(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択装置は、前記第2モータの動力を前記切換装置に伝達している状態で、前記第2モータの動力を、前記切換装置以外の装置に伝達しないように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
前記第1モータから前記搬送装置への動力伝達が可能な状態を維持しつつ、前記第1モータから前記吸引ポンプへの動力伝達を可能とするか否かを切り換える第1伝達切換部と、
前記第2モータからの動力伝達が可能に構成された、被吐出媒体を前記搬送装置へ供給するための供給ローラと、
前記第2モータから、前記供給ローラ、及び、前記選択装置への動力伝達を可能とするか否かを切り換える第2伝達切換部と、をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
待機状態において、前記ノズルキャップが前記液体吐出面に接触し、前記切換装置が前記ノズルキャップと前記吸引ポンプとを連通させ、前記吸引ポンプが大気連通された状態となっており、
前記制御装置は、
前記第2モータを回転させることで、前記キャップ移動装置に前記ノズルキャップを前記液体吐出面に接触させ、前記切換装置に前記ノズルキャップと前記吸引ポンプとを連通させ、前記第1モータを前記第2方向に回転させることで、前記吸引ポンプを大気連通させる、ことによって前記待機状態にさせ、
前記待機状態から、前記第1モータを前記第1方向に回転させて、前記吸引ポンプに吸引を行わせることによって、前記液体吐出ヘッドから排出された液体を前記切換装置内に流れ込ませて、前記切換装置内で固化した液体による前記切換装置の固着を解消させるクリーニングを行わせ、
前記クリーニングにおいて、前記吸引ポンプによる吸引中に、前記第2モータを回転させることで、前記切換装置を駆動させることを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
前記変換部は、前記第2モータからの動力伝達が可能に構成され、前記第2モータからの動力伝達が可能な状態で前記第2モータが回転したときに回転し、回転の中心からずれた部分に前記スライド部材が接続された回転部材を有していることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0010】
(プリンタの全体構成)
図1、
図2に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、印刷部2、下段カセット給紙部3、上段カセット給紙部4、トレイ給紙部5、用紙反転部6、メンテナンスユニット7等を備えている。
【0011】
(印刷部)
印刷部2は、キャリッジ11、インクジェットヘッド12(本発明の「液体吐出ヘッド」)、搬送ローラ13、14(本発明の「搬送装置」)、プラテン15などを備えている。キャリッジ11は、走査方向に延びた2本のガイドレール16に、走査方向に移動自在に支持されている。キャリッジ11は、図示しないベルトやプーリを介して、キャリッジモータ156(
図3参照)に接続され、キャリッジモータ156に駆動されることで、走査方向に往復移動する。なお、以下では、
図2に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
【0012】
インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載され、その下面であるインク吐出面12aに形成された複数のノズル17からインクを吐出する。複数のノズル17は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列18を形成している。インクジェットヘッド12には、4つのノズル列18が走査方向に並んで配置されている。複数のノズル17からは、走査方向の右側のノズル列18を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの顔料インクが吐出される。
【0013】
搬送ローラ13は、走査方向と直交する搬送方向におけるキャリッジ11よりも上流側に配置されている。搬送ローラ13は、駆動ローラ13aと、駆動ローラ13aの上側に配置された従動ローラ13bとによって構成される。駆動ローラ13aは、後述するようにPFモータ101(
図9参照、本発明の「第1モータ」)に接続されている。PFモータ101を逆転(CCW)(本発明の「第1方向に回転」)させると、PFモータ101から駆動ローラ13aに動力が伝達され、駆動ローラ13aが
図1の時計回り方向に回転する。これにより、記録用紙Pを、駆動ローラ13aと従動ローラ13bとに挟んだ状態で、搬送方向に搬送させることができる。一方、PFモータ101を正転(CW)(本発明の「第2方向に回転」)させると、駆動ローラ13aが
図1の反時計回り方向に回転する。
【0014】
搬送ローラ14は、搬送方向におけるキャリッジ11よりも下流側に配置されている。搬送ローラ14は、駆動ローラ14aと、駆動ローラ14aの上側に配置された従動ローラ14bとによって構成される。駆動ローラ14aは、図示しない複数のギアを介して駆動ローラ13aと接続されている。これにより、PFモータ101から駆動ローラ13aに動力が伝達されると、駆動ローラ14aにも駆動力が伝達され、駆動ローラ14aが回転する。また、このときの駆動ローラ13aと14aの回転の方向は同じとなる。これにより、PFモータ101を逆転(CCW)させると、記録用紙Pを、駆動ローラ14aと従動ローラ14bとに挟んだ状態で、搬送方向に搬送させることができる
【0015】
プラテン15は、搬送方向における搬送ローラ13と搬送ローラ14との間に、インク吐出面12aと対向するように配置されている。プラテン15は、搬送ローラ13、14に搬送される記録用紙Pを下側から支持する。
【0016】
(下段カセット給紙部)
下段カセット給紙部3は、プラテン15の下方に配置されている。下段カセット給紙部3は、用紙カセット21と、給紙ローラ22(本発明の「供給ローラ」)とを備えている。用紙カセット21には、上下に重ねられた複数の記録用紙Pが収容されている。給紙ローラ22は、後述するように、下段給紙ギア131(
図9参照)を含む複数のギア(下段給紙ギア131以外は図示省略)を介して、ASFモータ102(
図10参照、本発明の「第2モータ」)と接続可能に構成されている。そして、給紙ローラ22がASFモータ102と接続された状態で、ASFモータ102を正転(CW)させると、ASFモータ102から給紙ローラ22に動力が伝達され、給紙ローラ22が、
図1の時計回り方向に回転する。これにより、用紙カセット21に収容された記録用紙Pが、搬送方向の上流側に向けて搬送される。用紙カセット21の搬送方向における上流側には、搬送方向の下流側から送られてきた記録用紙Pを、搬送ローラ13の搬送方向における上流側の位置まで案内するための供給経路10が設けられている。給紙ローラ22により搬送された記録用紙Pは、
図1に矢印A1で示すように、供給経路10に沿って、搬送ローラ13の搬送方向における上流側まで搬送されることで、印刷部2に供給される。
【0017】
(上段カセット給紙部)
上段カセット給紙部4は、プラテン15と下段カセット給紙部3との間に配置されている。上段カセット給紙部4は、用紙カセット31と、給紙ローラ32(本発明の「供給ローラ」)とを備えている。用紙カセット31は、用紙カセット21とほぼ同様の構造のものであり、上下方向に重ねられた複数の記録用紙Pが収容されている。給紙ローラ32は、後述するように、上段給紙ギア132(
図9参照)を含む複数のギア(上段給紙ギア132以外は図示省略)を介して、ASFモータ102と接続可能に構成されている。そして、給紙ローラ32とASFモータ102とが接続された状態で、ASFモータ102を逆転(CCW)(本発明の「第3方向に回転」)させると、ASFモータ102から給紙ローラ32に動力が伝達され、給紙ローラ32を
図1の時計回り方向に回転し、用紙カセット31に収容された記録用紙Pが、
図1に矢印A2で示したように、供給経路10に向けて搬送方向の上流側に搬送され、印刷部2に供給される。
【0018】
(トレイ給紙部)
トレイ給紙部5は、搬送方向における搬送ローラ13よりも上流側に配置されている。トレイ給紙部5は、給紙トレイ41とストッパ42と給紙ローラ43(本発明の「供給ローラ」)とを備えている。給紙トレイ41の上面には、上下方向に重ねられた複数の記録用紙Pが配置されている。また、給紙トレイ41には、搬送方向における下流側の端部近傍の部分に、貫通孔41aが形成されている。ストッパ42は、搬送方向に沿って延びた部材である。ストッパ42の先端部(搬送方向の下流側の端部)は、給紙トレイの貫通孔41aと重なっている。また、ストッパ42の先端部には、上方に突出した突起42aが形成されている。また、ストッパ42の基端部(搬送方向の上流側の端部)は、ギア42bに取り付けられている。これにより、ギア42bが回転すると、ストッパ42がギア42bの軸を中心に揺動する。
【0019】
給紙ローラ43は、給紙トレイ41の上方に配置されている。また、給紙ローラ43は、搬送方向に沿って延びたアーム44の先端部(搬送方向における下流側の端部)に回転可能に支持されている。アーム44の基端部(搬送方向における上流側の端部)は、ギア44aに取り付けられている。これにより、ギア44aが回転すると、アーム44が、ギア44aの軸を中心に揺動する。
【0020】
また、ギア42b、給紙ローラ43及びギア44aは、トレイ給紙ギア133(
図9参照)を含む複数のギア(トレイ給紙ギア133以外は図示省略)によって、互いに接続されているとともに、ASFモータ102と接続可能に構成されている。そして、ギア42b、給紙ローラ43及びギア44aが、ASFモータ102と接続されている状態で、ASFモータ102を正転させると、ASFモータ102からギア42b、44a及び給紙ローラ43に動力が伝達され、ギア42b、44aが
図1の時計回り方向に回転し、給紙ローラ43が、
図1の反時計回り方向に回転する。一方、ASFモータ102を逆転させると、ASFモータ102からギア42b、44a及び給紙ローラ43に動力が伝達され、ギア42b、44aが
図1の反時計回り方向に回転し、給紙ローラ43は、
図1の時計回り方向に回転する。
【0021】
トレイ給紙部5では、印刷部2への記録用紙Pの供給を行わないときには、
図1に一点鎖線で示すように、ストッパ42は、突起42aが、貫通孔41aから上方に飛び出すような姿勢となっている。これにより、給紙トレイ41に収容された記録用紙Pの先端部が突起42aに接触し、トレイ給紙部5から印刷部2に向けた記録用紙Pの移動が規制される。また、アーム44は、給紙ローラ43が給紙トレイ41に収容された記録用紙Pから離れるような姿勢となっている。
【0022】
トレイ給紙部5から印刷部2へ記録用紙Pを供給する際には、ギア42b、給紙ローラ43及びギア44aが、ASFモータ102と接続されている状態で、ASFモータ102を正転させる。すると、ギア42bの回転により、ストッパ42が
図1の時計回り方向に揺動して、
図1に実線で示すように、突起42aの上端部が貫通孔41a内に収まる。これにより、突起42aによる、給紙トレイ41に収容された記録用紙Pの印刷部2に向けた移動の規制が解除される。また、ギア44aの回転によりアーム44が
図1の時計回り方向に揺動して、
図1に実線で示すように、給紙ローラ43が給紙トレイ41に収容された記録用紙Pに接触する。そして、この状態で、給紙ローラ43が
図1の反時計回り方向に回転することにより、
図1に矢印A3で示すように、給紙トレイ41に収容された記録用紙Pが、印刷部2に向けて搬送される。そして、トレイ給紙部5から印刷部2への記録用紙Pの供給が完了したときには、ギア42b、給紙ローラ43及びギア44aが、ASFモータ102と接続されている状態で、ASFモータ102を逆転させることで、
図1の一点鎖線で示す状態に戻す。
【0023】
(用紙反転部)
用紙反転部6は、
図1、
図2に示すように、スイッチバックローラ51と、複数のローラ52とを備えている。スイッチバックローラ51は、搬送方向における搬送ローラ14よりも下流側に配置されている。スイッチバックローラ51は、駆動ローラ51aと駆動ローラ51aの上側に配置された従動ローラ51bとからなる。駆動ローラ51aは、図示しない複数のギアを介して、駆動ローラ13a、14aと接続されている。これにより、上述したように、PFモータ101から駆動ローラ13aに動力が伝達されると、駆動ローラ51aにも動力が伝達されて、駆動ローラ51aが回転する。また、駆動ローラ51aの回転の方向は、駆動ローラ13a、14aの回転の方向と同じとなっている。
【0024】
これにより、駆動ローラ13aとASFモータ102とが接続された状態で、PFモータ101を逆転させると、スイッチバックローラ51は、記録用紙Pを駆動ローラ51aと従動ローラ51bとで挟んだ状態で搬送方向に搬送させる。一方、記録用紙Pの後端(搬送方向の上流側の端)が、搬送方向におけるスイッチバックローラ51よりも若干上流側に位置しているときに、PFモータ101を正転させると、記録用紙Pは、スイッチバックローラ51により搬送方向の上流側に搬送され、
図1に矢印A4で示すように、ローラ13、14、51による記録用紙Pの搬送面から、搬送方向の上流側且つ下向きに延びた反転経路53に向けて搬送される。
【0025】
複数のローラ52は、プラテン15と用紙カセット31との間に配置され、反転経路53の搬送方向における上流側に、搬送方向に並んで配置されている。複数のローラ52は、それぞれ、駆動ローラ52aと駆動ローラ52aの上側に位置する従動ローラ52bとからなる。駆動ローラ52aは、図示しない複数のギアを介して給紙ローラ32と接続されている。これにより、ASFモータ102から給紙ローラ32に動力が伝達されると、駆動ローラ52aにも動力が伝達され、駆動ローラ52aが回転する。これにより、ASFモータ102を正転させれば、駆動ローラ52aが
図1の反時計回り方向に回転し、
図1に矢印A5で示すように、反転経路53に送られてきた記録用紙Pを、駆動ローラ52aと従動ローラ52bとで挟んだ状態で、供給経路10に向けて搬送方向の上流側に搬送することができる。このとき、給紙ローラ32が
図1の反時計回り方向に回転し、ローラ52とともに記録用紙Pを供給経路10に向けて搬送する。そして、これにより、記録用紙Pは、表裏が反転された状態で、印刷部2に戻される。
【0026】
(メンテナンスユニット)
次に、メンテナンスユニット7について説明する。
図2〜
図8に示すように、メンテナンスユニット7は、ワイパ59、キャップユニット61、切換バルブ62(本発明の「切換装置」)、吸引ポンプ63及び廃液タンク64を備えている。
【0027】
<ワイパ>
ワイパ59は、プラテン15の右側に配置されている。ワイパ59は、ワイパ昇降装置157(
図13参照)により、昇降させることができるようになっている。ワイパ昇降装置157によりワイパ59を上昇させた状態では、ワイパ59の上端がインク吐出面12aよりも上方に位置する。この状態で、キャリッジ11をワイパ59と対向する位置で移動させると、ワイパ59がインク吐出面12aに接触する。一方、ワイパ昇降装置157によりワイパ59を降下させた状態では、ワイパ59の上端がインク吐出面12aよりも下方に位置する。この状態で、キャリッジ11をワイパ59と対向する位置で移動させても、ワイパ59はインク吐出面12aに接触しない。
【0028】
<キャップユニット>
キャップユニット61は、2つのノズルキャップ61a、61bが一体となったものであり、ノズルキャップ61aと61bとは、ノズルキャップ61aがノズルキャップ61bの右側に隣接するように走査方向に並んで配置されている。インク吐出面12aがキャップユニット61と対向する位置までキャリッジ11を移動させると、最も右側のノズル列18がノズルキャップ61aと重なり、左側3列のノズル列18がノズルキャップ61bと重なる。また、キャップユニット61は、キャップ昇降機構66(本発明の「キャップ移動装置」)によって昇降可能であり、インク吐出面12aがキャップユニット61と対向した状態で、キャップ昇降機構66によりキャップユニット61を上昇させると、キャップユニット61がインク吐出面12aに密着し、最も右側のノズル列18がノズルキャップ61aで覆われ、左側3列のノズル列18がノズルキャップ61bで覆われる。
【0029】
<キャップ昇降機構>
キャップ昇降機構66は、
図3、
図4に示すように、キャップ保持部71、スライダ72、クランクギア73(本発明の「回転部材」)及びアーム74を備えている。キャップ保持部71は、キャップホルダ71aと昇降部材71bとを有する。キャップホルダ71aは、キャップユニット61を下方から支持することで、キャップユニット61の剛性を確保している。昇降部材71bは、キャップホルダ71aを収容しており、図示しないガイドにより、上下方向に移動自在に支持されている。また、キャップホルダ71aと昇降部材71bとの間には、バネ71cが配置されており、キャップホルダ71aは、バネ73により上方に付勢されている。また、昇降部材71bの下面の走査方向における両端部近傍の部分には、それぞれ、下側に突出した突出部71dが設けられ、各突出部71dの走査方向における外側の側面には、走査方向に延びた突起71eが形成されている。
【0030】
スライダ72は、2つの部分76、77を有している。部分76は、昇降部材71bの下方に配置されている。部分76の走査方向における両側面には、それぞれ、突起71eが挿通される溝76aが形成されている。溝76aは、搬送方向に延び、搬送方向における両端部を除く部分において、搬送方向の上流側の部分ほど上側に位置するように、搬送方向に対して傾いて延びている。また、溝76aの搬送方向における両端部は、搬送方向と平行に延びている。そして、突起71eは、溝76aの下面76a1(本発明の「案内面」)に接触している。
【0031】
部分77は、部分76よりも幅が狭く、部分76の搬送方向における下流側の端部の中央部から、搬送方向の下流側に延びている。部分77の搬送方向における下流側の端部には、アーム支持部77aが設けられている。アーム支持部77aは走査方向に延び、アーム74の一端部を揺動自在に支持している。また、部分77の走査方向における左側の側面77bには、搬送方向に沿って延びたギア部77cが形成されている。また、スライダ72に対して、ギア部77cと噛み合うオイルダンパ78が設けられている。オイルダンパ78は、後述するように、スライダ72の搬送方向への滑り(急激な移動)を防止するためのものである。
【0032】
クランクギア73は、軸方向が走査方向と平行となるように配置されている。クランクギア73の中心からずれた部分の側面には、アーム74の他端部を揺動自在に支持するアーム支持部73aが設けられている。また、クランクギア73は、傘歯ギア129と噛み合っている。
【0033】
<切換バルブ>
切換バルブ62は、
図3、
図5に示すように、収容部材81と流路部材82とを備えている。収容部材81は、下端が塞がれた円筒形の部材である。収容部材81には、2つのキャップ連通ポート84a、84bと、大気連通ポート84cと、ポンプ連通ポート84dを有している。連通ポート84a〜84dは、内部空間81aに連通しているとともに、収容部材81の径方向の外側の互いに異なる方向に突出している。キャップ連通ポート84aは、チューブ86aを介してノズルキャップ61aと連通している。キャップ連通ポート84bは、チューブ86bを介してノズルキャップ61bと連通している。大気連通ポート84cは、チューブ86cを介して廃液タンク64と連通している。ポンプ連通ポート84dは、チューブ86dを介して吸引ポンプ63と連通している。
【0034】
流路部材82は、ゴム材料などからなる円柱形状の部材であり、収容部材81の内部空間81aに回転可能に収容されている。流路部材82には、連通ポート84a〜84dを互いに連通させるためのインク流路を形成する図示しない溝等が形成されている。また、流路部材82は、バルブカム85に取り付けられている。バルブ駆動ギア134aを含むバルブ駆動ギア群134と接続されている。なお、切換バルブ62の構造自体は従来と同様であるので、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0035】
<選択ギア機構>
ここで、本実施の形態では、選択ギア機構136(本発明の「選択装置」)を介して、ASFモータ102から、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62のうちいずれか一方に、選択的に動力の伝達が可能となっている。より詳細に説明すると、
図3(a)に示すように、選択ギア機構136は、選択駆動ギア137と、傘歯ギア138と、遊星ギア機構139とを有する。選択駆動ギア137は、後述のASF切換ギア122と噛み合い可能に構成され、ASF切換ギア122と噛み合った状態で、ASFモータ102と接続される。傘歯ギア138は、選択駆動ギア137と噛み合っている。遊星ギア機構139は、太陽ギア139aと遊星ギア139bとを有している。太陽ギア139aは、傘歯ギア138と噛み合っており、選択駆動ギア137及び傘歯ギア138とともに回転する。遊星ギア139bは、太陽ギア139aと噛み合っており、太陽ギア139aが回転したときに、自身の軸を中心に回転しつつ、太陽ギア139aの軸を中心に回動する。
【0036】
そして、選択駆動ギア137がASFモータ102に接続された状態で、ASFモータ102を正転(CW)(本発明の「第4方向に回転」)させると、ASFモータ102の動力がギア137、138、139、140に伝達され、
図3(b)、
図6(a)、(b)に示すように、太陽ギア139aが
図3(b)の反時計回り方向に回転し、遊星ギア139bが、太陽ギア139aの軸を中心に
図3(b)の時計回り方向に水平面内で回動して傘歯ギア129と噛み合う。この状態で、さらにASFモータ102の正転を継続すると、ASFモータ102の動力が傘歯ギア129を介してクランクギア73に伝達され、クランクギア73が
図3(c)の反時計回り方向に回転し、これに連動して、スライダ72が搬送方向(本発明の一方向)に往復移動する。
【0037】
そして、スライダ72が搬送方向の上流側に移動するときには、
図6(a)に示すように、昇降部材71bの突起71eが溝76aの下面76a1に案内されて、溝76aの左下側の部分に移動し、キャップ保持部71及びキャップユニット61が降下する。一方、スライダ72が搬送方向の下流側に移動するときには、
図6(b)に示すように、昇降部材71bの突起71eが溝76aの下面76a1に案内されて、溝76aの右上側の部分に移動する。これにより、キャップ保持部71及びキャップユニット61が上昇する。このとき、オイルダンパ78は、スライダ72の移動に連動して回転する。このように、キャップ昇降機構66では、クランクギア73の一方向の回転を、スライダ72を搬送方向に往復移動に変換し、昇降部材71bの突起71eを、スライダ72の溝76aの下面76a1で案内することで、キャップ保持部71及びキャップユニット61を昇降させる。
【0038】
これに対して、選択駆動ギア137がASFモータ102に接続された状態で、ASFモータ102を逆転(CCW)(本発明の「第3方向に回転」)させると、ASFモータ102の動力がギア137、138、139、140に伝達され、
図3(c)、
図7に示すように、太陽ギア139aが
図3(c)の時計回り方向に回転し、遊星ギア139bが太陽ギア139aの軸を中心に
図3(c)の反時計回り方向に水平面内で回転してバルブ駆動ギア134aと噛み合う。この状態で、さらにASFモータ102の逆転を継続すると、ASFモータ102の動力がバルブ駆動ギア134aに伝達され、バルブ駆動ギア群134を構成する各ギアが回転し、バルブカム85及び流路部材82が回転する。そして、切換バルブ62では、流路部材82が回転させることにより、キャップ連通ポート84a、84bとポンプ連通ポート84dとの連通とその遮断等、連通ポート84a〜84d間の連通関係を切り換えることができる。
【0039】
吸引ポンプ63は、チューブポンプであり、上記のとおりチューブ86dを介して切換バルブ62のポンプ連通ポート84dと連通しており、切換バルブ62と反対側において、チューブ86eを介して廃液タンク64と連通している。また、
図8に示すように、吸引ポンプ63は、ギア63aを有する。ギア63aは、ポンプ駆動ギア141aを含むポンプ駆動ギア群141と接続され、後述するようにポンプ駆動ギア群141を介してPFモータ101と接続可能に構成されている。そして、吸引ポンプ63とPFモータ101とが接続された状態で、PFモータ101が正転すると、PFモータ101の動力が吸引ポンプ63に伝達され、吸引ポンプ63は、チューブ86dと86eとの連通を遮断する遮断状態となる。そして、さらにPFモータ101の正転が継続されると、吸引ポンプ63は吸引を行う。一方、PFモータ101が逆転すると、PFモータ101の動力が吸引ポンプ63に伝達され、吸引ポンプ63は、チューブ86dと86eとが連通された連通状態となる。なお、回転の方向によって遮断状態と連通状態との間で切換可能なチューブポンプは公知のものであるため、ここでは、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0040】
廃液タンク64は、後述の吸引パージ等によって排出されたインクなどを貯留するためのものである。廃液タンク64のインクが貯留される空間は大気連通している。これにより、チューブ86cを介して廃液タンク64と連通する大気連通ポート84cは大気連通している。また、吸引ポンプ63が上記連通状態となっているときに、ポンプ連通ポート84dが、チューブ86d、86e、吸引ポンプ63及び廃液タンク64を介して大気連通する。
【0041】
(モータの接続の切換)
次に、PFモータ101及びASFモータ102の接続の切換について
図9(a)〜(e)、
図10(a)〜(e)、
図11、
図12を用いて説明する。なお、
図11、
図12では、構成要素同士を実線でつなぐことにより、これらが常に接続されていることを示し、破線でつなぐことにより、複数の構成要素のうちいずれか1つと選択的に接続されることを示している。
【0042】
図9(a)〜(e)、
図11に示すように、PFモータ101には、駆動軸105(本発明の「軸部材」)が接続されている。駆動軸105には、駆動ローラ13aが取り付けられている。また、駆動軸105には、PF入力ギア111(本発明の「第1入力ギア」)が取り付けられている。そして、PFモータ101が駆動されると、駆動軸105と駆動ローラ13aとPF入力ギア111とが一体的に回転する。
【0043】
また、PF入力ギア111は、PF切換ギア112と噛み合っている。PF切換ギア112は、走査方向に延びた軸106に回転自在に支持されている。また、PF切換ギア112は、キャリッジ11の走査方向への移動に連動して、軸106に沿って走査方向に移動可能となっている。これにより、PF切換ギア112は、
図9(a)〜(e)のいずれかの位置に選択的に移動させることができるようになっている。そして、PF切換ギア112は、
図9(a)〜(d)で示す位置に位置している状態では、ポンプ駆動ギア141aと噛み合わず、
図9(e)に示す位置に位置している状態で、PF切換ギア112がポンプ駆動ギア141aと噛み合う。また、PF切換ギア112は、
図9(a)〜(e)のいずれに位置しているときにも、PF入力ギア111と噛み合う。なお、本実施の形態では、
図9(a)〜(d)で示すPF切換ギア112の位置が、本発明のポンプ非駆動位置に相当し、
図9(e)で示すPF切換ギア112の位置が、本発明ポンプ駆動位置に相当する。
【0044】
図9(a)〜(e)、
図10(a)〜(e)、
図12に示すように、ASFモータ102は、ASF入力ギア群121と接続されている。また、ASF入力ギア群121は、ASF入力ギア121aを含んでおり、ASF入力ギア121aは、ASF切換ギア122と噛み合っている。ASF切換ギア122は、軸106に回転自在に支持されている。また、ASF切換ギア122はPF切換ギア112との走査方向における位置関係が常に保持されるように軸106に取り付けられている。これにより、キャリッジ11の移動に連動してPF切換ギア112が走査方向に移動すると、ASF切換ギア122も走査方向に移動する。
【0045】
そして、本実施の形態では、切換ギア112、122を、走査方向に移動させることにより、
図9(a)〜(e)、のいずれかの位置に選択的に移動させることができるようになっている。そして、ASF切換ギア122は、
図9(a)で示す位置に位置している状態では、上段給紙ギア132と噛み合う。また、ASF切換ギア122は、
図9(b)で示す位置に位置している状態では、下段給紙ギア131と噛み合う。また、ASF切換ギア122は、
図9(c)で示す位置に位置している状態では、トレイ給紙ギア133と噛み合う。また、ASF切換ギア122は、
図9(d)、(e)で示す位置に位置している状態では、選択駆動ギア137と噛み合う。なお、本実施の形態では、
図9(a)で示すASF切換ギア122の位置が、本発明の供給駆動位置に相当し、
図9(d)、(e)で示すASF切換ギア122の位置が、本発明の選択駆動位置に相当する。
【0046】
また、本実施の形態では、駆動軸105、PF入力ギア111、PF切換ギア112及びポンプ駆動ギア141aと、PF切換ギア112を走査方向に移動させるキャリッジ11とを合わせたものが、本発明の第1伝達切換部に相当する。また、ASF入力ギア群121、ASF切換ギア122、給紙ギア131〜133及び選択駆動ギア137と、ASF切換ギア122を走査方向に移動させるキャリッジ11とを合わせたものが、本発明の第2伝達切換部に相当する。そして、切換ギア112、122を走査方向に移動させるキャリッジ11が、本発明の第1ギア移動装置と第2ギア移動装置とを兼ねている。
【0047】
(制御装置)
次に、プリンタ1の動作を制御するための制御装置150について説明する。制御装置150は、
図13に示すように、CPU(Central Processing Unit)151、ROM(Read Only Memory)152、RAM(Random Access Memory)153、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)154等を備え、これらが協働してキャリッジモータ156、インクジェットヘッド12、PFモータ101、ASFモータ102等の動作を制御する。
【0048】
ここで、
図13では、CPU151を1つだけ図示しているが、制御装置150は、CPU151を1つだけ備え、この1つのCPU151が処理を一括して行ってもよいし、CPU151を複数備え、これら複数のCPU151が処理を分担して行ってもよい。また、
図13では、ASIC154を1つだけ図示しているが、制御装置150は、ASIC154を1つだけ備え、この1つのASIC154が処理を一括して行ってもよいし、ASIC154を複数備え、これら複数のASIC154が処理を分担して行ってもよい。
【0049】
(印刷動作)
次に、プリンタ1において印刷を行う方法について説明する。プリンタ1では、
図14のフローチャートに示す手順で印刷を行う。ここで、プリンタ1では、印刷や後述のメンテナンスなどを行わない待機状態において、キャップユニット61がインク吐出面12aに密着した状態となっており、これにより、ノズル17内のインクの乾燥が防止されている。また、上記待機状態では、切換バルブ62において、
図15(a)に示すように、キャップ連通ポート84a、84bと、ポンプ連通ポート84dとが連通した状態となっている。また、吸引ポンプ63は、上記連通状態となっている。これにより、待機状態では、複数のノズル17を覆うノズルキャップ61a、61bが、吸引ポンプ63を介して大気連通している。また、待機状態では、PF切換ギア112及びASF切換ギア122が
図9(e)に示す位置に位置している。なお、
図15(a)では吸引ポンプ63に、上下両方を向いた矢印を付すことによって、吸引ポンプ63が連通状態であることを示している。
【0050】
プリンタ1において印刷を行うためには、まず、ASFモータ102を正転させることによって、キャップユニット61を降下させる(S101)。次に、用紙カセット21、31及び用紙トレイ41のいずれかから、印刷部2に向けて記録用紙Pを供給させる(S102)。具体的には、まず、キャリッジ11を移動させることで、PF切換ギア112及びASF切換ギア122を、
図9(a)〜(c)のいずれかの位置に移動させる。そして、切換ギア112、122を
図9(a)の位置に移動させた場合にはASFモータ102を逆転させる。一方、切換ギア112、122を
図9(b)、(c)の位置に移動させた場合には、ASFモータ102を正転させる。
【0051】
次に、記録用紙Pの先端部が搬送ローラ13に到達したか否かを判定する(S103:NO)。ここで、S103では、例えば、搬送ローラ13の搬送方向におけるすぐ上流側に記録用紙Pを検出するためのセンサを設け、このセンサの検出結果に基づいて上記判定を行う。あるいは、給紙ローラ22、32、43の回転量に基づいて記録用紙Pの搬送量を検出し、その検出結果に基づいて上記判定を行う。そして、記録用紙Pの先端部が搬送ローラ13にするまで待機し(S103:NO)、記録用紙Pの先端部が搬送ローラ13に到達したときに(S103:YES)、記録用紙Pが用紙カセット21、31から供給されたものである場合には(S104:NO)、そのまま、S106に進む。
【0052】
一方、記録用紙Pが用紙トレイ41から供給されたものである場合には(S104:YES)、PFモータ101を所定時間(例えば1〜2sec程度)正転させることにより、記録用紙Pの傾きを修整してから(S105)、S106に進む。より詳細に説明すると、用紙トレイ41から供給された記録用紙Pは、傾いた状態で搬送ローラ13に到達することがある。この場合には、記録用紙Pの先端部の一部分のみが、駆動ローラ13aと従動ローラ13bとに挟まれた状態となっている。そこで、本実施の形態では、PFモータ101を正転させて、駆動ローラ13aを記録用紙Pの搬送時と反対方向に回転させる。これにより、記録用紙Pの駆動ローラ13aと従動ローラ13bとに挟まれた部分(他の部分よりも搬送方向の下流側に位置する部分)が搬送方向の上流側に戻り、記録用紙Pの傾きが修正される。
【0053】
S106では、記録用紙Pを搬送方向に搬送しながら、キャリッジ11を走査方向に往復移動させ、インクジェットヘッド12の複数のノズル17からインクを吐出させる印刷動作を行わせる。具体的には、PFモータ101を逆転させることにより、搬送ローラ13、14及びスイッチバックローラ51に、記録用紙Pを搬送方向に搬送させ、キャリッジモータ156を駆動させることで、キャリッジ11を走査方向に往復移動させ、インクジェットヘッド12を駆動させることによって、複数のノズル17からインクを吐出させる。
【0054】
記録用紙Pへの印刷が完了するまで上記印刷動作を継続させ(S107:NO)、記録用紙Pへの印刷が完了したときに(S107:YES)、キャリッジモータ156及びインクジェットヘッド12の駆動を停止させる(S108)。そして、記録用紙Pの反対側の面への印刷を行わない場合には(S109:NO)、PFモータ101の逆転を継続させることによって、記録用紙Pを排出させ(S110)、上記待機状態に戻した(S111)後に、動作を終了する。
【0055】
一方、記録用紙Pの反対側の面への印刷を行う場合には(S109:YES)、記録用紙Pの後端が、スイッチバックローラ51のすぐ上流側の位置に到達したか否かを判定する(S112)。S112では、例えば、搬送方向におけるスイッチバックローラ51のすぐ上流側に記録用紙Pの有無を検出するための図示しないセンサを設け、このセンサの検出結果に基づいて上記判定を行う。あるいは、ローラ13、14、51の回転量に基づいて記録用紙Pの搬送量を検出し、その検出結果に基づいて上記判定を行う。なお、
図14のSBローラとは、スイッチバックローラ51のことである。
【0056】
そして、記録用紙Pが搬送方向におけるスイッチバックローラ51のすぐ上流側に到達するまで(S112:NO)、記録用紙Pの搬送(PFモータ101の逆転)を継続させる。記録用紙Pの後端が、スイッチバックローラ51のすぐ上流側の位置に到達したときに(S112:YES)、記録用紙Pを反転させたうえで、印刷部2に戻す(S113)。具体的には、PFモータ101を正転させることで、スイッチバックローラ51に、記録用紙Pを反転経路53に向けて搬送させる。そして、切換ギア112、122を
図9(a)の位置に移動させた状態で、ASFモータ102を正転させることによって、ローラ52及び給紙ローラ32に、反転経路53に送られてきた記録用紙Pを、印刷部2に向けて搬送させる。そして、S113の完了後、S106に戻る。
【0057】
(メンテナンス)
次に、メンテナンスユニット7を用いたメンテナンスについて説明する。プリンタ1では、
図16のフローに沿って、メンテナンスを行う。
【0058】
メンテナンスでは、
図16に示すように、まず、流路部材82が収容部材81に固着して、流路部材82を回転させることができなくなっているか否かを判定する(S201)。流路部材82が収容部材81に固着していない場合には(S201:NO)、そのままS203に進む。流路部材82が収容部材81に固着している場合には(S201:YES)、バルブクリーニングを行ってから(S202)、S203に進む。なお、S201では、例えば、待機状態で、ASFモータ102を逆転させたときに、流路部材82が回転しないことにより、ASFモータ102に流れる電流が所定の閾値を超えた場合に、流路部材82が収容部材81に固着していると判定する。
【0059】
S202のバルブクリーニングでは、
図15(b)に示すように、待機状態から、PFモータ101を正転させることで、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。すると、複数のノズル17からインクジェットヘッド12内のインクが排出されて切換バルブ62に流れ込む。これにより、切換バルブ62内で固化したインクが、切換バルブ62に流れ込んだインクの水分を吸収して溶け、流路部材82の収容部材81への固着が解消される。さらに、吸引ポンプ63による吸引中に、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させる。すると、切換バルブ62内に流れ込んだインクが切換バルブ62内の各部分に均等に行き渡る。これにより、流路部材82の収容部材81への固着を効率よく解消させることができる。なお、
図15(b)では、吸引ポンプ63に、下向きの矢印を付すことによって、吸引ポンプ63が遮断状態となって吸引を行っていることを示している。後述の
図15(c)〜(f)についても同様である。
【0060】
後述の吸引パージや空吸引を行ったときには、切換バルブ62にインクが流れ込む。切換バルブ62内に流れ込んだインクが長期間放置されると固化し、流路部材82が収容部材81に固着してしまう虞がある。流路部材82が収容部材81に固着すると、後述の吸引パージや空吸引を行う際に、流路部材82を回転させることができなくなってしまう虞がある。本実施の形態では、ノズル17から吐出されるインクが比較的固化しやすい顔料インクであるため、上述したような問題が生じやすい。そこで、プリンタ1では、上述したようなバルブクリーニングを行うことで、流路部材82の収容部材81への固着を解消させる。
【0061】
S203では、吸引パージを行わせる。より詳細には、S203では、インクジェットヘッド12内の増粘したブラックインクを排出させるためのブラックの吸引パージと、インクジェットヘッド12内の増粘したカラーインクを排出させるためのカラーの吸引パージとを続けて行わせる。
【0062】
ブラックの吸引パージでは、キャップユニット61をインク吐出面12aに密着させ、切換ギア112、122を
図9(e)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、
図15(c)に示すように、キャップ連通ポート84aとポンプ連通ポート84dとを連通させ、キャップ連通ポート84bと大気連通ポート84cとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、最も右側のノズル列18を形成する複数のノズル17からインクジェットヘッド12内の増粘したブラックインクが排出される。なお、キャップ連通ポート84bと大気連通ポート84cとを連通させているのは、吸引時のキャップユニット61の変形によってノズルキャップ61b内の空間の容積が減少したときの、ノズルキャップ61b内の圧力上昇を抑えるためである。
【0063】
カラーの吸引パージでは、キャップユニット61をインク吐出面12aに密着させ、切換ギア112、122を
図9(e)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、
図15(d)に示すように、キャップ連通ポート84bとポンプ連通ポート84dとを連通させ、キャップ連通ポート84aと大気連通ポート84cとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、左側3列のノズル列18を形成する複数のノズル17からインクジェットヘッド12内の増粘したカラーインクが排出される。なお、キャップ連通ポート84aと大気連通ポート84cとを連通させているのは、吸引時のキャップユニット61の変形によってノズルキャップ61a内の空間の容積が減少したときのノズルキャップ61a内の圧力の変動を抑えるためである。
【0064】
次に、吸引パージによってキャップユニット61に溜まったインクを排出させるパージ後空吸引を行わせる(S204)。より詳細には、S204では、ブラックの吸引パージによってノズルキャップ61aに溜まったブラックインクを排出させるブラックの空吸引と、カラーの吸引パージによってノズルキャップ61bに溜まったカラーインクを排出させるカラーの空吸引とを続けて行わせる。
【0065】
ブラックの空吸引パージでは、切換ギア112、122を
図9(e)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を正転させて、クランクギア73を回転させることにより、
図15(e)に示すように、キャップユニット61を降下させる。続いて、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、キャップ連通ポート84aとポンプ連通ポート84dとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、ノズルキャップ61aに溜まったブラッククインクが排出される。
【0066】
カラーの空吸引では、切換ギア112、122を
図9(e)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を正転させて、クランクギア73を回転させることにより、
図15(f)に示すように、キャップユニット61を降下させる。続いて、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、キャップ連通ポート84bとポンプ連通ポート84dとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、ノズルキャップ61bに溜まったカラーインクが排出される。
【0067】
次に、ワイパ59により、インク吐出面12aに付着したインクを拭き取るワイピングを行わせる(S205)。ワイピングを行わせるためには、ワイパ昇降装置157を駆動してワイパ59を上昇させたうえで、キャリッジモータ156を駆動してキャリッジ11を走査方向に移動させる。これにより、インク吐出面12aに付着したインクがワイパ59によって拭き取られる。
【0068】
次に、複数のノズル17から、ワイピングによって流れ込んだインクなどを排出するためのフラッシングを行わせる(S206)。フラッシングを行わせるためには、キャリッジモータ156を駆動させて、キャリッジ11をインク吐出面12aがキャップユニット61と対向する位置に戻したうえで、インクジェットヘッド12に複数のノズル17からキャップユニット61に向けてインク吐出させる。
【0069】
次に、フラッシングによってキャップユニット61に溜まったインクを排出させるために、フラッシング後空吸引を行わせる(S207)。フラッシング後空吸引での動作は、パージ後空吸引と同様である。そして、フラッシング後空吸引の完了後、ASFモータ102を正転させて、キャップユニット61を上昇させることにより、上述の待機状態に戻す(S208)。以上により、メンテナンスが終了する。
【0070】
以上に説明した実施の形態では、切換バルブ62のバルブカム85が、駆動ローラ13a、14a、51aを駆動させるためのPFモータ101とは別のASFモータ102によって駆動される。ここで、PFモータ101による駆動ローラ13a、14a、51aの駆動トルクは、ある程度大きなものとなる。そのため、本実施の形態とは異なり、PFモータ101でさらにバルブカム85を駆動するためには、バルブカム85の駆動トルクを小さくする必要がある。バルブカム85の駆動トルクが小さいと、切換バルブ62内のインクが増粘したときなどに、バルブカム85を回転させることができなくなってしまう虞がある。あるいは、バルブカム85の駆動トルクを大きくするために、PFモータ101とバルブカム85とを接続するギアにおける減速比を大きくする必要がある。上記減速比を大きくすると、バルブカム85の回転速度が遅くなり、切換バルブ62において、ポート間の連通関係の切換を行うのにかかる時間が長くなってしまう。
【0071】
そこで、本実施の形態では、上記のとおり、バルブカム85がPFモータ101とは別のASFモータ102によって駆動されるようにしている。また、バルブカム85を駆動するときに、ASF切換ギア122は、選択駆動ギア137aと噛み合っており、給紙ギア131〜133とは噛み合っていない。すなわち、バルブカム85を駆動するときに、ASFモータ102の動力が、バルブカム85以外の装置(給紙ローラ22、32、43等)に伝達されることがない。これにより、ASFモータ102とバルブカム85とを接続するギアにおける減速比を大きくしなくても、バルブカム85を駆動するためのトルクを十分に大きくすることができる。
【0072】
また、本実施の形態では、ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合った状態で、ASFモータ102を正転させると、キャップ昇降機構66によるキャップユニット61の昇降が行われ、ASFモータ102を逆転させると、切換バルブ62の流路部材82が回転する。すなわち、ASFモータ102の回転の方向によって、キャップ昇降機構66と切換バルブ62のいずれかを選択的に駆動させることができる。これにより、キャップ昇降機構66とASFモータ102とを、共通のモータで駆動させることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、スライダ72を搬送方向に往復移動させたときに、昇降部材71bの突起71eがスライダ72の溝76aの下面76a1に案内されることで、キャップ保持部71とキャップユニット61とが昇降するようになっている。また、スライダ72は、クランクギア73と接続されていることにより、クランクギア73が一方向に回転したときにスライダ72が搬送方向に往復移動する。これにより、ASFモータ102を正転させて、クランクギア73を一方向(
図6(a)、(b)の反時計回り方向)に回転させるだけで、キャップユニット61を昇降させることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、ASFモータ102を正転させたときに、遊星ギア139bが傘歯ギア129と噛み合い、ASFモータ102を逆転させたときに、遊星ギア139bがバルブ駆動ギア134aと噛み合う。これにより、ASFモータ102の回転の方向に応じて、ASFモータ102を、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62のいずれかを選択的に駆動させることができる。
【0075】
また、本実施の形態では、キャップユニット61をインク吐出面12aに密着させるために、ASFモータ102を正転させることで、遊星ギア139bを傘歯ギア129と噛み合わせ、この状態からさらにASFモータ102をさらに正転させることで、キャップユニット61を上昇させている。そして、キャップユニット61がインク吐出面12aに密着しているときには、遊星ギア139bが傘歯ギア129と噛み合っている。この状態で、振動等により遊星ギア139bに外力が加わると、遊星ギア139bが一時的にクランクギア73から離れてしまうことがある。その結果、スライダ72が搬送方向に滑り、キャップユニット61がインク吐出面12aから離れてしまう虞がある。これに対して、本実施の形態では、スライダ72にギア部77cを設けるとともに、ギア部77cに対してオイルダンパ78を設けており、スライダ72の滑りを防止している。これにより、遊星ギア139bが一時的にクランクギア73から離れたときに、キャップユニット61がインク吐出面12aから離れてしまうのを防止することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、PFモータ101の回転の方向によって、吸引ポンプ63を連通状態と遮断状態との間で切り換えることができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、待機状態で、切換バルブ62により、ノズルキャップ61a、61bを吸引ポンプ63と連通させ、吸引ポンプ63を大気連通させている。これにより、流路部材82が収容部材81に固着してしまった場合などに、流路部材82を回転させることなく、吸引ポンプ63に吸引を行わせることで、インクジェットヘッド12内のインクを切換バルブ62内に流れ込ませるバルブクリーニングを行って、流路部材82の収容部材81への固着を解消させることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、上記のとおり、吸引ポンプ63がPFモータ101に駆動され、バルブカム85がASFモータ102に駆動される。すなわち、吸引ポンプ63とバルブカム85とを独立して駆動させることができる。これにより、上述したように、バルブクリーニングにおいて、切換バルブ62内にインクを流れ込ませつつ、流路部材82を回転させることが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態とは異なり、待機状態において、吸引ポンプ63が遮断状態となっていると、ノズルキャップ61a、61b内の圧力が変動する虞がある。ノズルキャップ61a、61b内の圧力が上昇すると、ノズル17内のインクのメニスカスが破壊されてしまう虞がある。一方、ノズルキャップ61a、61b内の圧力が低下すると、ノズル17からインクジェットヘッド12内のインクが不必要に排出されてしまう虞がある。本実施の形態では、上記のとおり、待機状態において、吸引ポンプ63を連通状態としている。これにより、ノズルキャップ61a、61b内の圧力が変動してしまうのを防止することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62が、ASFモータ102によって駆動されるため、S105の、PFモータ101を正転させて記録用紙Pの傾きを修正する動作の際に、キャップユニット61が昇降したり、流路部材82が回転したりすることがない。さらに、このとき吸引ポンプ63は吸引を行わず、連通状態に切り換わる。これらのことから、記録用紙Pの傾きを修正する動作を行う際に、キャップユニット61がインク吐出面12aに密着するとともに、切換バルブ62によりキャップ連通ポート84a、84bの少なくとも一方とポンプ連通ポート84dとが連通され、この状態で吸引ポンプ63による吸引が行われて、インクジェットヘッド12から不必要にインクが排出されてしまう、ということが起こらない。
【0081】
また、本実施の形態とは異なり、キャップ昇降機構を、ASFモータ102によって駆動されるものではなく、キャリッジ11がキャップユニット61に近づいたときに、キャリッジ11に押される力を利用して、キャップユニット61を上昇させるものとすることも考えられる。しかしながら、この場合には、キャップユニット61がインク吐出面12aに接触するときの衝撃を抑えるためにキャリッジ11の走査方向への移動量に対するキャップユニット61の上昇量を小さくする必要がある。そのため、この場合には、キャリッジ11の移動距離が長くなり、キャップユニット61とプラテン15(印刷を行う位置)とが離れる。その結果、印刷時にインクジェットヘッド12をキャップユニット61と対向する位置から印刷を行う位置まで移動させるためのキャリッジ11の移動量が多くなり、印刷が開始されるまでの時間が長くなってしまう。
【0082】
本実施の形態では、上記のとおり、キャップ昇降機構66がASFモータ102によって駆動されて、キャップユニット61を昇降させるものであるため、上述したような場合と比較して、キャップユニット61とプラテン15とを近づけることができる。これにより、印刷が開始されるまでの時間を短縮することができる。
【0083】
また、プリンタ1では、例えば、プリンタ1に大量の印刷データが入力されたときなどに、印刷動作を一時停止し、入力された印刷データの処理を行うことがある。そして、印刷動作を一時停止させている間は、ノズル17内のインクの乾燥を防止する観点から、キャップユニット61をインク吐出面12aに密着させた状態にすることが好ましい。しかしながら、本実施の形態と異なり、キャップユニット61をインク吐出面12aに接触させた状態にするための動作を行ったときに、駆動ローラ13a、14aが駆動されてしまうと、記録用紙Pが搬送されてその位置がずれてしまう。
【0084】
これに対して、本実施の形態では、上記のとおり、キャップ昇降機構66が、駆動ローラ13a、14aを駆動させるPFモータ101とは別のASFモータ102によって駆動される。したがって、印刷動作を一時停止させる際に、駆動ローラ13a、14aを駆動させることなく、キャップユニット61をインク吐出面12aに密着させることができる。
【0085】
また、以上に説明したように、本実施の形態では、ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合った状態で、ASFモータ102を正転させると、キャップユニット61が昇降し、ASFモータ102を逆転させると、切換バルブ62の流路部材82が回転する。また、ASF切換ギア122が、給紙ギア131〜133のいずれかと噛み合った状態で、ASFモータ102を正転又は逆転転させると、給紙ローラ22、32、43のいずれかが回転し、印刷部2に記録用紙Pが供給される。
【0086】
これに対して、本実施の形態とは異なり、例えば、(a)給紙ギア131〜133のいずれかとASF入力ギア121aとの間に遊星ギア機構を設け、ASF切換ギア122がこの給紙ギアと噛み合った状態で、ASFモータ102を正転又は逆転させたときに、この給紙ギアに対応する給紙ギアが回転するようにすることが考えられる。そして、ASF切換ギア122がこの給紙ギアと噛み合った状態で、ASFモータ102を記録用紙Pの供給時と反対方向に回転させたときに、(a1)キャップユニット61が昇降する、あるいは、(a2)切換バルブ62の流路部材82が回転するようにすることが考えられる。
【0087】
吸引パージの後、空吸引を行うためには、キャップユニット61を降下させ、流路部材82を回転させて、切換バルブ62を
図15(b)の状態から
図15(c)の状態に切り換える必要がある。このとき、上記(a1)の場合には、キャップユニット61を降下させるために、ASF切換ギア122を上記給紙ギアと噛み合った状態とする必要がある。また、流路部材82を回転させるために、ASF切換ギア122を選択駆動ギア137に噛み合った状態にする必要がある。一方、上記(a2)の場合には、キャップユニット61を降下させるために、ASF切換ギア122を選択駆動ギア137と噛み合った状態にする必要がある。また、流路部材82を回転させるために、ASF切換ギア122を上記給紙ギアに噛み合った状態とする必要がある。
【0088】
そして、上記(a1)、(a2)のいずれの場合にも、吸引パージの後、空吸引を行うために、ASF切換ギア122を移動させて、ASF切換ギア122が上記給紙ギアと噛み合った状態と選択駆動ギア137と噛み合った状態とを切り換える必要がある。このとき、ASF切換ギア122とこれに噛み合うギアとの噛み込みによって上記切換が失敗してしまうのを防止するために、ASF切換ギア122を移動させる前に、ASFモータ102を駆動して、ASF切換ギア122を両方向への微小な回転を交互に繰り返すことによって、ギア同士の噛み込みを解消させる必要がある(以下、この動作を「噛み込み解消動作」とする)。そのため、上記(a1)、(a2)の場合には、吸引パージの後、空吸引が開始されるまでの時間が長くなり、メンテナンスに要する時間が長くなってしまう。
【0089】
また、(a1)、(a2)の場合には、吸引パージの後、ワイピングが行われるまでの時間も長くなる。すると、ワイピングの前に、吸引パージの際にインク吐出面12aに付着した各色のインクが、インク吐出面12aに広がる。そのため、異なる色のインク同士が混ざり、混色したインクがノズル17内に流れ込む。その結果、次に記録用紙Pに印刷を行うときに、複数のノズル17から混色したインクが吐出され、印刷品質が低下してしまう。あるいは、ノズル17から混色したインクを十分に排出させるために、ワイピング後のフラッシングにおいて、ノズル17から排出されるインクの量が多くなってしまう。
【0090】
また、本実施の形態とは異なり、例えば、(b)PF切換ギア112を、ポンプ駆動ギア141aと噛み合った状態と、バルブ駆動ギア134aと噛み合った状態とで切り換え可能とし、PF切換ギア112がバルブ駆動ギア134aと噛み合った状態で、PFモータ101を正転又は逆転させることによって、流路部材82を回転させる場合を考える。
【0091】
この場合には、吸引パージの際には、PF切換ギア112がポンプ駆動ギア141aと噛み合っている。そして、吸引パージの後、PF切換ギア112をバルブ駆動ギア134aと噛み合った状態に切り換えた上で、PFモータ101を駆動することで、流路部材82を回転させ、切換バルブ62を
図15(b)の状態から
図15(c)の状態に切り換える。さらにその後、PF切換ギア112をポンプ駆動ギア141aと噛み合った状態に切り換えた上で、PFモータ101を正転させることによって空吸引を行うことになる。そして、この場合にも、PF切換ギア112を移動させる前に、上述したような噛み込み解消動作を行う必要がある。その結果、吸引パージの後、空吸引が開始されるまでの時間が無くなり、メンテナンスに要する時間が長くなってしまう。
【0092】
また、(b)の場合にも、(a1)、(a2)の場合と同様、吸引パージの後、上記ワイピングが行われるまでの時間が長くなり、ワイピングの前に、混色したインクがノズル17内に流れ込み、次に記録用紙Pに印刷を行うときの印刷品質が低下してしまう。あるいは、ワイピング後のフラッシングにおいて、ノズル17から排出されるインクの量が多くなってしまう。
【0093】
また、切換ギア112、122と噛み合うギアを切り換える際に、切換に失敗することがある。上記(b)の場合、PF切換ギア112を、ポンプ駆動ギア141aと噛み合った状態に切り換えるのに失敗すると、吸引パージや空吸引におけるインクの吸引ができない。そのため、上記(b)の場合には、例えば、ポンプ駆動ギア141の近傍に、上記切換に成功したことを検出するためのセンサが必要となる。
【0094】
これに対して、本実施の形態の場合には、ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合った状態で、ASFモータ102を正転させることにより、キャップユニット61を昇降させることができ、ASFモータ102を逆転させることにより、切換バルブ62の流路部材82を回転させることができる。これにより、本実施の形態の場合には、メンテナンス中に、ASF切換ギア122を選択駆動ギア137と噛み合った状態とすればよく、ASF切換ギア122と噛み合うギアを切り換える必要がない。したがって、本実施の形態のようにして、キャップユニット61の昇降、切換バルブ62の流路部材82の回転、及び、記録用紙Pの供給を行わせることは、上記(a1)、(a2)、(b)のようにしてこれらを行わせるよりも好ましい。
【0095】
なお、切換バルブ62では、流路部材82の回転角度にある程度高い精度が要求されるため、切換バルブ62には、通常、流路部材82の回転角度を検出するためのセンサが設けられている。そして、本実施の形態や、上記(a1)、(a2)、(b)において、切換ギア112、122を、バルブ駆動ギア134aと噛み合った状態に切り換えるのに成功したことは、切換バルブ62に設けられたセンサからの信号に基づいて検出することができる。
【0096】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0097】
上述の実施の形態では、プリンタ1が、下段カセット給紙部3、上段カセット給紙部4及びトレイ給紙部5の3つの給紙部を有し、これに対応して、ASF切換ギア122と接続可能な、給紙ギア131〜133の3つの給紙ギアを有していたが、これには限られない。プリンタが、2以下又は4以上の給紙部を有し、これに対応して、ASF切換ギア122と接続可能な、2以下又は4以上の給紙ギアを有していてもよい。
【0098】
例えば、一変形例では、
図17に示すように、プリンタ200が、給紙部として、1つのカセット給紙部201のみを有している。カセット給紙部201は、上段カセット給紙部4と同様の構成を有するものであり、給紙ギア132(
図9(a)〜(d)参照)を含む複数のギアと接続されている。また、ASF切換ギア122は、軸106に沿って移動することで、上述の実施の形態の
図9(a)、(d)、(e)のいずれかの位置に選択的に位置させることが可能となっている。
【0099】
本変形例では、切換ギア112、122を
図9(a)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を正転させると、給紙ローラ202が、
図16の反時計回り方向に回転して、ローラ52とともに、反転経路53に送られた記録用紙Pを供給経路203に向けて搬送する。一方、ASFモータ102を逆転させると、給紙ローラ202が、
図16の時計回り方向に回転し、用紙カセット204に収容された記録用紙Pを供給経路203に向けて搬送する。
【0100】
ここで、この変形例では、PF切換ギア112は、上述の実施の形態と同様、ポンプ駆動ギア141aとの噛み合いの有無が切り換わるだけである。これに対して、ASF切換ギア122は、給紙ギア131及び選択駆動ギア137のいずれかと選択的に噛み合う。そのため、ASF切換ギア122は、誤動作により、本来噛み合うべきギアとは別のギアと噛み合ってしまう可能性がある。例えば、印刷時にキャップユニット61を降下させた後、給紙のためにASF切換ギア122を給紙ギア131と噛み合う位置まで移動させようとしたときに、誤動作によって、ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合ったままの状態となってしまうことがある。
【0101】
ここで、本変形例と異なり、ASFモータ102が正転したときに、用紙カセット204に収容された記録用紙Pが供給経路203に向けて搬送されるようになっていると、用紙カセット204から印刷部2に記録用紙Pを供給するためにASFモータ102を正転させたときに、キャップユニット61が上昇してしまう虞がある。この場合には、この後、インクジェットヘッド11をキャップユニット61と対向する位置に戻そうとしたときにキャリッジ11やインクジェットヘッド12がキャップユニット61に衝突してしまう虞がある。
【0102】
これに対して、本変形例では、ASFモータ102が逆転したときに、用紙カセット203に収容された記録用紙Pが供給経路203に向けて搬送されるようになっている。したがって、用紙カセット204から印刷部2に記録用紙Pを供給するために、ASFモータ102を逆転させるときに、誤動作によりASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合っていても、切換バルブの流路部材82が回転するだけで、キャップユニット61が上昇することがない。
【0103】
また、上述の実施の形態では、キャップユニット61がインク吐出面12aに接触している状態で、遊星ギア139bが一時的にクランクギア73から離れたときの、スライダ72の搬送方向への滑りを防止するための構成として、スライダ72のギア部77cとオイルダンパ78とを設けたがこれには限られない。ギア部77cとオイルダンパ78以外の構成によって、スライダ72の搬送方向への滑りを防止してもよい。さらには、スライダ72の搬送方向への滑りを防止するための構成は設けられていなくてもよい。
【0104】
また、上述の実施の形態では、ASFモータ102の回転の方向に応じて、遊星ギア139bの太陽ギア139aの軸を中心として回動する方向が変わり、これにより、遊星ギア139bが傘歯ギア129及びバルブ駆動ギア134aのいずれかと選択的に噛み合うようになっていたが、これには限られない。遊星ギア機構139とは別の構成によって、ASFモータ102の回転の方向に応じて、ASFモータ102から、傘歯ギア129及びバルブ駆動ギア134aのいずれか一方に選択的に動力の伝達が可能となっていてもよい。
【0105】
また、上述の実施の形態では、ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合っている状態で、ASFモータ102が駆動されたときに、ASFモータ102の回転方向に応じて、ASFモータ102の動力が、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62のいずれかに選択的に伝達されるようになっていたが、これには限られない。ASF切換ギア122が選択駆動ギア137と噛み合っている状態で、ASFモータ102が駆動されたときに、ASFモータ102の回転方向に応じて、ASFモータ102の動力が、キャップ昇降機構66以外の被駆動部、及び、切換バルブ62のいずれかに選択的に伝達されるようになっていてもよい。
【0106】
また、上述の実施の形態では、スライダ72とクランクギア73とがアーム74を介して連結されており、クランクギア73の回転がスライダ72の搬送方向への移動に変換されるようになっていたが、これには限られない。クランクギア73の代わりに、ASFモータ102の回転を、スライダ72の搬送方向への往復移動に変換する、別の装置が設けられていてもよい。
【0107】
さらには、キャップ昇降機構は、昇降部材71bの突起71eを、搬送方向に往復移動するスライダ72の、溝76aの下面76a1に沿って案内することで、キャップ保持部71及びキャップユニット61を昇降させるものであることにも限られない。キャップ昇降機構は、ASFモータ102を正転させて駆動したときに、キャップユニット61の上昇と降下の両方を行うことが可能な別の構成を有するものであってもよい。
【0108】
また、上述の実施の形態では、PF入力ギア111と噛み合ったPF切換ギア112を、ポンプ駆動ギア141aと噛み合った状態と、ポンプ駆動ギア141aと噛み合わない状態との間で切り換えることで、PFモータ101から吸引ポンプ63への動力伝達の有無を切換可能となっていたが、これとは別の構成(本発明の「第1伝達切換部」)によって、上記切換が可能となっていてもよい。
【0109】
また、上述の実施の形態では、ASF入力ギア121aと噛み合ったASF切換ギア122を、給紙ギア131〜133及び選択駆動ギア137のいずれかに選択的に噛み合わせることで、ASFモータ102から、給紙ローラ22、32、43、切換バルブ62及びキャップ昇降機構66への動力伝達の有無が切換可能となっていたが、これとは別の構成(本発明の「第2伝達切換部」)によって上記切換が可能となっていてもよい。
【0110】
また、上述の実施の形態では、切換ギア112、122が、移動するキャリッジ11に押されて走査方向に移動するように構成されていたが、これには限られない。切換ギア112、122は、別の駆動源によって走査方向に移動されるようになっていてもよい。また、この場合、PF切換ギア112とASF切換ギア122とは、一体的に移動することには限られず、別々の駆動源により独立して移動可能となっていてもよい。
【0111】
また、上述の実施の形態では、給紙ローラ22、32、43を駆動するためのASFモータ102を用いて、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62を駆動させたが、これには限られない。例えば、図示しない排紙トレイカバーを開放させるためのモータなど、PFモータ101及びASFモータ102とは別のモータ用いて、キャップ昇降機構66及び切換バルブ62を駆動させてもよい。
【0112】
また、上述の実施の形態では、PF切換ギア112とポンプ駆動ギア141aとが噛み合った状態で、PFモータ101を正転させると、吸引ポンプ63が遮断状態に切り換わって吸引を行い、PFモータ101を逆転させると、吸引ポンプ63が連通状態に切り換わるようにしたが、これには限られない。上述の実施の形態とは逆に、PFモータ101を正転させると、吸引ポンプ63が連通状態に切り換わり、PFモータ101を逆転させると、吸引ポンプ63が遮断状態に切り換わって吸引を行うようにしてもよい。
【0113】
さらには、駆動ローラ13a、14a、51aを駆動するためのPFモータ101を用いて吸引ポンプ63を駆動させることにも限られない。PFモータ101及びASFモータ102とは別のモータを用いて吸引ポンプ63を駆動させてもよい。
【0114】
また、吸引ポンプ63は、遮断状態と連通状態と切換可能なものであることには限られない。吸引ポンプは、常に遮断状態のみを取るものであってもよい。なお、この場合には、待機状態において、キャップ連通ポート84a、84bを、大気連通ポート84cと連通させることによって、ノズルキャップ61a、61bを大気連通させる。
【0115】
この場合には、待機状態において、ノズルキャップ61a、61bが吸引ポンプと連通していないため、上述の実施の形態のバルブクリーニングを行うことはできない。しかしながら、例えば、ノズル17から吐出されるインクが染料インクである場合には、切換バルブ62内に流れ込んだインクが長期間放置されたとしても、流路部材82が収容部材81に固着してしまうということは生じにくく、バルブクリーニングを行うことができなくても問題はない。
【0116】
ここで、上述の実施の形態のように、吸引ポンプ63が、連通状態と遮断状態との間で切り換わるものである場合には、吸引ポンプ63が連通状態となっている状態で、PFモータ101を正転させると、吸引ポンプ63が連通状態から遮断状態に切り換わり、PFモータ101をさらに正転させたときに、吸引ポンプ63による吸引が開始される。このとき、吸引ポンプ63が連通状態から遮断状態に切り換わるまでのPFモータ101の回転量にばらつきがあるため、PFモータ101を同じ量だけ回転させたときの吸引ポンプ63による吸引量にばらつきが生じる。
【0117】
これに対して、吸引ポンプ63が、連通状態と遮断状態との間で切り換わることなく、常に遮断状態をとるものである場合には、PFモータ101を駆動すると、ただちに吸引ポンプ63による吸引が開始される。したがって、この場合には、上述の実施の形態とは異なり、PFモータ101を同じ量だけ回転させたときの吸引ポンプ63による吸引量のばらつきはほとんどなく、吸引ポンプ63によるインクの吸引量の制御が容易である。
【0118】
また、上述の実施の形態では、切換バルブ62が、連通ポート84a〜84dが形成された収容部材81と、収容部材81に収容され、収容部材81内で回転することで、連通ポート84a〜84d間の接続関係を切り換える流路部材82とを有するものであったが、これには限られない。例えば、切換バルブは、連通ポート84a〜84dと同様の連通ポートが形成された部材(本発明の「ポート形成部材」)と、この部材内で直線的に移動することで、連通ポート間の接続関係を切り換える部材(本発明の「移動部材」)とを有するものであるなど、別の構造を有するものであってもよい。さらには、切換バルブ62は、ポート形成部材と移動部材とを有するものとは異なる構造のものであってもよい。
【0119】
また、上述の実施の形態では、給紙トレイ41から供給された記録用紙Pが搬送ローラ13に到達したときに、PFモータ101を正転させることで、駆動ローラ13aを記録用紙Pの搬送時と反対方向に回転させて、記録用紙Pの傾きを修正させたが、このような動作は行わなくてもよい。
【0120】
また、上述の実施の形態では、搬送ローラ13、14によって記録用紙Pを搬送していたが、これには限られない。例えばベルトなど、ローラ以外の装置に搬送装置によって記録用紙Pを搬送してもよい。
【0121】
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。ノズルからインク以外の液体を吐出するプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。