特許第6776669号(P6776669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776669共用車両管理方法および共用車両管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776669
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】共用車両管理方法および共用車両管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20201019BHJP
   G06Q 30/02 20120101ALI20201019BHJP
   G06Q 10/02 20120101ALI20201019BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G06Q50/10
   G06Q30/02 320
   G06Q10/02
   G08G1/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-135088(P2016-135088)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-5770(P2018-5770A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 悟
(72)【発明者】
【氏名】原 加代子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂樹
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−085509(JP,A)
【文献】 特開2003−223501(JP,A)
【文献】 特開2016−048494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
複数のステーションのうち、第2ユーザが前記共用車両の貸出しを所望する出発ステーションの情報を取得し、
前記出発ステーションにて前記共用車両が返却される返却予定時刻の情報を前記第2ユーザの携帯端末に送信し、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、前記第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、設定した前記インセンティブ特典の情報を出力する共用車両管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
前記待機時間の長さが前記所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、前記第2ユーザに付与するインセンティブ特典の価値を高く設定する共用車両管理方法。
【請求項3】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、
設定した前記インセンティブ特典の情報を出力し、
前記第1ユーザに付与するインセンティブ特典を設定しない共用車両管理方法。
【請求項4】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、
前記インセンティブ特典が前記第1ユーザと前記第2ユーザとに分配されるように、前記第1ユーザに付与するインセンティブ特典と、前記第2ユーザに付与するインセンティブ特典とを設定し、
設定した前記第1ユーザに付与するインセンティブ特典の情報と、前記第2ユーザに付与するインセンティブ特典の情報とを出力する共用車両管理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
前記第1ユーザにより前記共用車両が返却される返却予定時刻を取得し、前記第1ユーザが前記共用車両を実際に返却した時刻と前記返却予定時刻とのずれ量を第1ずれ量として算出し、
前記第2ユーザに前記共用車両を貸し出す貸出予定時刻を取得し、前記第2ユーザに前記共用車両を実際に貸し出した時刻と前記貸出予定時刻とのずれ量を第2ずれ量として算出し、
前記第1ずれ量と前記第2ずれ量とに基づいて、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザに付与するインセンティブ特典の分配比率を決定する共用車両管理方法。
【請求項6】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、
設定した前記インセンティブ特典の情報を出力し、
前記第2ユーザが、前記第1ユーザと同一のユーザまたは前記第1ユーザと所定の関係にあるユーザではあるか否かを判定し、
前記第2ユーザが前記第1ユーザと同一ユーザまたは前記第1ユーザと所定の関係にあるユーザである場合には、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザに付与する前記インセンティブ特典を設定しない共用車両管理方法。
【請求項7】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される複数の共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
複数のステーションのうち、第2ユーザが前記共用車両の貸出しを所望する出発ステーションの情報を取得し、
前記出発ステーションにて前記共用車両が返却される返却予定時刻の情報を前記第2ユーザの携帯端末に送信し、
第1ユーザにより前記出発ステーション内の1の共用車両が返却された返却時刻と、前記第2ユーザに前記出発ステーション内の前記1の共用車両または前記1の共用車両とは異なる共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、設定した前記インセンティブ特典の情報を出力する共用車両管理方法。
【請求項8】
共用車両管理装置により実行される、複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う共用車両管理方法であって、
前記共用車両管理装置は、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、設定した前記インセンティブ特典の情報を出力し、
前記共用車両を貸し出す営業の開始時刻から前記貸出時刻までの時間を前記待機時間として取得することで、前記共用車両を貸し出す営業の開始後に最初に前記共用車両を貸し出す前記第2ユーザに付与する前記インセンティブ特典を設定する共用車両管理方法。
【請求項9】
複数のユーザに共用される共用車両の管理を行う制御器を有する共用車両管理装置であって、
前記制御器は、
複数のステーションのうち、第2ユーザが前記共用車両の貸出しを所望する出発ステーションの情報を取得し、
前記出発ステーションにて前記共用車両が返却される返却予定時刻の情報を前記第2ユーザの携帯端末に送信し、
第1ユーザにより前記共用車両が返却された返却時刻と、前記第2ユーザに前記共用車両を貸し出した貸出時刻とを取得し、
前記返却時刻から前記貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、前記待機時間の長さが前記所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、設定した前記インセンティブ特典の情報を出力する共用車両管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共用車両管理方法および共用車両管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場エリアにおけるカーシェアリング用の車両(共用車両)の偏在を抑制するために、現在から一定時間後の時刻までの駐車場エリアの混雑状況を推定し、混雑すると推定される時刻までに駐車場エリアから車両を移動する可能性の高いユーザを特定し、特定したユーザに車両の利用に対するインセンティブを付与する技術が知られている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/050242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、移動確率が高いユーザを選択してインセンティブを付与しても、実際にユーザが共用車両を利用するか否かはユーザの判断に依存するために、共用車両の偏在を抑制できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、共用車両の偏在を抑制することが可能な共用車両管理方法および共用車両管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1ユーザにより共用車両が返却された返却時刻から、第2ユーザに共用車両を貸し出した貸出時刻までの待機時間の長さが所定時間未満である場合には、待機時間の長さが所定時間以上である場合と比べて、インセンティブ特典の価値を高く設定し、設定したインセンティブ特典の情報を出力することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、待機時間に応じてインセンティブ特典を付与することができるため、共用車両が稼働していない時間の短縮を図ることができ、その結果、共用車両の偏在を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る共用車両管理装置を備えた共用車両管理システムにおいて、ユーザが共用車両を利用する方法の一例を示す概要図である。
図2】本実施形態に係る共用車両管理システムの構成図である。
図3】インターバル時間を説明するための図である。
図4】インターバル時間とインセンティブ特典との関係の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。
図7】返却ずれ量および貸出ずれ量と、分配比率を算出するための得点との関係の一例を示す図である。
図8】第3実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る共用車両管理装置について説明する。本実施形態では、共用車両管理装置を、複数のユーザが複数のステーションに配置された複数の共用車両を共用するカーシェアリングシステムを管理運営する共用車両管理システムに適用した例を用いて説明する。本実施形態のカーシェアリングシステムは、一のステーションから貸し出した共用車両を、他のステーションへ返却することが許される、いわゆる乗り捨て型のワンウェイ・カーシェアリングシステムである。なお、各ステーションは、共用車両を駐車させることができ、共用車両の貸出及び返却を行ったり、利用されていない共用車両を待機させたりできる場所であり、カーシェアリングシステムのために予め用意した駐車場などが挙げられる。
【0010】
ここで、図1は、本実施形態の共用車両管理装置100を備えた共用車両管理システム1000において、ユーザが共用車両を利用する方法の一例を示す概要図である。本実施形態の共用車両管理システム1000では、ユーザが、ユーザ端末装置400Xを操作することで、共用車両管理装置100が管理する複数のステーションの中から、共用車両の貸出しを所望するステーション(出発ステーション)を選択し、選択した出発ステーションで待機している共用車両の利用予約を行う。たとえば、図1に示す場面において、ユーザU2が、出発ステーションとしてステーションST1を選択し、ステーションST1に停車している共用車両V1の予約を要求した場合には、ステーションST1には、現在利用可能な共用車両V1が待機しているので、共用車両管理装置100は、ユーザU2による共用車両V1の利用予約を受付ける。これにより、ユーザU2は、共用車両V1の予約を完了し、ステーションST1にて、共用車両V1に乗車することで、共用車両V1の利用を開始することができる。この際には、併せて、任意のステーションを、共用車両を利用後に返却するためのステーション(帰着ステーション)として設定してもよい。あるいは、ユーザは、共用車両の利用予約をした後、所望のタイミングで、この帰着ステーションを設定してもよい。これにより、ユーザは、予約した共用車両に乗車して共用車両を利用できるようになり、その後、利用した共用車両を、設定した帰着ステーションに返却することで、乗り捨て型のワンウェイ・カーシェアリングシステムを利用できるようになっている。
【0011】
また、図1に示す場面において、ユーザU2が、ユーザ端末装置400Xを用いて、出発ステーションとしてステーションST2を選択し、ステーションST2の共用車両を利用予約する場面について説明する。この場合、ステーションST2には、現在は共用車両が待機しておらず、共用車両の貸出を行うことができない状態である。ただし、図1に示す場面において、ユーザU1が共用車両V2を利用しており、ユーザU1が共用車両V2を返却する帰着ステーションとしてステーションST2を設定しているため、ユーザU1が共用車両V2をステーションST2に返却した後に、ステーションST2から共用車両V2を貸出すことが可能となる。この場合、ユーザU2は、ユーザ端末装置400Xを用いて、出発ステーションとしてステーションST2を選択することで、ステーションST2から共用車両の利用を求める利用要求が共用車両管理装置100に送信される。そして、共用車両管理装置100は、ユーザU2から送信された利用要求に応じて、ステーションST2には現在利用可能な共用車両が存在せず、ステーションST2からは共用車両の貸出を行うことができない旨の情報を、ユーザU2のユーザ端末装置400Xに送信する。この際、共用車両管理装置100は、併せて、他のユーザ(ユーザU1)によりステーションST2に共用車両V2が返却され、ステーションST2にて共用車両の貸出が可能となる予定時刻の情報を送信してもよい。そして、本実施形態では、共用車両管理装置100は、ユーザU1によりステーションST2に共用車両V2が返却された際には、ユーザU2に対して、ステーションST2に共用車両V2が返却され、ステーションST2から共用車両V2が貸出可能になった旨の情報を、ユーザU2のユーザ端末装置400Xに送ることもできる。
【0012】
次に、本実施形態に係る共用車両管理システム1000について説明する。図2は、本実施形態に係る共用車両管理システム1000を示す構成図である。図2に示すように、共用車両管理システム1000は、共用車両管理装置100と、複数のユーザに利用される複数の共用車両V1〜Vn(以下、共用車両Vnと総称することもある。)がそれぞれ備える車載装置200V1〜200Vn(以下、車載装置200Vnと総称することもある。)と、複数のユーザがそれぞれ所持するユーザ端末装置400X〜400Z(以下、ユーザ端末装置400Xと総称することもある。)と、を有する。本実施形態の共用車両管理システム1000を構成する、車載装置200V1〜200Vn、ユーザ端末装置400X〜400Zの台数は限定されない。
【0013】
共用車両管理装置100、車載装置200V1〜200Vn及びユーザ端末装置400X〜400Zは、それぞれ通信装置(20、220、420)を備え、インターネット300などの電気通信回線網を介して相互に情報の授受が可能である。通信経路は有線であっても無線であってもよい。
【0014】
本実施形態のユーザ端末装置400Xは、共用車両の予約プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行することで、各機能を実行させる動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えるコンピュータである。本実施形態のユーザ端末装置400Xは、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はPDA(Personal Digital Assistant)その他の可搬型の端末装置であってもよい。
【0015】
本実施形態のユーザ端末装置400Xは、各ユーザが所望するステーションで共用車両Vnの利用を求める利用要求などの入力情報を受け付ける入力装置410と、共用車両管理装置100などの外部装置と通信を行う通信装置420と、各ユーザに情報を通知するための表示装置430と、ユーザによる共用車両Vnの利用の制御処理を実行する制御装置440とを備える。
【0016】
ユーザ端末装置400Xの入力装置410としては、たとえば、ユーザの手操作による入力が可能なディスプレイ画面上に配置されるタッチパネル又はジョイスティックや、ユーザの音声による入力が可能なマイクなどの装置を用いることができる。表示装置430としては、ディスプレイなどが挙げられ、タッチパネル・ディスプレイを用いる場合には、入力装置410と兼用することができる。ユーザは入力装置410を介して、ユーザの目的地、共用車両の貸出しを所望するステーション(出発ステーション)、および共用車両を利用後に返却するためのステーション(帰着ステーション)などを設定することができる。
【0017】
本実施形態の制御装置440は、ユーザ端末装置400Xに備えられた図示しないGPS(Global Positioning System)受信機などの位置取得装置を用いて、ユーザ端末装置400Xを操作するユーザの現在位置の情報を取得し、取得した現在位置の情報を、通信装置420を介して、共用車両管理装置100に送信する。
【0018】
また、制御装置440は、各ユーザが共用車両Vnを利用するための機能を有する。具体的には、制御装置440は、ユーザが共用車両Vnの利用を求める利用要求などの入力情報を受け付け、通信装置420を介して、共用車両管理装置100に送信する。このような利用要求には、ユーザのID情報、ユーザの現在位置、ユーザが設定した出発ステーションおよび帰着ステーションを示す情報(たとえば、出発ステーションおよび帰着ステーションのID情報など)などが含まれる。
【0019】
たとえば、ユーザが、入力装置410を介して、共用車両VnをステーションST1で借りて、ステーションST2で返却するための予約を行った場合に、制御装置440は、出発ステーションとしてステーションST1のID情報を、帰着ステーションとしてステーションST2のID情報を利用要求に含めて、共用車両管理装置100に送信することができる。これにより、共用車両管理装置100において、出発ステーションとしてステーションST1を、帰着ステーションとしてステーションST2を利用するための予約処理が開始される。
【0020】
また、本実施形態の車載装置200Vnは、各共用車両Vnの現在位置を検出するGPS受信機210と、共用車両管理装置100などの外部装置と通信を行う通信装置220と、ユーザによる共用車両Vnの利用の制御処理を実行する制御装置230とを備える。
【0021】
本実施形態において、制御装置230は、GPS受信機210を用いて取得した現在位置の情報を、通信装置220を介して、共用車両管理装置100に送信する。さらに、制御装置230は、図示しないディスプレイやスピーカーなどを用いて、共用車両管理装置100から送信された情報を、ユーザに通知することができる。
【0022】
本実施形態の共用車両管理装置100は、共用車両管理システム1000のサーバーとして機能し、カーシェアリングシステムを管理運営するための制御処理を実行する制御装置10と、車載装置200Vnおよびユーザ端末装置400Xとそれぞれ相互に通信可能な通信装置20と、通信装置20により受信した情報、各共用車両Vnの情報、および各ステーションの情報などを記憶するデータベース30とを備える。
【0023】
データベース30は、共用車両情報31と、ステーション情報32と、ユーザから受け付けた利用要求33と、地図情報34と、利用履歴情報35とを記憶する。
【0024】
共用車両情報31は、各共用車両Vnに関する情報であり、共用車両Vnの電力残容量や故障情報などが含まれる。
【0025】
ステーション情報32は、各ステーションに関する詳細情報であり、各ステーションの位置情報、各ステーションの周辺の施設情報、各ステーションの周辺の交通状況、および各ステーションの利用状況などを含むことができる。
【0026】
利用要求33は、各ユーザが共用車両Vnを利用するためにユーザ端末装置400Xから送信された情報であり、ユーザのID情報、ユーザの現在位置の情報、ユーザが設定した出発ステーションおよび帰着ステーションを示す情報が含まれる。
【0027】
利用履歴情報35は、複数の共用車両Vnの利用履歴情報であり、各共用車両Vnが出発ステーションから帰着ステーションまでの移動にかかった時間を、出発ステーションおよび帰着ステーションごとに記憶されている。これにより、制御装置10は、たとえば、利用履歴情報35を参照することで、特定のステーションAから特定のステーションBまでの移動時間の平均値を、ステーションAからステーションBまでの基準所要時間(詳細は後述する。)として算出することが可能となる。
【0028】
本実施形態の共用車両管理装置100の制御装置10は、図2に示すように、カーシェアリングシステムを管理運営する処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行することで、共用車両管理装置100として機能する動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13とを備える。
【0029】
共用車両管理装置100の制御装置10は、ROM12に格納されたプログラムを実行することで、共用車両管理機能と、特典算出機能と、特典付与機能と、を実現する。以下において、共用車両管理装置100の制御装置10が実現する各機能についてそれぞれ説明する。なお、本実施形態に係る共用車両管理装置100の制御装置10は、上記機能を実現するためのソフトウェアと、上述したハードウェアの協働により各機能を実現するコンピュータである。
【0030】
制御装置10の共用車両管理機能は、共用車両Vnの利用を要求するユーザのユーザ端末装置400Xから、共用車両の予約情報を取得する。具体的には、共用車両管理機能は、ユーザ端末装置400から、出発ステーションと帰着ステーションの予約情報を取得する。そして、共用車両管理機能は、出発ステーションに貸出可能な共用車両Vnが存在するか否かを判断し、貸出可能な共用車両Vnが存在する場合には、共用車両Vnを貸出用に確保する。
【0031】
制御装置10の特典算出機能は、ユーザに付与するインセンティブ特典を算出する。具体的には、特典算出機能は、まず、ユーザが共用車両Vnを返却してから、当該共用車両Vnを別のユーザに貸し出すまでのインターバル時間を算出する。ここで、図3は、インターバル時間を説明するための図である。図3に示す例においては、時刻t1において共用車両V1をユーザAに貸し出し、ユーザAは時刻t2において共用車両V1を返却したものとする。また、時刻t3において、共用車両V1をユーザAとは異なるユーザBに貸し出している。この場合、特典算出機能は、共用車両V1がユーザAにより返却されてから、当該共用車両V1がユーザBに貸し出されるまでの時間T1を、インターバル時間として算出することができる。同様に、図3に示す例では、時刻t4においてユーザBは共用車両V1を返却し、時刻t5において当該共用車両V1をユーザBとは異なるユーザCに貸し出したものとする。この場合、特典算出機能は、共用車両V1がユーザBにより返却されてから、当該共用車両V1がユーザCに貸し出されるまでの時間T2を、インターバル時間として算出することができる。このように、本実施形態では、共用車両Vnがステーションに返却され、共用車両Vnが稼働していない時間を、インターバル時間として算出する。
【0032】
そして、特典算出機能は、算出したインターバル時間に基づいて、インセンティブ特典を設定する。ここで、図4は、インターバル時間とインセンティブ特典との関係の一例を示す図である。たとえば、特典算出機能は、図4に示すように、インターバル時間が5分未満である場合には料金割引30%をインセンティブ特典として設定し、インターバル時間が5分以上10分未満である場合には料金割引20%をインセンティブ特典として設定し、インターバル時間が10分以上20分未満である場合には料金割引10%をインセンティブ特典として設定し、インターバル時間が20分以上である場合にはインセンティブ特典を「なし」として設定することができる。このように、特典算出機能は、インターバル時間が短いほど(インターバル時間が所定時間未満である場合には、インターバル時間が当該所定時間よりも長い場合よりも)、インセンティブ特典の価値を高く設定することができる。
【0033】
制御装置10の特典付与機能は、インターバル時間に応じて設定したインセンティブ特典を、共用車両Vnを貸し出したユーザ(以下、貸出ユーザとも称する。)に付与する。たとえば、特典付与機能は、データベース30に記憶した貸出ユーザのユーザ情報に、インセンティブ特典の情報を付加することで、インセンティブ特典を貸出ユーザに付与することができる。この場合、共用車両Vnを当該貸出ユーザに次回以降に貸し出す場合に、当該貸出ユーザの利用金額を、付与したインセンティブ特典の割引額を差し引いた金額で清算することができる。また、特典付与機能は、共用車両Vnを貸し出した貸出ユーザにインセンティブ特典を付与した旨の通知をメール等で行うことで、インセンティブ特典を貸出ユーザに付与することができる。この場合、共用車両Vnを当該貸出ユーザに次回以降貸し出す場合に、当該貸出ユーザが通知に記載された事項を入力することで、当該貸出ユーザの利用金額を、インセンティブ特典の割引額を差し引いた金額で清算することができる。このように、第1実施形態では、共用車両Vnを貸し出した貸出ユーザに対してインセンティブ特典が付与され、共用車両Vnを返却した返却ユーザに対してはインセンティブ特典が付与されない。
【0034】
なお、特典付与機能は、共用車両を返却するユーザ(以下、返却ユーザと称する。)と貸出ユーザとが同一のユーザであるか否かを判断し、返却ユーザと貸出ユーザとが同一のユーザである場合には、貸出ユーザにインセンティブ特典を付与しない構成とすることもできる。これにより、同一のユーザが共用車両Vnをステーションに一旦返却し、連続して同じ共用車両Vnの貸し出し処理を行うことで、このようなユーザがインセンティブ特典を不正に得てしまうことを防止することができる。
【0035】
次いで、図5を参照して、第1実施形態に係る共用車両管理処理を説明する。図5は、第1実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。なお、図5に示す共用車両管理処理は、共用車両管理装置100の制御装置10により実行される。
【0036】
まず、ステップS101では、制御装置10の特典算出機能により、共用車両が貸し出されたか否かの判断が行われる。共用車両が貸し出されていない場合は、共用車両が貸し出されるまでステップS101で待機し、共用車両が貸し出された場合にステップS102に進む。
【0037】
ステップS102では、特典算出機能により、共用車両Vnの利用実績の取得が行われる。たとえば、図3に示す例においては、ユーザAにより共用車両V1が時刻t2において返却され、共用車両V1が時刻t3においてユーザBに貸し出されているため、特典算出機能は、共用車両V1の返却時刻として時刻t2を、共用車両V1の貸出時刻として時刻t3を取得することができる。
【0038】
ステップS103では、特典算出機能により、ステップS102で取得された共用車両Vnの返却時刻と、共用車両Vnの貸出時刻とに基づいて、ユーザが共用車両Vnを返却してから、当該共用車両Vnを別のユーザに貸し出すまでの時間が、インターバル時間として算出される。たとえば、図3に示す例において、特典算出機能は、ユーザAによる共用車両V1の返却時刻t2から、ユーザBへの共用車両V1の貸出時刻t3までの時間T1を、インターバル時間とT1して算出することができる。同様に、特典算出機能は、ユーザBによる共用車両V1の返却時刻t4から、ユーザCへの共用車両V1の貸出時刻t5までの時間T2を、インターバル時間T2として算出することができる。
【0039】
ステップS104では、特典算出機能により、ステップ104で取得されたインターバル時間に基づいて、インセンティブ特典の設定が行われる。具体的には、特典算出機能は、図4に示す表に基づいて、インターバル時間が短いほど(インターバル時間が所定時間未満である場合には、インターバル時間が所定時間以上である場合と比べて)、インセンティブ特典の価値を高く設定することができる。
【0040】
そして、ステップS105では、制御装置10の特典付与機能により、ステップS104で設定したインセンティブ特典を、共用車両Vnを貸し出す貸出ユーザに付与する処理が行われる。たとえば、図3に示す例において、特典付与機能は、インターバル時間T1に応じたインセンティブ特典を、共用車両V1を貸し出すユーザBに付与し、同様に、インターバル時間T2に応じたインセンティブ特典を、共用車両V1を貸し出すユーザCに付与することができる。このように、本実施形態では、共用車両Vnを貸し出す貸出ユーザにインセンティブ特典が付与され、共用車両Vnを返却した返却ユーザにはインセンティブ特典は付与されない。
【0041】
以上のように、第1実施形態に係る共用車両管理システム1000は構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0042】
第1実施形態では、共用車両Vnが返却されてから共用車両Vnが貸し出されるまでの時間をインターバル時間として算出し、インターバル時間が所定時間未満である場合には、インターバル時間が当該所定時間以上である場合と比べて、貸出ユーザに付与するインセンティブ特典の価値を高く設定し、設定したインセンティブ特典の情報を出力する。これにより、インターバル時間に応じて設定されたインセンティブ特典を貸出ユーザに付与することができる。その結果、共用車両Vnが稼働していない時間の短縮を促すことができるため、共用車両Vnの稼働率の向上を図ることができ、共用車両Vnの偏在を抑制することができる。特に、インターバル時間の短縮は、共用車両Vnを貸し出すユーザに依存するため、貸出ユーザにインセンティブ特典を付与することで、返却ユーザにインセンティブ特典を付与する場合と比べて、共用車両Vnが稼働していない時間の短縮を促進することができる。
【0043】
また、本実施形態では、言い換えれば、共用車両Vnが稼働している時間に応じて、インセンティブ特典を付与することができるため、共用車両Vnの営業により得られる料金に対して、ユーザに付与するインセンティブ特典が高くなり過ぎてしまうことを有効に防止することができる。すなわち、共用車両Vnを早く返却するほど、共用車両Vnを返却したユーザに対してインセンティブ特典を高く付与する場合には、その後、共用車両Vnが利用されない時間が長く続き、共用車両Vnの営業により得られる料金が低くなる場合でも、高いインセンティブ特典が返却ユーザに付与されてしまい、共用車両の営業により得られる料金に対して、ユーザに付与するインセンティブ特典が高くなり過ぎてしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、共用車両Vnが稼働している時間に応じて、インセンティブ特典を付与することができるため、共用車両Vnの営業により得られる料金に対して、インセンティブ特典が高くなり過ぎてしまうことを有効に防止することができる。
【0044】
《第2実施形態》
続いて、第2実施形態に係る共用車両管理システムを説明する。第2実施形態における共用車両管理システム1000は、図2に示す共用車両管理システム1000と同様の構成を備え、以下に説明するように動作すること以外は、第1実施形態に係る共用車両管理システム1000と同様である。
【0045】
第2実施形態では、共用車両を貸し出す貸出ユーザに加えて、共用車両を返却する返却ユーザに対しても、インセンティブ特典が付与される。具体的には、制御装置10の特典算出機能は、第1実施形態と同様に、インターバル時間を算出し、インターバル時間が短いほどインセンティブ特典の価値が高くなるように、インセンティブ特典を設定する。そして、第2実施形態において、特典算出機能は、算出したインセンティブ特典を、共用車両Vnを貸し出す貸出ユーザに加えて、共用車両Vnを返却する返却ユーザにも分配する。第2実施形態では、貸出ユーザと返却ユーザのインセンティブ特典の分配比率が、制御装置20のROMに予め記憶されており、特典算出機能は、制御装置20のROMから貸出ユーザと返却ユーザのインセンティブ特典の分配比率を取得することができる。そして、特典付与機能は、インターバル時間に応じて設定されたインセンティブ特典を、インセンティブ特典の分配比率に基づいて、貸出ユーザと返却ユーザとに付与する。
【0046】
たとえば、貸出ユーザと返却ユーザのインセンティブ特典の分配比率が1:1であり、インターバル時間に応じて設定されたインセンティブ特典が料金割引30%である場合には、特典付与機能は、返却ユーザに対して料金割引15%のインセンティブ特典を付与し、貸出ユーザに対しても料金割引15%のインセンティブ特典を付与する。なお、貸出ユーザと返却ユーザのインセンティブ特典の分配比率は1:1に限定されず、たとえば、6:4など適宜設定することができる。
【0047】
続いて、図6を参照して、第2実施形態に係る共用車両管理処理について説明する。図6は、第2実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S104は、第1実施形態の共用車両管理処理のステップS101〜S104と同じ処理のため説明は省略する。
【0048】
ステップS104において、インターバル時間に基づいて、インセンティブ特典の価値が設定された後は、ステップS201に進む。ステップS201では、制御装置10の特典算出機能により、インセンティブ特典の分配比率の取得が行われる。そして、ステップS202では、特典付与機能により、ステップS201で取得されたインセンティブ特典の分配比率に基づいて、返却ユーザおよび貸出ユーザにインセンティブ特典が付与される。たとえば、図3に示す例において、ステップS201で取得されたインセンティブ特典の分配比率が1:1であり、ステップS104で設定されたインターバル時間T1に応じたインセンティブ特典が料金割引30%である場合には、特典付与機能は、ユーザAおよびユーザBに対してそれぞれ料金割引15%のインセンティブ特典を付与することができる。また、インターバル時間T2に応じたインセンティブ特典が料金割引10%である場合には、特典付与機能は、ユーザBおよびユーザCに対してそれぞれ料金割引5%のインセンティブ特典を付与することができる。
【0049】
以上のように、第2実施形態に係る共用車両管理システム1000は構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0050】
すなわち、第2実施形態では、インターバル時間が短いほどインセンティブ特典の価値を高く設定するとともに、設定したインセンティブ特典を、返却ユーザと貸出ユーザとに分配して付与する。これにより、たとえば、携帯端末400Xにインストールされたアプリなどを用いて、ユーザAとユーザBとが互いに連絡を取り合って共用車両Vnを受け渡すことで、インターバル時間が短縮した場合には、ユーザBに協力したユーザAに対しても、インセンティブ特典を付与することができる。このように、第2実施形態では、返却ユーザと貸出ユーザとが協力してインターバル時間を短縮させた場合に、貸出ユーザだけはなく、返却ユーザに対してもインセンティブ特典を付与することが可能となる。また、返却ユーザと貸出ユーザとが協力していない場合でも、返却ユーザが稼働率の高いステーションに共用車両Vnを返却した場合に、このような返却ユーザに対して、高いインセンティブ特典を付与することができる。
【0051】
《第3実施形態》
続いて、第3実施形態に係る共用車両管理システムを説明する。第3実施形態における共用車両管理システム1000は、図2に示す共用車両管理システム1000と同様の構成を備え、以下に説明するように動作すること以外は、第2実施形態に係る共用車両管理システム1000と同様である。
【0052】
第3実施形態に係る共用車両管理装置100において、制御装置10の特典算出機能は、返却ユーザが共用車両Vnを返却する返却予定時刻と、貸出ユーザに共用車両Vnを貸し出す貸出予定時刻とを推定する。そして、特典算出機能は、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と返却予定時刻とのずれ量D1、および、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と貸出予定時刻とのずれ量D2との比に応じて、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の分配比率を算出する。以下に、第3実施形態におけるインセンティブ特典の分配比率の算出方法について説明する。
【0053】
まず、特典算出機能は、データベース30に記憶されている利用履歴情報35に基づいて、出発ステーションおよび帰着ステーションごとに、出発ステーションから帰着ステーションまでの移動に要する基準所要時間を算出する。たとえば、図1に示す例において、特典算出機能は、データベース30に蓄積された利用履歴情報35に基づいて、ステーションST1からステーションST2までの移動時間の平均値を、ステーションST1からステーションST2までの基準所要時間として算出することができる。同様に、特典算出機能は、ステーションST2からステーションST3までの基準所要時間、および、ステーションST1からステーションST3までの基準所要時間をそれぞれ算出することができる。また、特典算出機能は、一方通行などにより、ステーションST1からステーションST2までの経路と、ステーションST1からステーションST2までの経路とが異なる場合には、ステーションST1からステーションST2までの基準所要時間と、ステーションST2からステーションST1までの基準所要時間とを別々に算出する構成としてもよい。このように、特典算出機能は、全てのステーションについて、特定のステーションから他のステーションまでの基準所要時間をそれぞれ算出する。そして、特典算出機能は、算出した基準所要時間を、データベース230に記憶する。
【0054】
さらに、特典算出機能は、ユーザに共用車両Vnを貸し出した場合には、データベース230を参照し、出発ステーションから帰着ステーションまでの基準所要時間を取得する。そして、特典算出機能は、ユーザに共用車両Vnを貸し出した時刻から、基準所要時間が経過した時刻を、当該ユーザが共用車両を返却する返却予定時刻として算出する。たとえば、図1に示す例において、ステーションST1から共用車両V1をユーザU2に貸し出し、ユーザU2がステーションST2に共用車両V1を返却する場合において、データベース30に記憶されているステーションST1からステーションST2までの基準所要時間が30分であり、ステーションST1において共用車両V1をユーザU2に貸し出した時刻が14:00である場合には、特典算出機能は、14:30を返却予定時刻として算出することができる。
【0055】
また、特典算出機能は、共用車両Vnの返却後、共用車両Vnを他のユーザに貸し出す時刻を貸出予定時刻として推定する。たとえば、特典算出機能は、共用車両Vnの返却予定時刻を、共用車両Vnの次のユーザの貸出予定時刻として推定することができる。また、特典算出機能は、たとえば、貸出ユーザが共用車両Vnの利用を予約した時刻、または、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻のうちいずれか遅い方の時刻を、貸出予定時刻として推定することもできる。さらに、特典算出機能は、共用車両Vnの予約情報に含まれるユーザの位置情報に基づいて、ユーザが出発ステーションに到達する時刻を推定し、ユーザが出発ステーションに到達する時刻に所定の準備時間を加えた時刻を、貸出予定時刻として推定する構成としてもよい。
【0056】
そして、特典算出機能は、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と返却予定時刻とのずれ量を返却ずれ量D1として、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と貸出予定時刻とのずれ量を貸出ずれ量D2として算出する。そして、特典算出機能は、返却ずれ量D1と貸出ずれ量D2とに基づいて、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の分配比率を算出する。
【0057】
ここで、図7は、返却ずれ量D1および貸出ずれ量D2と、分配比率を算出するための得点との関係の一例を示す図である。たとえば、返却ずれ量D1または貸出ずれ量D2が2分未満である場合には、特典算出機能は、返却ユーザまたは貸出ユーザに対して得点を10点付与する。また、図7に示すように、特典算出機能は、返却ずれ量D1または貸出ずれ量D2が2分以上5分未満である場合には、返却ユーザまたは貸出ユーザに対して5点を付与し、返却ずれ量D1または貸出ずれ量D2が5分以上10分未満である場合には、返却ユーザまたは貸出ユーザに対して3点を付与し、返却ずれ量D1または貸出ずれ量D2が10分以上である場合には、返却ユーザまたは貸出ユーザに対して0点を付与する。そして、特典算出機能は、返却ユーザの得点と貸出ユーザの得点との比率を、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の比率として算出する。
【0058】
たとえば、返却ユーザが返却予定時刻から1分遅れて共用車両Vnを返却し、貸出ユーザが貸出予定時刻から7分遅れて共用車両Vnを借りた場合には、図7に示すように、返却ユーザの得点は10点となり、貸出ユーザの得点は3点となるため、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の比率は10:3となる。この場合、インターバル時間に応じたインセンティブ特典が料金割引20%である場合には、返却ユーザに付与されるインセンティブ特典は、割引率0.2に、返却ユーザの比率10/13を乗じた0.1538・・、すなわち15.4%となり、貸出ユーザに付与されるインセンティブ特典の比率は、割引率0.2に、貸出ユーザの比率3/13を乗じた0.046・・、すなわち4.6%となる。
【0059】
なお、返却ずれ量D1は、返却ユーザが返却予定時刻よりも早く共用車両Vnを返却した場合も、返却ユーザが返却予定時刻よりも遅く共用車両Vnを返却した場合も、返却予定時刻と実際の返却時刻との差が大きいほど、返却ユーザの得点は小さくなる。これは、返却ユーザが返却予定時刻よりも早く共用車両Vnを返却した場合には、その分だけ、共用車両Vnがステーションの駐車枠を占有することとなり、他のユーザがこの駐車枠を利用する機会が減ってしまい、また、共用車両Vnの偏在を抑制することもできないためである。そのため、返却ユーザが返却予定時刻よりも早く共用車両Vnを返却した場合でも、返却予定時刻と実際の返却時刻との差が大きいほど返却ずれ量D1は大きく算出され、返却ユーザに分配されるインセンティブ特典の比率は小さく設定される。一方、貸出ずれ量D2は、貸出ユーザが貸出予定時刻よりも遅く共用車両Vnを借りるほど大きくなり、貸出ユーザが貸出予定時刻よりも早く共用車両Vnを借りた場合にはゼロとなる。これは、貸出ユーザが共用車両Vnを借りる時刻が早くなるほど、共用車両Vnがステーションの駐車枠を占有する時間が短くなり、共用車両Vnの偏在を抑制することができるためである。
【0060】
続いて、図8を参照して、第3実施形態に係る共用車両管理処理について説明する。図8は、第3実施形態に係る共用車両管理処理を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S104は、第1実施形態の共用車両管理処理のステップS101〜S104と同じ処理のため説明は省略する。
【0061】
ステップS104において、インターバル時間に基づいて、インセンティブ特典の価値が設定された後は、ステップS301に進む。ステップS301では、制御装置10の特典算出機能により、返却ユーザが共用車両Vnを返却する返却予定時刻および貸出ユーザに共用車両Vnを貸し出す貸出予定時刻の算出が行われる。
【0062】
ステップS302では、特典算出機能により、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と、ステップS301で算出した返却予定時刻とのずれ量が返却ずれ量D1として算出される。また、ステップS303では、特典算出機能により、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と、ステップS301で算出した貸出予定時刻とのずれ量が貸出ずれ量D2として算出される。
【0063】
ステップS304では、特典算出機能により、返却ずれ量D1と貸出ずれ量D2とに基づいて、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の分配比率が算出される。具体的には、特典算出機能は、図7に示すように、返却ずれ量D1および貸出ずれ量D2に基づいて、返却ユーザおよび貸出ユーザの得点を決定し、返却ユーザの得点と貸出ユーザの得点との比率を、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の分配比率として算出する。
【0064】
ステップS305では、特典算出機能により、ステップS304で算出されたインセンティブ特典の分配比率に基づいて、返却ユーザおよび貸出ユーザにインセンティブ特典が付与される。たとえば、上述した例のように、返却ユーザが返却予定時刻から1分遅れて共用車両Vnを返却し、貸出ユーザが貸出予定時刻から7分遅れて共用車両Vnを借りた場合には、図7に示すように、返却ユーザの得点は10点となり、貸出ユーザの得点は3点となる。この場合、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の比率は10:3となる。そのため、インターバル時間に応じたインセンティブ特典が料金割引20%である場合には、返却ユーザに付与されるインセンティブ特典は、割引率0.2に、返却ユーザの比率10/13を乗じた15.4%となり、貸出ユーザに付与されるインセンティブ特典は、割引率0.2に、貸出ユーザの比率3/13を乗じた4.6%となる。そのため、この例では、返却ユーザに料金割引15.4%のインセンティブ特典が、貸出ユーザに料金割引4.6%のインセンティブ特典が付与されることとなる。
【0065】
以上のように、第3実施形態に係る共用車両管理システム1000は構成され動作するので、以下の効果を奏する。
【0066】
すなわち、第3実施形態では、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と返却予定時刻との返却ずれ量D1と、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と貸出予定時刻との貸出ずれ量D2とを算出し、返却ずれ量D1と貸出ずれ量D2とに基づいて、返却ユーザと貸出ユーザとのインセンティブ特典の分配比率を算出する。そして、算出したインセンティブ特典の分配比率に基づいて、返却ユーザおよび貸出ユーザにインセンティブ特典が付与される。これにより、第3実施形態では、たとえば、携帯端末400Xにインストールされたアプリなどを用いて、ユーザAとユーザBとが互いに連絡を取り合い、共用車両Vnを受け渡す場合において、予定時刻どおりに共用車両Vnを返却または貸出をするユーザに付与するインセンティブ特典の価値を高くし、予定時刻どおりに共用車両Vnを返却または貸出しないユーザに付与するインセンティブ特典の価値を低くすることができる。これにより、ユーザに予定時刻どおりに共用車両Vnを返却および貸出させることを促進することができ、このような共用車両の受け渡しをより円滑にすることができる。その結果、共用車両Vnが稼働しない時刻を短縮することができ、共用車両Vnの稼働率の向上を図ることができるため、共用車両Vnの偏在を抑制することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0068】
たとえば、上述した実施形態では、返却ユーザと貸出ユーザとが異なる場合、すなわち、返却ユーザと貸出ユーザとが同一のユーザではない場合に、インセンティブ特典を付与する構成を例示したが、この構成に加えて、返却ユーザと貸出ユーザとが所定の関係にある場合にも、インセンティブ特典を付与しない構成とすることができる。たとえば、返却ユーザと貸出ユーザとが同じ会社に所属しており同一のユーザとみなせる場合や、返却ユーザと貸出ユーザとが家族である場合には、返却ユーザと貸出ユーザとが所定の関係にあると判断し、インセンティブ特典を付与しない構成とすることができる。これにより、たとえば共用車両Vnに同乗していた会社の同僚や家族が、返却ユーザに代わって、貸出ユーザとなり共用車両Vnを利用する場合に、このような貸出ユーザにインセンティブ特典が不要に付与されてしまうことを防止することができる。
【0069】
また、上述した実施形態では、返却ユーザが共用車両Vnを返却してから、当該共用車両Vnを貸出ユーザに貸し出すまでの時間をインターバル時間として算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、ステーションに複数の駐車枠が存在する場合には、返却ユーザが共用車両V1を返却してから、共用車両V1または当該ステーションに存在する共用車両V1とは異なる共用車両Vnを貸出ユーザに貸し出すまでの時間をインターバル時間として算出する構成とすることができる。この場合、ステーション全体での共用車両Vnの稼働率の向上を図ることができ、共用車両Vnの偏在を抑制することができる。
【0070】
さらに、上述した実施形態では、返却ユーザが共用車両Vnを返却してから、共用車両Vnを貸出ユーザに貸し出すまでの時間をインターバル時間として算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、共用車両Vnを貸し出す営業時間が開始されてから、共用車両Vnを貸出ユーザに貸し出すまでの時間をインターバル時間として算出する構成とすることもできる。この場合、共用車両Vnを貸し出す営業時間が開始されてからの、共用車両Vnが稼働していない時間を短縮することができ、共用車両Vnの稼働率の向上を図ることができる。
【0071】
加えて、上述した第3実施形態では、返却ユーザが共用車両Vnを返却する予定の返却予定時刻と、貸出ユーザに共用車両Vnを貸し出す予定の貸出予定時刻とを推定し、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と返却予定時刻とのずれ量を返却ずれ量D1として算出し、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と貸出予定時刻とのずれ量を貸出ずれ量D2として算出する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、返却ユーザと貸出ユーザとが連絡を取り合い、共用車両Vnを受け渡す時刻を互いに決定している場合には、返却ユーザが共用車両Vnを実際に返却した時刻と当該受け渡し時刻とのずれ量を返却ずれ量D1として算出し、貸出ユーザに共用車両Vnを実際に貸し出した時刻と当該受け渡し時刻とのずれ量を貸出ずれ量D2として算出する構成としてもよい。
【0072】
なお、上述した実施形態において、共用車両管理装置100の制御装置10は本発明の制御器に相当する。
【符号の説明】
【0073】
1000…共用車両管理システム
100…共用車両管理装置
10…制御装置
20…通信装置
30…データベース
V1〜Vn…共用車両
200V1〜200Vn…車載装置
300…インターネット
400X〜400Z…ユーザ端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8