(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776901
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ制御方法および電磁ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/04 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
H02P3/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-1478(P2017-1478)
(22)【出願日】2017年1月7日
(65)【公開番号】特開2018-113738(P2018-113738A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真也
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−012418(JP,U)
【文献】
国際公開第2014/174633(WO,A1)
【文献】
特開2011−236019(JP,A)
【文献】
実開昭49−012417(JP,U)
【文献】
特開平10−248282(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0069567(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機を制動する電磁ブレーキと、
電源から前記電磁ブレーキへブレーキ電流を供給するブレーキ電流回路と、
前記ブレーキ電流回路におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えるリレーと、
前記リレーをサージ電圧から保護する保護回路と、
前記ブレーキ電流を制御する電流制御手段と、
前記リレーおよび前記電流制御手段を制御するコントローラと、を備え、
前記ブレーキ電流の通電により前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流の遮断により前記電磁ブレーキを作動させる電磁ブレーキ制御方法において、
前記コントローラと接続されたブレーキスイッチがオンになったとき前記ブレーキ電流の通電を開始し、
前記ブレーキ電流の通電開始から前記ブレーキ電流を上昇させて前記電磁ブレーキの作動を解除し、
前記ブレーキ電流が予め設定した目標電流値に達した後又は前記ブレーキ電流の通電開始から予め設定した設定時間が経過した後、
前記ブレーキ電流を前記電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させ、
前記ブレーキ電流を前記設定電流値に保ち、
前記コントローラは、前記ブレーキ電流の通電開始から前記設定電流値に低下するまでの間では、前記リレーによる前記ブレーキ電流の遮断を禁止することを特徴とする電磁ブレーキ制御方法。
【請求項2】
前記コントローラは、前記設定時間の経過後、前記ブレーキ電流を予め設定した前記設定電流値まで低下させることを特徴とする請求項1記載の電磁ブレーキ制御方法。
【請求項3】
前記コントローラは、ブレーキスイッチのオン信号およびアクセルセンサのオン信号により前記ブレーキ電流の通電を開始することを特徴とする請求項1又は2記載の電磁ブレーキ制御方法。
【請求項4】
回転電機を制動する電磁ブレーキと、
電源から前記電磁ブレーキへブレーキ電流を供給するブレーキ電流回路と、
前記ブレーキ電流回路におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えるリレーと、
前記リレーをサージ電圧から保護する保護回路と、
前記ブレーキ電流を制御する電流制御手段と、
前記リレーおよび前記電流制御手段を制御するコントローラと、を備え、
前記ブレーキ電流の通電により前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流の遮断により前記電磁ブレーキを作動させる電磁ブレーキ制御装置において、
前記コントローラは、前記コントローラと接続されたブレーキスイッチがオンになったとき前記ブレーキ電流の通電を開始し、
前記ブレーキ電流の通電開始から前記ブレーキ電流を上昇させて前記電磁ブレーキの作動を解除し、
前記ブレーキ電流が予め設定した目標電流値に達した後又は前記ブレーキ電流の通電開始から予め設定した設定時間が経過した後、
前記ブレーキ電流を前記電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させ、
前記ブレーキ電流を前記設定電流値に保ち、
前記ブレーキ電流の通電開始から前記設定電流値に低下するまでの間では、前記リレーによる前記ブレーキ電流の遮断を禁止することを特徴とする電磁ブレーキ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動モータ等の回転電機の制動を制御する電磁ブレーキ制御方法および電磁ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁ブレーキ制御方法および電磁ブレーキ制御装置としては、例えば、特許文献1に開示された無励磁作動ブレーキの励磁制御回路を挙げることができる。特許文献1に開示された無励磁作動ブレーキの励磁制御回路には、モータの通電電流を検出する電流検出手段と、電流検出手段の出力に応じて発光信号を形成する発光手段と、発光手段からの発光信号を受信する受光手段が備えられている。さらに、無励磁作動ブレーキの励磁制御回路にはブレーキ通電回路が備えられている。ブレーキ通電回路は、スイッチング素子を有し、受光手段が発光信号を受信したとき、スイッチング素子をオンさせて無励磁作動ブレーキにブレーキ解除電流を供給する。特許文献1に開示された無励磁作動ブレーキの励磁制御回路は、電磁接触器による交流モータの電源オン・オフに伴って電源オフ時にモータに取り付けられた無励磁作動ブレーキを作動させ、また電源オン時に無励磁作動ブレーキを解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−229388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された無励磁作動ブレーキの励磁制御回路では、無励磁作動ブレーキに供給するブレーキ解除電流はモータの通電電流に依存している。このため、例えば、モータの通電電流がオフになると、ブレーキ解除電流が直ちに立ち下り、ブレーキが作動するという問題がある。また、ブレーキ解除電流は、三相交流のモータの通電電流の周波数に応じて電界効果トランジスタ(FET)ではチョッパされて供給されるため、変流器とフォトカプラの特性によりブレーキ解除電流の多寡が規定される。従って、ブレーキ解除電流が不足すると無励磁作動ブレーキを解除できないおそれがある。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、モータの通電電流に依存することがないほか、ブレーキ電流をオン、オフさせるリレーの保護と省電力化を可能とする電磁ブレーキ制御方法および電磁ブレーキ制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、回転電機を制動する電磁ブレーキと、電源から前記電磁ブレーキへブレーキ電流を供給するブレーキ電流回路と、前記ブレーキ電流回路におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えるリレーと、前記リレーをサージ電圧から保護する保護回路と、前記ブレーキ電流を制御する電流制御手段と、前記リレーおよび前記電流制御手段を制御するコントローラと、を備え、前記ブレーキ電流の通電により前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流の遮断により前記電磁ブレーキを作動させる電磁ブレーキ制御方法において、前記コントローラと接続されたブレーキスイッチがオンになったとき前記ブレーキ電流の通電を開始し、前記ブレーキ電流の通電開始から前記ブレーキ電流を上昇させて前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流が予め設定した目標電流値に達した後又は前記ブレーキ電流の通電開始から予め設定した設定時間が経過した後、前記ブレーキ電流を前記電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させ、前記ブレーキ電流を前記設定電流値に保
ち、前記コントローラは、前記ブレーキ電流の通電開始から前記設定電流値に低下するまでの間では、前記リレーによる前記ブレーキ電流の遮断を禁止することを特徴とする。
【0007】
本発明では、ブレーキ電流が通電開始され、ブレーキ電流の上昇時に電磁ブレーキの作動が解除される。電磁ブレーキの作動が解除された後に電流値が目標電流値に達した後又はブレーキ電流の通電開始から予め設定した設定時間の経過後に、ブレーキ電流は予め設定した設定電流値まで低下され、設定電流値に保たれる。設定電流値は、電磁ブレーキの作動の解除が継続可能な電流値である。設定電流値は、目標電流値又は設定時間における最高電流値と比較して低いことから、設定電流値に保たれる状態から電磁ブレーキの作動のためにブレーキ電流の通電を遮断しても、サージ電圧は抑制されてリレーを保護しやすくなるほか、保護回路における発熱を防止することができる。また、モータの通電電流に依存することがない。また、設定電流値が低いことから省電力化を実現している。
【0008】
また
、ブレーキ電流が設定電流値よりも高い電流値のときに、ブレーキ電流の遮断ができないため、リレーを確実に保護することができる。
【0009】
また、上記の電磁ブレー
キ制御方法において、前記コントローラは、前記設定時間の経過後、前記ブレーキ電流を予め設定した前記設定電流値まで低下させるようにしてもよい。
この場合、設定時間が経過するまでにブレーキ電流は、電磁ブレーキの作動を解除する電流値まで上昇するから、電流値を検出することなく電磁ブレーキの作動を確実に解除することができる。
【0010】
また、上記の電磁ブレー
キ制御方法において、前記コントローラは、ブレーキスイッチの
オン信号およびアクセルセンサのオン信号により前記ブレーキ電流の通電を開始するようにしてもよい。
この場合、電磁ブレーキの作動の解除は、ブレーキスイッチの
オン信号だけでなくアクセルセンサのオン信号を必要とするため、例えば、ブレーキペダルを踏むだけでは電磁ブレーキの作動は解除されることがない。
【0011】
また、本発明は、回転電機を制動する電磁ブレーキと、電源から前記電磁ブレーキへブレーキ電流を供給するブレーキ電流回路と、前記ブレーキ電流回路におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えるリレーと、前記リレーをサージ電圧から保護する保護回路と、前記ブレーキ電流を制御する電流制御手段と、前記リレーおよび前記電流制御手段を制御するコントローラと、を備え、前記ブレーキ電流の通電により前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流の遮断により前記電磁ブレーキを作動させる電磁ブレーキ制御装置において、前記コントローラは、前記コントローラと接続されたブレーキスイッチがオンになったとき前記ブレーキ電流の通電を開始し、前記ブレーキ電流の通電開始から前記ブレーキ電流を上昇させて前記電磁ブレーキの作動を解除し、前記ブレーキ電流が予め設定した目標電流値に達した後又は前記ブレーキ電流の通電開始から予め設定した設定時間が経過した後、前記ブレーキ電流を前記電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させ、前記ブレーキ電流を前記設定電流値に保
ち、前記ブレーキ電流の通電開始から前記設定電流値に低下するまでの間では、前記リレーによる前記ブレーキ電流の遮断を禁止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モータの通電電流に依存することがないほか、ブレーキ電流をオン、オフさせるリレーの保護と省電力化を可能とする電磁ブレーキ制御方法および電磁ブレーキ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ制御装置のブレーキ電流と時間との関係を示すグラフ図である。
【
図3】別例に係る電磁ブレーキ制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る電磁ブレーキ制御装置および電磁ブレーキ制御方法について図面を参照して説明する。本実施形態の電磁ブレーキ制御装置は、産業車両としての電動フォークリフトに適用した例である。特に、ブレーキペダルの踏み込みにより電磁ブレーキの作動が解除されるリーチフォークリフトに適用した電磁ブレーキ制御装置および電磁ブレーキ制御方法の例である。
【0015】
図1に示す電磁ブレーキ制御装置10の電気的構成について説明する。電磁ブレーキ制御装置10は、回転電機としての電動モータ11を制動する電磁ブレーキ12を備えている。電磁ブレーキ12は、電動モータ11と機械的に連結されている。電磁ブレーキ12が作動している状態(ブレーキオン)では電動モータ11は制動され、電磁ブレーキ12が作動されない解除の状態(ブレーキオフ)では、電動モータ11は駆動可能である。図示はしないが電磁ブレーキ12はコイル成分であるソレノイドを有している。
【0016】
電磁ブレーキ12は、ブレーキ電流回路13により電源としてのバッテリ14と接続されている。バッテリ14はブレーキ電流回路を13介して電磁ブレーキ12にブレーキ電流を供給する。バッテリ14は直流電力を蓄えることが可能であり、充放電可能な二次電池である。ブレーキ電流回路13では、ダイオード15が電磁ブレーキ12と並列接続されている。ダイオード15はブレーキ電流の通電により電磁ブレーキ12のコイル成分であるソレノイドに蓄えられた電磁エネルギーを吸収するフライホイールダイオードである。ブレーキ電流はバッテリ14から電磁ブレーキ12へ通電される電流である。
【0017】
ブレーキ電流回路13は、ブレーキ電流回路13におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えるリレーとしての第1スイッチング素子16を備えている。第1スイッチング素子16は半導体リレーであり、具体的には、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。第1スイッチング素子16のオン・オフのスイッチング動作により、ブレーキ電流回路13におけるブレーキ電流の通電と遮断を切り換えが行われる。第1スイッチング素子16はコントローラ17と接続されており、コントローラ17は、第1スイッチング素子をオン・オフのスイッチング動作をさせるための駆動電圧を第1スイッチング素子16のゲート端子に出力する。ブレーキ電流が電磁ブレーキ12に通電されることにより電磁ブレーキ12は解除され、電動モータ11の制動は解除される。ブレーキ電流が遮断されることにより、電磁ブレーキ12は作動され、電動モータ11は制動される。
【0018】
第1スイッチング素子16と並列に保護回路18が接続されている。保護回路18は、第1スイッチング素子16によるスイッチング動作の際に発生するサージ電圧から第1スイッチング素子16を保護するための回路である。保護回路18は、具体的には、ツェナーダイオード又はバリスタが用いられている。
【0019】
ブレーキ電流回路13は、電流制御手段としての第2スイッチング素子19を備えている。第2スイッチング素子19はコントローラ17と接続されており、電磁ブレーキ12へ通電するブレーキ電流をデューティ制御する。具体的には、第2スイッチング素子19は、コントローラ17から第2スイッチング素子19のゲート端子へ出力されるPWM信号に基づいてオン・オフのスイッチング動作を行う。ブレーキ電流の通電のオン・オフのスイッチング動作におけるデューティ比はオンの時間割合である。コントローラ17は電磁ブレーキ12へ通電されるブレーキ電流が必要な電流値となるようにデューティ比を決定する。
【0020】
ところで、コントローラ17は、ブレーキペダル(図示せず)に設けたブレーキペダルスイッチ20と接続されている。ブレーキペダルはフォークリフトの運転席の床面に設けられている。ブレーキペダルスイッチ20のオン信号・オフ信号はコントローラ17へ伝達される。ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキペダルスイッチ20からのオン信号がコントローラ17に伝達されると、コントローラ17は第1スイッチング素子16および第2スイッチング素子19を制御し、ブレーキ電流を電磁ブレーキ12に通電する。電磁ブレーキ12へのブレーキ電流の通電により、電磁ブレーキ12は解除される。コントローラ17は、電磁ブレーキ12の作動の解除に必要なブレーキ電流を得るために必要なデューティ比を決定し、第2スイッチング素子19はPWM信号に基づくデューティ制御によりブレーキ電流の電流値を制御する。
【0021】
逆に、ブレーキペダルの踏み込みが解除されてブレーキペダルスイッチ20からのオフ信号がコントローラ17に伝達されると、コントローラ17は第1スイッチング素子16を制御し、電磁ブレーキ12へのブレーキ電流の通電を遮断する。電磁ブレーキ12へのブレーキ電流の通電の遮断により、電磁ブレーキ12は作動されて電動モータ11を制動する。
【0022】
コントローラ17は、アクセルレバー(図示せず)に設けたアクセルセンサ21と接続されている。アクセルレバーはフォークリフトの運転席に設けられている。アクセルセンサ21は、アクセルレバーの操作量に応じた信号をコントローラ17へ伝達する。アクセルレバーの位置がフォークリフトを前進させる位置(以下「前進位置」)および後進させる位置(以下「後進位置」)に操作されている場合には操作量に応じた信号を発信する。アクセルレバーが中立位置に位置させるときに信号は発進されない。
【0023】
本実施形態では、ブレーキペダルが踏み込まれ、かつ、アクセルレバーが前進位置又は後進位置に操作されているときに、コントローラ17がブレーキ電流を電磁ブレーキ12へ通電するように設定されている。従って、アクセルレバーを前進位置又は後進位置となるように操作せず、ブレーキペダルを踏み込んだだけでは、ブレーキ電流は電磁ブレーキ12へ通電されない。また、アクセルレバーを中立位置に戻すだけでは、ブレーキ電流の通電は遮断されず、アクセルレバーが中立位置に位置するとともにブレーキペダルの踏む込みが解除された場合にブレーキ電流の通電が遮断されるように設定されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る電磁ブレーキ制御方法について説明する。フォークリフトは予め停止している状態である。オペレータが搭乗してブレーキペダルを踏み込み、アクセルレバーを前進位置へ操作すると、コントローラ17と接続されたブレーキペダルスイッチ20がオンになり、アクセルレバーの操作量に応じたアクセルセンサ21の信号がコントローラ17に伝達される。
【0025】
ブレーキペダルスイッチ20のオン信号とアクセルセンサ21の信号がコントローラ17に伝達されたとき、コントローラ17は、第1スイッチング素子16を制御してブレーキ電流の通電を開始するとともに、PWM信号により第2スイッチング素子19を制御する。第2スイッチング素子19は、PWM信号に基づくデューティ制御により電磁ブレーキ12へ通電するブレーキ電流を通電開始T0から上昇させる。
図2に示すように、ブレーキ電流の通電開始T0から時間T1までブレーキ電流が上昇すると、ブレーキ電流の上昇過程にて電磁ブレーキ12の作動が解除される電流値IAを超え、電磁ブレーキ12の作動が解除される。電磁ブレーキ12の作動が解除されることによりフォークリフトはアクセルレバーの操作量に応じた速度にて走行を開始する。時間T1ではブレーキ電流が予め設定した目標電流値I1に達する。
【0026】
ブレーキ電流が予め設定した目標電流値I1に達した後は、ブレーキ電流は増減せず時間T2まで目標電流値I1を保つ。コントローラ17には、通電開始T0から時間T2までの時間が設定時間P0として予め設定されて記憶されている。従って、設定時間P0が経過して時間T2に達するとコントローラ17の指令によりブレーキ電流は低下し始め、時間T3に達するまで低下する。時間T3に達すると、ブレーキ電流は電流値I2まで低下しているが、電流値I2は電磁ブレーキ12の作動の解除を継続可能とする下限の電流値IBより高い。このため、電磁ブレーキ12の解除は維持される。時間T3以降、ブレーキ電流は電流値I2に保つ。電流値I2は、電磁ブレーキ12の作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値に相当する。電磁ブレーキ12の作動を解除後に解除を継続する下限の電流値IBは、電磁ブレーキ12の作動を解除する電流値IAより小さい。電流値I2は電流値IBより高ければ、電流値IAより低くてもよい。因みに、本実施形態では、設定電流値I2は目標電流値I1の約1/3である。
【0027】
図2では、通電開始T0から時間T3までの期間P1と、時間T3以降の期間P2が設定されている。期間P1は、電磁ブレーキ12の仕様に依るものの1秒〜数秒で設定可能であり、本実施形態では約1秒に設定されている。期間P2はアクセルレバーやブレーキペダルの操作の有無に応じて変動し、ブレーキペダルが踏み込まれている限り継続する。コントローラ17には、期間P1が予め記憶されている。コントローラ17は、ブレーキ電流の通電開始T0から電流値I2に低下するまでの間である期間P1では、第1スイッチング素子16によるブレーキ電流の遮断を禁止し、期間P2では、第1スイッチング素子16によるブレーキ電流の遮断を許可する。従って、期間P1では電磁ブレーキ12の解除が継続されるため、電動モータ11の制動は不可能である。
【0028】
期間P1におけるブレーキ電流は、設定電流値である電流値I2より殆ど高い電流値となっている。因みに、ブレーキ電流が高い電流値の状態でブレーキ電流を遮断すると、第1スイッチング素子16、コントローラ17および保護回路18に過度の発熱が生じてしまうおそれがある。そのため、コントローラ17が期間P1ではブレーキ電流の遮断を禁止し、期間P2にてブレーキ電流の遮断を許可するように設定されている。なお、期間P1はフォークリフトの停止状態から走行開始のタイミングにあり、走行開始直後の低速時に電磁ブレーキ12を作動する必要性は殆どない。期間P1は約1秒であるため、期間P1経過直後の期間P2にてブレーキ電流の遮断を行うことで十分であると考えられる。さらに言うと、期間P1において電動モータ11の制動を必要とする場合、電動モータ11の回生による制動力を利用することが可能である。
【0029】
本実施形態の電磁ブレーキ制御装置10および電磁ブレーキ制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)ブレーキ電流が通電開始され、ブレーキ電流の上昇時に電磁ブレーキ12の作動が解除される。電磁ブレーキ12の作動が解除され、予め設定した設定時間P0の時間の経過後に、ブレーキ電流は予め設定した設定電流値I2まで低下され、設定電流値I2に保たれる。設定電流値I2は、電磁ブレーキ12の作動の解除が継続可能な電流値である。設定電流値I2は、目標電流値I1と比較して低い。このことから、設定電流値I2に保たれる状態から電磁ブレーキ12の作動のためにブレーキ電流の通電を遮断しても、サージ電圧は抑制されて第1スイッチング素子16を過度の加熱から保護しやすくなるほか、保護回路18における発熱を防止することができる。また、ブレーキ電流は、電動モータ11の通電電流に依存することがない。また、設定電流値I2が目標電流値I1と比べて約1/3であることから省電力化を実現している。
【0030】
(2)コントローラ17は、ブレーキ電流の通電開始T0から設定電流値I2に低下するまでの間では、第1スイッチング素子16によるブレーキ電流の遮断を禁止する。従って、ブレーキ電流が設定電流値I2よりも高い電流値のときに、ブレーキ電流の遮断ができないため、第1スイッチング素子16を確実に保護することができる。
【0031】
(3)コントローラ17は、設定時間P0の経過後、ブレーキ電流を予め設定した設定電流値I2まで低下させる。通電開始T0から時間T2までの時間が経過するまでにブレーキ電流は、電磁ブレーキ12の作動を解除する電流値IAまで上昇するから、電流値を検出して確認することなく電磁ブレーキ12の作動を確実に解除することができる。
【0032】
(4)コントローラ17は、ブレーキペダルスイッチ20の
オン信号およびアクセルセンサ21のオン信号によりブレーキ電流の通電を開始する。このため、電磁ブレーキ12の作動の解除は、ブレーキペダルスイッチ20の
オン信号だけでなくアクセルセンサ21のオン信号を必要とするため、例えば、単にブレーキペダルを踏むだけでは電磁ブレーキ12の作動は解除されることがない。
【0033】
(5)電磁ブレーキ12へ通電されるブレーキ電流は、電動モータ11に通電されるモータ電流に依存されない。このため、モータ電流の低下によって電磁ブレーキ12が電動モータ11を制動することはなく、モータ電流の低下による意図しない急停止を防止することができる。
【0034】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0035】
○ 上記の実施形態では、リレーとして半導体リレーであるスイッチング素子(MOSFET)を用いたが、リレーは半導体リレーに限定されない。例えば、
図3に示す変形例のように、機械式のリレー31を用いてもよい。この場合、リレー31の接点の開閉を制御するスイッチ回路32を設ければよい。コントローラ17は、ブレーキスイッチの信号およびアクセルセンサの信号に基づいてスイッチ回路32を制御する。これにより、半導体リレーを用いた実施形態の場合と同等の作用効果を奏する。また、半導体リレーを用いる場合、リレーはMOSFETの代わりにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。
○ 上記の実施形態では、コントローラが、予め設定した設定時間(通電開始T0から時間T2までの時間P0)が経過した後、ブレーキ電流を電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させるとしたが、この限りではない。例えば、ブレーキ電流の目標電流値を設定しておき、ブレーキ電流が予め設定した目標電流値に達した後、ブレーキ電流を電磁ブレーキの作動の解除を継続可能とする予め設定した設定電流値まで低下させてもよい。
○ 上記の実施形態では、コントローラは、ブレーキスイッチの
オン信号およびアクセルセンサのオン信号によりブレーキ電流の通電を開始するとしたがこの限りではない。コントローラは、例えば、ブレーキスイッチのオン信号によりブレーキ電流の通電を開始してもよい。
○ 上記の実施形態では、電流制御手段としてスイッチング素子(MOSFET)を用いたが、MOSFETの代わりにIGBTを用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 電磁ブレーキ制御装置
11 電動モータ
12 電磁ブレーキ
13 ブレーキ電流回路
14 バッテリ(電源)
15 ダイオード
16 第1スイッチング素子(リレー)
17 コントローラ
18 保護回路
19 第2スイッチング素子(電流制御手段)
20 ブレーキペダルスイッチ
21 アクセルセンサ
31 リレー(機械式)
32 スイッチ回路
T0 通電開始
T1、T2、T3 時間
I1 電流値(目標電流値)
I2 電流値(設定電流値)
IA、IB 電流値
P0 期間(設定時間)
P1、P2 期間