特許第6776660号(P6776660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

<>
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000002
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000003
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000004
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000005
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000006
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000007
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000008
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000009
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000010
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000011
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000012
  • 特許6776660-センタ及び研削盤 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776660
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】センタ及び研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20201019BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20201019BHJP
   B24B 5/14 20060101ALI20201019BHJP
   B23B 23/00 20060101ALI20201019BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B24B41/06 J
   B24B5/04
   B24B5/14
   B23B23/00 Z
   B24D5/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-130203(P2016-130203)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1319(P2018-1319A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−085505(JP,A)
【文献】 特開平07−116901(JP,A)
【文献】 米国特許第05957017(US,A)
【文献】 特開2007−301653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B23B 23/00
B24B 5/04
B24B 5/14
B24D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物の端面に形成されたセンタ穴に摺接するセンタであって、
前記センタ穴に摺接するテーパ面を備え、
前記テーパ面は、前記センタ穴を研削する砥粒を有する砥粒部と、前記センタ穴を摺接可能に支持する支持部と、を備え、
前記支持部は、前記砥粒を有することなく、超硬性の材質で構成され、前記テーパ面の頂上部から底縁部まで所定の幅にて連続しているとともに、前記テーパ面の円周方向に少なくとも3箇所設けられており、
前記テーパ面における前記支持部を除いた面が前記砥粒部とされているセンタ。
【請求項2】
請求項1に記載されたセンタであって、
前記テーパ面において、前記砥粒部と前記支持部とは面一に設けられているセンタ
【請求項3】
請求項1に記載されたセンタであって、
前記テーパ面において、前記砥粒部は前記支持部に対して凹んだ位置に設けられているセンタ。
【請求項4】
円筒状の工作物の外周面を研削する砥石と、
前記工作物における少なくとも一方の端面を支持する請求項1〜3のいずれか一項に記載されたセンタと、
前記工作物を回転させる主軸と、を備えた研削盤。
【請求項5】
請求項4に記載された研削盤であって、
前記工作物は、前記センタ穴に前記センタの前記頂上部が差し込まれ、前記主軸によって前記工作物の中心軸線であるワーク軸線回りに回転可能となるように支持され、
前記センタは、回転することなく前記センタ穴に摺接しており、
前記主軸が前記工作物を前記ワーク軸線回りに回転させると、前記センタ穴に形状不良がある場合には前記センタの前記砥粒部が前記センタ穴を真円状へと自動的に修正加工し、前記形状不良が修正されると自動的に前記センタの前記支持部によって前記センタ穴を支持する研削盤。
【請求項6】
請求項4に記載された研削盤を用いた工作物の支持方法であって、
前記センタ穴に前記センタの前記頂上部を差し込んで前記主軸によって前記工作物の中心軸線であるワーク軸線回りに回転可能となるように前記工作物を支持し、
前記センタを、回転させることなく前記センタ穴に摺接させ、
前記主軸を用いて前記工作物を前記ワーク軸線回りに回転させ、前記センタ穴に形状不良がある場合には前記センタの前記砥粒部にて前記センタ穴を真円状へと自動的に修正加工し、前記形状不良が修正されると自動的に前記センタの前記支持部によって前記センタ穴を支持する工作物の支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタ及び研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された研削盤は、円筒状の工作物の一端側と他端側とに主軸台と心押台とをそれぞれ備えている。主軸台と心押台とは、これらが個々に有するセンタによって、工作物を両端面から支持している。両センタの先端部には、円錐状のテーパ面が形成されている。両テーパ面は、工作物の両端面に形成された円錐状のセンタ穴に配置されている。心押台のセンタは、主軸台に向かう方向への付勢力を受けている。この付勢力によって、両テーパ面は両センタ穴に押付けられている。なお、工作物は、主軸台が有する主軸及び駆動金具によって、一定の軸線まわりに回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−072843号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センタ穴に形状不良がある場合、センタ穴をセンタで支持した際に工作物の芯ズレが生じ、工作物の回転がぶれる虞がある。この結果、工作物の加工精度の悪化を招く。そこで従来においては、まずセンタ穴の形状の良否を判別し、センタ穴に形状不良がある場合には、センタ穴の研削専用装置にてセンタ穴を修正加工した後、研削盤に工作物を取付けて研削加工を実施していた。しかし、このプロセスでは、工作物をセンタ穴の研削専用装置に取付ける工程と、センタ穴を修正加工する工程と、工作物をセンタ穴の研削専用装置から研削盤へ移し替える工程と、が必要であり作業効率が低下する。また、上述のプロセスでは、センタ穴の研削専用装置と研削盤との2台の装置を要するため、コストアップを招き、かつ、スペース効率も良くない。
【0005】
そこで本発明の課題は、同一装置にて、センタ穴の修正加工と、工作物の研削加工と、を連続して行うことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、つぎの手段をとる。
【0007】
本発明の第1発明は、工作物の端面に形成されたセンタ穴に摺接するセンタであって、センタ穴に摺接するテーパ面を備えている。テーパ面は、センタ穴を研削する砥粒を有する砥粒部と、センタ穴を摺接可能に支持する支持部と、を備えている。支持部は、テーパ面の円周方向に少なくとも3箇所設けられている。
【0008】
本発明の第2発明は、第1発明に記載されたセンタであって、テーパ面において、砥粒部と支持部とは面一に設けられている、または、砥粒部は支持部に対して凹んだ位置に設けられている。
【0009】
本発明の第3発明は、円筒状の工作物の外周面を研削する砥石と、工作物における少なくとも一方の端面を支持する第1発明または第2発明に記載されたセンタと、工作物を回転させる主軸と、を備えた研削盤である。
【発明の効果】
【0010】
第1発明においては、センタ穴に摺接するテーパ面に砥粒部と支持部とが設けられている。そのため、工作物を回転させると、まず砥粒部がセンタ穴の形状不良部分を当該砥粒部に沿った面形状に修正加工するとともに、この修正加工の終了後においては、3箇所以上の各支持部がセンタ穴を安定して支持し、そのまま工作物の研削加工を実施できる。したがって、同一装置にて、センタ穴の修正加工と、工作物の研削加工と、を連続して行うことができる。
【0011】
第2発明においては、砥粒部が支持部と面一または砥粒部が支持部に対して凹んで設けられている。したがって、砥粒部の支持部に対する凹みの度合いを変更することで、センタ穴に対する径方向への研削量を変更でき、センタ穴の形状不良部分の修正量が調整される。
【0012】
第3発明においては、第1発明または第2発明に記載のセンタが研削盤に装着されている。したがって、この研削盤によって、工作物のセンタ穴の修正加工と、工作物の研削加工と、を連続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】研削盤の概略構造の例を示す斜視図である。
図2】研削盤の概略構造の例を示す側面図である。
図3】研削盤の概略構造の例を示す平面図である。
図4図3のIV領域の拡大図である。
図5図4の矢印V方向から視たセンタの平面図である。
図6】センタの斜視図である。
図7】ワーク軸線に対して直交する仮想平面でワークを切断した場合のセンタ穴の輪郭の例を表した平面図である。
図8】ワーク軸線に対して直交する仮想平面でワークを切断した場合のセンタ穴の輪郭の例を表した平面図である。
図9】ワーク軸線に対して直交する仮想平面でワークを切断した場合のセンタ穴の輪郭の例を表した平面図である。
図10】ワーク軸線に対して直交する仮想平面でワークを切断した場合のセンタ穴の輪郭の例を表した平面図である。
図11】制御装置の処理手順を説明するフローチャートである。
図12】センタの変更例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
【0015】
●[研削盤2の全体構成(図1図3)]
図1図3は、研削盤2の全体構成の例を示している。研削盤2は、ベッド10、テーブル20、主軸台30、心押台40、砥石台50等を有している。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向は砥石55がワークW(工作物)に切り込む水平方向を示し、X軸方向は主軸31の回転軸線31Jと平行な水平方向を示している。
【0016】
ベッド10は、平面視において略T字状に構成されており、X軸方向に沿って延びるX軸案内面12,12Vが設けられ、X軸方向に沿って延びるX軸スリット12Kが設けられている。またベッド10には、Z軸方向に沿って延びるZ軸案内面15,15Vが設けられ、Z軸方向に沿って延びるZ軸スリット15Kが設けられている。
【0017】
砥石台50は、ベッド10に載置され、Z軸案内面15,15Vに静圧案内支持されて、Z軸方向に沿って往復移動可能である。砥石台駆動モータ50Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ50B(図2参照)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ50E(回転検出手段)からの検出信号に基づいた砥石台50のZ軸方向の位置を検出しながら砥石台駆動モータ50Mを制御して砥石台50のZ軸方向の位置を制御する。なお、図2に示すように、ボールネジ50Bにはナット50Nが嵌合されており、当該ナット50Nはスリット15K(図1参照)に挿通されたアーム50Aを介して砥石台50に接続されている。従って、砥石台駆動モータ50Mがボールネジ50Bを回転駆動するとナット50NのZ軸方向の位置が移動し、アーム50Aを介してナット50Nに接続された砥石台50がZ軸案内面15,15Vに沿ってZ軸方向に移動する。
【0018】
砥石台50には、X軸方向に平行な砥石回転軸線55J回りに回転自在に支持された砥石軸54、砥石モータ55M、が設けられている。なお、図3に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31JはどちらもX軸に平行であり、図2に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jは、同一の仮想水平面VM上にある。
【0019】
砥石モータ55Mには大径プーリ51が取付けられている。また砥石軸54の一方端には砥石55が取付けられ、砥石軸54の他方端には小径プーリ52が取付けられている。そして大径プーリ51と小径プーリ52には、動力伝達用のベルト53が掛けられている。砥石軸54の近傍には、砥石55の回転数を検出可能な回転検出手段55Sが設けられている。制御装置80は、回転検出手段55Sからの検出信号に基づいて砥石55の回転数を検出しながら砥石モータ55Mを制御して砥石55の回転数を制御する。
【0020】
砥石55は砥石軸54に直交する平面で切断した断面が円形であり、砥石55の外周面にはCBN砥粒が接着剤や電着等にて固められており、砥石軸54と一体となって砥石回転軸線55J回りに回転する。また砥石55は、ワークWを研削する研削点55Pの周囲を除く大半が砥石カバー55Cにて覆われている。砥石カバー55Cの上部には、砥石55の研削点55Pに向けて、冷却及び潤滑用のクーラントを吐出するクーラントノズル55Nが設けられている。当該クーラントノズル55Nには、図示省略したクーラントタンクからクーラントが供給され、研削点55P(砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jとを含む仮想平面VMと、ワークWに対向する側の砥石55の外周面と、の交点)の冷却及び潤滑に使用されたクーラントは図示省略した流路にて回収され、不純物がろ過等された後、クーラントタンクに戻される。
【0021】
テーブル20は、ベッド10に載置され、X軸案内面12,12Vに静圧案内支持されて、X軸方向に沿って往復移動可能である。テーブル駆動モータ20Mは、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ(図示省略)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ20E(回転検出手段)からの検出信号に基づいたテーブル20のX軸方向の位置を検出しながらテーブル駆動モータ20Mを制御してテーブル20のX軸方向の位置を制御する。なお、ボールネジにはナット(図示省略)が嵌合されており、当該ナットはスリット12Kに挿通されたアーム(図示省略)を介してテーブル20と接続されている。従って、テーブル駆動モータ20Mがボールネジを回転駆動するとナットのX軸方向の位置が移動し、アームを介してナットに接続されたテーブル20がX軸案内面12,12Vに沿ってX軸方向に移動する。そしてテーブル20上のX軸方向における一方端には主軸台30が固定され、他方端には心押台40が固定されている。
【0022】
主軸台30は、X軸方向に平行な主軸回転軸線31J回りに回転する主軸31と、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ32と、主軸31を回転駆動する主軸モータ31Mと、エンコーダ31E等を有している。主軸31には、主軸31とワークWとを接続する駆動金具33が取付けられている。駆動金具33は、ワークWを把持する把持部33Aと、把持部33Aと主軸31とを接続する接続部33Bとを有しており、主軸31と一体となって主軸回転軸線31J回りに回転してワークWを回転させる。制御装置80は、エンコーダ31E(回転検出手段)からの検出信号に基づいて主軸31の回転角度や回転数を検出しながら主軸モータ31Mを制御して主軸31の回転角度や回転数(すなわち、ワークWの回転角度や回転数)を制御する。センタ32は、回転することなくワークWのセンタ穴(後述参照)に摺接している。
【0023】
心押台40は、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ42と、センタ42を収容して主軸台30に向かう方向に付勢されたラム41とを有している。心押台40のセンタ42の中心軸線と、主軸台30のセンタ32の中心軸線は、どちらも主軸回転軸線31Jと一致している。センタ32とセンタ42とで挟持されたワークWは、センタ42によって主軸台30の側に押付けられ、主軸31及び駆動金具33の回転によって主軸回転軸線31J回りに回転する。なお、センタ42は、回転することなくワークWのセンタ穴(後述参照)に摺接している。
【0024】
●[センタ42によるワークWの支持構造(図4図10)]
両センタ32,42において、ワークWの支持構造は同一である。以下では、心押台40のセンタ42について説明し、主軸台30のセンタ32については重複した説明を省略する。なお、ワークWは円筒状である。図4に示すように、ワークWの端面の径方向中央には、センタ穴Waが形成されている。センタ穴Waは、ワークWの中心軸線であるワーク軸線WJ方向の内方に向けて径の狭まる円錐台形状に構成されている。センタ穴Waは、ワークWの内部に設けられた内方穴Wbに連続している。内方穴Wbは、一定径にてワーク軸線WJ方向に連続している。なお、図4では、ワークWが断面によって示されている。
【0025】
センタ42の先端部には、図4図6に示すように、円錐形状のテーパ面142が形成されている。テーパ面142は、支持部142aと砥粒部142bとを有している。支持部142aは、図5に示すように、テーパ面142の円周方向に3箇所設けられている。各支持部142aは、頂上部142T側からの平面視(図5参照)において、テーパ面142の頂上部142Tから底縁部142Eまで一定幅Hにて直線的に連続している。各支持部142aは、頂上部142T側からの平面視(図5参照)において、隣り合う支持部142aとの間に同一角度θを有する。各支持部142aは、超硬性の材質(例えばダイヤモンドコンパックス)で構成されている。砥粒部142bは、各支持部142aの間に亘って設けられている。各砥粒部142bは、センタ穴Waを研削する砥粒(例えばCBN)が接着剤や電着等にてテーパ面142に固着されたものである。各砥粒部142bは、図6に示すように、各支持部142aと面一に設けられている。
【0026】
テーパ面142は、図4に示すように、頂上部142Tが内方穴Wbに位置した状態で、センタ穴Waに摺接している。テーパ面142は、ラム41(図3参照)が受けている付勢力によって、図4の矢印X1に示す方向(ワークWにおけるワーク軸線WJ方向の内方側)に向けて、センタ穴Waに押付けられている。各支持部142aは、センタ穴Waを摺動可能に支持している。各砥粒部142bは、センタ穴Waに形状不良がある場合、ワークWの回転に伴ってセンタ穴Waを修正加工する。この修正加工については、後で詳しく説明する。なお、センタ穴Waの形状不良とは、ワーク軸線Jに対して直交する仮想平面PでワークWを切断した場合のセンタ穴Waの輪郭(以下、単にセンタ穴の輪郭と記す)が、真円からずれていることを指す。仮想平面Pはワーク軸線J方向の任意の位置に設定されている。例えば、図7に示すセンタ穴Wa1の輪郭(図7の太実線)は、真円(図7の2点鎖線)に対して凸部Aを有する。図8に示すセンタ穴Wa2の輪郭(図8の太実線)は、真円(図8の2点鎖線)に対して楕円状である。図9に示すセンタ穴Wa3の輪郭(図9の太実線)は、真円(図9の2点鎖線)に対して三角形状である。図10に示すセンタ穴Wa4の輪郭(図10の太実線)は、真円(図10の2点鎖線)に対して矩形状である。なお、図7図10では、矢印V方向から視た場合のテーパ面142を模式的に示している。各砥粒部142bは、センタ穴Waに形状不良がない場合(ワーク軸線WJ方向の各位置においてセンタ穴Waの輪郭が真円状である場合)には、ワークWが回転してもセンタ穴Waを研削しない。
【0027】
●[センタ穴Waの修正加工(図4図10)]
いま、研削盤2にワークWをセットし、ワークWを回転駆動したものとする。なお、砥石55はワークWから離間した砥石台待機位置に配置されている。センタ穴Waに形状不良がある場合、各砥粒部142bは、センタ穴Waを各砥粒部142bに沿う面形状に研削する。テーパ面142は、図4の2点鎖線で示すように、ワークWの内方に進入しながら各砥粒部142bによってセンタ穴Waを研削する。この研削により、ワーク軸線WJ方向の各位置でのセンタ穴Waの輪郭が、徐々に真円状に近づいていく。ワーク軸線WJ方向の各位置においてセンタ穴Waの輪郭が真円状になると、センタ穴Waの修正加工が終了し、センタ穴Waはそれ以上研削されない。そして、センタ穴Waは、各支持部142aによって、摺動可能に支持された状態となる。ワーク軸線WJは主軸回転軸線31Jと一致する。このように、ワークWを回転させると、センタ穴Waは自動的に修正加工される。なお、研削盤2にワークWをセットした段階でセンタ穴Waに形状不良がない場合、センタ穴Waは各砥粒部142bによって修正加工されることなく、各支持部142aによって摺動可能に支持された状態で回転する。
【0028】
上述のとおり、センタ穴Waは、修正加工が終了すると、各支持部142aによって、摺動可能に支持された状態となる。センタ穴Waは、3箇所の支持部142aによって安定して支持される。このため、この後ワークWに砥石55を接触させてワークWを研削(後述する粗研削、精研削、微研削、仕上げ研削)しても、ワークWは回転ぶれが防止ないし抑制される。したがって、ワークWは精度よく研削加工される。
【0029】
●[制御装置80の処理手順(図11)]
次に図11に示すフローチャートを用いて、制御装置80の処理手順の例について説明する。作業者は、研削盤2のセンタ32及びセンタ42の間にワークWをセットし、駆動金具33を主軸31とワークWに取付けた後、制御装置80から加工開始の操作を行う。制御装置80は、作業者から加工開始の操作を受け付け、図11に示す処理を開始する。
【0030】
ステップS10にて制御装置80は、砥石55を回転駆動する。また、制御装置80は、主軸31を回転駆動して駆動金具33とともにワークWを回転させる。既に説明したように、センタ32及びセンタ42は、回転することなくワークWのセンタ穴に摺接している。センタ42は、センタ穴Waに形状不良がある場合では、センタ穴Waを自動的に修正加工する。そして、センタ穴Waの形状不良が修正されると、センタ穴Waは各支持部142aによって摺動可能に支持される。センタ32は、センタ42と同様に機能する。制御装置80は、ステップS10を実行したまま、ステップS20に進む。
【0031】
ステップS20にて制御装置80は、砥石55をワークWの手前まで早送り前進させて、ステップS30に進む。ステップS30にて、制御装置80は、粗研削送り速度で砥石55をワークWの粗研削完了位置まで移動させる。これによって、砥石55がワークWに切り込むように移動し、ワークWの粗研削が行われる。ワークWの粗研削が終了した後、制御装置80は、ステップS40に進む。ステップS40にて、制御装置80は、精研削送り速度で砥石55をワークWの精研削完了位置まで移動させる。これによって、ワークWの精研削が行われる。ワークWの精研削が終了した後、制御装置80は、ステップS50に進む。ステップS50にて、制御装置80は、微研削送り速度で砥石55をワークWの微研削完了位置まで移動させる。これによって、ワークWの微研削が行われる。ワークWの微研削が終了した後、制御装置80は、ステップS60に進む。ステップS60にて、制御装置80は、仕上げ研削送り速度で砥石55をワークWの仕上げ研削完了位置まで移動させる。これによって、ワークWの仕上げ研削が行われる。ワークWの仕上げ研削が終了した後、制御装置80は、ステップS70に進む。ステップS70にて、制御装置80は、砥石55をワークWに対して後退させる。この後、制御装置80は、砥石55およびワークWの回転を停止して、処理を終了する。
【0032】
以上の処理にて、1台の研削盤2にて、センタ穴Waの修正加工を自動的に行った後、続いてワークWの研削加工を行うことができる。したがって、センタ穴Waの研削専用装置が不要であり、また、センタ穴Waの研削専用装置から研削盤2にワークWを移し替える作業も不要であるので、作業効率が向上する。
【0033】
研削盤2は以上のように構成されている。研削盤2においては、ワークWのセンタ穴Waに形状不良がある場合、各砥粒部142bがセンタ穴Waを各砥粒部142bに沿った面形状に修正加工するとともに、この修正加工の終了後においては、3箇所の各支持部142aがセンタ穴Waを安定して支持するため、そのままワークWの研削加工を実施できる。したがって、研削盤2では、センタ穴Waの修正加工と、ワークWの研削加工と、を連続して行うことができる。
【0034】
●[センタ42の変更例(図12)]
以上は本発明を実施するための一実施の形態を図面に関連して説明したが、本発明は他の実施形態でも実施可能である。例えば図12に示すテーパ面143のように、各砥粒部142bを、各支持部142aに対して凹んだ位置に設けてもよい。各砥粒部142bの各支持部142aに対する凹み量Sは、例えば1μmに設定されている。凹み量Sは、自由に設定変更可能である。凹み量Sを変更することで、センタ穴Waに対する径方向への研削量を変更でき、センタ穴Waの形状不良部分の修正量が調整される。なお、図12において、図6と同一もしくな実質同一な構成・機能を有すると考えられる部位には、図6と同一の符号を付すことで、重複する説明は省略する。
【0035】
支持部142aは、テーパ面142の円周方向に少なくとも3箇所設けられていればよく、4箇所以上設けられていてもよい。各支持部142aの幅Hは、自由に設定変更可能である。各支持部142aの幅Hは、一致していても、互いに異なっていてもよい。各支持部142aの幅Hは、テーパ面142の頂上部142Tから底縁部142Eまで一定でなくてもよい。各支持部142aは、頂上部142T側からの平面視(図5参照)において、テーパ面142の頂上部142Tから底縁部142Eまで直線的に連続していなくてもよく、曲線的に連続していてもよい。隣合う支持部142a間の角度θは、自由に設定変更可能である。各支持部142aにおいて、隣合う支持部142aとの間の角度θは、互いに異なっていてもよい。
【0036】
センタ42の適用対象は、ワークWの両端をセンタにて支持するタイプの研削盤に限定されるものではなく、ワークWの一端をセンタにて支持し、ワークWの他端をチャックにて支持するタイプの研削盤でもよい。センタ42の適用対象は、研削盤に限定されるものではなく、例えば切削加工を行う旋盤でもよい。
【符号の説明】
【0037】
2 研削盤
31 主軸
32,42 センタ
55 砥石
142,143 テーパ面
142a 支持部
142b 砥粒部
W ワーク(工作物)
Wa センタ穴

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12