特許第6776472号(P6776472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6776472
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20201019BHJP
   B42D 25/333 20140101ALI20201019BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20201019BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20201019BHJP
【FI】
   B41M3/14
   B42D25/333
   B42D25/324
   B42D25/30 100
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-87387(P2020-87387)
(22)【出願日】2020年5月19日
【審査請求日】2020年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591097964
【氏名又は名称】光村印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】関口 慎
(72)【発明者】
【氏名】山岡 貴司
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲也
(72)【発明者】
【氏名】柴田 栄治
【審査官】 長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−206084(JP,A)
【文献】 特開2003−237211(JP,A)
【文献】 特開平11−059041(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0264642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00 −3/18
B42D 25/00−25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複写機による複写が可能な複写対象部と、
複写機による複写の度合いが前記複写対象部よりも劣る複写不可部と、
表示対象が物理的な凹凸ではない目視上の立体で表されたレリーフ部と、
前記表示対象が、含侵したインキによって目視上の透かしで表された透かし部と、を有し、
前記レリーフ部と前記透かし部とが同形であって重なっている、
ことを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記レリーフ部の輪郭と前記透かし部の輪郭とが重なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載された偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記レリーフ部が、
前記表示対象を表す表示本体部と、
前記表示本体部が照射されたように見せる疑似照射輪郭部と、
照射による前記表示本体部の影のように見せる疑似影輪郭部と、を有し、
前記透かし部が、前記表示本体部及び前記疑似影輪郭部と重なっている、
ことを特徴とする請求項1に記載された偽造防止印刷物。
【請求項4】
前記透かし部を有する透かし版が、前記レリーフ部を有するレリーフ版の印刷面と反対側の面に印刷されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記複写対象部が、複写可能な大きい点の集合体又は線群であり、
前記複写不可部が、複写再現能力に満たない小さい点の集合体又は線群である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された偽造防止印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原本か否かを識別することができる偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機による偽造防止対策として、複写物上に潜像が現れる技術の他、様々な技術が用いられている。例えば、下記特許文献1に記載された偽造防止印刷物(以下、「文献公知1発明」と記す。)は、特定のインキが染み込んだ部分において光の透過率が変わることから、透かし模様が表れる。一般的に、透かし模様は、複写機によっても透かしの効果が再現されないため、透かし模様を有する文献公知1発明は、偽造防止の効果がある。一方で、下記特許文献2に記載された偽造防止印刷物(以下、「文献公知2発明」と記す。)は、用紙に実際の凹凸処理を施すことなく、二次元平面において立体的なレリーフ模様が表される。レリーフ模様の本体は、文献公知2発明の背景と同一の面積率であることから、レリーフ模様が施された文献公知2発明は、偽造防止に加えて、細かな模様を立体的に表す効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−166276号公報
【特許文献2】特開2014−124862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した文献公知1発明は、油を主な原料とするインキが用いられており、透かしの効果は、用紙にインキが十分に浸透することで発揮するものであることから、インキが油染みのようにも見え、意匠性の観点からは好ましくない。
【0005】
一方で、上記した文献公知2発明は、レリーフ模様の形状や用紙の背景に組み合わされる地紋によっては、立体感が薄れて見える。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、透かしによる偽造防止効果を維持しつつ、意匠性に優れた偽造防止印刷物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る偽造防止印刷物は、複写機による複写が可能な複写対象部と、複写機による複写の度合いが前記複写対象部よりも劣る複写不可部と、表示対象が目視上の立体で表されたレリーフ部と、前記表示対象が目視上の透かしで表された透かし部と、を有し、前記レリーフ部と前記透かし部とが同形であって重なっている、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る偽造防止印刷物は、前記レリーフ部の輪郭と前記透かし部の輪郭とが重なっていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る偽造防止印刷物は、レリーフ部が、前記表示対象を表す表示本体部と、前記表示本体部が照射されたように見せる疑似照射輪郭部と、照射による前記表示本体部の影のように見せる疑似影輪郭部と、を有し、前記透かし部が、前記表示本体部及び前記疑似影輪郭部と重なっていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る偽造防止印刷物は、前記透かし部を有する透かし版が、前記レリーフ部を有するレリーフ版の印刷面と反対側の面に印刷されていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る偽造防止印刷物は、前記複写対象部が、複写可能な大きい点の集合体又は線群であり、前記複写不可部が、複写再現能力に満たない小さい点の集合体又は線群であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る偽造防止印刷物によれば、複写機による複写が可能な複写対象部と、複写機による複写の度合いが複写対象部よりも劣る複写不可部と、表示対象が目視上の立体で表されたレリーフ部と、表示対象が目視上の透かしで表された透かし部とを有し、レリーフ部と透かし部とが同形であって重なっている。すなわち、用紙に透かし用のインキが浸透した透かし部は、透かし部以外の部分と比較して、暗く見えるところ、この透かし部が、レリーフ部の一部に重なることで、レリーフ部にコントラストが表れて、レリーフ模様の立体感を際立たせることができる。また、透かし部は、レリーフ部に重なることで、レリーフ部の一部を構成するように見えるため、油染みに見える跡のようには見えなくなる。透かし部が目立たないのであれば、偽造防止対策として透かしの技術が施されていることを隠すことができる。さらに、一般的に、レリーフ部は、用紙の装飾の一部である一方で、透かし用のインキを印刷した箇所は、トナーの定着性が他と異なってしまう可能性があるため、印字の妨げとなるところ、これらが重なっていれば、レリーフ部と透かし部とが別個に表された場合と比較して、用紙において占有する面積が少ない。したがって、印字に適した部分の面積を大きくとることができる。
【0013】
本発明に係る偽造防止印刷物によれば、レリーフ部の輪郭と透かし部の輪郭とが重なっている。この構成により、レリーフ部と透かし部とが完全に一致する。したがって、レリーフ模様の輪郭を際立たせ、透かしの跡を顕著に目立たせなくさせることができる。
【0014】
本発明に係る偽造防止印刷物によれば、レリーフ部が、表示対象を表す表示本体部と、表示本体部が照射されたように見せる疑似照射輪郭部と、照射による表示本体部の影のように見せる疑似影輪郭部とを有し、透かし部が、表示本体部及び疑似影輪郭部と重なっている。この構成により、透かし部が、疑似照射輪郭部を除いた表示本体部及び疑似影輪郭部に重なることで、表示本体部及び疑似影輪郭部が、透かし部によって一層と暗く見える一方で、疑似照射輪郭部が明るいままであるため、レリーフ部にコントラストが顕著に表れる。したがって、レリーフ模様の立体感を顕著に際立たせることができる。
【0015】
本発明に係る偽造防止印刷物によれば、透かし部を有する透かし版が、レリーフ部を有するレリーフ版の印刷面と反対側の面に印刷されている。すなわち、透かし版の印刷面とレリーフ版の印刷面とが用紙の表裏で異なるため、透かし部及びレリーフ部を明瞭にすることができる。なお、仮に、両版を同じ印刷面とした場合、透かし版のインキが印字面側に印刷され、トナーの定着性に影響を及ぼす可能性がある。
【0016】
本発明に係る偽造防止印刷物によれば、複写対象部が、複写可能な大きい点の集合体又は線群であり、複写不可部が、複写再現能力に満たない小さい点の集合体又は線群である。すなわち、複写物には、複写対象部のみが現れるため(又は、複写対象部が複写不可部よりも目立って現れるため)、例えば、複写対象部が「複写」という文字で構成されていれば、複写物には、「複写」の文字が現れる。したがって、真贋を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物における印刷面の概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物における印刷面と反対側の面の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物における表示対象を融合させる際の第一処理過程が示された第一処理過程説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物における表示対象を融合させる際の第二処理過程が示された第二処理過程説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物における表示対象を融合させる際の第三処理過程が示された第三処理過程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る偽造防止印刷物を図面に基づいて説明する。図1は、偽造防止印刷物1の印刷面が示され、図2は、偽造防止印刷物1の印刷面と反対側の面(以下、「裏面」と記す。)が示されている。
【0019】
図1及び2に示された偽造防止印刷物1は、肉眼では視認し辛いが複写機(図示省略。)による複写が可能な複写対象部2と、複写機による複写の度合いが複写対象部2よりも劣る複写不可部3と、「光」という文字をロゴタイプとして表した表示対象4が目視上の立体で表されたレリーフ部5と、表示対象4が目視上の透かしで表された透かし部9とを有している。ここで、複写対象部2、複写不可部3及びレリーフ部5は、印刷面に印刷され、一方で、透かし部9は、裏面に印刷されている。なお、他の実施形態として、透かし部が、印刷面において、レリーフ部に重なっていてもよい。表示対象は、文字の他、図形や模様であってもよい。
【0020】
複写対象部2は、視認し辛い潜像であり、一方で、複写不可部3は、背景である。したがって、偽造防止印刷物1が複写されると、複写物には、潜像である複写対象部2のみが現れ、背景である複写不可部3は出力されない。なお、「複写機による複写の度合いが複写対象部2よりも劣る」とは、例えば、複写機による複写が不可能であって完全に複写されない場合や、複写機による複写が可能であるが肉眼では視認し得ない程度の場合や、肉眼で視認し得るが僅かである場合や、肉眼で視認し得るが複写対象部2よりも明瞭ではない場合が含まれる。
【0021】
複写対象部2は、例えば、複写機で再現可能な万線によって表され、30〜70線/インチの線群で構成されている。一方で、複写不可部3は、複写再現能力に満たない小さな点である平網によって表され、100〜300線/インチの網点で構成されている。両者の面積率は、例えば5〜25パーセント(%)である。これらの線数及び面積率によれば、複写不可部3は、視認が可能であっても、複写機によって複写できず、複写対象部2は、視認が可能であるが視認し辛く、複写機によって複写できる。
【0022】
ここで、線数とは、1インチ中に存在する線の本数をいい、同じ面積率の場合、線数が大きい(多い)ほど、形成される点(網点)は小さくなり、線(万線)は細くなる。線数の差が大きいほど、境界が目立つ傾向がある。また、面積率は、単位面積中の網点や万線の面積の割合をいう。したがって、例えば、150線15パーセントの平網と、42線15パーセントの万線に基づいて作製された網点万線の偽造防止印刷物1は、平網の部分で、複写不可部3が実現し、万線の部分で、複写対象部2が実現する。
【0023】
なお、他の実施形態では、複写対象部は、複写機で再現可能な大きい点の集合体であってもよく、また、複写不可部は、複写再現能力に満たない線群であってもよい。この場合の線群は、複写対象部に用いられた万線よりも細い線で構成されるか、複写対象部で用いられた万線とは異なる角度で構成される。
【0024】
図1に示されているとおり、レリーフ部5は、表示対象4が浮き出て見えるものであって、用紙に物理的な凹凸を施すエンボス加工によって形成されたものとは異なる。レリーフ部5は、表示対象4を表す表示本体部6と、この表示本体部6が照射されたように見せる疑似照射輪郭部7と、照射によって出来た表示本体部6の影のように見せる疑似影輪郭部8とを有している。表示本体部6は、複写不可部3によって構成されている。疑似照射輪郭部7は、白抜き又は明度が高い色であり、一方で、疑似影輪郭部8は、表示本体部6と同系色又は黒若しくは灰等であって明度が低い色である。本実施形態では、仮に、表示対象4が物理的な立体であり、紙面の手前側(図1における下方側)から光が当てられたことで、表示対象4に対して反対側(図1における上方側)に影が出来た場合を、二次元で表したものである。なお、他の実施形態として、紙面の奥側(図1における上方側)から光が当てられたことで、表示対象に対して反対側(図1における下方側)に影が出来た場合を、二次元で表してもよい。また、他の実施形態として、疑似影輪郭部は無くてもよい。また、他の実施形態として、レリーフ部が潜像と重なっていてもよい。すなわち、表示本体部が、複写対象部のみで構成され、又は、複写対象部及び複写不可部で構成されていてもよい。
【0025】
図2に示されているとおり、透かし部9は、レリーフ部5を反転したものと同形である。すなわち、透かし部9は、印刷面から視してレリーフ部5と同じ形であり、同じ大きさであるが、厳密な意味での「同形」の他、多少の大小の相違も「同形」に含まれる。さらに、透かし部9は、印刷面のレリーフ部5の真裏において、レリーフ部5と重なる位置に配置されている。詳説すれば、透かし部9は、レリーフ部5の表示本体部6及び疑似影輪郭部8と重なっているが、疑似照射輪郭部7とは重なっていない。なお、他の実施形態として、透かし部が、レリーフ部の表示本体部、疑似影輪郭部及び疑似照射輪郭部と重なることで、透かし部の輪郭とレリーフ部の輪郭とが用紙の表裏において揃って重なっていてもよい。また、他の実施形態として、透かし部の輪郭とレリーフ部の輪郭とが多少ズレていてもよい。
【0026】
透かし部9のインキは、例えば、常温では固化しない液状の樹脂を用紙の繊維層に含浸させることで、光の透過率を変えるものである。
【0027】
以上のとおり、偽造防止印刷物1が構成されている。
【0028】
次に、偽造防止印刷物1の作製手順を説明する。はじめに、印刷の前処理手順を経て、レリーフ部5の前身が作成され、次いで、印刷手順を経る。図3ないし5は、前処理手順において、表示対象4の処理過程が示されている。
【0029】
前処理手順では、図3に示されているとおり、決定された表示対象4が、画像処理によってエンボス調に加工される。詳説すれば、図4に示されているとおり、二つの表示対象4が、ズレて重なった状態で、例えば上側や左側が黒く表れ、下側や右側が白抜きとなる。すなわち、表示対象4は、表示本体部6、疑似影輪郭部8及び疑似照射輪郭部7として表わされ、レリーフ部5の前身となる。この状態で、複写対象部2又は複写不可部3と融合され、図5に示されているとおり、各部2,3と同じ濃度に調整される。例えば、平網であれば、面積率が下げられることで、濃度が下がって色が薄くなる。
【0030】
印刷手順では、多色印刷機(図示省略。)において、裏面が上面となる向きで用紙が搬送され、第一胴で、用紙の裏面に透かし版が印刷され、その後、用紙が胴間で反転され、第二胴で、第一胴と反対側の印刷面に疑似影輪郭版が印刷され、第三胴で、レリーフ版を含む偽造防止版が印刷される。なお、他の実施形態として、疑似影輪郭版は、偽造防止版の後に印刷されてもよい。また、他の実施形態として、疑似影輪郭部が無い場合は、疑似影輪郭版の手順は省略される。また、他の実施形態として、透かし版は、印刷面において、レリーフ部に重ねて印刷されてもよい。また、他の実施形態として、偽造防止版が印刷された後、透かし版が印刷されてもよい。この場合、用紙は、偽造防止版において印刷面が上面となる姿勢で搬送され、透かし版において反転した姿勢となる。
【0031】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0032】
上記したとおり、本実施形態によれば、透かし部9とレリーフ部5とは、印刷面から視して同形であって、透かし部9は、印刷面のレリーフ部5の真裏において、レリーフ部5の表示本体部6及び疑似影輪郭部8と重なっている。すなわち、透かし部9は、透かし部9が印刷された部分以外の部分と比較して、暗く見えるところ、この透かし部9が、レリーフ部5の一部に重なることで、レリーフ部5にコントラストが表れて、レリーフ模様の立体感を際立たせることができる。また、透かし部9は、レリーフ部5に重なることで、レリーフ部5の一部を構成するように見えるため、油染みの跡のようには見えなくなる。透かし部9が目立たないのであれば、偽造防止対策として透かしの技術が施されていることを隠すことができる。さらに、レリーフ部5は、用紙の装飾の一部である一方で、透かし用のインキを印刷した箇所は、トナーの定着性が他と異なってしまう可能性があるため、印字の妨げとなるところ、レリーフ部5と透かし部9とが重なっていれば、レリーフ部5と透かし部9とが別個に表された場合と比較して、用紙において占有する面積が少ない。したがって、印字に適した部分の面積を大きくとることができる。
【0033】
特に、本実施形態では、透かし部9は、レリーフ部5の表示本体部6及び疑似影輪郭部8と重なっているが、疑似照射輪郭部7とは重なっていない。透かし部9が、疑似照射輪郭部7を除いた表示本体部6及び疑似影輪郭部8に重なることで、表示本体部6及び疑似影輪郭部8が、透かし部9によって一層と暗く見える一方で、白抜きの疑似照射輪郭部7が明るいままであるため、レリーフ部5にコントラストが顕著に表れる。したがって、レリーフ模様の立体感を顕著に際立たせることができる。
【0034】
本発明は、レリーフ部と透かし部とが、多少の大小において相違し、透かし部の輪郭とレリーフ部の輪郭とが多少ズレていても、十分に効果を奏するが、本実施形態のように、レリーフ部5の輪郭と透かし部9の輪郭とが完全に一致していれば、レリーフ模様の輪郭を際立たせ、透かしの跡を顕著に目立たせなくさせることができる。
【0035】
本実施形態では、レリーフ版を含む偽造防止版が印刷面に印刷され、透かし版が裏面印刷されている。すなわち、透かし版の印刷面とレリーフ版の印刷面とが用紙の表裏で異なるため、透かし部9及びレリーフ部5を明瞭にすることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 偽造防止印刷物
2 複写対象部
3 複写不可部
4 表示対象
5 レリーフ部
6 表示本体部
7 疑似照射輪郭部
8 疑似影輪郭部
9 透かし部
【要約】
【課題】透かしによる偽造防止効果を維持しつつ、意匠性に優れた偽造防止印刷物を提供する。
【解決手段】偽造防止印刷物1は、レリーフ版を含む偽造防止印刷版が、印刷面に印刷され、レリーフ版のレリーフ部5と同形である透かし版の透かし部9が、レリーフ部5と、印刷面又は裏面において重なって印刷されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5