(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動部材は、予め定められた温度において複数の前記発光素子間の光量を補正する第1の補正値と、温度による光量の変化を補正する第2の補正値とを用いて、前記点灯信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド。
前記第1の温度検出器と前記第2の温度検出器とのそれぞれは、前記実装基板の他方の面上であって、当該実装基板の一方の面に設けられた前記光源部の真裏に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のプリントヘッド。
前記実装基板の他方の面に設けられた前記駆動部材は、当該実装基板の一方の面に設けられた前記光源部の長手方向における中央部にあたる当該実装基板の他方の面上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリントヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0008】
電子写真方式を採用した、プリンタや複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、帯電された感光体上に、画像情報を光記録手段により照射することにより静電潜像を得た後、この静電潜像にトナーを付加して可視化し、記録紙上に転写して定着することによって画像形成が行われる。かかる光記録手段として、レーザを用い、主走査方向にレーザ光を走査させて露光する光走査方式の他、近年では、装置の小型化の要請を受けて発光素子としての発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光素子を主走査方向に複数配列して光源部としたLEDプリントヘッド(LPH:LED Print Head)を用いた記録装置が採用されている。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
(画像形成装置1)
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成の一例を示した図である。
図1に示す画像形成装置1は、一般にタンデム型と呼ばれる画像形成装置である。この画像形成装置1は、各色の画像データに対応して画像形成を行なう画像形成プロセス部10、画像形成プロセス部10を制御する画像形成制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3に接続され、これらから受信された画像データに対して予め定められた画像処理を施す画像処理部40を備えている。
【0010】
画像形成プロセス部10は、予め定められた間隔を置いて並列に配置される4つの画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kを備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれ、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定められた電位で帯電する帯電手段の一例としての帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光するプリントヘッド14、プリントヘッド14によって得られた静電潜像を現像する現像手段の一例としての現像器15を備えている。画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。なお、画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kをそれぞれ区別しないときは、画像形成ユニット11と表記する。
また、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11Y、11M、11C、11Kの感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像を被転写体の一例としての記録用紙25に多重転写させるために、この記録用紙25を搬送する用紙搬送ベルト21と、用紙搬送ベルト21を駆動させる駆動ロール22と、感光体ドラム12のトナー像を記録用紙25に転写させる転写手段の一例としての転写ロール23と、記録用紙25にトナー像を定着させる定着器24とを備えている。
【0011】
この画像形成装置1において、画像形成プロセス部10は、画像形成制御部30から供給される各種の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。そして、画像形成制御部30による制御の下で、パーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置3から受信された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、画像形成ユニット11に供給される。そして、例えば黒(K)色の画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器13により予め定められた電位に帯電され、画像処理部40から供給された画像データに基づいて発光する露光手段の一例としてのプリントヘッド14により露光される。これにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色のトナー像が形成される。画像形成ユニット11Y、11M、11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
【0012】
各画像形成ユニット11で形成された感光体ドラム12上の各色トナー像は、矢印B方向に移動する用紙搬送ベルト21の移動に伴って供給された記録用紙25に、転写ロール23に印加された転写電界により順次静電転写され、記録用紙25上に各色トナーが重畳された合成トナー像が形成される。
その後、合成トナー像が静電転写された記録用紙25は、定着器24まで搬送される。定着器24に搬送された記録用紙25上の合成トナー像は、定着器24によって熱および圧力による定着処理を受けて記録用紙25上に定着され、画像形成装置1から排出される。
【0013】
(プリントヘッド14)
図2は、プリントヘッド14の構成の一例を示した断面図である。プリントヘッド14は、ハウジング61、感光体ドラム12を露光する複数の発光素子(本実施の形態では、発光素子の一例としての発光サイリスタ)を備える光源部63を備えた発光装置65、光源部63から出射された光を感光体ドラム12表面に結像させる光学手段の一例としてのロッドレンズアレイ64、機械的強度を補強する補強部材66を備えている。
発光装置65は、実装基板62を備え、実装基板62の一方の面(以下では表面と表記する。)に、前述した光源部63を、他方の面(以下では裏面と表記する。)に光源部63を駆動する駆動回路110、実装基板62の温度を検知するサーミスタ111、112(
図2では、111/112と表記する。)を備えている。
発光装置65については、後に詳述する。
【0014】
ハウジング61は、例えば金属で形成され、実装基板62およびロッドレンズアレイ64を支持し、光源部63における発光素子の発光面がロッドレンズアレイ64の焦点面となるように設定されている。また、ロッドレンズアレイ64は、感光体ドラム12の軸方向(主走査方向であって、後述する
図3、
図4(b)のX方向)に沿って配置されている。
補強部材66は、例えば板金で形成されている。
【0015】
(発光装置65)
図3は、発光装置65の平面図である。
図3(a)は、発光装置65の一方の面における平面図、
図3(b)は、発光装置65の他方の面における平面図である。なお、発光装置65は、発光手段の一例である。
図3(a)、(b)に一例として示す発光装置65では、光源部63は、実装基板62の表面上に、40個の発光チップC1〜C40が主走査方向であるX方向に二列に千鳥配列されている。なお、発光チップC1〜C40は、実装基板62の長手方向において、一方の端部に偏らないように、中央部に実装されている。これにより、実装基板62、すなわち発光装置65の長手方向の長さが短くなる。発光チップC1〜C40の配列の詳細は後述する。
本明細書では、「〜」は、番号によってそれぞれが区別された複数の構成要素を示すもので、「〜」の前後に記載されたものおよびその間の番号のものを含むことを意味する。例えば、発光チップC1〜C40は、発光チップC1から番号順に発光チップC40までを含む。
【0016】
発光チップC1〜C40のそれぞれの構成は同じであってよい。よって、発光チップC1〜C40をそれぞれ区別しないときは、発光チップCと表記する。
なお、本実施の形態では、発光チップCの数として、合計40個として説明するがこれに限定されない。
【0017】
発光装置65は、実装基板62の裏面上に、光源部63を駆動する駆動回路110を搭載している。
さらに、発光装置65は、実装基板62の他方の面上において、駆動回路110の近傍にサーミスタ111と駆動回路110から離れた実装基板62の端部にサーミスタ112とを備えている。サーミスタ111、112は、実装基板62の温度を検知する。サーミスタ111は、第1の温度検出器の一例、サーミスタ112は、第2の温度検出器の一例である。すなわち、第2の温度検出器は、第1の温度検出器に比べ、駆動回路110から離れた位置に設けられている。なお、第2の温度検出器は、2個以上であってもよい。
なお、サーミスタ111、112の代わりに、熱電対など、他の温度検出器を用いてもよい。
【0018】
実装基板62は、ガラスエポキシなどの絶縁性材料を基体とするプリント配線板(PCB:Printed Circuit Board)であって、実装基板62の表面及び裏面に、銅(Cu)などの導電性材料による配線(ライン)が形成されている。表面の配線と裏面の配線とは、基体に設けられたスルーホールなどにより、導電性材料で接続されている。
【0019】
駆動回路110は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)などで構成されている。すなわち、ICチップである。また、駆動回路110は、複数のICチップで構成されている場合がある。さらに、抵抗、コンデンサなどが周囲に設けられることがある。ここでは、最も発熱の大きい部品、又は、最も発熱の大きい部品を中心として、その周辺に複数の部品が設けられている群を駆動部材と表記することがある。駆動回路110が搭載されたICチップ、又は、このICチップの周りに設けられた抵抗チップ、コンデンサチップなどのチップ群が、駆動部材の一例である。
【0020】
ここでは、駆動回路110は、光源部63の真裏に設けられている。光源部63の真裏とは、光源部63を実装基板62の裏面に投影した際に、投影された光源部63の像と、駆動回路110とが少なくとも一部において重なることをいう。なお、駆動回路110は、真裏からずれた位置に設けられてもよい。
そして、駆動回路110は、発光チップC1〜C40の配列における中央部(発光チップC20、C21の部分)に設けられているとする。駆動回路110を発光チップC1〜C40の配列における中央部に設けることで、駆動回路110から発光チップC1〜C40への配線の引き回し(取り出し)が左右方向(
図3(a)、(b)におけるX方向)に均等に配分される。よって、実装基板62の幅(
図3(a)、(b)におけるY方向)が小さく抑えられる。
なお、発光チップC1〜C40の配列の中央部でなくともよく、一方の端部や端部と中央部との間であってもよい。
また、駆動回路110であるICチップは、例えばBGA(Ball Grid Array)などにより、実装基板62の裏面の配線(ライン)に接続されている。
【0021】
サーミスタ111、112は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタであって、温度が上昇すると抵抗値が減少する負の温度特性をもつ素子である。そして、サーミスタ111、112の温度検知部は、実装基板62に接触するように固定されている。よって、サーミスタ111、112は、実装基板62の温度を検知する。
後述するように、発光チップCの裏面電極85が実装基板62に固定されているので、実装基板62の温度は、発光チップCの温度と相関する。
ここでは、サーミスタ111、112は、実装基板62を挟んで、光源部63の真裏に設けられている。光源部63の真裏とは、光源部63を実装基板62の裏面に投影した際に、投影された光源部63の像と、サーミスタ111、112とが少なくとも一部において重なることをいう。これは、サーミスタ111、112が、実装基板62の温度を介して、光源部63の温度をより正確に検知するためである。
なお、サーミスタ111、112は、いずれか一方又は両方が、真裏からずれた位置に設けられてもよい。また、サーミスタ111、112は、いずれか一方又は両方が、実装基板62の表面に設けられてもよい。
【0022】
図4は、発光チップCの構成及び発光装置65の構成を示した図である。
図4(a)は、発光チップCの構成を示し、
図4(b)は、発光装置65の駆動回路110の構成および実装基板62上の配線(ライン)の構成を示す。
前述したように、駆動回路110は、実装基板62の裏面であって、発光チップC1〜C40の配列における中央部に設けられている。
図4(b)では、説明の便宜のために、実装基板62の左側に示している。
【0023】
はじめに、
図4(a)に示す発光チップCの構成を説明する。
発光チップCは、表面形状が長方形の基板80上に、長方形の一長辺に近い側に長辺に沿って(
図4(a)のx方向に)列状に設けられた複数の発光素子(本実施の形態では発光サイリスタL1、L2、L3、…)から構成される発光部102を備えている。さらに、発光チップCは、長辺方向の両端部に、各種の駆動信号等を取り込むための複数の端子(φ1端子、φ2端子、φI端子、Vga端子)を備えている。
これらの端子は、基板80の一端部からφ1端子、Vga端子の順に設けられ、基板80の他端部からφI端子、φ2端子の順に設けられている。そして、発光部102は、Vga端子とφ2端子との間に設けられている。さらに、基板80の裏面にはVsub端子としての裏面電極85が設けられている。
【0024】
裏面電極85は、実装基板62の表面に設けられた配線(ライン)に銀ペーストなどにより固定されている。
端子(φ1端子、φ2端子、φI端子、Vga端子)はボンディングパッドであって、ボンディングワイヤを介して、実装基板62の表面に設けられた配線(ライン)に接続されている。
なお、端子(φ1端子、φ2端子、φI端子、Vga端子)は、
図4(a)に示した配列でなくともよく、順番が異なっていてもよい。
【0025】
ここで、「列状」とは、
図4(a)に示したように複数の発光素子がx方向に一直線上に配置されている場合に限らず、複数の発光素子のそれぞれの発光素子が、列方向と直交するy方向に対して、互いに異なるずれ量を有して配置されている状態でもよい。例えば、発光素子の発光面を画素としたとき、それぞれの発光素子が、列方向であるx方向と直交するy方向に数画素分または数十画素分のずれ量をもって配置されていてもよい。また、隣接する発光素子間で交互に、または複数の発光素子毎に、ジグザグに配置されていてもよい。
【0026】
次に、
図4(b)により、発光装置65の駆動回路110の構成および実装基板62上の配線(ライン)の構成を説明する。
前述したように、発光装置65の実装基板62には、駆動回路110および発光チップC1〜C40が搭載され、駆動回路110と発光チップC1〜C40とを接続する配線(ライン)が設けられている。
【0027】
まず、駆動回路110の構成について説明する。
駆動回路110は、
図1に示した画像形成制御部30からクロック信号、基準電位、電源電位などの制御信号と画像処理部40により処理された各発光チップCに供給する画像データ(ビデオ信号)を受信する。
そして、駆動回路110は、制御信号と画像データとから、発光チップCを駆動する信号(後述する第1転送信号φ1、第2転送信号φ2、点灯信号φI1〜φI40)を生成して供給する。
なお、駆動回路110は、後述するように光量(放射エネルギ)を補正して点灯信号φI1〜φI40(それぞれを区別しない場合は、点灯信号φIと表記する。)を供給する。
【0028】
すなわち、駆動回路110は、発光チップC1〜C40に、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2を生成して供給する転送信号生成部120を備えている。
また、駆動回路110は、各種の制御信号に基づき、発光チップC1〜C40に、点灯信号φI1〜φI40をそれぞれ生成して供給する点灯信号生成部140を備えている。
そして、駆動回路110は、発光チップC1〜C40に電位の基準となる基準電位Vsubを供給する基準電位供給部160、発光チップC1〜C40の駆動のための電源電位Vgaを供給する電源電位供給部170を備えている。
【0029】
次に、発光チップC1〜C40の配列について説明する。
奇数番号の発光チップC1、C3、C5、…は、それぞれの基板80の長辺方向に間隔を設けて一列に配列されている。偶数番号の発光チップC2、C4、C6、…も、同様に配列されている。そして、奇数番号の発光チップC1、C3、C5、…と偶数番号の発光チップC2、C4、C6、…とは、発光チップCにおける発光部102側の長辺が互いに向かい合うように、180°回転した状態で千鳥に配列されている。そして、発光チップCは、発光チップC間においても発光素子が主走査方向(X方向)に発光チップC内の発光素子の間隔で並ぶように、位置が設定されている。
なお、
図4(b)では、発光チップC1〜C9を示す。そして、発光チップC1〜C9に、矢印で
図4(a)に示した発光部102の発光素子の並び(本実施の形態では発光サイリスタL1、L2、L3、…の番号順)の方向を示している。
【0030】
駆動回路110と発光チップC1〜C40とを接続する配線(ライン)について説明する。なお、発光チップC1〜C40は、実装基板62の表面に設けられている。また、駆動回路110は、実装基板62の裏面に設けられている。よって、配線(ライン)は、実装基板62の表面、裏面及び実装基板62の基体に設けられたスルーホールを経由して設けられている。
【0031】
実装基板62には、基準電位Vsubを供給する電源ライン200aが設けられている。電源ライン200aは、各発光チップCの裏面に設けられたVsub端子である裏面電極85に設けられたVsub端子に接続されている。
そして、実装基板62には、発光チップCを駆動する電源電位Vgaを供給する電源ライン200bが設けられている。電源ライン200bは、各発光チップCに設けられたVga端子に接続されている。
【0032】
実装基板62には、駆動回路110の転送信号生成部120から、各発光チップCに第1転送信号φ1を送信するための第1転送信号ライン201、第2転送信号φ2を送信する第2転送信号ライン202が設けられている。第1転送信号ライン201は、各発光チップCのφ1端子に、第2転送信号ライン202は、発光チップCのφ2端子に接続されている。第1転送信号φ1、第2転送信号φ2は、発光チップC1〜C40に共通(並列)に送信される。
【0033】
また、実装基板62には、駆動回路110の点灯信号生成部140から、発光チップC1〜C40のそれぞれに、点灯信号φI1〜φI40を送信する点灯信号ライン204−1〜204−40が設けられている。点灯信号ライン204−1〜204−40は、それぞれ電流制限抵抗RIを介して、発光チップC1〜C40のそれぞれのφI端子に接続されている。
【0034】
以上説明したように、基準電位Vsub、電源電位Vgaは、実装基板62上の発光チップC1〜C40に共通に供給される。第1転送信号φ1、第2転送信号φ2も、発光チップC1〜C40に共通(並列)に送信される。一方、点灯信号φI1〜φI40は、発光チップC1〜C40のそれぞれに個別に送信される。
【0035】
(発光チップCの構成)
図5は、自己走査型発光素子アレイ(SLED)が搭載された発光チップCの回路構成を説明する等価回路図である。なお、端子(φ1端子、φ2端子、Vga端子、φI端子)の位置は、
図4(a)と異なるが、説明の便宜上、図中左端に示している。そして、基板80の裏面に設けられたVsub端子を、基板80の外に引き出して示している。
ここでは、駆動回路110との接続関係を含めて説明するために、発光チップC1を例として発光チップCを説明する。そこで、
図5においては、発光チップCを発光チップC1(C)と表記する。他の発光チップC2〜C40の構成は、発光チップC1と同じである。
【0036】
発光チップC1(C)は、前述したように基板80上に列状に配列された発光サイリスタL1、L2、L3、…から構成される発光部102(
図4(a)参照)を備えている。
そして、発光チップC1(C)は、発光部102と同様に列状に配列された転送サイリスタT1、T2、T3、…を備えている。
なお、
図5では、発光チップC1(C)において、発光サイリスタL1〜L4、転送サイリスタT1〜T4を中心とした部分を示している。
【0037】
また、発光チップC1(C)は、転送サイリスタT1、T2、T3、…をそれぞれ番号順に2つをペアにして、それぞれのペアの間に結合ダイオードDx1、Dx2、Dx3、…を備えている。
さらに、発光チップC1(C)は、電源線抵抗Rgx1、Rgx2、Rgx3、…を備えている。
【0038】
また、発光チップC1(C)は、1個のスタートダイオードDx0を備えている。そして、後述する第1転送信号φ1が送信される第1転送信号線72と第2転送信号φ2が送信される第2転送信号線73とに過剰な電流が流れるのを防止するために、電流制限抵抗R1、R2を備えている。
【0039】
発光サイリスタL1、L2、L3、…、転送サイリスタT1、T2、T3、…は、
図5中において、左側から番号順に配列されている。さらに、結合ダイオードDx1、Dx2、Dx3、…、電源線抵抗Rgx1、Rgx2、Rgx3、…も、図中左側から番号順に配列されている。
そして、発光サイリスタL1、L2、L3、…、転送サイリスタT1、T2、T3、…は、
図5において上から、転送サイリスタT1、T2、T3、…、発光サイリスタL1、L2、L3、…の順に並べられている。
【0040】
ここでは、発光サイリスタL1、L2、L3、…、転送サイリスタT1、T2、T3、…、結合ダイオードDx1、Dx2、Dx3、…、電源線抵抗Rgx1、Rgx2、Rgx3、…をそれぞれ区別しないときは、発光サイリスタL、転送サイリスタT、結合ダイオードDx、電源線抵抗Rgxと表記する。
【0041】
発光サイリスタLの数は、予め定められた個数とすればよい。本実施の形態では、発光サイリスタLの数を、一例として、128個とする。すると、転送サイリスタTの数も128個である。同様に、電源線抵抗Rgxの数も128個である。しかし、結合ダイオードDxの数は、転送サイリスタTの数より1少ない127個である。
なお、転送サイリスタTの数は、発光サイリスタLの数より多くてもよい。
【0042】
上記のサイリスタ(発光サイリスタL、転送サイリスタT)は、ゲート端子、アノード端子、カソード端子の3端子を有する半導体素子である。
【0043】
転送サイリスタT、発光サイリスタLのそれぞれのアノード端子は、発光チップC1(C)の基板80に接続されている(アノードコモン)。
そして、これらのアノード端子は、基板80裏面に設けられたVsub端子である裏面電極85(
図4(a)参照)を介して電源ライン200a(
図4(b)参照)に接続されている。この電源ライン200aは、基準電位供給部160から基準電位Vsubが供給される。
【0044】
転送サイリスタTの配列に沿って、奇数番号(奇数番目)の転送サイリスタT1、T3、…のカソード端子は、第1転送信号線72に接続されている。そして、第1転送信号線72は、電流制限抵抗R1を介してφ1端子に接続されている。φ1端子は、第1転送信号φ1を受信する。
一方、転送サイリスタTの配列に沿って、偶数番号(偶数番目)の転送サイリスタT2、T4、…のカソード端子は、第2転送信号線73に接続されている。そして、第2転送信号線73は、電流制限抵抗R2を介してφ2端子に接続されている。φ2端子は、第2転送信号φ2を受信する。
【0045】
発光サイリスタL1、L2、L3、…のカソード端子は、点灯信号線75に接続されている。点灯信号線75は、φI端子に接続されている。発光チップC1のφI端子は、電流制限抵抗RIを介して点灯信号ライン204−1に接続され、点灯信号生成部140から点灯信号φI1を受信する。なお、他の発光チップC2〜C40のφI端子は、それぞれ電流制限抵抗RIを介して点灯信号ライン204−2〜204−40が接続され、点灯信号生成部140から点灯信号φI2〜φI40を受信する。
【0046】
転送サイリスタT1、T2、T3、…のそれぞれのゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…は、同じ番号の発光サイリスタL1、L2、L3、…のゲート端子Gl1、Gl2、Gl3、…に、1対1で接続されている。よって、ゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…とゲート端子Gl1、Gl2、Gl3、…とは、同じ番号のものが電気的に同電位になっている。よって、例えばゲート端子Gt1(Gl1)と表記することがある。
【0047】
ここでも、ゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…、ゲート端子Gl1、Gl2、Gl3、…をそれぞれ区別しないときは、ゲート端子Gt、ゲート端子Glと表記する。そして、ゲート端子Gt(Gl)と表記することがある。
【0048】
転送サイリスタT1、T2、T3、…のそれぞれのゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…を番号順に2個ずつペアとしたゲート端子Gt間に、結合ダイオードDx1、Dx2、Dx3、…がそれぞれ接続されている。すなわち、結合ダイオードDx1、Dx2、Dx3、…はそれぞれがゲート端子Gt1、Gt2、Gt3、…で順に挟まれるように直列接続されている。そして、結合ダイオードDx1の向きは、ゲート端子Gt1からゲート端子Gt2に向かって電流が流れる方向に接続されている。他の結合ダイオードDx2、Dx3、Dx4、…についても同様である。
【0049】
転送サイリスタTのゲート端子Gt(Gl)は、転送サイリスタTのそれぞれに対応して設けられた電源線抵抗Rgxを介して、電源線71に接続されている。電源線71はVga端子に接続されている。
【0050】
そして、転送サイリスタ列の一端側における転送サイリスタT1のゲート端子Gt1は、スタートダイオードDx0のカソード端子に接続されている。一方、スタートダイオードDx0のアノード端子は、第2転送信号線73に接続されている。
【0051】
図5において、発光チップC1(C)の転送サイリスタT、結合ダイオードDx、電源線抵抗Rgx、スタートダイオードDx0、電流制限抵抗R1、R2を備える部分を転送部101と表記する。前述したように、発光サイリスタLを備える部分が発光部102に該当する。
【0052】
発光チップCは、例えば、GaAsやGaAlAsなどのIII−V族化合物半導体で構成されている。すなわち、導電型がp型の基板上に、p型の第1半導体層、導電型がn型の第2半導体層、p型の第3半導体層およびn型の第4半導体層の4層の半導体層が順に積層されpnpn構造をなしている。そして、発光チップCは、複数の半導体層が分離溝にて相互に分離された複数の島(アイランド)から構成されている。
【0053】
(発光装置65の動作)
次に、発光装置65の動作について説明する。
前述したように、発光装置65は発光チップC1〜C40を備えている(
図3、4参照)。
図4に示したように、基準電位Vsub、電源電位Vgaは、実装基板62上のすべての発光チップC1〜C40に共通に供給される。同様に、第1転送信号φ1、第2転送信号φ2は、発光チップC1〜C40に共通(並列)に送信される。
一方、点灯信号φI1〜φI40は、発光チップC1〜C40のそれぞれに個別に送信される。点灯信号φI1〜φI40は、画像データに基づいて、各発光チップC1〜C40の発光サイリスタLを点灯または非点灯に設定する信号である。よって、点灯信号φI1〜φI40は、画像データによって相互に波形が異なる。しかし、点灯信号φI1〜φI40は、並列に送信される。
発光チップC1〜C40は並列に駆動されるので、発光チップC1の動作を説明すれば足りる。
【0054】
<サイリスタ>
発光チップC1の動作を説明する前に、サイリスタ(転送サイリスタT、発光サイリスタL)の基本的な動作を説明する。サイリスタは、前述したように、アノード端子、カソード端子、ゲート端子の3端子を有する半導体素子である。
以下では、一例として、Vsub端子である裏面電極85に供給される基準電位Vsubをハイレベルの電位(以下では「H」と表記する。)として0V、Vga端子に供給される電源電位Vgaをローレベルの電位(以下では「L」と表記する。)として−3.3Vとして説明する。
本実施の形態では、発光装置65は負の電位で駆動される。
【0055】
サイリスタのアノード端子は裏面電極85に供給される基準電位Vsub(「H」(0V))になっている。
サイリスタは、p型の基板上に積層されたp型の第1半導体層、n型の第2半導体層、p型の第3半導体層およびn型の第4半導体層の4層の半導体層で構成されるpnpn構造をなしている。以下では、GaAsやGaAlAsなどのIII−V族化合物半導体のp型の半導体層とn型の半導体層とで構成されるpn接合の順方向電位(拡散電位)Vdを一例として1.5Vとして説明する。
【0056】
アノード端子とカソード端子との間の電流が小さい(流れていない)オフ状態では、サイリスタは、しきい電圧より低い電位(絶対値が大きい負の電位)がカソード端子に印加されるとオン状態に移行(ターンオン)する。ここで、サイリスタのしきい電圧は、ゲート端子の電位からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた値である。よって、ゲート端子の電位が0Vであると、サイリスタのしきい電圧は−1.5Vとなる。すなわち、−1.5Vより低い電位(絶対値が大きい負の電位)がカソード端子に印加されると、サイリスタはターンオンする。サイリスタは、ターンオンすると、アノード端子とカソード端子との間に電流が流れた状態(オン状態)になる。
【0057】
オン状態のサイリスタのゲート端子の電位は、アノード端子の電位に近い電位になる。ここでは、アノード端子を基準電位Vsub(0V(「H」))に設定しているので、ゲート端子の電位は0V(「H」)になるとする。また、オン状態のサイリスタのカソード端子は、アノード端子の電位からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた電位に近い電位となる。ここでは、アノード端子を基準電位Vsub(0V(「H」))に設定しているので、オン状態のサイリスタのカソード端子の電位は−1.5Vに近い電位(絶対値が1.5Vより大きい負の電位)となる。なお、カソード端子の電位は、オン状態のサイリスタに電流を供給する電源との関係で設定される。
【0058】
サイリスタは、一度ターンオンすると、カソード端子の電位が、オン状態を維持するために必要な電位(上記の−1.5Vに近い電位)より高い電位(絶対値が小さい負の電位、0Vまたは正の電位)が印加されると、オフ状態に移行(ターンオフ)する。例えば、カソード端子が「H」(0V)になると、オン状態を維持するために必要な電位より高い電位であるとともに、カソード端子の電位とアノード端子の電位とが同じになるので、サイリスタはターンオフする。
一方、オン状態のサイリスタのカソード端子に、オン状態を維持するために必要な電位より低い電位(絶対値が大きい負の電位)が継続的に印加され、オン状態を維持しうる電流(維持電流)が供給されると、サイリスタはオン状態を維持する。
そして、発光サイリスタLは、ターンオンすると点灯(発光)し、ターンオフすると消灯(非点灯)する。オン状態の発光サイリスタLの発光量は、光が出射する発光面の面積およびカソード端子とアノード端子との間で流れる電流によって決まる。
【0059】
<タイミングチャート>
図6は、発光装置65および発光チップCの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6では、発光チップC1の発光サイリスタL1〜L5の5個の発光サイリスタLの点灯または非点灯を制御(点灯制御と表記する。)する部分のタイミングチャートを示している。前述したように、他の発光チップC2〜C40は、発光チップC1と並行して動作するため、発光チップC1の動作を説明すれば足りる。
なお、
図6では、発光チップC1の発光サイリスタL1、L2、L3、L5を点灯させ、発光サイリスタL4を消灯(非点灯)としている。
【0060】
図6において、時刻aから時刻kへとアルファベット順に時刻が経過するとする。発光サイリスタL1は、時刻bから時刻eの期間T(1)において、発光サイリスタL2は、時刻eから時刻iの期間T(2)において、発光サイリスタL3は、時刻iから時刻jの期間T(3)において、発光サイリスタL4は、時刻jから時刻kの期間T(4)において点灯または非点灯の制御(点灯制御)がされる。以下、同様にして番号が5以上の発光サイリスタLが点灯制御される。
【0061】
第1転送信号φ1、第2転送信号φ2、点灯信号φI1の波形について説明する。なお、時刻aから時刻bまでの期間は、発光チップC1(発光チップC2〜C40も同じ。)が動作を開始する期間である。この期間の信号については、動作の説明において説明する。
【0062】
φ1端子(
図5、
図6参照)に送信される第1転送信号φ1およびφ2端子(
図5、
図6参照)に送信される第2転送信号φ2は、「H」と「L」との2つの電位を有する信号である。そして、第1転送信号φ1および第2転送信号φ2は、連続する2つの期間T(例えば、期間T(1)と期間T(2))を単位として波形が繰り返される。
【0063】
第1転送信号φ1は、期間T(1)の開始時刻bで「H」から「L」に移行し、時刻fで「L」から「H」に移行する。そして、期間T(2)の終了時刻iにおいて、「H」から「L」に移行する。
第2転送信号φ2は、期間T(1)の開始時刻bにおいて「H」であって、時刻eで「H」から「L」に移行する。そして、期間T(2)の終了時刻iにおいて「L」を維持している。
【0064】
第1転送信号φ1と第2転送信号φ2とを比較すると、第2転送信号φ2は、第1転送信号φ1を時間軸上で期間T後ろにずらしたものに当たる。第1転送信号φ1は、期間T(1)および期間T(2)での波形が、期間T(3)以降において繰り返す。一方、第2転送信号φ2は、期間T(1)において、破線で示す波形および期間T(2)での波形が、期間T(3)以降において繰り返す。第2転送信号φ2の期間T(1)の波形が期間T(3)以降と異なるのは、期間T(1)は発光装置65が動作を開始する期間であるためである。
【0065】
第1転送信号φ1と第2転送信号φ2との一組の転送信号は、後述するように、
図5に示した転送サイリスタTを番号順にオン状態を伝播させることにより、オン状態の転送サイリスタTと同じ番号の発光サイリスタLを、点灯または非点灯の制御(点灯制御)の対象として指定する。
【0066】
次に、発光チップC1のφI端子に送信される点灯信号φI1について説明する。なお、他の発光チップC2〜C40には、それぞれ点灯信号φI2〜φI40が送信される。点灯信号φI1は、「H」と「L」との2つの電位を有する信号である。
【0067】
ここでは、発光チップC1の発光サイリスタL1に対する点灯制御の期間T(1)において、点灯信号φI1を説明する。なお、発光サイリスタL1は点灯させるとしている。
点灯信号φI1は、期間T(1)の開始時刻bにおいて「H」であって、時刻cで「H」から「L」に移行する。そして、時刻dで「L」から「H」に移行し、期間T(1)の終了時刻eにおいて「H」を維持している。
【0068】
では、
図4、
図5を参照しつつ、
図6に示したタイミングチャートにしたがって、発光装置65および発光チップC1の動作を説明する。なお、以下では、発光サイリスタL1およびL2を点灯制御する期間T(1)およびT(2)について説明する。
(1)時刻a
<発光装置65>
時刻aにおいて、発光装置65の駆動回路110の基準電位供給部160は、基準電位Vsubを「H」(0V)に設定する。電源電位供給部170は、電源電位Vgaを「L」(−3.3V)に設定する。すると、発光装置65の実装基板62上の電源ライン200aは基準電位Vsubの「H」(0V)になり、発光チップC1〜C40のそれぞれのVsub端子は「H」になる。同様に、電源ライン200bは電源電位Vgaの「L」(−3.3V)になり、発光チップC1〜C40のそれぞれのVga端子は「L」になる(
図4参照)。これにより、発光チップC1〜C40のそれぞれの電源線71は「L」になる(
図5参照)。
【0069】
そして、駆動回路110の転送信号生成部120は第1転送信号φ1、第2転送信号φ2をそれぞれ「H」に設定する。すると、第1転送信号ライン201および第2転送信号ライン202が「H」になる(
図4参照)。これにより、発光チップC1〜C40のそれぞれのφ1端子およびφ2端子が「H」になる。電流制限抵抗R1を介してφ1端子に接続されている第1転送信号線72の電位も「H」になり、電流制限抵抗R2を介してφ1端子に接続されている第2転送信号線73も「H」になる(
図5参照)。
【0070】
さらに、駆動回路110の点灯信号生成部140は、点灯信号φI1〜φI40をそれぞれ「H」に設定する。すると、点灯信号ライン204−1〜204−40が「H」になる(
図4参照)。これにより、発光チップC1〜C40のそれぞれのφI端子が、電流制限抵抗RIを介して「H」になり、φI端子に接続された点灯信号線75も「H」になる(
図5参照)。
【0071】
<発光チップC1>
転送サイリスタT、発光サイリスタLのアノード端子はVsub端子に接続されているので、「H」(0V)に設定される。
【0072】
奇数番号の転送サイリスタT1、T3、T5、…のそれぞれのカソード端子は、第1転送信号線72に接続され、「H」に設定されている。偶数番号の転送サイリスタT2、T4、T6、…のそれぞれのカソード端子は、第2転送信号線73に接続され、「H」に設定されている。よって、転送サイリスタTは、アノード端子およびカソード端子がともに「H」であるためオフ状態にある。
【0073】
発光サイリスタLのカソード端子は、「H」の点灯信号線75に接続されている。よって、発光サイリスタLも、アノード端子およびカソード端子がともに「H」であるためオフ状態にある。
【0074】
図5中の転送サイリスタ列の一端のゲート端子Gt1は、前述したように、スタートダイオードDx0のカソード端子に接続されている。ゲート端子Gt1は、電源線抵抗Rgx1を介して、電源電位Vga(「L」(−3.3V))の電源線71に接続されている。そして、スタートダイオードDx0のアノード端子は第2転送信号線73に接続され、電流制限抵抗R2を介して、「H」(0V)のφ2端子に接続されている。よって、スタートダイオードDx0は順バイアスであり、スタートダイオードDx0のカソード端子(ゲート端子Gt1(Gl1))は、スタートダイオードDx0のアノード端子の電位(「H」(0V))からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた値(−1.5V)になる。また、ゲート端子Gt1が−1.5Vになると、結合ダイオードDx1は、アノード端子(ゲート端子Gt1)が−1.5Vで、カソード端子が電源線抵抗Rgx2を介して電源線71(「L」(−3.3V))に接続されているので、順バイアスになる。よって、ゲート端子Gt2の電位は、ゲート端子Gt1の電位(−1.5V)からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた−3Vになる。しかし、3以上の番号のゲート端子Gtには、スタートダイオードDx0のアノード端子が「H」(0V)であることの影響は及ばず、これらのゲート端子Gtの電位は、電源線71の電位である「L」(−3.3V)になっている。
なお、前述したように、ゲート端子Gtはゲート端子Glに接続されているので、ゲート端子Glの電位は、ゲート端子Gtの電位と同じである。よって、転送サイリスタT、発光サイリスタLのしきい電圧は、ゲート端子Gt(Gl)の電位からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた値となる。すなわち、転送サイリスタT1、発光サイリスタL1のしきい電圧は−3V、転送サイリスタT2、発光サイリスタL2のしきい電圧は−4.5V、番号が3以上の転送サイリスタT、発光サイリスタLのしきい電圧は−4.8Vとなっている。
【0075】
(2)時刻b
図6に示す時刻bにおいて、第1転送信号φ1が、「H」(0V)から「L」(−3.3V)に移行する。これにより発光装置65および発光チップC1が動作を開始する。以下では、発光チップC1の動作を説明する。
第1転送信号φ1が「H」から「L」に移行すると、φ1端子および電流制限抵抗R1を介して、第1転送信号線72の電位が、「H」から「L」に移行する。すると、しきい電圧が−3Vである転送サイリスタT1がターンオンする。
転送サイリスタT1がターンオンすることで、第1転送信号線72の電位は、アノード端子の電位(「H」(0V))からpn接合の順方向電位Vd(1.5V)を引いた−1.5Vになる。
【0076】
転送サイリスタT1がターンオンすると、ゲート端子Gt1(Gl1)の電位は、転送サイリスタT1のアノード端子の電位である「H」(0V)になる。そして、ゲート端子Gt2(Gl2)の電位が−1.5V、ゲート端子Gt3(Gl3)の電位が−3V、番号が4以上のゲート端子Gt(Gl)の電位が「L」(−3.3V)になる。
これにより、発光サイリスタL1のしきい電圧が−1.5V、転送サイリスタT2、発光サイリスタL2のしきい電圧が−3V、転送サイリスタT3、発光サイリスタL3のしきい電圧が−4.5V、番号が4以上の転送サイリスタT、発光サイリスタLのしきい電圧が−4.8Vになる。
【0077】
(3)時刻c
時刻cにおいて、点灯信号φI1が「H」から「L」に移行する。
すると、電流制限抵抗RIおよびφI端子を介して、点灯信号線75が「H」から「L」に移行する。すると、しきい電圧が−1.5Vである発光サイリスタL1がターンオンして、点灯(発光)する。これにより、点灯信号線75の電位が−1.5Vに近い電位(絶対値が1.5Vより大きい負の電位)になる。
【0078】
(4)時刻d
時刻dにおいて、点灯信号φI1が「L」から「H」に移行する。
すると、電流制限抵抗RIおよびφI端子を介して、点灯信号線75の電位が「L」から「H」に移行する。すると、発光サイリスタL1は、アノード端子とカソード端子とがともに「H」になるのでターンオフして消灯(非点灯)する。発光サイリスタL1の点灯期間は、点灯信号φI1が「H」から「L」に移行した時刻cから、点灯信号φI1が「L」から「H」に移行する時刻dまでの、点灯信号φI1が「L」である期間となる。
【0079】
(5)時刻e
時刻eにおいて、第2転送信号φ2が「H」から「L」に移行する。ここで、発光サイリスタL1を点灯制御する期間T(1)が終了し、発光サイリスタL2を点灯制御する期間T(2)が開始する。
第2転送信号φ2が「H」から「L」に移行すると、φ2端子を介して第2転送信号線73の電位が「H」から「L」に移行する。前述したように、転送サイリスタT2は、しきい電圧が−3Vになっているので、ターンオンする。これにより、ゲート端子Gt2(Gl2)の電位が「H」(0V)、ゲート端子Gt3(Gl3)の電位が−1.5V「H」(0V)、ゲート端子Gt4(Gl4)の電位が−3Vになる。そして、番号が5以上のゲート端子Gt(Gl)の電位が−3.3Vになる。
【0080】
(6)時刻f
時刻fにおいて、第1転送信号φ1が「L」から「H」に移行する。
すると、φ1端子を介して第1転送信号線72の電位が「L」から「H」に移行する。すると、オン状態の転送サイリスタT1は、アノード端子とカソード端子とがともに「H」になって、ターンオフする。すると、ゲート端子Gt1(Gl1)の電位は、電源線抵抗Rgx1を介して、電源線71の電源電位Vga(「L」(−3.3V))に向かって変化する。これにより、結合ダイオードDx1は、電流が流れない方向に電位が加えられた状態(逆バイアス)になる。よって、ゲート端子Gt2(Gl2)が「H」(0V)である影響は、ゲート端子Gt1(Gl1)には及ばなくなる。すなわち、逆バイアスの結合ダイオードDxで接続されたゲート端子Gtを有する転送サイリスタTは、しきい電圧が−4.8Vになって、「L」(−3.3V)の第1転送信号φ1または第2転送信号φ2ではターンオンしなくなる。
【0081】
(7)その他
時刻gにおいて、点灯信号φI1が「H」から「L」に移行すると、時刻cでの発光サイリスタL1と同様に、発光サイリスタL2がターンオンして、点灯(発光)する。
そして、時刻hにおいて、点灯信号φI1が「L」から「H」に移行すると、時刻dでの発光サイリスタL1と同様に、発光サイリスタL2がターンオフして消灯する。
さらに、時刻iにおいて、第1転送信号φ1が「H」から「L」に移行すると、時刻bでの転送サイリスタT1または時刻eでの転送サイリスタT2と同様に、しきい電圧が−3Vの転送サイリスタT3がターンオンする。時刻iで、発光サイリスタL2を点灯制御する期間T(2)が終了し、発光サイリスタL3を点灯制御する期間T(3)が開始する。
以降は、これまで説明したことの繰り返しとなる。
【0082】
なお、発光サイリスタLを点灯(発光)させないで、消灯(非点灯)のままとするときは、
図6の発光サイリスタL4を点灯制御する期間T(4)における時刻jから時刻kに示す点灯信号φI1のように、点灯信号φIを「H」(0V)のままとすればよい。このようにすることで、発光サイリスタL4のしきい電圧が−1.5Vであっても、発光サイリスタL4は消灯(非点灯)のままとなる。
【0083】
以上説明したように、転送サイリスタTのゲート端子Gtは結合ダイオードDxによって相互に接続されている。よって、ゲート端子Gtの電位が変化すると、電位が変化したゲート端子Gtに、順バイアスの結合ダイオードDxを介して接続されたゲート端子Gtの電位が変化する。そして、電位が変化したゲート端子を有する転送サイリスタTのしきい電圧が変化する。転送サイリスタTは、しきい電圧が「L」(−3.3V)より高い(絶対値が小さい負の電位)と、第1転送信号φ1または第2転送信号φ2が「H」(0V)から「L」(−3.3V)に移行するタイミングにおいてターンオンする。
そして、オン状態の転送サイリスタTのゲート端子Gtにゲート端子Glが接続された発光サイリスタLは、しきい電圧が−1.5Vであるので、点灯信号φIが「H」から「L」に移行すると、ターンオンして点灯(発光)する。
すなわち、転送サイリスタTはオン状態になることで、点灯制御の対象である発光サイリスタLを指定し、点灯信号φIは、点灯制御の対象の発光サイリスタLを点灯または非点灯に設定する。
このように、画像データに応じて点灯信号φIの波形を設定して、各発光サイリスタLの点灯または非点灯を制御している。
【0084】
発光装置65は、製造時における各発光サイリスタL間の特性差や、各発光サイリスタL間の温度差によって、各発光サイリスタL間で発光量(光量)がばらつく。
なお、発光装置65の全体的な温度変化によっても、発光サイリスタLの光量が変動する。この場合は、発光装置65の各発光サイリスタLの光量が同時に変動する。
すなわち、GaAsやGaAlAsなどIII−V族化合物半導体で構成された発光サイリスタLでは、温度の上昇に伴って光量が低下する。
よって、本実施の形態では、発光サイリスタLの光量を補正(光量補正)し、各発光サイリスタL間での光量のばらつき(変動)を抑制している。
【0085】
ここでの光量補正は、発光サイリスタLが点灯(発光)している点灯期間、例えば、発光サイリスタL1では、
図6における時刻cから時刻dまでの点灯期間を調整することで行っている。すなわち、光量が小さい発光サイリスタLに対しては、点灯期間を予め定められた点灯期間より長くし、光量が大きい発光サイリスタLに対しては、点灯期間を予め定められた点灯期間より短く設定する。
【0086】
(光量補正)
以下では光量の補正(光量補正)について説明する。
まず、プリントヘッド14において、光源部63の各発光サイリスタL間の温度差に起因する光量の変動について説明する。
図7は、プリントヘッド14における各発光サイリスタLの温度差による光量の変動(光量低下)の一例を示す図である。横軸は、光源部63における位置である。ここでは、光源部63の長さは、326mmである。縦軸は、%で示した光量の低下割合(光量低下)である。
図3(a)、(b)に示したように、実装基板62の中央部に駆動回路110を配置した場合である。そして、製造時における各発光サイリスタL間の光量差は、発光装置65の製造時に、各発光サイリスタLの特性を測定して、光量のばらつきが抑制するように点灯期間が設定してある。
【0087】
図7において、「初期」とは、発光装置65の動作を開始させて間もない時点をいう。この時点では、駆動回路110の温度の上昇は、小さい。よって、光源部63において、光量低下がみられない。
そして、「経過1」とは、発光装置65の動作を開始させてしばらくの時間が経過した時点をいう。この時点では、駆動回路110の温度が上昇しているが、まだ、上昇過程にあって、飽和していない。光源部63の中央部が両端部より光量低下が大きい。なお、中央部における光量低下は5〜6%である。これは、実装基板62の中央部に駆動回路110を設けたことにより、実装基板62の中央部の温度が両端部の温度に比べて上昇したため、発光サイリスタLの光量が低下したものである。
さらに、「経過2」とは、発光装置65が動作を開始させてかなりの時間が経過した時点をいう。この時点では、駆動回路110は、温度が飽和した状態にある。この時点でも、光源部63の中央部が両端部より光量低下が大きい。なお、中央部における光量低下は7〜8%である。
【0088】
0.5%以上の光量低下は、記録用紙25に定着されたトナー像において、濃度の変動となって視認されうる。すなわち、発光サイリスタL間における温度差に起因する光量低下を0.5%未満に抑えることがよい。
【0089】
図8は、駆動回路110における点灯信号生成部140の構成を説明する図である。
駆動回路110における点灯信号生成部140は、画像形成制御部30、画像処理部40、発光チップCと接続されている。ここでは、発光チップC1に接続されているとする(
図4(b)参照)。よって、後述する点灯信号生成部140の点灯信号出力部147は、点灯信号φI1を出力する。なお、
図4(b)に示した発光装置65の構成では、少なくとも点灯信号出力部147が、発光チップC毎に、並列に設けられている。
【0090】
シリアル通信部141、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143、補正値演算部144、温度計測部145、点灯期間算出部146、点灯信号出力部147を備えている。
ここでは、
図3では示していないが、実装基板62上に駆動回路110に接続された不揮発性メモリ148を備えている。
【0091】
シリアル通信部141は、画像形成制御部30、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143、不揮発性メモリ148と接続され、これらの間で、シリアルデータでの通信を行う。また、シリアル通信部141は、点灯期間算出部146と接続され、画像形成制御部30から点灯期間算出部146に、点灯期間を設定する基準パルスを送信する。
【0092】
補正値Aメモリ142は、光源部63が基準温度(例えば、25℃)の環境にあるとした場合に、光源部63の各発光サイリスタLの光量の補正を行うための補正値Aを記憶する。
補正値Bメモリ143は、温度の変動に対する補正値Bを記憶する。ここでは、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143は、駆動回路110に組み込まれたメモリであって、電源が供給されている間において補正値A、Bを記憶する揮発性のメモリであるとする。
不揮発性メモリ148は、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143に記憶される補正値A、Bを記憶している。不揮発性メモリ148は、電源が供給されていなくても補正値A、Bを記憶する不揮発性のメモリである。不揮発性メモリ148は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリである。
なお、補正値Aは、第1の補正値の一例であり、補正値Bは、第2の補正値の一例である。そして、不揮発性メモリ148は、不揮発性の記憶部材の一例である。
【0093】
よって、画像形成装置1に主電源が投入された際などに、画像形成制御部30は、シリアル通信部141に対して、不揮発性メモリ148から補正値Aメモリ142に補正値Aを、補正値Bメモリ143に補正値Bを転送する(書き込む)ように指示する。
なお、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143は、不揮発性のメモリであってもよい。この場合は、不揮発性メモリ148を用いなくともよい。
【0094】
なお、補正値Aメモリ142に記憶される基準温度(例えば、25℃)の環境における補正値Aは、プリントヘッド14の工場出荷時に測定された光源部63の光量から求められる。ここでは、発光サイリスタL毎、又は、連続する複数の発光サイリスタL毎に設定される。例えば、2個、4個などの発光サイリスタL毎である。これは、隣接する発光サイリスタLでは、光量差が小さいことによる。複数の発光サイリスタL毎に補正値を設定することで、補正値のデータ量が小さくなるとともに、点灯期間算出部146における点灯期間の算出時間が短くなる。
そして、補正値Aは、プリントヘッド14の工場出荷時に、光源部63の光量を測定する測定装置からシリアル通信部141を介して、不揮発性メモリ148に記憶される。すなわち、補正値Aは、プリントヘッド14毎に設定される。
【0095】
補正値Bは、プリントヘッド14における発光装置65の構成、例えば実装基板62の材質、形状、駆動回路110が実装される位置などに依存する。よって、プリントヘッド14における発光装置65の構成が決まると一意に設定される。ここでは、補正値Bは、基準温度との最大温度差(例えば30℃)の場合の補正値とする。
補正値Bも、発光装置65の工場出荷時に、測定装置からシリアル通信部141を介して、不揮発性メモリ148に記憶される。
【0096】
温度計測部145は、サーミスタ111、112に接続されるとともに、補正値演算部144に接続されている。温度計測部145は、サーミスタ111、112により実装基板62の温度を計測する。
なお、サーミスタ111、112は、実装基板62の光源部63の真裏に設けられているので、サーミスタ111、112が測定する実装基板62の温度は、光源部63の発光サイリスタLの温度と相関する。よって、温度計測部145は、サーミスタ111、112が真裏に配置された発光サイリスタLの温度を計測したとしてよい。
【0097】
補正値演算部144は、補正値Aメモリ142、補正値Bメモリ143、温度計測部145に接続されている。補正値演算部144は、温度計測部145から、サーミスタ111、112がそれぞれ計測した温度を受信し、光源部63における発光サイリスタLの温度を算出する。なお、前述したように、補正値Aが発光サイリスタL毎であれば、発光サイリスタL毎に温度を求める。また、補正値Aが複数の発光サイリスタL毎であれば、複数の発光サイリスタL毎に温度を算出する。
そして、算出された発光サイリスタLの温度に基づいて、適用する補正値を演算する。補正値の演算については、後述する。
【0098】
点灯期間算出部146は、画像処理部40、シリアル通信部141、補正値演算部144、点灯信号出力部147に接続されている。
点灯期間算出部146は、画像形成制御部30からシリアル通信部141を介して送信された基準パルスと、補正値演算部144の演算した補正値と、画像処理部40から受信した画像データとに基づいて、点灯期間を算出する。なお、基準パルスは、補正しない場合の点灯期間としてもよく、クロックであってもよい。
【0099】
点灯信号出力部147は、算出された点灯期間を有する点灯信号φI(
図8では、点灯信号φI1)を出力する。基準パルスが補正しない場合の点灯期間であれば、点灯信号出力部147は、点灯期間に応じて基準パルスの幅を補正して、点灯信号φI(
図8では、点灯信号φI1)を出力する。
また、基準パルスがクロックCLKであれば、点灯信号出力部147は、点灯期間に応じたクロックCLKの数により、点灯信号φI(
図8では、点灯信号φI1)を出力する。
【0100】
図9は、サーミスタ111、112の抵抗値と温度との関係を説明する図である。
図9において、縦軸が抵抗値(kΩ)、横軸が温度(℃)である。
NTCサーミスタであるサーミスタ111、112の抵抗値は、温度の上昇につれて、対数的に変化する。そこで、本実施の形態では、サーミスタ111、112と基準とする抵抗(基準抵抗)とから抵抗値比を求め、温度に対する変化をなだらかにし、温度検出に対する精度を向上させている。
【0101】
図10は、基準抵抗の抵抗値とサーミスタ111、112の抵抗値との比(抵抗値比)と温度との関係の一例を示す図である。
図10(a)は、抵抗値比と温度との関係、
図10(b)は、補正値Bとして、補正値Bメモリ143に格納される参照テーブル(LUT)である。
図10(a)に示すように、温度に対して抵抗値比の変化は緩やかである。
図10(b)に示すLUTに格納される抵抗値比は、
図10(a)において、●で示す値である。補正値Bメモリ143のアドレスで示す領域に記憶されている。なお、LUTに記載されていない抵抗値比の場合は、LUTに示された値から直線補完により温度が求められる。
【0102】
そして、補正値演算部144は、式(1)によって、適用する補正値(実際の補正値)を演算する。
実際の補正値=(補正値B−補正値A)×(計測温度差)/(最大温度差)+補正値A ・・・(1)
ここで、計測温度差とは、基準温度と補正値演算部144で算出された温度との差である。
なお、最大温度差とは、前述したように、補正値Bに対する温度差である。
【0103】
図11は、補正値A、補正値B及び実際の補正値の関係を示す図である。ここでは、
図3に示したように、実装基板62の発光チップCの配列の中央部に、駆動回路110が配置されているとしている。
実際の補正値は、式(1)に示したように、補正値Aと補正値Bとの間に設定され、実装基板62の中央部において実際の補正値が最大となる。
よって、このような実際の補正値を適用すれば、
図7に示した光量の変動が抑制される。
【0104】
本実施の形態では、温度計測部145により温度の計測を常に行い、画像データ毎に光量の補正を行う。これにより、光量差を0.5%未満に維持している。よって、記録用紙25に形成された画像において濃度の変動を視認されにくくしている。
【0105】
なお、本実施の形態では、実装基板62上には2つのサーミスタ111、112を搭載し、一方のサーミスタ111を駆動回路110の近傍に配置し、他方のサーミスタ112を駆動回路110から離れた場所に配置した。すなわち、サーミスタ112(第2の温度検出器)は、サーミスタ111(第1の温度検出器)に比べ、駆動回路110から離れた位置に設けられている。
このように、2つのサーミスタ111、112を用いる場合には、実装基板62において、一方を温度が最も高くなる部分に配置し、他方を温度が最も低くなる部分に配置することがよい。すなわち、温度差が大きいほど、光源部63における発光サイリスタLの温度の算出に対する精度が向上する。
【0106】
また、3個以上のサーミスタ(温度検出器)を実装基板62上の温度に搭載してもよい。この場合も、サーミスタ間において温度差があるように、サーミスタを配置することがよい。実装基板62(光源部63)の温度分布がより正確に算出される。例えば、複数の駆動回路110を実装基板62上に設ける場合、複数の駆動回路110に対応して複数の部分で発熱する。よって、それぞれの駆動回路110に対応するように複数のサーミスタ(温度検出器)を設け、実装基板62(発光素子)の温度分布を正確に算出するのがよい。
【0107】
なお、発光装置65において、光源部63が実装される実装基板62に、駆動回路110を搭載しないように構成することもありうる。しかし、駆動回路110を発光装置65の外部に設けると、駆動回路110を実装する基板(実装基板)や、発光装置65と駆動回路110を実装する基板とを接続するケーブル(ハーネス)などが必要となる。
しかし、本実施の形態のように、発光装置65の光源部63が実装される実装基板62に、駆動回路110を実装することで、駆動回路110を実装する基板やケーブル(ハーネス)などが不要になり、画像形成装置1の小型化、低コスト化が図れる。
【0108】
本実施の形態では、サイリスタ(転送サイリスタT、発光サイリスタL)は、アノード端子が基板80に接続されたアノードコモンとして説明した。サイリスタ(転送サイリスタT、発光サイリスタL)は、回路の極性を変更することによって、カソード端子が基板80に接続されたカソードコモンとしてもよい。
【0109】
さらに、本実施の形態では、発光サイリスタLと転送サイリスタTとから構成される自己走査型発光素子アレイ(SLED)で説明したが、自己走査型発光素子アレイ(SLED)は、発光サイリスタLと転送サイリスタTの他に、制御用のサイリスタ、ダイオード、抵抗などの他の部材を含んでいてもよい。
また、本実施の形態では、転送サイリスタTの間を結合ダイオードDxで接続したが、抵抗など電位の変化を伝達する部材であってもよい。
そして、発光装置65において、点灯信号φIが発光チップC毎に供給されるとしたが、複数の発光チップCに共通に供給されるように、発光チップCを構成してもよい。
【0110】
そして、本実施の形態では、発光素子を発光サイリスタLとしたが、発光素子はp型の半導体層とn型の半導体層とが積層された発光ダイオード(LED)であってもよい。