特許第6776683号(P6776683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776683隙間止水構造、隙間止水方法および筒状体付き部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776683
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】隙間止水構造、隙間止水方法および筒状体付き部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/14 20060101AFI20201019BHJP
   E02D 5/06 20060101ALI20201019BHJP
   E02B 3/16 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   E02D5/14
   E02D5/06
   E02B3/16 A
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-142951(P2016-142951)
(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2018-12972(P2018-12972A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一
(72)【発明者】
【氏名】石濱 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真治
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−058614(JP,A)
【文献】 特開2013−076313(JP,A)
【文献】 実開昭56−033350(JP,U)
【文献】 特開2009−114724(JP,A)
【文献】 特開昭60−250119(JP,A)
【文献】 米国特許第05163785(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/14
E02D 5/06
E02B 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矢板や杭等の部材が複数並設され、隣り合う前記部材間の隙間を止水する隙間止水構造であって、
前記隙間に、前記部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形した変形筒状体が設けられ、前記変形筒状体に弾性を有する密着性部材が取り付けられており、塑性変形した前記変形筒状体が隣り合う前記部材に密着するとともに、前記密着性部材を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする隙間止水構造。
【請求項2】
前記隙間に、前記変形筒状体が前記部材の並設方向または当該並設方向と交差する方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の隙間止水構造。
【請求項3】
矢板や杭等の部材が複数並設され、隣り合う前記部材間の隙間を止水する隙間止水方法であって、
前記隙間に、前記部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体を設けるとともに、前記筒状体に弾性を有する密着性部材を取り付けておき
前記筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることにより、この変形筒状体を隣り合う前記部材に密着させるとともに、前記密着性部材を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする隙間止水方法。
【請求項4】
前記筒状体を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に予め取り付けておくことにより、前記隙間に前記筒状体を設けるとともに、前記筒状体に前記密着性部材を予め取り付けておくことを特徴とする請求項に記載の隙間止水方法。
【請求項5】
前記隙間に、前記筒状体を前記部材の並設方向または当該並設方向と交差する方向に複数設けることを特徴とする請求項またはに記載の隙間止水方法。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載の隙間止水方法で使用される筒状体付き部材であって、
前記部材と、この部材に設けられ、かつ当該部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体と、前記筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えたことを特徴とする筒状体付き部材。
【請求項7】
矢板や杭等の部材が複数並設されるとともに、隣り合う部材にそれぞれ設けられ、かつ前記部材の長手方向に長尺な継手どうしが係合され、係合された前記継手間の隙間を止水する隙間止水構造であって、
前記隙間に、前記継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形した変形筒状体が設けられ、前記変形筒状体に弾性を有する密着性部材が取り付けられており、塑性変形した前記変形筒状体が、係合されている前記継手に密着するとともに、前記密着性部材を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする隙間止水構造。
【請求項8】
矢板や杭等の部材が複数並設されるとともに、隣り合う部材にそれぞれ設けられた継手どうしが係合され、係合された前記継手どうしの隙間を止水する隙間止水方法であって、
前記隙間に、前記継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体を設けるとともに、前記筒状体に弾性を有する密着性部材を取り付けておき
前記筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることにより、この変形筒状体を係合されている前記継手に密着させるとともに、前記密着性部材を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする隙間止水方法。
【請求項9】
前記筒状体を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に予め取り付けておくことにより、前記隙間に前記筒状体を設けるとともに、前記筒状体に前記密着性部材を予め取り付けておくことを特徴とする請求項8に記載の隙間止水方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の隙間止水方法で使用される筒状体付き部材であって、
前記部材と、この部材の前記継手に設けられ、かつ当該継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体と、前記筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えたことを特徴とする筒状体付き部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め壁や護岸、建築物の基礎等の構造物を構成する矢板や杭等の部材間の隙間を止水する隙間止水構造、隙間止水方法および筒状体付き部材に関する。
【背景技術】
【0002】
回転貫入杭は低騒音・低振動かつ省スペースなどの特徴を持つことから鋼管杭の特性を最大限発揮できる工法である。しかし、前面地盤を掘削するための土留め壁として用いられる場合や河川内での工事の際の仮締切として用いられる場合などの止水性が求められる条件では、隣り合う一方の鋼管杭と他方の鋼管杭の間隙を塞ぐことは困難であった。
また、通常、打撃工法や中掘り工法では、鋼管杭の両端にC形状やT形状の継手を取り付け、一方の鋼管杭の継手と他方の鋼管杭の継手を組み合わせながら施工し、継手の空間を洗浄した後にモルタル充填あるいは袋を挿入して袋内にモルタルを充填することで止水処理することが一般的である。
回転貫入杭では杭体を回転させながら地盤中に挿入して行くため、継手を取り付けると施工抵抗が高くなり施工困難に陥ってしまう。また、仮に施工できたとしても鋼管外周面の飛び出しが大きく周面の地盤を大きく乱すために期待できる水平抵抗や周面摩擦力が低下することで構造性能が悪化してしまう。
【0003】
そのような背景の下、隣り合う一方の鋼管杭と他方の鋼管杭の間隙を塞ぐ技術として、特許文献1に記載のものが提供されている。
特許文献1に記載の部材間の止水構造は、鋼管杭やコンクリート系杭材等の部材を複数並設することによって部材列が形成されており、部材間の隙間には、前記部材の長さ方向に長尺に形成されるとともに中空部を有する筒状弾性体が埋設されており、前記筒状弾性体は、前記中空部に充填材が加圧充填されることによって弾性的に拡径変形し、前記隣り合う部材に密着していることを特徴としている。
また、特許文献1に記載の部材間の止水方法は、鋼管杭やコンクリート系杭材等の部材を複数並設することによって部材列を形成し、部材間の隙間に、前記部材の長さ方向に長尺に形成されるとともに中空部を有する筒状弾性体を埋設し、前記筒状弾性体を、前記中空部に充填材を加圧充填することによって弾性的に拡径変形させるとともに、前記隣り合う部材に密着させ、さらに、前記充填材を加圧保持して固化させることを特徴としている。
【0004】
このような部材間の止水構造や止水方法によれば、例えば鋼管杭やコンクリート系杭材等の部材の埋設精度のばらつきや施工誤差、部材表面の凹凸、閉塞用鋼材の設置不良等のように、隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象が生じていたとしても、隣り合う部材間の隙間に埋設された筒状弾性体を隣り合う部材に密着させることができる。これによって、例えば土留め壁や護岸、建築物の基礎等の構造物を構成する部材列の隣り合う部材間の隙間を確実に閉塞できるので、これら隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく確実に止水することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−76313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、隣り合う部材間に管状の弾性体を挿入し、この弾性体内にモルタル等の固化材を充填しているので、固化材の材料手配や練り混ぜ等の作業に手間がかかることに加え、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持が必要であり施工期間が長くなるとともに、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も必要となる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる隙間止水構造、隙間止水方法および筒状体付き部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の隙間止水構造は、矢板や杭等の部材が複数並設され、隣り合う前記部材間の隙間を止水する隙間止水構造であって、
前記隙間に、前記部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形した変形筒状体が設けられ、前記変形筒状体に弾性を有する密着性部材が取り付けられており、塑性変形した前記変形筒状体が隣り合う前記部材に密着するとともに、前記密着性部材を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、隣り合う部材間の隙間に設けられて、塑性的に拡径変形した変形筒状体が隣り合う部材に密着しているので、確実に止水を行うことができる。
また、部材間の隙間が不均一となっていても、変形筒状体は塑性的に拡径変形したものであるので、隙間に追随して部材に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの保持も必要なく、固化材の配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
また、変形筒状体に取り付けられている密着性部材が隣り合う部材のうちの少なくともいずれか一方に密着しているので、さらに止水性を高めることができる。
【0010】
本発明の前記構成において、前記隙間に、前記変形筒状体が前記部材の並設方向または当該並設方向と交差する方向に複数設けられていてもよい。
【0011】
前記隙間に前記変形筒状体が前記部材の並設方向に複数設けられていることによって、部材間の隙間が大きい場合に容易に対処でき、前記隙間に前記変形筒状体が前記部材の並設方向と交差する方向に複数設けられていることによって、止水の信頼性が向上する。
【0014】
また、本発明の隙間止水方法は、矢板や杭等の部材が複数並設され、隣り合う前記部材間の隙間を止水する隙間止水方法であって、
矢板や杭等の部材が複数並設され、隣り合う前記部材間の隙間を止水する隙間止水方法であって、
前記隙間に、前記部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体を設けるとともに、前記筒状体に弾性を有する密着性部材を取り付けておき
前記筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることにより、この変形筒状体を隣り合う前記部材に密着させるとともに、前記密着性部材を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする。
【0015】
ここで、筒状体の内部を加圧するには、例えば、筒状体の内部に水や油といった液体あるいは空気といった流体を送って加圧すればよい。
【0016】
本発明においては、隣り合う部材間の隙間に塑性的に拡径変形可能な筒状体を設け、この筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とするとともに、この変形筒状体を隣り合う前記部材に密着させるので、確実に止水を行うことができる。
また、部材間の隙間が不均一となっていても、筒状体の内部を加圧することによって、当該筒状体が、隙間に追随して塑性的に拡径変形して、部材に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持も必要なく、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
また、筒状体の内部を加圧して、筒状体を塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることによって密着性部材を隣り合う部材のうちの少なくともいずれか一方に密着させるので、さらに止水性を高めることができる。
【0017】
また、本発明の前記構成において、前記筒状体を隣り合う前記部材のうちの少なくともいずれか一方に予め取り付けておくことにより、前記隙間に前記筒状体を設けるとともに、前記筒状体に前記密着性部材を予め取り付けてもよい。
【0018】
このような構成によれば、部材を地盤中に埋設すると同時に前記隙間に筒状体を設けることができるので、施工性に優れたものとなる。
【0019】
また、本発明の前記構成において、前記隙間に、前記筒状体を前記部材の並設方向または当該並設方向と交差する方向に複数設けてもよい。
【0020】
前記隙間に前記筒状体が前記部材の並設方向に複数設けられていることによって、部材間の隙間が大きい場合に容易に対処でき、前記隙間に前記筒状体が前記部材の並設方向と交差する方向に複数設けられていることによって、止水の信頼性が向上する。
【0023】
また、本発明の筒状体付き部材は、前記隙間止水方法で使用される筒状体付き部材であって、
前記部材と、この部材に設けられ、かつ当該部材の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体と、前記筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明においては、筒状体付き部材が、部材と、この部材に設けられて塑性的に拡径変形可能な筒状体と、筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えているので、この筒状体付き部材を使用することによって、部材間の隙間の止水を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明の隙間止水構造は、矢板や杭等の部材が複数並設されるとともに、隣り合う部材にそれぞれ設けられ、かつ前記部材の長手方向に長尺な継手どうしが係合され、係合された前記継手間の隙間を止水する隙間止水構造であって、
前記隙間に、前記継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形した変形筒状体が設けられ、前記変形筒状体に弾性を有する密着性部材が取り付けられており、塑性変形した前記変形筒状体が、係合されている前記継手に密着するとともに、前記密着性部材を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、係合されている継手間の隙間に設けられて、塑性的に拡径変形した変形筒状体が、係合されている継手に密着しているので、確実に止水を行うことができる。
また、継手間の隙間が不均一となっていても、変形筒状体は塑性的に拡径変形したものであるので、隙間に追随して継手に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持も必要なく、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、係合されている継手間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
また、変形筒状体に取り付けられている密着性部材が、係合されている継手のうちの少なくともいずれか一方に密着しているので、さらに止水性を高めることができる。
【0029】
また、本発明の隙間止水方法は、矢板や杭等の部材が複数並設されるとともに、隣り合う部材にそれぞれ設けられた継手どうしが係合され、係合された前記継手間の隙間を止水する隙間止水方法であって、
前記隙間に、前記継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体を設けるとともに、前記筒状体に弾性を有する密着性部材を取り付けておき
前記筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることにより、この変形筒状体を係合されている前記継手に密着させるとともに、前記密着性部材を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に密着させることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、係合されている継手間の隙間に塑性的に拡径変形可能な筒状体を設け、この筒状体を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体とするとともに、この変形筒状体を係合された継手に密着させるので、確実に止水を行うことができる。
また、継手間の隙間が不均一となっていても、筒状体の内部を加圧することによって、当該筒状体が、隙間に追随して塑性的に拡径変形して、継手に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持も必要なく、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、係合されている継手間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
また、筒状体の内部を加圧して、筒状体を塑性的に拡径変形させて変形筒状体とすることによって密着性部材を係合されている継手のうちの少なくともいずれか一方に密着させるので、さらに止水性を高めることができる。
【0031】
また、本発明の前記構成において、前記筒状体を係合されている前記継手のうちの少なくともいずれか一方に予め取り付けておくことにより、前記隙間に前記筒状体を設けるとともに、前記筒状体に前記密着性部材を予め取り付けてもよい。
【0032】
このような構成によれば、継手どうしを係合すると同時に前記隙間に筒状体を設けることができるので、施工性に優れたものとなる。
【0035】
また、本発明の筒状体付き部材は、前記隙間止水方法で使用される筒状体付き部材であって、
前記部材と、この部材の前記継手に設けられ、かつ当該継手の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体と、前記筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えたことを特徴とする。
【0036】
本発明においては、筒状体付き部材が、部材と、この部材に設けられて塑性的に拡径変形可能な筒状体と、筒状体に取り付けられた弾性を有する密着性部材とを備えているので、この筒状体付き部材を使用することによって、継手間の隙間の止水を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、隣り合う部材間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図4】本発明の第4の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図4A】本発明の第4の実施の形態に係る隙間止水方法の工程を説明するためのもので、(a)は鋼管継手間の隙間をケーシングパイプを使用して削孔した状態を示す断面図、(b)は隙間に下段の筒状体を設けた状態を示す断面図、(c)は下段の筒状体の内部を加圧して、変形筒状体とした状態を示す断面図、(d)は隙間に中段の筒状体を設けた状態を示す断面図、(e)は中段の筒状体の内部を加圧して、変形筒状体とした状態を示す断面図、(f)は隙間に上段の筒状体を設けた状態を示す断面図、(g)は上段の筒状体の内部を加圧して、変形筒状体とした状態を示す断面図である。
図5】本発明の第5の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図6】本発明の第6の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図7】本発明の第7の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図8】本発明の第8の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図9】本発明の第9の実施の形態に係る隙間止水構造を示すもので、(a)は筒状体の加圧前の状態示す平断面図、(b)は筒状体の加圧後の状態を示す平断面図である。
図10】本発明の実施の形態に係る隙間止水構造に使用される筒状体を示すもので、(a)は斜視図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。
図11】本発明の実施の形態に係る隙間止水構造に使用される筒状体のバリエーションを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
以下の各実施の形態において、符号1,1はそれぞれ地中に埋設された鋼管を示す。鋼管1,1は、周知の圧入工法、回転圧入工法等によって連続的に地中に並設されることで、例えば止水性が求められる土留め壁を構成する。
なお、各実施の形態の各図において、鋼管1,1は、対向している外周壁の一部を示している。
また、鋼管1は外径が400〜2500mm程度の円筒状に形成されている。
【0040】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、隣り合う鋼管1,1間には所定の隙間Sが設けられている。この隙間Sは施工重機の取り合いなどから必要になる間隔であり、50〜300mm程度である。そして、この隙間Sが以下のようにして止水されている。
すなわちまず、隙間Sに、鋼管1の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体5を設ける。この筒状体5は断面形状が瓢箪状に形成されており、その一端部は閉塞され、他端部には筒状体5の内部を加圧する際に、当該内部に水や空気等の流体を充填するための充填口が設けられている。
【0041】
例えば図10に示すように、筒状体5の一端部(右端部)は潰されたうえで、当該潰された部分に有底円筒状のスリーブ6が装着されている。これによって、筒状体5の一端部は気密に閉塞されている。また、筒状体5の他端部(左端部)は、円筒状の加圧用筒7が挿入されたうえで潰されており、当該潰された部分に円筒状のスリーブ8が装着されている。
また筒状体5の一端部および他端部は、それ以外の部分より厚肉なスリーブ6,8が装着されているので、筒状体5の内部が加圧されても変形しないよう剛性が高く保たれている。また、一端部は溶接により閉塞させてあっても良い。また、本実施の形態では、筒状体5の断面形状はいわゆる瓢箪形状となっているが、断面形状はこれに限ることなく、他の実施の形態等に示すように、種々の形状となっていてもよい。
【0042】
また、筒状体5は、その内部に前記充填口となる加圧用筒7から水や空気等の流体が充填されることで、内部が加圧され、これによって、塑性的に拡径変形可能となっている。このように、塑性的に拡径変形可能とするために、筒状体5は、例えば低降伏点鋼やアルミニウム等によって形成され、さらに、筒状体5の肉厚は2.0mm〜10.3mm程度となっている。ここでの塑性的とは、筒状体5を材料の塑性領域まで変形させ、筒状体5の内部に変形を保持する材料が充填されなくても変形が残留している状況を示す。
【0043】
このような構成の筒状体5は、図1(a)に示すように、予め一方の鋼管1に取り付けられることで、筒状体付き鋼管1Aとなっている。筒状体5を鋼管1に予め取り付けるには、例えば、鋼管1の外周面に、その長手方向(軸方向)に沿って筒状体5を点溶接や隅肉溶接等の溶接部wによって溶接して固定する。この場合、筒状体5は鋼管1の外周面に接触していてもよいし、当該外周面との間に若干の隙間があってもよい。また、筒状体5は加圧用筒7(図10参照)が設けられた他端部を上方、すなわち、埋設すべき鋼管1の上端側に向けて取り付ける。
また、筒状体5は、鋼管1の全長に亘って取り付けてもよいし、止水が必要な部分のみに取り付けてもよい。さらに、筒状体5は、鋼管1の軸方向に沿って複数設けてもよい。複数設ける場合、各筒状体5の軸方向の長さは適宜設定すればよい。
【0044】
そして、このような筒状体付き鋼管1Aを地中に埋設することによって、前記隙間Sに筒状体5を設けることができる。
次に、筒状体5を、その内部を加圧することによって、図1(b)に示すように、塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1の外周面に密着させる。
筒状体5の内部を加圧するには、例えば、筒状体付き鋼管1Aを圧入工法によって地中に埋設する場合、加圧ホースを予め筒状体5の加圧用筒7に接続しておき、埋設後に加圧装置から加圧ホースを通して、加圧用の水を筒状体5の内部に充填することによって行えばよい。
また、筒状体付き鋼管1Aを回転圧入工法によって地中に埋設する場合、筒状体付き鋼管1Aを埋設した後、前記隙間Sにある地盤にケーシングパイプを挿入しながら、ボーリングマシンによって削孔し、その後、ボーリングマシンを引き抜いたうえで、ケーシングパイプに加圧用ホースを挿入して、筒状体5の加圧用筒7に接続し、加圧装置から加圧ホースを通して、加圧用の水を筒状体5の内部に充填することによって行えばよい。
【0045】
このようにして、筒状体5の内部を加圧して、当該筒状体5を塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とすることによって、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1の外周面に密着させる。筒状体5の内部を加圧するには、加圧装置によって筒状体5の内部に水を充填して、1〜50MPaの圧力で加圧することによって、当該筒状体5が塑性的に拡径変形して、その直径が50〜300mm程度の変形筒状体10となって、鋼管1,1の外周面に密着する。これによって、隙間Sに、鋼管1の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形した変形筒状体10が設けられ、この変形筒状体10が隣り合う鋼管1,1に密着してなる隙間止水構造が施工される。
【0046】
以上のように本実施の形態によれば、隣り合う鋼管1,1間の隙間Sに塑性的に拡径変形可能な筒状体5を設け、この筒状体5を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1に密着させるので、確実に止水を行うことができる。
また、鋼管1,1間の隙間が不均一となっていても、筒状体5の内部を加圧することによって、当該筒状体5が、隙間Sに追随して塑性的に拡径変形して、鋼管1,1に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持も必要なく、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、隣り合う鋼管1,1間の隙間Sが不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
【0047】
また、筒状体5を隣り合う鋼管1,1のうちの一方に予め取り付けて、筒状体付き鋼管1Aとしたので、この筒状体付き鋼管1Aを地盤中に埋設すると同時に隙間Sに筒状体5を設けることができる。したがって、施工性に優れたものとなる。
また、筒状体付き鋼管1Aが、鋼管1と、この鋼管1に設けられて塑性的に拡径変形可能な筒状体5とを備えているので、この筒状体付き鋼管1Aを使用することによって、鋼管1,1間の隙間Sの止水を容易に行うことができる。
【0048】
(第2の実施の形態)
図2は第2の実施の形態を示す。この第2の実施の形態が、図1に示す第1の実施の形態と異なる点は、筒状体付き鋼管1Aに保護部材11を取り付けた点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0049】
第2の実施の形態は、鋼管1を回転圧入工法によって地中に埋設する場合に適している。
すなわち、図2(a)に示すように、筒状体付き鋼管1Aの外周面には、筒状体5の近傍において、保護部材11が取り付けられている。保護部材11は板状部材や鋼管1Aの外径に沿うような曲面を持った部材や断面L字形に形成されたアングル材であり、例えば鋼板等によって形成されている。
また、保護部材11は筒状体5の軸方向(長手方向)に沿って延在する長尺な部材であり、その一片11aの一方の縁部が筒状体付き鋼管1Aの外周面に点溶接等によって取り付けられており、強固に固定されていない。したがって、筒状体5の拡径変形中に点溶接が切断し、保護部材11はその一片11aの縁部を軸として図2(a)において左右に回転可能となっている。なお、図示していないが保護部材11が鋼管1Aに蝶番等によって取り付けられ、保護部材11が左右に回転可能となっていてもよい。
【0050】
保護部材11の他片11bは、筒状体付き鋼管1Aが図2(a)において反時計回り(矢印で示す)に回転しながら圧入されるとすると、一片11aの他方の縁部から矢印と逆方向に延出して、筒状体5に略被さるようにして配置されている。
そして、保護部材11が取り付けられた筒状体付き鋼管1Aを反時計回り(矢印で示す)に回転しながら圧入して行くと、保護部材11の一片11aに地盤から保護部材11を右方向(時計方向)に回転させるような力が作用するが、一片11aが筒状体5に接しているので、保護部材11はこの状態で保持され、筒状体付き鋼管1Aの回転に伴って、地盤を押し退けるようにして同方向に回転して行く。
この回転の際に、筒状体5は保護部材11によって保護されるので、筒状体付き鋼管1Aからの筒状体5の逸脱を防止できる。
【0051】
そして、筒状体付き鋼管1Aを所定の深さまで埋設した後、筒状体5を、その内部を加圧することによって、図2(b)に示すように、塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1の外周面に密着させる。
筒状体5が拡径変形すると、この拡径変形している筒状体5によって、保護部材11が左側に押されることで、当該保護部材11がその一片11aの一端部を軸として左側に回転して、変形筒状体10の左側に配置される。
なお、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
図3は第3の実施の形態を示す。この第3の実施の形態が、図1に示す第1の実施の形態と異なる点は、筒状体の形状と、この筒状体に密着性部材を取り付けた点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0053】
本実施の形態における筒状体15は、外周面の一部に内側に没する凹溝16が形成された、断面形状が略C字形の円筒状に形成されている。凹溝16は筒状体15の軸方向に沿って延在しているが、筒状体15の両端部は第1の実施の形態における筒状体5と同様の構成となっている。
また、凹溝16には予め円柱状の密着性部材17が嵌め込まれている。すなわち、凹溝16はその底面が略半円筒面状に形成されており、この凹溝16に円柱状の密着性部材17が凹溝16の底面に密着するようにして嵌め込まれている。この場合、密着性部材17を接着剤によって凹溝16に接着固定してもよい。
【0054】
この密着性部材17は、鋼管1の外周面に密着可能なものであればよいが、本実施の形態では、密着性部材17として、水膨潤性止水材を使用している。
この水膨潤性止水材は、吸水し、膨潤するとともに、吸水膨潤後に所定の材料強度を有し、さらに吸水により著しく溶解しない機能を有するものが好ましい。水膨潤性止水材の例としては、ウレタン系止水材、酢酸ビニル系止水材、その他に水膨潤性ゴムなどがある。また、このような水膨潤性止水材は、塗料状のものでも固形状のものでもよい。
また、密着性部材17としてシリコン樹脂やエラストマー等の弾性を有するものを使用してもよい。
【0055】
そして、筒状体付き鋼管1Aを所定の深さまで埋設した後、筒状体15を、その内部を加圧することによって、図3(b)に示すように、塑性的に拡径変形させて変形筒状体20とするとともに、この変形筒状体20を隣り合う鋼管1の外周面に密着させる。
また、筒状体15が拡径変形すると、凹溝16が他方の鋼管1側に向けて押し出されるように変形して溝底が浅くなって、密着性部材17が鋼管1側に向けて押し出されて、当該鋼管1の外周面に密着する。
これによって、変形筒状体20が隣り合う鋼管1,1に密着するとともに、密着性部材17が一方の鋼管1に密着してなる隙間止水構造が施工される。
【0056】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、筒状体15の内部を加圧して、筒状体15を塑性的に拡径変形させて変形筒状体20とすることによって密着性部材17を一方の鋼管1に密着させるので、さらに止水性を高めることができる。
【0057】
(第4の実施の形態)
図4は第4の実施の形態を示す。この第4の実施の形態が、図1に示す第1の実施の形態と異なる点は、筒状体5を予め鋼管1に取り付けておくのではなくて、鋼管1,1の埋設後に筒状体5を施工する点であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0058】
本実施の形態では、図4に示すように、埋設された隣り合う鋼管1,1の隙間Sに筒状体5を配置し、この筒状体5を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1に密着させる。
【0059】
具体的には、以下のようにして埋設後の鋼管1,1の隙間Sに筒状体5を施工する。
すなわちまず、図4A(a)に示すように、隣り合う鋼管1,1間の隙間Sに存在する地盤にケーシングパイプ25を挿入しながら、図示しないボーリングマシンによって削孔し、その後、ボーリングマシンを引き抜く。
次に、図4A(b)に示すように、ケーシングパイプ25を所定長さだけ上方に引き抜いて、ケーシングパイプ25の下方に削孔した孔の下端部を露出させ、その後、筒状体5が予め接続された加圧ホース26をケーシングパイプ25に挿入し、このケーシングパイプ25の下端より下方に筒状体5を押し出すことで、筒状体5を前記孔の下端部に配置する。このようにして下段の筒状体5を配置する。
なお、筒状体5の上端部に、連結管27を、その略上半分を筒状体5の上端から突出させるようにして、装着する。
【0060】
次に、図4A(c)に示すように、加圧装置28から加圧ホース26を通して、加圧用の水を筒状体5の内部に充填することによって、図4(a)および図4A(c)に示すように、当該筒状体5を塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1の外周面に密着させる。なお、この際、連結管27は筒状体5の拡径に伴って、塑性変形して内径が拡径して、外周面が鋼管1,1の外周面に密着する。
【0061】
次に、図4A(d)に示すように、ケーシングパイプ25を所定長さだけ上方に引き抜いて、ケーシングパイプ25の下方でかつ下段の変形筒状体10の上方に、削孔した孔の中段を露出させたうえで、次の筒状体5が接続された加圧ホース26をケーシングパイプ25に挿入し、このケーシングパイプ25の下端より下方に筒状体5を押し出すことで、筒状体5を前記孔の中段に配置するとともに、この筒状体5の下端部を連結管27の上端部に挿入する。
なお、筒状体5の上端部に、連結管27を、その略上半分を筒状体5の上端から突出させるようにして、装着する。
【0062】
次に、図4A(e)に示すように、加圧装置28から加圧ホース26を通して、加圧用の水を中段の筒状体5の内部に充填することによって、当該筒状体5を塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1の外周面に密着させるとともに、変形筒状体10の下端部を連結管27の内周面に密着させる。なお、この際、連結管27は筒状体5の拡径に伴って、塑性変形して内径が拡径して、外周面が鋼管1,1の外周面に密着する。また、上下(中段と下段)の変形筒状体10,10は互いに密着して一体化される。
【0063】
次に、図4A(f)に示すように、ケーシングパイプ25を全て上方に引き抜いて、中段の変形筒状体10の上方に、削孔した孔の上段を露出させたうえで、次の筒状体5が接続された加圧ホース26をケーシングパイプ25に挿入することで、筒状体5を前記孔の上段に配置するとともに、この筒状体5の下端部を連結管27の上端部に挿入する。
次に、図4A(g)に示すように、加圧装置28から加圧ホース26を通して、加圧用の水を上段の筒状体5の内部に充填することによって、当該筒状体5を塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1の外周面に密着させるとともに、変形筒状体10の下端部を連結管27の内周面に密着させて、止水施工を終了する。また、上下(上段と中断)の変形筒状体10,10は互いに密着して一体化される。その後は、加圧装置28と加圧ホース26を撤去する。
【0064】
このように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、鋼管1,1間の隙間の止水を上下三段の筒状体5を使用して行うようにしたので、止水すべき箇所の上下の長さが長い場合でも、筒状体5の本数を調整することによって、容易に対処できる。
【0065】
(第5の実施の形態)
図5は第5の実施の形態を示す。この第5の実施の形態が、図3に示す第3の実施の形態と異なる点は、筒状体15を予め鋼管1に取り付けておくのではなくて、鋼管1,1の埋設後に筒状体15を施工する点であるので、以下ではこの点について説明し、第3の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0066】
本実施の形態では、図5に示すように、埋設された隣り合う鋼管1,1の隙間Sに筒状体15を配置し、この筒状体15を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体10とするとともに、この変形筒状体10を隣り合う鋼管1,1に密着させる。
この場合、第3の実施の形態と同様に、筒状体15の凹溝16に密着性部材17を予め取り付けておき、筒状体15を、その内部を加圧して、塑性的に拡径変形させて変形筒状体20とすることによって、密着性部材17を隣り合う鋼管1,1に密着させる。
また、筒状体15を施工する場合は、第4の実施の形態と同様にして行う。
本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(第6の実施の形態)
図6は第6の実施の形態を示す。この第6の実施の形態が、図4に示す第4の実施の形態と異なる点は、筒状体5の数と配置位置であるので、以下ではこの点について説明し、第4の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0068】
本実施の形態では、図6(a)に示すように、隣り合う鋼管1,1間の隙間S1は、図4に示す第4の実施の形態における隙間Sより大きくなっている。
そして、鋼管1,1間の隙間S1に、2つの筒状体5,5を鋼管1,1の並設方向(図6においては上下方向)に平行離間して設ける。筒状体5,5を施工するには、第4の実施の形態と同様して行う。
【0069】
次に、筒状体5,5を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて2つの変形筒状体30,31とするとともに、一方の変形筒状体30を一方の鋼管1に密着させ、他方の変形筒状体31を他方の鋼管1に密着させる。さらに、これら変形筒状体30,31どうしも密着させる。
変形筒状体30,31は、これらの鋼管1,1の並設方向における位置や、加圧力の差によって、異なる形状に塑性的に拡径変形するが、前記位置や加圧力を調整することによって、変形筒状体30,31が同じ形状となるようにしてもよい。
【0070】
本実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、隣り合う鋼管1,1間の隙間S1が大きい場合に容易に対処できる。
なお、本実施の形態では筒状体5,5を2つ設けたが、隙間S1の大きさに応じて3つ以上設けてもよい。
【0071】
(第7の実施の形態)
図7は第7の実施の形態を示す。この第7の実施の形態が、図6に示す第6の実施の形態と異なる点は、筒状体5の配置位置であるので、以下ではこの点について説明し、第4の実施の形態と同一構成には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0072】
本実施の形態では、図7(a)に示すように、隣り合う鋼管1,1間の隙間S2は、図6に示す第6の実施の形態における隙間S1および第4の実施の形態における隙間Sより小さくなっている。
このように、本実施の形態では、鋼管1,1間の隙間S2が小さいため、この隙間S2にある地盤を削孔し難い場合に適している。
【0073】
このため、本実施の形態では、鋼管1,1間の隙間S2の両側にある比較的大きい隙間に、筒状体5,5を設けるが、2つの筒状体5,5を鋼管1,1の並設方向(図7においては上下方向)と直交する方向に平行離間して設けるほうがより好ましい。また、筒状体5,5は、鋼管1,1の断面の中心を結ぶ線分に対して左右対称の位置に設けられている。筒状体5,5を施工するには、第4の実施の形態と同様して行う。以降は筒状体5,5を2つ設けた場合について説明する。
【0074】
次に、筒状体5,5を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて2つの変形筒状体32,32とするとともに、これら変形筒状体32,32を鋼管1,1に密着させる。
【0075】
本実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、隣り合う鋼管1,1間の隙間S2に変形筒状体32,32が鋼管1,1の並設方向と直交する方向に2つ設けられているので、止水の信頼性が向上するという利点がある。
【0076】
なお、第6および第7実施の形態において、筒状体5,5の代わりに、第5の実施の形態における筒状体15,15を使用しもよい。
第6の実施の形態において、筒状体15,15を使用する場合、一方の筒状体15の凹溝16を一方の鋼管1側に向け、他方の筒状体15の凹溝16を他方の鋼管1側に向けて使用する。つまり、筒状体15,15を背中合わせの状態で使用する。
また、第7の実施の形態において、筒状体15を使用する場合、一方の筒状体15の凹溝16を一方の鋼管1側に向け、他方の筒状体15の凹溝16を他方の鋼管1側に向けて使用するのが好ましいが、両方の筒状体15,15の凹溝16,16を一方の鋼管1側に向けて使用してもよい。
【0077】
さらに、第6の実施の形態において、予め一方の筒状体5を一方の鋼管1に取り付け、予め他方の筒状体5を他方の鋼管1に取り付けておいてもよい。また、第7の実施の形態において、予め一方の筒状体5を一方の鋼管1に取り付け、予め他方の筒状体5を他方の鋼管1に取り付けておいてもよいし、予め両方の筒状体5,5を一方の鋼管1に取り付けておいてもよい。
【0078】
(第8の実施の形態)
図8は第8の実施の形態を示す。本実施の形態では、小径の鋼管からなる継手40が取り付けられた鋼管矢板1T,1Tは、周知の圧入工法等によって連続的に地中に並設されることで、例えば止水性が求められる土留め壁を構成する。
また、図8(a)に示すように、隣り合う鋼管矢板1T,1Tは、それぞれに設けられた継手40,40どうしが係合されることで、連結されている。継手40は鋼管矢板1Tと軸が平行な筒状に形成されており、その外周壁の一部には軸方向に延びるスリットが形成されている。そして、継手40,40はスリットを介して、互いにその一部が重なり合うようにして係合している。
【0079】
継手40,40間には、隙間S8が設けられており、この隙間S8に、継手40の長さ方向に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体15を設ける。この筒状体15の構成は第5の実施の形態における筒状体15と同一であり、その凹溝16には密着性部材17が嵌め込まれている。
【0080】
そして、図8(b)に示すように、この筒状体15を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体50とするとともに、この変形筒状体50を隣り合う継手40,40の対向する内面に密着させる。
この場合、筒状体15の凹溝16に密着性部材17が予め取り付けられているので、筒状体15を、その内部を加圧して、塑性的に拡径変形させて変形筒状体50とすることによって、密着性部材17を隣り合う継手40,40のうちの一方の継手40の内面に密着させる。
【0081】
本実施の形態によれば、係合されている継手40,40間の隙間S8に塑性的に拡径変形可能な筒状体15を設け、この筒状体15を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体50とするとともに、この変形筒状体50を係合された継手40,40に密着させるので、確実に止水を行うことができる。
また、継手40,40間の隙間S8が不均一となっていても、筒状体15の内部を加圧することによって、当該筒状体15が、隙間S8に追随して塑性的に拡径変形して、継手40に密着するとともに、塑性変形のための充填固化材が不要となる。このため、固化材の加圧注入と固化までの圧力の保持も必要なく、固化材が所定の強度を発現するための配合や練り混ぜといった管理も不要となる。
したがって、係合さている継手40,40間の隙間が不均一となるような諸々の事象に関係なく、作業や管理の負荷を軽減しつつ確実に止水を行うことができる。
【0082】
また、筒状体15の内部を加圧して、筒状体15を塑性的に拡径変形させて変形筒状体50とすることによって密着性部材17を一方の継手40に密着させるので、さらに止水性を高めることができる。
【0083】
なお、本実施の形態において、筒状体15を係合されている一方の継手40の内面に予め取り付けておいてもよい。このようにすれば、継手40,40どうしを係合すると同時に隙間S8に筒状体15を設けることができるので、施工性に優れたものとなる。また、第1の実施の形態と同様に、筒状体15を塑性的に拡径変形させ、継手40の内面に密着させても良い。
【0084】
(第9の実施の形態)
図9は第9の実施の形態を示す。本実施の形態では、鋼管1とハット形の鋼矢板21が並設され、これらが継手40,41によって連結されている。
図9(a)に示すように、継手40は鋼管1に設けられている。また、継手40は鋼管1と軸が平行な筒状に形成されており、その外周壁の一部には軸方向に延びるスリットが形成されている。
また、互いに隣り合う鋼矢板21,21どうしは、継手41,41によって連結されている。鋼管1に隣り合う鋼矢板21の一方の端部には継手41が設けられており、この継手41が鋼管1の継手40にそのスリットから挿入さることで、継手40,41どうしが係合されている。なお、継手41はその先端部に爪41aを有しており、継手41,41どうしは爪41a,41aを係合することによって連結されている。
【0085】
継手40,41間には、隙間S9が設けられており、この隙間S9に、継手41の長さ方向(図9において紙面と直交する方向)に長尺でかつ塑性的に拡径変形可能な筒状体15を設ける。筒状体15は予め継手41の先端部に溶接等によって取り付けておく。
なお、筒状体15は継手41の先端部の爪41aを切断したうえで、継手41の先端部に取付けてもよいし、継手41の先端部の爪41aを切断せずに取り付けてもよい。
そして、筒状体15が予め取り付けられた筒状体付き鋼矢板21Aを地中に埋設することによって、前記隙間S9に筒状体15を設けることができる。また、筒状体15の凹溝16には、予め密着性部材17が嵌め込まれている。
【0086】
そして、この筒状体15を、その内部を加圧することによって、塑性的に拡径変形させて変形筒状体51とするとともに、この変形筒状体51を係合している継手40,41の対向する内面に密着させる。
この場合、筒状体15の凹溝16に密着性部材17が予め取り付けられているので、筒状体15を、その内部を加圧して、塑性的に拡径変形させて変形筒状体51とすることによって、密着性部材17を継手40の内面に密着させる。また、第1の実施の形態と同様に、筒状体15を塑性的に拡径変形させ、継手40の内面に密着させても良い。
【0087】
本実施の形態によれば、第8の実施の形態と同様の効果を得ることができるとともに、鋼管1と鋼矢板21の継手40,41間の止水を容易に行うことができる。
【0088】
なお、上述した第1〜第9の実施の形態において、筒状体として、断面形状が瓢箪状やC字状のものを採用したが、筒状体の断面形状は図11に示すような様々なものを採用してもよい。
図11に示すように、筒状体55Aは断面形状がY字状であり、筒状体55Bは断面形状がX字状である。筒状体55Cは断面形状がX字状であるが、4片がそれぞれ先端部側ほど周方向の長さが長くなっている。筒状体55Dも断面形状がX字状であるが、一直線上に位置する2つの片の方が、一直線と直交する直交線上に位置する2つの片の径方向の長さが長くなっている。
筒状体55Eは断面形状がS字状、筒状体55Fは断面形状がC字状、筒状体55Gは断面形状がI字状である。筒状体55Hは断面形状がV字状であり、筒状体55Iも断面形状がV字状であるが、筒状体55Iの方が筒状体55Hより2片のなす角度が大きくなっている。
【0089】
これら筒状体55A〜55Iは、適宜選択されて、鋼矢板(鋼管矢板を含む)間の隙間の止水構造および止水方法や、継手間の隙間の止水構造および止水方法に使用される。その場合に、筒状体55A〜55Iの片どうしの交差部や、内部等に適宜密着性部材を予め取り付けておいてもよい。
【0090】
また、本実施の形態では、本発明を鋼矢板(鋼管矢板を含む)間の隙間の止水構造や、継手間の隙間の止水構造や止水方法に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限ることなく、矢板や杭等の部材間の隙間や継手間の隙間の止水構造および止水方法であれば、矢板や杭が鋼製であっても、コンクリート製のものであってもよい。また、施工方法も回転貫入杭に限ることなく、打撃工法や中掘り工法、バイブロハンマ工法などでも良い。
【符号の説明】
【0091】
1 鋼管(部材)
1T 鋼管矢板(部材)
1A 筒状体付き鋼管(筒状体付き部材)
10,20,30,31,32,50,51 変形筒状体
15 筒状体
17 密着性部材
21 鋼矢板(部材)
21A 筒状体付き鋼矢板(筒状体付き部材)
40,41 継手
55A〜55I 筒状体
S,S1,S2,S8,S9 隙間
図1
図2
図3
図4
図4A
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11