特許第6776512号(P6776512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776512
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20201019BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 991
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-137522(P2015-137522)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-21506(P2017-21506A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高江 康彦
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−078735(JP,A)
【文献】 特開2015−075889(JP,A)
【文献】 特開2008−120288(JP,A)
【文献】 特開2010−128733(JP,A)
【文献】 特開2014−180986(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/052865(WO,A1)
【文献】 特開2005−324727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、を備え、
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させ
前記制御手段は、前記車線変更準備制御を行った後に、前記ドライバーが車線変更を選択した場合、前記車両を前記車線変更可能なスペースに車線変更させることを特徴とする走行制御装置。
【請求項2】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択すると予測される所定の走行シーンを予め記憶する記憶手段と、を備え、
前記予測手段は、前記車両の走行シーンが前記所定の走行シーンである場合に、前記ドライバーが車線変更を選択すると予測し、
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させることを特徴とする走行制御装置。
【請求項3】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択すると予測される所定の走行シーンと、前記ドライバーが車線変更を選択すると予測される度合とを対応付けて記憶する記憶手段と、を備え、
前記予測手段は、前記車両の走行シーンが、前記度合が所定値以上である前記所定の走行シーンである場合に、前記ドライバーが車線変更を選択すると予測し、
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させることを特徴とする走行制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の走行制御装置であって、
前記記憶手段は、前記所定の走行シーンごとに、車線変更が困難となる地点に接近するタイミングとして、前記車線変更準備制御の終了タイミングを記憶しており、
前記制御手段は、前記終了タイミングまで、前記車線変更準備制御を実行することを特徴とする走行制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の走行制御装置であって、
前記記憶手段は、前記所定の走行シーンごとに、前記終了タイミングよりも走行シーンごとに定められた所定の時間前のタイミングとして、前記車線変更準備制御の開始タイミングを記憶しており、
前記制御手段は、前記開始タイミングから、前記車線変更準備制御を開始することを特徴とする走行制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の走行制御装置であって、
前記制御手段は、前記所定の走行シーンにおいて、前記ドライバーが車線変更を選択した回数が多いほど、前記開始タイミングを早いタイミングに補正し、前記ドライバーが車線変更を選択した回数が少ないほど、前記開始タイミングを遅いタイミングに補正することを特徴とする走行制御装置。
【請求項7】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記車線変更準備制御において、前記スペースが検出されていない場合に、
前記車両の前方に先行車両が存在する場合には、前記車両の車速を減速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ、
前記車両の後方に後続車両が存在する場合には、前記車両の車速を加速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させることを特徴とする走行制御装置。
【請求項8】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記車線変更準備制御において前記スペースが検出されていない場合であり、かつ、前記ドライバーが予め設定した所定の車間距離を空けて先行車両に追従する追従走行を行っている場合に、
前記所定の車間距離が所定の第1距離以上に設定されている場合には、前記車両の車速を加速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ、
前記所定の車間距離が前記第1距離よりも短い第2距離未満に設定されている場合には、前記車両の車速を減速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させることを特徴とする走行制御装置。
【請求項9】
車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段による検出結果に基づいて、前記車両が車線変更可能なスペースを検出するスペース検出手段と、
前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記車両の走行シーンを判断する判断手段と、
前記走行シーンに基づいて、前記車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する予測手段と、
前記ドライバーが車線変更を選択する前に、前記予測手段により前記ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合、車線変更準備制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記車線変更準備制御において、前記スペースが検出されていない場合に、
前記スペースの候補領域の前半部に他車両が存在する場合には、前記車両の車速を減速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ、
前記スペースの候補領域の後半部に他車両が存在する場合には、前記車両の車速を加速させる制御を行いながら、前記スペース検出手段に前記スペースを検出させ、
前記車線変更準備制御は、前記スペース検出手段が前記車線変更可能なスペースを検出できた場合には、前記車両の現在の車速を維持して、前記車両を走行させることを特徴とする走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行する車線に隣接する隣接車線に車線変更可能なスペースが存在する場合に、車両の車線変更を行う技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/082353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ドライバーが車線変更を希望する場合でも、隣接車線に車線変更可能なスペースがない場合には車線変更を行うことができず、ドライバーに不安感を与えてしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ドライバーが車線変更を希望する場合に、車線変更が適切に行われるように、車両の走行を制御する走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の走行シーンに基づいて、ドライバーが車線変更を選択するか否かを予測し、ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合には、ドライバーが車線変更を選択する前に、車両が車線変更可能なスペースが検出された状態で走行するための車両の車速を算出し、当該車速で車両の走行を制御することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ドライバーが車線変更を選択すると予測された走行シーンである場合に、ドライバーが車線変更を希望する前に、車両が車線変更可能なスペースが検出された状態で車両を走行させることができるため、ドライバーが車線変更を実際に選択した場合に、直ぐに車線変更を行うことができ、車線変更を行えないことによる、ドライバーの不安感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る走行制御装置の構成を示す構成図である。
図2】走行シーンの判定に用いられるテーブルの一例を示す図である。
図3】候補領域および車線変更スペースを説明するための図である。
図4】本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャート(その1)である。
図5】本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャート(その2)である。
図6】車線変更スペースの検出を開始する際に提示装置に提示される画面の一例を示す図である。
図7】先行車両または後続車両が存在する場合の車速の調整方法を説明するための図である。
図8】制限車速に基づく車速の調整方法を説明するための図である。
図9】車間設定に基づく車速の調整方法を説明するための図である。
図10】目標車線を走行する他車両の走行位置に基づく車速の調整方法を説明するための図である。
図11】車線変更スペースを検出した場合に提示装置に提示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される走行制御装置を例示して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る走行制御装置100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行制御装置100は、センサ110と、自車位置検出装置120と、地図データベース130と、車載機器140と、提示装置150と、入力装置160と、通信装置170と、駆動制御装置180と、制御装置190とを有している。これら装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
【0011】
センサ110は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ110として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ110として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ110の検出結果は、制御装置190に出力される。
【0012】
自車位置検出装置120は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されており、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置120により検出された対象車両の位置情報は、制御装置190に出力される。
【0013】
地図データベース130は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む地図情報を記憶している。具体的には、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報が、地図情報とともに記憶されている。地図データベースに格納された地図情報は、制御装置190により参照可能となっている。
【0014】
車載機器140は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーにより操作されることで動作する。このような車載機器としては、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、オーディオ装置、エアーコンディショナー、ハンズフリースイッチ、パワーウィンドウ、ワイパー、ライト、方向指示器、クラクションなどが挙げられる。車載機器140がドライバーにより操作された場合に、その情報が制御装置190に出力される。
【0015】
提示装置150は、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、あるいは、オーディオ装置が備えるスピーカーなどの装置である。提示装置150は、制御装置190の制御に従って、後述する提示情報をドライバーに提示する。
【0016】
入力装置160は、たとえば、ドライバーの手操作による入力が可能なダイヤルスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、あるいは、ドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置160を操作することで、提示装置150により提示された提示情報に対する応答情報を入力することができる。なお、入力装置160により入力された応答情報は、制御装置190に出力される。
【0017】
通信装置170は、車両外部の通信機器と通信を行う。たとえば、通信装置170は、他車両との間で車々間通信を行い、路肩に設置された機器との間で路車間通信を行い、あるいは、車両外部に設置された情報サーバとの間で無線通信を行うことで、各種情報を外部機器から取得することができる。なお、通信装置により取得された情報は、制御装置190に出力される。
【0018】
駆動制御装置180は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置180は、自車両が先行車両に追従する場合には、自車両と先行車両との車間距離が一定距離となるように、加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては電動モータ動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と電動モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、自車両が先行車両の追い越しなどの車線変更を行う場合には、ステアリングアクチュエータの動作を制御して、車輪の動作を制御することで、自車両の転回制御を実行する。なお、駆動制御装置180は、後述する制御装置190の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置180による走行制御方法として、その他の周知の方法を用いることもできる。
【0019】
制御装置190は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0020】
制御装置190は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、判定した走行シーンに基づいて、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するか否かを予測する車線変更予測機能と、車線変更可能な車線変更スペースを検出するスペース検出機能と、車線変更スペースが検出された状態で走行するように、自車両の走行を制御する走行制御機能とを実現する。以下において、制御装置190が備える各機能について説明する。
【0021】
制御装置190の走行情報取得機能は、自車両の走行シーンを判定するために、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する。たとえば、走行情報取得機能は、前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得することができる。また、走行情報取得機能は、車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得することができる。
【0022】
さらに、走行情報取得機能は、自車両の現在位置の情報を走行情報として自車位置検出装置120から取得することができ、また、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報を走行情報として地図データベース130から取得することができる。加えて、走行情報取得機能は、ドライバーによる車載機器140の操作情報を走行情報として車載機器140から取得することもできる。
【0023】
制御装置190の走行シーン判定機能は、制御装置190のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する。図2は、走行シーンの判定に用いられるテーブルの一例を示す図である。図2に示すように、テーブルには、ドライバーが車線変更を行う可能性が高い走行シーンと、その判定条件とが、走行シーンごとに記憶されている。走行シーン判定機能は、図2に示すテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、ドライバーが車線変更を行う可能性が高い走行シーンであるか否かを判定する。
【0024】
たとえば、図2に示す例では、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の車速」、かつ「先行車両への到達が所定時間以内」の3つの条件が設定されている。この場合、走行シーン判定機能は、たとえば、前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断し、上記条件を満たす場合に、自車両の走行シーンは「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。同様に、走行シーン判定機能は、シーン判定テーブルに登録された全ての走行シーンについて判定条件を満たすか否かを判定する。なお、図2に示すテーブルのうち、終了タイミング、開始タイミング、お勧め度、および車線変更の方向については後述する。
【0025】
制御装置190の車線変更予測機能は、走行シーン判定機能により判定された走行シーンに基づいて、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するか否かを予測する。具体的には、車線変更予測機能は、走行シーン判定機能により、自車両の走行シーンが、図2に示すいずれかの走行シーン(すなわち、車線変更の可能性が高い走行シーン)であると判定された場合には、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するものと予測する。
【0026】
ただし、車線変更予測機能は、自車両が車線変更を行えない車線変更禁止条件を満たす場合には、走行シーンに関係なく、ドライバーは車線変更を選択しないと予測する。車線変更禁止条件としては、たとえば、「車線変更禁止区域を走行している」、「車線変更方向に障害物が存在する」、「センターライン(道路中央線)を跨ぐごととなる」、および「路肩や道路端を跨ぐこととなる」などが挙げられる。なお、車線変更予測機能は、「緊急退避シーン」においては、「路肩や道路端を跨ぐこととなる」との条件を許容する構成とすることができる。
【0027】
また、車線変更予測機能は、自車両の走行シーンが、「合流地点に近づくシーン」、「SA/PAに向かうシーン」などの所定の走行シーンである場合には、場所ごとに、ドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する構成とすることもできる。たとえば、同じ「SA/PAに向かうシーン」であっても、ドライバーの走行履歴に基づいて、SA/PAの利用頻度を判断し、ドライバーが利用する頻度が所定値以上のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択すると予測し、ドライバーが利用する頻度が所定値未満のSA/PAの付近ではドライバーは車線変更を選択しないと予測することができる。
【0028】
制御装置190のスペース検出機能は、車線変更予測機能によりドライバーが車線変更を選択すると予測された場合に、車線変更に必要なスペースを、車線変更スペースとして検出する。本実施形態では、制御装置190のメモリに、自車両が目標車線(車線変更により移動しようとする車線)に車線変更を行う場合に必要な車線変更スペースの大きさや、車線変更前の自車両の位置に対する車線変更スペースの相対位置の情報が予め記憶されている。また、図2に示すテーブルには、「車線変更の方向」が、走行シーンごとに記憶されている。たとえば、図2に示す例では、「先行車両への追いつきシーン」である場合に、追い越し車線側(追い越し車両の走行が推奨される車線側)が、「車線変更の方向」として記憶されている。
【0029】
スペース検出機能は、車線変更スペースの情報と、車線変更の方向の情報とに基づいて、図3(A),(B)に示すように、車線変更を行うために必要な車線変更スペースの候補領域を設定する。たとえば、図3(A),(B)に示す例では、自車両の走行シーンが「目的地への車線乗換シーン」であり、目的地が右側車線の延長上にあるため、車線変更の方向は右側車線側となる。この場合、スペース検出機能は、図3(A),(B)に示すように、右側車線を目標車線として設定し、目標車線(右側車線)上に、車線変更スペースの候補領域を設定する。そして、スペース検出機能は、センサ110を構成する前方カメラ、後方カメラ、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果や、通信装置170の車車間通信により取得した他車両の位置情報などに基づいて、目標車線上に設定した候補領域に障害物が存在するか否かを判断する。図3(A)に示すように、目標車線上の候補領域に障害物が存在しない場合、スペース検出機能は、候補領域を車線変更スペースとして設定する。一方、図3(B)に示すように、目標車線上に設定した候補領域に障害物が存在する場合、スペース検出機能は、後述するように、走行制御機能により車速を調整しながら、車線変更スペースの検出を継続する。なお、図3は、候補領域および車線変更スペースの検出方法を説明するための図である。
【0030】
制御装置190の走行制御機能は、自車両の走行を制御する。たとえば、走行制御機能は、先行車両と一定の車間距離を空けて、先行車両に自動で追従する追従走行を行う場合には、自車両と先行車両とが一定の車間距離で走行するように、駆動制御装置180に、駆動機構の動作などを制御させる。また、走行制御機能は、自車両が車線変更を行う場合には、駆動制御装置180に、ステアリングアクチュエータの動作を制御させる。
【0031】
また、本実施形態において、走行制御機能は、車線変更予測機能によりドライバーが車線変更を選択すると予測された場合には、スペース検出機能により車線変更スペースが検出できるように、また、車線変更スペースが検出された状態で自車両が走行できるように、自車両の走行を制御する車線変更準備制御を行う。なお、車線変更準備制御の詳細については後述する。
【0032】
続いて、図4図5を参照して、本実施形態に係る走行制御処理について説明する。図4図5は、本実施形態に係る走行制御処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する走行制御処理は、制御装置190により実行される。
【0033】
まず、ステップS101では、走行情報取得機能により、自車両の走行状態に関する走行情報の取得が行われる。また、ステップS102では、走行シーン判定機能により、ステップS101で取得された走行情報に基づいて、自車両の走行シーンの判定が行われる。
【0034】
ステップS103では、車線変更予測機能により、ステップS102で判定された走行シーンに基づいて、ドライバーが近い将来、車線変更を選択するか否かの予測が行われる。たとえば、車線変更予測機能は、まず、「車線変更禁止区域を走行している」、「車線変更方向に障害物が存在する」などの車線変更禁止条件を満たすか否かを判断する。そして、車線変更予測機能は、自車両が車線変更禁止条件を満たしておらず、かつ、ステップS102において、自車両の走行シーンが、図2に示すいずれかの走行シーン(車線変更の可能性の高い走行シーン)であると判定された場合には、ドライバーが車線変更を選択すると予測することができる。ドライバーが車線変更を選択すると予測されなかった場合には、ステップS101に戻り、再度、自車両の走行シーンの判定と、ドライバーが車線変更を選択するか否かの判定が行われる。一方、ドライバーが車線変更を選択すると予測された場合には、ステップS104に進む。
【0035】
ステップS104以降の処理では、ドライバーが車線変更を選択した場合に、直ぐに車線変更を行えるように、自車両の走行を制御する車線変更準備制御が行われる。
【0036】
まず、ステップS104では、走行制御機能により、車線変更準備制御を終了する終了タイミングの設定が行われる。本実施形態では、図2に示すように、各走行シーンにおいて車線変更が困難となる地点に接近するタイミングが、終了タイミングとして記憶されている。走行制御機能は、図2に示すテーブルを参照し、自車両の走行シーンにおける終了タイミング(Z)を、車線変更準備制御の終了タイミングとして設定する。たとえば、図2に示す例のうち、「先行車両への追いつきシーン」においては、終了タイミングが、先行車両までの到達時間−α秒として記憶されている。この場合、走行制御機能は、先行車両までの到達時間(TTC)を算出し、算出した先行車両までの到達時間(TTC)−α秒後のタイミングを、車線変更準備制御の終了タイミング(Z)として設定する。なお、αは所定の秒数(たとえば5秒など)であり、走行シーンごとに適宜設定することもできる。たとえば、先行車両までの到達時間(TTC)が30秒であり、αが5秒である場合には、車線変更準備制御の終了タイミング(Z)は、25秒後となる。
【0037】
ステップS105では、走行制御機能により、車線変更準備制御を開始する開始タイミングの設定が行われる。本実施形態では、図2に示すように、車線変更準備制御を開始する開始タイミングが、走行シーンごとにテーブルに記憶されている。走行制御機能は、テーブルを参照し、自車両の走行シーンにおける開始タイミング(デフォルト値)を、車線変更準備制御の開始タイミングとして設定する。たとえば、図2に示す例において、自車両の走行シーンが「先行車両への追いつきシーン」であると判定された場合に、走行制御機能は、終了タイミング(Z)−10秒を、開始タイミングとして算出することができる。たとえば、終了タイミング(Z)が25秒である場合には、走行制御機能は、15秒を開始タイミングとして設定する。この場合、車線変更準備制御の開始タイミングは、15秒後となる。
【0038】
ステップS106では、走行制御機能により、ステップS105で設定された開始タイミングの補正が行われる。本実施形態では、図2に示すように、各走行シーンにおける車線変更のお勧め度Rが、テーブルに記憶されている。このお勧め度Rは、各走行シーンにおいて、自車両が車線変更を選択した回数が多いほど高くなり、一方、自車両が車線変更を選択した回数が少ないほど低くなる。走行制御機能は、自車両の走行シーンにおける車線変更のお勧め度Rが高いほど、開始タイミングを早いタイミングに補正し、一方、お勧め度Rが低いほど、開始タイミングを遅いタイミングに補正する。
【0039】
図5に進み、ステップS107では、走行制御機能により、ステップS106で修正した開始タイミングになったか否かの判断が行われる。開始タイミングになっていない場合には、ステップS107で待機し、開始タイミングになった場合には、ステップS108に進む。
【0040】
ステップS108では、スペース検出機能により、車線変更スペースの検出が行われる。スペース検出機能は、まず、図6に示すように、車線変更スペースの検出を開始することを示す情報を、提示装置150を介してドライバーに提示する。この際、スペース検出機能は、図6に示すように、車線変更スペースの検出を中止するための操作を併せてドライバーに提示することができる。なお、図6は、車線変更スペースの検出を開始する際に提示装置150に提示される画面の一例を示す図である。
【0041】
そして、スペース検出機能は、車線変更スペースを設定する予定の位置に、車線変更スペースの大きさの候補領域を設定し、当該候補領域に障害物が存在するか否かを検知する。図3(A)に示すように、候補領域に障害物が存在しない場合には、候補領域を車線変更スペースとして検出し、一方、図3(B)に示すように、候補領域に障害物が存在する場合には、車線変更スペースがないとの検出結果を出力する。
【0042】
ステップS109では、走行制御機能により、ステップS108において車線変更スペースを検出できたか否かの判断が行われる。車線変更スペースを検出できた場合には、ステップS111に進み、車線変更スペースを検出できない場合には、ステップS110に進む。
【0043】
ステップS110では、走行制御機能により、車線変更スペースを検出するための車速の調整が行われる。以下に、図7図9に基づいて、車線変更スペースを検出するための車速の調整方法について説明する。
【0044】
たとえば、走行制御機能は、図7(A)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両の前方に自車線を走行する先行車両が存在する場合には、自車両の車速を減速させる制御を行う。これにより、走行制御機能は、候補領域に存在する他車両を候補領域よりも前方に行かせて、候補領域から他車両を排除することができるため、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。なお、走行制御機能は、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両の前方に先行車両が存在しない場合には、自車両の車速を加速させる制御を行う構成としてもよい。この場合、候補領域に存在する他車両を候補領域よりも後方に行かせて、候補領域から他車両を排除することができるため、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0045】
また、走行制御機能は、図7(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両の後方に自車線を走行する後続車両が存在する場合には、自車両の車速を加速させる制御を行う。この場合も、候補領域に存在する他車両を候補領域の後方に行かせて、候補領域から他車両を排除することができるため、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。また、走行制御機能は、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両の後方に後続車両が存在しない場合には、自車両の車速を減速させる制御を行う構成としてもよい。
【0046】
さらに、自車両の車速が時速75km/hであり、道路の制限速度が時速80km/hである場合、自車両が加速することができる速度は時速5km/hとなる。この場合、自車両を加速させるよりも、減速させることで、候補領域に他車両が存在する場合でも、他車両を候補領域よりも前方に行かせ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。そこで、走行制御機能は、図8に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、制限速度と自車両の走行速度との差が所定速度(たとえば10km/h)以下である場合には、自車両の車速を減速させる制御を行う。
【0047】
加えて、走行制御機能は、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両が先行車両と一定の車間距離を空けて自動で追従する追従走行を行っている場合には、予め設定した先行車両との車間距離に基づいて、自車両の車速を加速または減速させる制御を行う。たとえば、本実施形態では、追従走行を行う場合に、自車両と先行車両との車間距離を、「長い」、「中程度」、「短い」の三段階で設定できるものとする。なお、「長い」は、所定の第1距離以上の距離であり、「中程度」は、第1距離と所定の第2距離との間の距離であり、「短い」は、第2距離未満の距離であるとする。この場合、図9(A)に示すように、自車両と先行車両との車間距離が「長い」に設定されている場合には、自車両が加速できるスペースが十分にあるため、走行制御機能は、自車両の車速を加速させる制御を行う。これにより、候補領域に存在する他車両を候補領域の後方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。また、図9(B)に示すように、自車両と先行車両との車間距離が「短い」に設定されている場合には、自車両が加速するスペースが十分にないため、走行制御機能は、自車両の車速を減速させる制御を行う。これにより、候補領域に存在する他車両を候補領域の前方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0048】
また、走行制御機能は、図9(A)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両と先行車両との車間距離が「長い」に設定されている場合には、一時的に、自車両と先行車両との車間距離を「短い」に自動で設定することで、自車両を加速させ、車線変更スペースを検出させる構成としてもよい。同様に、走行制御機能は、図9(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両と先行車両との車間距離が「短い」に設定されている場合には、一時的に、自車両と先行車両との車間距離を「長い」に自動で設定することで、自車両を減速させ、車線変更スペースを検出させる構成としてもよい。
【0049】
さらに、走行制御機能は、図10(A)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、他車両が候補領域の前半部に存在する場合には、自車両の車速を減速させる制御を行う。この場合、自車両を加速させるよりも自車両を減速させる方が、候補領域を車線変更スペースとして検出することが容易なためである。同様に、走行制御機能は、図10(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、他車両が候補領域の後半部に存在する場合には、自車両の車速を加速させる制御を行う。この場合は、自車両を減速させるよりも自車両を加速させる方が、候補領域を車線変更スペースとして検出することが容易なためである。
【0050】
さらに、図示していないが、走行制御機能は、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、自車両がカーブを走行している場合には、自車両の車速を減速させる制御を行う。この場合、カーブで加速することによる違和感を、ドライバーに与えることなく、車線変更スペースを検出することができる。
【0051】
ステップS110において自車両の車速の調整が行われた後は、ステップS109に戻り、再度、車線変更スペースの検出が行われる。そして、車線変更スペースが検出されると、ステップS111に進む。
【0052】
ステップS111では、走行制御機能により、車線変更スペースが検出された状態が維持されるように、自車両の走行の制御が行われる。たとえば、走行制御機能は、目標車線に他車両が存在しない場合には、現在の車速を維持して、自車両を走行させる。これにより、車線変更スペースが検出された状態で、自車両を走行させることができる。また、走行制御機能は、目標車線に他車両が存在する場合でも、現在の車速を維持することで、車線変更スペースが確保できる場合には、現在の車速を維持することで、車線変更スペースが検出された状態で、自車両を走行させることができる。さらに、走行制御機能は、ステップS110で加速または減速を行った場合に、自車両の車速を加速または減速前の速度に戻した場合でも、車線変更スペースを確保できる場合には、自車両の車速を加速または減速前の速度に変更することで、車線変更スペースを検出された状態で、自車両を走行させることができる。
【0053】
ステップS112では、走行制御機能により、図11に示すように、車線変更が可能である旨の情報が、提示装置150を介してドライバーに提示される。また、走行制御機能は、図11に示すように、ドライバーが車線変更の実行を指示するための操作情報を併せて提示することができる。
【0054】
そして、ステップS113では、走行制御機能により、ステップS112で提示した情報に対して、ドライバーが車線変更の意思を表示したか否かの判断が行われる。たとえば、ドライバーが図11に示す「車線変更の実行」ボタンを押下した場合に、走行制御機能は、ドライバーが車線変更の意思を表示したと判断することができる。また、ドライバーが方向指示器を操作した場合にも、走行制御機能は、ドライバーが車線変更の意思を表示したと判断することができる。ドライバーが車線変更の意思を表示した場合には、ステップS114に進み、一方、ドライバーが車線変更の意思を表示していない場合には、ステップS117に進む。
【0055】
ステップS114では、走行制御機能により、車線変更が行われる。具体的には、走行制御機能は、図2に示すテーブルを参照し、自車両の走行シーンにおける「車線変更の方向」に車線変更を行うように、駆動制御装置180に指示を出力する。これにより、各走行シーンで推奨される車線の方向に車線変更が行われる。そして、続くステップS115では、走行制御機能により、車線変更準備制御の終了処理が行われる。
【0056】
そして、ステップS116では、走行制御機能により、今回の走行シーンにおける車線変更のお勧め度Rを高くする処理が行われる。本実施形態では、図2に示すテーブルに走行シーンごとのお勧め度Rが記憶されており、走行制御機能は、このお勧め度Rを一定の値(たとえば1ポイント)だけ高い値に更新する。そして、処理はステップS101に戻る。これにより、次回以降のステップS106において、今回と同じ走行シーンである場合には、今回更新されたお勧め度Rに基づいて、開始タイミングがより早いタイミングに補正され、その結果、車線変更準備制御がより早いタイミングで開始されることとなる。
【0057】
一方、ステップS113で車線変更の意思表示がないと判断された場合には、ステップS117に進む。ステップS117では、走行制御機能により、ステップS104で設定された車線変更準備制御の終了タイミングとなったか否かの判断が行われる。終了タイミングとなっていない場合には、ステップS113に戻り、車線変更の意思が表示されるまで、あるいは、終了タイミングとなるまで、ステップS113,S117を繰り返す。そして、車線変更の意思が表示されることなく、終了タイミングとなると、ステップS118に進み、ステップS115と同様に、車線変更準備制御の終了処理が行われる。
【0058】
また、ステップS119では、走行制御機能により、今回の走行シーンにおける車線変更のお勧め度Rを低くする処理が行われる。具体的には、走行制御機能は、図2に示すテーブルに記憶されたお勧め度Rを一定の値(たとえば1ポイント)だけ低い値に更新する。そして、処理はステップS101に戻る。これにより、次回以降のステップS106において、今回と同じ走行シーンである場合には、更新されたお勧め度Rに基づいて、開始タイミングがより遅いタイミングに補正され、車線変更準備制御がより遅いタイミングで開始されることとなる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る走行制御装置100は、自車両の走行シーンを判定し、判定した走行シーンに基づいて、自車両のドライバーが車線変更を選択するか否かを予測する。そして、自車両のドライバーが車線変更を選択すると予測された場合に、自車両が車線変更する目標車線に、自車両が車線変更可能な車線変更スペースを検出し、ドライバーが車線変更を選択する前に、自車両が車線変更スペースを検出した状態で走行を維持するための車速を算出し、当該車速で自車両を走行させる。このように、本実施形態では、ドライバーが車線変更を実際に選択する前に、車線変更が可能な車線変更可能スペースが確保されるため、車線変更が実際に必要となった場合に、ドライバーの指示により直ぐに車線変更を行うことができる。その結果、ドライバーが車線変更を希望するタイミングで、車線変更を行うことができるため、車線変更を行えないことによるドライバーの不安感を軽減することができる。
【0060】
また、本実施形態において、ドライバーが車線変更を選択すると予測される所定の走行シーンをテーブルに予め記憶しており、当該テーブルを参照することで、自車両の走行シーンが、自車両のドライバーが車線変更を選択すると予測される所定の走行シーンであるかを判定する。そして、自車両の走行シーンがテーブルに記憶されている走行シーンである場合に、ドライバーが車線変更を選択すると予測する。これにより、本実施形態では、ドライバーが車線変更を選択する走行シーンであるか否かを、容易、かつ、高い精度で判定することができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、図2に示すテーブルに、車線変更準備制御の開始タイミングおよび終了タイミングが走行シーンごとに記憶されており、この開始タイミングから終了タイミングまでの間、車線変更準備制御が実行される。これにより、各走行シーンに応じたタイミングで車線変更準備制御を行うことができ、また、走行シーンに応じた(車線変更の必要性に応じた)時間だけ、車線変更準備制御を行うことができる。
【0062】
加えて、本実施形態では、自車両の走行シーンにおいて、ドライバーが車線変更を選択した回数が多いほど、車線変更準備制御の開始タイミングを早いタイミングに補正し、一方、ドライバーが車線変更を選択した回数が少ないほど、車線変更準備制御の開始タイミングを遅いタイミングに補正する。これにより、車線変更の実行を提示するタイミングをドライバーの好みに応じたタイミングとすることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、図7(A)に示すように、自車両の前方に先行車両が存在する場合には、自車両の車速を減速させる制御を行いながら、車線変更スペースを検出し、図7(B)に示すように、自車両の後方に後続車両が存在する場合には、自車両の車速を加速させる制御を行いながら、車線変更スペースを検出する。これにより、本実施形態では、図7(A),(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合でも、自車両の車速を調整することで、他車両を候補領域よりも前方または後方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0064】
さらに、本実施形態においては、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、図8に示すように、道路の制限速度と自車両の走行速度との差が所定速度以下である場合には、自車両の車速を減速させる制御を行いながら、車線変更スペースを検出する。これにより、図8に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合でも、自車両の車速を調整することで、他車両を候補領域よりも前方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0065】
さらに、本実施形態においては、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合であり、ドライバーが予め設定した一定の車間距離を空けて先行車両に自動で追従する追従走行を行っている場合において、図9(B)に示すように、先行車両との車間距離が「短い」に設定されている場合には、自車両の車速を減速させる制御を行ながら、車線変更スペースを検出し、一方、図9(A)に示すように、先行車両との車間距離が「長い」に設定されている場合には、自車両の車速を加速させる制御を行いながら、車線変更スペースを検出する。これにより、図9(A),(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合でも、自車両の車速を調整することで、他車両を候補領域よりも前方または後方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合において、図10(B)に示すように、候補領域の前半部に他車両が存在する場合には、車両の車速を減速させる制御を行ながら、車線変更スペースを検出し、一方、図10(B)に示すように、候補領域の後半部に他車両が存在する場合には、自車両の車速を加速させる制御を行いながら、車線変更スペースを検出する。これにより、本実施形態では、図10(A),(B)に示すように、候補領域に他車両が存在し、車線変更スペースを検出できない場合でも、自車両の車速を調整することで、他車両を候補領域よりも前方または後方に行かせることができ、候補領域を車線変更スペースとして検出することができる。
【0067】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0068】
たとえば、上述した実施形態では、ドライバーが車線変更を選択すると予測される走行シーンを予め記憶しておき、自車両の走行シーンが、自車両のドライバーが車線変更を選択すると予測される所定の走行シーンである場合に、ドライバーが車線変更を選択すると予測する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、ドライバーが車線変更を選択すると予測される走行シーンと、ドライバーが車線変更を選択すると予測される度合とを対応付けて記憶しておき、自車両の走行シーンが、当該度合が所定値以上である所定の走行シーンである場合に、自車両のドライバーが車線変更を選択すると予測する構成とすることができる。この場合、ドライバーが実際に車線変更を行った回数や頻度に基づいて、ドライバーが車線変更を選択すると予測される度合を走行シーンごとに更新することで、各走行シーンにおいてドライバーが車線変更を選択するか否かをより適切に予測することができる。
【0069】
なお、上述した実施形態に係る制御装置190のスペース検出機能は本発明の障害物検出手段およびスペース検出手段に、制御装置190の走行状態取得機能は本発明の走行状態検出手段に、制御装置190の走行シーン判定機能は判断手段に、制御装置190の車線変更予測機能は本発明の予測手段に、制御装置190の走行制御機能は本発明の制御手段に、制御装置190は本発明の記憶手段に、それぞれ相当する。
【符号の説明】
【0070】
100…走行制御装置
110…センサ
120…自車位置検出装置
130…地図データベース
140…車載機器
150…提示装置
160…入力装置
170…通信装置
180…駆動制御装置
190…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11