特許第6776610号(P6776610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776610X線画像撮影システムおよびX線画像撮影装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776610
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】X線画像撮影システムおよびX線画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   A61B6/00 300S
   A61B6/00 320M
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-97546(P2016-97546)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-205141(P2017-205141A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 生馬
(72)【発明者】
【氏名】江口 愛彦
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/179516(WO,A1)
【文献】 特開2014−022851(JP,A)
【文献】 特開2015−146877(JP,A)
【文献】 米国特許第06307915(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
G01T 1/00−1/16
G01T 1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の走査線および複数の信号線と、
二次元状に配列された複数のX線検出素子と、
前記走査線を介してオフ電圧が印加されると前記X線検出素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記X線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記X線検出素子から放出された前記電荷を画像データとして読み出す読み出し回路と、
X線センサーの出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う検知手段と、
前記検知手段がX線の照射開始を検知すると、全ての前記スイッチ素子をオフ状態として前記各X線検出素子内に電荷を蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる制御手段と、
を備えるX線画像撮影装置と、
前記X線画像撮影装置にX線を照射するX線発生装置と、
前記検知手段が前記検知処理を行っている期間と前記電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間以外の期間において、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの出力に基づいて、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合、
前記X線画像撮影装置に、撮影に向けて行っている動作を中断させ
報知手段に、ユーザーに前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの感度調整を行うことを促す旨を報知させることを特徴とするX線画像撮影システム。
【請求項2】
前記判断手段が前記X線画像撮影装置に撮影に向けて行っている動作を中断させた場合に、報知手段に、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知させることを特徴とする請求項1に記載のX線画像撮影システム。
【請求項3】
前記判断手段が前記X線画像撮影装置に撮影に向けて行っている動作を中断させた場合に、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの感度調整を自動的に行う感度調整手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のX線画像撮影システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記検知手段が前記検知処理を行っている期間と前記電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間においても、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの出力に基づいて、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断することを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のX線画像撮影システム。
【請求項5】
前記判断手段は、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合であっても、前記電荷蓄積状態の間に、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの出力に基づいて前記X線発生装置からX線が適切に照射されたと判断される場合には、前記X線画像撮影装置に、撮影に向けて行っている動作を継続させることを特徴とする請求項に記載のX線画像撮影システム。
【請求項6】
前記判断手段は、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合であっても、前記電荷蓄積状態の間に、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの出力に基づいて前記X線発生装置からX線が適切に照射されたと判断される場合には、報知手段に、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知させないことを特徴とする請求項4又は請求項に記載のX線画像撮影システム。
【請求項7】
前記X線センサーは、X線の照射により発生した電圧値が所定の設定値を越えた場合にパルス信号を出力するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載のX線画像撮影システム。
【請求項8】
複数の走査線および複数の信号線と、
二次元状に配列された複数のX線検出素子と、
前記走査線を介してオフ電圧が印加されると前記X線検出素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記X線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記X線検出素子から放出された前記電荷を画像データとして読み出す読み出し回路と、
X線センサーの出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う検知手段と、
前記検知手段がX線の照射開始を検知すると、全ての前記スイッチ素子をオフ状態として前記各X線検出素子内に電荷を蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる制御手段と、
前記検知手段が前記検知処理を行っている期間と前記電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間以外の期間において、前記X線センサーの出力に基づいて、撮影環境が、X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、撮影環境が前記環境であると判断した場合、
少なくとも前記検知手段および前記制御手段に、撮影に向けて行っている動作を中断させ
報知手段に、ユーザーにX線画像撮影装置の前記X線センサーの感度調整を行うことを促す旨を報知させることを特徴とするX線画像撮影装置。
【請求項9】
前記判断手段は、撮影環境が前記環境であると判断して少なくとも前記検知手段および前記制御手段に撮影に向けて行っている動作を中断させた場合であっても、その前に前記検知処理が開始されX線の照射開始が検知されて移行した前記電荷蓄積状態の間に、前記X線センサーの出力に基づいて前記X線発生装置からX線が照射されたと判断される場合
には、少なくとも前記検知手段および前記制御手段に、撮影に向けて行っている動作を継続させることを特徴とする請求項に記載のX線画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線画像撮影システムおよびX線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型のX線画像撮影装置や、照射されたX線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型のX線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型のX線画像撮影装置における検出素子や、間接型のX線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせてX線検出素子という。
【0003】
このタイプのX線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型(固定型等ともいう。)として構成されていたが、近年、X線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型(カセッテ型等ともいう。)のX線画像撮影装置が開発され、実用化されている。
【0004】
このようなX線画像撮影装置では、例えば後述する図2図3等に示すように、通常、複数のX線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列され、各X線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ素子が接続されて構成される。そして、通常、X線画像撮影は、X線発生装置からX線画像撮影装置に対して、被写体である患者の胸部正面等の所定の撮影部位を介した状態でX線が照射されて行われる。
【0005】
その際、X線画像撮影装置の走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して全てのTFT8をオフ状態とした状態(すなわち後述する電荷蓄積状態)でX線を照射することで、X線の照射により各X線検出素子7内で発生した電荷が、各X線検出素子7内に的確に蓄積されて撮影が行われる。
【0006】
そのため、例えば従来の専用機型のX線画像撮影装置等では、X線発生装置との間で信号をやり取りするなど連携して、X線画像撮影装置が走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して電荷蓄積状態になったことを確認したうえで、X線発生装置からX線を照射させるように構成される場合が多かった。
【0007】
しかし、例えば、X線画像撮影装置とX線発生装置との製造元が異なっているような場合には、両者の間で信号のやり取り等を行うことができない場合も少なくない。そのため、このようにX線画像撮影装置とX線発生装置とが連携せずに撮影を行う場合には、X線画像撮影装置が自らX線が照射されたことを検知しなければならなくなる。そこで、近年、X線の照射が開始されたことを自ら検知するように構成されたX線画像撮影装置が種々開発されている。
【0008】
ところで、近年、このように自らX線の照射開始を検知するX線画像撮影装置が、X線が照射されていないにもかかわらず、X線が照射されたと誤検知する場合があることが分かってきた。
【0009】
例えば、X線画像撮影装置に衝撃や振動が加わると、誤検知が生じる場合がある。そのため、特許文献1では、X線検出素子から出力される信号の変化に基づいて、予め設定された振動許容範囲を越える信号が発生したか否かを検出する振動検出部を備えるX線画像撮影装置が記載されている。
【0010】
また、特許文献2には、撮影前に、X線画像撮影装置で、X線発生装置から照射されたX線の線量を検知し、検知した線量が閾値未満である場合や、検知した線量が閾値以上であるが閾値に到達するまでの到達時間が所定時間を越える場合は、撮影された画像が正規の画像ではないと判断して当該画像を制御装置に出力しないよう無線通信部を制御するX線画像撮影装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−195612号公報
【特許文献2】特開2012−85794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、例えば、ラジオアイソトープ(radioisotope)を用いたRI検査が行われた後の患者をX線画像撮影装置で撮影するような場合、X線画像撮影装置が、患者の体内のRIから放射されるγ線によって、X線の照射が開始されたと誤検知してしまう場合がある。
【0013】
この場合、γ線が患者の体内からいわばじわじわと放射されるため、例えば患者の近くにX線画像撮影装置を持っていっても、X線画像撮影装置のX線検出素子から読み出される信号が急激に増加するわけではない。そのため、上記の特許文献1に記載された方法を上記の場合に応用しても、患者の体内のRIから放射されるγ線による誤検知が生じることを防止することはできない。
【0014】
また、上記の特許文献2に記載された技術を、上記のRI検査後の患者に対する撮影で誤検知が生じる場合に適用すれば、誤検知して撮影された画像は正規の画像ではないため制御装置に出力されることは防止される。しかし、RI検査後の患者からは絶えずγ線が放射されているため、特許文献2に記載された技術では、γ線によってX線画像撮影装置が次々とX線の照射開始を誤検知してしまい非正規の画像が撮影され続けてしまう状態を止めることはできない。
【0015】
そして、このような状況は、上記のようにRI検査後の患者に対して撮影を行う撮影環境だけでなく、例えば、温泉地等の、自然放射線のレベルが高いような撮影環境においても同様に生じ得る。
【0016】
しかし、このようにして誤検知が生じると、X線画像撮影装置ではそれに引き続いて画像データdの読み出し処理が行われるが、この場合はX線発生装置からX線が照射されて被写体の撮影が行われたわけではないため、結局、何も撮影されていない画像しか得られない。そのため、放射線技師等の操作者は写損処理(すなわち撮影に失敗した際の処理)を行って再撮影を行うことになるが、例えば、上記のように、自然放射線や、RI検査後の患者から放射されるγ線によって、X線画像撮影装置で次々と誤検知してしまい、そのたびに写損処理を行うことになると、X線画像撮影装置やそれを用いたX線画像撮影システムが放射線技師等の操作者にとって非常に使い勝手が悪いものになってしまう。
【0017】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、自らX線の照射開始を検知するX線画像撮影装置を用いて撮影を行う際、γ線や自然放射線のレベルが高い撮影環境でX線の照射開始の誤検知が発生することを的確に防止することが可能なX線画像撮影システムやX線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記の問題を解決するために、本発明のX線画像撮影システムは、
複数の走査線および複数の信号線と、
二次元状に配列された複数のX線検出素子と、
前記走査線を介してオフ電圧が印加されると前記X線検出素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記X線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記X線検出素子から放出された前記電荷を画像データとして読み出す読み出し回路と、
X線センサーの出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う検知手段と、
前記検知手段がX線の照射開始を検知すると、全ての前記スイッチ素子をオフ状態として前記各X線検出素子内に電荷を蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる制御手段と、
を備えるX線画像撮影装置と、
前記X線画像撮影装置にX線を照射するX線発生装置と、
前記検知手段が前記検知処理を行っている期間と前記電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間以外の期間において、前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの出力に基づいて、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、撮影環境が、前記X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合、
前記X線画像撮影装置に、撮影に向けて行っている動作を中断させ
報知手段に、ユーザーに前記X線画像撮影装置の前記X線センサーの感度調整を行うことを促す旨を報知させることを特徴とする。
【0019】
複数の走査線および複数の信号線と、
二次元状に配列された複数のX線検出素子と、
前記走査線を介してオフ電圧が印加されると前記X線検出素子内に電荷を蓄積させ、オン電圧が印加されると前記X線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ素子と、
前記各走査線に印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替える走査駆動手段と、
前記X線検出素子から放出された前記電荷を画像データとして読み出す読み出し回路と、
X線センサーの出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う検知手段と、
前記検知手段がX線の照射開始を検知すると、全ての前記スイッチ素子をオフ状態として前記各X線検出素子内に電荷を蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる制御手段と、
前記検知手段が前記検知処理を行っている期間と前記電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間以外の期間において、前記X線センサーの出力に基づいて、撮影環境が、X線発生装置から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する判断手段と、を備え、
前記判断手段は、撮影環境が前記環境であると判断した場合、
少なくとも前記検知手段および前記制御手段に、撮影に向けて行っている動作を中断させ
報知手段に、ユーザーにX線画像撮影装置の前記X線センサーの感度調整を行うことを促す旨を報知させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のような方式のX線画像撮影装置によれば、自らX線の照射開始を検知するX線画像撮影装置を用いて撮影を行う際、γ線や自然放射線のレベルが高い撮影環境でX線の照射開始の誤検知が発生することを的確に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るX線画像撮影装置の外観を表す斜視図である。
図2図1のX−X線に沿う断面図である。
図3】基板の構成を示す平面図である。
図4】X線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
図5】X線センサーを複数設けた場合のX線画像撮影装置の例を表す図である。
図6】X線センサーのアナログ値の電圧値の時間的推移(下段)およびそれに対応して出力されるパルス信号(上段)の例等を表す図である。
図7】(A)マスク時間等を説明する図であり、(B)マスク時間が設定されている場合のパルス信号Pが出力された回数のカウントの仕方等を説明する図である。
図8】本実施形態に係るX線画像撮影システムを撮影室等に構築した構成例を表す図である。
図9】本実施形態に係るX線画像撮影システムを回診車に搭載するようにして構築した構成例を表す図である。
図10】撮影時にX線画像撮影装置の制御手段が行う各処理および期間Dを表す図である。
図11】検知処理、電荷蓄積状態および画像データの読み出し処理を行う場合に放射線画像撮影装置の各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
図12】自然放射線等のレベルが高い撮影環境でX線センサーから頻繁にパルス信号が出力される状態およびX線の照射開始が誤検知される可能性があることを説明する図である。
図13】コンソールの表示部上での表示例等を表す図である。
図14】X線センサーの感度調整を行う際に表示される画面等を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るX線画像撮影システムおよびX線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
なお、以下では、X線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射されたX線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型のX線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずにX線を検出素子で直接検出する、いわゆる直接型のX線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0024】
[X線画像撮影装置の構成]
まず、本実施形態に係るX線画像撮影装置について説明する。図1は、本実施形態に係るX線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。なお、以下では、X線画像撮影装置1における上下方向については、X線画像撮影装置1を図2の状態に配置した場合に基づいて説明する。
【0025】
図1に示すように、X線画像撮影装置1の筐体2の一方の側面には、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、インジケーター40等が配置されている。また、図示を省略するが、筐体2の反対側の側面には、外部と無線方式で通信を行うためのアンテナ41(後述する図4参照)が設けられている。
【0026】
図2に示すように、筐体2の内部には、基台31が配設されており、基台31の上面側には、図示しない鉛の薄板等を介して基板4が配置されている。基板4の上面には前述したX線検出素子7等が設けられているが、この点については後で説明する。そして、基板4の上方には、シンチレーター基板34に形成されたシンチレーター3と基板4のX線検出素子7等とが対向する状態でシンチレーター3やシンチレーター基板34が配置されている。
【0027】
基台31の下面側には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や内蔵電源24等が取り付けられている。また、基台31の下面側には、X線センサー25が取り付けられている。本実施形態では、このようにしてセンサーパネルSPが形成されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材35が設けられている。
【0028】
図3に示すように、基板4の上面(すなわちシンチレーター3に対向する面)4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各領域rには、X線検出素子7がそれぞれ設けられている。本実施形態では、このように、各X線検出素子7が二次元状(マトリクス状)に配列されている。
【0029】
また、本実施形態では、複数のバイアス線9が各信号線6に平行に配設されており、各バイアス線9は結線10に接続されている。そして、基板4の周縁部に、複数の入出力端子11が設けられており、各入出力端子11はそれぞれ各走査線5や各信号線6、結線10と接続されている。そして、図示を省略するが、各入出力端子11は、後述する読み出しIC16等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板と接続され、フレキシブル回路基板が基板4の裏面側に引き回されて前述したPCB基板33等に接続されるようになっている。
【0030】
ここで、X線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図4は本実施形態に係るX線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図である。各X線検出素子7では、図示しない被写体を介して照射されたX線の線量(或いはシンチレーター3で変換された電磁波の光量)に応じた電荷が各X線検出素子7内でそれぞれ発生するようになっている。なお、以下では、X線検出素子7がフォトダイオードで構成されている場合について説明するが、X線検出素子7を例えばフォトトランジスターやCCD(Charge Coupled Device)等を用いることも可能である。
【0031】
そして、各X線検出素子7の一方の電極7aには、バイアス線9が接続されており、バイアス線9や結線10を介してバイアス電源14から各X線検出素子7に逆バイアス電圧が印加されるようになっている。また、各X線検出素子7の他方の電極7bには、スイッチ素子としてTFT8が接続されており、TFT8は信号線6に接続されている。
【0032】
また、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してオン電圧が印加されるとオン状態となり、X線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させる。また、走査線5を介してオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、X線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、X線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0033】
各走査線5は、それぞれ走査駆動手段15のゲートドライバー15bに接続されている。走査駆動手段15では、配線15cを介して電源回路15aからゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧が供給されるようになっており、ゲートドライバー15bで走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えるようになっている。
【0034】
また、各信号線6は、それぞれ読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17に接続されている。本実施形態では、読み出し回路17は、積分回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図4では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。
【0035】
撮影時に、スイッチ素子である各TFT8がオフ状態とされた状態で図示しないX線照射装置からX線画像撮影装置1にX線が照射されると、X線の照射により各X線検出素子7内で発生した電荷がX線検出素子7内に蓄積される。そして、各X線検出素子7からの画像データdの読み出し処理の際には、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されて、各X線検出素子7内から信号線6に電荷がそれぞれ放出される。
【0036】
そして、その電荷が、各読み出し回路17の積分回路18に流れ込んで蓄積され、蓄積された電荷量に応じた電圧値が出力される。相関二重サンプリング回路19は、各X線検出素子7から電荷が流れ込む前と後にそれぞれ積分回路18から出力された出力値の差分をアナログ値の画像データdとして出力する。
【0037】
そして、出力された各画像データdがアナログマルチプレクサー21を介してA/D変換器20に順次送信され、A/D変換器20でデジタル値の画像データdに順次変換されて記憶手段23に出力されて順次保存される。このようにして画像データdの読み出し処理が行われるようになっている。
【0038】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
【0039】
制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)、NAND型フラッシュメモリー等で構成される記憶手段23や、リチウムイオンキャパシター等で構成される内蔵電源24、X線センサー25等が接続されている。また、制御手段22には、前述したアンテナ41やコネクター39を介して外部と無線方式や有線方式で通信を行うための通信部42が接続されている。
【0040】
なお、例えばX線センサー25と制御手段22とを結ぶ配線でノイズを拾ったりしないように配線をシールドしたり、或いはX線センサー25にX線が到達し易いようにするために、基台31(図2参照)のX線センサー25に対応する部分には鉛の薄板を設けないようにする等の処理が適宜行われる。
【0041】
また、図2図4では、X線画像撮影装置1にX線センサー25を1つだけ設ける場合を示したが、例えば図5に示すように複数設けることも可能である。すなわち、X線センサー25を、基台31の下面側の中央の位置だけでなく、中央の位置以外の位置にも配置するように構成することが可能である。なお、図5では、X線センサー25を2個設ける場合を示したが、3個以上設けてもよい。このように構成すれば、X線がX線画像撮影装置1に対して照射野が絞られて照射された場合でも、複数のX線センサー25のうちのいずれかでX線を感知することが可能となる。
【0042】
一方、本実施形態では、制御手段22は、X線センサー25の出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う検知手段として機能するようになっている。なお、制御手段22とは別体の回路等として検知手段を設けるように構成することも可能である。
【0043】
本実施形態では、X線センサー25は、図6に示すように、X線が照射されると発生するアナログ値の電圧値Vaが変動し、電圧値Vaが正の設定値Vth+を上回った場合や負の設定値Vth−を下回った場合に、パルス信号Pを出力するようになっている。そして、後述するX線発生装置から照射されたX線がX線センサー25に入射した場合には、例えば図6にBやCで示すように、X線センサー25にX線の1つの光子(photon)が入射するごとに1つのパルス信号Pが出力される。
【0044】
しかし、X線センサー25に例えばエネルギーが大きい自然放射線等の放射線が入射すると、発生する電圧値Vaが大きく波打ち、X線センサー25に1つの光子が入射したにもかかわらず、例えば図6にAで示すようにパルス信号Pが複数回出力される場合がある。そのため、本実施形態では、図7(A)に示すように、X線センサー25からパルス信号Pが出力された場合には、制御手段22は、パルス信号Pが出力されてから所定のマスク時間Δtmが経過するまでの間は、少なくともX線センサー25からパルス信号Pが出力されたか否かの判断を行わないようになっている。
【0045】
そして、本実施形態では、検知手段としての制御手段22は、例えば図7(B)に示すように、X線センサー25からパルス信号Pが出力されてから所定時間ΔT内に所定の回数N(図7(B)では3回)のパルス信号Pが出力された時点で、X線発生装置からのX線の照射が開始されたと判断するようになっている。
【0046】
なお、本実施形態では、制御手段22は、例えば上記のように所定の回数Nが3回に設定されている場合には、図7(B)に示したように、3回目のパルス信号Pが出力された時点で(所定時間ΔTが経過していなくてもその時点で)X線の照射が開始されたと判断してX線の照射開始を検知するようになっている。
【0047】
[X線画像撮影システムの構成]
次に、本実施形態に係るX線画像撮影システムについて説明する。X線画像撮影システム50は、例えば図8に示すように撮影室Ra等に構築することも可能であり、図9に示すように回診車70に搭載するようにして構築することも可能である。
【0048】
例えば図8に示すようにX線画像撮影システム50を撮影室Ra等に構築する場合、X線画像撮影装置1を撮影台51のカセッテホルダー51aに装填して撮影が行われる。なお、図8において、撮影台51Aは立位撮影用の撮影台を表し、撮影台51Bは臥位撮影用の撮影台を表している。また、例えば、X線画像撮影装置1を臥位撮影用の撮影台51Bの天板上に横臥した図示しない被写体と天板との間に差し込む等して撮影を行うことも可能である。
【0049】
撮影室Raには、図示しない被写体を介してX線画像撮影装置1にX線を照射するX線発生装置52が少なくとも1つ設けられている。また、撮影室Raには、撮影室Ra内のX線画像撮影装置1と前室Rbのコンソール58等との間の無線方式や有線方式での通信等を中継するためのアクセスポイント53を備えた中継器54が設けられている。なお、X線画像撮影装置1と中継器54との間の通信は、無線方式で行ってもよく有線方式で行ってもよい。
【0050】
また、X線発生装置52のジェネレーター55は、放射線技師等の操作者により管電圧や管電流、曝射時間、照射線量等が設定されると、X線発生装置52から、設定された管電圧等に応じた線量のX線を照射させるなど、X線発生装置52に対して種々の制御を行うようになっている。
【0051】
前室(操作室等ともいう。)Rbには、X線発生装置52の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作してジェネレーター55に対してX線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。また、前室Rbには、コンピューター等で構成されたコンソール58が設置されている。なお、コンソール58を撮影室Raや前室Rbの外側や別室等に設けるように構成することも可能である。
【0052】
そして、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等で構成される表示部58aや、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力手段58bが接続されている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段58cが接続され、或いは内蔵されている。
【0053】
一方、図9に示すように、X線発生装置52やコンソール58等を搭載した回診車70を病室R1(或いは手術室や救急処置室)等に持ち込んで撮影を行うことも可能である。この場合、ジェネレーター55や中継器54(いずれも図示省略)等は、回診車70の本体部内に収納されている。
【0054】
そして、この場合、X線画像撮影装置1は、図9に示すようにベッドBeと被写体Hである患者との間に差し込まれたり、或いは患者の身体にあてがわれるようにして撮影に用いられる。そして、この場合も、放射線技師等の操作者Tが曝射スイッチ56を操作することでX線発生装置52からX線が照射されて撮影が行われる。
【0055】
[判断手段による処理について]
次に、本実施形態に係るX線画像撮影システム50における判断手段による処理について説明する。
【0056】
なお、以下では、X線画像撮影装置1の制御手段22が判断手段として機能するように構成されている場合について説明するが、例えばコンソール58やコンソール58とは別体のコンピューター等が判断手段として機能するように構成することも可能である。そして、その場合は、X線画像撮影装置1と判断手段との間で必要な情報や信号のやり取りを行うように構成される。
【0057】
また、以下では、X線画像撮影装置1の制御手段22が判断手段として機能する場合には、判断手段22として説明する。また、本実施形態に係るX線画像撮影システム50やX線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
【0058】
本実施形態では、判断手段22は、上記のX線の照射開始の検知処理を行っている期間と、その後の電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間以外の期間では、X線センサー25の出力に基づいて、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線(すなわち前述した自然放射線やRI検査後の患者の体内から放射されるγ線等)のレベルが高い環境であるか否かを判断する。そして、撮影環境が、X線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合には、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を中断させるようになっている。以下、具体的に説明する。
【0059】
撮影時に、X線画像撮影装置1の制御手段22は、図10に示すように、スタンバイ状態で例えばコンソール58から覚醒(wake up)信号を受信すると、走査駆動手段15(図4参照)のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各X線検出素子7内に残存する電荷を各X線検出素子7内から除去するX線検出素子7のリセット処理を行わせる。なお、図10中のDについては後で説明する。
【0060】
そして、例えばX線検出素子7のリセット処理を所定フレーム分或いは所定時間行うと、制御手段22(この場合は検知手段としての制御手段22)は、上記のようにX線センサー25の出力に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を開始する。
【0061】
なお、スイッチ素子であるTFT8をオフした状態で検知処理を行うとX線検出素子7内で発生した暗電荷(暗電流等ともいう。)がX線検出素子7内に蓄積してしまうため、本実施形態では、制御手段22は、図11に示すように、検知処理を行う間、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加してX線検出素子7のリセット処理を行わせるようになっている。
【0062】
そして、制御手段22は、上記のようにしてX線の照射開始を検知すると、図11に示すように、X線検出素子7のリセット処理を停止し、ゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全てのTFT8をオフ状態にして、X線の照射により各X線検出素子7内で発生した電荷を各X線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。そして、その後、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して前述した画像データdの読み出し処理を行わせる。
【0063】
そして、制御手段22は、画像データdを読み出すと、図10に示すように、読み出した画像データdや、画像データdから抽出したプレビュー用のデータ等をコンソール58に転送するとともに、X線検出素子7のリセット処理等を行う。
【0064】
また、読み出された画像データdには前述した暗電荷に起因するオフセット分が重畳されているため、図10に示した画像データdの読み出し処理やX線検出素子7のリセット処理の後に、X線画像撮影装置1にX線が照射されない状態で図11に示したシーケンスを繰り返して、画像データdの代わりに上記のオフセット分(暗画像等ともいう。)を読み出す処理が行われる場合もある。
【0065】
そして、制御手段22は、それらの処理を終了すると、再びスタンバイ状態に移行する。また、次の撮影が指定されている場合には、スタンバイ状態に移行せずにすぐに次の撮影に向けてX線検出素子7のリセット処理等を開始する場合もある。
【0066】
一方、通常の場合には、X線発生装置52(図8図9参照)からX線が照射されない限り、X線画像撮影装置1のX線センサー25からはパルス信号Pはほとんど出力されない。或いはパルス信号Pが出力されたとしても、その頻度は非常に低い。しかし、前述したように、例えば、X線画像撮影装置1が温泉地等の自然放射線のレベルが高い撮影環境で撮影に用いられたり、X線画像撮影装置1を用いてRI検査後の患者の撮影を行うような撮影環境では、X線センサー25からは、例えば図12に示すように頻繁にパルス信号Pが出力される場合がある。
【0067】
そして、そのような撮影環境で、X線センサー25から頻繁にパルス信号Pが出力される状態でX線の照射開始の検知処理を行うと、X線発生装置52からX線が照射されていないにもかかわらず、X線センサー25からパルス信号Pが出力されてから所定時間ΔT内に所定の回数Nのパルス信号Pが出力されてしまい、検知手段である制御手段22がX線の照射が開始されたと誤検知してしまう可能性がある。
【0068】
そして、その状態で、電荷蓄積状態(図11参照)に移行しても、この場合は、X線発生装置52からX線が照射されて撮影が行われたわけではないため、電荷蓄積状態では各X線検出素子7内に暗電荷が蓄積されるだけであり、結局、何も撮影されていない画像しか得られない。そして、画像中に何も撮影されていないと、放射線技師等の操作者は写損処理を行って再撮影を行う処理を行わなければならなくなるが、それではX線画像撮影装置1やX線画像撮影システム50が操作者にとって非常に使い勝手が悪いものになってしまうことは前述した通りである。
【0069】
そこで、本実施形態では、判断手段22は、X線の照射開始の検知処理を行っている期間や電荷蓄積状態の期間(すなわち図10中のDで示される期間)以外の期間(すなわちX線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間)に、X線センサー25の出力に基づいて、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線(すなわち前述した自然放射線やRI検査後の患者の体内から放射されるγ線等)のレベルが高い環境であるか否かを判断するようになっている。
【0070】
具体的には、判断手段22は、上記の期間Dの前のX線検出素子7のリセット処理を行っている期間や、上記の期間Dの後の画像データdの読み出し処理以降の期間において、例えば、予め設定された時間τ(例えば1秒)内にX線センサー25から出力されるパルス信号Pの数をカウントする処理を繰り返す。そして、上記の時間τ内に予め設定された閾値nth以上の個数nのパルス信号Pが出力された場合に、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断するように構成することが可能である。
【0071】
なお、判断手段22における判断処理を上記のように構成することも可能であるが、その他にも、例えば、X線センサー25からパルス信号Pが出力されるごとに時間間隔を計測し、計測した時間間隔(この場合時間間隔が短いほど放射線のレベルが高い環境である。)に基づいて判断するように構成することも可能であり、判断方法は所定の方法に限定されない。
【0072】
そして、本実施形態では、判断手段22は、上記のようにして、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合には、X線画像撮影装置1が撮影に向けて行っている動作を中断させるようになっている。
【0073】
すなわち、判断手段22が、図10に示した期間Dの前のX線検出素子7のリセット処理を行っている期間に上記のように判断した場合には、X線画像撮影装置1は、その時点で行っているX線検出素子7のリセット処理を中断させ(リセット処理以外の処理を行っている場合にはその処理も中断させ)、その後の処理を行わせない。
【0074】
また、判断手段22が、図10に示した後の画像データdの読み出し処理以降の期間に上記のように判断した場合には、X線画像撮影装置1は、その時点で行っている画像データdの読み出し処理や、画像データd等の転送処理、X線検出素子7のリセット処理、或いは前述した暗電荷に起因するオフセット分の読み出す処理等を中断させるようになっている。
【0075】
また、判断手段22が、図10に示した後の画像データdの読み出し処理以降の期間に上記のように判断した場合に、画像データdの読み出し処理や画像データd等の転送処理、X線検出素子7のリセット処理、或いは前述した暗電荷に起因するオフセット分の読み出す処理等まで終了させた後、スタンバイ状態になった時点で動作を中断させて、次の撮影に向けての動作を再開させないように構成してもよい。
【0076】
このように、本実施形態では、判断手段22は、X線の照射開始の検知処理を行っている期間や電荷蓄積状態の期間D以外の期間、すなわちX線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間に、X線センサー25から出力されるパルス信号Pの状態を監視して、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する。
【0077】
そして、このようにX線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間に、X線センサー25から頻繁にパルス信号Pが出力されていれば、撮影環境が、自然放射線やγ線等のレベルが高い環境であると的確に判断することができる。
【0078】
そして、撮影環境が、自然放射線やγ線等のレベルが高い環境であると判断される場合に、X線画像撮影装置1が撮影に向けて行っている動作を中断させるように構成することで、自然放射線やγ線等のレベルが高い状態で、X線画像撮影装置1の検知手段(制御手段22)がX線の照射開始の検知処理を行ってしまい、自然放射線やRI検査後の患者の身体から放射されるγ線によってX線の照射開始を誤検知してしまうことが的確に防止される。
【0079】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るX線画像撮影システム50やX線画像撮影装置1によれば、装置自らがX線の照射開始を検知するX線画像撮影装置1を用いて撮影を行う際、判断手段22は、X線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間に、X線センサー25から出力されるパルス信号Pの状態を監視して、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベル、すなわち自然放射線のレベルやRI検査後の患者の身体から放射されるγ線等のレベルが高い環境であるか否かを判断する。
【0080】
そのため、このようにX線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間に、X線センサー25から頻繁にパルス信号Pが出力されていれば、撮影環境が、自然放射線やγ線等のレベルが高い環境であると的確に判断することができる。
【0081】
そして、本実施形態に係るX線画像撮影システム50やX線画像撮影装置1では、撮影環境が、自然放射線やγ線等のレベルが高い環境であると判断された場合に、X線画像撮影装置1がこれから行う撮影や次の撮影に向けて行っている動作が中断されるため、X線の照射開始の誤検知が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0082】
そのため、自然放射線やγ線のレベルが高い撮影環境で、X線画像撮影装置1がX線の照射開始の誤検知を繰り返し行ってしまい、放射線技師等の操作者がそのたびに写損処理を行うような事態が生じることがなくなるため、本実施形態に係るX線画像撮影システム50やX線画像撮影装置1が放射線技師等の操作者にとって非常に使い勝手が良いものになる。
【0083】
なお、上記の実施形態において、図10に示した期間D、すなわちX線の照射開始の検知処理を行っている期間や電荷蓄積状態の期間(すなわちX線発生装置52からX線が照射される可能性がある期間)中は、上記の判断処理、すなわちX線センサー25の出力に基づいて、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する処理を行ってもよく、また、期間D中は判断処理を行わないように構成することも可能である。
【0084】
[ユーザーへの報知について]
上記のように、本実施形態に係るX線画像撮影システム50やX線画像撮影装置1では、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベル、すなわち自然放射線のレベルやRI検査後の患者の身体から放射されるγ線等のレベルが高い環境であると判断すると、X線画像撮影装置1はこれから行う撮影や次の撮影に向けて行っている動作を中断する。そのため、放射線技師等のユーザーに報知しないと、X線画像撮影装置1が動作を中断していることにユーザーが気付かない可能性がある。
【0085】
そこで、本実施形態に係るX線画像撮影システム50に、上記のように、判断手段22は、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を中断させた場合に、報知手段に、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知させるように構成することが可能である。
【0086】
報知手段として、例えばコンソール58の表示部58aを用い、例えば図13に示すように、表示部58a上に「撮影準備中に放射線を検知しました。」等の表示E1を行って、ユーザーに報知するように構成することが可能である。なお、コンソール58の表示部58aとは別体の表示装置として報知手段を設けてもよい。また、報知手段で、表示ではなく、音声や発光(点滅等を含む。)等によって、或いはそれらを組み合わせて報知するように構成することも可能である。
【0087】
そして、このようにX線発生装置52から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知することで、放射線を検知したためX線画像撮影装置1が動作を中断していることを放射線技師等のユーザーに知らせることが可能となるとともに、ユーザーに適切に対応(撮影中止等を含む。)するように促すことが可能となる。
【0088】
[X線センサーの感度の調整について]
また、報知手段で、上記のように報知を行うとともに、放射線技師等のユーザーに、X線画像撮影装置1のX線センサー25の感度調整を行うことを促すように構成することも可能である。例えば、図13に示すように、コンソール58の表示部58a上に「感度を調整の上、撮影をしてください。」等の表示E2を行って、ユーザーに報知するように構成することが可能である。
【0089】
なお、この場合も、表示ではなく、音声や発光(点滅等を含む。)等によって、或いはそれらを組み合わせて報知するように構成することも可能である。また、例えば「感度を調整の上」等の表示を他の部分の表示の色や表示の仕方等とは異なる色や表示の仕方等で表示することで、放射線技師等のユーザーに分かりやすく報知するように構成することも可能である。
【0090】
そして、この場合、放射線技師等のユーザーが「OK」ボタンアイコンFをクリックすると、例えば図14に示すように表示が切り替わり、画面右側の感度の種別(低感度、中感度、高感度、高感度+)の各ボタンアイコンG1〜G4の中から所定の感度のボタンアイコンGをクリックして選択することで、感度を調整するように構成することが可能である。そして、この場合、例えば、ユーザーがX線センサー25の感度を調整して「再開」ボタンアイコンG5をクリックすることで、中断が解除され、X線画像撮影装置1は、撮影に向けての動作を再開させる。
【0091】
一方、例えば、上記のようにして、判断手段22がX線画像撮影装置1に撮影に向けて行っている動作を中断させた場合に、X線画像撮影装置1のX線センサー25の感度調整を自動的に(すなわち放射線技師等のユーザーの選択によらずに)行う感度調整手段を備えるように構成することも可能である。この場合、例えば、コンソール58やX線画像撮影装置1の制御手段22を感度調整手段として機能するように構成することも可能であり、また、それらとは別体の装置等として感度調整手段を設けることも可能である。
【0092】
前述したように、本実施形態では、図6に示したように、X線センサー25には、変動するアナログ値の電圧値Vaに対して正の設定値Vth+や負の設定値Vth−が設定されている。そして、これらの設定値Vth+等の絶対値をより小さく設定すると(すなわち絶対値がより0に近い値になるように設定すると)、発生する電圧値Vaが僅かに変動しても設定値Vth+等を越え易くなるため、X線センサー25の感度が高感度に設定されたことになり、反対に、設定値Vth+等の絶対値をより大きく設定すると、発生する電圧値Vaが大きく変動した場合にだけ設定値Vth+等を越えるため、X線センサー25の感度が低感度に設定されたことになる。
【0093】
そして、X線センサー25が、現状の感度で、自然放射線やRI検査後の患者の体内から放射されるγ線等でパルス信号Pを出力してしまっている場合には、X線センサー25の感度をより下げる方向(設定値Vth+等の絶対値がより大きくなる方向)に感度を調整することになる。
【0094】
そのため、例えば図13に示した例のように、X線センサー25の感度が「高感度+」(高感度よりもさらに高い感度を表す。)に設定された場合には、X線センサー25の感度をより下げる方向、すなわち「低感度」G1、「中感度」G2、「高感度」G3の中から感度が選択されて調整される。
【0095】
そして、このようにして、X線センサー25の感度を適切に調整することで、X線センサー25が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線、すなわち自然放射線やRI検査後の患者の体内から放射されるγ線等に感応してパルス信号Pを出力する可能性をより低減させることが可能となり、本実施形態のように、X線センサー25の出力(本実施形態ではパルス信号P)に基づいてX線の照射開始を検知する検知処理を行う際に、自然放射線やRI検査後の患者の体内から放射されるγ線等のために誤検知が生じる可能性を的確に低減させることが可能となる。
【0096】
[期間Dの間にも判断処理を行う場合の構成例について]
一方、上記の実施形態では、判断手段22は、X線の照射開始の検知処理を行っている期間や電荷蓄積状態の期間D(図10参照)以外の期間(すなわちX線発生装置52からX線が照射されていないことが明らかな期間)に、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるか否かを判断する判断処理を行う場合について説明した。そして、その場合、上記の期間Dにおいては、上記の判断処理を行わなくてもよく、また、上記の判断処理を行うように構成してもよい。
【0097】
そして、上記の期間Dにも判断処理を行うように構成する場合、判断手段22は、期間D中に撮影環境がX線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合に、上記と同様に、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を中断させるように構成することが可能である。
【0098】
しかし、仮にX線の照射開始の検知処理を行っている期間中に、撮影環境がX線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断された場合であっても、電荷蓄積状態の継続中に、X線発生装置52からX線が適切に照射された場合には、撮影された画像中に被写体が適切に撮影される可能性が高く、撮影が成功する可能性が高い。
【0099】
そして、撮影された画像中に被写体が適切に撮影されているにもかかわらず、判断手段22が、撮影環境がX線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断したことによって、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を中断させてしまったり、或いは、報知手段に、X線発生装置から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知させるように構成すると(図13参照)、放射線技師等のユーザーにとって煩わしいものになる。
【0100】
すなわち、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるとしても、撮影された画像中に被写体が適切に撮影されている場合には、放射線技師等のユーザーは、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を継続させた方がよいと考える場合があり、また、X線発生装置から照射されるX線以外の放射線を検知したことをいちいち報知してほしくないと考える場合もある。
【0101】
そのため、上記のように上記の期間Dにも判断処理を行うように構成する場合、判断手段22は、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であると判断した場合であっても、電荷蓄積状態の間に、X線センサー25の出力に基づいてX線発生装置52からX線が適切に照射されたと判断される場合(すなわち電荷蓄積状態の間にX線センサー25からパルス信号Pが出力される頻度が増加した後減少して元の頻度に戻ったような場合)には、X線画像撮影装置1に、撮影に向けて行っている動作を継続させるように構成することが可能であり、また、報知手段に、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線を検知したことを報知させないように構成することも可能である。
【0102】
このように構成すれば、撮影環境が、X線発生装置52から照射されるX線以外の放射線のレベルが高い環境であるとしても、撮影された画像中に被写体が適切に撮影されている場合に、X線画像撮影装置1は撮影に向けて行っている動作を継続するようになり、X線発生装置から照射されるX線以外の放射線を検知したことがいちいち報知されないため、放射線技師等のユーザーが上記のような煩わしさを感じてしまうことを的確に防止することが可能となる。
【0103】
なお、X線センサー25は、前述したX線を検出してパルス信号として出力する方式に限定されず、X線により発生する電荷信号を積分するなどして、連続的な出力信号として取り出す方式でもよい。
【0104】
また、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
1 X線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 X線検出素子
8 TFT(スイッチ素子)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段(検知手段、制御手段、判断手段、感度調整手段)
25 X線センサー
50 X線画像撮影システム
52 X線発生装置
58 コンソール(判断手段、感度調整手段)
58a 表示部(報知手段)
D 期間(検知手段が検知処理を行っている期間と電荷蓄積状態の期間とを合わせた期間)
d 画像データ
P パルス信号(X線センサーの出力)
Va 電圧値
Vth+、Vth− 設定値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14