(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有するトレッド部を具えたタイヤであって、
前記トレッド部には、
最も前記外側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる外側ショルダー主溝と、前記外側ショルダー主溝よりも前記内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる外側クラウン主溝と、前記外側トレッド端と前記外側クラウン主溝とを継ぐ複数本の外側横溝とが設けられ、
前記外側トレッド端と前記外側ショルダー主溝とで区分される外側ショルダー陸部、及び、前記外側ショルダー主溝と前記外側クラウン主溝とで区分される外側ミドル陸部が形成され、
前記外側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の最大幅は、前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅よりも大きく、
前記外側ショルダー陸部は、複数本の前記外側横溝によって、タイヤ周方向に並ぶ外側ショルダーブロックに区分され、
前記外側ショルダーブロックには、タイヤ周方向の両側に配された前記外側横溝に連通する外側周方向細溝が設けられ、
前記外側周方向細溝は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ周方向の最大長さの30%以上の長さでタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記外側ショルダーブロックのタイヤ周方向の最大長さの30%以上の長さで前記第1傾斜部とは逆向きに傾斜する第2傾斜部とを含むことを特徴とするタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、雪路性能と操縦安定性能とを向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されることにより、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端と車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端とを有するトレッド部を具えたタイヤであって、前記トレッド部には、最も前記外側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる外側ショルダー主溝と、前記外側ショルダー主溝よりも前記内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる外側クラウン主溝と、前記外側トレッド端と前記外側クラウン主溝とを継ぐ複数本の外側横溝とが設けられ、前記外側トレッド端と前記外側ショルダー主溝とで区分される外側ショルダー陸部、及び、前記外側ショルダー主溝と前記外側クラウン主溝とで区分される外側ミドル陸部が形成され、前記外側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の最大幅は、前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るタイヤは、前記外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅が、前記外側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の最大幅の70%〜85%であるのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記外側横溝の溝幅が、前記内側トレッド端側に向かって漸減するのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記外側横溝が、前記外側クラウン主溝との連通位置から前記外側トレッド端側に向かって溝深さが小さい浅底部を有するのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記外側ショルダー主溝が、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1部分と、前記第1部分とは逆向きに傾斜する第2部分とがタイヤ周方向に交互に設けられたジグザグ状であり、前記外側横溝は、前記第1部分と前記第2部分とが交差する交差部をのびるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記トレッド部には、前記外側クラウン主溝よりも前記内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる内側クラウン主溝と、前記内側クラウン主溝よりも前記内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる内側ショルダー主溝とが設けられ、前記外側ショルダー主溝の溝幅は、前記外側クラウン主溝の溝幅、前記内側クラウン主溝の溝幅、及び、前記内側ショルダー主溝の溝幅よりも小さいのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記外側ショルダー陸部が、複数本の前記外側横溝によって、タイヤ周方向に並ぶ外側ショルダーブロックに区分され、前記外側ショルダーブロックには、タイヤ周方向の両側に配された前記外側横溝に連通する外側周方向細溝が設けられ、前記外側周方向細溝は、前記外側ショルダーブロックのタイヤ周方向の最大長さの30%以上の長さでタイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記外側ショルダーブロックのタイヤ周方向の最大長さの30%以上の長さで前記第1傾斜部とは逆向きに傾斜する第2傾斜部とを含むのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記外側横溝が、タイヤ軸方向にのびる一対の溝縁を有し、前記一方の溝縁は、タイヤ軸方向に滑らかにのびる第1溝縁部と、前記第1溝縁部に接続され前記第1溝縁部よりも前記外側横溝の溝中心線側に大きく傾斜する第2溝縁部とを有し、前記他方の溝縁は、タイヤ軸方向に滑らかにのびる第3溝縁部と、前記第3溝縁部に接続され前記第3溝縁部よりも前記溝中心線側に大きく傾斜する第4溝縁部とを有し、前記第2溝縁部と前記第4溝縁部とは、タイヤ軸方向に位置ずれしているのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記トレッド部には、前記外側クラウン主溝から前記内側トレッド端側にのびかつタイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する複数本のクラウン横溝と、前記外側クラウン主溝と前記外側ショルダー主溝とを継ぐ複数本の外側ミドル横溝とが設けられ、前記クラウン横溝は、前記外側ミドル横溝と逆向きに傾斜するのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤは、車両への装着の向きが指定されている。トレッド部には、最も外側トレッド端側をタイヤ周方向に連続してのびる外側ショルダー主溝と、外側ショルダー主溝よりも内側トレッド端側でタイヤ周方向に連続してのびる外側クラウン主溝とが設けられることにより、外側トレッド端と外側ショルダー主溝とで区分される外側ショルダー陸部、及び、外側ショルダー主溝と外側クラウン主溝とで区分される外側ミドル陸部が形成される。外側ショルダー陸部のタイヤ軸方向の最大幅は、外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の最大幅よりも大である。これにより、旋回走行時、大きな横力の作用する外側ショルダー陸部の横剛性が大きく確保されるので、操縦安定性能が向上する。
【0016】
また、トレッド部には、外側トレッド端と外側クラウン主溝とを継ぐ複数本の外側横溝が設けられる。このような外側横溝は、大きな雪柱を形成し得るので、高い雪柱せん断力を発揮する。また、外側横溝が、とりわけ大きな横力が作用する車両外側のトレッド部に設けられるので、優れた雪路性能を発揮する。従って、本発明のタイヤは、雪路性能と操縦安定性能とを向上し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図が示される。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用や重荷重用の空気入りタイヤ、及び、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。本実施形態のタイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に利用される。
【0019】
図1に示されるように、トレッド部2は、車両への装着の向きが指定された非対称のトレッドパターンを具える。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Toと、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Tiとを有する。トレッド部2は、タイヤ赤道Cよりも外側トレッド端To側の外側トレッド部2aと、タイヤ赤道Cよりも内側トレッド端Ti側の内側トレッド部2bとに区分される。車両への装着の向きは、例えばサイドウォール部(図示せず)に、文字等で表示される。
【0020】
前記各「トレッド端」To、Tiは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。正規状態において、各トレッド端To、Ti間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWとして定められる。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
【0021】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0022】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、180kPaである。また、レース用のタイヤのように、適用される規格がない場合、正規リム及び正規内圧には、メーカにより推奨されるリム及び空気圧が適用される。
【0023】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。タイヤが乗用車用の場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、外側ショルダー主溝3と外側クラウン主溝4と内側クラウン主溝5と内側ショルダー主溝6とが設けられている。本実施形態では、外側ショルダー主溝3及び外側クラウン主溝4は、外側トレッド部2aに設けられている。また、内側クラウン主溝5及び内側ショルダー主溝6は、内側トレッド部2bに設けられている。
【0025】
外側ショルダー主溝3は、最も外側トレッド端To側に配されタイヤ周方向に連続してのびている。外側ショルダー主溝3は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1部分3Aと、第1部分3Aとは逆向きに傾斜する第2部分3Bとがタイヤ周方向に交互に設けられたジグザグ状である。このような外側ショルダー主溝3は、タイヤ軸方向成分を有するので、雪柱せん断力を発揮する。
【0026】
外側クラウン主溝4は、外側ショルダー主溝3よりも内側トレッド端Ti側に配されタイヤ周方向に連続してのびている。外側クラウン主溝4は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する長辺部4Aと、長辺部4Aとは逆向きに傾斜しかつ長辺部4Aよりもタイヤ周方向の長さが小さい短辺部4Bとがタイヤ周方向に交互に設けられたジグザグ状である。このような外側クラウン主溝4も、タイヤ軸方向成分を有するので、雪柱せん断力を発揮する。
【0027】
図2に示されるように、外側クラウン主溝4の長辺部4Aは、外側トレッド端To側の溝縁4iが、タイヤ周方向の一方側に傾斜してのびる複数本の長縁部4aと、長縁部4a、4a間を継ぎかつ長縁部4aよりもタイヤ周方向の長さが小さい短縁部4bとを含んでいる。短縁部4bは、長縁部4aとは逆向きに傾斜している。このような長辺部4Aは、タイヤ軸方向成分が大きくなるので、雪路性能をさらに向上しうる。
【0028】
図1に示されるように、内側クラウン主溝5は、本実施形態では、外側クラウン主溝4よりも内側トレッド端Ti側に配されタイヤ周方向に連続してのびている。内側クラウン主溝5は、例えば、直線状にのびている。このような内側クラウン主溝5は、タイヤ軸方向両側の陸部の剛性を高め、制動時の車両のふらつきや片流れなどの不安定な挙動を抑制し、操縦安定性能を向上する。
【0029】
内側ショルダー主溝6は、本実施形態では、内側トレッド端Tiと内側クラウン主溝5との間に配されタイヤ周方向に連続してのびている。内側ショルダー主溝6は、例えば、直線状にのびている。このような内側ショルダー主溝6も、タイヤ軸方向両側の陸部の剛性を高め、制動時の車両のふらつきや片流れなどの不安定な挙動を抑制し、操縦安定性能を向上する。
【0030】
外側ショルダー主溝3の溝幅W1は、外側クラウン主溝4の溝幅W2、内側クラウン主溝5の溝幅W3、及び、内側ショルダー主溝6の溝幅W4よりも小さいのが望ましい。これにより、旋回走行時、大きな横力が作用する外側ショルダー主溝3の両側の陸部の剛性が高められるので、操縦安定性能が向上する。
【0031】
同様の観点より、内側ショルダー主溝6の溝幅W4は、外側クラウン主溝4の溝幅W2、及び、内側クラウン主溝5の溝幅W3よりも
小さいのが望ましい。
【0032】
操縦安定性能と雪路性能とをバランス良く高めるために、外側ショルダー主溝3の溝幅W1は、トレッド幅TWの1%〜4%であるのが望ましい。内側ショルダー主溝6の溝幅W4は、トレッド幅TWの2%〜5%であるのが望ましい。外側クラウン主溝4の溝幅W2、及び、内側クラウン主溝5の溝幅W3は、
トレッド幅TWの3%〜9%が望ましい。外側ショルダー主溝3の溝深さD1(
図3に示す)、外側クラウン主溝4の溝深さD2(
図3に示す)、内側クラウン主溝5の溝深さ、及び、内側ショルダー主溝6の溝深さ(図示省略)は、例えば、5〜12mmが望ましい。
【0033】
このような主溝3乃至6によって、トレッド部2には、外側ショルダー陸部7Aと外側ミドル陸部7Bとクラウン陸部7Cと内側ミドル陸部7Dと内側ショルダー陸部7Eとが形成される。外側ショルダー陸部7Aは、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝3とで区分される。外側ミドル陸部7Bは、外側ショルダー主溝3と外側クラウン主溝4とで区分される。クラウン陸部7Cは、外側クラウン主溝4と内側クラウン主溝5で区分される。内側ミドル陸部7Dは、内側ショルダー主溝6と内側クラウン主溝5とで区分される。内側ショルダー陸部7Eは、内側ショルダー主溝6と内側トレッド端Tiとで区分される。
【0034】
外側ショルダー陸部7Aのタイヤ軸方向の最大幅Wsは、外側ミドル陸部7Bのタイヤ軸方向の最大幅Wmよりも大である。これにより、旋回走行時、大きな横力の作用する外側ショルダー陸部7Aの横剛性が大きく確保されるので、操縦安定性能が向上する。外側ショルダー陸部7Aの最大幅Wsが外側ミドル陸部7Bの最大幅Wmよりも過度に大きい場合、外側ミドル陸部7Bの横剛性が小さくなり、かえって操縦安定性能が低下するおそれがある。このため、外側ミドル陸部7Bの最大幅Wmは、外側ショルダー陸部7Aの最大幅Wsの70%〜85%であるのが望ましい。
【0035】
同様の観点より、外側ショルダー陸部7Aの最大幅Wsは、トレッド幅TWの20%〜30%であるのが望ましい。
【0036】
内側ショルダー陸部7Eのタイヤ軸方向の最大幅Woは、内側ミドル陸部7Dのタイヤ軸方向の最大幅Wnよりも大きく形成されるのが望ましい。また、内側ミドル陸部7Dの最大幅Wnは、内側ショルダー陸部7Eの最大幅Woの70%〜85%であるのが望ましい。これにより、内側ショルダー陸部7Eの横剛性が大きく確保されるので、さらに、操縦安定性能が向上する。
【0037】
外側ショルダー陸部7Aには、外側トレッド端Toから内側トレッド端Tiに向かって外側ショルダー主溝3を越えてのびる複数本の外側横溝9と、タイヤ周方向に隣り合う外側横溝9、9を継ぐ複数本の外側周方向細溝10とが設けられている。これにより、外側ショルダー陸部7Aは、外側横溝9、9間で区分される外側ショルダーブロック8Aがタイヤ周方向に並んでいる。外側ショルダーブロック8Aは、外側周方向細溝10の外側トレッド端To側の外側ブロック部19Aと、外側周方向細溝10のタイヤ赤道C側の内側ブロック部19Bとに区分される。本実施形態の外側周方向細溝10は、溝幅Waが、1.2〜1.8mm程度、溝深さ(図示省略)が、1.5〜2.5mm程度である。
【0038】
外側横溝9は、外側クラウン主溝4までのびている。このような外側横溝9は、大きな雪柱を形成しうるので、高い雪柱せん断力を発揮する。また、外側横溝9が、とりわけ大きな横力が作用する外側トレッド部2aに設けられる。このため、大きな横力の作用する旋回走行時に、高いトラクションが発揮されるので、雪路性能が向上する。
【0039】
外側横溝9は、外側トレッド端Toと外側ショルダー主溝3との間に形成される外側部15と、外側ショルダー主溝3と外側クラウン主溝4との間に形成される内側部16とを含んでいる。
【0040】
図3は、
図1のA−A部の断面図である。
図3に示されるように、外側横溝9は、外側クラウン主溝4との連通位置から外側トレッド端To側に向かって溝深さが小さい浅底部17と、浅底部17よりも外側トレッド端To側に配された深底部18とを含んでいる。このような外側横溝9は、外側トレッド部2aの剛性の過度の低下を抑制して、操縦安定性能を高く維持する。浅底部17及び深底部18は、内側部16に設けられている。
【0041】
浅底部17の溝深さD3は、深底部18の溝深さD4の20%〜40%であるのが望ましい。浅底部17の溝深さD3が深底部18の20%未満の場合、雪柱が小さくなり、雪路性能を向上できないおそれがある。浅底部17の溝深さD3が深底部18の40%を超える場合、外側ミドル陸部7Bの剛性が小さくなり、操縦安定性能が悪化するおそれがある。特に限定されるものではないが、深底部18の溝深さD4は、外側ショルダー主溝3の溝深さD1の55%〜75%であるのが望ましい。
【0042】
上述の作用を効果的に発揮させるため、浅底部17のタイヤ軸方向の長さLaは、外側ミドル陸部7Bの最大幅Wmの40%〜60%である。
【0043】
深底部18のタイヤ軸方向内側の溝底縁18eは、タイヤ軸方向内側に向かって凸の円弧状に形成されている。このような溝底縁18eは、外側ミドル陸部7Bの剛性を高く維持しつつ、大きな雪柱を形成できるので、操縦安定性能と雪路性能とが向上する。
【0044】
外側部15は、外側ショルダー主溝3から外側トレッド端To側にのびる浅溝部15a、及び、浅溝部15aと外側トレッド端Toとを継ぎ浅溝部15aよりも溝深さの大きい深溝部15bを含んでいる。これにより、外側トレッド端Toで雪を効果的に排出できるとともに、外側ショルダー主溝3近傍の外側ショルダー陸部7Aの剛性を高く維持して、高い操縦安定性能を発揮する。このような観点より、浅溝部15aの溝深さD5aは、深溝部15bの溝深さD5bの45%〜65%が望ましい。
【0045】
深溝部15bのタイヤ軸方向内側の溝底縁24は、直線状にのびている。これにより、大きな雪柱せん断力が発揮される。本実施形態では、深底部18のタイヤ軸方向内側の溝底縁18eが円弧状で形成され、深底部18よりもタイヤ軸方向外側に設けられた深溝部15bのタイヤ軸方向内側の溝底縁24が直線状で形成されている。
【0046】
図2に示されるように、外側横溝9は、その溝幅W5が、内側トレッド端Tiに向かって漸減している。外側横溝9は、本実施形態では、最も内側トレッド端Ti側に最小の溝幅W5aである最小幅部9aと、最大の溝幅W5bである最大幅部9bとを含んでいる。このような外側横溝9は、外側ミドル陸部7Bの剛性低下を抑制しつつ、最大幅部9bで外側横溝9内の雪をスムーズに排出することができる。最小幅部9aの溝幅W5aが小さい場合、雪柱せん断力が小さくなるおそれがある。最大幅部9bの溝幅W5bが大きい場合、外側ショルダー陸部7Aの剛性が過度に低下するおそれがある。このため、最小の溝幅W5aと最大の溝幅W5bとの比(W5a/W5b)は、30%〜50%であるのが望ましい。外側横溝9の溝幅W5は、タイヤ軸方向にのびる一対の溝縁9e、9i間の溝中心線9cと直交方向の距離である。溝中心線9cは、溝縁9e、9iのタイヤ周方向に沿った長さの中間位置を滑らかに継いだ線分で表される。
【0047】
本実施形態の外側横溝9は、外側トレッド端Toと外側周方向細溝10との間に最大幅部9bが形成されている。また、外側横溝9は、外側トレッド端Toとの連通位置での溝幅W5cは、最大幅部9bの溝幅W5bの90%を有し、最大幅部9bに向かって溝幅が漸増している。このため、外側横溝9は、その長手に亘って外側トレッド端Toから最小幅部9aまで実質的に溝幅W5が
漸減しているので、外側横溝9の雪が外側トレッド端Toからのスムーズに排出されるので、上述の作用が効果的に発揮される。
【0048】
外側横溝9の一方の溝縁(図では、上側)9eは、タイヤ軸方向に滑らかにのびる第1溝縁部20と、第1溝縁部20に接続され第1溝縁部20よりも外側横溝9の溝中心線9c側に大きく傾斜する第2溝縁部21とを有している。外側横溝9の他方の溝縁(図では、下側)9iは、タイヤ軸方向に滑らかにのびる第3溝縁部22と、第3溝縁部22に接続され第3溝縁部22よりも溝中心線9c側に大きく傾斜する第4溝縁部23とを有している。このような溝縁9e、9iは、エッジ成分を大きくして、雪路での摩擦力が高められるので、雪路性能を向上し得る。
【0049】
第1溝縁部20は、本実施形態では、外側トレッド端Toと第2溝縁部21とを継ぐ第1軸方向部20aと、第2溝縁部21から少なくとも外側ショルダー主溝3までのびる第2軸方向部20bとを含んでいる。第3溝縁部22は、本実施形態では、外側トレッド端Toと第4溝縁部23とを継ぐ第3軸方向部22aと、第4溝縁部23から少なくとも外側ショルダー主溝3までのびる第4軸方向部22bとを含んでいる。このような外側横溝9は、外側ショルダー陸部7Aの剛性低下を抑制し得る。
【0050】
本実施形態では、第2溝縁部21と第4溝縁部23とは、タイヤ軸方向に位置ずれしている。これにより、外側ショルダー陸部7Aのタイヤ軸方向の剛性がさらに高く維持されるので、操縦安定性能が確保される。第2溝縁部21は、本実施形態では、外側周方向細溝10よりも外側トレッド端To側に設けられている。第4溝縁部23は、本実施形態では、外側周方向細溝10よりもタイヤ赤道C側に設けられている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0051】
外側横溝9は、外側ショルダー主溝3の第1部分3Aと第2部分3Bとが交差する交差部3Cをのびている。これにより、接地圧を利用して、排出され難い交差部3C内の雪が外側横溝9からスムーズに排出され得る。
【0052】
外側周方向細溝10は、本実施形態では、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜部10aと、第1傾斜部10aとは逆向きに傾斜する第2傾斜部10bとを含んでいる。第1傾斜部10a及び第2傾斜部10bは、ともに直線状にのびている。このような外側周方向細溝10は、外側ショルダーブロック8Aの過度の剛性低下を抑制しつつ、外側ショルダーブロック8Aの接地時の変形を促進して、外側部15内の雪をスムーズに排出し得る。このような作用を効果的に発揮させるため、第1傾斜部10aのタイヤ周方向長さ
Lc及び第2傾斜部10bのタイヤ周方向長さ
Lbは、外側ショルダーブロック8Aのタイヤ周方向の最大長さL1(
図1に示す)の30%以上であるのが望ましい。
【0053】
図4に示されるように、外側ミドル陸部7Bには、外側ショルダー主溝3と外側クラウン主溝4とを継ぐ複数本の外側ミドル横溝11が設けられている。これにより、外側ミドル陸部7Bは、外側ミドル横溝11、11間で区分される外側ミドルブロック8Bがタイヤ周方向に並んでいる。
【0054】
外側ミドル横溝11は、第1部分3Aと第2部分3Bとの交差部3C、及び、短辺部4Bに連通している。このような外側ミドル横溝11は、外側ミドル陸部7Bの剛性低下を抑制して、操縦安定性能を高く維持する。
【0055】
上述の作用を効果的に発揮させるため、外側ミドル横溝11は、外側横溝9の内側部16とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。
【0056】
外側ミドル横溝11は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜している。このような外側ミドル横溝11は、外側ミドル陸部7Bの剛性低下を抑制して、操縦安定性能を高く維持する。「タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜している」とは、外側ミドル横溝11の溝中心線11cの全長の80%以上が一方側に傾斜してのびている態様をいう。外側ミドル横溝11の溝中心線11cは、タイヤ軸方向にのびる一対の溝縁11e、11iのタイヤ周方向に沿った長さの中間位置を滑らかに継いだ線分で表される。
【0057】
外側ミドル横溝11は、第1横溝部11Aと第2横溝部11Bと第3横溝部11Cとで形成されている。第1横溝部11Aは、外側クラウン主溝4に連通しかつタイヤ軸方向に対して一方側に傾斜している。第2横溝部11Bは、第1横溝部11Aに連通しかつ、第1横溝部11Aとは逆向きに傾斜している。第3横溝部11Cは、第2横溝部11Bに連通しかつ、第1横溝部11Aと同じ向きに傾斜している。このような外側ミドル横溝11は、雪を大きく押し固めることができるので、強固な雪柱を形成しうるため、雪路性能を高め得る。
【0058】
外側ミドル横溝11のタイヤ軸方向にのびる一方の溝縁11eは、短辺部4Bの溝縁4eと滑らかに接続されている。これにより、外側ミドル横溝11と短辺部4Bとで1本の溝状体が形成されるため、大きな雪柱せん断力が発揮される。本実施形態では、外側ミドル横溝11の溝縁11eと短辺部4Bの溝縁4eとで1本の直線状の溝縁が形成される。
【0059】
外側横溝9の内側部16は、外側ミドルブロック8Bを貫通している。このような内側部16は、外側ミドルブロック8Bの接地時の変形を容易にして、その溝内の雪をスムーズに排出させる。
【0060】
本実施形態の内側部16は、そのタイヤ軸方向にのびる溝縁16eが、長辺部4Aの短縁部4bと滑らかに接続されている。これにより、外側ミドルブロック8Bの剛性が高く維持される。短縁部4bと内側部16の溝縁16eとは、本実施形態では、1本の直線状で形成されている。
【0061】
このように、本実施形態の外側ミドル陸部7Bでは、外側ショルダー主溝3の第1部分3Aと第2部分3Bとの交差部3Cから外側ミドル横溝11及び内側部16がタイヤ赤道C側にのびている。このため、排出されにくい交差部3C内の雪が、接地圧によって外側ミドル横溝11及び外側横溝9に容易に流れこむので、スムーズに排出される。
【0062】
クラウン陸部7Cには、外側クラウン主溝4と内側クラウン主溝5とを継ぐ複数本のクラウン横溝12が設けられる。これにより、クラウン陸部7Cは、クラウン横溝12、12で区分されるクラウンブロック8Cがタイヤ周方向に並んでいる。
【0063】
クラウン横溝12は、外側ミドル横溝11と逆向きに傾斜している。これにより、クラウン横溝12及び外側ミドル横溝11に生じる互いに逆向きの横方向の力が相殺されるため、操縦安定性能が向上する。
【0064】
クラウン横溝12は、短辺部4Bと滑らかに接続されている。これにより、クラウン横溝12、短辺部4B及び外側ミドル横溝11とで1本の溝状体が形成されるので、さらに大きな雪柱を形成し得る。
【0065】
図1に示されるように、内側ミドル陸部7Dには、内側クラウン主溝5と内側ショルダー主溝6とを継ぐ複数本の内側ミドル横溝13が設けられている。これにより、内側ミドル陸部7Dは、内側ミドル横溝13、13間で区分される内側ミドルブロック8Dがタイヤ周方向に並んでいる。
【0066】
内側ミドル横溝13は、タイヤ周方向の一方側(図では上側)へ凸に屈曲している。このような内側ミドル横溝13は、互いに逆向きの横方向の力を相殺するため、操縦安定性能を向上する。
【0067】
内側ミドル横溝13の溝幅W6は、内側ミドル陸部7Dの最大幅Wnの15%〜25%が望ましい。これにより、雪路性能と操縦安定性能とがバランス良く向上する。
【0068】
内側ショルダー陸部7Eには、内側ショルダー主溝6と内側トレッド端Tiとを継ぐ複数本の内側ショルダー横溝14と、タイヤ周方向に隣り合う内側ショルダー横溝14、14間を継ぐ内側周方向細溝25とを含んでいる。これにより、内側ショルダー陸部7Eは、内側ショルダー横溝14、14間で区分される内側ショルダーブロック8Eがタイヤ周方向に並んでいる。
【0069】
内側ショルダー横溝14は、内側トレッド端Ti側に向かって溝幅W7が漸増している。これにより、内側ショルダー横溝14の雪が内側トレッド端Tiからスムーズに排出される。
【0070】
内側ショルダー横溝14は、本実施形態では、第1内側部14Aと第2内側部14Bと第3内側部14Cとを含んでいる。第1内側部14Aは、内側ショルダー主溝6に連通している。第2内側部14Bは、第1内側部14Aよりも内側トレッド端Ti側に配されかつ第1内側部14Aよりも溝幅が大である。第3内側部14Cは、第2内側部14Bと内側トレッド端Tiとの間に配されかつ第2内側部14Bよりも溝幅が大である。第1内側部14A乃至第3内側部14Cは、それぞれ、実質的に等幅で長手方向にのびている。このような内側ショルダー横溝14は、内側ショルダー陸部7Eの剛性を高く維持する。
【0071】
内側周方向細溝25は、本実施形態では、直線状にのびている。このような内側周方向細溝25は、内側ショルダーブロック8Eの剛性を高く維持する。本実施形態の内側周方向細溝25は、溝幅Wbが、1.2〜1.8mm程度、溝深さ(図示省略)が、1.5〜2.5mm程度である。
【0072】
以上、本発明のタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのは言うまでもない。
【実施例】
【0073】
図1の基本パターンを有するサイズ205/55R16のタイヤが、表1の仕様に基づき試作され、各試供タイヤの雪路性能及び操縦安定性能がテストされた。各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
トレッド幅TW:180mm
各主溝の溝深さ:9.5mm
外側ショルダー陸部の最大幅Ws/TW:25%(比較例及び各実施例)
テスト方法は、次の通りである。
【0074】
<雪路性能・操縦安定性能>
各試供タイヤが、下記の条件で、排気量が2000ccの後輪駆動車の全輪に装着された。そして、テストドライバーが、乾燥路のテストコース及び雪路のテストコースをそれぞれ走行させ、このときの、トラクション性能、ブレーキ性能、及び、旋回性能に関する走行特性がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で表示されている。結果は、数値が大きい程、良好であることを示す。
リム(全輪):16×7.0
内圧(全輪):210kPa
テストの結果が表1に示される。
【0075】
【表1】
【0076】
テストの結果、実施例のタイヤは、従来例及び比較例に比べて各種性能がバランス良く向上していることが確認できる。また、タイヤサイズを変化させてテストを行ったが、このテスト結果と同じであった。