特許第6776468号(P6776468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776468
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】成形体および容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20201019BHJP
   B65D 43/16 20060101ALI20201019BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B65D43/16
   B29C45/26
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-39421(P2020-39421)
(22)【出願日】2020年3月7日
(62)【分割の表示】特願2018-231312(P2018-231312)の分割
【原出願日】2018年12月11日
(65)【公開番号】特開2020-93554(P2020-93554A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518440062
【氏名又は名称】コギトケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大智
【審査官】 ▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−317731(JP,A)
【文献】 特開2011−126121(JP,A)
【文献】 特開2001−334549(JP,A)
【文献】 特開2008−105746(JP,A)
【文献】 特開2008−100751(JP,A)
【文献】 特開2001−341170(JP,A)
【文献】 特開2008−100750(JP,A)
【文献】 特開2001−245958(JP,A)
【文献】 特開2002−046465(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/052351(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111242(WO,A1)
【文献】 特開2008−296976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 − 45/84
A47K 7/00
B65D 43/16
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料による第1成形体と、前記第1成形体と異なる第2材料による第2成形体とを有し、
前記第1成形体と前記第2成形体との境界壁面部において、前記第1成形体の前記境界壁面部の厚み方向長さが、前記第2成形体の前記境界壁面部の厚み方向長さより長く、かつ、前記第1成形体は、前記第2成形体の外周を一周連続して囲んでおり、
前記一周連続して囲む前記第1成形体の内側に前記第1成形体と前記第2成形体が前記厚み方向に重なる部分を有し、
当該重なる部分の前記第2成形体の厚み方向の長さより前記第1成形体の前記境界壁面部の厚み方向の長さが長い構成であり、
前記第1成形体と前記第2成形体が前記厚み方向に重なる部分は、前記第2成形体に対する前記厚み方向の一方にのみ前記第1成形体が重なって存在し、前記第2成形体に対する前記厚み方向の他方には前記第1成形体が存在しない構成である
成形体。
【請求項2】
前記第1成形体における前記第2成形体の外周を一周連続して囲んでいる部位は、前記厚み方向の前記他方に突出する凸部により形成され、
前記境界壁面部は、前記第1成形体の前記凸部と前記第2成形体との境界壁面部であり、
前記重なる部分の前記第2成形体の厚み方向の長さより前記第1成形体の前記凸部の前記境界壁面部の厚み方向の長さが長い構成である
請求項1記載の成形体。
【請求項3】
前記第2成形体は、上方に突出する第2成形体突出部を端部以外に1以上有し、
前記第1成形体は、下方に突出し、前記境界壁面部を有する第1成形体突出部を端部以外に1以上有する
請求項1または2記載の成形体。
【請求項4】
前記第2成形体突出部の少なくとも1つの先端部が、水平方向に向けて屈曲する構成である
請求項3記載の成形体。
【請求項5】
容器本体部と、
前記容器本体部の上面の一部を被覆し後部に設けたヒンジ部を介して前記容器本体部に接続された蓋体部と、
前記容器本体部の上面前部に設けられ、前記蓋体部の前端部に設けた係止突出部を係止する係止受け部を後部に設けた蓋体開閉ボタン部と、
を備え、
前記容器本体部は、上方に開口した収容部と、前記収容部を上方からカバーし開閉可能に連結されたカバー部とを有し、
カバー部には、上面中央の開口部の周縁部を被覆する取出し開口部を有する弾性シートと、上面後部に端部が前記蓋体部を上方に押圧する押え板バネと、前記蓋体開閉ボタン部を取り付ける上面前部のボタン基部と前面上部との間に固定用板バネが設けられ、
前記容器本体部は、材料が第1材料であり、
前記弾性シートは、材料が前記第1材料とは異なる第2材料であり、
前記容器本体部は、開口部と、当該開口部を一周連続して囲む凸部と、前記凸部の内側に設けられた前記弾性シートとを有し、
前記弾性シートの外周が前記凸部の内面にある境界壁面部に当接している
容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、加熱溶融させた材料を金型内に射出注入して成形品を製造する成形体および容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂成形品を製造する場合、一般に射出成形方法が用いられている。近年、異なる樹脂材料を組合せて一体化させる射出成形方法として、様々な方式が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ダイスライド方式が開示されている。これによれば、一方の金型に中空成形品を二つ割りした分割体をそれぞれ成形する雄型と雌型とが設けられ、他方の金型にその雄型と雌型とに対向する雌型と雄型とが設けられた一組の金型を用い、その金型によって各分割体を同時に射出成形した後、一方の金型をスライドさせて、各雌型に残された分割体を互いに対向させ、各金型を型合わせすることによりその分割体を互いに突き合わせるようにしている。そして、その突き合わせ面の周縁に溶融樹脂を射出して、各分割体を互いに溶着するようにしている。
【0004】
しかしながら、この方式では、金型に雄型と雌型とをそれぞれ2式(複数)設けなければならず、さらに、それらの組み合わせを切り替えて使用する必要があり、煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−87315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上述の問題に鑑みて、異なる樹脂材料を組合せて一体化させる簡便な成形方法による成形体および容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、第1材料による第1成形体と、前記第1成形体と異なる第2材料による第2成形体とを有し、前記第1成形体と前記第2成形体との境界壁面部において、前記第1成形体の前記境界壁面部の厚み方向長さが、前記第2成形体の前記境界壁面部の厚み方向長さより長く、かつ、前記第1成形体は、前記第2成形体の外周を一周連続して囲んでおり、前記一周連続して囲む前記第1成形体の内側に前記第1成形体と前記第2成形体が前記厚み方向に重なる部分を有し、当該重なる部分の前記第2成形体の厚み方向の長さより前記第1成形体の前記境界壁面部の厚み方向の長さが長い構成であり、前記第1成形体と前記第2成形体が前記厚み方向に重なる部分は、前記第2成形体に対する前記厚み方向の一方にのみ前記第1成形体が重なって存在し、前記第2成形体に対する前記厚み方向の他方には前記第1成形体が存在しない構成である成形体および容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、異なる樹脂材料を組合せて一体化させる簡便な成形方法による成形体および容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】容器(ウェットティッシュケース)の斜視図。
図2】開いた状態の容器本体部を含む容器の分解斜視図。
図3】容器本体部のA−A断面視図。
図4】射出成形装置を説明する説明図。
図5】容器本体部を成形する各工程の説明をする説明図。
図6】射出成形装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施形態を図面等と共に説明する。
【実施例】
【0011】
<容器(ウェットティッシュケース)の構造>
図1は、容器1(ウェットティッシュケース)の斜視図である。
図2は、開いた状態の容器本体部2を含む容器1の分解斜視図である。
【0012】
容器1は、容器本体部2と蓋体部3と蓋体開閉ボタン部4の3つの部品で構成されている。
蓋体部3は、略矩形状で、容器本体部2の上面の一部を被覆し後部に設けたヒンジ部31を介して容器本体部2に接続されている。
【0013】
蓋体開閉ボタン部4は、略円弧状で、容器本体部2の上面前部に設けられ、円弧部4a側が前方に弦部4b側が後方になるように配置されている。蓋体開閉ボタン部4の弦部4bは、蓋体部3を閉じた時に、蓋体部3の前端部3aと対向するようになっている。そして、蓋体開閉ボタン部4は、蓋体部3の前端部3aに設けられた係止突出部32を係止する係止受け部41を弦部4bに設けている。
蓋体部3と蓋体開閉ボタン部4は、何れもポリプロピレン(PP)等の合成樹脂のプラスチック素材で形成されている。
【0014】
<容器本体部の構造>
図3は、図2に示した容器本体部2のA−A断面視図である。
容器本体部2は、上方に開口部を有し深さの浅い直方体状の収容部21と、収容部21の開口部と同一の開口部を下方に有し高さの低い直方体状のカバー部22とを有している。カバー部22は、後方下部の一部が収容部21の後方上部の一部に連結部20を介して連結されている。連結部20は、カバー部22または収容部21と屈曲可能に連結されている。これにより、カバー部22は、連結部20を回転軸として、前後方向に移動可能となり、収容部21を開閉可能にカバーすることができるようになっている。
【0015】
容器本体部2は、収容部21、カバー部22および連結部20が一体として成形されており、ポリプロピレン(PP)等の合成樹脂のプラスチック素材で形成されている。
【0016】
カバー部22は、前面部と左右の側面部の下端部に下方に開口する溝部22aが設けられている。収容部21は、全周面部の上端部に上方に突出する突出部21aが設けられている。収容部21を上方からカバー部22でカバーした時に、カバー部22の溝部22aに収容部21の突出部21aが嵌め込まれるようになっている。これにより、収容部21をカバーしたカバー部22は、その状態で前後左右に動かないようになっている。
【0017】
カバー部22には、前面下部に係止部22bが設けられている。収容部21には、前面上部にカバー部22の係止部22bが係脱される係止受部21bが設けられている。収容部21をカバーしたカバー部22の係止部22bを収容部21の係止受部21bに係止することにより、カバー部22は意図せずに上下方向に開かなくなっている。
【0018】
カバー部22には、上面部中央に略矩形状の開口部22cが設けられている。カバー部22の当該略矩形状の開口部22cには、周縁部23aを被覆し中央に取出し開口部23bを有する弾性シート23が設けられている。
【0019】
弾性シート23は、透明もしくは半透明で、合成樹脂のエラストマ素材で形成されている。弾性シート23は、外形がカバー部22の当該略矩形状の開口部22cより大きく、外縁部がカバー部22の裏面側に熱融着されている。取出し開口部23bは、周囲が周縁部23aによって囲まれた楕円形状の開口を当該周囲の3方向から中央に向かって円弧状に周縁部23aを張り出させて狭くした形状になっている。円弧状に張り出した円弧状張出部23cは、中央上方に向かって僅かに湾曲している。
【0020】
弾性シート23は、透明もしくは半透明であるため、容器本体部2の収容部21に収容されたもの(ウェットティッシュ)の有無等を把握しやすくなっている。弾性シート23は、取出し開口部23bの中央に向かって3方向から円弧状に円弧状張出部23cが張り出している。そのため、取出し開口部23bから上方に引き出そうとするウェットティッシュは、取出し開口部23bの中央に位置しやすく、常に同じ位置でウェットティッシュを引き出すことが可能になる。円弧状張出部23cは、外周に角張ったところがない。そのため、ウェットティッシュを引き出す際に、円弧状張出部23cに引っ掛かって破ける恐れが少ない。また、円弧状張出部23cは、中央上方に向かって僅かに湾曲している。そのため、ウェットティッシュを引き出す際に、取出し開口部23bに誘導されやすくなっている。
【0021】
また、弾性シート23は、合成樹脂のエラストマ素材で形成されている。そのため、弾性シート23の円弧状張出部23cは、ウェットティッシュを引き出す際に、斜め上方に引き出されても、その方向に対応して変形することができ、ウェットティッシュの引き出し方向の自由度が増す。また、当該引き出し方向に対応して変形した弾性シート23の円弧状張出部23cは、ウェットティッシュが引き抜かれた後は、本来の形状に戻ろうとする。そのため、円弧状張出部23cに当接する後続のウェットティッシュは、先行するウェットティッシュに追随して引き出される恐れが少ない。
【0022】
カバー部22には、上面後部に端部24bが蓋体部3を上方に押圧する押え板バネ24が設けられている。
【0023】
押え板バネ24は、カバー部22の上面後部の開口部22dから上方に突き出した略矩形状の板状体で、板状体面が左右方向に平行になるように配置されている(図1参照)。押え板バネ24は、開口部22dから上方に突き出した後、斜め前方に湾曲しながら伸びる板バネ部24aと、板バネ部24aに連接され前方水平方向に向けて屈曲する端部24bを有している。押え板バネ24は、開口部22d側が厚く端部24b側に向けて徐々に薄くなっている。なお、押え板バネ24は、合成樹脂のエラストマ素材で形成されている。そして、同じく合成樹脂のエラストマ素材で形成されカバー部22の開口部22d周辺に熱融着された押え板バネ台24c上に、押え板バネ24は連接されている(図2参照)。
【0024】
押え板バネ24の板バネ部24aおよび端部24bは、合成樹脂のエラストマ素材で形成されている。そのため、蓋体部3は、押え板バネ24の弾性力により上方に押圧して押し開けることができる。また、蓋体部3を閉じた際には、押え板バネ24は、前方に倒れ込み、蓋体部3とカバー部22の上面との隙間に収納される。
【0025】
カバー部22には、上面前部に蓋体開閉ボタン部4を取り付けるボタン基部25が設けられている。
ボタン基部25は、略円弧状の蓋体開閉ボタン部4を一回り小さくしたような略円弧状である。蓋体開閉ボタン部4は、弦部4bがボタン基部25の弦部25bに重なるようにして上方からボタン基部25を被せるようにして設置されている。
【0026】
カバー部22には、前面上部とボタン基部25の円弧部25aとの間に円弧部25aに沿って細長い隙間22eが形成されている。そして、カバー部22の隙間22eには、ボタン基部25の円弧部25aをカバー部22の前面上部に連結する固定用板バネ26が設けられている。
【0027】
固定用板バネ26は、断面が略U字状で、隙間22eに沿って配置されている。固定用板バネ26は、合成樹脂のエラストマ素材で形成され、カバー部22とは熱融着により連結されている。
【0028】
これにより、蓋体開閉ボタン部4を上方から押下した時に、蓋体開閉ボタン部4を支持するボタン基部25は、弾性力を有する固定用板バネ26に連結された円弧部25a側が押下げられる。それに伴って、蓋体開閉ボタン部4は、円弧部4a側が押下げられることになり、その結果、反対側の蓋体開閉ボタン部4の弦部4bが前方に引きずられることになる。これにより、蓋体開閉ボタン部4の弦部4bに設けられている係止受け部41と蓋体部3の前端部3aに設けられている係止突出部32との係止が解除され、蓋体部3が開かれることになる(図1参照)。
【0029】
収容部21には、底部の4角に略矩形状の開口部21cが設けられている。収容部21の底部の当該略矩形状の開口部21cには、下方に突き出した四角錐台状の脚部27が設けられている。
【0030】
脚部27は、合成樹脂のエラストマ素材で形成されている。そして、同じく合成樹脂のエラストマ素材で形成され収容部21の底部の開口部21c周辺に熱融着された脚部台27a上に、脚部27は連接されている。脚部27は、合成樹脂のエラストマ素材で形成されているため、テーブル等に載置した時に、滑り止めとして機能する。
【0031】
なお、弾性シート23、押え板バネ24、固定用板バネ26、および脚部27は、同一のエラストマ素材で形成してもよく、また、それぞれに適した種類のエラストマ素材を選択するようにしてもよい。
【0032】
<射出成形装置>
図4は、射出成形装置50を説明する説明図である。
射出成形装置50は、移動ユニット51と、射出ユニット52と、スペーサ挿入ユニット56と、移動ユニット51、射出ユニット52およびスペーサ挿入ユニット56の動作を制御する制御装置53を備えている。
【0033】
移動ユニット51は、金型60を構成する第1金型部材61と第2金型部材62とを取り付けて、第1金型部材61と第2金型部材62との相対距離を変更させる駆動機構51aを有している。駆動機構51aには、トグル方式や直圧方式を用いることができる。ここでは、第1金型部材61を固定し、駆動機構51aを用いて第2金型部材62を移動させることにより、第1金型部材61と第2金型部材62との相対距離を変更させている。
【0034】
第2金型部材62には、完成した成形品を第2金型部材62から押し出して取り外すためのエジェクトピン51bが組み込まれている。エジェクトピン51bは、移動ユニット51の駆動機構51aによって押し出されるようになっている。
【0035】
射出ユニット52は、この例では、第1射出ユニット54と第2射出ユニット55の2式のユニットを備えている。射出ユニット52は、第1金型部材61と第2金型部材62との間の隙間60aに溶融した材料を注入する射出機構を有している。射出機構には、種々のものがあるが、この例では、スクリュ式を用いている。注入する材料には、合成樹脂のプラスチック素材やエラストマ素材がある。この例では、第1射出ユニット54は、第1材料としてのプラスチック素材を注入し、第2射出ユニット55は、第2材料としてのエラストマ素材を注入するようになっている。
【0036】
第1射出ユニット54と第2射出ユニット55とは、それぞれ材料(第1材料および第2材料)を受け入れるホッパー54a,55aと、外周にヒータ54b,55bを設け内部でホッパー54a,55aから投入された材料を加熱溶融する円筒状のシリンダ54c,55cと、シリンダ54c,55c内に挿入され回転動作と前後動作を実行して溶融した材料を混錬して射出するスクリュ54d,55dと、スクリュ54d,55dに回転動作と前後動作を実行させるモータ54e,55eを備えている。
【0037】
第1金型部材61には、第1金型部材61と第2金型部材62との間の隙間60aに溶融した第1材料または第2材料をそれぞれ注入する第1スプルー61aと第2スプルー61bが設けられている。第1スプルー61aには、第1射出ユニット54のシリンダ54c先端の射出口54fが連結され、第2スプルー61bには、第2射出ユニット55のシリンダ55c先端の射出口55fが連結されている。
【0038】
スペーサ挿入ユニット56は、第1金型部材61と第2金型部材62との間に挟み入れるスペーサ部材56bと、スペーサ部材56bを第1金型部材61と第2金型部材62との間に挿入または抜去するスペーサ駆動機構56aを有している。スペーサ部材56bは、第1金型部材61と第2金型部材62とが隣接する外周部に挟み入れられる。スペーサ部材56bの第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離を変更する方向の厚さはtである。スペーサ駆動機構56aには、エアシリンダが用いられている。
【0039】
制御装置53は、コンピュータであり、CPUとメモリ(ROM、RAM等)により構成される制御部と、液晶ディスプレイ等の出力表示部と、入力操作部(キーボード、マウス等)と、ハードディスクや不揮発性メモリ等で構成される記憶部と、CD−R等の記憶媒体53aからデータやプログラムを読み取る媒体処理部と、I/Oケーブルを介して移動ユニット51と射出ユニット52(第1射出ユニット54と第2射出ユニット55)とスペーサ挿入ユニット56との間でデータや信号の入出力を行うI/Oインターフェース部を備えている。制御装置53は、記憶媒体53aに記憶されている射出成形装置制御プログラムが記憶部にインストールされる。この射出成形装置制御プログラムに従って、制御装置53の制御部は、移動ユニット51による移動動作の制御や、第1射出ユニット54と第2射出ユニット55の射出動作の制御、スペーサ挿入ユニット56によるスペーサ部材56bの挿入、抜去動作の制御を実行する。
【0040】
<容器の成形方法>
図5は、図2に示した容器本体部2のA−A断面の一部を用いて、容器本体部2を成形する各工程の説明をする説明図である。
【0041】
図6は、射出成形装置50の動作を示すフローチャートである。
以下では、例として、上述の射出成形装置50を用いた、容器1の主要部品である容器本体部2の成形方法を説明する。
【0042】
≪容器本体部の成形方法≫
制御装置53の制御部は、移動ユニット51に前進信号を送信し、第1金型部材61と第2金型部材62とが近接または当接する第1位置に第2金型部材62を移動させる(型締め:ステップS1)。
【0043】
なお、第1金型部材61には、第1金型部材61と第2金型部材62との間の隙間(第1隙間60a)に面して開口する凹部61cが設けられている。凹部61cは、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離を変更する方向に略平行で相対距離を変更する方向の長さがLの境界壁面部61dを有している(図5(A)参照)。この凹部61cは、第2隙間60bを形成する領域(閉鎖領域)の外側を一周連続して囲むように形成されている。
【0044】
制御部は、第1射出ユニット54に射出保圧信号を送信し、溶融した熱可塑性プラスチック素材の第1材料を射出させる。第1射出ユニット54から射出された第1材料は、第1金型部材61の第1スプルー61aを通って第1隙間60aに注入される。制御部は、第1隙間60aに注入された第1部材が第1隙間60aに充填されると、第1部材に所定の圧力を印加し保持するように、第1射出ユニット54に射出圧力(保圧力)の制御をさせる(第1射出、保圧:ステップS2)。
【0045】
制御部は、第1射出ユニット54に射出圧力(保圧力)の制御をさせた状態を所定の時間保持をさせる(冷却:ステップS3)。その間に、第1隙間60aに充填された溶融した第1部材は、第1金型部材61と第2金型部材62の内部を流動する冷却水により冷却されて固化し第1成形体を成形する。こうして、第1成形体として、容器本体部2のカバー部22の他、収容部21および連結部20が成形される(図2図3参照)。
【0046】
なお、第1成形体(容器本体部2のカバー部22)には、第1金型部材61の凹部61c(土手形成用隙間部)に対応した凸部22f(土手)も成形される。そして、凸部22fには、凹部61cの境界壁面部61dと共通の、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離を変更する方向に略平行で相対距離を変更する方向の長さがLの境界壁面部22gが形成される(図5(B)参照)。
【0047】
制御部は、移動ユニット51に途中型開き信号を送信し、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離が、第1位置での相対距離にスペーサ部材56bの厚さt分の距離を加えた距離より長い途中型開き位置に位置決めされるように、第2金型部材62を移動させる(途中型開き:ステップS4a)。
【0048】
ここで、スペーサ部材56bの厚さtは、0.8〜1.2mmに設定されており、また、第1金型部材61と第2金型部材62との間の途中型開き位置における相対距離は、第1位置での相対距離より1.5〜2.0mm長くなるように設定されている。この途中型開き位置における相対距離は、任意に設定することが可能であり、0.9mm〜4.2mmとすることができ、1.3mm〜3.2mmとすることが好ましく、1.6mm〜2.7mmとすることがより好ましく、1.8mm〜2.2mmとすることが好適である。
【0049】
制御部は、スペーサ挿入ユニット56にスペーサ挿入信号を送信し、第1金型部材61と第2金型部材62との間にスペーサ部材56bを挿入させる(スペーサ挿入:ステップS4b)。
【0050】
制御部は、移動ユニット51に途中位置型閉じ信号を送信し、第1金型部材61と第2金型部材62との間に挿入されたスペーサ部材56bを挟みつけるように第2金型部材62を第2位置まで移動させる(途中位置型閉じ:ステップS4c)。
【0051】
このように、途中型開き(ステップS4a)、スペーサ挿入(ステップS4b)および途中位置型閉じ(ステップS4c)の各工程を実行することにより、第2金型部材62は、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離が第1位置での相対距離より距離差dだけ長い第2位置に位置決めされる。そして、この際の距離差dは、スペーサ部材56bの厚さtに等しく設定される。その際、第1成形体は、第2金型部材62に付随して移動し、第1成形体と第2金型部材62の当接状態が維持される(位置変更:ステップS4(S4a−S4c))。この第1位置での第1金型部材61と第2金型部材62の相対距離と、第2位置での第1金型部材61と第2金型部材62の差は、任意に設定することが可能であり、0.1mm〜3mmの間とすることができ、0.5mm〜2mmとすることが好ましく、0.8mm〜1.5mmの間とすることがより好ましく、1mm程度とすることが好適である。
【0052】
ここで、第1成形体の凸部22fの境界壁面部22gの長さL(第1金型部材61と第2金型部材62の離間移動方向の長さ、すなわち第1成形体の厚み方向の長さ)は、距離差dより長くなるように設定されている。このため、当該第2位置において第1金型部材61と第2金型部材62との間に形成される隙間(第2隙間60b)の外周は、第1成形体の凸部22fの境界壁面部22gにより一周連続して仕切られる(図5(C)参照)。
【0053】
制御装置53の制御部は、第2射出ユニット55に射出保圧信号を送信し、溶融した熱可塑性エラストマ素材の第2材料を射出させる。第2射出ユニット55から射出された第2材料は、第1金型部材61の第2スプルー61bを通って、第1成形体(容器本体部2のカバー部22)の凸部22fの境界壁面部22gによって仕切られた第2隙間60bに注入される。制御部は、第2隙間60bに注入された第2部材が第2隙間60aに充填されると、第2部材に所定の圧力を印加し保持するように、第2射出ユニット55に射出圧力(保圧力)の制御をさせる(第2射出、保圧:ステップS5)。この第2射出の際、第2隙間60bの外周が一周連続して凸部22f(土手)により囲まれているため、第2材料が凸部22f(土手)の外に流出することがなく、凸部22f(土手)の内側のみに第2材料を流し込むことができる。このように、第1射出時に凸部22f(土手)が形成されていることで、第2射出時の材料の流れが規制され、第2材料の流れ込む範囲が第1材料のときと変化し、単に2つの材料が2重に重なった成形体ではなく、第1材料の第1成形体と第2材料の第2成形体を異なる形状とすることができる。
【0054】
制御部は、第2射出ユニット55に射出圧力(保圧力)の制御をさせた状態を所定の時間保持をさせる(冷却:ステップS6)。その間に、第2隙間60aに充填された溶融した第2部材は、第1金型部材61と第2金型部材62の内部を流動する冷却水により冷却されて固化し第2成形体を成形する。同時に、第2成形体は、第1成形体と当接する部分で熱融着される。このようにして、第2成形体として、弾性シート23や押え板バネ24、固定用板バネ26、脚部27が成形される(図2図3図5(D)参照)。
【0055】
制御部は、移動ユニット51に後退信号を送信し、第2金型部材62を開放位置に後退させ、金型60を開放させる(型開き:ステップS7)。その際、第1成形体と第2成形体とで構成された成形品は、第2金型部材62に付随して移動する。
【0056】
制御部は、移動ユニット51にエジェクタ前進信号を送信し、第2金型部材62に組み込まれたエジェクトピン51bを前進させ、第2金型部材62から成形品を取り外させる(エジェクタ前進:ステップS8)。
【0057】
この際、制御部は、スペーサ挿入ユニット56にスペーサ抜去信号を送信し、第1金型部材61と第2金型部材62との間にあるスペーサ部材56bを抜去させる。
【0058】
第2金型部材62から取り外した成形品は、射出成形装置50から取り出される(成形品の取出し:ステップS9)。
その後、制御部は、移動ユニット51にエジェクタ後退信号を送信し、エジェクトピン51bを第2金型部材62内に収納して終了する(エジェクタ後退:ステップS10)。
【0059】
なお、第1金型部材61には、第1金型部材61と第2金型部材62との間の隙間(第1隙間60a)に突出する凸部を設けるようにしてもよい。この場合、当該凸部は、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離を変更する方向に略平行で相対距離を変更する方向の長さがLの境界壁面部を有するようにする。ここで、第1金型部材61の当該凸部の境界壁面部の長さLは、距離差dより長くなるように設定する。こうすることにより、第2位置において第1金型部材61と第2金型部材62との間に形成される隙間(第2隙間60b)を、第1金型部材61の当該凸部の境界壁面部により仕切ることができる(位置変更:ステップS4)。
【0060】
≪蓋体部と蓋体開閉ボタン部の成形方法≫
また、容器1の容器本体部2以外の部品である蓋体部3と蓋体開閉ボタン部4も、上述の射出成形装置50を用いて成形することができる。なお、これらの成形に際しては、上述の射出成形装置50の動作を示すフローチャート(図6参照)の中で、(位置変更:ステップS4)、(第2射出、保圧:ステップS5)および(冷却:ステップS6)の各工程を省略することもできる。
【0061】
以上の構成と動作により、上述の容器の成形方法は、第1金型部材61と第2金型部材62を近接または当接させた第1位置で第1金型部材61と第2金型部材62との間の第1隙間60aにプラスチック素材の第1材料を注入して第1成形体を成形する第1成形工程と、第1金型部材61と第2金型部材62との間の相対距離を第1位置での相対距離より長くして位置決めする位置変更工程と、位置変更工程後の第2位置で第1金型部材61と第2金型部材との間の第2隙間60bにエラストマ素材の第2材料を注入して第2成形体を成形する第2成形工程とを備えている。このため、プラスチック素材とエラストマ素材で構成された容器本体部2を、短時間で簡便に成形することができる。
【0062】
すなわち、第1材料と第2材料を用いるにも関わらず、従来のように第1材料にて第1形成体を成形して一組目の金型から取り外し、次の二組目の金型に第2成形体をセットして第2材料を流し込むといった複数工程を行わずとも、一組の金型(第1金型部材61と第2金型部材62)だけで、この一組の金型から成形体を取り外すまでの間に、第1材料による第1形成体の形成をして、続いて第2材料による第2形成体の形成を連続して実行できる。
【0063】
また、図3中のMで示したような第1材料と第2材料の2層構造体を簡易に作製することができる。さらに、(位置変更:ステップS4)、(第2射出、保圧:ステップS5)および(冷却:ステップS6)をサブルーチンにして、(第2射出、保圧:ステップS5)工程で注入する第2材料の種類を変えることにより、複数種類の材料で構成された多層構造体を簡易に作製することができる。
【0064】
また、第2成形工程において、位置変更工程後の第2位置で第1金型部材61と第2金型部材との間の第2隙間60bに第1材料を注入して第2成形体を成形することもできる。こうすることで、同一種類の材料で構成された2層または多層の積層体を簡易に作製することができる。こうして作製された積層体は、内部応力が小さく、完成後に形状が経時変化する恐れが少ない。
【0065】
上述の成形方法は、第1位置でプラスチック素材の第1材料が注入されない閉鎖領域、すなわちカバー部22の略矩形状の開口部22cや、上面後部の開口部22d、細長い隙間22e、および収容部21の底部の開口部21c等を設け、第2位置で当該閉鎖領域にエラストマ素材の第2材料を注入することができる。これにより、第1材料で構成されたカバー部22や収容部21に熱融着され、第2材料単体で構成された弾性シート23、押え板バネ24、固定用板バネ26、および脚部27を簡易に作製することができる。
【0066】
第1金型部材61と第1成形体とは、相対距離を変更する方向に略平行で相対距離を変更する方向の長さ(L)が第2位置と第1位置とにおける相対距離の差(距離差d)より長い境界壁面部(61d、22g等)を有し、第1成形体は、位置変更工程において第2金型部材62に付随させるようになっている。これにより、当該第2位置において第1金型部材61と第2金型部材62との間に形成される隙間(第2隙間60b)は、第1金型部材61または第1成形体が有する境界壁面部(22g等)により仕切ることができる。そして、当該境界壁面部によって仕切られた第2隙間60bに第2材料を注入するようになっている。このため、図3中のSで示したような第2材料に裏打ちされない第1材料単体で構成された領域を形成することができる。
【0067】
また、境界壁面部は、相対距離を変更する方向に垂直な面で閉曲線状に形成するようにしてもよい。これにより、境界壁面部によって第2隙間60bを島状空間に仕切り、当該島状空間に第2材料を注入することができるようになる。このため、第2材料を注入したい空間を、境界壁面部の配置設計により簡易に設定することができる。
【0068】
第2隙間は、少なくとも境界壁面部によって相対距離を変更する方向に垂直な方向に仕切られた1または複数の空間を有し、それぞれの空間に異なる種類の材料を注入するようにしてもよい。これにより、例えば、弾性シート23、押え板バネ24、固定用板バネ26、および脚部27を形成するに当たって、それぞれに要求される機能を適正に発揮できる材質や色等を有する材料(エラストマ素材)を個別に選択できるようになる。
【0069】
なお、この発明は本実施形態に限られず他の様々な実施形態とすることができる。
【0070】
例えば、第1材料としてのプラスチック素材を使用し、第2射出ユニット55は、第2材料としてのエラストマ素材を使用したが、これに限らず、様々な材料を使用することができ、第1材料と第2材料に同一材料を使用することもできる。これにより、様々な材料を用いて成形することができる。
【0071】
また、第1材料と第2材料を異なる材料とするときは、第2材料を第1材料よりも溶融温度の低い材料にすることが好ましい。これにより、第2材料の注入時に第1材料が溶融して変形することを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、合成樹脂成形品の産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…容器
2…容器本体部
3…蓋体部
4…蓋体開閉ボタン部
21…収容部
22…カバー部
22f…凸部
22g…境界壁面部
23…弾性シート
23a…周縁部
23c…円弧状張出部
24…押え板バネ
24a…板バネ部
24b…端部
24c…押え板バネ台
26…固定用板バネ
27…脚部
50…射出成形装置
51…移動ユニット
52…射出ユニット
53…制御装置
54…第1射出ユニット
55…第2射出ユニット
56…スペーサ挿入ユニット
56b…スペーサ部材
60a…第1隙間
60b…第2隙間
61…第1金型部材
61a…第1スプルー
61b…第2スプルー
61c…凹部
61d…境界壁面部
62…第2金型部材
L…境界壁面部の相対距離を変更する方向の長さ
d…第2位置と第1位置とにおける相対距離の差
t…スペーサ部材の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6