(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象に指向性のある測定用信号を発信して、前記測定対象から受信した測定用信号から前記測定対象の状態を示す物理量を検出する測定方法であって、発信する複数の測定用信号の発信方向を測定部位で交差させて、
発信方向の変更、又は、発信位置同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象における発信方向の交差位置を変更し、
前記測定対象から受信する複数の測定用信号の受信方向を交差させると共に、受信方向の変更、又は、受信位置同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象に対する受信方向の交差位置を変更することを特徴とする測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このレーザー超音波検査装置の一例として、2本の光ファイバーを所定の位置関係を持ってハウジングに固定し、2つのレーザー光を同一のレンズによって被検査材の表面に照射して、その照射位置で発生する超音波信号を得て検査材料のき裂や欠陥の測定をするレーザー超音波検査装置が提案されているが、2本の光ファイバーが所定の位置関係で固定されているため、被検査材上の照射位置をハウジング及び装置に対して変更することができないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、比較的簡単な構成と制御により、内燃機関の燃焼室などの比較的広い空間において測定位置を変更できると共に、その測定位置と対応させながら物理量を検出できる測定装置、内燃機関、及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の測定装置は、測定対象に指向性のある測定用信号を発信する発信部
と、測定対象か
ら測定用信号を受信する受信部とを有し、該受信部で受信した測定用信号から前記測定対象の状態を示す物理量を検出する測定装置であって、発信する複数の測定用信号の発信方向を測定部位で交差させる前記発信部を複数設けると共に、前記発信方向の変更、又は、前記発信部同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象における発信方向の交差位置を変更する発信用交点移動機構を備え
、前記受信部を複数設け、前記受信部が受信する受信方向を前記測定対象の測定部位で交差させると共に、この受信方向同士の交差角度又は前記受信部同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象における受信方向の交差位置を変更する受信用交点移動機構を備えていることを特徴とする測定装置である。
【0009】
上記の測定装置において、前記発信用交点移動機構が、測定対象の周囲を旋回、又は、測定対象に沿って上下移動すると、測定対象を広範囲で測定することができる。
【0013】
そして、上記の目的を達成するための本発明の内燃機関は、
測定対象に指向性のある測定用信号を発信する発信部と、前記測定対象から測定用信号を受信する受信部とを有し、該受信部で受信した測定用信号から前記測定対象の状態を示す物理量を検出する測定装置であって、発信する複数の測定用信号の発信方向を測定部位で交差させる前記発信部を複数設けると共に、前記発信方向の変更、又は、前記発信部同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象における発信方向の交差位置を変更する発信用交点移動機構を備える測定装置を備えると共に、前記測定装置からの測定結果を入力して
、内燃機関の気筒内の燃料噴射を制御する制御装置を備えていることを特徴とする。
【0014】
そして、上記の目的を達成するための本発明の測定方法は、測定対象に指向性のある測定用信号を発信して、前記測定対象から受信した測定用信号から前記測定対象の状態を示す物理量を検出する測定方法であって、発信する複数の測定用信号の発信方向を測定部位で交差させて、発信方向の変更、又は、発信位置同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象における発信方向の交差位置を変更
し、前記測定対象から受信する複数の測定用信号の受信方向を交差させると共に、受信方向の変更、又は、受信位置同士の離間距離を変更することにより、前記測定対象に対する受信方向の交差位置を変更することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の測定装置、及び測定方法によれば、比較的簡単な構成と制御により、内燃機関の燃焼室などの比較的広い空間における測定位置を変更できると共に、その測定位置と対応させながら物理量を検出できる。
【0017】
また、本発明の内燃機関によれば、燃焼室における局所的な温度やガス成分の濃度等の物理量をその局所の位置と対応させながら検出することで、内燃機関の燃料噴射のより精密な制御が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態の測定装置、内燃機関及び測定方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、測定対象として、内燃機関の燃焼室の内部を例にし、測定する物理量としては温度及びガス成分の濃度を例とし、この温度及びガス成分をテラヘルツ波を用いて測定する測定装置を例にしているが、本発明は、これらに限定されることなく、例えば、内燃機関の排気マニホールドの内部や、排気管の内部等における温度やガス成分の濃度の測定や、温度を非接触で測定する放射温度計などの測定装置にも適用することができる。また、測定領域についても説明し易くするために、以下では、第1〜第3の3つの測定領域で説明しているが、実際にはより多い測定領域が連続的又は断続的に採用される。
【0020】
最初に、本発明に係る第1の実施の形態の測定装置2について説明する。この測定装置2は、
図1〜
図3に示すように、測定対象である内燃機関の気筒内の燃焼室1の内部の温度やガス成分の濃度を測定する測定装置である。この測定装置2では、例えば、発信装置10の第1の発信部11aと第2の発信部11bから、温度やガス成分の濃度の物理量を測定するために、テラヘルツ波(0.02THz(テラヘルツ)〜30THz)などの電磁波を測定用信号Sa、Sbとして燃焼室1に発信して、その散乱波(若しくは反射波)Smを受信装置20の受信部21で受信して、検出装置22で演算処理して、この演算処理結果を基に測定処理装置30で温度やガス成分の濃度を燃焼室1の内部における測定部位Rmと対応させて検出する。つまり、2つの発信部11a、11bの発信方向が交差する測定部位Rmで発信した測定用信号Sa、Sbが互いに干渉して、この干渉領域で測定用信号Smが強くなるので、この測定用信号Smを受信部21で受信して物理量を検出する。
【0021】
つまり、この測定装置2は、燃焼室1に指向性のある測定用信号Sa、Sbを発信する複数の第1及び第2の発信部11a、11bと、その測定用信号Sa、Sbの交点Pmからの散乱波Smを受信する受信部21と、受信した測定用信号Smから燃焼室1の状態を示す物理量を検出する測定装置である。そして、この複数の発信部11a、11bが発信する測定用信号Sa、Sbを燃焼室1の測定部位Rmで交差させる。この発信部11a、11bを2か所以上の複数(ここでは2か所)とし、さらに、この発信部11a、11bからの発信方向や発信位置を回動又は移動することで、燃焼室1の内部における受信部21を受信方向の直線に対して測定領域Rmが移動するように構成する。
【0022】
そして、
図1〜
図3に示すように、この測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更することにより、燃焼室1における交点Pmの位置(Ra、Rb、Rc)を変更する搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bを備えて構成される。この場合は、発信部11a、11b同士の離間距離Lは固定とされる。
【0023】
図1に示すように、測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β1が小さい場合には、言い換えれば、発信部11a、11bが測定用信号Sa、Sbを発信する方向の角度α1(=β1/2)が小さい場合には、交点Pmは発信部11a、11bから遠くなるので、この交点Pmのある第1の測定領域Raの物理量を測定できる。
【0024】
また、
図2に示すように、交差角度β2が中程度の場合には、言い換えれば、発信する方向の角度α2(=β2/2)が中程度の場合には、交点Pmは発信部11a、11bに近づき、この交点Pmのある第2の測定領域Rbの物理量を測定できる。
【0025】
そして、
図3に示すように、測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β3が大きい場合には、言い換えれば、発信部11a、11bが測定用信号Sa、Sbを発信する方向の角度α3(=β3/2)が大きい場合には、交点Pmは発信部11a、11bにより近くなるので、この交点Pmのある第3の測定領域Rcの物理量を測定できる。
【0026】
なお、
図1〜
図3では、搭載ステージ12a、12bが、発信部11a、11bの測定用信号Sa、Sbの発信方向の角度α1、α2、α3を同じ大きさで逆方向に変化させることで、交点Pmを直線状に(直線の上を)移動させて、この直線上に受信部21を固定して配置している。これにより、測定領域Rmを両方の発信部11a、11bから等距離になるようにして測定用信号Sa、Sbが互いに干渉し易くすると共に、固定状態の受信部21で測定領域Rmからの散乱波(干渉波)を効率よく受信するように構成している。
【0027】
また、この搭載ステージ12a、12bで、発信部11a、11bの測定用信号Sa、Sbの発信方向の角度α1、α2、α3を同じ大きさで逆方向に変化させる構成としては、
図4に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bを搭載ステージ12a、12bのギア13a、13bと駆動軸のギア14を噛み合わせて同時に回動する構成を用いたり、
図5に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bに設けたプーリー15a、15bと駆動軸のプーリー16の間にベルト17を架け渡して、駆動軸のプーリー16を回動することに、搭載ステージ12a、12bを同期させて回動させる構成を用いたりすることができる。
【0028】
なお、特に、受信部21が指向性を有していない場合や、指向性を有していても、変化する測定方向にその受信方向を追従できるように受信部21を構成した場合には、例えば、一方の発信部11aの測定用信号Saの発信方向の角度を固定して、他方の発信部11bの測定用信号Sbの発信方向の角度を変更することで、交点Pmを測定用信号Saの発信方向に沿って移動させることもできる。
【0029】
次に、本発明に係る第2の実施の形態の測定装置2Aについて説明する。この測定装置2Aは、燃焼室1における交点Pmの位置(Ra、Rb、Rc)を変更する搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bの構成が異なるだけで、その他の構成は、第1の実施の形態の測定装置2と同じである。
【0030】
図6〜
図8に示すように、この搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bは、測定用信号Sa、Sb同士の離間距離L(La、Lb、Lc)を変更することにより、燃焼室1における交点Pmの位置(測定領域Ra、Rb、Rc)を変更するように構成される。この場合は、測定用信号Sa、Sb同士の交差角度βは、言い換えれば、発信する方向の角度α(=β/2)は固定とされる。
【0031】
図6に示すように、発信部11a、11b同士の離間距離Laが大きい場合には、交点Pmは発信部11a、11bから遠くなるので、この交点Pmのある第1の測定領域Raの物理量を測定できる。また、
図7に示すように、発信部11a、11b同士の離間距離Lbが中程度の場合には、交点Pmは発信部11a、11bに近づき、この交点Pmのある第2の測定領域Rbの物理量を測定できる。そして、
図8に示すように、発信部11a、11b同士の離間距離Lcが小さい場合には、交点Pmは発信部11a、11bにより近くなるので、この交点Pmのある第3の測定領域Rcの物理量を測定できる。
【0032】
また、この搭載ステージ12a、12bで、発信部11a、11b同士の離間距離Lを同じ大きさで逆方向に変化させる構成としては、
図9に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bをレール18に搭載し同時に同期させて移動する構成を用いることができる。
【0033】
つまり、この第1及び第2の実施の形態の測定装置2、2Aは、測定対象1に指向性のある測定用信号Sa、Sbを発信する発信部11a、11bと、その測定用信号Sa、Sbの交点Pmからの散乱波Smを受信する受信部21とを有し、この受信部21で受信した測定用信号Sa、Sbから測定対象1の状態を示す物理量を検出する測定装置である。これらの測定装置2、2Aは、発信部11a、11bを複数設けて、これらの複数の発信部11a、11bが発信する測定用信号Sa、Sbを測定対象1の測定部位Rmで交差させる。
【0034】
それと共に、第1の実施の形態の測定装置2は、これらの測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更することにより、測定対象2における交点Pmの位置を変更する搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bを備えている。また、この第2の実施の形態の測定装置2Aは、発信部11a、11b同士の離間距離Lを変更することにより、測定対象の燃焼室1における発信方向の交差位置である交点Pmの位置を変更する搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bを備えている。
【0035】
なお、図示しないが、搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bがこれらの測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更する機構と、発信部11a、11b同士の離間距離Lを変更する機構の両方を備えて構成することもできる。
【0036】
そして、この第1及び第2の実施の形態の測定装置2、2Aに関連する第1及び第2の実施の形態の測定方法は、測定対象である燃焼室1に指向性のある測定用信号Sa、Sbを発信し、その測定用信号Sa、Sbの交点Pmからの散乱波Smを受信して、受信した測定用信号Smから燃焼室1の状態を示す物理量を検出する測定方法であり、この測定方法で、複数の測定用信号Sa、Sbを燃焼室1の測定部位Rmで交差させる。
【0037】
それと共に、第1の実施の形態の測定方法では、この測定用信号Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更することにより、燃焼室1における発信方向の交差位置である交点Pmの位置を変更し、また、第2の実施の形態の測定方法では、発信部11a、11b同士の離間距離Lを変更することにより、燃焼室1における発信方向の交差位置である交点Pmの位置を変更する。
【0038】
次に、本発明に係る第3及び第4の実施の形態の測定装置2B、2Cについて説明する。これらの測定装置2B、2Cは、
図10及び
図11に示すように、測定対象の燃焼室1に測定用信号Sa、Sbを発信する発信部11a、11bと、その測定用信号Sa、Sbの散乱波Sma、Smbを受信する受信部21a、21bとを有して構成される。そして、これらの受信部21a、21bで散乱波Sma、Smbを受信して、検出装置22で演算処理して、燃焼室1の内部の温度やガス成分の濃度を検出する。
【0039】
そして、発信部11a、11bが発信する発信方向を測定対象1の測定部位Rmで交差させると共に、受信部21a、21bが受信する受信方向も測定対象1の測定部位Rmで交差させる。そして、搭載ステージ23a、23bを用いて、第3の実施の形態の測定装置2Bでは、
図10に示すように、この受信方向同士の交差角度γを変更することにより、測定対象1における受信方向の交差位置である交点の位置を変更して、その測定用信号Sa、Sbの交点Pmと一致させる。この搭載ステージ23a、23bとしては、第1の実施の形態の測定装置2の発信部11a,11b用の搭載ステージ12a、12bと同様な構成を用いることができる。例えば、搭載ステージ23a、23bが、受信部21a、21bの受信方向の交差角度δを同じ大きさで逆方向に変化させることで、受信方向の交差位置である交点Pmを直線状に移動させる。
【0040】
また、第4の実施の形態の測定装置2Cでは、
図11に示すように、搭載ステージ23a、23bを用いて、受信部21a、21b同士の離間距離Lを変更することにより、測定対象1における受信方向の交差位置である交点の位置を変更して、その測定用信号Sa、Sbの交点Pmと一致させる。この搭載ステージ23a、23bとしては、第2の実施の形態の測定装置2Aの発信部11a,11b用の搭載ステージ12a、12bと同様な構成を用いることができる。
【0041】
そして、この第3及び第4の実施の形態の測定装置2B、2Cに関連する第3及び第4の実施の形態の測定方法は、測定対象である燃焼室1に発信する測定用信号Sa、Sbの散乱波Sma、Smbを受信して燃焼室1の状態を示す物理量を検出する測定方法であり、この測定方法で、受信する受信方向を燃焼室1の測定部位Rmで交差させる。
【0042】
それと共に、第3の実施の形態の測定方法では、この受信方向同士の交差角度γを変更することにより、燃焼室1における受信方向の交差位置である交点Pmの位置を変更し、測定用信号Sa、Sbの交点Pmと一致させる。また、第4の実施の形態の測定方法では、受信部21a、21b同士の離間距離Lを変更することにより、燃焼室1における受信方向の交差位置である交点Pmの位置を変更し、測定用信号Sa、Sbの交点Pmと一致させる。
【0043】
そして、上記の測定装置2、2A、2B、2C(以下、総称して2iとする)においては、測定対象である燃焼室1の全体を広範囲で測定することができるように、搭載ステージ12a、12b、又は、搭載ステージ23a、23bを、燃焼室1の周囲を旋回、又は、燃焼室1に沿って上下移動するように構成することが好ましい。
【0044】
さらに、この構成の場合には、第1及び第2の測定装置2、2Aでは備えられた発信部11a、11bと受信部21との相対的な位置を維持したまま、また、第3及び第4の測定装置2B、2Cでは備えられた発信部11a、11bと、受信部21a、21bとの相対的な位置を維持したまま、それぞれ、燃焼室1の周囲を旋回、又は、燃焼室1に沿って上下移動するように構成することが好ましい。
【0045】
また、上記の構成の測定装置2iでは、
図1〜
図3、
図5〜
図7、
図10及び
図11に示すような発信部11a、11bと受信部21とが対向して発信部11a、11bからの測定対象の燃焼室1の内部を通過した測定用信号Smを受信部21で受信する構成であるが、本発明では、これらの構成のみならず、発信部11a,11bの発信方向と受信部21の受信方向が交差していて、測定用信号Sa、Sbが燃焼室1の内部の物質に衝突して生じた散乱波Smを受信部21で受信する測定装置、及び、発信部11a、11bと受信部21とが同じ側にあって発信部11a、11bから燃焼室1に発信した測定用信号Sa、Sbの反射信号Smを受信部21で受信する測定装置などにも適用できる。
【0046】
そして、上記の測定装置2iを用いて、エンジンの各要素についてそれぞれ独立にその性能を実験するリグ試験又は実機エンジン試験を行う場合には、燃焼室1の各測定領域Ra、Rb、Rcにおける物理量を測定するときに、事前の準備として、測定を開始する前に、順次、
図1及び
図4に示すような状態Aでは第1の測定領域Raを、
図2及び
図5に示すような状態Bでは第2の測定領域Rbを、
図3及び
図6に示すような状態Cでは第3の測定領域Rcを計測する。つまり、試験前の測定を行う。
【0047】
そして、その後、実験及び測定を開始し、順次時、
図1及び
図4に示すような状態Aでは第1の測定領域Raの物理量を、
図2及び
図5に示すような状態Bでは第2の測定領域Rbの物理量を、
図3及び
図6に示すような状態Cでは第3の測定領域Rcの物理量を計測する。この状態A、状態B、状態Cと順次測定して、演算装置22で以下のような演算を行い、各測定領域Ra、Rb、Rcにおける各実験時の状態での物理量を算定する。
【0048】
そして、状態Aの第1の測定範囲Raの測定値と、事前の試験前測定で得られた第1の測定範囲Raの測定値と比較して、この実験時の第1の測定範囲Raの測定値から事前の第1の測定範囲Raの測定値の比を取ることで、実験時の第1の測定範囲Raの状態の物理量を検出する。
【0049】
また、状態Bの測定で得られた実験時の第2の測定範囲Rbの測定値と、事前の第2の測定範囲Rbの測定値と実験時の第1の測定範囲Raの測定値に対してこの実験時の第2の測定範囲Rbの測定値から実験時の第1の測定範囲Raにおける減衰量を引き算した値と、事前の第2の測定範囲Rbの測定値との比をとることで、実験時の第2の測定範囲Rbの状態の物理量を検出する。
【0050】
さらに、状態Cの測定で得られた実験時の第3の測定範囲Rcの測定値と事前の第3の測定範囲Rcの測定値と実験時の第2の測定範囲Rbの測定値に対して,この実験時の第3の測定範囲Rcの測定値から実験時の第1の測定範囲Raにおける減衰量と、第2の測定範囲Rbにおける減衰量を引き算した値と,事前の第3の測定範囲の測定値との比を取ることで、実験時の第3の測定範囲Rcの状態の物理量を検出する。
【0051】
この計測及び演算を実験の各状態で行い、経過時間に関して連続的又は断続的に測定することにより、各測定領域Ra、Rb、Rcにおける実験の温度やガス成分の濃度などの物理量の経過情報である時系列の実験値データを得ることができる。
【0052】
従って、上記の第1〜第4の実施の形態の測定装置2iは、測定対象である燃焼室1に指向性のある測定用信号Sa、Sb、Scを発信する発信部11a、11b、若しくは、測定対象である燃焼室1から指向性のある測定用信号Sm、Sma、Smbを受信する受信部21、21a、21bとを有し、この受信部21、21a、21bで受信した測定用信号Sm、Sma、Smbから測定対象である燃焼室1の状態を示す物理量を検出する測定装置である。
【0053】
そして、この測定装置2iは、発信する複数の測定用信号Sa、Sbの発信方向を測定部位Rmで交差させるように発信部11a、11bを複数設けると共に、発信方向の変更、又は、発信部11a、11b同士の離間距離Lを変更することにより、測定対象である燃焼室1における発信方向の交差位置(交点Pmの位置)を変更する搭載ステージ(発信用交点移動機構)12a、12bを備えている。
【0054】
そして、上記の第1〜第4の実施の形態の測定方法は、測定対象である燃焼室1に指向性のある測定用信号Sa、Sbを発信し、若しくは、測定対象である燃焼室1から測定用信号Sm、Sma、Smbを受信して、受信した測定用信号Sm、Sma、Smbから測定対象である燃焼室1の状態を示す物理量を検出する測定方法である。
【0055】
この測定方法で、発信する複数の測定用信号Sa、Sbの発信方向を測定部位Rmで交差させて、発信方向の変更、又は、発信位置同士の離間距離Lを変更することにより、測定対象である燃焼室1における発信方向の交差位置(交点Pmの位置)を変更することを特徴とする方法である。
【0056】
これらの測定装置2iおよび測定方法によれば、比較的簡単な構成と制御により、内燃機関の燃焼室1などの比較的広い空間における測定部位Rmを変更できると共に、その測定部位Rmと対応させながら物理量を検出できるので、
図13及び
図14に示す比較例1の測定装置2X、及び、
図15に示す比較例2の測定装置2Yの下記のような問題点を解決できる。
【0057】
つまり、
図13及び
図14に示すような発信部11と受信部21が1組のみで構成される第1の比較例の測定装置2Xでは、必ずしも、局所から発生する測定用信号Sを検出しているわけではなく、
図13及び
図14の構成では信号透過領域Rtのすべての測定用信号Sを合わせて検出していることになる。つまり、受信部21に入力される測定用信号(検出信号)Sは、発信部11から受信部21までの領域Rtの途中で検出された信号発生箇所(例えば、過熱箇所、排ガス発生箇所等)Rmx、Rmyの位置までは特定できない。ただ、途中のどこかにこの信号発生箇所Rmx、Rmyがあるということだけが分かる。そのため、燃料噴射時期、噴射量などによる制御を実行するとしても、データとして不足しており、噴射時期をどれだけずらせば、その箇所から過熱がなくなるか不明となってしまう。または、
図15及び
図16に示すような受信部21のみから構成される第2の比較例の測定装置1Yにおいても同様である。
【0058】
そして、本発明に係る実施の形態の内燃機関Eは、
図12に示すように、上記の測定装置2iを備えると共、この測定装置2iからの測定結果を入力して、内燃機関Eの気筒内の燃焼室1への燃料噴射を制御する制御装置40を備えて構成される。つまり、内燃機関Eの燃焼室1に燃料Fを噴射する燃料噴射装置3を測定装置2iで得た物理量を基に制御す値40で制御する。この内燃機関Eによれば、燃焼室1における局所的な温度やガス成分の濃度等の物理量を検出して、これらの物理量に基づいて燃料噴射の噴射時期(噴射開始時期、噴射終了時期)、噴射位置、噴射量の調整制御を行うことで、内燃機関Eの燃料噴射の精密な制御が可能となる。
【0059】
また、燃焼室1の内部の最大過熱箇所、過熱時期を追跡することが可能となるので、この追跡結果を制御装置40内で記憶するとともに、制御装置40でこの追跡結果を利用して、次の燃料噴射の際に、局所的な過熱状態が発生しないように燃料噴射を調整することが可能となる。
【0060】
つまり、上記の測定装置2iにより、物理的な状態、化学的状態を局所別に検出することができる。例えば、温度を測定した場合には、燃焼室1の内部における過熱箇所と過熱時期の特定が可能となる。そして、この過熱箇所、加熱時期が特定可能であると、燃料Fの噴射時期を前後すること等で過熱状態の発生を回避することができるようになる。言い換えれば、この過熱箇所の特定により、過熱箇所を判断して、燃料噴射の制御を変更することで、局所的な過熱状態が発生するのを回避することができる。
【0061】
また、これらの測定装置2iで、内燃機関Eの燃焼室1の内部のみならず、内燃機関Eの排気マニホールド(図示しない)の内部、又は、内燃機関Eの排気管(図示しない)の内部の状態を示す温度やガス成分の濃度等の物理量を測定するように構成すると、温度が高くなる内燃機関Eの燃焼室1の内部、排気マニホールドの内部、排気管の内部の状態などの内燃機関Eの状態を精度良く測定できるようになる。