【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0053】
本実施例で用いる構成要素は以下の通りである。
【0054】
<使用した材料>
(エポキシ樹脂)
・ “jER”(登録商標)828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“エピクロン(登録商標)”Epc830(大日本インキ化学工業(株)製)
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)
・ “jER”(登録商標)145(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0600(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
(硬化剤)
・セイカキュア―S(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、セイカ(株)製)
・3,3’DAS(3、3’−ジアミノジフェニルスルホン、三井化学ファイン(株)製)
・2,2’−ジアミノジフェニルスルホンは、以下に記載する方法で調製した。
【0055】
(合成)室温下、2,2−ジアミノジフェニルスルフィド(1.1kg、5.1mol、Chengzhou Harvestchem社製)をDMF(10.1L)に溶かし、ペルオキシ一硫酸カリウム(4.7kg、7.6mol)を添加し、室温で20時間撹拌した。続いて、反応液に水(22L)、トルエン(22L)を添加し30分間撹拌した後、セライトでろ過し、ろ物をトルエン(10L)で洗浄した。ろ液を分液し、水層をトルエン(10L)で抽出した。得られた有機層を、水(10L)、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10L)、飽和食塩水(10L)の順に洗浄し、減圧濃縮し粗体を得た。
【0056】
(精製)得られた粗体をエタノール(2.5L)に溶かした後、水(0.8L)を加え、析出した固体をろ取した。続いて、ろ取した固体を酢酸エチルに溶解し、シリカゲル(150g)を加えて30分間撹拌後、150gのシリカゲル上で減圧ろ過し、ろ液を濃縮することにより粗体を得た。さらに、得られた粗体にメタノール(0.8L)を加えて30分間撹拌した後、固体をろ取し、減圧下40℃で乾燥することにより、2,2’−ジアミノジフェニルスルホン(0.43kg)を得た。
【0057】
・4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンは、以下に記載する方法で調製した。
【0058】
〔1工程目〕4,4’−ジメチル−3,3’−ジニトロジフェニルスルホンの製造工程
4,4’−ジメチルジフェニルスルホン(1.4kg、5.7mol、Aldrich社製)を濃硫酸(2.3L、4.2mol)に溶かした後、4℃まで冷却した。反応溶液の温度を11℃に保ち、4時間かけて濃硝酸(0.76L、17.1mol)を滴下した後、室温で一晩撹拌した。続いて、反応溶液を6℃まで冷却し、15℃以下を保ちつつ、氷水(1.4L)を2時間かけて添加した。沈殿した固体をろ取し、ろ物を水で洗浄した。得られた固体50℃で、減圧乾燥させることにより白色固体を1.8kg得た。得られた白色固体をクロロホルム(25L)に溶解させ、撹拌した後、ヘプタン(25L)を添加して、30分撹拌後、沈降した固体をろ取した。ろ取した固体を減圧乾燥させ、4,4’−ジメチル−3,3’−ジニトロジフェニルスルホンを1.6kg得た。
【0059】
〔2工程目〕4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンの製造工程
4,4’−ジメチル−3,3’−ジニトロジフェニルスルホン(0.55kg、1.64mol)をメタノール(5.0L)に溶解させ、系内をアルゴンガスに置換した。別の容器に、アルゴンガスで脱気したメタノール(1.0L)に、5%パラジウム炭素(0.13kg、50%wet)を添加し、パラジウム炭素の懸濁液を調製し、4,4’−ジメチル−3,3’−ジニトロジフェニルスルホンのメタノール溶液に添加し、さらにメタノール(0.6L)を加えた。続いて、反応系内を水素ガスに置換し、水素を補充しつつ2日間撹拌した。その後、反応溶液をセライトでろ過し、ろ物をメタノール(13.0L)で洗浄した。同様の操作を3回行い、メタノールを減圧留去し、固体(1.1kg)を得た。
【0060】
得られた固体を酢酸エチル(6.4L)に懸濁させ、5分間撹拌した後、ヘプタン(25.0L)を添加して20分間撹拌した。沈降した固体をろ取した後、減圧乾燥することで、4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(1.08kg)を得た。
【0061】
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ステンレスビーカー中に、硬化剤以外の成分を所定量入れ、スパチュラにて適宜混練しながら150℃まで昇温し、透明な粘調液を得た。粘調液を60℃まで降温させた後、硬化剤を配合し、60℃において30分間混練することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0062】
各実施例および比較例の成分の配合比を表に示した。
【0063】
<予備硬化体の調製方法>
前記の方法にて調製したエポキシ樹脂組成物を、アルミカップに3g程度秤量し、あらかじめ140℃に加温しておいた熱風オーブンに入れ、2時間静置した後、オーブンから取り出した後、室温まで冷却し予備硬化体を得た。
【0064】
<予備硬化体の樹脂特性の測定方法>
(1)保存安定性の評価法
予備硬化体の保存安定性は、前記の方法で得た予備硬化体をアルミカップに3g秤量し、40℃、75%RHの環境下で6日間恒温恒湿槽内に静置した後のガラス転移温度をT
1、初期(恒温恒湿槽に静置する前の予備硬化体)のガラス転移温度をT
0とした時に、ガラス転移温度の変化量をΔTg=T
1―T
0と定義し、ΔTgの値で保存安定性を判定した。ガラス転移温度の測定は、恒温恒湿槽内に静置する前の予備硬化体、および6日間静置後の予備硬化体について、それぞれ、3mgをサンプルパンに量り取り、示差走査熱量分析計(Q−2000:TAインスツルメント社製)を用い、―20℃から150℃まで5℃/分で昇温して測定した。得られた発熱カーブの変曲点の中点をガラス転移温度Tgとして求めた。
【0065】
(2)硬化度の測定法
調製したエポキシ樹脂組成物3mgをサンプルパンに量り取り、示差走査熱量分析計(Q−2000:TAインスツルメント社製)を用い、30℃から300℃まで5℃/分の等速昇温条件で測定した。発熱量は、得られたDSC曲線から、JIS K0129(1994)に従い算出した。上記と同様の方法で、予備硬化体の発熱量も測定した。予備硬化体の硬化度は、(予備硬化体の発熱量)/(エポキシ樹脂組成物の発熱量)×100から算出した。
【0066】
<樹脂硬化物の曲げ弾性率評価方法>
エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン”(登録商標)製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、140℃の温度で2時間硬化させ、室温にて24時間静置し、予備硬化体を得た。得られた予備硬化体を、220℃の温度で2時間追硬化させ、厚さ2mmの板状の樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを100mm/分として3点曲げを実施し、曲げ弾性率を測定した。サンプル数n=5で測定した値の平均値を曲げ弾性率の値とした。
【0067】
(実施例1)
エポキシ樹脂の合計を100質量部としたとき、“jER(登録商標)”828を80質量部、“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学工業(株)製)を20質量部、硬化剤として2,2’―ジアミノジフェニルを33質量部と4,4’−ジメチル−3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを4.1質量部加え、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0068】
得られたエポキシ樹脂組成物から、前記の<予備硬化体の調製方法>に従って、予備硬化体を調製した。
【0069】
得られた予備硬化体に関し、保存安定性の評価を行ったところ、40℃、75%RHにおいて6日間保存後のTgは0.7℃の上昇に留まり、予備硬化体は十分な保存安定性を有していた。また、予備硬化体の硬化度は24%であった。
【0070】
また、予備硬化体を上記方法で追硬化して樹脂硬化物を作製し、3点曲げ試験を行った結果、曲げ弾性率は3.90GPaと、機械特性も良好であった。
【0071】
(実施例2〜5)
硬化剤の添加量をそれぞれ表に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性について、実施例1と同様の評価を行った結果、いずれも良好であった。
【0072】
また、予備硬化体の硬化度は、4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンの配合比率を増やすにつれ、上昇した。具体的には、実施例2〜5における硬化度は、それぞれ、37、44、58、65%となり、4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンと2,2’−ジアミノジフェニルスルホンの配合比率と硬化度の関係が、直線性を示した。
【0073】
また、樹脂硬化物の曲げ弾性率の値は、いずれも良好であった。
【0074】
(実施例6〜10)
使用した硬化剤を、2,2’−ジアミノジフェニルスルホンと3,3’−ジアミノジフェニルスルホンとしたこと以外は、実施例1〜5と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性について、実施例1と同様の評価を行った結果、いずれも良好であった。
【0075】
硬化度に関しては、硬化剤の配合比率によって、39〜75%の間で変化した。
【0076】
また、樹脂硬化物の曲げ弾性率の値は、いずれも良好であった。
【0077】
(実施例11〜15)
使用した硬化剤を、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと4,4’−ジメチル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンとしたこと以外は、実施例1〜5と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性について、実施例1と同様の評価を行った結果、いずれも良好であった。
【0078】
硬化度に関しては、50〜74%の間の変化であり、実施例1〜5、6〜10と比べて、変化が小さいが、硬化剤の配合比率によって、硬化度を制御可能なレベルであった。
【0079】
また、樹脂硬化物の曲げ弾性率の値は3.40〜3.58GPaであった。
【0080】
(実施例16〜18)
樹脂組成を表に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性について、実施例1と同様の評価を行った結果、いずれも良好であった。予備硬化体の硬化度は表に記載の通りであった。
【0081】
また、樹脂硬化物の曲げ弾性率の値は、いずれも良好であった。
【0082】
(比較例1〜5)
使用した硬化剤を、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンと3,3’−ジアミノジフェニルスルホンとしたこと以外は、実施例1〜5と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性と硬化度についても、実施例1〜5と同様の評価を行った。
【0083】
併用した硬化剤の比率を変化させた際、硬化度の変化が51〜59%と変化量が小さいため、プリプレグに使用した場合、タック性とドレープ性の制御ができない。また、比較例4および5は、Tgの増加が大きく、保存安定性が不十分なものとなった。
【0084】
(比較例6〜10)
使用した硬化剤を、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンとトリエチレンテトラミンとしたこと以外は、実施例1〜5と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性と硬化度についても、実施例1〜5と同様の評価を行った。
【0085】
エポキシ樹脂との反応性が高いトリエチレンテトラミンを使用したため、Tg変化が大きくなり、保存安定性が著しく低下した。また、機械特性も不十分なものとなった。
【0086】
(比較例11〜15)
使用した硬化剤を、ジエチルチルエンジアミンとトリエチレンテトラミンとしたこと以外は、実施例1〜5と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、予備硬化体、および樹脂硬化物を作製した。予備硬化体の保存安定性と硬化度についても、実施例1〜5と同様の評価を行った。
【0087】
Tgの増加が著しく大きく、保存安定性が不十分であった。また、機械特性も低いものであった。
【0088】
【表1-1】
【0089】
【表1-2】
【0090】
【表2-1】
【0091】
【表2-2】
【0092】
【表3-1】
【0093】
【表3-2】
【0094】
【表4】
【0095】
なお、表中の各成分の単位は質量部である。