(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の天井後方部に空調装置を配置した構成が開示されている。この場合において、空調装置の排水ポートから排出される凝縮水は、排水管によって車体のピラー内部に導水され、その後、車体下方から車外に排出される。
【0003】
一方、特許文献2に開示されているように、車両衝突時の乗員保護のためのSRS(Supplemental Restraint System:補助拘束装置)として、カーテンシールドエアバッグが車両に搭載されることがある。カーテンシールドエアバッグは、車体のルーフサイドレールに沿って配置される。
【0004】
ここで、空調装置が車両の天井部に配置された車両においては、空調装置の排水ポートからピラーへ通じる排水管は所定の導水勾配を確保する必要がある。このような車両にカーテンシールドエアバッグを搭載した場合、車体のピラー近傍においてカーテンシールドエアバッグの車両下方に排水管が交差する配置形態となる。このため、カーテンシールドエアバッグが展開しようとするとき、排水管が阻害となってカーテンシールドエアバッグが円滑かつ確実に展開されなくなることが懸念される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜
図9に基づき、本実施形態にかかる車両用空調装置の排水構造について説明する。本実施形態にかかる車両用空調装置の排水構造は、車体1、車体内装2、空調ユニット31、天井排水管34、側部排水管35、ソケット36、カーテンシールドエアバッグ41およびブラケット42によって構成されている。
【0014】
図1は、本発明にかかる車両用空調装置の排水構造を適用した車両の一例を、車両左方LHから透視した概要図である。
図2は、
図1に示す排水構造を適用した車両の一例の平面図であり、理解の便宜上、後述する車体1のルーフパネル11およびルーフサイドレール12を省略している。
図3は、
図1のIII−III線に沿う断面図である。
図4は、
図1のIV−IV線に沿う断面図である。
図5は、空調ユニット31の概略平面図である。
図6は、天井排水管34の斜視図である。
図7は、ソケット36の斜視図である。
図8は、ブラケット42の部分拡大斜視図である。
図9は、ソケット36がブラケット42に固定されたときの状態の斜視図である。ここで、
図1〜
図9において、FRは車両前方を、RRは車両後方を、RHは車両右方を、LHは車両左方を、UPRは車両上方を、DWは車両下方をそれぞれ示している。
【0015】
車体1は、
図1および
図3に示すように、車両上方UPRに位置するルーフパネル11と、ルーフパネル11の車幅方向の両側に位置するルーフサイドレール12と、ルーフサイドレール12から車両下方DWに延出するセンタピラー13とを有する。ルーフパネル11は、車外側に位置するルーフアウタパネル111と、車内側に位置するルーフインナパネル112とを含む部材である。ルーフサイドレール12は、車幅方向においてルーフアウタパネル111およびルーフインナパネル112につながり、かつ車両前後方向に延出する部材である。センタピラー13は、車外側に位置するピラーアウタパネル131と、車内側に位置するピラーインナパネル132とを含み、かつ車両上方UPRにおいてルーフサイドレール12と一体となった部材である。ピラーアウタパネル131とピラーインナパネル132は、相互に接合されて閉断面を構成している。本実施形態では、
図4に示すように、ピラーアウタパネル131およびピラーインナパネル132によって構成される閉断面の内部に、補剛材133がピラーインナパネル132に対向して配置されている。ルーフパネル11、ルーフサイドレール12およびセンタピラー13は、いずれも鋼薄板をプレス加工により成型したものである。
【0016】
車体内装2は、
図3に示すように、車体1に対して車内側に配置された内装部材であり、ルーフヘッドライニング21およびセンタピラーガーニッシュ23を含む。車体内装2は、たとえば合成樹脂の射出成形物である。ルーフヘッドライニング21は、ルーフインナパネル112およびルーフサイドレール12に対して車内側に配置された内装部材である。ルーフヘッドライニング21とルーフインナパネル112およびルーフサイドレール12との間には、所定の空間が形成されている。センタピラーガーニッシュ23は、ピラーインナパネル132に対して車内側に配置された内装部材である。センタピラーガーニッシュ23とピラーインナパネル132との間には、所定の空間が形成されている。また、
図3に示すように、ルーフヘッドライニング21の車幅方向における側端部211は、センタピラーガーニッシュ23の車両上方UPRに位置する上端部231に係合している。
【0017】
空調ユニット31は、
図1および
図2に示すように、車両前後方向においてセンタピラー13の近傍に、かつ車幅方向において中央に位置するように、ルーフヘッドライニング21とルーフインナパネル112との間に形成された空間に収容された空調装置である。
図5に示すように、空調ユニット31は、ユニットケース311、送風機312、膨張弁313、蒸発器314、ヒータコア315および排水ポート316を有する。
【0018】
図5に示すように、ユニットケース311は、送風機312、膨張弁313、蒸発器314およびヒータコア315を収容する、ポリプロピレンなどの合成樹脂からなる筐体である。送風機312は、ユニットケース311に設けられたエア流入口(図示略)から車内の空気を取り込み、当該空気をユニットケース311内へ供給する装置である。本実施形態にかかる送風機312のファンは、いわゆるシロッコファンである。膨張弁313および蒸発器314は、空調ユニット31における冷凍サイクル(空気冷却機能)の一部を構成している。膨張弁313は、液化された低温冷媒を減圧膨張させる装置である。本実施形態にかかる冷媒は、たとえばハイドロフルオロカーボン(R134a)である。膨張弁313によって減圧膨張された低温冷媒は、蒸発器314へ流通される。蒸発器314は、低温冷媒の蒸発熱を利用することにより空調ユニット31内に供給された空気を冷却する装置である。蒸発器314において冷却された空気は、ヒータコア315を経由してエア流出口(図示略)から車内へ吹き出される。ヒータコア315は、蒸発器314において冷却された空気を加熱し、当該空気を温調する装置である。また、ユニットケース311の車両下方DWに設けられた排水ポート316は、蒸発器314における空気の冷却にともなって発生した凝縮水を排出させる部分である。本実施形態にかかる排水ポート316は、車両左方LHを向いている。排水ポート316には、天井排水管34が接続されている。
【0019】
図2、
図3および
図5に示すように、空調ユニット31には、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33が接続されている。リキッドチューブ32は、エンジンルーム(図示略)に配置された圧縮機(図示略)および凝縮器(図示略)によって液化された低温冷媒が膨張弁313へ流通する管である。サクションチューブ33は、蒸発器314によって蒸発気化した冷媒が先述した圧縮機へ流通する管である。このため、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、先述したエンジンルームと空調ユニット31との間の冷媒の循環経路を構成している。
図2および
図3に示すように、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、空調ユニット31から車両左方LHに向かってルーフヘッドライニング21に沿って延出し、ルーフサイドレール12の近傍で車両下方DWへ屈曲している。
図1に示すように、屈曲したリキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、そのまま車両下方DWへ向かってセンタピラー13に沿って延出する。そして、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、車体1の車両下方DWに配置されたフロアパネル14の車両下方DWにおいて、車両前方FRへ向かって先述したエンジンルームに至る。
図3に示すように、車両上方UPRにおいてリキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、ルーフヘッドライニング21とルーフインナパネル112およびルーフサイドレール12との間に形成された空間に収容されている。また、
図4に示すように、車両左方LHにおいてリキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、センタピラーガーニッシュ23とピラーインナパネル132との間に形成された空間に収容されている。
【0020】
カーテンシールドエアバッグ41は、
図1〜
図3に示すように、円筒状に折りたたまれた状態で、車両前後方向に沿ってルーフヘッドライニング21とルーフサイドレール12との間に収容された車両のSRS(Supplemental Restraint System:補助拘束装置)の一種である。カーテンシールドエアバッグ41は、車両衝突時にルーフヘッドライニング21を車内側へ押し開きながら車両下方DWへ垂れ下がるように展開し、ウィンドウなどから乗員を保護する。また、
図2および
図3に示すように、カーテンシールドエアバッグ41とルーフサイドレール12との間には、ブラケット42が配置されている。ブラケット42は、ルーフサイドレール12に固定された鋼部材であり、車両左方LHからカーテンシールドエアバッグ41を抱きかかえるような構成をとっている。ブラケット42は、カーテンシールドエアバッグ41の展開方向を規制し、カーテンシールドエアバッグ41が正常に展開できるようにするために配置されている。なお、
図3に示すように、ルーフサイドレール12の近傍で屈曲するリキッドチューブ32およびサクションチューブ33は、ブラケット42とルーフサイドレール12との間を通過するように屈曲している。
【0021】
天井排水管34は、
図2、
図3および
図5に示すように、空調ユニット31の排水ポート316に接続され、かつ空調ユニット31から排出された凝縮水を流下させる管である。天井排水管34は、たとえば可とう性に富んだ合成ゴムからなる。天井排水管34は、排水ポート316に接続される第1端部341と、第1端部341とは反対側に位置する第2端部342とを有する。第2端部342は、後述するソケット36の流入部361に挿入されている。天井排水管34は、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33と同様に、ルーフヘッドライニング21とルーフインナパネル112およびルーフサイドレール12との間に形成された空間に収容されている。ただし、天井排水管34は、リキッドチューブ32およびサクションチューブ33よりも車両下方DWに位置している。また、天井排水管34は、ルーフヘッドライニング21とカーテンシールドエアバッグ41との間を通過し、かつ平面視において蛇行した状態で配置されている。このため、第1端部341と第2端部342との間に位置する天井排水管34の部分は、カーテンシールドエアバッグ41と並行している。あわせて、天井排水管34は、車両左方LHへ向かい、かつ車両下方DWに傾斜して配置されている。また、
図6に示すように、天井排水管34の第2端部342側の外周には、天井排水管34の径方向に延出するフランジ部343が形成されている。本実施形態にかかるフランジ部343の形状は、天井排水管34の外周に沿った三日月状である。
【0022】
側部排水管35は、
図1〜
図4に示すように、センタピラー13の内側であるピラーインナパネル132と補剛材133との間に形成された空間に収容された管である。側部排水管35は、センタピラー13と同様に車両下方DWへ延出し、かつフロアパネル14に至って配置されている。側部排水管35は、たとえば合成樹脂のような天井排水管34よりも剛性が高い物性を有する材料からなる。車両上方UPRに位置する側部排水管35の上端部351は、ピラーインナパネル132を貫通し、かつ後述するソケット36の流出部362に接続されている。天井排水管34を流下した凝縮水は、ソケット36を経由して上端部351から側部排水管35を流下する。側部排水管35を流下した凝結水は、フロアパネル14の近傍に位置する下端部352より車外へ排出される。
【0023】
ソケット36は、
図2および
図3に示すように、天井排水管34の第2端部342と側部排水管35の上端部351とを相互に接続する部材である。ソケット36は、たとえば合成樹脂からなる。本実施形態では、ソケット36は、車両左方LHよりブラケット42に固定され、かつルーフヘッドライニング21とピラーインナパネル132との間に形成された空間に収容されている。
図3および
図7に示すように、ソケット36は、流入部361、流出部362および規制部363を有する。
【0024】
図3および
図7に示すように、流入部361は、天井排水管34の第2端部342が挿入される開口した部分である。第2端部342は、流入部361の内部で固定されないため、天井排水管34の第2端部342は、ソケット36の流入部361に対して脱着可能に接続されている。流入部361は、天井排水管34の第2端部342を車両下方DWから支持する支持部361aと、支持部361aから車両下方DWに延出する下垂壁361bとを有する。天井排水管34の第2端部342を流入部361に挿入したとき、天井排水管34に形成されたフランジ部343が支持部361aに接触する。
【0025】
図3および
図7に示すように、流出部362は、流入部361よりも車外側に位置し、かつ側部排水管35の上端部351が接続される部分である。また、
図7に示すように、規制部363は、車両前後方向における流入部361の両端に形成された一対の部分である。各々の規制部363は、第1規制部363aおよび第2規制部363bを有する。第1規制部363aは、ソケット36に対して車内側に位置し、かつ形状が直方体状の部分である。第2規制部363bは、第1規制部363aよりも車外側に位置し、かつ形状が第1規制部363aよりも車両下方DWに延出する直方体状である。
【0026】
図8に示すように、ブラケット42には、車幅方向に貫通する開口部421が形成されている。開口部421は、形状がU字状である開口縁421a(
図8において斜線で示される領域)を有する。
図9に示すように、ソケット36がブラケット42に固定されたとき、ソケット36の流入部361がブラケット42の開口部421に嵌合する。このとき、流入部361の支持部361aは、車両下方DWに位置する開口縁421aの部分に車両上方UPRから係合する。また、開口縁421aは、各々の規制部363の第1規制部363aおよび第2規制部363bにより挟まれた状態となる。
【0027】
図3の想像線に示すように、車両衝突時は、カーテンシールドエアバッグ41がルーフヘッドライニング21を車内側へ押し開きながら車両下方DWへ展開する。このとき本実施形態では、カーテンシールドエアバッグ41が天井排水管34に接触し、天井排水管34の第2端部342がソケット36の流入部361から引き抜かれて外れる構造となっている。こうした構造をとることによって、カーテンシールドエアバッグ41が天井排水管34に阻害されず円滑かつ確実に展開することが可能となっている。
【0028】
次に、本実施形態にかかる車両用空調装置の排水構造の作用効果について説明する。
【0029】
天井排水管34は、天井排水管34の第2端部342が流入部361に挿入されることによって、ソケット36に対し脱着可能に接続されている。ソケット36は、天井排水管34の第1端部341が接続される空調ユニット31の排水ポート316よりも車両下方DWに位置する。また、天井排水管34は、車体内装2(ルーフヘッドライニング21)とカーテンシールドエアバッグ41との間を通過し、かつ平面視において蛇行した状態で配置されている。このような構成をとると、天井排水管34の導水勾配が確保された状態となる。あわせて、平面視において天井排水管34をカーテンシールドエアバッグ41に対して直交するように配置した場合と比較して、天井排水管34にカーテンシールドエアバッグ41と並行する区間が生じる。このため、車両衝突時にカーテンシールドエアバッグ41が展開したとき、カーテンシールドエアバッグ41に接触する天井排水管34の区間が長くなり、第2端部342が流入部361から外れやすくなる。したがって、本発明によれば、常時に空調ユニット31から排出された凝縮水を適切に車外に排出し、かつ車両衝突時にカーテンシールドエアバッグ41を円滑かつ確実に展開することが可能となる。
【0030】
また、天井排水管34が接続される空調ユニット31の排水ポート316およびソケット36の流入部361の配置位置にそれぞれ誤差が生じていた場合であっても、蛇行配置された天井排水管34が当該誤差を吸収することができる。
【0031】
天井排水管34の第2端部342側の外周には、天井排水管34の径方向に延出するフランジ部343が形成されている。また、天井排水管34の第2端部342が接続されるソケット36は、天井排水管34の第2端部342が挿入される流入部361を有する。流入部361は、第2端部342を車両下方DWから支持する支持部361aと、支持部361aから車両下方DWに延出する下垂壁361bとを有する。この場合において、第2端部342を流入部361に挿入したとき、フランジ部343が支持部361aに接触する。このような構成をとると、ソケット36の内部に挿入される第2端部342の長さが一定量確保され、常時に第2端部342が流入部361から抜け落ちることを防ぐことができる。カーテンシールドエアバッグ41が展開するときは、天井排水管34にカーテンシールドエアバッグ41が接触して第2端部342が流入部361から引き抜かれて外れる。したがって、カーテンシールドエアバッグ41が天井排水管34に阻害されず円滑かつ確実に展開することが可能となる。
【0032】
また、流入部361の下垂壁361bには、天井排水管34から流入部361に流入した凝縮水が、車両操舵の際の向心力などにより逆流して車内に流出することを防ぐ効果がある。
【0033】
カーテンシールドエアバッグ41の展開方向を規制するブラケット42には、車幅方向に貫通する開口部421が形成されている。この場合において、ソケット36の流入部361が開口部421に嵌合するように、ソケット36がブラケット42に固定されている。このような構成をとると、カーテンシールドエアバッグ41はブラケット42に沿って展開するため、カーテンシールドエアバッグ41が天井排水管34の第2端部342に直接接触し、天井排水管34が流入部361から外れやすくなる。このため、カーテンシールドエアバッグ41が天井排水管34に阻害されず円滑かつ確実に展開することが可能となる。また、ソケット36の位置が車体1を基準に決定されるため、ソケット36に接続される天井排水管34および側部排水管35を適切に組み付けることができる。
【0034】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。