特許第6776638号(P6776638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776638
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】高性能タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20201019BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20201019BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20201019BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201019BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C08L9/06
   C08L101/12
   C08L9/00
   C08K3/04
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-115436(P2016-115436)
(22)【出願日】2016年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-218534(P2017-218534A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 郭葵
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−169280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00−101/14
C08K3/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラックを含むカーボンブラック成分と、可塑剤成分とを含有し、
前記ゴム成分100質量%中、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60〜100質量%であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が100〜180質量部、前記可塑剤成分の含有量が120〜250質量部であり、
前記カーボンブラック成分の含有量及び前記可塑剤成分の含有量が下記式(1)を満たすゴム組成物
を用いて作製したトレッドを有するタイヤ。
カーボンブラック成分の含有量/可塑剤成分の含有量≦0.9 (1)
【請求項2】
前記可塑剤成分が、粘着付与樹脂と、液状ジエン系重合体とを含み、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記粘着付与樹脂の含有量が20〜90質量部、前記液状ジエン系重合体の含有量が30〜150質量部である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂が、軟化点100〜180℃であり、フェノール、クマロン、インデン、テルペン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、t−ブチルフェノール、アセチレンからなる群より選択される少なくとも一種に基づく構成単位を有する樹脂である請求項2記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能タイヤのトレッド用ゴム組成物には、走行初期の高いグリップ性能(初期グリップ性能)と、走行中の安定したグリップ性能の両方が要求されており、これらの性能を確保するため、従来から様々な工夫がなされている。
【0003】
初期グリップ性能を向上させる手法として、可塑剤を増量する手法が広く知られている。一方、走行中の安定したグリップ性能を得る手法として、特許文献1では、高スチレンポリマーや高軟化点樹脂を使用する手法が検討されている。
【0004】
しかしながら、可塑剤を増量した場合、初期グリップ性能は改善されるものの、耐摩耗性や走行中のグリップ性能が低下する傾向がある。また、高スチレンポリマーや高軟化点樹脂を使用した場合、走行中の安定したグリップ性能は得られるものの、初期グリップ性能や耐摩耗性が低下する傾向がある。このように、従来の手法では、初期グリップ性能、走行中のグリップ性能及び耐摩耗性をバランスよく改善することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−137463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、初期グリップ性能、走行中のグリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく改善された高性能タイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラックを含むカーボンブラック成分と、可塑剤成分とを含有し、前記ゴム成分100質量%中、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が100〜180質量部、前記可塑剤成分の含有量が120〜250質量部であり、前記カーボンブラック成分の含有量及び前記可塑剤成分の含有量が下記式(1)を満たすゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する高性能タイヤに関する。
カーボンブラック成分の含有量/可塑剤成分の含有量≦0.9 (1)
【0008】
前記可塑剤成分が、粘着付与樹脂と、液状ジエン系重合体とを含み、前記ゴム成分100質量部に対して、前記粘着付与樹脂の含有量が20〜90質量部、前記液状ジエン系重合体の含有量が30〜150質量部であることが好ましい。
【0009】
前記粘着付与樹脂が、軟化点100〜180℃であり、フェノール、クマロン、インデン、テルペン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、t−ブチルフェノール、アセチレンからなる群より選択される少なくとも一種に基づく構成単位を有する樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スチレンブタジエンゴムと、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラックと、可塑剤成分とをそれぞれ所定量含有し、かつカーボンブラック成分の含有量及び可塑剤成分の含有量が式(1)を満たすゴム組成物をトレッドに使用しているため、初期グリップ性能、走行中のグリップ性能及び耐摩耗性がバランスよく改善された高性能タイヤが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の高性能タイヤは、スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラックを含むカーボンブラック成分と、可塑剤成分とを含有し、前記ゴム成分100質量%中、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60〜100質量%であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラックの含有量が100〜180質量部、前記可塑剤成分の含有量が120〜250質量部であり、前記カーボンブラック成分の含有量及び前記可塑剤成分の含有量が下記式(1)を満たすゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する。
カーボンブラック成分の含有量/可塑剤成分の含有量≦0.9 (1)
【0012】
上記ゴム組成物(トレッド用ゴム組成物)をトレッドに使用することで、従来技術では困難であった、良好な耐摩耗性を確保しながら、走行初期から走行終了まで高いグリップ性能を発揮できる高性能タイヤを実現することができる。
【0013】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエン(SBR)を含有する。SBRとしては、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)を使用でき、2種類以上のSBRを併用してもよい。
【0014】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。20質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRのスチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、耐摩耗性が低下するとともに、温度依存性が増大し、高温路面で良好なグリップ性能を発揮できない傾向がある。
なお、SBRのスチレン含有量は、H−NMR測定により算出される。
【0015】
SBRのブタジエン成分中のビニル含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。20質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られない傾向がある。また、SBRのブタジエン成分中のビニル含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。60質量%を超えると、耐摩耗性が低下する傾向がある。
なお、SBRのブタジエン成分中のビニル含有量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0016】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、60質量%以上であればよいが、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0017】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、SBR以外のゴム成分、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などを含有してもよい。
【0018】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、補強用充填剤として、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラックを含むカーボンブラック成分を含有する。
なお、上記カーボンブラックは、後述の実施例の方法で製造できる。
【0019】
上記カーボンブラックのDBP吸油量(OAN)は、130cm/100g以上、好ましくは135cm/100g以上である。130cm/100g未満では、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、上記カーボンブラックのDBP吸油量は、好ましくは200cm/100g以下、より好ましくは180cm/100g以下、更に好ましくは160cm/100g以下である。200cm/100gを超えると、グリップ性能が低下するおそれがある。
なお、上記カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6217−4に準拠して測定される。
【0020】
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、100m/g以上、好ましくは110m/g以上である。100m/g未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、上記カーボンブラックのNSAは、125m/g以下、好ましくは122m/g以下である。125m/gを超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、上記カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2に準拠して求められる。
【0021】
上記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、100質量部以上、好ましくは120質量部以上である。100質量部未満では、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、180質量部以下、好ましくは170質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。180質量部を超えると、充分な初期グリップ性能が得られないおそれがある。
【0022】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、カーボンブラック成分として、上記カーボンブラック以外のカーボンブラックを含有してもよい。
なお、本発明の効果が良好に得られるという点から、カーボンブラック成分の含有量(上記カーボンブラックと他のカーボンブラックとの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは120質量部以上であり、また、好ましくは180質量部以下、より好ましくは170質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。
【0023】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、カーボンブラック成分以外の補強用充填剤、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、クレー、タルクなど、タイヤ用ゴム組成物において慣用される補強用充填剤を含有してもよい。
【0024】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、可塑剤成分を含有する。可塑剤成分としては、粘着付与樹脂、液状ジエン系重合体を好適に用いることができる。
【0025】
粘着付与樹脂としては、フェノール、クマロン、インデン、テルペン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、t−ブチルフェノール、アセチレンからなる群より選択される少なくとも一種に基づく構成単位を有する樹脂を好適に用いることできる。該樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、テルペン、スチレン、t−ブチルフェノール、アセチレンからなる群より選択される少なくとも一種に基づく構成単位を有する樹脂が好ましい。
また、上記樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン及びスチレンの共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、t−ブチルフェノール及びアセチレンの共重合体などが挙げられ、テルペン及びスチレンの共重合体、t−ブチルフェノール及びアセチレンの共重合体が好ましい。
【0026】
粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは140℃以上である。100℃未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、粘着付与樹脂の軟化点は、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下である。180℃を超えると、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 6220−1に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0027】
粘着付与樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上である。20質量部未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、粘着付与樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは90質量部以下、より好ましくは70質量部以下である。90質量部を超えると、充分な初期グリップ性能及び耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0028】
液状ジエン系重合体は、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、グリップ性能及び耐摩耗性の観点から、液状SBRが好ましい。
【0029】
液状ジエン系重合体のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは3.0×10以上であり、また、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは1.5×10以下である。1.0×10未満では、充分な耐摩耗性が得られないおそれがあり、2.0×10を超えると、重合溶液の粘度が高くなり過ぎて、生産性が悪化するおそれがある。
なお、液状ジエン系重合体のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0030】
液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。30質量部未満では、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、液状ジエン系重合体の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0031】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物は、粘着付与樹脂、液状ジエン系重合体以外の可塑剤成分、例えば、オイルなど、タイヤ用ゴム組成物において慣用される可塑剤(軟化剤)を含有してもよい。
【0032】
オイルとしては、アロマチックオイル、プロセスオイル、パラフィンオイルなどの鉱物油を用いることができる。
【0033】
可塑剤成分としてオイルを使用する場合、オイルの含有量は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。
【0034】
可塑剤成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、120質量部以上、好ましくは130質量部以上である。120質量部未満であると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、可塑剤成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、250質量部以下、好ましくは200質量部以下である。250質量部を超えると、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0035】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物において、カーボンブラック成分の含有量及び可塑剤成分の含有量は、下記式(1)を満たす。
カーボンブラック成分の含有量/可塑剤成分の含有量≦0.9 (1)
カーボンブラック成分の含有量/可塑剤成分の含有量が0.9を超えると、充分なグリップ性能が得られないおそれがある。式(1)の下限は特に限定されないが、好ましくは0.6である。
【0036】
本発明に係るトレッド用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、加硫促進剤、加硫剤、酸化亜鉛、ワックス、老化防止剤などの材料を適宜配合してもよい。
【0037】
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤が好ましい。
【0038】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(MSA)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、NSが好ましい。
【0039】
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としてはジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ZTC)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZP)、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム(TP)などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ZTCが好ましい。
【0040】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。1質量部未満では、充分な加硫速度が得られず、良好なグリップ性能、耐摩耗性が得られない傾向があり、15質量部を超えると、ブルーミングを起こし、グリップ性能、耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0041】
加硫剤としては硫黄が好ましい。
【0042】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部〜3質量部が好ましい。0.5質量部未満では、良好な加硫反応が得られず、耐摩耗性が低下するおそれがあり、3質量部を超えると、ブルーミングを起こし、充分なグリップ性能、耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0043】
酸化亜鉛としては、特に限定されず、タイヤなどのゴム分野で使用されているものを使用できるが、平均粒子径が200nm以下(好ましくは100nm以下)の微粒子酸化亜鉛を好適に使用できる。微粒子酸化亜鉛の平均粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上である。
なお、酸化亜鉛の平均粒子径は、窒素吸着によるBET法により測定した比表面積から換算された平均粒子径(平均一次粒子径)である。
【0044】
本発明の効果が良好に得られるという点から、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0045】
本発明の高性能タイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明の高性能タイヤが得られる。
【0046】
本発明の高性能タイヤは、高性能ドライタイヤとして好適に使用できる。
なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤをも含む概念である。また、本明細書において、ドライタイヤとは、ドライグリップ性能に特に優れたタイヤを意味する。
【実施例】
【0047】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0048】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:旭化成(株)製のタフデン4850(スチレン含有率:40質量%、ブタジエン成分中のビニル含有量:41質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分50質量部含有)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(OAN:114cm/100g、NSA:114m/g)
試作カーボンブラック:下記製造例1
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
液状ジエン系重合体:(株)クラレ製のL−SBR−820(液状SBR、Mw:10000)
粘着付与樹脂1:BASF製のKoresin(p−t−ブチルフェノール及びアセチレンの共重合体、軟化点:160℃)
粘着付与樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(テルペン及びスチレンの共重合体、軟化点:125℃)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤1:大内新興化学(株)製のノクラック6C
老化防止剤2:大内新興化学(株)製のノクラックRD
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製のジンコックスーパーF−1(平均粒子径:100nm)
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーZTC(ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛)
【0049】
<製造例1>
空気導入ダクト及び燃焼バーナーを備える内径500mm、長さ1750mmの燃焼帯域と、該燃焼帯域に連なっており、周辺から原料ノズルを貫通設置した内径55mm、長さ700mmの狭径部からなる原料導入帯域と、クエンチ装置を備えた内径200mm、長さ2700mmの後部反応帯域とを順次接合したカーボンブラック製造設備を用いて、天然ガスを燃料、トール油を原料として、表1の条件により、試作カーボンブラックを製造した。得られた試作カーボンブラックのDBP吸油量、NSAを表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
<実施例及び比較例>
表2に示す配合処方に従い、神戸製鋼(株)製1.7Lバンバリーを用いて、材料を混練りした。得られた未加硫ゴム組成物を、ムーニー粘度と、幅20cm、厚さ1cmのシート状にしたときの断面状態とにより、配合剤の溶け残りが無いことを確認した後、トレッドの形状に成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃の条件下で30分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:215/45R17)を得た。
【0052】
得られた試験用タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】
(初期グリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際に2周目おける操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが評価し、比較例1を100として指数表示した(初期グリップ性能指数)。数値が大きいほど、ドライ路面における初期グリップ性能に優れることを示す。
【0054】
(走行中のグリップ性能)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて10周の実車走行を行った。その際における、ベストラップと最終ラップの操舵時のコントロールの安定性をテストドライバーが比較評価し、比較例1を100として指数表示した(走行中のグリップ性能指数)。数値が大きいほど、ドライ路面において、走行中のグリップ性能の低下が小さく、走行中に安定したグリップ性能が得られることを示す。
【0055】
(耐摩耗性)
上記試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、ドライアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行った。その際におけるトレッドの残溝量を計測し(新品時15mm)、比較例1の残溝量を100として指数表示した(耐摩耗性指数)。数値が大きいほど、耐摩耗性が高いことを示す。
【0056】
【表2】
【0057】
表2より、SBRと、DBP吸油量が130cm/100g以上、窒素吸着比表面積が100〜125m/gであるカーボンブラック(試作カーボンブラック)と、可塑剤成分とをそれぞれ所定量含有し、かつカーボンブラック成分の含有量及び可塑剤成分の含有量が式(1)を満たすゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する実施例は、比較例1と比較して、初期グリップ性能、走行中のグリップ性能及び耐摩耗性の全てが改善された。