酸のうちで酸解離定数(pKa)が小さく強い酸であるため、比較的低濃度での使用で除染効果を得ることができるからである。
【0053】
しかし、シュウ酸は、シュウ酸鉄の溶解度が低いため、鉄溶出が多い系統に対しては適さない場合もある。また、シュウ酸は水への溶解速度も遅いため、シュウ酸を高濃度に溶解することは難度が高い。よって、例えばシュウ酸の使用が困難な場合には、常温から除染条件温度までの温度範囲で、水への溶解性を有する又は液体状である有機酸を用いることが望ましい。
【0054】
pKaが約3以下と比較的低く、このような性質を有する有機酸には、例えば、モノカルボン酸ではギ酸、ピルビン酸、グリオキシル酸、ジカルボン酸ではマロン酸、酒石酸、マレイン酸、トリカルボン酸ではクエン酸などがある。より高い除染効果を得るために、これらの有機酸を適宜複数使用してもよい。
【0055】
図3のフローチャートの説明を続ける。
除染液を浄化する場合(S16においてYESの場合)、浄化弁59を開放するとともに浄化ポンプ55を起動して除染液を浄化系統58に誘導する(S17)。
【0056】
除染剤分解部52は、例えば、紫外線で除染剤を分解する紫外線照射装置である。フィルタ53は、除染液中の不溶解成分を除去する。イオン交換部54は、溶解成分を除去する。イオン交換部54は、例えば、陽イオン交換樹脂塔と、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合した混床樹脂塔と、の2種の樹脂塔を用いる。
浄化された除染液は、蒸気ノズル接続配管39、PLRミドル配管34、及びRHRヘッドスプレイ管26から除染液をRPV13に返還される(S15へ戻る)。
【0057】
除染液の浄化が不要な場合(S16においてNOの場合)、除染が十分になるまで(S18においてNOの場合)、除染液の循環を継続する(S13へ)。
十分な除染がなされた場合、第1実施形態に係る除染実施方法は終了する(S18においてYESの場合、END)。
【0058】
以上のように、第1実施形態に係る除染実施方法によれば、PLRポンプ21を用いずに、RPV13を含むPLR系統200又はRPV13を含む系統の除染をすることができる。
また、第1実施形態に係る除染実施方法によれば、炉底配管32から直接RPV13内の除染液の抜き出すことで、炉底部28に堆積したスラッジを回収するとともに大きく移動させることができる。
【0059】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
【0060】
第2実施形態に係る除染実施方法では、
図4に示されるように、第1実施形態と同様の仮設循環系統300Aの構成において、RPV13内部の除染液の循環を略逆転させる。
【0061】
第2実施形態では、循環を逆転させるため、第1実施形態で閉止されていた第1逆流弁42、第2逆流弁61が、開放される。一方、第1実施形態で開放されていたヘッドスプレイ管接続弁46、蒸気ノズル弁47及び第3逆流弁63は閉止される。
【0062】
以上の弁の開閉状態によって、除染液は、
図4に示されるように、第1逆流配管41及び第2逆流配管62を流通して逆流循環をする。
つまり、除染液は、RPV13内を上昇して、蒸気出口ノズル27から排出される循環を形成する。この運転では、第1逆流配管41及び第2逆流配管62に除染液を流通させることで、仮設循環ポンプ25を、その揚水の向きを変えずに逆流循環の形成に利用することができる。
【0063】
逆流循環の場合、除染液の全量を炉底部28から注入することで、RPV13内の循環を効果的に強めることができる。また、逆流循環による炉底部28からの除染液の注入によって、炉底部28に堆積したスラッジを底部から撹拌して、スラッジの移動を促進させることができる。
【0064】
さらに、この炉底部28からの除染液の注入に併せて、気体43を注入し、炉底部28にバブリングをすることが望ましい。バブリングによって、炉底部28の除染液の撹拌を強化して、堆積スラッジの移動を促進することができるからである。
【0065】
供給する気体43は、酸化工程においては、酸化剤としても機能するオゾンガスであることが望ましい。オゾンガスは、除染液の撹拌促進と同時に酸化剤としての効果を発揮するからである。
【0066】
一方、除染の還元工程においては、この気体43は、窒素などの反応性の乏しいものが望ましい。還元工程中は、除染効果の制御のため除染液中の酸化還元電位を制御している場合があるからである。
なお、酸化還元電位を特に制御していない場合、この気体43は、空気であってもよい。
【0067】
また、前述したように、各実施形態に係る除染実施方法は、廃炉前除染時に実施されるものなので、所要時間を考慮する必要性が低い。よって、この時期の除染では、時間による制約が小さく、順流循環及び逆流循環の切り替え運転を繰り返すことができる。
特にバブリングを伴う場合、一定時間ごとの循環の逆転運転により撹拌作用は増強されるので、高い除染効果を得ることができる。
【0068】
なお、逆流循環をさせること及びバブリングをすること以外は、第2実施形態は第1実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0069】
このように、第2実施形態に係る除染実施方法によれば、第1実施形態の効果に加え、炉底配管32からRPV13内に除染液を注入することで、RPV13内を十分に撹拌するとともに堆積したスラッジを大きく移動させることができる。
【0070】
また、第2実施形態に係る除染実施方法によれば、RPV13の除染液の循環を略逆転させることができるので、順流循環では線流速が十分でない箇所を除染することができる。さらに、除染液の注入と同時にバブリングをすることで、RPV13内の撹拌を促進することができる。
【0071】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
第3実施形態に係る除染実施方法では、
図5に示されるように、PLR系統200の少なくとも一部を除染径路に含ませる。
例えば、第1実施形態で閉止されていたPLR吸入弁22、左右連結弁37、及びPLRミドル弁38を開放することでPLR系統200を除染径路に含ませることができる。
【0072】
ところで、廃炉が予定された原子炉プラントにおいては、PLRポンプ21は、原子炉停止に伴って停止し、通常それ以後長期間停止した状態にある。上述した弁の開閉状態では、PLRポンプ21を含むPLR系統200の略全域が除染液の流通経路になる。
このとき、RPV13での除染液の流動を得るため、PLR系統200内で除染液を循環させることが望ましい。
【0073】
しかし、PLRポンプ21を停止した状態では、通常、PLRポンプ21に遮断されてPLR系統配管内で除染液を循環させることが困難である。そこで、PLRポンプ21中の電動機及び回転体を撤去し、開口部を耐圧キャップ等で仮閉止して、PLRポンプ21内部を除染液の流路にする。
【0074】
PLRポンプ21を通過した除染液は、PLR系統200上の除染座又はPLRポンプ21の閉止キャップ部からPLRボトム配管33へ引き抜かれる。
【0075】
また、蒸気ノズル接続配管39からPLRミドル配管34内へ分岐した除染液は、PLR系統200内に流入した後、ジェットポンプ16へ流入してRPV13を循環する。つまり、第3実施形態では、PLR系統200の大部分が除染されるとともに、ジェットポンプ16の動力の利用によって除染液の炉内流動が促進される。
【0076】
また、
図6は、第3実施形態に係る除染実施方法で除染液を逆流循環させた状態を示す説明図である。
第3実施形態における逆流循環では、PLR系統200に除染液を循環させるために、第2実施形態の弁の開閉状態(
図4)において、PLR吸入弁22又はPLR吐出弁23をさらに開放(
図6においてはPLR吐出弁23のみを開放)する。また、第3実施形態における順流循環の場合と同様に、左右連結弁37及びPLRミドル弁38を開放(
図6においてはPLR吐出弁23を開放しているため左右連結弁37のみを開放)して、PLR系統200の大半に除染液を流通させる。
【0077】
このとき除染液は、PLRボトム配管33からPLR系統200へ流入することになる。よって、順流循環と同様にRPV13内での循環生成にジェットポンプ16を利用する場合、PLR吸入弁22を閉止して、PLR吐出弁23を開放する。
【0078】
なお、除染径路にPLR系統200を含めたこと以外は、第3実施形態は第1実施形態又は第2実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0079】
このように、第3実施形態に係る除染実施方法によれば、PLR系統200を除染対象に含ませることができる。
また、PLR系統200中の除染液を再循環水入口ノズル24に向けて流通させることで、ジェットポンプ16の循環機能を利用してRPV13内の撹拌を促進することができる。
【0080】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
第4実施形態に係る除染実施方法では、
図7に示されるように、除染液回収配管48上の浄化系統58の上流側に仮設循環ポンプ25を移動させて運転する。
【0081】
第4実施形態の仮設循環系統300Bでは、第1逆流弁42と第2逆流弁61と仮設循環ポンプ25との相互の相対的配置関係が第4実施形態の仮設循環系統300Aと同一に維持されている。
【0082】
例えば図示しない他の構成機器との関係で蒸気ノズル接続配管39上に仮設循環ポンプ25を設置することが好ましくないこともある。このような場合に、作業員は、除染範囲内での循環の向きを第4実施形態と同様に維持したまま、仮設循環ポンプ25を浄化系統58の上流側まで移動することができることになる。
【0083】
また、
図8は、第4実施形態に係る除染実施方法で除染液を逆流循環させた状態を示す説明図である。
弁の開閉状態は、
図8に示されるように、第1実施形態の開閉状態と同様である。また、この結果、除染範囲内での循環状態は、第2実施形態で示した逆流循環と同様である。
【0084】
なお、仮設循環ポンプ25の配置位置が浄化系統58の上流側に移動したこと以外は、第4実施形態は第1実施形態又は第2実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0085】
このように、第4実施形態に係る除染実施方法によれば、第1実施形態又は第2実施形態との効果を維持したまま仮設循環ポンプ25の位置を変更することができる。
【0086】
(第5実施形態)
図9は、第5実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
【0087】
第5実施形態に係る除染実施方法では、
図9に示されるように、PLR系統200に設置されたPLRポンプ21をバイパスして運転する。つまり、第5実施形態では、仮設循環系統300Cは、PLRポンプ21をバイパスするためのバイパスライン81を備える。
そして、このバイパスライン81にPLRボトム配管33を接続して、PLRポンプ21をバイパスする除染液をバイパスライン81から抜き出す。
【0088】
第3実施形態では、PLRポンプ21を稼働させずにPLR系統200に循環を発生させるためには、PLRポンプ21を仮閉止する必要があった。しかし、PLRポンプ21の解体状況によっては、電動機などが未だ撤去されておらず仮閉止をすることができない場合もある。
【0089】
そこで、第5実施形態では、PLRポンプ21をバイパスさせることで、原子炉停止後のPLRポンプ21の解体状況によらず化学除染を実施する。また、このバイパスによって、PLRポンプ21に対する特段の処置を施さずに、化学除染を実施することもできる。
【0090】
この仕切弁は、
図9に示されるように、PLR吸入弁22を三方弁に改造したものであってもよい。
【0091】
なお、PLRポンプ21をバイパスすること以外は、第5実施形態は第4実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0092】
このように、第5実施形態に係る除染実施方法によれば、第4実施形態の効果に加え、PLRポンプ21の解体状況によらず、かつPLRポンプ21に対する特段の処置を施さずに化学除染を実施することができる。
【0093】
(第6実施形態)
図10は、第6実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
【0094】
第6実施形態に係る除染実施方法は、
図10に示されるように、助勢ポンプ83を用いて左側PLR系統200Lの線流速を高めて除染する。
また、この除染実施方法を実施するために、仮設循環系統300Dは、左側蒸気出口ノズル27Lと左側PLR系統200Lとを接続する助勢経路84と、左側PLRボトム配管33Lに設けられる助勢弁86と、を備える。助勢ポンプ83は、この助勢経路84に設けられる。
【0095】
RPV13は容量が非常に大きいため、RPV13を含んだ除染を実施する場合、一箇所に設置された仮設循環ポンプ25では、十分な流速が得られない場合がある。特に、仮設循環ポンプ25から離れており、左右連結配管34Cを介してのみ流入する左側PLR系統200Lでは、十分な流速が得られない。
【0096】
そこで、第6実施形態では、線流速が不十分になる傾向にある左側PLR系統200Lの循環を、助勢ポンプ83で直接揚水する。左側PLR系統200Lを流通する除染液が全て左側蒸気出口ノズル27LからRPV13内へ誘導されるように、助勢弁86を閉止するのが好ましい。
【0097】
このとき、左側PLR系統200Lの循環は、主に助勢ポンプ83で制御されるので、
図10では、第6実施形態等に示した左右連結配管34C及びPLRミドル配管34の図示を省略している。ただし、左右連結配管34C及びPLRミドル配管34(34A,34B)による循環を適宜維持していてもよい。
【0098】
なお、流速が小さくなる傾向にある除染箇所の循環を、助勢ポンプ83で助勢すること以外は、第6実施形態は第1実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0099】
このように、第6実施形態に係る除染実施方法によれば、第1実施形態の効果に加え、流速の不十分な除染箇所の流速を助勢して、除染の不十分な箇所の発生を防止することができる。
また、第6実施形態に係る除染実施方法によれば、全体の流速も大きくすることができるので、除染時間を短縮することもできる。
【0100】
(第7実施形態)
図11は、第7実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
【0101】
第7実施形態に係る除染実施方法では、
図11に示されるように、第2逆流配管62に設けられた逆流ポンプ87を用いて逆流循環を発生させる。
【0102】
第1施形態では、第1逆流配管41(
図1等)と第2逆流配管62に除染液を流通させて逆流循環を発生させていた。
しかし、他の機器の配置状況によっては、第1逆流配管41を蒸気ノズル接続配管39に接続できない場合もある。
【0103】
そこで、第7実施形態の仮設循環系統300Eでは、第2逆流配管62に逆流ポンプ87を設けて、この逆流ポンプ87で第2実施形態と同様の逆流循環をRPV13内に発生させる。
【0104】
PLRミドル配管34に流入する除染液を全て第2逆流配管62に誘導させるため、PLRミドル配管34には、第4逆流弁88が設けられる。
蒸気ノズル接続配管39上であって仮設循環ポンプ25の下流側には、循環ポンプ閉止弁78が設けられて、逆流循環の際に閉止される。
【0105】
なお、逆流ポンプ87で逆流させること以外は、第7実施形態は第2実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0106】
このように、第7実施形態に係る除染実施方法によれば、逆流ポンプ87を用いることで、第2実施形態と同様の運転を第1逆流配管41を用いることなく第2実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0107】
(第8実施形態)
図12は、第8実施形態に係る除染実施方法の説明図である。
【0108】
第8実施形態に係る除染実施方法は、化学除染の対象にRPV13、PLR系統200に加えて、その周辺系統(図示せず)を含む。
周辺系統とは、原子炉冷却材浄化(CUW;Reactor Water Clean-Up)系統及び残留熱除去(RHR;Residual Heat Removal)系統の少なくとも1つを含む小循環系統を形成可能な周辺の系統のことである。
【0109】
そして、第8実施形態では、これらRPV13、PLR系統200及び周辺系統を各々隔離して個別の通水区域にして、小循環経路を形成する。そして、各々隔離されたこれらの通水区域のうち、汚染放射能量が低く、かつ、除染容量が小さい通水区域から順次除染を実施する。
【0110】
除染液の浄化及び除染液の状態の管理を一括して行うため、仮設循環系統300Fにはプラットホーム89を構成することが望ましい。
プラットホーム89は、熱交換器49、薬剤調製部50、オゾン発生器51、浄化系統58、及び仮設循環ポンプ25を含み、全ての通水区域に直接的又は間接的に接続される。
【0111】
例えば、プラットホーム89は、蒸気ノズル接続配管39と除染液回収配管48とがプラットホーム配管91で接続されることで閉循環経路として構成される。この閉循環経路を形成するために、プラットホーム89と除染液回収配管48との分岐部分には、それぞれ閉循環構成弁92と閉循環開放弁93とが設けられる。
【0112】
プラットホーム89には、除染液供給ヘッダ94a及び除染液戻りヘッダ94bが設けられる。これらのヘッダ94(94a,94b)には、各通水区域に接続される分岐配管が接続される。分岐配管のそれぞれには、それぞれの分岐配管の通水を調整して除染対象の通水区域を選択する選択弁98(98a〜98f)が設けられる。
【0113】
除染液は、除染液供給ヘッダ94aから選択された通水区域に供給されてこの通水区域を除染する。除染液供給ヘッダ94aから通水区域へ除染液を供給する場合には、除染液供給ヘッダ94aと除染液戻りヘッダ94bとの間に設けられた供給用弁97を閉止する。供給用弁97を閉止することで、プラットホーム配管91を流通する除染液を堰止めて、流通する除染液の全てを除染液供給ヘッダ94aに流入させる。
【0114】
通水区域を循環して除染した除染液は、除染液戻りヘッダ94bからプラットホーム89に戻される。選択弁98を次々に切り替えることで、順番に各通水区域を除染することができる。
【0115】
ところで、このように逐次除染をする場合、RPV13等の高線量率の通水区域を初期に除染するとプラットホーム89が高レベルに汚染される。また、この場合、低線量率の通水区域における流れの停滞部に高放射能濃度の液が蓄積するおそれがある。よって、例えばRHR系統等の次に線量率の低い通水領域を除染すると、除染対象範囲に蓄積した汚染を広げてしまうおそれがある。よって、各通水領域は、汚染放射能レベルの低い部分から高い部分に順に除染するのが好ましい。
【0116】
また、RPV13は必要通水量が他の通水領域の容量と比較して桁違いに大きい。よって、初期にRPV13を除染した後にその他の対象範囲を除染する場合、除染液を大量に排水することが必要になる。この排水には除染剤の分解処理及び浄化処理が必要となるため、これらの処理及び排水作業に時間がかかる。
【0117】
一方、小容量かつ汚染レベルの低い系統から順次除染を実施していくと、最終サイクルの還元工程で、陽イオン交換樹脂通水により放射能と溶出金属をある程度除去しておけば十分になる。つまり、小容量かつ汚染レベルの低い系統から除染をすることで、除染剤分解と最終浄化とを実施せずに、水及び薬剤を追加して次の対象範囲の第1サイクルの還元工程に移行することができる。
【0118】
よって、第8実施形態においては、小容量かつ汚染レベルの低い系統から順次除染を実施していくことが望ましい。
なお、プラットホーム配管91には、対象になる通水区間を除染するのに十分な液位及び液量を維持するためのバッファタンク99が設けられることが望ましい。必要時にのみバッファリングをするため、バッファタンク99にはバッファ弁96が設けられる。
【0119】
なお、プラットホーム89は、同一の機能を発揮する構成であれば、上述の一例の配置関係に限定されない。例えば、プラットホーム配管91の接続位置、ヘッダ94、及びバッファタンク99の位置は、他の機器との配置を考慮して適宜変更することができる。
【0120】
なお、除染液供給・浄化のプラットホーム89を構築すること及び除染範囲を区分けして所定のルールで順次除染すること以外は、第8実施形態は第3実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0121】
このように、第8実施形態に係る除染実施方法によれば、第1実施形態の効果に加え、除染範囲を区分けして小さくすることで、仮設循環ポンプ25の容量が小さい場合でも、除染液の線流速を高め除染効果を向上させることができる。
【0122】
また、第8実施形態に係る除染実施方法によれば、除染剤分解と最終浄化を実施せずに、次の通水区域の除染に移行できるため、効率的に除染をすることができる。
【0123】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の除染実施方法によれば、仮設循環系統300Aを用いて除染液を循環させることにより、PLRポンプ21を用いずに、RPV13及びこのRPV13を含むPLR系統200の少なくとも一方を含む系統の除染をすることが可能となる。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。