(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776447
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】流体出力チャネルを含む流体射出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20201019BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20201019BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20201019BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B29C64/209
B33Y30/00
B41J2/14 607
B41J2/14
B41J2/18
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-522605(P2019-522605)
(86)(22)【出願日】2016年11月1日
(65)【公表番号】特表2019-523163(P2019-523163A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】US2016059864
(87)【国際公開番号】WO2018084826
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】カンビー,マイケル,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チエン−ヒュア
【審査官】
石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−107418(JP,A)
【文献】
特開2015−058581(JP,A)
【文献】
特表2014−514190(JP,A)
【文献】
特開2012−011629(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0049141(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0007921(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/146069(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0239241(US,A1)
【文献】
特表2014−531349(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0321541(US,A1)
【文献】
特表2014−522755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板を貫通して形成された流体スロットと、
射出ノズルと、
該射出ノズルに流体的に接続された射出チャンバと、
前記基板を貫通して形成され、及び前記射出チャンバと前記流体スロットとに流体的に接続された、流体入力孔と、
前記基板を貫通して形成され、及び前記流体スロットに流体的に接続された、流体出力孔と、
前記射出チャンバ及び前記流体出力孔に流体的に接続された流体出力チャネルと、
該流体出力チャネル内に配置されて前記射出チャンバから前記流体出力孔の外へと流体を送出するための流体ポンプと、
前記流体入力孔と前記流体出力孔との間で前記流体スロット内へと延びる流体循環リブとを備えており、
該流体循環リブが、前記流体入力孔と前記流体出力孔との間に障壁を提供して、前記流体出力孔から前記流体入力孔内へと出力される流体の流れを該流体循環リブの終端点を通過するまで阻止する、
流体射出ダイ。
【請求項2】
前記流体循環リブの高さが、前記流体スロットの深さの5%〜90%の範囲内である、請求項1に記載の流体射出ダイ。
【請求項3】
前記射出ノズルを介して流体を射出するために前記射出チャンバ内に配設された流体射出器を更に備えている、請求項1又は請求項2に記載の流体射出ダイ。
【請求項4】
前記流体出力チャネルが第1の端部で前記射出チャンバに流体的に接続され、該流体出力チャネルが第2の端部で前記流体出力孔に流体的に接続され、前記流体ポンプが前記第1の端部に近接して前記流体出力チャネル内に配設されている、請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の流体射出ダイ。
【請求項5】
前記流体出力チャネルが第1の端部で前記射出チャンバに流体的に接続され、該流体出力チャネルが第2の端部で前記流体出力孔に流体的に接続され、該流体出力チャネルが前記第1の端部における第1のチャネル幅と前記第2の端部における第2のチャネル幅とを有しており、該第1のチャネル幅と該第2のチャネル幅とが異なる、請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の流体射出ダイ。
【請求項6】
前記流体出力チャネルがS字形に相当するものである、請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の流体射出ダイ。
【請求項7】
前記流体出力チャネル内に配置された少なくとも1つの柱状部を更に備えている、請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の流体射出ダイ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの柱状部が、前記射出チャンバと前記流体ポンプとの間に配置されて、前記流体ポンプ及び/又は前記流体射出器の作動中の流体クロストークを低減させる、請求項3を直接的または間接的に引用する請求項7に記載の流体射出ダイ。
【請求項9】
基板と、
該基板を貫通して形成された流体スロットと、
射出ノズルと、
該射出ノズルに流体的に接続された射出チャンバと、
前記基板を貫通して形成され、及び前記射出チャンバと前記流体スロットとに流体的に接続された、流体入力孔と、
前記基板を貫通して形成され、及び前記流体スロットに流体的に接続された、流体出力孔と、
前記射出チャンバ及び前記流体出力孔に流体的に接続された流体出力チャネルと、
前記流体入力孔と前記流体出力孔との間で前記流体スロット内へと延びる流体循環リブであって、該流体循環リブが、前記流体入力孔と前記流体出力孔との間に障壁を提供して、前記流体出力孔から前記流体入力孔内へと出力される流体の流れを該流体循環リブの終端点を通過するまで阻止する、流体循環リブと、
流体を前記射出チャンバから前記流体出力孔の外へと送出するために前記流体出力チャネル内に配設された流体ポンプと、
前記射出ノズルを介して流体を射出するために前記射出チャンバ内に配設された流体射出器と
を備えており、
前記流体ポンプと前記流体射出器とが非同時かつ非同期で動作する、
流体射出ダイ。
【請求項10】
前記流体循環リブの高さが、前記流体スロットの深さの5%〜90%の範囲内である、請求項9に記載の流体射出ダイ。
【請求項11】
前記流体循環リブが、前記流体出力チャネルが配置されている平面とほぼ直交する平面内に延びている、請求項1ないし請求項10の何れか一項に記載の流体射出ダイ。
【請求項12】
複数のノズルと、該複数のノズルの各々毎の射出チャンバとを含む流体射出ダイであって、該流体射出ダイが、前記各射出チャンバ毎に該流体射出ダイの内部に形成されたそれぞれの流体入力孔を更に有しており、該流体射出ダイが、その内部に形成された複数の流体出力孔を更に有しており、及び該流体射出ダイが、前記複数のノズルの各々毎に該流体射出ダイの内部に形成されたそれぞれの流体出力チャネルを有しており、該それぞれの流体出力チャネルが、それぞれの前記射出チャンバとそれぞれの前記流体出力孔とを流体的に接続する、流体射出ダイと、
該流体射出ダイに接続された基板であって、該基板が、その内部に形成された少なくとも1つの流体チャネルを有しており、該少なくとも1つの流体チャネルが、前記基板を貫通して形成されたそれぞれの流体入力孔及び前記基板を貫通して形成されたそれぞれの流体出力孔に流体的に接続されており、これにより流体をそれぞれの流体入力孔を介してそれぞれの射出チャンバ内へ搬送し、及びこれによりそれぞれの流体出力孔を介してそれぞれの射出チャンバから流体を受容する、基板と
を備えており、
前記流体射出ダイが、
それぞれの前記射出チャンバから前記ノズルを介して流体を射出するために該それぞれの射出チャンバ内に配設されたそれぞれの流体射出器と、
それぞれの前記流体出力チャネル内に配設されたそれぞれの流体ポンプであって、流体を前記射出チャンバから該それぞれの流体出力チャネルを介してそれぞれの前記流体出力孔の外へと送出する、それぞれの流体ポンプと
を更に備えており、該流体射出ダイが、
それぞれの前記流体入力孔とそれぞれの前記流体出力孔との間で前記基板の前記流体チャネル内へと延びる流体循環リブであって、それぞれの流体出力孔を介して出力された流体を、該流体循環リブの終端点を通過するまで前記流体循環リブに沿って方向付け、次いで前記基板の前記流体チャネル内へと方向付ける、流体循環リブ
を更に備えている、流体射出装置。
【請求項13】
前記流体循環リブの高さが、前記流体チャネルの深さの5%〜90%の範囲内である、請求項12に記載の流体射出装置。
【請求項14】
前記流体循環リブが、前記流体出力チャネルが配置されている平面とほぼ直交する平面内に延びている、請求項12又は請求項13に記載の流体射出装置。
【請求項15】
前記複数の流体出力チャネルのそれぞれが、前記複数の射出チャンバのうちの少なくとも2つを前記複数の流体出力孔のうちの1つに流体的に接続する、請求項12ないし請求項14の何れか一項に記載の流体射出装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
流体射出装置は、インク等の流体を紙等の媒体に堆積させる装置である。流体射出装置は流体リザーバに接続することが可能である。したがって、リザーバからの流体を流体射出装置へ搬送して該流体射出装置から吐出させ、分配させ、及び/又は射出させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
【
図2A】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
【
図2B】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
【
図2C】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
【
図2D】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
【
図3】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素のブロック図である。
【
図4】例示的な流体射出ダイの幾つかの構成要素のブロック図である。
【
図5】例示的な流体射出装置の幾つかの構成要素のブロック図である。
【
図6】例示的な流体射出装置の幾つかの構成要素のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
図面全体を通して、同一の番号は、同様であるが必ずしも同一ではない構成要素を示す。それら図面は必ずしも一定の縮尺を有するものではなく、図示の例を一層明確に示すために幾つかの部分のサイズが誇張されている場合がある。更に、図面は、説明と一致する実例及び/又は実施を提供するものであるが、該説明は、該図面で提供される実例及び/又は実施に限定されるものではない。
【0004】
流体射出装置及びその流体射出ダイの例は、射出ノズル、射出チャンバ、流体入力孔、流体出力孔、流体出力チャネル、及び流体ポンプを含むことが可能である。流体入力孔は、流体が流体入力孔を介して射出チャンバへと搬送されるように該射出チャンバに流体的に接続することが可能である。流体入力孔は流体リザーバに流体的に接続することが可能であり、流体リザーバからの流体は流体入力孔を介して射出チャンバに搬送されることが可能であることが理解されよう。実例によっては、流体スロットを流体リザーバ及び流体入力孔に流体的に接続することが可能である。射出ノズルは、射出チャンバ内の流体が射出ノズルを介して流体射出装置から射出されるように、射出チャンバに流体的に接続され及び射出チャンバに隣接することが可能である。更に、射出チャンバは、流体出力チャネルを介して流体出力孔に流体的に接続することが可能である。流体ポンプは流体出力チャネル内に配置される。かかる例では、射出チャンバ内の流体は、流体ポンプを備えた流体出力チャネルを介して射出チャンバから流体出力孔の外へとポンプで送出することが可能である。
【0005】
したがって、かかる例では、流体射出装置は、射出ノズルを介して射出チャンバ内の流体を射出することが可能であり、又は流体射出装置は、流体ポンプを備えた流体出力チャネルを介して射出チャンバから流体出力孔の外へ流体を送出することが可能である。実例によっては、流体出力孔及び流体入力孔は、共通の流体スロットに流体的に接続することが可能である。したがって、これらの例では、流体は、流体スロットから流体入力孔を介して射出チャンバへと搬送され、射出チャンバ内の流体は、流体出力チャネル及び流体出力孔を介して流体スロットへと搬送されることが可能である。これらの例は、流体を流体スロットから射出チャンバを介して循環させて該流体スロットへと戻すことが可能であることが理解されよう。更に、これらの例では、流体の循環は単一の流れ方向で行うことが可能である。換言すれば、流体入力孔は、流体スロットから射出チャンバへの流体の搬送を容易化することが可能である。流体出力チャネル及びその中に配置された流体ポンプは、射出チャンバから流体出力孔を介して流体スロットへの流体の搬送を容易化することが可能である。
【0006】
本書に記載する例は、流体射出装置の流体的な応答の改善を容易化することが可能である。実例によっては、流体射出装置の流体は高濃度の微粒子を有し、かかる場合、その循環なしでは該微粒子が沈殿する可能性がある。例えば、流体の微粒子が射出チャンバ内で沈殿する可能性がある。射出チャンバ内での微粒子の沈殿は、射出ノズルの目詰まり又は望ましくない流体的な応答に通ずるものとなる。したがって、本書に記載する例は、粒子の沈殿を低減させることが可能となるように、射出チャンバを介した流体の循環を容易化することが可能である。
【0007】
実例によっては、流体射出装置は、加熱要素を含む流体射出器を含むことが可能である。射出ノズルを介して流体を射出するために、加熱要素を電気的に作動させることが可能である。加熱要素の作動は、流体射出器に近接する流体内に蒸気泡を形成させることが可能であり、該蒸気泡は射出ノズルから流体滴を射出させることが可能である。かかる例では、流体射出器の動作は、流体、構成要素、及び流体射出器に近接する表面の熱プロファイルを増大させ得るものであることが理解されよう。このため、加熱要素を含む流体射出器を含む例では、射出チャンバを介した流体の循環は、該射出チャンバの熱冷却を容易化することが可能である。加熱要素が流体射出器内で実施されない場合であっても、射出チャンバを介した流体の循環は、構成要素及び表面の温度を低下させることが可能であることが理解されよう。
【0008】
一般に、射出ノズルは、流体的に接続された射出チャンバから流体を射出させ/分配させることが可能である。ノズルは一般に、流体をノズルオリフィスから射出させ/分配させるための流体射出器を含む。流体射出装置において実施される幾つかのタイプの流体射出器の例は、熱射出器、圧電射出器、及び/又は流体をノズルオリフィスから射出させ/分配させることが可能なその他の射出器を含む。
【0009】
更に、本書に記載する例は、ノズル、射出チャンバ、流体チャネル、流体入力孔、及び/又は流体出力孔を含むものとして説明することが可能である。本書で提供される例は、複数の構造及び/又は複数の構成要素を形成し及び/又は接続するために基板上に様々な微細加工(microfabrication)プロセス及び/又は微細機械加工(micromachining)プロセスを実行することにより形成することが可能であることが理解されよう。該基板は、シリコンベースのウェハ、又は微細加工デバイスのために使用される他の同様の材料(例えば、ガラス、ガリウムヒ素、金属、セラミック、プラスチックなど)を含むことが可能である。本開示の例は、流体チャネル、流体アクチュエータ、容積測定(volumetric)チャンバ、ノズルオリフィス、又はそれらの任意の組み合わせを含むことが可能である。流体チャネル、ノズル、孔、及び/又はチャンバは、基板で、エッチング、微細加工プロセス(例えばフォトリソグラフィ)、微細機械加工プロセス、又はそれらの組み合わせを行うことにより形成することが可能である。したがって、流体チャネル、ノズルオリフィス、流体入力/出力孔、及び/又はチャンバは、基板内に作製された複数の表面、及び/又は作製された複数の微細加工デバイス層によって画定することが可能である。
【0010】
実例によっては、流体射出ダイは、スライバ(sliver:細長い小片)と呼ばれることがある。一般に、スライバは、約650μm以下の厚さ、約30mm以下の外形寸法、及び/又は約3対1以上の長さ対幅の比を有する射出ダイに対応するものであることが可能である。実例によっては、スライバの長さ対幅の比は、約10対1以上とすることが可能である。実例によっては、スライバの長さ対幅の比は、約50対1以上とすることが可能である。実例によっては、射出ダイは非矩形形状とすることが可能である。これらの例では、射出ダイの第1の部分は、上述の例に近似する寸法/特徴を有することが可能であり、射出ダイの第2の部分は、該第1の部分よりも幅が広く長さが短いことが可能である。実例によっては、第2の部分の幅は、第1の部分の幅の約2倍とすることが可能である。これらの例では、射出ダイは、細長い第1の部分を有することが可能であり、該細長い第1の部分に沿って射出ノズルを配置することが可能である。該射出ダイは、該射出ダイのための電気接点を配置することが可能な第2の部分を有することが可能である。
【0011】
本書に記載する例示的な流体射出装置及びその流体射出ダイは、2次元プリンタ及び/又は3次元(3D)プリンタなどのプリンティング装置で実施することが可能である。幾つかの例示的な流体射出装置はプリントヘッドとすることが可能であることが理解されよう。実例によっては、流体射出装置は、プリンティング装置内で実施することが可能であり、及び、紙などの媒体、粉末ベースの造形材料の層、反応性デバイス(reactive device)(ラボオンチップ(Lab-on-a-chip)デバイスなど)にコンテンツをプリントするために使用することが可能である。例示的な流体射出装置には、インクベースの射出装置、ディジタル滴定装置、3Dプリンティング装置、医薬品調剤装置、ラボオンチップ装置、流体診断回路、及び/又は所定量の流体を分配し/射出することが可能な他のかかる装置が含まれる。
【0012】
実例によっては、流体射出装置を実施することが可能なプリンティング装置は、層毎の積層造形プロセスで消費可能流体(consumable fluids)を堆積させることによりコンテンツをプリントすることが可能である。消費可能流体及び/又は消費可能材料は、例えば、インク、トナー、流体もしくは粉末、又はプリンティング用の他の原料を含む、使用される全ての材料及び/又は化合物を含むことが可能である。更に、本書に記載するようなプリンティング材料は、消費可能流体並びにその他の消費可能材料を含むことが可能である。プリンティング材料は、インク、トナー、流体、粉末、着色剤、ワニス、仕上げ剤、光沢向上剤、結合剤、及び/又はプリンティングプロセスで使用することが可能なその他の材料を含むことが可能である。
【0013】
ここで図面に戻り、特に
図1を参照すると、同図は、例示的な流体射出ダイ10の幾つかの構成要素を示すブロック図である。この例では、流体射出ダイ10は、ノズル層18内に形成された射出チャンバ16と流体的に接続された流体入力孔14を有する基板12を含む。射出チャンバ16は、ノズル層18内に形成された射出ノズル20に隣接して配置され及び該射出ノズル20と流体的に接続されている。この例では、流体射出ダイ10は、射出チャンバ16と流体的に接続された流体出力チャネル22を更に含み、該流体出力チャネル22は更に、基板12内に形成された流体出力孔24に流体的に接続されている。このブロック図には示していないが、実例によっては、流体射出ダイ10は、射出チャンバ16から流体出力孔24へと流体を送出すために流体出力チャネル22内に配設された流体ポンプを含むことが可能である。更に、実例によっては、射出チャンバ内に配置され及び射出ノズル20に近接して配置されて射出ノズル20を介して射出チャンバ16から流体を射出する流体射出器を含むことが可能である。
【0014】
図1に示す例では、流体射出ダイ10は基板12及びノズル層18を含むよう示されていることに留意されたい。基板12及びノズル層18は異なる材料を含むことが可能であることが理解されよう。例えば、基板12はシリコンを含み、ノズル層18はポリマー材料を含むことが可能である。他の例では、他の材料の組み合わせを実施することが可能である。更に、実例によっては、ノズル層18及び基板12は、3つ以上の異なる材料又は単一の材料から形成することが可能である。
【0015】
図1に示すように、流体射出ダイ10に対応する例示的な流体流れ方向30a〜30dが提供される。この例では、流体は、流れ方向30aで示すように、流体入力孔14を介して射出チャンバ16へと流れることが可能である。更に、流体は、流れ方向30b〜30cで示すように、射出チャンバ16から流体出力チャネル22を介して流体出力孔24へ流れることが可能である。流体は、流体出力チャネル22を介して流体出力孔24から流出するのではなく、流体流れ方向30dで示すように、射出ノズル20を介して射出チャンバ16から射出することが可能である。
【0016】
図2Aないし
図2Dは、流体射出装置及び/又はその流体射出ダイの構成要素の幾つかの例示的な配置を示すブロック図である。これらの例では、流体射出ダイ50は射出チャンバ52を備えている。流体射出ダイ50は更に、射出チャンバ52に流体的に接続された流体入力孔54を含み、これにより流体を流体源から射出チャンバ52へと搬送することが可能となる。流体射出ダイ50は、射出チャンバ52に流体的に接続された射出ノズル56を含み、流体射出ダイ50は、射出チャンバ52内に配設された流体射出器58を含む。更に、射出チャンバ52は流体出力チャネル60に流体的に接続され、該流体出力チャネル60は流体出力孔62に流体的に接続されている。
【0017】
図2Aないし
図2Dの例では、各流体出力チャネル60内に少なくとも1つの流体ポンプ64が配設されている。前述のように、流体射出器58を作動させ、ノズル56を介して射出チャンバ52から流体滴を射出させることが可能である。流体ポンプ64を作動させて、射出チャンバ52から流体出力チャネル60を介して流体出力孔62の外へと流体のポンピングを生じさせることが可能である。実例によっては、流体ポンプ64は、流体出力孔62と比べて射出チャンバ52の一層近くに配置され、これにより流体出力チャネル60内の流体の非対称的なポンピングを行うことが容易となる。
【0018】
図2Bの例では、例示的な流体射出ダイ50は、流体出力チャネル60内に配設され及び射出チャンバ52と流体ポンプ64との間に配置された少なくとも1つの柱状部66を含む。
図2Cでは、例示的な流体射出ダイ50は、流体出力チャネル60内に配設され及び射出チャンバ52と流体ポンプ64との間に配置された少なくとも2つの柱状部66,68を含む。
図2Bないし
図2Cの例では、柱状部66,68は、流体ポンプ64及び/又は流体射出器58の作動中の流体クロストークを低減させることが可能である。
【0019】
図2Dの例では、流体射出ダイ50は、少なくとも2つの流体入力孔54と、少なくとも2つの射出チャンバ52と、少なくとも2つの射出ノズル56と、少なくとも2つの流体射出器58と、少なくとも2つの流体出力チャネル60と、少なくとも2つの流体ポンプ64とを備えている。
図2Dから分かるように、流体射出ダイ50は、2つの流体射出チャンバ52及び2つの流体出力チャネル60に流体的に接続された単一の流体出力孔62を備えている。このため、この例では、流体は、各射出チャンバ52から流体出力孔62へとポンプ作用により送出されることが可能である。
図2Dは更に、流体循環リブ70(仮想線で示す)を示している。図示のように、流体循環リブ70は、流体入力孔54と流体出力孔62との間に配置されている。
図2Dの例と類似した例では、流体再循環リブ70は、流体出力チャネル60、流体入力孔54、及び流体出力孔62を形成することが可能な平面とほぼ直交する平面に沿って延びることが可能であることが理解されよう。かかる例では、流体出力孔62を介してポンプ作用で送出される流体は、流体循環リブ70が延びる平面とほぼ平行な方向に、該流体循環リブ70の終端点を通過するまで、循環することが可能である。したがって、流体循環リブ70は、流体出力孔62から出力された流体の流体入力孔54を介した吸い込みを、かかる出力された流体が流体循環リブ70の終端点を通過するまで、阻止することが可能である、ということが理解されよう。
【0020】
図2Aないし
図2Dの例で示したそれぞれの構成要素の個数は単に例示を目的としたものであることが理解されよう。別の例では、流体射出ダイは、より多数の又はより少数のそれぞれの構成要素(例えば、より多数の又はより少数の射出チャンバ、射出ノズル、流体ポンプ、流体出力チャネルなど)を含むことが可能である。更に、例示的な流体射出ダイのかかる構成要素は、その個数及び各構成要素間の相対的な配置に関する他の構成を含むことが可能である。
【0021】
図3は、例示的な流体射出装置及び/又はその流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
図2Aないし
図2Dの例と同様に、例示的な流体射出ダイ100は、射出チャンバ52、流体入力孔54、射出ノズル56、流体射出器58、流体出力チャネル60、流体出力孔62、及び流体ポンプ64を含む。更に、
図3の例では、流体射出ダイ100は、流体入力孔54及び流体出力孔62に近接して配置された柱状部102を含む。柱状部102は、望ましくない微粒子が射出チャンバ52に入るのを阻止することが可能であることが理解されよう。更に、該例示的な流体射出ダイ100の例では、流体出力チャネル60はS字形に対応するものである。本書で用いる場合、S字形とは、流体出力チャネル60が文字「S」の形状に類似するように、該流体出力チャネル60がその各部間に配置された2つの曲線を含むことを示している。この例では、S字形の流体出力チャネル60は、U字形の曲線部分により接続された直線部分を含む。それぞれの流体ポンプ64は、流体出力孔62に対する流体ポンプ64の距離と比較してそれぞれの射出チャンバ52に一層近い距離を有する位置でそれぞれの流体出力チャネル60内に配置することが可能である、ということが理解されよう。それぞれの流体ポンプ64の位置決めは、流体出力チャネル60内に非対称に配置されると説明することが可能である。
【0022】
図4は、例示的な流体射出装置及び/又はその流体射出ダイの幾つかの構成要素を示すブロック図である。
図2Aないし
図2Dの例と同様に、例示的な流体射出ダイ150は、射出チャンバ52、流体入力孔54、射出ノズル56、流体射出器58、流体出力チャネル60、流体出力孔62、流体ポンプ64、及び柱状部102を含む。
図4の例では、それぞれの流体出力チャネル60は、その第1の端部をそれぞれの射出チャンバ52に流体的に接続し、及びその第2の端部をそれぞれの流体出力孔62に流体的に接続することが可能である。図示のように、第1の端部における各流体出力チャネル60のチャネル幅(チャネル半径、チャネル直径、及び/又はチャネルの断面積に対応する)は、第2の端部における各流体出力チャネル60のチャネル幅よりも小さい。このため、それぞれの流体出力チャネル60は第2の端部から第1の端部に向かってテーパが付けられていると説明することが可能であることが理解されよう。
【0023】
図5は、例示的な流体射出装置200の幾つかの構成要素を示すブロック図である。この例では、流体射出装置200は、基板202及びノズル層203を含む流体射出ダイ201を備えている。更に、流体射出装置200は、流体射出ダイ201の一部を収容し及び該流体射出ダイ201を支持することが可能な成形パネル204を備えている。実例によっては、ノズル層203、基板202、及び成形パネル204は、異なる材料から構成することが可能である。例えば、ノズル層203はポリマー材料から形成することが可能であり、基板202はシリコンから形成することが可能であり、及び成形パネルはエポキシ材料から形成することが可能である。実例によっては、流体射出装置200の上面は、ノズル層203の上面と成形パネル204の上面とから構成することが可能であり、この場合、流体射出装置200の上面はほぼ平面とすることが可能である。
【0024】
例示的な流体射出ダイ201は、基板層202を貫通して形成された流体入力孔206及び流体出力孔208を含む。更に、該例示的な流体射出ダイ201は、ノズル層203を貫通して形成された射出ノズル210を含む。他の例に関して説明するように、流体射出ダイ201は更に、基板202内に形成されたそれぞれの射出チャンバ212及び/又はそれぞれのノズル210に隣接して該ノズル210と流体的に接続されたノズル層203を含む。それぞれの流体出力チャネル214は、それぞれの射出チャンバ212を流体出力孔208に流体的に接続する。この例では示されていないが、流体射出ダイ201は、それぞれの射出ノズル210を介して射出チャンバ212から流体滴を射出するためにそれぞれの射出チャンバ212内に配置された流体射出器を含むことが可能であることが理解されよう。更に、例示的な流体射出ダイ201は、それぞれの射出チャンバ212からそれぞれの流体出力孔208へと流体をポンプ作用で送出するために、各流体出力チャネル214に配置された流体ポンプを備えることが可能である。
【0025】
更に、例示的な流体射出ダイ201は、流体循環リブ220を含む。図示のように、流体循環リブ220は、流体出力チャネル214が配置されている平面とほぼ直交する平面内に延びる。成形パネル204及び基板202は、流体スロット224を有することが可能であり、該流体スロット224は、成形パネル204及び基板202を貫通して形成され、及び流体入力孔206及び流体出力孔208に流体的に接続されている。この例で示すように、各流体循環リブ220は、流体循環リブ高さ226として説明される所定距離にわたり流体スロット224a内に延びる。実例によっては、流体循環リブ高さ226は、流体スロット深さ230に対応するものとすることが可能である。例えば、流体循環リブ高さ226は、流体スロット深さ230の約50%とすることが可能である。他の例では、流体循環リブ高さ226は、流体スロット深さ230の約25%とすることが可能である。実例によっては、流体循環リブ高さ226は、流体スロット深さ230の約5〜90%の範囲とすることが可能である。
【0026】
図5では、全般的な流体の流れ方向240が破線矢印で示されている。特に、流体は、流体スロット224から流体入力孔206を介して射出チャンバ212内へと流入することが可能である。既述のように、流体は、それぞれのノズル210を介して射出チャンバ212から射出することが可能であり、又は、流体は、射出チャンバ212から流体出力チャネル214を介して流体出力孔208外へとポンプ作用で送出することが可能である。この例では、流体は、流体出力孔208から流体スロット224内へとポンプ作用で送られ、この際、それぞれの流体循環リブ220が、流体出力孔208と流体入力孔206との間に障壁を提供することにより、流体入力孔206へと戻る出力流体の流れを阻止することが可能となる。
【0027】
図6は、流体射出ダイ302、成形パネル304、及びキャリア306を備えた例示的な流体射出装置300を示している。この例では、流体射出ダイ302は、成形パネル304内に少なくとも部分的に埋め込まれ、及び該成形パネル304により少なくとも部分的に囲まれている。成形パネル304は、接着剤308でキャリア306に結合させることが可能である。この例で示すように、流体スロット310は、キャリア306、接着剤308、及び成形パネル304を貫通して形成することが可能である。流体スロット310は、流体射出ダイ302の流体入力孔312及び流体出力孔314に流体的に接続される。流体射出ダイ302の流体入力孔312は、射出チャンバ314に流体的に接続される。射出チャンバ314はノズル316に流体的に接続され、該ノズル316を介して流体滴を射出することが可能となる。更に、射出チャンバ314は流体出力チャネル318に流体的に接続される。次いで、該流体出力チャネル318は流体出力孔314に流体的に接続される。前の例に関して説明したように、射出チャンバ314の流体は、該射出チャンバ314から流体出力チャネル318及び流体出力孔314を介して流体スロット310内へとポンプ作用で戻ることが可能である。
【0028】
図7を参照すると、例示的な流体射出装置及び/又はその流体射出ダイにより実行することが可能な例示的な一連の動作を示すフローチャート400が提供されている。前の例に関して説明したように、流体は、流体射出器を用いて射出ノズルを介して射出チャンバから射出することが可能である(ブロック402)。流体射出器を用いた流体の射出とは非同期で、流体ポンプを用いて流体を射出チャンバから流体出力チャネルを介して流体出力孔の外へとポンプ作用で送出することが可能である(ブロック404)。このため、
図7の例と類似した例では、流体射出器及び流体ポンプの動作は非同期とする(すなわち、同時ではない)ことが可能であることが理解されよう。
【0029】
したがって、本書に記載する例は、射出チャンバに流体的に接続された流体入力孔を含む流体射出ダイを提供することが可能である。射出チャンバは、射出ノズルを介して射出チャンバから流体を射出することができるように射出ノズルに隣接し及び該射出ノズルに流体的に接続することが可能である。更に、射出チャンバは、流体出力チャネルに流体的に接続することが可能であり、該流体出力チャネルは、流体出力孔に流体的に接続することが可能である。流体は、ポンプ作用により射出チャンバから流体出力チャネルを介して流体出力孔の外へと送出され、これにより流体の循環を容易化することが可能となる。かかる流体の循環は、射出チャンバ内の微粒子の沈殿を低減させることが可能である。更に、かかる流体の循環は、射出チャンバに近接する構成要素及び表面の熱冷却を容易化することが可能である。
【0030】
上記説明は、説明した原理の例を例示し説明するために提示したものである。この説明は、本原理を完全に説明すること又はかかる原理を本開示の厳密な形態に限定することを意図したものではない。本説明に照らして多くの修正例及び変形例を実施することが可能である。したがって、図面で提供し本明細書で説明した前述の例は、特許請求の範囲で定義される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。