(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記負圧面側フィレット部の前記中央フィレット部は、前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との境界線のうち、前記2つの負圧面側区間に挟まれた区間の少なくとも一部に沿って形成された、請求項6に記載のタービン動翼。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラットフォーム部の上面の面積は有限であり、特に、プラットフォーム部の上面の負圧面側に形成できるフィレット部の幅には限界がある。このため、タービン動翼の翼形部の大型化等によってプラットフォーム部の上面の面積を十分に確保できない場合等には、特許文献1に記載されるフィレット幅の拡大による応力集中の抑制効果は限定的となってしまう。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示は、応力集中を抑制可能なタービン動翼を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示に係るタービン動翼は、
圧力面及び負圧面を含む翼形部と、
前記翼形部の基端側に形成されたプラットフォーム部と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼形部と反対側に形成されたシャンク部と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された負圧面側フィレット部と、
を含み、
前記負圧面側フィレット部は、
前記負圧面側フィレット部の延在する方向に沿った前記負圧面側フィレット部の長さの中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部と、
前記負圧面側フィレット部の上流端である前縁と前記中央フィレット部との間に位置し、前記プラットフォーム部の前記上面からのフィレット高さが前記中央フィレット部よりも高い上流側中間フィレット部と、
前記負圧面側フィレット部の下流端である後縁と前記中央フィレット部との間に位置し、前記プラットフォーム部の前記上面からのフィレット高さが前記中央フィレット部よりも高い下流側中間フィレット部と、
を含む。
【0008】
上記(1)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部において、応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部のフィレット高さを、応力が相対的に小さくなる中間フィレット部のフィレット高さよりも大きくすることにより、応力集中を抑制することができる。これにより、タービン動翼における曲げクリープによる寿命を改善することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービン動翼において、
前記中央フィレット部、前記上流側中間フィレット部及び前記下流側中間フィレット部の各々は、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面とを繋ぐ曲線であって、楕円の一部によって規定される曲線と
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記曲線と前記上面とが接続する位置まで延在する第2線分と、
によって画定される断面を含み、
前記上流側中間フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径は、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、前記中央フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径よりも大きく、
前記下流側中間フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径は、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、前記中央フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径よりも大きい。
【0010】
上記(2)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部の断面において、応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部の上記曲線を規定する楕円の曲率半径を、応力が大きくなりにくい中央フィレット部の上記曲線を規定する楕円の曲率半径より大きくすることにより、上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部の応力集中を抑制すると共に、中央フィレット部の燃焼ガス流の乱れを抑え、空力性能の低下を抑制することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(2)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記上流側中間フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率は、前記中央フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率よりも小さく、
前記下流側中間フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率は、前記中央フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率よりも小さい。
【0012】
上記(3)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の上面において比較的フィレット幅を確保しやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部において、フィレット幅を確保しにくい中央フィレット部よりも、フィレット幅に対するフィレット高さの比率が小さくなっているため、応力集中を抑制しつつ、空力性能の低下を抑制することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部は、前記上流側中間フィレット部の上流側に隣接する前縁フィレット部を含み、
前記上流側中間フィレット部の前記フィレット高さは、前記前縁フィレット部のフィレット高さよりも高い。
【0014】
上記(4)に記載のタービン動翼によれば、前縁フィレット部よりも応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部は、前記下流側中間フィレット部の下流側に隣接する後縁フィレット部を含み、
前記下流側中間フィレット部の前記フィレット高さは、前記後縁フィレット部のフィレット高さよりも高い。
【0016】
上記(5)に記載のタービン動翼によれば、後縁フィレット部よりも応力が大きくなりやすい下流側中間フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記圧力面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された圧力面側フィレット部を更に備え、
前記圧力面側フィレット部は、前記圧力面側フィレット部の延在する方向に沿った前記負圧面側フィレット部の長さの中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部を含み、
前記圧力面側フィレット部における前記中央フィレット部のフィレット高さは、前記負圧面側フィレット部における前記中央フィレット部の前記フィレット高さよりも高い。
【0018】
上記(6)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部の中央フィレット部よりも応力が大きくなりやすい中央フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部における中央フィレット部のフィレット高さと圧力面側フィレット部における中央フィレット部のフィレット高さを一様に高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)に記載のタービン動翼において、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との境界線は、前記翼高さ方向視において前記シャンク部とオーバーラップする2つの負圧面側区間を含み、
前記圧力面と前記プラットフォーム部の上面との境界線は、前記翼高さ方向視において前記シャンク部とオーバーラップする1つの圧力面側区間を含み、
前記上流側中間フィレット部は、前記2つの負圧面側区間のうち一方の区間の少なくとも一部に沿って形成され、
前記下流側中間フィレット部は、前記2つの負圧面側区間のうち他方の区間の少なくとも一部に沿って形成され、
前記圧力面側フィレット部の前記中央フィレット部は、前記1つの圧力面側区間の少なくとも一部に沿って形成される。
【0020】
上記(7)に記載のタービン動翼によれば、応力が大きくなりやすい部位のフィレット高さを高くして、応力集中を抑制することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部の前記中央フィレット部は、前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との境界線のうち、前記2つの負圧面側区間に挟まれた区間の少なくとも一部に沿って形成される。
【0022】
上記(8)に記載のタービン動翼によれば、応力が発生しにくい部位のフィレット高さを低くして、空力性能の低下を抑制することができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部の前記中央フィレット部は、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面の端縁とを繋ぐ曲線と、
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記端縁まで延在する第2線分と、
によって画定される断面を含み、
前記曲線は、楕円の一部によって規定され、
前記楕円の中心は、翼厚方向において前記プラットフォーム部の前記端縁を挟んで前記翼形部と反対側に位置し、
前記楕円の下端の位置は、前記翼高さ方向において前記プラットフォーム部の前記端縁よりも下方に位置する。
【0024】
上記(9)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の端縁の位置に上記曲線を規定する比較的小さな楕円の下端が位置する場合(
図9参照)と比較して、応力集中を抑制することができる。また、
図10に示すような中央フィレット部を形成する場合(翼高さ方向において楕円の下端の位置をプラットフォーム部の上面の位置に揃えてフィレットカット面を形成する場合)と比較して、空力性能の点で有利である。
【0025】
(10)本開示に係るタービン動翼は、
圧力面及び負圧面を含む翼形部と、
前記翼形部の基端側に形成されたプラットフォーム部と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼形部と反対側に形成されたシャンク部と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された負圧面側フィレット部と、
を含み、
前記負圧面側フィレット部は、前記負圧面側フィレット部の中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部を含み、
前記中央フィレット部は、
前記プラットフォーム部の上面の端縁と負圧面とを繋ぐ曲線と、
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記端縁まで延在する線分と、
によって画定される断面を含み、
前記曲線は、楕円の一部によって規定され、
前記楕円の中心は、翼厚方向において前記プラットフォーム部の前記端縁を挟んで前記翼形部と反対側に位置し、
前記楕円の下端の位置は、翼高さ方向において前記プラットフォーム部の前記端縁よりも下側に位置する。
【0026】
上記(10)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の端縁の位置に上記曲線を規定する比較的小さな楕円の下端が位置する場合(
図9参照)と比較して、応力集中を抑制することができる。また、
図10に示すような中央フィレット部を形成する場合(翼高さ方向において楕円の下端の位置をプラットフォーム部の上面の位置に揃えてフィレットカット面を形成する場合)と比較して、空力性能の点で有利である。
【0027】
(11)本開示に係るタービン動翼は、
圧力面及び負圧面を含む翼型部と、
前記翼型部の基端側に形成されたプラットフォーム部と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼型部と反対側に形成されたシャンク部と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された負圧面側フィレット部と、含み、
前記負圧面側フィレット部は、前記負圧面側フィレット部の中央に位置する中央フィレット部を含み、
前記中央フィレット部を形成するフィレット部は、前記フィレット部の外表面を形成する曲面の下縁が、前記プラットフォーム部の端縁において、前記プラットフォーム部の上面に正接することなく所定の傾きを備えて交差する。
【0028】
上記(11)に記載のタービン動翼によれば、フィレット部の応力集中を抑制しつつ、空力性能の低下を防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示によれば、応力集中を抑制可能なタービン動翼が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0032】
図1は、一実施形態に係るタービン動翼2の概略構成を示す側面図であり、タービン動翼2を負圧面3側から視た図である。
図2は、
図1に示したタービン動翼2の上面図であり、タービン動翼2を先端側から翼高さ方向に沿って視た図である。
【0033】
図1に示すように、タービン動翼2は、内部に冷却流路(不図示)を有する翼形部8と、翼形部8の基端側に形成されたプラットフォーム部10と、プラットフォーム部10を挟んで翼形部8と反対側に形成されたシャンク部12と、シャンク部12を挟んでプラットフォーム部10と反対側に形成され、不図示のタービンロータの翼溝に嵌合可能な翼根部14と、を備える。以下において、「周方向」とは、タービン動翼2が不図示のタービンロータに取り付けられた状態におけるタービンロータの周方向を意味する。
【0034】
図2に示すように、翼形部8は、負圧面3、圧力面4、翼前縁5及び翼後縁6を含む。翼形部8の負圧面3及び圧力面4のそれぞれは、翼前縁5方向及び翼後縁6方向に延び、翼前縁5及び翼後縁6で両面が接続され、翼形部8の内部に冷却流路(不図示)が形成されている。
図1及び
図2の少なくとも一方に示すように、タービン動翼2は、翼形部8とプラットフォーム部10との間の接続部15、18にフィレット部13が形成されている。フィレット部13は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部15(負圧面3と上面10aとによって形成された角部19)に形成された負圧面側フィレット部16と、圧力面4とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部18(圧力面4と上面10aとによって形成された角部23)に形成された圧力面側フィレット部20とを備える。なお、フィレット部13は、翼形部8廻りの全周に形成され、接続部15、18を起点に翼高さ方向及び翼幅方向(周方向)に延在する。翼高さ方向に延びるフィレット部13は、翼壁面8aに沿って形成され、翼高さ方向の先端が上縁13cを形成する。また、翼幅方向に延びるフィレット部13は、プラットフォーム部10の上面10aに沿って翼幅方向(周方向)に形成され、翼形部8から周方向に最も離間した位置の先端がフィレット部13の下縁13dを形成する。
【0035】
図1及び
図2に示すように、負圧面側フィレット部16は、中央フィレット部22、上流側中間フィレット部24、下流側中間フィレット部26、前縁フィレット部28、後縁フィレット部30を含む。前縁フィレット部28は、前縁13aを境に、負圧面3側に形成された負圧面側前縁フィレット部28aと、圧力面4側に形成された圧力面側前縁フィレット部28bと、から構成される。後縁フィレット部30は、後縁13bを境に、負圧面3側に形成された負圧面側後縁フィレット部30aと、圧力面4側に形成された圧力面側後縁フィレット部30bと、から構成される。
【0036】
例えば
図2に示すように、中央フィレット部22は、負圧面側フィレット部16の中央C1を含んだ位置に形成される。なお、負圧面側フィレット部16の中央C1とは、負圧面側フィレット部16の延在する方向に沿った負圧面側フィレット部16の長さ(負圧面側フィレット部16の上流端である前縁16aから負圧面側フィレット部16の下流端である後縁16bまでの負圧面側フィレット部16に沿った長さ)の中央を意味する。
【0037】
例えば
図1に示すように、上流側中間フィレット部24は、負圧面側前縁フィレット部28aと中央フィレット部22との間に位置する。上流側中間フィレット部24は、プラットフォーム部10の上面10aからフィレット部13の上縁13cまでのフィレット高さが中央フィレット部22よりも高くなっている。すなわち、上流側中間フィレット部24におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh2は、中央フィレット部22におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh1よりも高くなっている。なお、本明細書における「フィレット高さ」とは、プラットフォーム部10の上面10aからの翼高さ方向に沿った高さを意味する。
【0038】
下流側中間フィレット部26は、負圧面側後縁フィレット部30aと中央フィレット部22との間に位置する。下流側中間フィレット部26は、プラットフォーム部10の上面10aからフィレット部13の上縁13cまでのフィレット高さが中央フィレット部22よりも高くなっている。すなわち、下流側中間フィレット部26におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh3は、中央フィレット部22におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh1よりも高くなっている。
【0039】
前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)は、上流側中間フィレット部24の上流側に隣接しており、フィレット部13の前縁13aを含む範囲に形成されている。前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)は、プラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さが上流側中間フィレット部24よりも低くなっている。すなわち、上流側中間フィレット部24におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh2は、前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh4よりも高くなっている。
【0040】
後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)は、下流側中間フィレット部26の下流側に隣接しており、フィレット部13の後縁13bを含む範囲に形成されている。後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)は、プラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さが下流側中間フィレット部26よりも低くなっている。すなわち、下流側中間フィレット部26におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh3は、後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)のフィレット高さh5よりも高くなっている。
【0041】
また、
図2に示すように、圧力面側フィレット部20は、圧力面側フィレット部20の中央C2を含んだ位置に形成された中央フィレット部32を含む。圧力面側フィレット部20の中央フィレット部32は、プラットフォーム部10の上面10aからフィレット部13の上縁13cまでのフィレット高さが、負圧面側フィレット部16の中央フィレット部22の上縁13cまでのフィレット高さよりも高くなっている。すなわち、圧力面側フィレット部20の中央C2を含んだ位置に形成された中央フィレット部32のフィレット高さh6(不図示)は、負圧面側フィレット部16の中央C1における中央フィレット部22のフィレット高さh1(
図1参照)よりも高くなっている。なお、圧力面側フィレット部20の中央とは、圧力面側フィレット部20の延在する方向に沿った圧力面側フィレット部20の長さ(圧力面側フィレット部20の上流端である前縁20aから圧力面側フィレット部20の下流端である後縁20bまでの圧力面側フィレット部20に沿った長さ)の中央を意味する。
【0042】
図3は、
図2におけるA−A断面の構成を説明するための模式図である。
図4は、
図2におけるB−B断面の構成を説明するための模式図である。
図5は、
図2におけるC−C断面の構成を説明するための模式図である。なお、本明細書において、各フィレット部の断面は、各フィレット部の延在する方向と直交する断面を意味する。
【0043】
図3及び
図4に示すように、上流側中間フィレット部24におけるフィレット幅d2に対するフィレット高さh2の比率(h2/d2)は、中央フィレット部22におけるフィレット幅d1に対するフィレット高さh1の比率(h1/d1)よりも小さい。
【0044】
また、
図4及び
図5に示すように、下流側中間フィレット部26におけるフィレット幅d3に対するフィレット高さh3の比率(h3/d3)は、中央フィレット部22におけるフィレット幅d1に対するフィレット高さh1の比率(h1/d1)よりも小さい。
【0045】
図3に示すように、中央フィレット部22の断面S1は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aの端縁10a1とを接続する曲線Q1と、曲線Q1と負圧面3とが接続する位置P1から翼高さ方向に沿ってプラットフォーム部10の上面10aまで延在する線分Q2と、線分Q2とプラットフォーム部10の上面10aとが接続する位置P2から曲線Q1と上面10aとが接続する位置P3(端縁10a1の位置)まで延在する線分Q3と、によって画定される。また、曲線Q1は、仮想楕円E1の一部によって規定される。仮想楕円E1は、位置P1において負圧面3に外接し、端縁10a1を通る。また、仮想楕円E1の中心O1は、周方向においてプラットフォーム部10の端縁10a1を挟んで翼形部8と反対側に位置し、仮想楕円E1の下端の位置P10は、翼高さ方向においてプラットフォーム部10の端縁10a1よりも翼高さ方向の下側に位置する。
【0046】
図4に示すように、上流側中間フィレット部24の断面S2は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとを滑らかに繋ぐ曲線Q4と、曲線Q4と負圧面3とが接続する位置P4から翼高さ方向に沿ってプラットフォーム部10の上面10aまで延在する線分Q5と、線分Q5とプラットフォーム部10の上面10aとが接続する位置P5から曲線Q4と上面10aとが接続する位置P6まで延在する線分Q6と、によって画定される。曲線Q4は、仮想楕円E2の一部によって規定される。仮想楕円E2は、位置P4において負圧面3に外接し、位置P6において上面10aに外接する。
【0047】
図5に示すように、下流側中間フィレット部26の断面S3は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとを滑らかに繋ぐ曲線Q7と、曲線Q7と負圧面3とが接続する位置P7から翼高さ方向に沿ってプラットフォーム部10の上面10aまで延在する線分Q8と、線分Q8とプラットフォーム部10の上面10aとが接続する位置P8から曲線Q7と上面10aとが接続する位置P9まで延在する線分Q9と、によって画定される。曲線Q7は、仮想楕円E3の一部によって規定される。仮想楕円E3は、位置P7において負圧面3に外接し、位置P9において上面10aに外接する。
【0048】
ここで、上流側中間フィレット部24における曲線Q4を規定する仮想楕円E2の長径a2は、中央フィレット部22における曲線Q1を規定する仮想楕円E1の長径a1よりも大きい。また、上流側中間フィレット部24の断面S2の面積は、中央フィレット部22の断面S1の面積よりも大きい。また、上流側中間フィレット部24のフィレット幅d2は、中央フィレット部22のフィレット幅d1よりも大きい。また、仮想楕円E1の中心O1は、翼高さ方向において、仮想楕円E2の中心O2及び仮想楕円E3の中心O3の各々よりも下方(プラットフォーム部10側)に位置する。また、仮想楕円E2の曲率半径Rは、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、仮想楕円E1の曲率半径Rよりも大きい。
【0049】
また、下流側中間フィレット部26における曲線Q7を規定する仮想楕円E3の長径a3は、中央フィレット部22における曲線Q1を規定する仮想楕円E1の長径a1よりも大きい。また、下流側中間フィレット部26の断面S3の面積は、中央フィレット部22の断面S1の面積よりも大きい。また、下流側中間フィレット部26のフィレット幅d3は、中央フィレット部22のフィレット幅d1よりも大きい。また、仮想楕円E3の曲率半径Rは、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、仮想楕円E1の曲率半径Rよりも大きい。
【0050】
図6は、
図2に示したタービン動翼2の上面図(翼高さ方向視図)についてシャンク部12の存在する範囲を破線で示した図である。
図6に示すように、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部15(負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの境界線、すなわち、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとが接続する上述の位置P2,P5,P8を結ぶ線)は、翼高さ方向視においてシャンク部12とオーバーラップする2つの負圧面側区間T1(位置T11―位置T12),T2(位置T21−位置T22)(
図6の2つの太線区間)を含む。また、圧力面4とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部18(負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの境界線)は、翼高さ方向視においてシャンク部12とオーバーラップする1つの圧力面側区間T3(位置T31―位置T32)(
図6の1つの太線区間)を含む。なお、位置T11及び位置T21は、シャンク部12の負圧面3側の外形線12aと翼形部8の負圧面3側の接続部15とが交差する位置を示し、位置T12及び位置T22は、シャンク部12の圧力面4側の外形線12bと翼形部8の負圧面3側の接続部15とが交差する位置を示し、位置T31及び位置T32は、シャンク部12の圧力面4側の外形線12bと翼形部8の圧力面4側の接続部18とが交差する位置を示す。
【0051】
上流側中間フィレット部24は、上記2つの負圧面側区間T1,T2のうち一方の区間T1(負圧面側区間T1,T2のうち相対的に軸方向上流側の区間)の少なくとも一部に沿って形成され、下流側中間フィレット部26は、上記2つの負圧面側区間T1,T2のうち他方の区間T2(負圧面側区間T1,T2のうち相対的に軸方向下流側の区間)の少なくとも一部に沿って形成される。圧力面側フィレット部20の中央フィレット部32は、上記1つの圧力面側区間T3の少なくとも一部に沿って形成される。
【0052】
また、負圧面側フィレット部16の中央フィレット部22は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部15のうち、2つの負圧面側区間T1,T2に挟まれた負圧面側区間T4の少なくとも一部に沿って形成される。
【0053】
次に、上記タービン動翼2における作用効果について、参考形態における技術的課題とともに説明する。
【0054】
図7は参考形態に係るタービン動翼の上面図である。
図8Aは、
図7のI−I断面及びJ−J断面における応力線の流れを示す図である。
図8Bは、
図7のH−H断面における応力線の流れを示す図である。
【0055】
図7、
図8A及び
図8Bに示すように、ガスタービン1の運転に伴い、タービン動翼2における翼形部8とプラットフォーム部10との接続部15,18では、翼形部8の形状とシャンク部12の形状の周方向のずれに起因して、翼形部8とプラットフォーム部10との接続部に応力集中が発生する。すなわち、ロータの回転に伴ない、翼形部8、プラットフォーム部10及びシャンク部12は遠心力を受けて、負圧面3における翼前縁5の近傍位置の翼形部8とプラットフォーム部10との接続部15(区間T1)廻り、負圧面3における翼後縁6の近傍位置の翼形部8とプラットフォーム部10との接続部15(区間T2)廻り、及び圧力面4における中央位置の翼形部8とプラットフォーム部10との接続部18(区間T3)廻りにおいて応力集中が発生する。特に、翼幅に比較して翼高さ方向の長さが大きい長大翼において、この現象が顕著になる。
【0056】
この点、上記タービン動翼2では、
図1に示したように、負圧面側前縁フィレット部28aと中央フィレット部22との間に位置する上流側中間フィレット部24のフィレット高さh2が、中央フィレット部22のフィレット高さh1よりも高くなっており、負圧面側後縁フィレット部30aと中央フィレット部22との間に位置する下流側中間フィレット部26のフィレット高さh3が、中央フィレット部22のフィレット高さh1よりも高くなっている。これにより、負圧面側フィレット部16における応力が大きくなりやすい部位のフィレット高さを応力が小さい部位のフィレット高さよりも大きくして、応力集中を抑制することができる。これにより、タービン動翼2における応力集中による過大な応力を低減することができる。また、負圧面側フィレット部16の前縁13aから後縁13bに亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、負圧面側フィレット部16の内、応力の大きい上流側中間フィレット部24のフィレット高さを高く、応力の小さい中央フィレット部22のフィレット高さを低くして、大きいフィレット部13の形成による空力性能の低下を極力抑制することができる。
【0057】
また、上流側中間フィレット部24におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh2は、前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh4よりも高くなっている。このため、前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)よりも応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部24の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部16の前縁13aから後縁13bに亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、負圧面側フィレット部16の内、応力の大きい下流側中間フィレット部26のフィレット高さを高く、応力の小さい前縁フィレット部28(負圧面側前縁フィレット部28a)のフィレット高さを低くして、大きいフィレット部13の形成による空力性能の低下を極力抑制することができる。
【0058】
一方、下流側中間フィレット部26におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh3は、中央フィレット部22のフィレット高さh1よりも高くなっている。このため、中央フィレット部22よりも応力が高くなりやすい下流側中間フィレット部26の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部16の前縁16aから後縁16bに亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、負圧面側フィレット部16の内、応力の大きい下流側中間フィレット部26のフィレット高さを高く、応力の小さい中央フィレット部22のフィレット高さを低くして、大きいフィレット部13の形成による空力性能の低下を極力抑制することができる。
【0059】
また、下流側中間フィレット部26におけるプラットフォーム部10の上面10aからのフィレット高さh3は、後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)のフィレット高さh5よりも高くなっている。このため、後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)よりも応力が大きくなりやすい下流側中間フィレット部26の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部16の前縁16aから後縁16bに亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、負圧面側フィレット部16の内、応力の大きい下流側中間フィレット部26のフィレット高さを高く、応力の小さい後縁フィレット部30(負圧面側後縁フィレット部30a)のフィレット高さを低くして、大きいフィレット部13の形成による空力性能の低下を極力抑制することができる。
【0060】
また、
図3〜
図5に示したように、上流側中間フィレット部24におけるフィレット幅d2に対するフィレット高さh2の比率(h2/d2)は、中央フィレット部22におけるフィレット幅d1に対するフィレット高さh1の比率(h1/d1)よりも小さくなっており、下流側中間フィレット部26におけるフィレット幅d3に対するフィレット高さh3の比率(h3/d3)は、中央フィレット部22におけるフィレット幅d1に対するフィレット高さh1の比率(h1/d1)よりも小さくなっている。すなわち、プラットフォーム部10の上面10aにおいて比較的フィレット幅を確保しやすい上流側中間フィレット部24と下流側中間フィレット部26では、フィレット幅を確保しにくい中央フィレット部22よりも、フィレット幅に対するフィレット高さの比率(楕円比)が小さくなっている。このため、上述した応力集中を抑制しつつ、空力性能の低下を抑制することができる。フィレットの位置の違いによるフィレット形状の違いは、後述する。
【0061】
また、圧力面側フィレット部20における中央フィレット部32のフィレット高さh6は、負圧面側フィレット部16における中央フィレット部22のフィレット高さh1よりも高くなっている。これにより、負圧面側フィレット部16の中央フィレット部22よりも応力が大きくなりやすい中央フィレット部32の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部16における中央フィレット部22のフィレット高さと圧力面側フィレット部20における中央フィレット部32のフィレット高さを一様に高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0062】
また、
図3〜
図5に示したように、負圧面側フィレット部16の断面S1,S2,S3において、上記曲線Q4を規定する仮想楕円E2の長径a2と、上記曲線Q7を規定する仮想楕円E3の長径a3を、上記曲線Q1を規定する仮想楕円E1の長径a1より大きくしているため、負圧面側フィレット部16における応力が大きくなりやすい部位への応力集中を抑制することができる。
【0063】
また、
図3に示したように、中央フィレット部22の断面S1において、仮想楕円E1の中心O1は、翼形部8の翼厚方向(不図示のタービンロータの周方向)においてプラットフォーム部10の端縁10a1を挟んで翼形部8と反対側に位置し、仮想楕円E1の下端の位置P10は、翼高さ方向においてプラットフォーム部10の端縁10a1よりも下方に位置する。このため、例えば
図9に示すようにプラットフォーム部10の端縁10a1の位置に曲線Q1を規定する比較的小さな楕円の下端が位置する場合と比較して、応力集中を抑制することができる。また、
図10に示すような中央フィレット部022を形成する場合(翼高さ方向において楕円の下端の位置をプラットフォーム部010の上面010aの位置に揃えてフィレットカット面CFを形成する場合)と比較して、空力性能の点で有利である。
【0064】
また、
図6に示したように、負圧面側フィレット部16の上流側中間フィレット部24は、応力が大きくなりやすい負圧面側区間T1の少なくとも一部に沿って形成され、負圧面側フィレット部16の下流側中間フィレット部26は、応力が大きくなりやすい負圧面側区間T2の少なくとも一部に沿って形成される。このため、応力集中が発生しやすい部分のフィレット高さを高くして、応力集中を抑制すると共に、他の応力の小さい部分のフィレット高さを低くして、空力性能の低下を抑制することができる。
【0065】
また、負圧面側フィレット部16の中央フィレット部22は、負圧面3とプラットフォーム部10の上面10aとの接続部15のうち、2つの負圧面側区間T1,T2に挟まれた応力が相対的に小さい負圧面側区間T4の少なくとも一部に沿って形成される。このため、応力が小さい部分のフィレット高さを低くして、空力性能の低下を抑制することができる。
【0066】
図11は、周方向に隣接配置された隣接翼を含めた翼構造とフィレット部の形状の関係を示す模式図である。翼形部8とプラットフォーム部10との接続部15、18にかかる遠心力に伴う応力集中を緩和する構造について、以下に説明する。
翼形部8とプラットフォーム部10との接続部15、18に形成されるフィレット部13の外形形状は、
図11に示すように、仮想楕円E21の形状の一部を用いて表示できる。仮想楕円E21は、翼形部8の位置P21で翼壁面8aに外接し、仮想楕円E21の翼高さ方向の下端P22は、プラットフォーム部10の上面10aの端縁10a21に外接するように配置されている。なお、下端P22の位置は、端縁10a21より翼形部8側に寄っていても、仮想楕円E21の形状は変わらない。翼形部8の負圧面3側の翼壁面8aとプラットフォーム部10の上面10aとが接合する接続部15の位置をP23とする。フィレット部13が延在する前縁―後縁方向に直交する方向のフィレット部13の断面は、位置P21と位置P22を結ぶ曲率半径Rで形成された仮想楕円E21の一部である凹状に形成された曲線Q21と、位置P21と位置P23及び位置P22と位置P23を結ぶ線分Q22及び線分Q23で囲まれた略三角形の断面で表示される。
【0067】
図11に示すように、仮想楕円E21の長軸X方向の長径H及び短軸Y方向の短径Dとした場合、長径Hと短径Dの比率(H/D)を、楕円比と呼ぶ。接続部15に発生する応力集中を吸収することが可能なフィレット部13の断面形状は、仮想楕円E21の曲率半径Rの大きさで選定できる。応力集中が大きければ、仮想楕円E21の長径H、短径Dを大きくして、曲率半径Rを大きくする必要がある。
【0068】
ここで、応力集中が作用する翼形部8とプラットフォーム部10の接続部15、18近傍における翼構造とフィレット形状の関係について、具体的に説明する。
図8Aに示すように、翼形部8の負圧面3側の翼壁面8aがプラットフォーム部10の上面10aに接続する接続部15の近傍では、翼形部8側の断面形状に対し、翼形部8が接続するプラットフォーム部10側の断面形状が軸方向及び周方向に急激に変化する。すなわち、翼壁面8aとプラットフォーム部10の上面10aとが交差する接続部15に角部(エッジ)19が形成され、角部(エッジ)19を挟んで翼高さ方向の上方及び下方で断面形状が変わるため、断面形状変化が起きる角部(エッジ)19の位置を中心に応力集中が発生する。従って、接続部15の角部(エッジ)19に発生する応力集中を緩和するため、角部(エッジ)19の断面形状の変化を翼高さ方向で出来るだけ滑らかな変化にすることが望ましい。そのため、翼壁面8aの接続部15の外周側にフィレット部13を形成することが、翼形部8の接続部15近傍の急激な断面形状の変化を緩和することに繋がる。つまり、
図11において、翼壁面8aの接続部15の外周側にフィレット部13を形成すれば、翼形部8の接続部15における急激な断面形状の変化を抑制することになる。翼壁面8aの接続部15における角部(エッジ)19の替わりに、翼壁面8aの外周側に所定の曲率を有する曲面又は曲線を有するフィレット部13を形成することにより、接続部15における翼高さ方向における急激な断面形状の変化が緩和され、緩やかな断面変化となり、応力集中が抑制される。接続部15に形成される所定の曲率半径Rを備えた曲面又は曲線が、曲線Q21に相当し、フィレット部13の外表面を形成する。
【0069】
図11に示すように、仮想楕円E21の曲率半径Rは、楕円中心O21と仮想楕円E21の任意の位置Gとの間の長さLを意味する。仮想楕円E21の曲率半径Rの算出方法は、一般には、下記の〔数式1〕及び〔数式2〕で算出できる。
〔数式1〕:(X
2/H
2)×(Y
2/D
2)=1/4
〔数式2〕:R=(H×D)/2×√〔(1+(tanθ)
2 )/(D
2+H
2×(tanθ)
2)〕
ここで、数式1は、楕円の一般式である。数式2は、数式1から算出され、角度θにおける曲率半径Rを算出する数式である。角度θは、
図11に示すように、長径X軸から時計回りの方向に曲率半径Rとのなす角度を意味する。数式1及び数式2に示す係数Hは楕円の長径H、係数Dは楕円の短径Dを意味する。
【0070】
仮想楕円E21の曲率半径Rは、長軸Xとのなす角度θを選定すれば、仮想楕円E21の位置Gが定まり、長さLが決定できる。仮想楕円E21の軌跡の一部は、フィレット部13の外表面を形成する曲線Q21に一致する。上述のように、曲線Q21の曲率半径Rを大きくすることにより、接続部15における断面形状変化の割合が緩やかになり、接続部15における応力集中が抑制される。フィレット部13の曲率半径Rは、楕円中心O21の位置を長軸X方向及び短軸Y方向に移動させることにより、曲率半径Rの大きさを変えることができる。例えば、
図11において、楕円比(H/D)を維持しつつ、仮想楕円E21を翼壁面8aの位置P21及びプラットフォーム部10の上面10a上の位置P22に外接させながら、仮想楕円E21の中心O21の位置を翼形部8から周方向の離間する方向に移動させると、翼壁面8a上の位置P21が翼高さ方向の上方に移動し、プラットフォーム部10の上面10a上の位置P22が周方向に移動する。従って、仮想楕円E21の長径H及び短径Dが大きくなり、フィレット部13の曲線Q21の曲率半径Rが大きくなるため、接続部15に発生する応力集中が抑制される。なお、角度θの替わりに、位置Gのプラットフォーム部10の上面10aからの高さFH(翼高さ方向位置)を選定し、曲率半径Rを選定してもよい。
【0071】
接続部15における応力集中の抑制の観点からは、仮想楕円E21の曲率半径Rを可能な限り大きくすればよく、その結果、フィレット部13の一部を形成する曲線Q21の曲率半径Rが大きくすることが出来る。フィレット部13のフィレット高さが同じでも、フィレット幅が大きければ、フィレット部13の曲率半径Rは大きくなり、フィレット幅が同じでも、フィレット高さが大きくなれば、フィレット部13の曲率半径Rは大きくなる。上述のように、曲率半径Rは、数式2により定まる値であり、長径H及び短径Dのそれぞれが大きくなれば、曲率半径Rも大きくなる。フィレット部13の曲率半径Rの大小と楕円比(H/D)の大小とは直接の関連性はない。楕円比(H/D)の選定は、応力集中の低減と空力性能の両面から適正な長径H及び短径Dを選定することが望ましい。
【0072】
上述の説明は、翼形部8の負圧面3側の接続部15における応力集中の抑制に関する構造の説明であるが、翼形部8の圧力面4側の翼壁面8aとプラットフォーム部10の上面10aが接続する接続部18においても、同様にフィレット部13の曲率半径Rを大きくすることにより、応力集中を抑制する効果がある。
【0073】
一方、翼形部8の翼高さ及びプラットフォーム部10の周方向幅には限界があり、フィレット部13の取り得る曲率半径Rには限界がある。また、フィレット外形が、外側へ凸状に膨らむ断面形状のフィレットは、フィレット外表面を流れる燃焼ガス流FFの流れを乱すことになり、空力性能上は不利になる。
従って、長大翼においては、遠心力に伴う接続部15、18における応力集中を回避する手段として、翼構造からの制限がない限り、フィレット部13の曲率半径Rは可能な限り大きな曲率半径Rを選択することが望ましい。但し、フィレット形状を大きくすると空力性能上は不利になるため、応力集中と空力性能の両面からフィレット形状を選定することが望ましい。
【0074】
長大翼の場合は、プラットフォーム部10の軸方向(前縁―後縁方向)の幅に比較して、周方向幅は相対的に狭くなる。特に、翼形部8は、負圧面3側が凸面状の曲面を形成し、圧力面4側が凹面上の曲面を形成する。従って、翼形部8をプラットフォーム部10に配置した場合、前縁―後縁方向における翼形部8の負圧面3側の翼壁面8aの位置によっては、翼壁面8aとプラットフォーム部10の端縁10a1との間の幅が狭くなる場合がある。
一方、
図6及び
図8A、
図8Bに示すように、翼形部8及びプラットフォーム部10は、シャンク部12を介して翼根部14に支持されている。従って、シャンク部12の軸方向中心SCは、プラットフォーム部10の軸方向中心PCより翼形部8の負圧面3側にずれる。
【0075】
一般には、タービン動翼の翼形部8には遠心力が作用するため、翼形部8の全周に一定の大きさのフィレットを形成させて、過大な応力の発生を抑制している。しかし、本実施形態の一態様である
図1及び
図2並びに
図6に示すような長大翼の場合、翼形部8の周方向の位置によっては、翼壁面8aから一定幅で翼壁面8aの外周側にフィレット部13を形成させることが困難であり、フィレット部13の配置スペースの関係から、フィレット部13の周方向幅を小さくする場合が生ずる。一方、中央フィレット部22が形成された負圧面側区間T4(位置T11−位置T21)の間のフィレット部13は、シャンク部12の負圧面3側の外形線12aより周方向外側に翼形部8の負圧面3側の接続部15が形成されている。
図7及び
図8Bに示すように、翼形部8の軸方向(前縁―後縁方向)の中央(H−H断面)における応力線の流れは、負圧面3側ではなく圧力面4側に集中し、負圧面側区間T4は、負圧面側区間T1、T2と比較して相対的に応力集中は小さい。従って、負圧面側区間T4に形成される中央フィレット部22のフィレット形状は、フィレット部22を形成する配置スペースの制約と、上流側中間フィレット部24及び下流側中間フィレット部26より相対的に小さい応力集中である点の両方を考慮の上、フィレット部22の応力集中の低減と空力性能の改善の観点から仮想楕円の長径H及び短径Dを選定し、フィレット部13の形状を決定することが望ましい。
【0076】
中央フィレット部22のフィレット形状を選定する場合、
図9に示すように、仮想楕円E4の下端P22が、プラットフォーム部10の端縁10a1に配置するか、又は、端縁10a1より翼形部8側の上面10aに配置することができれば、応力集中及び空力性能の点で最も望ましい。
【0077】
通常、仮想楕円の形状は、翼形部8の全周に渡って一定の比率の楕円比(H/D)を選定し、応力集中を抑制可能な長径H、短径Dを選定する。一方、翼構造によっては、大きい楕円比(H/D)を選定しても、応力集中を抑制できず、フィレット部13に作用する応力集中に起因する最大応力が許容値を越える場合がある。例えば、
図9に示すフィレット部13の断面形状のように、仮想楕円E4の短径Dと比較して長径Hを相対的に大きく形成し、翼高さ方向に細長い仮想楕円E4を選定して応力集中を抑制する方法も考えられる。但し、翼高さにも限度があり、長径Hの選定可能な範囲にも限界がある。その場合は、
図10に示す翼形部8のように、
図9に示す翼形部8と比較して、長径H及び短径Dの両方を大きくして、曲率半径Rを大きく設定する選択も可能である。
図10に示す実施形態では、仮想楕円E21の下端P22の位置は、プラットフォーム部10の上面10aと同じ高さが維持される。
【0078】
図10の実施形態に示すように、仮想楕円E5は、位置P14で翼形部8の翼壁面8aに外接し、位置P22でプラットフォーム部10の上面10aの延長線上に外接する。更に、翼壁面8aとプラットフォーム部10の上面10aとが位置P15で接続し、接続部15が形成される。また、プラットフォーム部10の端縁10a1(位置P16)から長軸Xに平行に翼高さ方向の上方に延伸させ、仮想楕円E5と位置P17で接続する。
なお、
図10に示す構造の場合、仮想楕円E5の中心O5を通る長軸Xの位置が、プラットフォーム部10の端縁10a1の周方向の位置より翼形部8の反対側の周方向の外側に外れ、フィレット部13は、プラットフォーム部10の端縁10a1を通り長軸Xに平行な面CFでカットされている。この態様のフィレット部13の断面形状は、位置P14と位置P17を接続し、フィレット部13の凹面状曲面の一部を形成する曲線Q14と、位置P14と位置P15を接続する線分Q15と、位置P15と位置P16を接続する線分Q16と、位置P16と位置P17を接続する線分で形成されたカット面CFで囲まれた断面である。但し、この態様の場合、曲線Q14に沿って流れる燃焼ガス流FFの流れが、カット面CFと曲線Q14が結合する先端P17で流れを乱し、空力性能を低下させる原因の一つになる。従って、
図10に示す実施形態の場合、仮想楕円E5の曲率半径Rが同じであれば、フィレット部13を形成する曲線Q14の曲率が変わらず、接続部15に対する応力集中の抑制効果はある。但し、上述のように空力性能の面では不利な点もある。
【0079】
一方、
図10の実施形態に示す翼構造の空力性能の低下を防ぐ手段として、仮想楕円E5の中心O5の位置を、翼高さ方向の下方に下げる翼構造が考えられる。すなわち、
図3の態様に示すように、仮想楕円E5が翼形部8の翼壁面8aの位置P14に外接しつつ、プラットフォーム部10の端縁10a1に接する位置まで仮想楕円E5の中心O5を翼高さ方向の下方に下げればよい。その結果、フィレット部13のカット面CFの先端における燃焼ガス流の乱れが抑制され、翼の空力性能が改善される。
【0080】
なお、負圧面3側の中央フィレット部22のフィレット部13の形状の変形例として、上流側中間フィレット部24又は下流側中間フィレット部26のフィレット部13と同じ曲率半径Rを備え、
図3に示すように、仮想楕円E1の下端の位置P10をプラットフォーム部10の上面10aの位置から仮想楕円E1が端縁10a1に接する位置まで翼高さ方向の下側に下げる実施態様でもよい。仮想楕円E1の下端の位置P10をプラットフォーム部10の上面10aの位置より翼高さ方向の下方に下げることで、応力集中の低減効果は、上流側中間フィレット部24又は下流側中間フィレット部26のフィレット部13と同程度の効果が得られ、空力性能の低下も抑えることができる。また、
図3に示す実施形態の翼構造の場合、フィレット部13の曲率半径Rの選定は、角度θの替わりに、位置Gの仮想楕円E1の下端P10からの翼高さ方向の高さFHを選定し、高さFHから仮想楕円E1の軌跡上の位置Gを決定し、曲率半径Rを選定してもよい。
【0081】
図12A及び
図12Bは、フィレット部13廻りの断面詳細を比較して示した模式図である。
図12Aは、
図3に示す仮想楕円E1の下端P10の位置を、プラットフォーム部10の上面10aより翼高さ方向の下方に下げた実施例を対象とし、
図3のA部詳細を示す模式図である。
図12Bは、
図11に示す仮想楕円E21の下端P22の位置をプラットフォーム部10の上面10a上に置いた実施例を対象とし、
図11のB部詳細を示した模式図である。
【0082】
図12Aに示すフィレット部13は、仮想楕円E1が翼形部8の翼壁面8aに対し位置P1で外接(正接)し、プラットフォーム部10の端縁10a1に接するように形成されている。すなわち、仮想楕円E1の端縁10a1の位置において接線Z1を引いた場合、接線Z1は、プラットフォーム部10の上面10aの端縁10a1において、上面10aに正接することなく、所定の傾きを備えて上面10aに対して交差する。つまり、フィレット部13がプラットフォーム部10の上面10aに接する周方向幅のフィレット部13の下縁13dの位置は、端縁10a1の位置に一致する。仮想楕円E1の下端10の位置は、翼高さ方向で端縁10a1の位置より下方に配置されている。また、フィレット部13の外表面を形成する曲線Q1は、仮想楕円E1の軌跡の一部に一致する。従って、フィレット部13の外表面を形成する曲線又は曲面である曲線Q1は、下縁13dが形成されたプラットフォーム部10の端縁10a1において、プラットフォーム部10の上面10aに正接することなく、所定の傾きで上面10aの端縁10a1において上面10aと交差する。所定の傾きは、接線Z1が、端縁10a1において上面10aと交差する際の上面10aに対する傾き角であり、楕円比(H/D)によって選定可能である。
【0083】
一方、
図12Aと対比する
図12Bに示すフィレット部13は、仮想楕円E21が翼形部8の翼壁面8aの位置P21で外接(正接)し、下端P22がプラットフォーム部10の端縁10a1に接するように形成されている。すなわち、仮想楕円E21の端縁10a1の位置において接線Z2を引いた場合、接線Z2は、プラットフォーム部10の上面10aと一致し、上面10aに平行に形成された線分である。つまり、フィレット部13の外表面を形成する曲線又は曲面である曲線Q21は、フィレット部13の下縁13dが形成されたプラットフォーム部10の端縁10a1において、プラットフォーム部10の上面10aに正接している。なお、
図12Bに示す実施例は、仮想楕円E21の下端P22が、プラットフォーム部10の端縁10a1に一致する例を示しているが、仮想楕円E21の中心O21が、端縁10a1より翼形部8に接近した場合でも、フィレット部13の下縁13dは、プラットフォーム部10の上面10aに滑らかな面で正接する。
【0084】
仮想楕円E1、E21が、翼形部8の翼壁面8aに外接し、プラットフォーム部10の上面10aに接することを前提に、仮想楕円E1、E21の中心O1、O21の位置が、周方向で端縁10a1の位置に対して翼形部8側に接近して配置されているか又は翼形部8から離間して配置されているかにより、プラットフォーム部10の上面10aに接触するフィレット部13の下縁13dの曲面の傾きが変化する。仮想楕円E1のように、仮想楕円E1の中心O1の位置が端縁10a1より周方向で翼形部8から離間している場合は、仮想楕円E1の下端P10の位置は、プラットフォーム部10の上面10aより翼高さ方向の下方に存在する。従って、フィレット部13の下縁13dにおけるフィレット部13の曲面は、プラットフォーム部10の上面10a1に正接することなく、所定の傾きで上面10aと交差し、翼高さ方向の下向きの曲面を形成する。一方、仮想楕円E21のように、仮想楕円E21の中心O1の位置が端縁10a1又は端縁10a1より周方向で翼形部8側に寄っている場合は、フィレット部13の下縁13dにおけるフィレット部13の曲面は、プラットフォーム部10の上面10a1に滑らかな面で正接する。
【0085】
なお、
図11の実施形態に示すフィレット部13の断面形状を決定する曲線Q21は、翼形部8の中心方向に凹む曲線を形成し、燃焼ガス流の乱れを抑制している。逆方向の凸状に突出するフィレットの形状の場合、凸部で燃焼ガス流の乱れを生じ、応力集中の抑制の点では有利になるが、空力性能面では不利になる。
【0086】
上述のように、いくつかの実施態様に示す長大翼の場合、翼構造によっては、負圧面3側の中央領域(中央フィレット部22)において、フィレットを配置するスペースが限定されるため、応力集中の低減と空力性能の改善の両面からフィレットの形状を選定することが望ましい。
【0087】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0088】
例えば、中央フィレット部22の断面は、
図3に例示した構成に限らず、
図9に示した構成であってもよいし、曲線Q1を規定する仮想楕円の中心がプラットフォーム部10の上面10aの端縁10a1と負圧面3との間に位置するように構成されていてもよい。
【0089】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0090】
(1)本開示に係るタービン動翼(例えば上述のタービン動翼2)は、
圧力面(例えば上述の圧力面4)及び負圧面(例えば上述の負圧面3)を含む翼形部と、
前記翼形部(例えば上述の翼形部8)の基端側に形成されたプラットフォーム部(例えば上述のプラットフォーム部10)と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼形部と反対側に形成されたシャンク部(例えば上述のシャンク部12)と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面(例えば上述の上面10a)との接続部(例えば上述の接続部15)に形成された負圧面側フィレット部(例えば上述の負圧面側フィレット部16)と、
を含み、
前記負圧面側フィレット部は、
前記負圧面側フィレット部の延在する方向に沿った前記負圧面側フィレット部の長さの中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部(例えば上述の中央フィレット部22)と、
前記負圧面側フィレット部の上流端である前縁(例えば上述の前縁16a)と前記中央フィレット部との間に位置し、前記プラットフォーム部の前記上面からのフィレット高さ(例えば上述のフィレット高さh2)が前記中央フィレット部よりも高い上流側中間フィレット部(例えば上述の上流側中間フィレット部24)と、
前記負圧面側フィレット部の下流端である後縁(例えば上述の後縁16b)と前記中央フィレット部との間に位置し、前記プラットフォーム部の前記上面からのフィレット高さ(例えば上述のフィレット高さh3)が前記中央フィレット部よりも高い下流側中間フィレット部(例えば上述の下流側中間フィレット部26)と、
を含む。
【0091】
上記(1)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部において、応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部のフィレット高さを、応力が大きくなりにくい中間フィレット部のフィレット高さよりも大きくすることにより、応力集中を抑制することができる。これにより、タービン動翼における曲げクリープによる寿命を改善することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0092】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のタービン動翼において、
前記中央フィレット部、前記上流側中間フィレット部及び前記下流側中間フィレット部の各々は、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面とを繋ぐ曲線であって、楕円(例えば上述の楕円E1,E2,E3)の一部によって規定される曲線(例えば上述の曲線Q1,Q4,Q7)と
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分(例えば上述の線分Q2,Q5,Q8)と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記曲線と前記上面とが接続する位置まで延在する第2線分(例えば上述の線分Q3,Q6,Q9)と、
によって画定される断面(例えば上述の断面S1,S2,S3)を含み、
前記上流側中間フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径は、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、前記中央フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径よりも大きく、
前記下流側中間フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径は、同じ翼高さ方向位置で比較した場合に、前記中央フィレット部における前記曲線を規定する前記楕円の曲率半径よりも大きい。
【0093】
上記(2)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部の断面において、応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部の上記曲線を規定する楕円の曲率半径を、応力が大きくなりにくい中央フィレット部の上記曲線を規定する楕円の曲率半径より大きくすることにより、応力集中を抑制することができる。
【0094】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のタービン動翼において、
前記上流側中間フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率(例えば上述の比率h2/d2)は、前記中央フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率(例えば上述の比率h1/d1)よりも小さく、
前記下流側中間フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率(例えば上述の比率h3/d3)は、前記中央フィレット部におけるフィレット幅に対する前記フィレット高さの比率よりも小さい。
【0095】
上記(3)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の上面において比較的フィレット幅を確保しやすい上流側中間フィレット部と下流側中間フィレット部において、フィレット幅を確保しにくい中央フィレット部よりも、フィレット幅に対するフィレット高さの比率が小さくなっているため、応力集中を抑制しつつ、空力性能の低下を抑制することができる。
【0096】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部は、前記上流側中間フィレット部の上流側に隣接する前縁フィレット部(例えば上述の前縁フィレット部28)を含み、
前記上流側中間フィレット部の前記フィレット高さは、前記前縁フィレット部のフィレット高さ(例えば上述のフィレット高さh4)よりも高い。
【0097】
上記(4)に記載のタービン動翼によれば、前縁フィレット部よりも応力が大きくなりやすい上流側中間フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0098】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部は、前記下流側中間フィレット部の下流側に隣接する後縁フィレット部(例えば上述の後縁フィレット部30)を含み、
前記下流側中間フィレット部の前記フィレット高さは、前記後縁フィレット部のフィレット高さ(例えば上述フィレット高さh5)よりも高い。
【0099】
上記(5)に記載のタービン動翼によれば、後縁フィレット部よりも応力が大きくなりやすい下流側中間フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部の前縁から後縁に亘って一様にフィレット高さを高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0100】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記圧力面と前記プラットフォーム部の上面との接続部(例えば上述の接続部18)に形成された圧力面側フィレット部(例えば上述の圧力面側フィレット部20)を更に備え、
前記圧力面側フィレット部は、前記圧力面側フィレット部の延在する方向に沿った前記負圧面側フィレット部の長さの中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部(例えば上述の中央フィレット部32)を含み、
前記圧力面側フィレット部における前記中央フィレット部のフィレット高さ(例えば上述のフィレット高さh6)は、前記負圧面側フィレット部における前記中央フィレット部の前記フィレット高さよりも高い。
【0101】
上記(7)に記載のタービン動翼によれば、負圧面側フィレット部の中央フィレット部よりも応力が大きくなりやすい中央フィレット部の応力集中を抑制することができる。また、負圧面側フィレット部における中央フィレット部のフィレット高さと圧力面側フィレット部における中央フィレット部のフィレット高さを一様に高くする場合と比較して、空力性能の低下を抑制することができる。
【0102】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のタービン動翼において、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との境界線(例えば上述の境界線L1)は、前記翼高さ方向視において前記シャンク部とオーバーラップする2つの負圧面側区間(例えば上述の負圧面側区間T1,T2)を含み、
前記圧力面と前記プラットフォーム部の上面との境界線(例えば上述の境界線L2)は、前記翼高さ方向視において前記シャンク部とオーバーラップする1つの圧力面側区間(例えば上述の圧力面側区間T3)を含み、
前記上流側中間フィレット部は、前記2つの負圧面側区間のうち一方の区間の少なくとも一部に沿って形成され、
前記下流側中間フィレット部は、前記2つの負圧面側区間のうち他方の区間の少なくとも一部に沿って形成され、
前記圧力面側フィレット部の前記中央フィレット部は、前記1つの圧力面側区間の少なくとも一部に沿って形成される。
【0103】
上記(8)に記載のタービン動翼によれば、応力が大きくなりやすい部位のフィレット高さを高くして、応力集中を抑制することができる。
【0104】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)に記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部の前記中央フィレット部は、前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との境界線のうち、前記2つの負圧面側区間に挟まれた区間(例えば上述の負圧面側区間T4)の少なくとも一部に沿って形成される。
【0105】
上記(8)に記載のタービン動翼によれば、応力が発生しにくい部位のフィレット高さを低くして、空力性能の低下を抑制することができる。
【0106】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載のタービン動翼において、
前記負圧面側フィレット部の前記中央フィレット部は、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面の端縁とを繋ぐ曲線と、
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記端縁まで延在する第2線分と、
によって画定される断面を含み、
前記曲線は、楕円の一部によって規定され、
前記楕円の中心は、翼厚方向において前記プラットフォーム部の前記端縁を挟んで前記翼形部と反対側に位置し、
前記楕円の下端の位置は、前記翼高さ方向において前記プラットフォーム部の前記端縁よりも下方に位置する。
【0107】
上記(9)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の端縁の位置に上記曲線を規定する比較的小さな楕円の下端が位置する場合(
図9参照)と比較して、応力集中を抑制することができる。また、
図10に示すような中央フィレット部を形成する場合(翼高さ方向において楕円の下端の位置をプラットフォーム部の上面の位置に揃えてフィレットカット面を形成する場合)と比較して、空力性能の点で有利である。
【0108】
(10)本開示に係るタービン動翼は、
圧力面及び負圧面を含む翼形部と、
前記翼形部の基端側に形成されたプラットフォーム部と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼形部と反対側に形成されたシャンク部と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された負圧面側フィレット部と、
を含み、
前記負圧面側フィレット部は、前記負圧面側フィレット部の中央を含んだ位置に形成される中央フィレット部を含み、
前記中央フィレット部は、
前記プラットフォーム部の上面の端縁と負圧面とを繋ぐ曲線と、
前記曲線と前記負圧面とが接続する位置から翼高さ方向に沿って前記プラットフォーム部の上面まで延在する第1線分と、
前記第1線分と前記プラットフォーム部の上面とが接続する位置から前記端縁まで延在する線分と、
によって画定される断面を含み、
前記曲線は、楕円の一部によって規定され、
前記楕円の中心は、翼厚方向において前記プラットフォーム部の前記端縁を挟んで前記翼形部と反対側に位置し、
前記楕円の下端の位置は、翼高さ方向において前記プラットフォーム部の前記端縁よりも下側に位置する。
【0109】
上記(10)に記載のタービン動翼によれば、プラットフォーム部の端縁の位置に上記曲線を規定する比較的小さな楕円の下端が位置する場合(
図9参照)と比較して、応力集中を抑制することができる。また、
図10に示すような中央フィレット部を形成する場合(翼高さ方向において楕円の下端の位置をプラットフォーム部の上面の位置に揃えてフィレットカット面を形成する場合)と比較して、空力性能の点で有利である。
【0110】
(11)本開示に係るタービン動翼は、
圧力面及び負圧面を含む翼型部と、
前記翼型部の基端側に形成されたプラットフォーム部と、
前記プラットフォーム部を挟んで前記翼型部と反対側に形成されたシャンク部と、
前記負圧面と前記プラットフォーム部の上面との接続部に形成された負圧面側フィレット部と、含み、
前記負圧面側フィレット部は、前記負圧面側フィレット部の中央に位置する中央フィレット部を含み、
前記中央フィレット部を形成するフィレット部は、前記フィレット部の外表面を形成する曲面の下縁が、前記プラットフォーム部の端縁において、前記プラットフォーム部の上面に正接することなく所定の傾きを備えて交差する。
【0111】
上記(11)に記載のタービン動翼によれば、フィレット部の応力集中を抑制しつつ、空力性能の低下を防止できる。
【解決手段】タービン動翼であって、負圧面側フィレット部は、負圧面側フィレット部の延在する方向に沿った負圧面側フィレット部の長さの中央に位置する中央フィレット部と、負圧面側フィレット部の上流端である前縁と中央フィレット部との間に位置し、プラットフォーム部の上面からのフィレット高さが中央フィレット部よりも高い上流側中間フィレット部と、負圧面側フィレット部の下流端である後縁と中央フィレット部との間に位置し、プラットフォーム部の上面からのフィレット高さが中央フィレット部よりも高い下流側中間フィレット部と、を含む。