(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分に、前記離型剤が、前記トナー粒子中の前記離型剤の全質量に対し、60質量%以上85質量%以下存在する請求項1に記載の静電荷像現像用白色トナー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本実施形態について説明する。
なお、「質量部」及び「質量%」との記載は、それぞれ、「重量部」及び「重量%」と同義である。
【0021】
<静電荷像現像用白色トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナー(単に「白色トナー」又は「トナー」とも称する)は、結着樹脂と離型剤と白色顔料とを含むトナー粒子を有し、前記白色顔料の含有量が、前記トナー粒子全体に対して、30質量%以上であり、前記トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、前記トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分に、前記離型剤が、前記トナー粒子中の前記離型剤の全質量に対し、50質量%以上90質量%以下存在し、前記トナー粒子中における離型剤ドメインの最大フェレ径の平均が、0.05d以上0.15d以下である。
【0022】
本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、上記構成により、定着部材に対する定着画像の剥離性に優れる。この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
【0023】
白色トナーの使用方法としては、例えば、色紙、黒紙、及び、透明素材などの着色又は無色の記録媒体に白色トナー画像により下引きを行い、つまり、白色トナーで隠蔽層を形成し、その上に有色トナー画像を形成し、描画することで記録媒体の地色の影響を軽減し発色性を向上する方法がある。無論、記録媒体に、有色トナー画像と共に、白色トナー画像自体で、描画する方法もある。
【0024】
また、透明フィルム等にカラー画像を形成する際、画像の発色をより鮮やかにするため、下地に白色画像を形成する場合がある。この時、下地の白色画像には隠蔽力が求められるが、オフセット印刷やインクジェット方式では画像厚みが薄いため、下地隠蔽性が得られない場合がある。乾式電子写真法では、それらの画像形成方法より画像が厚くなるため、酸化チタンや酸化亜鉛のような白色顔料を含む白色トナーを用いて、白色画像を形成する方法が知られている。
【0025】
通常の電子写真用カラートナーは、白い紙の上に高彩度なカラー画像を再現するよう設計されており、結着樹脂には透明性が求められるとともに、カラー顔料も画像濃度を満たす最低限の量(例えば、トナー粒子全体に対し、5質量%以上10質量%以下)が添加されている。
【0026】
一方、白色トナーでは、隠蔽力及び白色度を得るために、白色着色剤、特に白色顔料の含有量を通常のカラートナーより多く設計する場合がある。この時、トナー粒子中の内包材料の分散状態が通常のトナー粒子より過密な状態になるため、定着部材からの熱が画像深部まで伝わり難く、トナー粒子内部に存在する離型剤が定着時に染み出し難くなる。
また、同じく高い隠蔽力及び白色度を達成するには、白色トナー画像の単位面積当りトナー重量(以下、「トナー載り量」又は「TMA」:toner mass areaとも称する)を通常のカラートナーよりも増量する必要があるが、高TMA画像も前記と同様に、定着部材からの熱が画像深部まで伝わり難く、トナー粒子内部に存在する離型剤が定着時に染み出し難くなる。
更に、白色顔料の含有量が通常のカラートナーより多い白色トナーでは、白色顔料により、定着時にトナーの粘度が下がり難く、定着部材からの熱が画像深部まで伝わり難い場合がある。
【0027】
また、トナー粒子において、離型剤ドメイン径が余りに小さいと十分な離型効果を得られない場合がある。
隠蔽性が求められる白色トナーにおいて、白色顔料の添加量は一般的なカラートナーより多いことが求められるが、通常のカラートナーと同様の手順で離型剤を添加しても、トナー粒子中の顔料分散構造が大きく異なるために、トナー粒子の造粒中の離型剤ドメイン形成が阻害されて、離型効果が得られない場合がある。
【0028】
そこで本実施形態においては、離型剤をできるだけ表層に寄せて定着時の染み出しを促進する最適な構造を提供する。具体的には、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーにおいて、前記トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、前記トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分に、前記離型剤が、前記トナー粒子中の前記離型剤の全質量に対し、50質量%以上90質量%以下存在させることにより、通常の白色トナーに比べてトナー粒子の表層付近に多くの離型剤が存在することから、定着時により少ない熱量や圧力で離型剤が染み出し、十分な剥離性能を得ることができる。定着時における離型剤の染み出し易さが向上するし、高速機によりトナー載り量の多い画像を定着する場合であっても、定着部材に対する定着画像の剥離性が十分確保される。
なお、離型剤をできるだけ表層に寄せることにより、通常のカラートナーに比べて、画像中に、トナー粒子の表層部分より形成される白色顔料の存在しない空白領域を最小化し、かつ定着時の染み出しを促進する最適な構造が得られる。
【0029】
また、本実施形態においては、高い隠蔽性を実現するため、白色顔料のトナー粒子中の内添量を30質量%以上とする。更に、個々の離型剤ドメインの最大フェレ径が、平均でトナーの体積平均粒径の0.05倍以上0.15倍以下となるよう制御することで、少ない離型剤量で離形効果を発現し、定着部材に対する定着画像の剥離性に優れる。
【0030】
以下、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーの詳細について説明する。
【0031】
本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分に、離型剤が、前記トナー粒子中の離型剤の全質量に対し、50質量%以上90質量%以下存在し、定着部材に対する定着画像の剥離性、及び、トナー粒子の造粒性の観点から、55質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、65質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
また、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、定着部材に対する定着画像の剥離性の観点から、前記表面からの距離が0.050d以下の部分に、離型剤が前記範囲の量存在することが好ましい。
【0032】
また、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、トナー粒子中における離型剤ドメインの最大フェレ径の平均が、0.05d以上0.15d以下である。
なお、本実施形態における「最大フェレ径」とは、2本の平行線で挟まれた粒子図形の最大の距離である。
前記離型剤ドメインの最大フェレ径の平均は、定着部材に対する定着画像の剥離性の観点から、0.08d以上0.15d以下であることが好ましく、0.10d以上0.15d以下であることがより好ましい。
【0033】
本実施形態において、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分の離型剤の量、及び、トナー粒子中における離型剤ドメインの最大フェレ径の平均は、下記方法により確認するものとする。
まず、トナー粒子をビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と硬化剤を用いて包埋したのち、切削用サンプルを作製する。次にダイヤモンドナイフを用いた切削機、例えばLEICAウルトラミクロトーム((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて−100℃の下、切削サンプルを切削し、観察用サンプルを作製する。更に、この観察用サンプルを四酸化ルテニウム雰囲気下となっているデシケーター内に放置し、染色を行う。染色の判断は、同時に放置したテープの染色具合により判断する。この様にして染色された観察サンプルを走査型透過電子顕微鏡(STEM)により観察する。
なお、トナーサンプルは四酸化ルテニウムで染色されているため、結着樹脂部分(離型剤及び着色剤以外の領域)や離型剤の部分が、染色の濃淡の違いや形状から判別される。トナー内部の棒状、塊状に存在し、より白いコントラストの部分を離型剤と判断する。
前記観察サンプルのトナー粒子の断面において、画像処理ソフトでトナー粒子20個を抽出し、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、トナー粒子中の全離型剤の面積量に対して、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分の離型剤の面積割合を測定し、平均値で示す。
また、前記観察サンプルのトナー粒子の断面において、画像処理ソフトでトナー粒子20個を抽出し、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合におけるトナー粒子中における離型剤ドメインの最大フェレ径を測定し、平均値で示す。
【0034】
また、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0035】
トナー粒子の体積平均粒径(d、D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0036】
本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0037】
(トナー粒子)
トナー粒子は、結着樹脂と、離型剤と、白色顔料と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0038】
−白色顔料−
白色顔料として具体的には、例えば、無機顔料(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、及び、スメクサイト等)、有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、及び、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
白色顔料は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
白色顔料は、必要に応じて表面処理された白色顔料を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。
【0040】
白色顔料の含有量としては、トナー粒子全体に対して、30質量%以上であり、得られる画像の隠蔽性及び白色度、並びに、トナー粒子の造粒性の観点から、30質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上55質量%以下がより好ましく、32質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
【0041】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0043】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0044】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0045】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0048】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0049】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0050】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0051】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,14−エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0054】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下が更に好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0055】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0056】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0057】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0058】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0059】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0060】
離型剤の含有量としては、定着部材に対する定着画像の剥離性、トナーの帯電性及び粉体特性の観点から、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上10質量%以下がより好ましく、3質量%以上8質量%以下が特に好ましい。
【0061】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0062】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0063】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0064】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA−2100)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0065】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)
n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0066】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0067】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0068】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0069】
<静電荷像現像用白色トナーの製造方法>
本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーの製造方法は、本実施形態に係る白色トナーを製造する方法であれば、特に制限はないが、凝集合一法により製造する方法であることが好ましい。
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
樹脂粒子分散液と白色顔料粒子分散液を少なくとも混合して凝集し第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と;
第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液と、樹脂粒子分散液と、離型剤粒子分散液とを混合し、第1凝集粒子の表面に樹脂粒子及び離型剤粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と;
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を加熱し、第2凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と;
を含む製造方法であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得ることがよい。すなわち、本実施形態に係る静電荷像現像用白色トナーの製造方法は、前記トナー粒子に外添剤を外添する工程を更に含むことが好ましい。
【0070】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、白色顔料、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、白色顔料、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、白色顔料、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0071】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、白色顔料粒子が分散された白色着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0072】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0073】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0076】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0077】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0078】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、白色着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、白色着色剤粒子分散液中に分散する白色着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0079】
−第1凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と、白色顔料分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と白色顔料粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と白色顔料粒子とを含む第1凝集粒子を形成する。
なお、必要に応じて離型剤粒子分散液も混合し、第1凝集粒子に離型剤粒子を含ませてもよい。
【0080】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、ポリエステル樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、樹脂のガラス転移温度の−30℃以上且つガラス転移温度の−10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで撹拌下、室温(例えば25℃)で凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、加熱を行ってもよい。
【0081】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に含まれる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。凝集剤として金属錯体を用いた場合には、凝集剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤と共に、該凝集剤の金属イオンと錯体又は類似の結合を形成する添加剤を用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0082】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0083】
−第2凝集粒子形成工程−
第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、第1凝集粒子分散液と、樹脂粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を更に混合する。樹脂粒子分散液と離型剤粒子分散液とは予め混合しておき、この混合液を第1凝集粒子分散液に混合してもよい。
【0084】
そして、第1凝集粒子、樹脂粒子、及び離型剤粒子が分散された混合分散液中で、第1凝集粒子の表面に樹脂粒子及び離型剤粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する。
【0085】
具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された分散液を混合する。次いで、この混合分散液を、樹脂のガラス転移温度以下で加熱し、混合分散液のpHを例えば6.5以上8.5以下程度の範囲に調整し、凝集の進行を停止させる。
【0086】
これにより、第1凝集粒子の表面に樹脂粒子及び離型剤粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0087】
−融合・合一工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を、例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上(例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度より10℃乃至50℃高い温度以上)に加熱して、第2凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0088】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、当該第2凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、を更に混合し、第2凝集粒子の表面に更に樹脂粒子を付着するように凝集して、第3凝集粒子を形成する工程と、第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して加熱をし、第3凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0089】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0090】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0091】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0092】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0093】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0094】
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0095】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0096】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0097】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0098】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0099】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0100】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0101】
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る白色トナー(ホワイトトナー)に加えて、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー及びブラックトナーよりなる群から選ばれる少なくとも一つを更に用いる画像形成装置であってもよい。
【0102】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0103】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図であり、5連タンデム方式且つ中間転写方式の画像形成装置を示す図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、白色(W)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第5の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K、10W(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10K、10Wは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10K、10Wは、画像形成装置に対して着脱されるプロセスカートリッジであってもよい。
【0104】
各ユニット10Y、10M、10C、10K、10Wの下方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20の内面に接する、駆動ロール22、支持ロール23、及び対向ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第5のユニット10Wに向う方向に走行するようになっている。中間転写ベルト20の像保持面側には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置21が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10K、10Wの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4K、4Wのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8K、8Wに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、白色の各トナーの供給がなされる。
【0105】
第1乃至第5のユニット10Y、10M、10C、10K、10Wは、同等の構成、動作、及び作用を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエローの画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0106】
第1ユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線によって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3Y、静電荷像にトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール(一次転写手段の一例)5Y、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5K、5Wには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0107】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエローの画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3Yからレーザ光線を照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0108】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、露光装置3Yからのレーザ光線によって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線が照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0109】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0110】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、第1ユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0111】
第2ユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5K、5Wに印加される一次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第5のユニット10M、10C、10K、10Wを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0112】
第1乃至第5のユニットを通して5色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する対向ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが対向ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0113】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0114】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性を更に向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0115】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0116】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0117】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0118】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0119】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0120】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0121】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8K、8Wが着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4K、4Wは、各々の色に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。本実施形態に係るトナーカートリッジの一例が、トナーカートリッジ8Wである。
【実施例】
【0122】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
【0123】
[結晶性ポリエステル樹脂(その粒子分散液)の調製]
−結晶性ポリエステル樹脂の合成−
加熱乾燥した三口フラスコに、1,12−ドデカンジカルボン酸266部、及び、1,10−デカンジオール169部と、触媒としてテトラブトキシチタネートを0.035部を入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、更に窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて220℃まで徐々に昇温を行い2.5時間撹拌し、粘稠な状態となったところで樹脂酸価を測定し、樹脂酸価が15.0mgKOH/gになったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル樹脂を得た。
得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)を前述の方法にて測定したところ13,000であった。また、得られた結晶性ポリエステル樹脂の融解温度を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ73℃であった。
次に、得られた結晶性ポリエステル樹脂を180部、及び、脱イオン水585部をステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて8,000rpmで撹拌し、同時に希アンモニア水を添加しpHを7.0に調整した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンR)0.8部を希釈した水溶液20部を滴下しながら、乳化分散を行い、体積平均粒子径が0.23μmの結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(樹脂粒子濃度:40質量%)を調製した。
【0124】
[非晶性ポリエステル樹脂(その粒子分散液)の調製]
加熱乾燥した二口フラスコに、アジピン酸ジメチル74部、テレフタル酸ジメチル192部、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物216部、エチレングリコール38部と、触媒としてテトラブトキシチタネート0.037部とを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した後、160℃で約7時間共縮重合反応させ、その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し4時間保持した。一旦常圧(大気圧、以下同様)に戻し、無水トリメリット酸9部を加え、再度10Torrまで徐々に減圧し1時間保持することにより非晶性ポリエステル樹脂を合成した。なお、1Torr=(101,325/760)Paである。
得られた非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度を、前述の測定方法により示差走査熱量系(DSC)を用いて測定したところ、60℃であった。得られた非晶性ポリエステル樹脂の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は12,000であった。また、得られた非晶性ポリエステル樹脂の酸価を測定したところ、25.0mgKOH/gであった。
次に、得られた非晶性ポリエステル樹脂を115部と、脱イオン水180部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンR)5部とを混合して120℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行うことにより、非晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(樹脂粒子濃度:40質量%)を調整した。
【0125】
[着色剤分散液の調製]
(白色顔料分散液W1の調製)
・白色顔料(酸化チタン、石原産業(株)製A−220、一次粒径0.16μm):100部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンR):15部
・イオン交換水:400部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約3時間分散して、白色着色剤分散液W1を調製した。
得られた白色顔料分散液W1における着色剤(酸化チタン)の体積平均粒子径を、レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒子径は0.240μmであった。また、白色顔料分散液の固形分比率は23質量%であった。
【0126】
[離型剤粒子分散液の調製]
フィッシャートロプシュワックスFNP92(融解温度92℃:日本精蝋(株)製)90部と、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンR)3.6部と、イオン交換水360部とを混合し、100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)にて十分分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。得られた離型剤粒子分散液内における離型剤粒子の体積平均粒子径を、レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒子径は0.23μmであった。また、離型剤粒子分散液の固形分比率は20質量%であった。
離型剤をパラフィンワックスHNP9(融解温度72℃:日本精蝋(株)製)に変更した以外は同様の方法で、離型剤粒子分散液2を得た。
【0127】
[白色トナーの作製]
(白色トナー1の作製)
結晶性ポリエステル樹脂分散液を35.6部と、非晶性ポリエステル樹脂分散液を324.4部と、白色顔料分散液W1を525部と、離型剤粒子分散液を30.0部と、イオン交換水を612.8部と、を丸型ステンレス製フラスコ中に入れて、希釈した硝酸で系内のpHを5.0に調整し、ウルトラタラックスT50で十分に混合及び分散した。
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.36部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。更に加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら50℃に加熱し、凝集体の体積平均粒子径が6.2μmになるまで凝集させた。この凝集体スラリーの温度を保ったまま、非晶性ポリエステル樹脂分散液120部、離型剤粒子分散液60.0部、イオン交換水60.0部の混合溶液を緩やかに追加して30分保持した。
その後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、所望の粒子形状となるまで保持した。
この合一スラリーを冷却し、20μmのナイロン網で濾した後、吸引濾過器でケーキを形成してイオン交換水で十分にケーキ洗浄を行った。この洗浄ケーキをバットに移し、真空乾燥機で水分率が1%以下になるまで乾燥し、白色トナー粒子1を得た。
得られた白色トナー粒子1の体積平均粒径は6.7μmであった。
【0128】
得られた白色トナー粒子100部に対して、疎水性シリカ粒子(日本アエロジル(株)製:RY−50)1部を加え、ヘンシェルミキサーで撹拌周速30m/secで15分間混合し、白色トナーを得た。
【0129】
(白色トナー2〜10の作製)
後述する表1に従い、白色トナー1と同様の手順で離型剤の配合を変化させて造粒し、白色トナー2〜10を得た。白色トナー4については、離型剤粒子分散液2を使用した。
なお、表1におけるコアの離型剤配合比は、凝集初期に添加する離型剤量で、トナー質量を100質量%とした場合の割合を示す。また、表1におけるシェルの離型剤配合比は、凝集スラリーに追添加する混合液中の離型剤量で、同じくトナー質量を100質量%とした場合の割合を示す。
【0130】
表1における離型剤の特定範囲の含有比率は、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下又は0.050d以下の部分における、トナー粒子中の離型剤の全面積に対する離型剤の面積比率を表し、前述した測定方法により測定した。
また、表1における離型剤ドメインの最大フェレ径の平均は、トナー粒子中における離型剤ドメインの最大フェレ径の平均を表し、前述した測定方法により測定した。
造粒性評価は、最終的に問題なくトナー粒子が得られたものをA(○)、造粒過程で粒度分布が著しく悪化した場合、固液分離した際のろ液が明らかに着色した場合をD(×)とした。
【0131】
[現像剤の作製]
トルエン1.25部にカーボンブラック(商品名;VXC−72、キャボット社製)0.12部を混合し、サンドミルで20分撹拌分散したカーボン分散液に、3官能性イソシアネート80%酢酸エチル溶液(タケネートD110N、武田薬品工業(株)製)1.20部を混合撹拌したコート剤樹脂溶液と、Mn−Mg−Srフェライト粒子(体積平均粒径:35μm)をニーダーに投入し、常温(25℃)で5分間混合撹拌した後、常圧にて150℃まで昇温し溶剤を留去した。更に30分混合撹拌後、ヒーターの電源を切り50℃まで撹拌しながら降温した。得られたコートキャリアを75μmメッシュで篩分し、キャリアを作製した。
このキャリア95部と、得られた各トナー8部とをVブレンダーにて混合し、各色の現像剤を得た。
【0132】
[実施例1〜6、及び、比較例1〜4]
表1に従って、富士ゼロックス(株)製「700Digital Color Press改造機(定着装置設定温度及びトナー現像量を変更できるように改造)を用いて評価を行った。
【0133】
表1における剥離性評価は、普通紙にトナー載り量8g/m
2のベタ画像を印刷し、その直後に定着器に白紙を1枚通紙して定着部材へのオフセットを紙へ移行させる方法で行った。剥離性の判断基準は、定着温度200℃でホットオフセットが生じないものをA(◎)、定着画像では判別できないが、通紙した紙に目視で判別できるレベルのオフセットが認められたものをB(○)、定着画像が目視で判別できるレベルの欠損が生じたものをC(△)とした。
【0134】
表1における白色度は、上記のように黒紙に180℃で定着したベタ画像を明るい同一光源の下で観察し、目視によりグレード付けで評価した。評価基準は以下の通りである。
A:明るく良好な白色度である。
B:十分な白色度である。
C:僅かにくすんだ白に見える。
D:下地の黒がうっすらと認識される。
E:下地の黒がはっきりと認識され、許容できない。
【0135】
【表1】
【0136】
なお、表1における白色顔料の含有量は、トナー粒子全体に対する白色顔料の含有量であり、また、離型剤の特定範囲(0.075d以下)の含有比率(%)は、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.075d以下の部分に存在する、前記トナー粒子中の前記離型剤の全質量に対する離型剤の含有比率(%)であり、離型剤の特定範囲(0.050d以下)の含有比率(%)は、トナー粒子の体積平均粒径をdとした場合、トナー粒子の表面から重心方向における前記表面からの距離が0.050d以下の部分に存在する、前記トナー粒子中の前記離型剤の全質量に対する離型剤の含有比率(%)である。
また、比較例3における剥離性評価は、比較例3におけるトナー粒子の造粒性が非常に悪く、白色トナーが得られず、評価できなかったことを表す。
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、定着部材に対する定着画像の剥離性に優れることがわかる。