特許第6776618号(P6776618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776618真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776618
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20201019BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   F16L59/065
   B32B27/36
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-103090(P2016-103090)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-210986(P2017-210986A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】今井 将博
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/029977(WO,A1)
【文献】 特開2015−183718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有する真空断熱材用外包材であって、
前記熱溶着可能なフィルムが、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有し、
前記ガスバリアフィルムが、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有し、
雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材用外包材。
【請求項2】
前記熱溶着可能なフィルムを構成する樹脂の熱溶着温度が、120℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項3】
前記熱溶着可能なフィルムの引張弾性率が、1.0GPa以上、5.0GPa以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項4】
前記ガスバリアフィルムの、前記熱溶着可能なフィルムとは反対側の面側に保護フィルムを有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の真空断熱材用外包材。
【請求項5】
芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、
前記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有し、
前記熱溶着可能なフィルムが、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有し、
前記ガスバリアフィルムが、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有し、
雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材。
【請求項6】
本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器であって、
前記真空断熱材は、芯材と、前記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、
前記真空断熱材用外包材は、熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有し、
前記熱溶着可能なフィルムが、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有し、
前記ガスバリアフィルムが、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有し、
雰囲気の温度が20℃の際の前記真空断熱材用外包材の寸法を基準とした場合に、前記雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、前記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、前記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の前記真空断熱材用外包材の寸法変化率が1%以下であることを特徴とする真空断熱材付き機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。中でも、消費電力量低減の観点から、電気製品等への真空断熱材の採用が進められている。電気製品等のように本体内部に発熱部を有する機器や、外部からの熱を利用した保温機能を有する機器においては、真空断熱材を備えることにより機器全体としての断熱性能を向上させることが可能となる。このため、真空断熱材の使用により、電気製品等の機器のエネルギー削減の取り組みがなされている。
【0003】
真空断熱材とは、外包材により形成された袋体に芯材を配置し、上記芯材が配置された袋体の内部を減圧して真空状態とし、上記袋体の端部を熱溶着して密封することで形成されたものである。断熱材内部を真空状態とすることにより、気体の対流が遮断されるため、真空断熱材は高い断熱性能を発揮することができる。また、真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、外包材を用いて形成された袋体の内部を長期にわたり高い真空状態に保持する必要がある。そのため、外包材には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性、芯材を覆って密着封止するための熱接着性能等の種々の機能が要求される。
【0004】
したがって、上記外包材は、これらの各機能特性を有する複数のフィルムを有する積層体として構成されるものとなる。一般的な外包材の態様としては、熱溶着可能なフィルム、ガスバリアフィルムおよび保護フィルムが積層されてなるものであり、各層間は接着剤等を介して貼り合わされている(特許文献1および2参照)。特許文献1では、串刺し等によるガスバリアフィルムへのピンホールの発生による真空状態の低下防止を目的として、上記外包材として、2つのナイロンフィルムを用いていることが記載されている。また、特許文献2では、上記外包材を用いて真空断熱材を形成した際の、上記外包材同士を貼り合わせた端部においてガスバリアフィルムに屈曲の影響が直接及ばないものとすることを目的として、ガスバリアフィルムの両面に引張弾性率の高い保護フィルムを配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−262296号公報
【特許文献2】特開2013−103343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の外包材では、上記外包材単体では十分なガスバリア性を発揮することが確認できている場合であっても、上記外包材を用いて真空断熱材を形成した場合に、十分に真空状態を保てず、長期間の断熱性能を維持することができないといった問題がある。これは、使用に際して真空断熱材に付与される機械的、熱的等、種々の応力により、真空断熱材を構成する外包材が劣化され、当該外包材のガスバリア性が低下することに起因していることが考えられる。上述したような外包材の劣化は、機械的強度や耐熱性が高い材料を用いて外包材を構成することにより抑制することができるが、このような材料はガラス転移点が高いものが多い。そのため、このような材料を熱溶着可能なフィルムに用いる場合は、熱溶着温度を高くする必要があり、外包材を構成する材料選択性の低下、製造コストの増加等の問題が生じる。
【0007】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本開示は、熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有する真空断熱材用外包材であって、上記熱溶着可能なフィルムが、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする真空断熱材用外包材を提供する。
【0009】
本開示によれば、外包材の熱溶着可能なフィルムに所望される引張弾性率を有する共重合ポリエステル樹脂のうち、非晶性のものを用いることにより、所望の引張弾性率を有し、かつ、所望の温度において熱溶着することができる、熱溶着可能なフィルムを実現することができる。
【0010】
本開示においては、上記熱溶着可能なフィルムを構成する樹脂の熱溶着温度が、120℃以上であることが好ましい。所望の温度において外包材を熱溶着することができるため、外包材を構成する材料が熱により劣化されることを抑制することができ、また、外包材を構成する材料の選択の幅を広げることができるからである。
【0011】
本開示においては、上記熱溶着可能なフィルムの引張弾性率が、1.0GPa以上、5.0GPa以下の範囲内であることが好ましい。外包材の引張弾性率を所望される範囲内のものとすることができ、ガスバリアフィルムへのクラックの発生を抑制することができるからである。また、上記真空断熱材に用いられる芯材からの突き刺しによるピンホールの発生を抑制できるからである。
【0012】
本開示においては、上記ガスバリアフィルムの、前記熱溶着可能なフィルムとは反対側の面側に保護フィルムを有することが好ましい。上記外包材が保護フィルムを有することにより、熱溶着可能なフィルムやガスバリアフィルムなど、外包材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。
【0013】
本開示においては、上記ガスバリアフィルムが、金属箔であることが好ましい。上記金属箔はガスバリア性が高く、かつ、耐屈曲性に優れているため、ガスバリアフィルムとして上記金属箔を用いることにより、ガスバリア性が高い外包材を得ることができ、また、高いガスバリア性を維持することができるからである。
【0014】
本開示においては、上記ガスバリアフィルムが、樹脂基材と、前記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有することが好ましい。ガスバリアフィルムを樹脂基材およびガスバリア層から構成することにより、ガスバリアフィルムに用いられる無機物の量を低減し、上記無機物による熱伝導を抑制することができるからである。
【0015】
本開示は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とする真空断熱材を提供する。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
【0016】
本開示は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とする真空断熱材付き機器を提供する。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、上記真空断熱材が長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示においては、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な真空断熱材用外包材等を提供できるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の真空断熱材用外包材の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の真空断熱材の一例を示す概略断面図である。
図3】本開示の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
図4】本開示の真空断熱材用外包材の他の例を示す概略断面図である。
図5】実施例および比較例で作製した真空断熱材の熱伝導率の劣化量を示すグラフである。
図6】実施例および比較例で作製した真空断熱材の熱伝導率の劣化量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の真空断熱材用外包材、真空断熱材、および真空断熱材付き機器について、詳細に説明する。
なお、本明細書において、「真空断熱材用外包材」を「外包材」と略する場合がある。
また、「ガスバリア性」と記載した場合、特に断りが無い場合は、酸素等の気体および/または水蒸気に対するバリア性を有する特徴を意味するものとする。
さらに、外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内側となる熱溶着可能なフィルム側を「外包材の内側」、真空断熱材の外側となる、熱溶着可能なフィルムから遠い方側を「外包材の外側」と記載する場合がある。
【0020】
A.真空断熱材用外包材
まず、本開示の真空断熱材用外包材について説明する。
本開示の外包材は、熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有する真空断熱材用外包材であって、上記熱溶着可能なフィルムが、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とするものである。
【0021】
本開示の外包材について、図を参照して説明する。図1は、本開示の外包材の一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、本開示の外包材10は熱溶着可能なフィルム1およびガスバリアフィルム2を有するものであり、上記熱溶着可能なフィルム1は、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有する。
【0022】
また、図2は、本開示の外包材を用いた真空断熱材の一例を示す概略断面図である。図2に例示するように、上記真空断熱材20は、芯材11と、上記芯材11を封入する外包材10とを有するものである。上記真空断熱材20は、2枚の上記外包材10を、それぞれの熱溶着可能なフィルム1が向き合うように対向させ、その間に上記芯材11を配置し、その後、上記芯材11の外周の一方を開口部とし、残り三方の上記外包材10同士の端部12を熱溶着することで、2枚の上記外包材10により形成され、内部に上記芯材11が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材11が上記外包材10に封入されているものである。なお、図2中の説明しない符号については、図1と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0023】
使用に際して真空断熱材に付与される応力としては、例えば、芯材として用いられるグラスウール等から受ける突き刺し応力や、曲面を有する機器の表面に沿うように真空断熱材を配置する場合の曲げ応力などを挙げることができる。このような応力はガスバリアフィルムへのピンホールやクラックの発生の要因となり、外包材のガスバリア性の低下につながることがある。また、真空断熱材が配置された環境の温度によっては、外包材が熱収縮・膨張されるため、ガスバリアフィルムにクラックが発生し、外包材のガスバリア性の低下につながることがある。
【0024】
引張弾性率が大きい材料は、上述したような応力への耐性が高く、また、熱による膨張・収縮率が小さい傾向にあるため、引張弾性率が大きい材料を外包材に用いることにより、上記機械的、熱的な応力による外包材のガスバリア性の低下を抑制することができる。しかしながら、引張弾性率が大きい材料はガラス転移点が高い傾向にあるため、このような材料を外包材の熱溶着可能なフィルムに用いる場合は、熱溶着温度を高くする必要があり、外包材を構成する他の材料の熱による劣化、材料選択性の低下、製造コストの増加等の問題が生じる。
【0025】
本発明者が鋭意研究を重ねた結果、同様のガラス転移点を有する樹脂であっても、非晶性の樹脂は、結晶性の樹脂よりも熱溶着温度が低い傾向にあることを見出し、ここに開示されている発明を完成させるに至ったのである。すなわち、本開示によれば、外包材の熱溶着可能なフィルムに所望される引張弾性率を有する共重合ポリエステル樹脂のうち、非晶性のものを用いることにより、所望の引張弾性率を有し、かつ、所望の温度において熱溶着することができる、熱溶着可能なフィルムを実現することができる。
【0026】
本開示の外包材は、熱溶着可能なフィルムと、ガスバリアフィルムとを少なくとも有するものである。以下、本開示の外包材の各構成について説明する。
【0027】
1.熱溶着可能なフィルム
本開示における熱溶着可能なフィルムは、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有することを特徴とするものである。上記熱溶着可能なフィルムが「非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有する」とは、上記熱溶着可能なフィルムが非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有するフィルムであることを意味するものであり、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムであることが好ましい。
【0028】
共重合ポリエステル樹脂から構成されるフィルムの代表的な例である共重合ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、PET樹脂を成膜後にXYの2軸方向に延伸(2軸延伸)して分子を配向させることにより結晶化された物が種々の用途において広く用いられている。本開示における「非晶性の共重合ポリエステル樹脂」とは、上述したような結晶化がされていないものを指すものであり、延伸されていないフィルムであることが好ましい。
【0029】
上記共重合ポリエステル樹脂が非晶性であるか、結晶性であるかは、当該樹脂の分子配向をX線回折法により観察することにより、判別することができる。非晶性の共重合ポリエステル樹脂は、その分子が一定の方向に配向されていないものであり、その大部分の分子の配向状態がランダムであることが好ましい。X線回折法による測定を行った際に、バックグラウンドレベル以上の優位なピークが認められなかった場合、当該樹脂が非晶性であると判断することができる。上記測定は、例えば、X線回折装置として株式会社リガク製のRINT−1100を用い、以下の条件により行うことができる。
<X線回折測定条件>
線源;CuKα線(波長;1.5418A)
走査軸;2θ/θ
管電圧;45kV
管電流;200mA
スリット;soller slit 5.0度
スキャンスピード;5.5度/分
スキャンステップ;0.05度
【0030】
上記熱溶着可能なフィルムの引張弾性率は、特に限定されるものではないが、例えば1.0GPa以上であることが好ましく、中でも、1.0GPa以上、5.0GPa以下の範囲内であることが好ましく、特に、1.0GPa以上、3.0GPa以下の範囲内であることが好ましい。上記熱溶着可能なフィルムの引張弾性率が上述の範囲内であることにより、外包材の引張弾性率を所望される範囲内のものとすることができ、ガスバリアフィルムへのクラックの発生を抑制することができるからである。また、上記真空断熱材に用いられる芯材からの突き刺しによるピンホールの発生を抑制できるからである。
【0031】
なお、上記引張弾性率の測定方法は、JIS K7161に準拠し、上記熱溶着可能なフィルムを幅15mm、長さ120mmに短冊状にカットした後、引張試験機を用いてチャック間距離100mm、引張速度100mm/minで引張弾性率を測定する方法を用いることができる。上記引張弾性率の測定条件は23℃、湿度55%の条件とすることができる。上記引張試験機としては、例えば、引張試験機(テンシロン万能試験機RTC−1250A)を用いることができる。
【0032】
また、上記非晶性の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移点は、特に限定されるものではないが、例えば50℃以上、90℃以下の範囲内、中でも60℃以上、80℃以下の範囲内とすることができる。なお、上記ガラス転移点は、ISO 11357に準拠し、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。上記ガラス転移点の調整は、原料として使用する多価カルボン酸及び多価アルコールの化学構造等に応じて、これらの混合比や重合度等を変化させることにより、適宜行うことができる。
【0033】
上述した引張弾性率やガラス転移点は材料固有のものであるが、同様の引張弾性率を有する樹脂であっても、非晶性の樹脂は、結晶性の樹脂よりも熱溶着温度が低い傾向にある。そのため、非晶性の共重合ポリエステル樹脂を熱溶着可能なフィルムに用いることで、所望の引張弾性率を有する熱溶着可能なフィルムを、より低い温度において熱溶着することができる。このような熱溶着可能なフィルムを構成する樹脂の熱溶着温度は特に限定されるものではなく、例えば、120℃以上の範囲内、中でも150℃以上、220℃以下の範囲内、特には150℃以上、200℃以下の範囲内とすることができる。熱溶着温度が上記範囲内であることにより、所望の温度において外包材を熱溶着することができるため、外包材を構成する材料が熱により劣化されることを抑制することができ、また、外包材を構成する材料の選択の幅を広げることができるからである。なお、上記熱溶着温度は、JIS Z 0238の規格に基づくヒートシール強度測定において15N以上を得られる温度とすることができる。
【0034】
本開示において用いることができる共重合ポリエステル樹脂の代表的な例としては、共重合ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を挙げることができる。このような共重合PET樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールとを主成分とし、これに、共重合成分としてテレフタル酸以外の多価カルボン酸及び/又はエチレングリコール以外の多価アルコールを、非晶性を示すものとなるように添加し、共重合して得られる変性PET樹脂を用いることができる。
【0035】
共重合成分として添加される多価カルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸(不飽和脂肪酸の二量体又はその水素添加物を主体とするもの)、ジフェニルカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等を挙げることができる。また、共重合成分として添加される多価アルコールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物等を挙げることができる。
【0036】
上記共重合PETの具体例としては、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコール、テレフタル酸とエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノール、テレフタル酸とイソフタル酸とエチレングリコールとプロピレングリコール等による組み合わせの共縮合重合体からなるPET樹脂を挙げることができる。
【0037】
上記主成分及び共重合成分の混合比は、非晶性を示すものを得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、原料となる多価カルボン酸の50モル%以上がテレフタル酸とすることができ、また、原料となる多価アルコールの50モル%以上がエチレングリコールとすることができる。原料となるテレフタル酸及びエチレングリコールの量が上記よりも少ないと、耐衝撃性及び非吸着性が損なわれる場合がある。
【0038】
また、原料となる多価カルボン酸及び多価アルコールの合計量100モル%に対して、主成分であるテレフタル酸及びエチレングリコールの合計量が、50モル%以上、95モル%以下の範囲内であり、共重合成分の合計量が5モル%以上、50モル%以下の範囲内であることが好ましい。共重合成分の合計量が5モル%よりも少ないと、非晶性が失われ、シール強度が損なわれる場合がある。
【0039】
上述したような非晶性の共重合ポリエステル樹脂は商業的にも入手可能であり、東洋紡株式会社製のバイロンや、イーストマンケミカルカンパニー製のEastar PETG等を挙げることができる。また、ポリエステル成分や共重合成分の混合比の分析はFT−IRや核磁気共鳴(NMR)装置により分析することができる。
【0040】
上記熱溶着可能なフィルムは、1質量%以上、10質量%以下の範囲内で、より好ましくは3質量%以上、5質量%以下の範囲内でアンチブロッキング剤を含有してもよい。上記範囲内のアンチブロッキング剤を含有することにより、熱溶着強度等を損なうことなく、フィルムの滑り性を改善することができるからである。このようなアンチブロッキング剤としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸等のケイ酸塩、その他、カオリン、タルク、けいそう土等の無機化合物系のアンチブロッキング剤、及びこれらのうちの2種またはそれ以上からなる混合物を挙げることができる。
【0041】
また、上記熱溶着可能なフィルムは必要に応じて、本開示の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤(脂肪酸アミド等)、難燃化剤、無機ないし有機充填剤、架橋剤、染料、顔料等の着色剤、更には、改質用樹脂等の添加剤の1種ないし2種以上を含有していてもよい。
【0042】
上記熱溶着層の厚みとしては、例えば20μm以上、100μm以下の範囲内が好ましく、中でも25μm以上、90μm以下の範囲内が好ましく、特に30μm以上、80μm以下の範囲内が好ましい。熱溶着可能なフィルムの厚みが上記範囲よりも大きいと、外包材のガスバリア性が低下する場合等があり、一方、上記範囲よりも小さいと、接着力が得られない場合がある。
【0043】
2.ガスバリアフィルム
上記ガスバリアフィルムは、上述した熱溶着可能なフィルムの外側に配置されるものであり、外包材のガスバリア性に主に寄与するものである。上記ガスバリアフィルムは所望のガスバリア性が得られるものであれば特に限定されるものではなく、金属箔をガスバリアフィルムとして用いてもよく(第1態様)、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有する積層体をガスバリアフィルムとして用いてもよい(第2態様)。以下、ガスバリアフィルムの各態様について説明する。
【0044】
(1)第1態様
本開示における第1態様は、上記ガスバリアフィルムが金属箔である態様である。このような金属箔としては、例えばアルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタニウム等の金属箔を挙げることができ、中でもアルミニウム箔が好適に用いられる。上記金属箔はガスバリア性が高く、かつ、耐屈曲性に優れているため、ガスバリアフィルムとして上記金属箔を用いることにより、ガスバリア性が高い外包材を得ることができ、また、高いガスバリア性を維持することができる。
【0045】
上記金属箔は、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させた多層体であってもよい。また、上記金属箔の厚みとしては、例えば、3μm以上、50μm以下の範囲内、中でも6μm以上、12μm以下の範囲内であることが好ましい。上記金属箔の厚みが上記範囲よりも小さいと、金属箔にピンホール等が生じやすくなり、ガスバリア性が低下する場合があり、一方、上記範囲よりも大きいと、本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材においてヒートブリッジが生じやすくなり、かつ外包材を曲げた場合に屈曲部でピンホール等が生じやすくなり断熱性能が低下する場合があるからである。
【0046】
上記金属箔のガスバリア性としては、酸素透過度が0.01cc/m/day/atm以下であることが好ましく、中でも0.005cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.01g/m/day以下であることが好ましく、中でも0.005g/m/day以下であることが好ましい。上記金属箔の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、外部より浸透した水分やガス等を内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。なお、上記酸素透過度は、JIS K 7126Bに基づき、温度23℃、湿度60%RHの条件下において酸素透過度測定装置を用いて測定した値とすることができる。上記酸素透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、オクストラン(OXTRAN)を挙げることができる。また、水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件下で、水蒸気透過度測定装置(英国Technolox社製、DELTAPERM)を使用して、ISO 15106 5に従い、測定することができる。
【0047】
上記外包材におけるガスバリアフィルムが第1態様のものである場合、上記ガスバリアフィルムの外側(熱溶着可能なフィルムとは反対側)に樹脂製のフィルムなどの保護フィルムが配置されていることが好ましい。上記ガスバリアフィルムを水蒸気への暴露や、物理的な応力から保護することができるからである。このような保護フィルムについては、後述する「3.保護フィルム」において説明されているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
(2)第2態様
本開示における第2態様のガスバリアフィルムは、樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とを有するものである。本態様のガスバリアフィルムを有する外包材について、図を参照して説明する。図3は、本開示の外包材の他の例を示す概略断面図である。図3に例示するように、本態様のガスバリアフィルム2´を有する外包材10は、上述した第1態様のガスバリアフィルムを有する外包材と同様に、熱溶着可能なフィルム1およびガスバリアフィルム2´を有するものである。本態様のガスバリアフィルム2´は、樹脂基材3と、上記樹脂基材3の一方の面側に配置されたガスバリア層4とを有する。
【0049】
金属などの無機物は熱伝導性が高いため、外包材に用いられている無機物の量が多い場合は、そのような外包材を用いて形成された真空断熱材の熱伝導率を低くすることは困難である。本態様においては、ガスバリアフィルムを樹脂基材およびガスバリア層から構成することにより、ガスバリアフィルムに用いられる無機物の量を低減し、上記無機物による熱伝導を抑制することができる。以下、このような構成を有する本態様のガスバリアフィルムについて説明する。
【0050】
(a)ガスバリア層
ガスバリア層は、樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置され、ガスバリアフィルムのガスバリア性に主に寄与するものである。上記ガスバリア層は、所望のガスバリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。このようなガスバリア性を有する層としては、例えば、金属層、無機化合物を主成分とする層などを用いることができる。上記金属層としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金から構成される金属蒸着膜等を挙げることができる。
【0051】
また、上記無機化合物を主成分とする層の無機化合物としては、所望のガスバリア性を発揮できる材料であればよく、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物および酸化珪素亜鉛等から選ばれる1または2以上の無機化合物等が挙げられる。具体的には、珪素(シリカ)、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、チタン、ホウ素、イットリウム、ジルコニウ、ムセリウム、および亜鉛から選ばれる1種または2種以上の元素を含有する無機化合物を挙げることができる。より具体的には、珪素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、スズ酸化物、珪素亜鉛合金酸化物、インジウム合金酸化物、珪素窒化物、アルミニウム窒化物、チタン窒化物、酸化窒化珪素等を挙げることができる。上記無機化合物は、単独で用いてもよいし、上記材料を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0052】
ガスバリア層の厚みは、所望のガスバリア性を発揮することができるものであれば特に限定されるものではなく、ガスバリア層の種類にもよるが、例えば、5nm以上、200nm以下の範囲内であることが好ましく、中でも10nm以上、150nm以下の範囲内であることが好ましい。ガスバリア層の厚みが上記範囲に満たないと、製膜が不十分となり所望のガスバリア性を示すことができない場合があり、上記範囲を超えると、クラックが発生しやすくなり可撓性が低下するおそれや、ガスバリア層が金属や合金を含む場合、本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材において、ヒートブリッジが生じるおそれがあるからである。
【0053】
ガスバリア層は、単層であってもよく、合計の厚みが上記範囲内となるように2つ以上を積層したものであってもよい。2つ以上のガスバリア層を用いる場合は、同一組成のガスバリア層を組み合わせてもよく、異なる組成のガスバリア層を組み合わせてもよい。また、上記ガスバリア層は、ガスバリア性および他の層との密着性の向上を図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0054】
樹脂基材の一方の面側にガスバリア層を形成する方法としては、ガスバリア層の種類に応じて従来公知の方法を用いることができる。例えば、物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の乾式製膜法を用いて樹脂基材にガスバリア層を製膜する方法、具体的には、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法等を用いることができる。また、既製のガスバリア性の薄膜を用い、樹脂基材と予め加熱した薄膜とを熱圧着させる方法、樹脂基材または薄膜に接着剤層を介して貼合する方法等が挙げられる。PVD法およびCVD法による具体的なガスバリア層の製膜方法については、例えば、特開2011−5835号公報に開示される方法を用いることができる。
【0055】
上記ガスバリア層単独(1層)のガスバリア性としては、酸素透過度が0.5cc/m/day/atm以下であることが好ましく、中でも0.1cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、水蒸気透過度が0.5g/m/day以下であることが好ましく、中でも0.1g/m/day以下であることが好ましい。上記ガスバリア層の酸素および水蒸気透過度が上述の範囲内であることにより、外部より浸透した水蒸気やガス等を真空断熱材の内部の芯材まで浸透しにくくすることができる。なお、上記酸素透過度および水蒸気透過度の測定方法は、上記「(1)第1態様」の項における説明と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0056】
(b)樹脂基材
樹脂基材は、上記ガスバリア層を支持可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、樹脂フィルムが好適に用いられる。上記樹脂基材が樹脂フィルムである場合、上記樹脂フィルムは未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸されたものであってもよい。上記樹脂基材は透明性を有していてもよく、有さなくてもよい。
【0057】
樹脂基材に用いられる樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アセタール樹脂、セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。本開示においては、上記の樹脂の中でも、PET、ポリプロピレン等が好適に用いられ、強靭性、耐油性、耐薬品性、入手容易性等の各観点から、PETがより好適に用いられる。
【0058】
樹脂基材は上記ガスバリア層と近接しているため、上記樹脂基材の寸法が伸縮した場合、上記ガスバリア層にも圧縮・引張応力がかかり、クラックが生じ易くなる。そのため、本開示において上記樹脂基材は、高温環境における寸法変化率が小さいものであることが好ましい。
【0059】
上記樹脂基材には、種々のプラスチック配合剤や添加剤等が含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂基材は、表面処理が施されていてもよい。ガスバリア層との密着性を向上させることができるからである。上記表面処理としては、例えば、特開2014−180837号公報に開示される酸化処理、凹凸化処理(粗面化処理)、易接着コート処理等を挙げることができる。
【0060】
樹脂基材の厚みは、特に限定されないが、例えば6μm以上、200μm以下の範囲内、より好ましくは9μm以上、100μm以下の範囲内である。
【0061】
(c)オーバーコート層
ガスバリアフィルムは、ガスバリア層の樹脂基材とは反対の面側にオーバーコート層を有していてもよい。ガスバリアフィルムのガスバリア性を向上させることができるからである。このようなオーバーコート層は、特に限定されるものではなく、一般にオーバーコート剤として用いられているものを用いることができる。例えば、上記オーバーコート層の主成分として、有機部分及び無機部分を含む混合化合物を用いることができる。
【0062】
上記オーバーコート層の厚みは、用いられるオーバーコート剤の種類に応じて適宜設定することができ、所望のガスバリア性が得られるものであれば特に限定されるものではない。例えば、50nm以上、500nm以下の範囲内、中でも100nm以上、400nm以下の範囲内の厚みにおいて用いることができる。
【0063】
上記混合化合物としては、種々のものがあるが、例えば、株式会社クラレ社製のクラリスタCF(登録商標)などのリン酸アルミナ系の混合化合物、凸版印刷株式会社製のベセーラ(登録商標)などのアクリル酸亜鉛系の混合化合物や、樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物や、一般式RM(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる原料液によるゾルゲル化合物などを用いることができる。上記水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸系樹脂、天然高分子系のメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースナノファイバー、多糖類などが挙げられる。なお、上記リン酸アルミナ系の混合化合物については特許第4961054号、上記アクリル酸亜鉛系の混合化合物については特許第4373797号、上記樹脂および無機層状化合物とからなるガスバリア性樹脂組成物については特開平11−257574に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0064】
本開示においては、上記混合化合物の中でも、一般式RM(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1以上、8以下の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、例えば、ゾル−ゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる化合物(以下、「ゾルゲル化合物」とする場合がある。)をオーバーコート層に用いることが好ましい。上記ゾルゲル化合物は、界面における接着強度が高く、また、製膜時の処理を比較的低温において行なうことができるため、上記樹脂基材等の熱による劣化を抑制することができるからである。上記ゾルゲル化合物については、特許第5568897号公報に開示されているものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0065】
(d)その他
本開示の外包材は、上述したようなガスバリアフィルムを複数有していてもよい。外包材のガスバリア性を向上することができるからである。外包材が複数のガスバリアフィルムを有する場合、各ガスバリアフィルムの構成は同じでもよく、異なっていてもよい。
【0066】
また、上述した樹脂基材およびガスバリア層の順序は特に限定されるものではなく、外包材に共に用いられる、ガスバリアフィルム以外の各層の層構成や、ガスバリアフィルムの数などに応じて適宜設定することができる。例えば、図3に例示されているように、外包材10を用いて真空断熱材を形成した際に、ガスバリア層4が樹脂基材3の内側になるように配置されてもよく、また、図4(a)に例示されているように、外包材10が保護フィルム5を有する場合などは、ガスバリア層4が樹脂基材3の外側になるように配置されてもよい。さらに、上記外包材10が2つのガスバリアフィルム2´を有する場合は、図4(b)に例示されているように、それぞれのガスバリア層4が向き合うように配置されても、図4(c)に例示されているように、両方のガスバリア層4が樹脂基材3の内側になるように配置されても、図4(d)に例示されているように、両方のガスバリア層4が樹脂基材3の外側になるように配置されてもよい。さらに、図4(e)および図4(f)に例示されているように、真空断熱材の最外層にガスバリアフィルム2´が配置される場合は、ガスバリア層4を保護する観点から、最外層のガスバリア層4は樹脂基材3の内側になるように配置されることが好ましい。なお、図4は、本開示の外包材の他の例を示す概略断面図である。真空断熱材を形成する際は、通常、それぞれの熱溶着可能なフィルム1が向き合うように、2枚の外包材が配置される。
【0067】
3.保護フィルム
本開示の外包材は、上述した熱溶着可能なフィルムやガスバリアフィルムの他に、保護フィルムを有していてもよい。上記外包材が保護フィルムを有することにより、熱溶着可能なフィルムやガスバリアフィルムなど、外包材として共に用いられる各フィルムを、損傷や劣化から保護することができるからである。保護フィルムは、そのいずれの面にもガスバリア性を有する層が配置されていない点で、上述した各フィルムと区別することが可能である。上記保護フィルムの外包材における配置位置は特に限定されるものではないが、上記ガスバリアフィルムの上記熱溶着可能なフィルムとは反対の面側など、真空断熱材を形成する際に最外層(最表層)となる位置に、保護フィルムが配置されていることが好ましい。
【0068】
上記保護フィルムとしては、熱溶着可能なフィルムよりも高融点の樹脂を用いたものであればよく、シート状でもフィルム状でもよい。このような保護フィルムとして、例えば、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVAL)、ポリアクリロニトリル(PAN)、セルロースナノファイバー(CNF)等のシートまたはフィルム等が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が好適に用いられる。
【0069】
上記保護フィルムは、本開示の外包材を用いて真空断熱材を形成した際に、真空断熱材の内部を保護するのに十分な強度を有し、耐熱性、耐ピンホ−ル性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。また、上記保護フィルムは、酸素バリア性や水蒸気バリア性など、ガスバリア性を有していることが好ましい。
【0070】
上記保護フィルムは、単層であってもよく、同一材料から成る層または異なる材料から成る層を積層させて多層としたものであってもよい。また上記保護フィルムは、他の層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。また、上記保護フィルムの厚みは、外包材に共に用いられる他の各フィルムを保護することができる厚さであれば特に限定されるものではないが、一般的に5μm以上、80μm以下の範囲内程度である。
【0071】
4.真空断熱材用外包材
本開示における外包材は、後述するような特性を有するものであることが好ましい。
【0072】
(1)真空断熱材用外包材の引張弾性率と厚みとの関係
一般に、物体に対して応力を加えた場合の変形量については、物体が引張弾性率Eの特性を有し、その形状が幅b、厚みhの直方体であり、応力Fが加えられる位置が直方体形状の物体を支持する端部から距離Lの位置である場合、その変形量vは、一般的にv=4FL/(bEh)で表わされる。一方、外包材の引張弾性率Eと上記外包材の厚みhの3乗との積を関数Mとすると、上記関数Mは、M=Ehで表わされ、上記変形量vとの間で、反比例の関係にある。このため、上記関数Mの値は、その値が小さいほど、同じ応力が加わった際の変形量が大きくなる関係になり、上記外包材の柔らかさの指標となる。したがって、上記関数Mの値が所定の値以下であるとは、上記外包材が所定の柔軟性を有していることを示すものである。
【0073】
また、上述のように、上記関数Mの値が所定の値以下である場合、上記関数Mの値が所定の値より大きいものと比較して、上記外包材を屈曲させた際に上記屈曲部に上記屈曲部の形成方向に沿った方向と略平行に形成されるしわの数が多くなる。このようなことから、上記関数Mの値が所定の値より大きく、上記外包材が硬い材料である場合には、強い応力を加えないと上記外包材を屈曲させることができず、上記ガスバリアフィルムに強度の弱い箇所が1点でもあると、その1点で屈曲しようと応力が集中してクラックが発生する可能性がある。一方、上記関数Mの値が所定の値以下であり、上記外包材が柔らかい材料である場合には、上記外包材は小さい応力で屈曲できることから、上記ガスバリアフィルムに強度の弱い箇所があるとしても、その強度の弱い箇所に応力が集中することなくその他の箇所でも屈曲が可能となり、応力の集中を分散させることができると考えられる。そして、上記関数Mの値が所定の値より小さいものは、複数箇所に応力が分散され、多くの箇所で屈曲が生じる結果、上記屈曲部に形成されるしわの数が、上記関数Mの値が所定の値より大きいものと比較して多くなるのである。
【0074】
したがって、本開示においては、上記関数Mの値、すなわち、上記外包材の引張弾性率と上記外包材の厚みの3乗との積は、3.0MPa・mm以下の範囲内であることが好ましく、中でも0.5MPa・mm以上、2.5MPa・mm以下の範囲内、特には0.5MPa・mm以上、2.0MPa・mm以下の範囲内、さらには0.5MPa・mm以上、1.0MPa・mm以下の範囲内であることが好ましい。上記関数Mの値が上述の範囲内であることにより、上記ガスバリアフィルムへのクラックの発生をより効果的に抑制できるからである。上記クラックの発生を抑制する効果は、ガスバリアフィルムが金属箔である、第1態様のガスバリアフィルムを有する外包材について特に顕著である。したがって、外包材が上述した第1態様のガスバリアフィルムを有するものである場合、上記関数Mが上述した範囲内であることが特に好ましい。また、非晶性の共重合ポリエステル樹脂は、引張弾性率が大きいため、熱溶着可能なフィルムが非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有することにより、外包材の上記関数Mの値を所望のものとすることができる。
【0075】
なお、上記関数Mにおける上記外包材の厚みは、1枚当たりの上記外包材の厚みをいうものであり、例えば、2枚の上記外包材を用いて形成された上記真空断熱材における上記外包材の関数Mの計算をする場合であっても、当該計算に用いる厚みは、1枚の上記外包材の厚みをいうものである。
【0076】
また、上記外包材の引張弾性率は、上記関数Mの値を所定の値以下とすることができるものであれば特に限定されるものではないが、1500MPa以上、5000MPa以下の範囲内であることが好ましく、なかでも、2000MPa以上、4000MPa以下の範囲内であることが好ましく、特に、2500MPa以上、3500MPa以下の範囲内であることが好ましい。上記関数Mの値を所定の値以下とすることが容易だからである。なお、引張弾性率の測定方法は、上記「1.熱溶着可能なフィルム」の項において説明されているものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0077】
(2)真空断熱材用外包材の寸法変化率
外包材に用いられるガスバリアフィルムが上述した第2態様のものである場合、すなわち、上記ガスバリアフィルムが樹脂基材と、上記樹脂基材の少なくとも一方の面側に配置されたガスバリア層とから構成される場合、高温な環境において上記樹脂基材の寸法が縮むと、上記樹脂基材上に形成されているガスバリア層にも圧縮応力がかかり、また、上記樹脂基材の寸法が伸びると、ガスバリア層にも引張応力がかかるため、ガスバリア層にクラックが生じ易くなる。さらに、熱溶着可能なフィルムや保護フィルムなど、外包材においてガスバリアフィルムと共に用いられる層が伸縮した場合も、近接する上記ガスバリア層にも圧縮・引張応力がかかるため、同様にクラックが生じ易くなる。
【0078】
したがって、外包材に用いられるガスバリアフィルムが上述した第2態様のものである場合、高温な環境における外包材の寸法変化率が小さいものであることが好ましい。すなわち、雰囲気の温度が20℃の際の上記外包材の寸法を基準とした場合に、雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させ、上記雰囲気の温度を145℃に1時間保持した後に、上記雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際の上記外包材の寸法変化率(以下、「高温保持前後の外包材の寸法変化率」とする場合がある。)が1%以下、中でも0.5%以下、特には0.4%以下、さらには0.3%以下であることが好ましい。
【0079】
また、雰囲気の温度を20℃から145℃まで変化させた際(以下、「昇温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、1%以下、中でも0.7%以下、特には0.5%以下であることが好ましい。また、上記外包材の、雰囲気の温度を145℃に1時間保持した際(以下、「恒温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、0.5%以下、中でも0.3%以下、特には0.1%以下であることが好ましい。さらに、上記外包材の、雰囲気の温度を145℃から20℃まで変化させた際(以下、「降温過程」とする場合がある。)の上記外包材の寸法変化率は、1%以下、中でも0.7%以下、特には0.5%以下であることが好ましい。外包材の各寸法変化率が上記範囲内であれば、外包材が熱に曝された場合でも、ガスバリアフィルムにかかる応力を抑制することができるため、ガスバリアフィルムへのクラックの発生を抑制することができ、高温においても長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材を形成可能な外包材とすることができるからである。非晶性の共重合ポリエステル樹脂は、高温な環境における寸法変化率が小さいため、熱溶着可能なフィルムが非晶性の共重合ポリエステル樹脂を含有することにより、外包材全体としての寸法変化率を小さくすることができる。
【0080】
ここで、上記外包材の寸法変化率とは、測定試料を熱機械的分析装置(TMA:Thermomechanical Analyzer)により、下記の条件で、20℃から145℃の昇温過程と、それに続く145℃で1時間における恒温過程と、それに続く145℃から20℃の降温過程と、の各過程において、連続製膜方向;フィルムの長手方向に垂直な方向;フィルムの幅方向)の初期値(昇温前の20℃での寸法)に対する寸法変化率を測定したものである。上記熱機械的分析装置としては、例えば日立ハイテクサイエンス社製のTMA/SS6100を用いることができる。
【0081】
測定モード:引張モード、荷重100mN
試料長さ:20mm
試料幅:5mm
昇温開始温度:20℃
昇温終了温度:145℃(145℃での保持時間:1時間)
降温終了温度:20℃
昇温および降温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素パージ下
【0082】
なお、上記高温保持前後の寸法変化率は、下記式(1)で定義されるものである。ただし、昇温前の20℃での外包材の寸法を式(1)のLとし、昇温過程、恒温過程および降温過程を経た外包材の寸法を式(1)のLとする。
高温保持前後の寸法変化率(%)=|L−L|/L×100 (1)
また、昇温過程、恒温過程、降温過程の各過程における寸法変化率は、下記式(2)で定義されるものである。ただし、昇温前の20℃での外包材の寸法を式(2)のLとし、測定する過程において得られる外包材の最小寸法を式(2)のLとし、当該過程において得られる外包材の最大寸法を式(2)のLとする。
各過程における寸法変化率(%)=(L−L)/L×100 (2)
【0083】
(3)その他
上記外包材の厚みとしては、所望のガスバリア性や強度を得ることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましく、中でも50μm以上、150μm以下の範囲内であることが好ましい。また、上記外包材の引張強度としては、50N以上であることが好ましく、中でも80N以上であることが好ましい。本開示の外包材を用いて形成された真空断熱材を屈曲させる際に破断等が生じにくくなるためである。なお、上記引張強度は、JIS Z 1707に基づいて測定した値である。
【0084】
上記外包材の積層方法としては、所望の構成の外包材を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、予め成膜した各フィルムを接着剤を使用して貼り合せるドライラミネーション法や、熱溶融させたガスバリアフィルム等の各材料をTダイ等を用いて押出しして貼り合せ、得られた積層体に接着剤を介して熱溶着可能なフィルムを貼り合せる方法等が挙げられる。
【0085】
上記外包材は、酸素透過度が0.1cc/m/day/atm以下、中でも0.05cc/m/day/atm以下であることが好ましい。また、上記真空断熱材用外包材は、水蒸気透過度が0.5g/m/day以下、中でも0.1g/m/day以下、特には0.05g/m/day以下であることが好ましい。上記外包材が上記範囲内のガスバリア性を有することにより、高い断熱性能を有する真空断熱材を形成することができるからである。なお、上記外包材の酸素透過度および水蒸気透過度の測定方法は、上記「2.ガスバリアフィルム、(1)第1態様」の項において説明した各透過度の測定方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
B.真空断熱材
次に、本開示の真空断熱材について説明する。本開示の真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有する真空断熱材であって、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
【0087】
本開示の真空断熱材については、既に説明した図2に例示するものと同様とすることができる。本開示によれば、上記真空断熱材用外包材が上述の真空断熱材用外包材であることにより、長期間断熱性能を維持することができる真空断熱材とすることができる。
【0088】
本開示の真空断熱材は、真空断熱材用外包材および芯材を少なくとも有するものである。
以下、本開示の真空断熱材について、構成ごとに説明する。
【0089】
1.真空断熱材用外包材
本開示における外包材は、上記芯材を封入するものである。また、上記外包材は、上述した外包材である。このような外包材については、「A.真空断熱材用外包材」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、封入するとは、上記外包材を用いて形成された袋体の内部に密封されることをいうものである。
【0090】
2.芯材
本開示における芯材は、上記真空断熱材用外包材により封入されるものである。
上記芯材としては、熱伝導率の低いものであることが好ましい。上記芯材は、その空隙率が50%以上、特に90%以上の多孔質材であることが好ましい。
【0091】
上記芯材を構成する材料としては、粉体、発泡体、繊維体等を用いることができる。
上記粉体としては、無機系、有機系のいずれでもよく、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、凝集シリカ粉末、導電性粉体、炭酸カルシウム粉末、パーライト、クレー、タルク等を用いることができる。なかでも乾式シリカと導電性粉体との混合物は、真空断熱材の内圧上昇に伴う断熱性能の劣化が小さいため、内圧上昇が生じる温度範囲で使用する際に有利である。さらに、上述の材料に酸化チタンや酸化アルミニウムやインジウムドープ酸化錫等の赤外線吸収率が小さい物質を輻射抑制材として添加すると、芯材の赤外線吸収率を小さくすることができる。
【0092】
また、上記発泡体としては、ウレタンフォーム、スチレンフォーム、フェノールフォーム等があり、これらのなかでも連続気泡を形成する発泡体が好ましい。
【0093】
また、上記繊維体としては、無機繊維でもよく有機繊維でもよいが、断熱性能の観点から無機繊維を用いることが好ましい。このような無機繊維としては、グラスウールやグラスファイバー等のガラス繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、ロックウール等を挙げることができる。これらの無機繊維は、熱伝導率が低く、粉体よりも取り扱いが容易である点で好ましい。
【0094】
上記芯材は、上述した材料を単独で使用してもよく、2種以上の材料を混合した複合材であってもよい。
【0095】
3.真空断熱材
本開示の真空断熱材は、上記真空断熱材用外包材で封入された内部を減圧密封し、真空状態としたものである。上記真空断熱材内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の真空度を上記範囲内とすることにより、内部に残存する空気の対流による熱伝導を小さいものとすることができ、優れた断熱性を発揮することが可能となる。
【0096】
また、上記真空断熱材の熱伝導率は低いことが好ましく、例えば、上記真空断熱材の25℃における熱伝導率(初期熱伝導率)は、5mW/m・K以下であることが好ましく、中でも4mW/m・K以下であることが好ましく、特に3mW/m・K以下であることが好ましい。真空断熱材の熱伝導率を上記範囲とすることにより、上記真空断熱材は熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。なお、上記熱伝導率は、JIS A 1412 3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値とすることができる。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を挙げることができる。
【0097】
上記真空断熱材はガスバリア性が高いことが好ましい。外部からの水分や酸素等の侵入による真空度の低下を防止することができるからである。上記真空断熱材のガスバリア性については、上述した「A.真空断熱材用外包材、4.真空断熱材用外包材、(3)その他」の項で説明した酸素透過度および水蒸気透過度と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0098】
4.製造方法
本開示の真空断熱材の製造方法としては、一般的な方法を用いることができる。例えば、予め上述の本開示の外包材を準備し、2枚の上記外包材をそれぞれの熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り三方の外包材同士の端部を熱溶着することで、2枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材が得られる。
【0099】
また、上記製造方法は、1枚の上記外包材を熱溶着可能なフィルムが内側に向き合う様に対向させ、その間に上記芯材を配置し、製袋機等によって上記芯材の外周の一方を開口部とし、残り二方の上記外包材同士の端部を熱溶着することで、1枚の上記外包材により形成され、内部に上記芯材が配置された袋体を準備し、次いで、上記袋体を真空封止機に装着し、上記袋体の内部圧力を減圧した状態で上記開口部を密封することにより、上記芯材が上記外包材により封入された真空断熱材を得る方法であっても良い。
【0100】
5.用途
本開示の真空断熱材は、熱伝導率が低く、高温下においても断熱性および耐久性に優れるものである。従って、上記真空断熱材は、熱源を有し発熱する部位や、外部から加熱されることにより高温となる部位に用いることができる。本開示の用途としては、例えば、「C.真空断熱材付き機器」で説明する機器、クーラーボックス、輸送用コンテナ、水素等の燃料タンク、システムバス、温水タンク、保温庫、住宅壁、自動車、飛行機、船舶、列車等が挙げられる。
【0101】
C.真空断熱材付き機器
次に、本開示の真空断熱材付き機器について説明する。本開示の真空断熱材付き機器は、本体又は内部に熱源部もしくは被保温部を有する機器、および真空断熱材を備える真空断熱材付き機器であって、上記真空断熱材は、芯材と、上記芯材を封入する真空断熱材用外包材とを有し、上記真空断熱材用外包材が上述した真空断熱材用外包材であることを特徴とするものである。
【0102】
ここで、「熱源部」とは、機器自体が駆動することにより、当該機器本体または機器内部において発熱する部位をいうものであり、例えば電源やモーター等をいう。また、「被保温部」とは、機器本体または内部に熱源部を有さないが、上記機器が外部の熱源から熱を受けて、高温になる部位をいうものである。
【0103】
本開示によれば、上記真空断熱材が上述の真空断熱材であり、長期間断熱性能を維持することができるため、熱源部を有する機器においては、上記真空断熱材により熱源部からの熱を断熱し、機器全体の温度が高温となることを防止し、一方、被保温部を有する機器においては、上記真空断熱材により上記被保温部の温度状態を保つことができる。これにより、消費電力を抑えた高い省エネルギー特性を有する機器とすることができる。
【0104】
本開示における真空断熱材については、上述した「B.真空断熱材」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0105】
本開示における機器とは、本体又は本体の内部に熱源部もしくは被保温部を有するものである。本開示における機器としては、例えば、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(登録商標「エコキュート」)、冷蔵庫、自動販売機、炊飯ジャー、ポット、電子レンジ、業務用オーブン、IHクッキングヒーター、OA機器等の電化機器、自動車、住宅壁、輸送用コンテナ等が挙げられる。中でも本開示においては、上記機器が、自然冷媒ヒートポンプ給湯機、業務用オーブン、電子レンジ、自動車、住宅壁、輸送用コンテナに上述の本開示における真空断熱材を用いることが好ましい。
【0106】
上記真空断熱材を機器に装着する態様としては、当該機器の熱源部もしくは被保温部に直接真空断熱材を貼り付けてもよく、被保温部と熱源部または外部熱源との間に真空断熱材を挟みこむようにして装着してもよい。
【0107】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0108】
以下に実施例、比較例および参考例を示して、本開示をさらに具体的に説明する。
【0109】
[実施例1]
(層間接着剤の調製)
ポリエステルを主成分とする主剤、脂肪族系ポリイソシアネートを含む硬化剤、および酢酸エチルを、重量配合比が主剤:硬化剤:酢酸エチル=10:1:10となるように混合し、2液硬化型の層間接着剤を調製した。
【0110】
(真空断熱材用外包材の作製)
第1ガスバリアフィルム/第2ガスバリアフィルム/第3ガスバリアフィルム/熱溶着可能なフィルムの層構成を有する外包材を作製した。上記第1ガスバリアフィルムとして一方の面側にシリカ膜が蒸着されたナイロンフィルム(大日本印刷株式会社製、IB−ON−UB)を用いた。
上記第2ガスバリアフィルムおよび第3ガスバリアフィルムとして、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に厚み40nmのアルミニウム膜が蒸着され、上記アルミニウム膜のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有する基材を用いた。また、熱溶着可能なフィルムとしては、厚み30μmのPETフィルム(倉敷紡績株式会社製)を用いた。上記各層は、下層となる層の面側に上述の配合比で調製した層間接着剤を、塗布量3.5g/mとなるようにドライラミネート法により積層した。
【0111】
(真空断熱材の作製)
得られた外包材を2枚重ねて、矩形の3方向をヒートシールして1方向のみが開口した袋体を作成した。芯材として300mm×300mm×30mmのグラスウールを用い、乾燥処理を行った後、上記袋体に上記芯材を収納して、上記袋体内部を真空排気した。その後、上記袋体の開口部分をヒートシールにより密封して、真空断熱材を得た。到達圧力は0.05Paとした。
【0112】
[比較例1]
上記熱溶着可能なフィルムとして、厚み50μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製、3301)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
【0113】
[比較例2]
上記第2ガスバリアフィルムおよび第3ガスバリアフィルムとして、それぞれ、PETフィルム上にシリカ膜が蒸着され、上記シリカ膜のPETフィルムとは反対の面側にオーバーコート層を有する基材(大日本印刷株式会社製、IB−PET)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
【0114】
[比較例3]
上記第1ガスバリアフィルムおよび第2ガスバリアフィルムとして、それぞれ、アルミニウム膜が蒸着された厚み12μmのPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、VMPET1519)を用い、上記第3ガスバリアフィルムとして、一方の面側にアルミニウム膜が蒸着された、厚み15μmのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム(株式会社クラレ製、VMXL)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
[比較例4]
上記第1ガスバリアフィルムとして一方の面側にシリカ膜が蒸着されたナイロンフィルム(大日本印刷株式会社製、IB−ON−UB)を用い、上記第2ガスバリアフィルムとして、一方の面側にオーバーコート層を有する厚み12μmのPETフィルム(三井化学東セロ株式会社製、マックスバリア)を用いたこと以外は、比較例3と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
【0115】
[実施例2]
保護フィルム/ガスバリアフィルム/熱溶着可能なフィルムの層構成を有する外包材を作製した。上記保護フィルムとして、厚み16μmのPETフィルム(ユニチカ株式会社製、PTMB)を用い、上記ガスバリアフィルムとして厚み6μmのアルミニウム箔(株式会社UACJ製、8021)を用いた。上記熱溶着可能なフィルムとしては、実施例1と同じ物を用いた。上記層構成を有する外包材を、実施例1と同様にして作製し、得られた外包材を2枚重ねて実施例1と同様にして真空断熱材を得た。
【0116】
[比較例5]
外側の厚み25μmのナイロンフィルム(ユニチカ株式会社製、ONBC)と、内側の厚み12μmのPETフィルム(ユニチカ株式会社製、PTMB)との2枚のフィルムを保護フィルムとして用い、熱溶着可能なフィルムとして厚み50μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム株式会社製、3301)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして外包材および真空断熱材を得た。
【0117】
[評価]
(真空断熱材熱の熱伝導率の劣化量)
上記各実施例および比較例で得られた真空断熱材の、温度145℃、湿度無管理の雰囲気における熱伝導率の経時変化を測定した。各真空断熱材の熱伝導率は、JIS A 1412 3に従い、熱伝導率測定装置を用いて熱流計法により測定された値である。上記熱伝導率測定装置としては、熱伝導率測定装置オートラムダ(製品名 HC−074、英弘精機製)を用いた。実施例1および比較例1〜4の測定結果を図5に、実施例2および比較例5の測定結果を図6に示す。なお、図5および図6においては、各経過時間における熱伝導率と、0時間経過後の熱伝導率(初期値)との差を、「熱伝導率の劣化量」として示す。
【0118】
(真空断熱材用外包材の寸法変化率の測定)
上記実施例1および比較例1〜4で得られた外包材について、高温における寸法変化率を測定した。寸法変化率は、上記「A.真空断熱材用外包材、4.真空断熱材用外包材、(2)真空断熱材用外包材の寸法変化率」において説明されている方法および条件により各温度における外包材の寸法を測定し、寸法変化率を求めた。上記各外包材の各過程における寸法変化率を下記表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
(真空断熱材用外包材の関数Mの計算)
実施例2および比較例5で得られた外包材について、外包材の引張弾性率および外包材の厚みを測定し、関数Mの計算を行った。各外包材の引張弾性率の測定は、上記「A.真空断熱材用外包材、1.熱溶着可能なフィルム」の項に記載されている、熱溶着可能なフィルムの引張弾性率の測定方法・条件・装置と同様に行った。各外包材の引張弾性率、厚み、関数Mの値を下記表2に示す。
【0121】
【表2】
【0122】
(まとめ)
熱溶着可能なフィルムに非晶性の共重合ポリエステル樹脂のフィルムが用いられている実施例1および2の真空断熱材は、高温な環境において長時間経過した後も、比較例1〜5の真空断熱材よりも熱伝導率の劣化量が大幅に少ないことが分かる。また、実施例1の外包材は高温な環境における寸法変化率が小さく、実施例2の外包材は上記関数Mの値が小さい。これらのことから、熱溶着可能なフィルムに非晶性の共重合ポリエステル樹脂のフィルムを用いることにより、当該外包材のガスバリアフィルムのクラックが抑制され、熱伝導率の劣化量の低減につながっていることが推測される。
【符号の説明】
【0123】
1 … 熱溶着可能なフィルム
2、2´ … ガスバリアフィルム
3 … 樹脂基材
4 … ガスバリア層
5 … 保護フィルム
10 … 真空断熱材用外包材
11 … 芯材
12 … 端部
20 …真空断熱材
図1
図2
図3
図4
図5
図6