(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、
前記圧電素子重合部位は、前記圧電素子の第1及び第2印加電極にそれぞれ対応した第1及び第2タブ領域を含み、
前記第1及び第2タブ領域の各々は接続用開口を有し、
前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域は、前記第1タブ領域の前記接続用開口を跨いで延び、先端側が前記第1タブ領域に支持されたブリッジ形状とされており、
前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域は、前記第2タブ領域の前記接続用開口を跨いで延び、先端側が前記第2タブ領域に支持されたブリッジ形状とされており、
前記圧電素子は、上方から前記第1及び第2印加電極に電気接続可能とされており、
前記配線アッセンブリは、平面視において、前記第1タブ領域の接続用開口が前記第1印加電極の電気接続可能部に重合し且つ前記第2タブ領域の接続用開口が前記第2印加電極の電気接続可能部に重合した状態で、前記下側封止板の上面に固着され、
前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域のうち前記第1タブ領域の前記接続用開口を跨ぐ部分が、対応する前記圧電素子の前記第1印加電極の電気接続可能部に電気的に接続され、
前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域のうち前記第2タブ領域の前記接続用開口を跨ぐ部分が、対応する前記圧電素子の前記第2印加電極の電気接続可能部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波トランスデューサー。
前記カバー層は、前記ベース層における前記第1タブ領域、前記第2タブ領域及び前記先端部位にそれぞれ対応したカバー側第1タブ領域、カバー側第2タブ領域及びカバー側先端部位を有していることを特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサー。
前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の前記第1印加電極における電気接続可能部との電気的接続、並びに、前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の前記第2印加電極における電気接続可能部との電気的接続は、導電性接着剤、はんだ又は超音波融合によって行われていることを特徴とする請求項3又は4に記載の超音波トランスデューサー。
前記カバー層は、前記ベース層における前記外側電極用タブ領域、前記内側電極用タブ領域及び前記先端部位にそれぞれ対応したカバー側外側電極用タブ領域、カバー側内側電極用タブ領域及びカバー側先端部位を有していることを特徴とする請求項13に記載の超音波トランスデューサー。
前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子との間の電気的接続、並びに、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の内側電極端子との間の電気的接続は、導電性接着剤、はんだ又は超音波融合によって行われていることを特徴とする請求項13に記載の超音波トランスデューサー。
前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の一方は、前記複数の圧電素子の対応する電極にそれぞれ電気的に接続された複数の個別配線であって、互いに対して独立された複数の個別配線を有し、
前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の他方は、前記複数の圧電素子の対応する電極に接続された単一配線を有していることを特徴とする請求項13から15の何れかに記載の超音波トランスデューサー。
前記下側封止板設置工程の後で且つ前記配線アッセンブリ固着工程の前に、前記下側封止板の中央開口によって画される空間のうち前記複数の圧電素子の側方部分に熱硬化型封止樹脂を流し込み、加熱処理して硬化させる封止樹脂設置工程を備えていることを特徴とする請求項18から20の何れかに記載の超音波トランスデューサーの製造方法。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、並列配置された複数の圧電素子を備えた超音波トランスデューサーであって、前記複数の圧電素子に印加する駆動電圧の周波数を、前記圧電素子が実装されてなる振動体の共振周波数近傍に設定することなく、前記振動体の共振周波数より低く設定しても、前記振動体の振動振幅を有効に確保し得る超音波トランスデューサーの提供を第1の目的とする。
また、本発明は、前記超音波トランスデューサーを効率良く製造し得る製造方法の提供を第2の目的とする。
【0015】
本発
明は、前記第1の目的を達成するために、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された複数の
積層型圧電素子とを備え
、前記可撓性樹脂膜は膜厚25〜75μmのポリイミドによって形成されている超音波トランスデューサーを提供する。
【0016】
本発
明に係る超音波トランスデューサーによれば、複数の圧電素子に印加する電圧の周波数を、前記複数の圧電素子がそれぞれ実装されてなる複数の振動体の共振周波数近傍に設定することなく、前記振動体の共振周波数より低く設定しても、前記複数の振動体の振動振幅を有効に確保することができる。
従って、前記複数の振動体の共振周波数を厳格に一致させることなく、前記複数の振動体から放射される超音波の位相の精密制御を行うことができる。
【0017】
また、本発明は、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された複数の圧電素子と、前記基板のうち前記複数の開口部が形成された開口部形成領域を囲む大きさの中央開口を有し、平面視において前記中央開口が前記開口部形成領域を囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、前記下側封止板の上面に固着された配線アッセンブリとを備え、前記配線アッセンブリは、絶縁性のベース層と、前記ベース層に設けられ、前記圧電素子における一対の第1及び第2印加電極にそれぞれ接続される第1及び第2導体層であって、それぞれが外部側端子領域及び圧電素子側端子領域を有する第1及び第2導体層と、少なくとも前記外部側端子領域及び前記圧電素子側端子領域へのアクセスを許容しつつ前記第1及び第2導体層を覆う絶縁性のカバー層とを有している超音波トランスデューサーを提供する。
【0018】
好ましくは、前記ベース層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記圧電素子重合部位は、前記圧電素子の第1及び第2印加電極にそれぞれ対応した第1及び第2タブ領域を含み、前記第1及び第2タブ領域の各々は接続用開口を有するものとされる。
【0019】
この場合、前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域は、前記第1タブ領域の前記接続用開口を跨いで延び、先端側が前記第1タブ領域に支持されたブリッジ形状とされ、前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域は、前記第2タブ領域の前記接続用開口を跨いで延び、先端側が前記第2タブ領域に支持されたブリッジ形状とされる。
【0020】
前記圧電素子は、上方から前記第1及び第2印加電極に電気接続可能に形成され、前記配線アッセンブリは、平面視において、前記第1タブ領域の接続用開口が前記第1印加電極の電気接続可能部に重合し且つ前記第2タブ領域の接続用開口が前記第2印加電極の電気接続可能部に重合した状態で、前記下側封止板の上面に固着され、前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域のうち前記第1タブ領域の前記接続用開口を跨ぐ部分が、対応する前記圧電素子の前記第1印加電極の電気接続可能部に電気的に接続され、前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域のうち前記第2タブ領域の前記接続用開口を跨ぐ部分が、対応する前記圧電素子の前記第2印加電極の電気接続可能部に電気的に接続される。
【0021】
前記カバー層は、前記ベース層における前記第1タブ領域、前記第2タブ領域及び前記先端部位にそれぞれ対応したカバー側第1タブ領域、カバー側第2タブ領域及びカバー側先端部位を有するものとされ得る。
【0022】
前記第1導体層の前記圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の前記第1印加電極における電気接続可能部との電気的接続、並びに、前記第2導体層の前記圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の前記第2印加電極における電気接続可能部との電気的接続は、導電性接着剤、はんだ又は超音波融合によって行われ得る。
【0023】
好ましくは、前記下側封止板の中央開口によって囲まれる空間のうち、前記複数の圧電素子の側方部分には、柔軟性樹脂が充填される。
【0024】
前記種々の構成に係る超音波トランスデューサーは、好ましくは、さらに、前記下側封止板及び前記配線アッセンブリの上面に柔軟性樹脂を介して固着された上側封止板を備え得る。
前記上側封止板は、前記複数の圧電素子のそれぞれに対応した位置に開口部を有するものとされる。
【0025】
前記超音波トランスデューサーは、さらに、前記上側封止板の複数の開口部を覆うように前記上側封止板の上面に固着された吸音材を備え得る。
【0026】
前記超音波トランスデューサーは、さらに、前記吸音材の上面に固着された補強板を備え得る。
【0027】
また、本発明は、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された複数の圧電素子と、前記基板の下面に固着された防護板
とを備
え、前記防護板は、前記基板における前記複数の開口部に対応した複数の開口部を有するものとされ
ている超音波トランスデューサーを提供する。
【0028】
本発明に係る前記超音波トランスデューサーの種々の構成において、好ましくは、前記複数の開口部は配列ピッチが4.3mm以下とされる。
この場合、前記圧電素子は、平面視縦横寸法の最大値が4.0mm以下の平面視矩形状、直径が4.0mm以下の平面視円形状、又は、長径が4.0mm以下の平面視楕円形状とされる。
【0029】
より好ましくは、前記圧電素子は、全周において前記基板に重合され、前記圧電素子と前記基板との重合幅は、0.03mm〜0.07mmとされる。
【0030】
また、本発明の第2態様は、前記第1の目的を達成する為に、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において前記開口部とそれぞれ重合するように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された複数の圧電素子と、前記基板のうち前記複数の開口部が形成された開口部形成領域を囲む大きさの中央開口を有し、平面視において前記中央開口が前記開口部形成領域を囲むように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された下側封止板と、前記下側封止板の上面に固着された配線アッセンブリとを備えた超音波トランスデューサーを提供する。
【0031】
前記第2態様に係る超音波トランスデューサーにおいては、前記圧電素子は、圧電素子本体と、前記圧電素子本体を厚み方向に関し上方側の第1圧電部位及び下方側の第2圧電部位に区画する内側電極と、前記第1圧電部位の上面の一部に固着された上面電極と、前記第2圧電部位の下面に固着され、前記上面電極と共に外側電極を形成する下面電極と、一端部が前記内側電極に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極とは絶縁状態で前記第1圧電部位の上面においてアクセス可能な内側電極端子を形成する内側電極用接続部材と、一端部が前記下面電極に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極及び前記内側電極とは絶縁状態で前記第1圧電部位の上面においてアクセス可能な下面電極端子を形成する下面電極用接続部材とを有するものとされる。
【0032】
本発明の第2態様に係る超音波トランスデューサーによれば、複数の圧電素子に印加する電圧の周波数を前記複数の圧電素子がそれぞれ実装されてなる複数の振動体の共振周波数近傍に設定することなく、前記振動体の共振周波数より低く設定しても、前記複数の振動体の振動振幅を有効に確保することができる。
従って、前記複数の振動体の共振周波数を厳格に一致させることなく、前記複数の振動体から放射される超音波の位相の精密制御を行うことができる。
【0033】
前記配線アッセンブリは、絶縁性のベース層と、前記ベース層に設けられ、それぞれが外部側端子領域及び圧電素子側端子領域を有する外側電極用導体層及び内側電極用導体層と、少なくとも前記外部側端子領域及び前記圧電素子側端子領域がアクセス可能な状態で前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層を覆うカバー層とを有するものとされる。
【0034】
前記ベース層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位と、前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記圧電素子重合部位は、外側電極接続用開口を有する外側電極用タブ領域と、内側電極接続用開口を有する内側電極用タブ領域とを含むものとされる。
【0035】
前記外側電極用タブ領域は、前記先端部位から延びる一対の外側電極用延在片と、前記一対の外側電極用延在片の自由端側を連結し、前記先端部位及び前記一対の外側電極用延在片と共働して前記外側電極接続用開口を形成する外側電極用連結片とを有し、前記内側電極用タブ領域は、前記先端部位から延びる一対の内側電極用延在片と、一対の内側電極用延在片の自由端側を連結し、前記先端部位及び前記一対の内側電極用延在片と共働して前記内側電極接続用開口を形成する内側電極用連結片とを有するものとされる。
【0036】
前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域は、前記外側電極接続用開口を跨いで延び、先端側が前記外側電極用
連結片に支持されたブリッジ形状とされ、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域は、前記内側電極接続用開口を跨いで延び、先端側が前記内側電極用連結片に支持されたブリッジ形状とされる。
【0037】
前記配線アッセンブリは、平面視において、前記外側電極接続用開口が対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子と重合し且つ前記内側電極接続用開口が対応する前記圧電素子の内側電極端子と重合した状態で、前記下側封止板の上面に固着され、前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記外側電極接続用開口を跨ぐ部分が対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子に電気的に接続され、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記内側電極接続用開口を跨ぐ部分が対応する前記圧電素子の内側電極端子に電気的に接続されている。
【0038】
前記第2態様において、好ましくは、前記カバー層は、前記ベース層における前記外側電極用タブ領域、前記内側電極用タブ領域及び前記先端部位にそれぞれ対応したカバー側外側電極用タブ領域、カバー側内側電極用タブ領域及びカバー側先端部位を有し得る。
【0039】
例えば、前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子との間の電気的接続、並びに、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域と対応する前記圧電素子の内側電極端子との間の電気的接続は、導電性接着剤、はんだ又は超音波融合によって行われる。
【0040】
前記第2態様の種々の構成において、好ましくは、前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の一方は、前記複数の圧電素子の対応する電極にそれぞれ電気的に接続された複数の個別配線であって、互いに対して独立された複数の個別配線を有するものとされる一方で、前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の他方は、前記複数の圧電素子の対応する電極に接続された単一配線を有するものとされる。
【0041】
より好ましくは、前記ベース層は、前記先端部位及び前記複数の圧電素子重合部位に加えて、前記外側電極
用導体層及び前記内側電極用導体層の前記外部側端子領域を支持する基端部位と、前記先端部位及び前記基端部位を連結する中間部位とを有するものとされる。
【0042】
前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の配線は、前記外部側端子領域及び前記圧電素子側端子領域に加えて、前記先端部位に支持され、前記圧電素子側端子領域の基端側が連結される先端領域と、前記中間部位に支持され、前記先端領域及び前記外部側端子領域の間を連結する中間領域とを含むものとされる。
【0043】
この場合において、前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の一方における前記複数の個別配線は、前記外部側端子領域から前記圧電素子側端子領域へ至る全体に亘って、前記ベース層のうち前記圧電素子と対向する下面及び前記圧電素子とは反対側の上面の一方である基準面に固着される。
【0044】
一方、前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層の他方における前記単
一配線は、前記外部側端子領域においては前記ベース層の基準面に固着され、前記中間領域においては前記ベース層の基準面とは反対側の裏面に固着され、且つ、前記先端領域及び前記圧電素子側端子領域においては前記ベース層の基準面に固着されており、前記中間領域は前記ベース層に形成された貫通孔を介して前記外部側端子領域及び前記先端領域に電気的に接続される。
【0045】
また、本発明は、前記第2の目的を達成する為に、剛性板材にエッチングによって下面及び上面の間を貫通する複数の開口部を有する剛性基板を形成する剛性基板形成工程と、前記複数の開口部を覆うように可撓性樹脂膜を接着剤又は熱圧着によって前記基板の上面に固着する可撓性樹脂膜固着工程と、上方から、上面電極、前記上面電極と共に外側電極を形成する下面電極に接続された下面電極端子、及び、内側電極に接続された内側電極端子にアクセス可能な2層積層型の複数の圧電素子を用意し、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記複数の圧電素子を前記可撓性樹脂膜の上面に絶縁性接着剤によって固着して、圧電体アッセンブリを形成する圧電体アッセンブリ形成工程と、前記剛性基板のうち前記複数の開口部が形成された開口部形成領域を囲む大きさの中央開口を有する剛性の下側封止板を用意し、平面視において前記中央開口が前記開口部形成領域を囲むように前記下側封止板を接着剤によって前記可撓性樹脂
膜の上面に固着する下側封止板設置工程と、絶縁性のベース層、前記ベース層に設けられ、それぞれが外部側端子領域及び圧電素子側端子領域を有する外側電極用導体層及び内側電極用導体層、並びに、少なくとも前記外部側端子領域及び前記圧電素子側端子領域がアクセス可能な状態で前記外側電極用導体層及び前記内側電極用導体層を覆うカバー層を有する配線アッセンブリであって、前記ベース層は、前記複数の圧電素子のそれぞれに平面視において部分的に重合可能な複数の圧電素子重合部位と前記複数の圧電素子重合部位を一体的に保持する先端部位とを有し、前記圧電素子重合部位は、外側電極接続用開口を有する外側電極用タブ領域と内側電極接続用開口を有する内側電極用タブ領域とを含み、
前記外側電極用タブ領域は、前記先端部位から延びる一対の外側電極用延在片と、前記一対の外側電極用延在片の自由端側を連結し、前記先端部位及び前記一対の外側電極用延在片と共働して前記外側電極接続用開口を形成する外側電極用連結片とを有し、前記内側電極用タブ領域は、前記先端部位から延びる一対の内側電極用延在片と、一対の内側電極用延在片の自由端側を連結し、前記先端部位及び前記一対の内側電極用延在片と共働して前記内側電極接続用開口を形成する内側電極用連結片とを有し、前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域は、前記外側電極接続用開口を跨いで延び、先端側が前記外側電極用
連結片に支持されたブリッジ形状とされ、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域は、前記内側電極接続用開口を跨いで延び、先端側が前記内側電極用連結片に支持されたブリッジ形状とされている配線アッセンブリを用意する配線アッセンブリ用意工程と、平面視において、前記外側電極接続用開口が対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子と重合し且つ前記内側電極接続用開口が対応する前記圧電素子の内側電極端子と重合した状態で、前記配線アッセンブリを絶縁性接着剤によって前記下側封止板の上面に固着させる配線アッセンブリ固着工程と、前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記外側電極接続用開口を跨ぐ部分を対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子の双方に電気的に接続し、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記内側電極接続用開口を跨ぐ部分を対応する前記圧電素子の内側電極端子に電気的に接続する電気接続工程とを備え、前記配線アッセンブリ用意工程は、少なくとも前記配線アッセンブリ固着工程より前の段階において、前記剛性基板形成工程、前記可撓性樹脂
膜固着工程、前記圧電体アッセンブリ形成工程及び前記下側封止板設置工程とは独立して実行される超音波トランスデューサーの製造方法を提供する。
【0046】
本発明に係る前記製造方法によれば、複数の圧電素子に印加する駆動電圧の周波数を、前記複数の振動体がそれぞれ実装されてなる複数の振動体の共振周波数近傍に設定することなく、前記振動体の共振周波数より低く設定しても、前記複数の振動体の振動振幅を有効に確保することができ、前記複数の振動体の共振周波数を厳格に一致させることなく、前記複数の振動体から放射される超音波の位相の精密制御を行うことができる超音波トランスデューサーを、効率良く製造することができる。
【0047】
前記製造方法は、前記配線アッセンブリ固着工程及び前記電気接続工程を一括して同時に行う接合工程を備え得る。
前記接合工程は、前記下側封止板の上面のうち前記配線アッセンブリが位置する部分に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子に跨るように熱硬化型導電性接着剤を塗布する処理と、前記圧電
素子の内側電極端子に熱硬化型導電性接着剤を塗布する処理と、前記配線アッセンブリを前記下側封止板の上面の所定位置に配置させてプリアッセンブリを形成する処理と、前記プリアッセンブリを加熱処理して熱硬化型絶縁性接着剤及び熱硬化型導電性接着剤を硬化させる処理とを含む。
【0048】
前記製造方法において、前記電気接続工程は、前記外側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記外側電極接続用開口を跨ぐ部分を対応する前記圧電素子の上面電極の一部及び下面電極端子の双方にはんだ又は超音波ボンディングによって電気的に接続する処理と、前記内側電極用導体層の圧電素子側端子領域のうち前記内側電極接続用開口を跨ぐ部分を対応する前記圧電素子の内側電極端子にはんだ又は超音波ボンディングによって電気的に接続する処理とを含むことができる。
【0049】
本発明に係る製造方法は、好ましくは、前記下側封止板設置工程の後で且つ前記配線アッセンブリ固着工程の前に、前記下側封止板の中央開口によって画される空間のうち前記複数の圧電素子の側方部分に熱硬化型封止樹脂を流し込み、加熱処理して硬化させる封止樹脂設置工程を備え得る。
【0050】
本発明に係る製造方法は、好ましくは、前記圧電
体アッセンブリ形成工程の後の任意タイミングにおいて行う防護板固着工程を備えることができる。
前記防護板固着工程は、前記剛性基板における前記複数の開口部に対応した複数の防護板開口部を有する剛性の防護板を接着剤によって前記剛性基板の下面に固着するように構成される。
【0051】
本発明に係る製造方法は、好ましくは、前記電気接続工程の後に、上側封止板設置工程を備え得る。
前記上側封止板設置工程は、前記配線アッセンブリの上面に熱硬化型柔軟性樹脂を塗布する処理と、前記柔軟性樹脂の上に、前記複数の圧電素子のそれぞれに対応した位置に開口部を有する剛性の上側封止板を配置する処理と、加熱により前記柔軟性樹脂を硬化させる処理とを含むものとされる。
【0052】
本発明に係る製造方法は、好ましくは、さらに、前記上側封止板設置工程の後に、吸音材設置工程及び補強板設置工程を備え得る。
【0053】
前記吸音材設置工程は、前記上側封止板の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上に吸音材を配置する処理と、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含むものとされる。
【0054】
前記補強板設置工程は、前記吸音材の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上に剛性の補強板を配置する処理と、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含むものとされる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る超音波トランスデューサーの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1の平面図を示す。
なお、
図1においては、理解容易化の為に一部の構成部材の図示を省略している。
また、
図2に、
図1におけるII-II線に沿った前記超音波トランスデューサー1の部分縦断正面図を示す。
さらに、
図3〜
図5に、前記超音波トランスデューサー1の構成部材毎の平面図を示す。
【0057】
詳細は後述するが、前記超音波トランスデューサー1においては、
図2の断面図を基準にして下から上に順に、
図3(a)に示す防護板80、
図3(b)に示す剛性基板10、
図3(c)に示す可撓性樹脂膜20、
図3(d)に示す複数の圧電素子30、
図3(e)に示す下側封止板40、
図4(a)に示すカバー層150、
図4(b)に示す導体層120、
図4(c)に示すベース層10、
図4(d)に示す前記導体層120における外側電極用導体層130aの一部である中間領域137a、
図4(e)に示す裏面側カバー層160、
図5(a)に示す上側封止板60、
図5(b)に示す吸音材70、及び、
図5(c)に示す補強板75が配置されている。
なお、
図3(a)〜(e)、
図4(a)〜(e)及び
図5(a)〜(c)において、各構成部材の相対位置関係の理解容易化の為に平面視同一位置に中心線を記載している。
【0058】
図1〜
図5に示すように、前記超音波トランスデューサー1は、主要構成部材として、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部15(
図3(b)参照)が設けられた前記剛性基板10と、前記複数の開口部15を覆うように前記基板10の上面に固着された前記可撓性樹脂膜20と、平面視において前記複数の開口部15とそれぞれ重合するように前記樹脂膜20の上面に固着された複数の前記圧電素子30とを備えている。
【0059】
図6(a)に、前記超音波トランスデューサー1の主要構成部材である前記剛性基板10、前記可撓性樹脂20及び前記複数の圧電素子30が組付けられてなる圧電体アッセンブリ3の平面図を示す。
また、
図6(b)に、
図6(a)におけるVI部拡大図を示す。
【0060】
図3等に示すように、本実施の形態においては、前記剛性基板10には前記開口部15が3×3の9か所において設けられ、前記可撓性樹脂膜20を挟んだ状態で9か所の開口部15とそれぞれ平面視において重合するように9個の圧電素子30が配列されており、これにより、前記9個の圧電素子がそれぞれ実装されてなる3×3の9個の振動体が備えられているが、当然ながら、本発明は斯かる構成に限定されるものではない。
放射音波の指向性を鋭くし、強度を高めるためには 3×3 より多い振動体を配列することが望ましい。
【0061】
前記剛性基板10は、例えば、厚さ0.1mm〜0.4mmのステンレス等の金属基板や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0062】
前記可撓性樹脂膜20は、例えば、厚さ20μm〜100μmのポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
前記可撓性樹脂膜20は、接着剤又は熱圧着等の種々の方法によって前記剛性基板10に固着される。
【0063】
図7(a)に、前記圧電素子30の平面図を示す。
また、
図7(b)に、
図7(a)におけるVII-VII線に沿った断面図を示す。
前記圧電素子30は、圧電素子本体32と、一対の第1及び第2印加電極とを有し、前記第1及び第2印加電極の間に電圧が印加されると伸縮するように構成されている。
【0064】
好ましくは、前記圧電素子30は積層型とされている。
積層型圧電素子は、単層型圧電素子に比して、同一電圧印加時に電界強度を高めることができ、印加電圧当たりの伸縮変位を大きくすることができる。
【0065】
図7(b)に示すように、本実施の形態においては、前記圧電素子30は、2層の積層型とされている。
【0066】
詳しくは、前記圧電素子30は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材によって形成される前記圧電素子本体32と、前記圧電素子本体32を厚み方向に関し上方側の第1圧電部位32a及び下方側の第2圧電部位32bに区画する内側電極34と、前記第1圧電部位32aの上面の一部に固着された上面電極36と、前記第2圧電部位32bの下面に固着された下面電極37と、一端部が前記内側電極34に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極36とは絶縁状態で前記第1圧電部位32aの上面においてアクセス可能な内側電極端子34Tを形成する内側電極用接続部材35と、一端部が前記下面電極37に電気的に接続され且つ他端部が前記上面電極36及び前記内側電極34とは絶縁状態で前記第1圧電部位32aの上面においてアクセス可能な下面電極端子37Tを形成する下面電極用接続部材38とを有している。
【0067】
この場合、前記上面電極36及び前記下面電極37によって形成される外側電極が第1印加電極として作用し、前記内側電極34が第2印加電極として作用する。
【0068】
前記圧電素子30においては、前記第1及び第2圧電部位32a、32bは、分極方向が厚み方向に関し同一とされており、これにより、前記外側電極及び前記内側電極34の間に所定の電圧を所定周波数で印加することによって、前記第1及び第2圧電部位32a、32bには互いに対して逆方向の電界が加わるようになっている。
【0069】
前述の通り、前記上面電極36及び前記下面電極37は互いに対して絶縁されており、従って、前記圧電素子30を作成する際には、前記上面電極36及び前記下面電極37の間に電圧を印加することによって、前記第1及び第2圧電部位32a、32bの分極方向を同一とすることができる。
【0070】
前記圧電体アッセンブリ3構成を備えた前記超音波トランスデューサー1は下記効果を有する。
即ち、本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1におけるように、振動体を形成する複数の圧電素子が並列配置されているフェイズドアレイによって、数メートル先の物体を検知する為には、前記複数の圧電素子30がそれぞれ実装されてなる複数の振動体から放射される音波の位相を精密に制御する必要がある。
【0071】
ここで、ステンレス等の剛性基板に直接的に複数の圧電素子が並列配置されている従来のフェイズドアレイにおいては、前記剛性基板の剛性に抗して前記圧電素子を伸縮させ、それによって前記振動体を所定の振幅でたわみ振動させて、発生音圧の大きさを確保する必要がある。
【0072】
その為には、前記圧電素子への印加電圧の周波数(駆動周波数)を、当該圧電素子が実装されてなる振動体の共振周波数の近傍に設定する必要がある。
【0073】
しかしながら、前記圧電素子への印加電圧に対する、当該圧電素子が実装されてなる振動体の振動動作の周波数応答は、当該振動体の共振周波数近傍において位相が大きく変化する。
【0074】
従って、フェイズドアレイセンサーとして機能させるべく、前記複数の圧電素子が発生する音波の位相を精密に制御する為には、前記複数の振動体間における共振周波数に関する「ばらつき」を極限まで抑制する必要があるが、これは非常に難しい。
【0075】
この点に関し、本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1は、前述の通り、前記複数の開口部15が設けられた前記剛性基板10と、前記複数の開口部15を覆うように前記基板10の上面に固着された前記可撓性樹脂膜20と、平面視において前記複数の開口部15とそれぞれ重合するように前記樹脂膜20の上面に固着された前記複数の圧電素子30とを有している。
【0076】
斯かる構成によれば、前記圧電素子30が実装されてなる前記振動体のたわみ振動の共振周波数を、当該圧電素子30へ印加する駆動電圧の周波数の近傍に設定することなく、前記振動体の共振周波数を駆動電圧の周波数よりも高くなるように設定しても、前記振動体の振動振幅を十分に確保することができる。
【0077】
しかも、前記複数の振動体の共振周波数が前記圧電素子30への印加電圧の周波数よりも高いと、前記複数の振動体間において共振周波数の「ばらつき」があったとしても、前記複数の振動体のたわみ振動の周波数応答の位相に大きな差異は生じない。
従って、前記複数の振動体が発生する音波の位相を精密に制御することができる。
【0078】
以下、この効果に関し、有限要素法(FEM)を用いて行った解析の結果を説明する。
図8(a)〜(c)に、それぞれ、本解析に用いたモデル300の縦断面図、平面図及び底面図を示す。
【0079】
図8(a)〜(c)に示すように、前記モデル300は下記構成を有している。
圧電素子330:一層の厚さが0.13mmの2層積層型(合計厚さ0.26mm)
一辺長さa1=3.4mm×3.4mmの平面視正方形状
不感領域幅a2=0.2mm
可撓性樹脂膜320:ポリイミドフィルム
剛性基板310:開口部315を有する厚さ0.3mmのSUS板
一辺長さb=4.4mm×4.4mmの平面視正方形状
【0080】
前述の通り、前記超音波トランスデューサー1をフェイズドアレイセンサーとして用いて、数メートル先の物体を検知する為には、前記圧電素子30が実装されてなる振動体が放射する超音波の周波数を40kHz程度の低周波数とする必要がある。
【0081】
前記振動体の共振周波数を、前記圧電素子30へ印加する電圧の周波数(40kHz)よりも十分に高い共振周波数(例えば、70kHz)とした場合、前記圧電素子30の平面視縦横寸法を大きくした方が、前記振動体が発生する超音波の音圧を高くすることができる。
【0082】
しかしながら、その一方で、本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1におけるように、複数の圧電素子30が並列配置されてなる場合においては、前記複数の圧電素子30がそれぞれ実装されてなる複数の振動体から放射される音波においてグレーティングローブの発生を抑制する為に、前記複数の圧電素子30の配列ピッチを当該圧電素子30が放射する超音波の波長λの1/2以下にする必要がある。
【0083】
ここで、周波数40kHzの超音波の波長λは8.6mmであるから、前記圧電素子30が放射する超音波の周波数を40kHzとしつつ、グレーティングローブの発生を抑制する為に、前記複数の圧電素子30の配列ピッチP(
図6(a)参照)を8.6mm/2=4.3mm以下にする必要がある。
【0084】
従って、好ましくは、前記圧電素子30の平面視縦横寸法は、音圧の確保の観点では3.0mm以上で、且つ、グレーティングローブの発生を抑制する観点では4.0mm以下とされる。
【0085】
この点を踏まえて、本解析に用いた前記モデル300は、一辺長さa1が3.4mmの平面視正方形状としている。
なお、当然ながら、これに代えて、前記圧電素子30を、平面視縦横寸法の最大値が4.0mm以下の長方形を含む平面視矩形状、直径が4.0mm以下の平面視円形状、又は、長径が4.0mm以下の平面視楕円形状とすることも可能である。
【0086】
(1)圧電素子330の位置ずれに関する解析(以下、解析1という)
前記開口部315の開口幅cを3.3mmとし且つ前記可撓性樹脂膜320の厚さを0.05mmとした状態で、前記圧電素子330の平面視一方向(
図8においてy方向)へ変位量がゼロの場合(モデル1−1)、0.05mmの場合(モデル1−2)及び0.1mmの場合(モデル1−3)における、前記圧電素子330を含む振動体の共振周波数と前記圧電素子330への印加電圧の周波数40kHz時における発生音圧(SPL)とを、有限要素法解析を用いて算出した。
算出結果を
図9に示す。
【0087】
モデル1−1は、圧電素子330のy方向一方側への変位量がゼロであるから、圧電素子330のy方向一方側の辺及びy方向他方側の辺のそれぞれが0.05mmの幅で剛性基板310に重合されている状態を意味している。
【0088】
モデル1−2は、圧電素子330のy方向一方側への変位量が0.05mmであるから、圧電素子130のy方向一方側の辺が0.1mmの幅で剛性基板310に重合する一方で、y方向他方側の辺は開口部315のエッジに沿っている状態を意味している。
【0089】
モデル1−3は、圧電素子330のy方向一方側への変位量が0.1mmであるから、圧電素子330のy方向一方側の辺が0.15mmの幅で剛性基板310に重合する一方で、y方向他方側の辺と開口部315のエッジとの間に0.05mmの幅の隙間が生じている状態を意味している。
【0090】
解析1の結果から、平面視において前記圧電素子330の全周が前記剛性基板310に重合するように、前記圧電素子330を配置させることが好ましいと考えられる。
【0091】
(2)開口部315の開口幅cの大きさに関する解析(以下、解析2という)
前記可撓性樹脂膜320の厚さを0.05mmとした状態で、前記開口部315の開口幅cを3.2mmとした場合(モデル2−1)、3.3mmとした場合(モデル2−2)及び3.4mmとした場合(モデル3−3)における、前記圧電素子330を含む振動体の共振周波数と前記圧電素子330への印加電圧の周波数40kHz時における発生音圧(SPL)とを、有限要素法解析を用いて算出した。
算出結果を
図10に示す。
【0092】
モデル2−1は、圧電素子330の周縁が全周に亘って幅0.1mmで剛性基板310に重合されている状態を意味している。
【0093】
モデル2−2は、圧電素子330の周縁が全周に亘って幅0.05mmで剛性基板310に重合されている状態を意味している。
【0094】
モデル2−3は、圧電素子330の周縁が全周に亘って開口部315のエッジに沿っている状態を意味している。
【0095】
解析2の結果から、圧電素子330と剛性基板310との重合幅が0.1mmの場合(モデル2−1)においては、音圧レベルが低下し過ぎており、又、前記重合幅がゼロ(モデル2−3)においては、共振周波数が目標値に達しておらず、前記重合幅が0.05mm(モデル2−2)において共振周波数及び音圧レベルの双方のバランスが取れている。
【0096】
解析1及び2の結果から、前記圧電素子330は全周に亘って剛性基板310に重合し、且つ、その重合幅は0.05mmであることが好ましいと考えられる。
【0097】
さらに、前記圧電素子330を接着剤によって前記可撓性樹脂膜320に実装する際には、製造誤差として最大で0.03mmの位置ずれが生じ得ると考えられる。
これを踏まえると、前記圧電素子330の全周が重合幅0.03mm〜0.07mmで前記剛性基板310に重合するように設計を行うことが好ましい。
【0098】
(3)可撓性樹脂膜320の厚さに関する解析(以下、解析3という)
前記開口部315の開口幅cを3.3mmとした状態で、前記可撓性樹脂膜320の厚さを0.013mmとした場合(モデル3−1)、0.025mmとした場合(モデル3−2)、0.05mmとした場合(モデル3−3)及び0.075mmとした場合(モデル3−4)における、前記圧電素子330を含む振動体の共振周波数と前記圧電素子330への印加電圧の周波数40kHz時における発生音圧(SPL)とを、有限要素法解析を用いて算出した。
算出結果を
図11に示す。
【0099】
解析3の結果から、可撓性樹脂膜120としてポリイミド膜を用いる場合には、膜厚を0.025mm以上で且つ0.075mm以下とすることが好ましいと考えられる。
【0100】
これは、膜厚が薄すぎると(0.025mm未満では)、圧電素子130の周縁部に対する前記剛性基板110の剛性の影響が強くなり過ぎて圧電素子130の振動振幅が小さくなる一方で、膜厚が厚すぎると(膜厚0.075mmを超えると)、ポリイミド膜自体の剛性が強くなり過ぎて、圧電素子130の振動振幅が小さくなる為、と考えられる。
【0101】
本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1は、
図1〜
図4に示すように、前記圧電体アッセンブリ3に加えて、下側封止板40及び配線アッセンブリ100を有している。
【0102】
前記下側封止板40は、前記剛性基板10のうち前記複数の開口部15が形成された開口部形成領域12(
図3(b)参照)を囲む大きさの中央開口42を有しており、平面視において前記中央開口42が前記複数の開口部15を囲むように前記可撓性樹脂膜20の上面に固着されている。
【0103】
前記下側封止板40は、
図2に示すように、前記圧電素子30と略同一の厚さを有しており、接着剤又は熱圧着等によって前記可撓性樹脂膜20の上面に固着される。
【0104】
前記下側封止板40は、好ましくは、ステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0105】
前記下側封止板40は、前記複数の圧電素子30を含む圧電素子群の側方を封止するとともに、前記配線アッセンブリ100が固着される基台として作用する。
【0106】
本実施の形態においては、
図2に示すように、前記下側封止板40の中央開口42によって囲まれる空間のうち、前記複数の圧電素子30の側方部分には、柔軟性樹脂50が充填されている。
前記柔軟性樹脂50は、例えば、シリコーンとされる。
【0107】
前記柔軟性樹脂50を備えることにより、前記複数の圧電素子30に対する外部からの影響を効果的に遮断することができる。
また、前記圧電素子30の振動減衰を大きくすることができ、前記複数の圧電素子30によってバースト状に発生した音波の残響を抑制して、反射波による物体の距離検知可能範囲を可及的に広げることができる。
【0108】
前記配線アッセンブリ100は、外部から供給される印加電圧を前記複数の圧電素子30へ伝達する為のものである。
【0109】
図12及び
図13に、それぞれ、前記配線アッセンブリ100の平面図(前記圧電素子30とは反対側から視た図)及び底面図(前記圧電素子30の側から視た図)を示す。
なお、理解容易化の為に、
図12及び
図13においては下記カバー層150の図示を省略している。
【0110】
図4、
図12及び
図13等に示すように、前記配線アッセンブリ100は、絶縁性ベース層110と、前記ベース層110に固着された導体層120と、導体層120における基端側の外部接続領域138a、138b及び先端側の圧電素子接続領域131a、131bを外方に開放させた状態で前記導体層120を囲繞する絶縁性のカバー層150とを有している。
【0111】
前記ベース層110及び前記カバー層150は、例えば、ポリイミド等の絶縁性樹脂によって形成される。
【0112】
図4、
図12及び
図13等に示すように、前記ベース層110は、前記複数の圧電素子30のそれぞれに平面視において部分的に重合する複数の圧電素子重合部位111と、前記複数の圧電素子重合部位111を一体的に保持する先端部位116とを有している。
【0113】
本実施の形態においては、前記ベース層110は、さらに、基端部位118と、前記先端部位116及び前記基端部位118の間を連結する中間部位117とを有している。
【0114】
本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1は、第1〜第9の9個の圧電素子30を有している。従って、前記ベース層110は、前記9個の圧電素子30にそれぞれ対応する9個の圧電素子重合部位111を有している。
【0115】
前記複数の圧電素子重合部位111の各々は、対応する圧電素子30における一対の印加電極の一方及び他方にそれぞれ対応した第1及び第2タブ領域112a、112bを有している。
【0116】
前述の通り、本実施の形態においては、前記圧電素子30は2層積層型とされており、上面電極36及び下面電極37によって形成される外側電極と圧電素子本体32の厚み方向中間に介挿された内側電極34とが、一対の第1及び第2印加電極として作用する。
この場合、前記第1及び第2タブ領域112a、112bは、それぞれ、外側電極用タブ領域及び内側電極用タブ領域として作用する。
【0117】
図14に、前記圧電体アッセンブリ3に前記配線アッセンブリ100を固着させたプリアッセンブリの部分平面図を示す。
図14は、
図2におけるXIV−XIV線に沿って視た状態に相当する。
図15に、
図14におけるXV部拡大図を示す。
【0118】
図15に示すように、前記外側電極用タブ領域112aは、前記先端部位116から延びる一対の外側電極用延在片113aと、一対の外側電極用延在片113aの自由端側を連結し、前記先端部位116及び前記一対の外側電極用延在片113aと共働して外側電極接続用開口115aを形成する外側電極用連結片114aとを有している。
【0119】
同様に、前記内側電極用タブ領域112bは、前記先端部位116から延びる一対の内側電極用延在片113bと、一対の内側電極用延在片113bの自由端側を連結し、前記先端部位116及び前記一対の内側電極用延在片113bと共働して内側電極接続用開口115bを形成する内側電極用連結片114bとを有している。
【0120】
前記導体層120は、例えば、Cu等の導電性金属によって形成される。
前記導体層120は、前記ベース層110上に積層された厚さ12〜25μm程度のCu箔に対して不要部分をエッチング除去することによって形成可能である。
好ましくは、前記導体層120を形成するCuの露出部分にNi/Auメッキを施すことができる。
【0121】
本実施の形態においては、前記導体層120は、前記複数の圧電素子30の外側電極及び内側電極34にそれぞれ接続される外側電極用導体層130a及び内側電極用導体層130bを含んでいる。
【0122】
図4、
図12及び
図13に示すように、前記外側電極用導体層130aは、前記ベース層の基端部位118に支持され、外部からの電圧供給を受ける外部側端子領域138aと、前記の圧電素子30の対応する電極に接続される圧電素子側端子領域131aと、前記外部側端子領域138a及び前記圧電素子側端子領域131aの間に延びる連結領域135aとを有している。
【0123】
同様に、前記内側電極用導体層130bは、前記ベース層の基端部位118に支持され、外部からの電圧供給を受ける外部側端子領域138bと、前記の圧電素子30の対応する電極に接続される圧電素子側端子領域131bと、前記外部側端子領域138b及び前記圧電素子側端子領域131bの間に延びる連結領域135bとを有している。
【0124】
本実施の形態においては、前記連結領域135a、135bは、前記ベース層110の先端部位116に支持されて、前記圧電素子側端子領域131a、131bが連結される先端領域136a、136bと、前記先端領域136a、136b及び前記外部側端子領域138a、138bの間に延びる中間領域137a、137bとを有している。
【0125】
図15等に示すように、前記外側電極用導体層130aの圧電素子側端子領域131aは、前記外側電極接続用開口115aを跨いで延び、先端側が前記外側電極用連結片114aに固着されたブリッジ形状とされている。
【0126】
同様に、前記内側電極用導体層130bの圧電素子側端子領域131bは、前記内側電極接続用開口115bを跨いで延び、先端側が前記内側電極用連結片114bに固着されたブリッジ形状とされている。
【0127】
図2、
図14及び
図15等に示すように、前記配線アッセンブリ100は、平面視において、前記外側電極接続用開口115aが対応する前記圧電素子30の前記下面電極端子37T及び前記上面電極36の一部と重合し且つ前記内側電極用接続開口115bが前記内側電極端子34Tと重合した状態で、接着剤によって前記下側封止板40の上面に固着されている。
【0128】
本実施の形態においては、
図2、
図4及び
図14等に示すように、前記配線アッセンブリ100は、前記カバー層150が前記下側封止板40と対向する状態で、接着剤によって前記下側封止板40の上面に固着されている。
【0129】
これに代えて、前記ベース層110が前記下側封止板40と対向する状態で、前記配線アッセンブリ100を前記下側封止板40の上面に固着することも可能である。
【0130】
前記圧電体アッセンブリ3及び前記配線アッセンブリ100が固着されてなるプリアッセンブリにおいて、
図14及び
図15に示すように、前記外側電極用導体層130aの圧電素子側端子領域131aのうち前記外側電極接続用開口115aを跨ぐ部分(以下、外側電極用導体ブリッジ部という)が対応する前記圧電素子30の外側電極に電気的に接続され、且つ、前記内側電極用導体層130bの圧電素子側端子領域131bのうち前記内側電極接続用開口115bを跨ぐ部分(以下、内側電極用導体ブリッジ部という)が対応する前記圧電素子30の内側電極37に電気的に接続されている。
【0131】
詳しくは、
図14及び
図15に示すように、前記外側電極用導体ブリッジ部が、前記外側電極接続用開口115a内において前記上面電極36の一部及び前記下面電極端子37Tの双方に電気的に接続され、且つ、前記内側電極用導体ブリッジ部が前記内側電極接続用開口115b内において前記内側電極端子34Tにのみ電気的に接続されている。
【0132】
前記外側電極用導体ブリッジ部の電気的接続は、例えば、前記外側電極用導体ブリッジ部、前記上面電極36の一部及び前記下面電極端子37Tをつなぐように前記外側電極接続用開口115a内において導電性接着剤又ははんだを塗布することや、又は、前記外側電極用導体ブリッジ部及び前記上面電極36の一部の間並びに前記外側電極用導体ブリッジ部及び前記下面電極端子37Tの間をそれぞれ前記外側電極接続用開口115a内において超音波ボンディングすることによって行うことができる。
【0133】
前記内側電極用導体ブリッジ部の電気的接続は、例えば、前記内側電極用導体ブリッジ部を前記上面電極36には絶縁状態で前記内側電極端子34Tにつなぐように前記内側電極接続用開口115b内において導電性接着剤又ははんだを塗布することや、又は、前記内側電極用導体ブリッジ部を前記上面電極36には絶縁状態で前記内側電極接続用開口115b内において前記内側電極端子34Tに超音波ボンディングによって接続することによって行うことができる。
【0134】
このように、前記外側電極用導体ブリッジ部及び前記内側電極用導体ブリッジ部の電気的接続を、前記対応する接続用開口115a、115b内で行うことによって、前記圧電素子側端子領域131a、131bの損傷を有効に防止しつつ、電気的接続の状態を視覚的に確認することが可能となる。
【0135】
即ち、導電性接着剤又ははんだの塗布位置、拡がり状態、前記ブリッジ部との接触状態、もしくは、超音波ボンディング痕の状態等を容易に確認することができ、接触不良の発生を可及的に低減することができる。
【0136】
本実施の形態においては、
図4等に示すように、前記カバー層150は、前記ベース層110と実質的に同一構成を有している。
【0137】
詳しくは、前記カバー層150は、前記外部側端子領域138a、138bの一部を覆うカバー側基端部位158と、前記先端領域136a、136bを覆うカバー側先端部位156と、前記中間領域135bを覆うカバー側中間部位155と、前記圧電素子重合部位111に重合されるカバー側圧電素子重合部位151とを有している。
【0138】
前記カバー側圧電素子重合部位151は、前記圧電素子重合部位111と同一構成を有している。
即ち、前記カバー側圧電素子重合部位151は、平面視において前記外側電極用タブ領域112a及び内側電極用タブ領域112bにそれぞれ重合するカバー側外側電極用タブ領域152a及びカバー側内側電極用タブ領域152bを有している。
【0139】
この場合、前記外側電極用導体ブリッジ部の前記電気的接続は、前記ベース層110における前記外側電極用タブ領域112aの前記外側電極接続用開口115a及び前記カバー層150における前記カバー側外側電極用タブ領域152aの外側電極接続用開口155a(
図4参照)を介して行われる。
【0140】
同様に、前記内側電極用導体ブリッジ部の前記電気的接続は、前記ベース層110における前記内側電極用タブ領域112bの前記内側電極接続用開口115b及び前記カバー層150における前記カバー側内側電極用タブ領域152bの内側電極接続用開口155b(
図4参照)を介して行われる。
【0141】
好ましくは、前記外側電極用導体層130a及び前記内側電極用導体層130bの一方は、前記複数の圧電素子30の対応する電極にそれぞれ電気的に接続される複数の個別配線であって、互いに対して独立された複数の個別配線を有するものとされ、前記外側電極用導体層130a及び前記内側電極用導体層130bの他方は、前記複数の圧電素子30の対応する電極に接続された単一配線を有するものとされる。
斯かる構成によれば、導体層の小型化を図ることができる。
【0142】
図4、
図12及び
図13に示すように、本実施の形態においては、前記外側電極用導体層130aが前記複数の圧電素子30の全ての外側電極に接続される単一配線を有するものとされ、前記内側電極用導体層130bが前記複数の圧電素子30の内側電極34にそれぞれ独立して接続される複数の個別配線を有するものとされている。
【0143】
なお、本実施の形態においては、前記外側電極用導体層130aは、2つの外部側端子領域138aを有しているが、そのうちの一つを削除することも可能である。
【0144】
さらに、前記外側電極用導体層130a及び前記内側電極用導体層130bの一方(本実施の形態においては前記内側電極用導体層130b)における前記複数の個別配線は、前記外部側端子領域138bから前記圧電素子側端子領域131bへ至る全体に亘って、前記ベース層110のうち前記圧電素子30と対向する下面及び前記圧電素子30とは反対側の上面の一方(本実施の形態においては下面)である基準面に固着されている。
【0145】
そして、前記外側電極用導体層130a及び前記内側電極用導体層130bの他方(本実施の形態においては外側電極用導体層130a)における前記単一の配線は、前記外部側端子領域138aにおいては前記ベース層110の基準面に固着され、前記中間領域137aにおいては前記ベース層110の基準面とは反対側の裏面に固着され、且つ、前記先端領域136a及び前記圧電素子側端子領域131aにおいては前記ベース層110の基準面に固着されており、前記中間領域137aは前記ベース層110に形成された貫通孔108、109を介して前記外部側端子領域138a及び前記先端領域136aに電気的に接続されている。
【0146】
斯かる構成によれば、前記外側電極用導体層130a及び前記内側電極用導体層130bの抵触を防止しつつ、前記配線アッセンブリ100の小型化を図ることができる。
【0147】
なお、この場合、前記配線アッセンブリ100には、前記導体層130a、130bのうち、前記ベース層110の裏面上に設けられた部分を覆う裏面側カバー層160(
図4参照)が備えられる。
【0148】
図2及び
図5等に示すように、本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1は、さらに、前記下側封止板40及び前記配線アッセンブリ100の上面に柔軟性樹脂55を介して固着された上側封止板60を有している。
前記上側封止板60は、前記複数の圧電素子30のそれぞれに対応した位置に開口部65を有している。
【0149】
前記上側封止板60を備えることにより、前記振動体のたわみ振動動作への影響を可及的に防止しつつ、前記配線アッセンブリ100の支持安定化を図ることができる。
【0150】
前記上側封止板60は、例えば、厚さ0.1mm〜0.3mmのステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0151】
本実施の形態に係る超音波トランスデューサー1は、さらに、前記上側封止板60の複数の開口部65を覆うように前記上側封止板60の上面に接着等によって固着された吸音材70を備えている。
【0152】
前記吸音材70は、例えば、厚さ0.3mm〜1.5mm程度のシリコーン樹脂又は他の発泡性樹脂によって形成される。
【0153】
前記吸音材70を備えることにより、前記圧電素子30によって生成される音波が放射されるべき側(
図2において下側)とは反対側へ放射されることを有効に抑制することができる。
【0154】
前記超音波トランスデューサー1は、さらに、前記吸音材70の上面に接着等によって固着された補強板75を備えている。
【0155】
前記補強板75は、例えば、厚さ0.2mm〜0.5mm程度のステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0156】
前記補強板75を備えることにより、外力が前記基板10及び前記圧電素子30に影響を与えることを可及的に防止することができる。
【0157】
前記超音波トランスデューサー1は、さらに、前記基板10の下面に接着等によって固着された防護板80を備えている。
前記防護板80は、前記基板10における前記複数の開口部15に対応した複数の開口部82を有している。
【0158】
前記防護板80は、例えば、厚さ0.1mm〜0.4mm程度のステンレス等の金属や炭素繊維強化プラスチック及びセラミックス等によって形成される。
【0159】
前記防護板80を備えることにより、外力によって前記基板10及び前記可撓性樹脂膜20が損傷することを有効に防止することができる。
【0160】
前記基板10及び前記可撓性樹脂膜20の保護の観点では、前記防護板80の開口部82の開口幅は、前記基板10の開口部15の開口幅よりも小さく、例えば、60%〜90%とすることが好ましい。
【0161】
例えば、前記基板10の開口部が一辺3.3mmの正方形状である場合には、前記防護板80の開口部82は、一辺が2.0mm〜3.0mm程度の正方形状又は直径2.0mm〜3.0mm程度の円形状とすることができる。
【0162】
前記圧電素子30の振動振幅は、当該圧電素子30の周縁では小さく、中央部が最も大きくなり、音波は主として中央部の振動によって発生する。従って、前記防護板80の開口部82の開口幅を前記基板10の開口部15の開口幅よりも小さくしても、圧電素子30によって発生されて放射される音波の音圧に実質的な影響は与えない。
【0163】
以下、本実施の形態に係る前記超音波トランスデューサー1の製造方法について説明する。
【0164】
前記製造方法は、
・剛性板材にエッチングによって、前記複数の開口部15を有する前記剛性基板10を形成する剛性基板形成工程と、
・前記複数の開口部15を覆うように前記可撓性樹脂膜20を接着剤又は熱圧着によって前記剛性基板10の上面に固着する可撓性樹脂膜固着工程と、
・平面視において前記複数の開口部15とそれぞれ重合するように前記複数の圧電素子30を前記可撓性樹脂膜20の上面に絶縁性接着剤によって固着して、前記圧電体アッセンブリ3を形成する圧電体アッセンブリ形成工程と、
・平面視において前記中央開口42が前記開口部形成領域12を囲むように前記下側封止板40を接着剤によって前記可撓性樹脂20の上面に固着する下側封止板設置工程と、
・前記配線アッセンブリ100を用意する配線アッセンブリ用意工程と、
・平面視において、前記外側電極接続用開口115aが対応する前記圧電素子30の上面電極36の一部及び下面電極端子37Tと重合し且つ前記内側電極接続用開口115bが対応する前記圧電素子30の内側電極端子34Tと重合した状態で、前記配線アッセンブリ100を絶縁性接着剤によって前記下側封止板40の上面に固着させる配線アッセンブリ固着工程と、
・前記外側電極用導体層130aの圧電素子側端子領域131aの前記ブリッジ部を対応する前記圧電素子30の上面電極36の一部及び下面電極端子37Tの双方に電気的に接続し、前記内側電極用導体層130bの圧電素子側端子領域131bの前記ブリッジ部を対応する前記圧電素子30の内側電極端子34Tに電気的に接続する電気接続工程と
を備えている。
【0165】
好ましくは、前記製造方法は、前記配線アッセンブリ固着工程及び前記電気接続工程を一括して同時に行う接合工程を備えることができる。
【0166】
前記接合工程は、前記下側封止板40の上面のうち前記配線アッセンブリ100が位置する部分に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記圧電素子30の上面電極36の一部及び下面電極端子37Tに跨るように熱硬化型導電性接着剤を塗布する処理と、前記圧電体30の内側電極端子34Tに熱硬化型導電性接着剤を塗布する処理と、前記配線アッセンブリ100を前記下側封止板40の上面の所定位置に配置させてプリアッセンブリを形成する処理と、前記プリアッセンブリを、例えば、120℃〜150℃程度で数十分間、加熱処理して熱硬化型絶縁性接着剤及び熱硬化型導電性接着剤を硬化させる処理とを含むものとされる。
【0167】
前記接合工程を備えることにより、前記配線アッセンブリ100及び前記下側封止板40の固着と、前記配線アッセンブリ100及び前記圧電素子30の電気接続を同時に行うことができ、効率化を図ることができる。
【0168】
当然ながら、前記電気接続工程を、前記配線アッセンブリ固着工程の後に行うことも可能である。
【0169】
この場合、前記電気接続工程は、前記配線アッセンブリ100が接着剤によって前記下側封止板40に接着された状態において、前記外側電極用導体層130aの圧電素子側端子領域131aの前記ブリッジ部を対応する前記圧電素子30の上面電極36の一部及び下面電極端子37Tの双方に導電性接着剤、はんだ又は超音波ボンディングによって電気的に接続する処理と、前記内側電極用導体層130bの圧電素子側端子領域131bの前記ブリッジ部を対応する前記圧電素子30の内側電極端子34Tに導電性接着剤、はんだ又は超音波ボンディングによって電気的に接続する処理とを含むものとされる。
【0170】
前記製造方法は、さらに、前記下側封止板設置工程の後で且つ前記配線アッセンブリ固着工程の前に、前記下側封止板の中央開口によって画される空間のうち前記複数の圧電素子の側方部分に液状のシリコーン樹脂等の熱硬化型封止樹脂を流し込み、例えば、100℃〜150℃程度で数十分間、加熱処理して硬化させる封止樹脂設置工程を備えている。
【0171】
前記製造方法は、さらに、前記圧電体形成アッセンブリ形成工程の後の任意タイミングにおいて、前記防護板80を固着する防護板固着工程を備えている。
前記防護板固着工程は、前記防護板80を接着剤によって前記剛性基板10の下面に固着するように構成される。
【0172】
前記製造方法は、さらに、前記電気接続工程の後に、前記上側封止板60を設置する上側封止板設置工程を備えている。
【0173】
前記上側封止板設置工程は、前記配線アッセンブリ100の上面にシリコーン樹脂等の熱硬化型の柔軟性樹脂を塗布する処理と、前記柔軟性樹脂の上に前記上側封止板60を配置する処理と、例えば、100℃〜150℃程度で数十分間、加熱により前記柔軟性樹脂を硬化させる処理とを含む。
【0174】
前記製造方法は、さらに、前記上側封止板設置工程の後に、前記吸音材70を設置する工程及び前記補強板75を設置する工程を備えている。
【0175】
前記吸音材設置工程は、前記上側封止板60の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上にシリコーン樹脂又は他の発泡性樹脂等の前記吸音材70を配置する処理と、例えば、120℃〜150℃程度で数十分間、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含む。
【0176】
前記補強板設置工程は、前記吸音材70の上面に熱硬化型絶縁性接着剤を塗布する処理と、前記熱硬化型絶縁性接着剤の上に前記補強板75を配置する処理と、例えば、120℃〜150℃程度で数十分間、加熱により前記熱硬化型絶縁性接着剤を硬化させる処理とを含む。
本発明に係る超音波トランスデューサーは、下面及び上面の間を貫通する複数の開口部が設けられた剛性基板と、前記複数の開口部を覆うように前記基板の上面に固着された可撓性樹脂膜と、平面視において前記複数の開口部とそれぞれ重合するように前記可撓性樹脂膜の上面に固着された複数の圧電素子とを備える。好ましくは、前記複数の開口部は配列ピッチが4.3mm以下とされ、前記圧電素子は、平面視縦横寸法の最大値が4.0mm以下の平面視矩形状、直径が4.0mm以下の平面視円形状、又は、長径が4.0mm以下の平面視楕円形状とされる。好ましくは、前記圧電素子は、全周において前記剛性基板に重合され、前記圧電素子と前記基板との重合幅は、0.03mm〜0.07mmとされる。