(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インクセット及び記録方法には、ドット径の均一性を高める新たな手法が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、ドット径の均一性を高めることが可能なインクセット及び記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクセットは、
第1インクと、第2インクとを含むインクセットであって、
前記第1インクは、カチオンとの塩を形成する第1アニオンを含み、
前記第2インクは、前記カチオンとの塩を形成する第2アニオンを含み、
前記第1アニオンは、硝酸イオン、酢酸イオン、アクリル酸イオン、ギ酸イオン及びメタクリル酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第2アニオンは、硫酸イオン、リン酸イオン及びシュウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第1インクは、下記条件(A)及び下記条件(B)を満たし、
前記第2インクは、下記条件(C)及び下記条件(D)を満たす、
ことを特徴とする。
条件(A):X1≧50
条件(B):X1/(X1+X2)>0.6
X1:前記第1インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
X2:前記第1インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
条件(C):Y2≧40
条件(D):Y1/(Y1+Y2)<0.6
Y1:前記第2インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
Y2:前記第2インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【0007】
本発明の記録方法は、
第1インクと、第2インクとを含むインクセットを用いて記録する記録方法であって、
前記第1インクにより、第1記録部を形成する第1記録部形成工程と、
前記第1記録部形成工程後、前記第2インクにより、前記第1記録部の上に、第2記録部を形成する第2記録部形成工程と、
を含み、
前記第1インクは、カチオンとの塩を形成する第1アニオンを含み、
前記第2インクは、前記カチオンとの塩を形成する第2アニオンを含み、
前記第1アニオンは、硝酸イオン、酢酸イオン、アクリル酸イオン、ギ酸イオン及びメタクリル酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第2アニオンは、硫酸イオン、リン酸イオン及びシュウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記第1インクは、下記条件(A)及び下記条件(B)を満たし、
前記第2インクは、下記条件(C)及び下記条件(D)を満たす、
ことを特徴とする。
条件(A):X1≧50
条件(B):X1/(X1+X2)>0.6
X1:前記第1インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
X2:前記第1インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
条件(C):Y2≧40
条件(D):Y1/(Y1+Y2)<0.6
Y1:前記第2インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
Y2:前記第2インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1インクと、第2インクとに含まれるアニオンの濃度を、所定の条件を満たすように調整したことで、ドット径の均一性を高めることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインクセットについて説明する。本発明のインクセットは、特に制限するものではないが、例えば、インクジェット記録に好適に利用可能である。本発明のインクセットは、第1インクと、第2インクとを含む。前記第1インクは、カチオンとの塩を形成する第1アニオンを含む。前記第2インクは、前記カチオンとの塩を形成する第2アニオンを含む。前記第1アニオンは、硝酸イオン、酢酸イオン、アクリル酸イオン、ギ酸イオン及びメタクリル酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つである。前記第2アニオンは、硫酸イオン、リン酸イオン及びシュウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つである。前記第1アニオンは、前記第2アニオンよりも、前記カチオンとの間で相対的に水易溶性の塩を形成するイオンである。換言すれば、前記第2アニオンは、前記第1アニオンよりも、前記カチオンとの間で相対的に水難溶性の塩を形成するイオンである。前記水易溶性及び前記水難溶性とは、前記第1アニオンが前記カチオンと形成する塩と、前記第2アニオンが前記カチオンと形成する塩とについて、相対的な関係で表現したものである。なお、前記第1アニオンと前記第2アニオンとは、前述のような同一のカチオンとの間で塩を形成するイオンである。前記カチオンは、記録媒体に含まれるものであればよく、特に制限されないが、例えば、カルシウムイオン(Ca
2+)等があげられる。
【0011】
前記塩の水への溶解性は、例えば、20℃における溶解度により表すことができ、具体的には、20℃における水100gに溶解する塩の量(g)により表すことができる。表1に、前記カチオンとしてCa
2+を例にあげ、前記各アニオンとCa
2+とにより形成される塩の溶解度を示す。
【0013】
前記第1アニオンが形成する前記塩の溶解度と、前記第2アニオンが形成する前記塩の溶解度の具体例としては、例えば、前者が、1g/100g以上、後者が、1g/100g未満であり、また、前者が、5g/100g以上、後者が、0.5g/100g未満であり、また、前者が、10g/100g以上、後者が、0.1g/100g未満であることが好ましい。表1に示すように、硝酸イオン、酢酸イオン、アクリル酸イオン、ギ酸イオン及びメタクリル酸イオンは、前記20℃における水への溶解度が1g/100g以上である塩をCa
2+との間で形成し、硫酸イオン、リン酸イオン及びシュウ酸イオンは、前記20℃における水への溶解度が1g/100g未満である塩をCa
2+との間で形成する。
【0014】
(第1インク)
つぎに、前記第1インクについて詳細に説明する。前述のとおり、前記第1インクは、前記第1アニオンを含む。前記第1インクは、前記第1アニオン及び前記第2アニオンのうち、前記第1アニオンのみを含んでもよいし、前記第1アニオンと前記第2アニオンとの双方を含んでもよい。前記第1アニオン及び前記第2アニオンの由来は、特に制限されず、例えば、前記第1インクの各成分(例えば、着色剤等)に含まれていたものであってもよく、前記第1インクに意図的に添加されたものであってもよい。
【0015】
前記第1インクは、下記条件(A)及び下記条件(B)を満たす。なお、前記第1インクが、前記第2アニオンを含まない場合(X2=0ppm)においても、X1/(X1+0)=1となり、下記条件(B)を満たす。
条件(A):X1≧50
条件(B):X1/(X1+X2)>0.6
X1:前記第1インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
X2:前記第1インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【0016】
前記第1インクは、下記条件(B1)を満たすことが好ましい。下記条件(B1)を満たせば、ドット径の均一性により優れたインクセットを得ることができる。
条件(B1):X1/(X1+X2)>0.65
X1:前記第1インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
X2:前記第1インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【0017】
前記第1インクは、下記条件(A1)を満たすことが好ましい。下記条件(A1)を満たせば、ドット径の均一性により優れたインクセットを得ることができる。
条件(A1):X1≧80
X1:前記第1インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
【0018】
前記第1インクは、さらに、着色剤を含んでもよい。前記着色剤は、顔料及び染料のいずれであってもよい。また、前記着色剤として、顔料及び染料を混合して用いてもよい。前記顔料としては、例えば、樹脂分散型顔料、自己分散型顔料等があげられる。本発明によれば、前記第1インクに不純物としてアニオンが混入しやすい前記樹脂分散型顔料を用いた場合においても、ドット径の均一性を向上可能である。
【0019】
前記樹脂分散型顔料は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能なものである。前記樹脂分散型顔料として用い得る顔料としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、73、74、75、78、83、93、94、95、97、98、114、128、129、138、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;及びこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0020】
前記樹脂分散剤としては、例えば、一般的な高分子分散剤等を用いてよく、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BASF社(旧ジョンソンポリマー(株))製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)60」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」等があげられる。
【0021】
前記第1インク全量における前記樹脂分散剤の配合量は、例えば、0.01重量%〜10重量%、0.02重量%〜5重量%、0.5重量%〜3重量%である。
【0022】
前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びそれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8−3498号公報、特表2000−513396号公報、特表2008−524400号公報、特表2009−515007号公報、特表2011−515525号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」、「MA100」及び「#2650」、デグサ社製の「カーボンブラックFW200」等のカーボンブラックがあげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB−O−JET(登録商標)200」、「CAB−O−JET(登録商標)250C」、「CAB−O−JET(登録商標)260M」、「CAB−O−JET(登録商標)270Y」、「CAB−O−JET(登録商標)300」、「CAB−O−JET(登録商標)400」、「CAB−O−JET(登録商標)450C」、「CAB−O−JET(登録商標)465M」及び「CAB−O−JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW−2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW−3」;東洋インキ製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」;等があげられる。
【0023】
前記第1インク全量における前記顔料の固形分配合量(顔料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度及び彩度等により、適宜決定できる。前記顔料固形分量は、例えば、0.1重量%〜20重量%、1重量%〜15重量%、2重量%〜10重量%である。前記顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
前記染料は、特に限定されず、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等があげられる。前記染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトブラック、C.I.ダイレクトブルー、C.I.ダイレクトレッド、C.I.ダイレクトイエロー、C.I.ダイレクトオレンジ、C.I.ダイレクトバイオレット、C.I.ダイレクトブラウン、C.I.ダイレクトグリーン、C.I.アシッドブラック、C.I.アシッドブルー、C.I.アシッドレッド、C.I.アシッドイエロー、C.I.アシッドオレンジ、C.I.アシッドバイオレット、C.I.ベーシックブラック、C.I.ベーシックブルー、C.I.ベーシックレッド、C.I.ベーシックバイオレット及びC.I.フードブラック等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラックとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラック17、19、32、51、71、108、146、154及び168等があげられる。前記C.I.ダイレクトブルーとしては、例えば、C.I.ダイレクトブルー6、22、25、71、86、90、106及び199等があげられる。前記C.I.ダイレクトレッドとしては、例えば、C.I.ダイレクトレッド1、4、17、28、83及び227等があげられる。前記C.I.ダイレクトイエローとしては、例えば、C.I.ダイレクトイエロー12、24、26、86、98、132、142及び173等があげられる。前記C.I.ダイレクトオレンジとしては、例えば、C.I.ダイレクトオレンジ34、39、44、46及び60等があげられる。前記C.I.ダイレクトバイオレットとしては、例えば、C.I.ダイレクトバイオレット47及び48等があげられる。前記C.I.ダイレクトブラウンとしては、例えば、C.I.ダイレクトブラウン109等があげられる。前記C.I.ダイレクトグリーンとしては、例えば、C.I.ダイレクトグリーン59等があげられる。前記C.I.アシッドブラックとしては、例えば、C.I.アシッドブラック2、7、24、26、31、52、63、112及び118等があげられる。前記C.I.アシッドブルーとしては、例えば、C.I.アシッブルー9、22、40、59、90、93、102、104、117、120、167、229及び234等があげられる。前記C.I.アシッドレッドとしては、例えば、C.I.アシッドレッド1、6、32、37、51、52、80、85、87、92、94、115、180、256、289、315及び317等があげられる。前記C.I.アシッドイエローとしては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、17、23、25、29、42、61及び71等があげられる。前記C.I.アシッドオレンジとしては、例えば、C.I.アシッドオレンジ7及び19等があげられる。前記C.I.アシッドバイオレットとしては、例えば、C.I.アシッドバイオレット49等があげられる。前記C.I.ベーシックブラックとしては、例えば、C.I.ベーシックブラック2等があげられる。前記C.I.ベーシックブルーとしては、例えば、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、24、25、26、28及び29等があげられる。前記C.I.ベーシックレッドとしては、例えば、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14及び37等があげられる。前記C.I.ベーシックバイオレットとしては、例えば、C.I.ベーシックバイオレット7、14及び27等があげられる。前記C.I.フードブラックとしては、例えば、C.I.フードブラック1及び2等があげられる。
【0025】
前記第1インク全量における前記染料の配合量は、特に限定されず、例えば、0.1重量%〜20重量%、1重量%〜15重量%、2重量%〜10重量%である。前記染料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記第1インクは、さらに、水を含んでもよい。前記水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。前記第1インク全量における前記水の配合量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0027】
前記第1インクは、さらに、水溶性有機溶剤を含んでもよい。前記水溶性有機溶剤としては、例えば、インクジェットヘッドのノズル先端部におけるインクの乾燥を防止する湿潤剤及び記録媒体上での乾燥速度を調整する浸透剤があげられる。
【0028】
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
【0029】
前記第1インク全量における前記湿潤剤の配合量は、例えば、0重量%〜95重量%、5重量%〜80重量%、5重量%〜50重量%である。
【0030】
前記浸透剤は、例えば、グリコールエーテルがあげられる。前記グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコール−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコール−n−プロピルエーテル及びトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル等があげられる。前記浸透剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
前記第1インク全量における前記浸透剤の配合量は、例えば、0重量%〜20重量%、0重量%〜15重量%、1重量%〜6重量%である。
【0032】
前記第1インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0033】
前記第1インクは、例えば、前記第1アニオンと、必要に応じて他の添加成分とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0034】
(第2インク)
つぎに、前記第2インクについて説明する。前記第2インクは、前記第1アニオンと前記第2アニオンとを含む。前記第1アニオン及び前記第2アニオンは、例えば、前記第2インクの各成分(例えば、着色剤等)に含まれていたものであってもよく、前記第2インクに意図的に添加されたものであってもよい。
【0035】
前記第2インクは、下記条件(C)及び下記条件(D)を満たす。
条件(C):Y2≧40
条件(D):Y1/(Y1+Y2)<0.6
Y1:前記第2インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
Y2:前記第2インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【0036】
前記第2インクは、下記条件(D1)を満たすことが好ましい。下記条件(D1)を満たせば、ドット径の均一性により優れたインクセットを得ることができる。
条件(D1):Y1/(Y1+Y2)≦0.55
Y1:前記第2インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
Y2:前記第2インク中の前記第2アニオンの濃度(ppm)
【0037】
前記第2インクは、下記条件(C1)を満たすことが好ましい。下記条件(C1)を満たせば、ドット径の均一性により優れたインクセットを得ることができる。
条件(C1):Y2≧60
Y2:前記第2インク中の前記第1アニオンの濃度(ppm)
【0038】
前記第2インクのその他の構成及び調製方法は、前記第1インクの構成及び調製方法と同様である。
【0039】
つぎに、本発明の記録方法について説明する。本発明の記録方法は、本発明のインクセットを用いて記録する記録方法であって、前記第1インクにより、第1記録部を形成する第1記録部形成工程と、前記第1記録部形成工程後、前記第2インクにより、前記第1記録部の上に、第2記録部を形成する第2記録部形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0040】
本発明の記録方法としては、例えば、インクジェット記録方法があげられる。前記インクジェット記録方法は、例えば、後述のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。
【0041】
本発明によれば、前記第1インクと、前記第2インクとに含まれるアニオンの濃度を、所定の条件を満たすように調整したことで、ドット径の均一性を高めることが可能である。前記ドット径の均一性向上のメカニズムは、例えば、つぎのように推定される。例えば、
図1(B1)に示すように、一般的に、記録用紙P中には、填料等として、CaCO
3が多く含まれる。この記録用紙Pに、
図1(B2)に示すように、アニオン濃度が調整されていないインクにより第1記録部Yを形成した後、
図1(B3)に示すように、第1記録部Yの上に、アニオン濃度が調整されていない別のインクにより第2記録部Mを形成すると、前記インクと前記別のインクとが混ざり(滲み)、前記別のインクのドット径が大きくなって、ドット径の均一性が悪化することがある。一方、
図1(A1)に示すCaCO
3を多く含む記録用紙Pに、
図1(A2)に示すように、第1アニオンX1
−の濃度を調整した前記第1インクにより第1記録部Yを形成すると、第1アニオンX1
−が、Ca
2+との間で、水易溶性の塩を形成することで、前記第1インク中にCa
2+が溶出し、記録用紙Pの表面側へと移動する。第1記録部Yの形成後、
図1(A3)に示すように、第2アニオンY2
−の濃度を調整した前記第2インクにより、第1記録部Yの上に、第2記録部Mを形成すると、記録用紙Pの表面側に移動したCa
2+が、第2アニオンY2
−と反応し、前記第1インクと前記第2インクとの界面で、水難溶性の塩を形成する。これにより、前記第1インクと前記第2インクとが混ざりにくくなり、第2インクのドット径が大きくなることがなく、ドット径の均一性が向上すると推定される。なお、
図1では、前記カチオンが記録用紙Pに含まれるCa
2+である場合を例にとって説明したが、前記カチオンが、記録媒体に含まれるCa
2+以外のイオンである場合にも、同様のメカニズムで前記ドット径の均一性向上が達成されると推定される。ただし、このメカニズムは推定に過ぎず、本発明はこれに限定されない。また、
図1(A2)及び(A3)では、便宜上、前記第1アニオン及び前記第2アニオンを1価のアニオンとして記載しているが、前記第1アニオン及び前記第2アニオンの価数に制限はなく、2価以上であってもよい。
【0042】
本発明において、前記第1インクの明度は、前記第2インクの明度よりも高いことが好ましい。明度の高い第1インクにより形成された第1記録部の上に、明度の低い第2インクにより第2記録部が形成されたときに、前記第2記録部のドット径が大きくなると、より目につきやすいが、本発明によれば、ドット径の均一性を向上可能であるので、これを抑制できる。前記第1インクの明度とは、前記第1インクそのものの明度であってもよいし、前記第1インクにより形成された記録部(第1記録部)の明度であってもよい。同様に、前記第2インクの明度とは、前記第2インクそのものの明度であってもよいし、前記第2インクにより形成された記録部(第2記録部)の明度であってもよい。前記第1インク及び前記第2インクそのものの明度は、例えば、市販の分光測色計を用いて透過により測定できる。また、前記第1記録部及び前記第2記録部の明度は、例えば、市販の分光測色計を用いて反射により測定できる。
【0043】
本発明において、前記第1インクの表面張力は、前記第2インクの表面張力よりも低いことが好ましい。前記第1インクの表面張力が低ければ、前記第1インクが記録媒体表面に留まることなく浸透するため、ドット径の均一性向上の効果が、より発現しやすくなる。
【0044】
図2に、本発明に利用可能なインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図示のとおり、このインクジェット記録装置1は、4つのインクカートリッジ2と、インク吐出手段(インクジェットヘッド)3と、ヘッドユニット4と、キャリッジ5と、駆動ユニット6と、プラテンローラ7と、パージ装置8とを主要な構成要素として含む。
【0045】
4つのインクカートリッジ2は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクを、それぞれ1色ずつ含む。例えば、前記水性イエローインクが、本発明の第1インクであり、前記水性マゼンタインクが、本発明の第2インクである。本例では、4つのインクカートリッジ2のセットを示したが、これに代えて、水性イエローインク収納部、水性マゼンタインク収納部、水性シアンインク収納部及び水性ブラックインク収納部を形成するようにその内部が間仕切りされた一体型のインクカートリッジを用いてもよい。前記インクカートリッジの本体としては、例えば、従来公知のものを使用できる。
【0046】
ヘッドユニット4に設置されたインクジェットヘッド3は、記録媒体(例えば、記録用紙)Pに記録を行う。キャリッジ5には、4つのインクカートリッジ2及びヘッドユニット4が搭載される。駆動ユニット6は、キャリッジ5を直線方向に往復移動させる。駆動ユニット6としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。プラテンローラ7は、キャリッジ5の往復方向に延び、インクジェットヘッド3と対向して配置されている。
【0047】
パージ装置8は、インクジェットヘッド3の内部に溜まる気泡等を含んだ不良インクを吸引する。パージ装置8としては、例えば、従来公知のものを使用できる(例えば、特開2008−246821号公報参照)。
【0048】
パージ装置8のプラテンローラ7側には、パージ装置8に隣接してワイパ部材20が配設されている。ワイパ部材20は、へら状に形成されており、キャリッジ5の移動に伴って、インクジェットヘッド3のノズル形成面を拭うものである。
図2において、キャップ18は、水性インクの乾燥を防止するため、記録が終了するとリセット位置に戻されるインクジェットヘッド3の複数のノズルを覆うものである。
【0049】
本例のインクジェット記録装置1においては、4つのインクカートリッジ2は、ヘッドユニット4と共に、1つのキャリッジ5に搭載されている。ただし、本発明は、これに限定されない。インクジェット記録装置1において、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、ヘッドユニット4とは別のキャリッジに搭載されていてもよい。また、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジは、キャリッジ5には搭載されず、インクジェット記録装置1内に配置、固定されていてもよい。これらの態様においては、例えば、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジと、キャリッジ5に搭載されたヘッドユニット4とが、チューブ等により連結され、4つのインクカートリッジ2の各カートリッジからヘッドユニット4に前記水性インクが供給される。また、これらの態様においては、4つのインクカートリッジ2に代えて、ボトル形状の4つのインクボトルを用いてもよい。この場合、前記インクボトルには、外部から内部にインクを注入するための注入口が設けられていることが好ましい。
【0050】
このインクジェット記録装置1を用いたインクジェット記録は、例えば、つぎのようにして実施される。まず、記録用紙Pが、インクジェット記録装置1の側方又は下方に設けられた給紙カセット(図示せず)から給紙される。記録用紙Pは、インクジェットヘッド3と、プラテンローラ7との間に導入される。導入された記録用紙Pに、インクジェットヘッド3から吐出される水性インクにより所定の記録がされる。記録後の記録用紙Pは、インクジェット記録装置1から排紙される。本発明によれば、ドット径の均一性の高い記録物を得ることが可能である。
図2においては、記録用紙Pの給紙機構及び排紙機構の図示を省略している。
【0051】
図2に示す装置では、シリアル型インクジェットヘッドを採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドを採用する装置であってもよい。
【実施例】
【0052】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0053】
〔インクの調製〕
C.I.ピグメントイエロー74又はC.I.ピグメントレッド122 20重量%、樹脂分散剤(アクリル−アクリル酸エステル共重合体)5.0重量%に、純水を加えて全体を100重量%とし、撹拌混合して混合物を得た。この混合物を、0.3mm径ジルコニアビーズを充填したサンドミルに入れ、6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータにより取り除き、孔径3.0μmセルロースアセテートフィルタでろ過することにより、表2及び表3に示す顔料分散液1及び2を得た。
【0054】
インク組成(表2及び表3)における、顔料分散液を除く成分を、均一に混合しインク溶媒を得た。つぎに、顔料分散液に、前記インク溶媒を加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロールアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表2に示す第1インクY1〜Y15及び表3に示す第2インクM1〜M13を得た。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
[実施例1〜20及び比較例1〜6]
〔インクセットの構成〕
表4に示すように、第1インク及び第2インクを組み合わせて、インクセットを構成した。
【0058】
〔インクセットの評価〕
実施例1〜20及び比較例1〜6のインクセットについて、ドット径の均一性評価を、下記の方法により実施した。
【0059】
(ドット径の均一性評価)
ブラザー工業(株)製のインクジェットプリンタDCP−J4225Nのインクカートリッジに実施例1〜20及び比較例1〜6のインクセットを構成する第1インク及び第2インクを充填した。普通紙(International Paper社製のHUMMERMILL ForeMulti−Purpose)上に、第1インクを用いて第1記録部としてベタ画像を記録し、直後に第1記録部の上に第2インクを用いて第2記録部としてドット画像を記録し、評価サンプルを得た。また、別途、同様の記録条件で、第2インクのみを用いてドット画像を記録し、参照サンプルを得た。評価サンプルにおける第2記録部の2次色のドットの直径を、20個のドットについて、顕微鏡を用いて測定し、その平均値を、2次色のドット径とした。同様に、参照サンプルにおける1次色のドットの直径を、20個のドットについて、顕微鏡を用いて測定し、その平均値を、1次色のドット径とした。ドット径の変化率を、下記式にて算出し、下記の評価基準に従って、ドット径の均一性を評価した。
ドット径の変化率(%)={(C2−C1)/C1}×100
C2:2次色のドット径(μm)
C1:1次色のドット径(μm)
【0060】
ドット径の均一性評価 評価基準
A:ドット径の変化率が、4%未満であった。
B:ドット径の変化率が、4%以上6%未満であった。
C:ドット径の変化率が、6%以上であった。
【0061】
実施例1〜20及び比較例1〜6のインクセットの構成及び評価結果を、表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
表4に示すとおり、実施例1〜20では、ドット径の均一性の評価結果が良好であった。
【0064】
X1/(X1+X2)を0.67に固定し、第1インク中の第1アニオンの濃度(X1)を変更したこと以外は同条件である実施例1〜4において、X1≧80である実施例2〜4では、X1=50である実施例1と比べて、ドット径の均一性の評価結果が優れていた。
【0065】
Y1/(Y1+Y2)を0.50に固定し、第2インク中の第2アニオンの濃度(Y2)を変更したこと以外は同条件である実施例5及び6において、Y2=60である実施例6では、Y2=40である実施例5と比べて、ドット径の均一性の評価結果が優れていた。また、Y2>60である実施例7〜9でも、実施例5と比べて、ドット径の均一性の評価結果が優れていた。
【0066】
X1≧80において、X1/(X1+X2)を変更したこと以外は同条件である実施例10〜12において、X1/(X1+X2)>0.65である実施例10及び11では、X1/(X1+X2)=0.62である実施例12と比べて、ドット径の均一性の評価結果が優れていた。
【0067】
Y2≧60において、Y1/(Y1+Y2)を変更したこと以外は同条件である実施例13及び14において、Y1/(Y1+Y2)=0.55である実施例13では、Y1/(Y1+Y2)=0.60である実施例14と比べて、ドット径の均一性の評価結果が優れていた。
【0068】
第1インクの表面張力を変更したこと以外は同条件である実施例4及び20において、第1インクの表面張力が、第2インクの表面張力よりも低い実施例4では、第1インクの表面張力が、第2インクの表面張力よりも高い実施例20と比べて、ドット径の変化率がより小さく、ドット径の均一性により優れていた。
【0069】
一方、X1=40で前記条件(A)を満たさない比較例1、Y2=30で前記条件(C)を満たさない比較例2、X1/(X1+X2)<0.6で前記条件(B)を満たさない比較例3及び4、並びに、Y1/(Y1+Y2)>0.6で前記条件(D)を満たさない比較例5及び6では、ドット径の均一性の評価結果が悪かった。