(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、管の製造工程において、管の内外面に生成された酸化スケールを除去する等の目的で、管を硫酸等の酸洗液に浸漬する酸洗処理が施される場合がある。
酸洗処理後には、管から酸洗液が除去されるものの、管の内面に酸洗液が残存すること等に起因して過酸洗が生じ、この結果、管の内面に微小な凹凸(以下、適宜、これを「内面微小凹凸」と称する)が生じる場合がある。
【0003】
上記の内面微小凹凸は、例えば、ITVカメラなどの撮像手段を管内に挿入し、撮像画をオペレータが目視観察することでも検出可能である。
しかしながら、管の製造工程において、全ての管に対して撮像手段を挿脱する動作を行うには、非常に手間を要するため、実質的に全数の検査は困難である。
したがって、酸洗処理が施された全ての管について内面検査を行うことができ、内面微小凹凸を検出可能な方法が望まれている。
【0004】
管の内面検査方法としては、例えば、特許文献1〜4のような方法が提案されているものの、いずれも上記内面微小凹凸を検出する上で効果的な方法ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、管の過酸洗等によって生じる管の内面の微小な凹凸を検出可能な管の内面検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の(A)〜(C)に記載の知見を得て、本発明を完成した。
(A)管の外面から管の内面を垂直探傷したときの底面エコー信号の強度が内面微小凹凸によって減衰する。
(B)上記内面微小凹凸による底面エコー信号の強度の減衰は微弱であるため、管の偏芯や偏肉による底面エコー信号の強度の変化によって、内面微小凹凸による底面エコー信号の強度の減衰が検出し難くなる。管の偏芯や偏肉の影響を低減するには、管の周方向についての底面エコー信号の強度分布に後述の所定の演算処理を施して得られる底面エコー信号の演算強度分布を評価することが効果的である。
(C)底面エコー信号の演算強度分布に統計処理(平均値や標準偏差やこれらの積を算出する処理)を施して得られた統計値の大小によって内面微小凹凸を検出可能(健全な内面と識別可能)である。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の第1〜第5ステップを含むことを特徴とする管の内面検査方法を提供する。
(1)第1ステップ:管の外面に対向して超音波探触子を配置する。
(2)第2ステップ:前記超音波探触子を前記管の周方向に相対的に移動させると共に、前記超音波探触子から前記管の内面に対して略垂直に超音波を送信し、前記管の内面から反射した底面エコーを前記超音波探触子で受信して、前記管の周方向についての底面エコー信号の強度分布を取得する。
(3)第3ステップ:前記第2ステップで取得した底面エコー信号の強度分布に所定の演算処理を施して、底面エコー信号の演算強度分布を取得する。
(4)第4ステップ:前記第3ステップで取得した底面エコー信号の演算強度分布に統計処理を施し、該統計処理によって得られた統計値の大小に基づき、前記管の内面の凹凸を検出する。
前記演算処理は、前記底面エコー信号の強度分布を構成する複数の点の各強度に対して、注目点から所定の点数の範囲内での強度の最大値を最小値で除算し、該除算した結果を当該注目点の演算強度とする処理である。
【0009】
本発明によれば、第1ステップ〜第3ステップを実行することにより、底面エコー信号の演算強度分布を取得することが可能である。換言すれば、複数点の底面エコー信号の演算強度を取得することが可能である。後述のように、底面エコー信号の演算強度は、底面エコー信号自体の強度に比べて、管の偏芯や偏肉の影響が低減されたものとなる。そして、第4ステップにおいて、底面エコー信号の演算強度分布に統計処理を施し(複数点の底面エコー信号の演算強度に統計処理を施し)、得られた統計値の大小に基づき、管の内面の凹凸を検出することが可能である。
本発明によれば、機械的動作としては、管の外面に対向して超音波探触子を配置し(第1ステップ)、管の周方向に相対的に超音波探触子を移動させる(第2ステップ)だけで良い(管の内面全体を検査するには、管の周方向に加えて管の軸方向にも相対的に超音波探触子を移動させるだけで良い)ため、撮像手段を挿脱する場合に比べて手間が掛からず、全ての管について内面検査を自動的に行うことが可能である。
【0010】
本発明は、例えば、前記管の内面の凹凸が前記管の過酸洗によって生じるものである場合に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、管の内面の微小な凹凸を検出可能であり、全ての管について内面検査を自動的に行うことが可能である。本発明の検出対象である微小な凹凸としては、例えば、酸洗処理が施される管の過酸洗によって生じる微小な凹凸の他、熱間加工時の潤滑不足によって生じたスリ疵、冷間加工時の工具表面の微小な凹凸に起因するスリ疵等を挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について、検出対象が管の過酸洗によって生じる管の内面の微小な凹凸である場合を例に挙げて説明する。まず、本発明の一実施形態に係る管の内面検査方法を実施するための内面検査装置の概略構成について説明する。
【0014】
<本実施形態の内面検査装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る管の内面検査方法を実施するための内面検査装置の概略構成を説明する説明図である。
図1(a)は管の軸方向から見た正面図を、
図1(b)は平面図を示す。
図1に示すように、本実施形態の内面検査装置は、超音波探触子1と、超音波探触子1に接続された信号処理手段2とを備えている。また、後述のように、超音波探触子1を管Pの周方向に相対的に移動させながら軸方向にも相対的に移動させるための機構部(図示せず)も備えている。
【0015】
本実施形態の超音波探触子1としては、内面微小凹凸(管Pの過酸洗によって生じる管Pの内面の微小な凹凸)の検出精度を高めるべく、例えば、単一の振動子を具備し、探傷周波数数10MHzで、焦点距離2インチのラインフォーカス型の超音波探触子が好適に用いられる。
【0016】
制御・信号処理手段2は、超音波探触子1から超音波を送信させるためのパルス信号を供給するパルサーや、エコーを受信した超音波探触子1から出力されるエコー信号を増幅するレシーバなど、超音波の送受信を制御する機能を果たす部分と、後述のように超音波探触子1から出力される底面エコー信号に基づき、管Pの周方向についての底面エコー信号の強度分布や演算強度分布を作成したり、底面エコー信号の演算強度分布に統計処理を施すなど、各種の信号処理を実行する機能を果たす部分とを備えている。なお、本実施形態では、機構部によって超音波探触子1を管Pの周方向に相対的に移動させながら軸方向にも相対的に移動させるため、制御・信号処理手段2によって作成される底面エコー信号の強度分布は、実際には管Pの軸方向に対して螺旋状の管Pの底面部位から得られる底面エコー信号に基づき作成されることになる。本発明における「管Pの周方向についての底面エコー信号の強度分布」には、上記のような管Pの軸方向に対して螺旋状の方向についての底面エコー信号の強度分布も含まれる。
【0017】
機構部としては、管Pの方を周方向に回転させながら軸方向に搬送する機構を例示できる。ただし、これに限るものではなく、超音波探触子1の方を管Pの周方向及び軸方向の双方に移動させる機構を採用することも可能である。また、管Pの周方向に超音波探触子1を回転させる機構と、管Pを軸方向に搬送する機構とを備えた機構部や、管Pを周方向に回転させる機構と、超音波探触子1を管Pの軸方向に移動させる機構とを備えた機構部であってもよい。
【0018】
<本実施形態に係る内面検査方法>
以下、上記の概略構成を有する内面検査装置を用いた本実施形態に係る内面検査方法について説明する。
本実施形態に係る内面検査方法では、まず、
図1に示すように、管Pの外面に対向して超音波探触子1を配置する(本発明の第1ステップに相当)。
【0019】
次に、機構部によって超音波探触子1を管Pの周方向に沿って相対的に移動させる(本実施形態では、これと同時に超音波探触子1を管Pの軸方向にも相対移動させる)と共に、超音波探触子1から管Pの内面に対して略垂直に超音波を送信し、管Pの内面から反射した底面エコーBを超音波探触子1で受信して超音波探触子1が底面エコー信号を出力し、制御・信号処理手段2が管Pの周方向についての底面エコー信号の強度分布を作成する(本発明の第2ステップに相当)。
具体的には、制御・信号処理手段2は、管Pの周方向について所定のピッチ毎に、超音波探触子1で受信したエコーのうち、底面エコーB(本実施形態では、表面エコーSを受信してから最初に受信した第1底面エコー)に相当する底面エコー信号の強度を検出することで、管Pの周方向についての底面エコー信号の強度分布を作成する。本実施形態では、管Pの1周当たり約400点の底面エコー信号の強度を検出(例えば、管Pの内径が27.4mmの場合、約0.22mmピッチ毎に検出することになる)して強度分布を作成している。
【0020】
次に、制御・信号処理手段2は、作成した底面エコー信号の強度分布に所定の演算処理を施して、底面エコー信号の演算強度分布を作成する(本発明の第3ステップに相当)。
具体的には、制御・信号処理手段2は、底面エコー信号の強度分布を構成する複数の点の各強度に対して、注目点から所定の点数の範囲内での強度の最大値を最小値で除算し、該除算した結果を当該注目点の演算強度とする演算を、注目点を順次ずらして実行することにより、底面エコー信号の演算強度分布を作成している。本実施形態では、底面エコー信号の強度分布を構成する約400点の各強度に対して、注目点から10点の範囲内(約0.22mmピッチ毎に底面エコー信号を検出する場合、2.2mmの範囲内)での強度の最大値を最小値で除算して底面エコー信号の演算強度分布を作成している。
【0021】
上記の演算処理における注目点からの点数は、検出したい内面微小凹凸を検出できるように適宜設定すればよい。検出したい内面微小凹凸のサイズに相当する点数に比べて注目点からの点数が小さすぎると、内面微小凹凸を検出し難くなる。このため、注目点からの点数の下限は、検出したい内面微小凹凸のサイズに相当する点数よりも大きな値に設定すればよい。内面微小凹凸をより確実に検出するためには、注目点からの点数の下限は、検出したい内面微小凹凸のサイズに相当する点数の1.5倍以上に設定すればよい。一方、注目点からの点数が大きすぎると、管Pの偏芯や偏肉の影響を低減し難くなる。このため、注目点からの点数の上限は、例えば、管Pの1/4周に相当する点数よりも小さな値に設定すればよい。好ましくは、注目点からの点数の下限は、検出したい内面微小凹凸のサイズに相当する点数の3倍未満に設定すればよい。なお、内面微小凹凸のサイズとは、超音波探触子1を管Pの周方向に相対的に移動させる方向の長さをいう。
上記の設定方法によれば、例えば、サイズが1.0mmの内面微小凹凸に対して、管Pの内径が27.4mmで1周当たり約400点の底面エコー信号の強度を検出しようとする場合、注目点からの点数の下限は5点に設定すればよく、好ましくは注目点からの点数の下限は7点に設定すればよい。また、注目点からの点数の下限とは独立して、注目点からの点数の上限は100点に設定すればよく、好ましくは14点に設定すればよい。
【0022】
以下、上記演算処理の有効性について説明する。
図2及び
図3は、本実施形態に係る内面検査方法で用いている演算処理の有効性を説明するための説明図である。具体的には、
図2は、管の偏芯、偏肉が小さい場合の説明図である。
図3は、管の偏芯、偏肉が大きい場合の説明図である。各図の(a)は、管P及び底面エコーBの状態を模式的に示す図である。各図の(a)に示すF1は、管Pの周方向位置P1から管Pの外面に対して垂直に送信された超音波が入射する位置に存在する内面微小凹凸を示す。また、各図の(a)に示すF2は、管Pの周方向位置P2から管Pの外面に対して垂直に送信された超音波が入射する位置に存在する内面微小凹凸を示す。内面微小凹凸F1と内面微小凹凸F2の寸法は同一である。各図の(b)は、底面エコー信号の強度分布を模式的に示す図である。各図の(c)は、底面エコー信号の微分強度分布を模式的に説明する図である。各図の(d)は、底面エコー信号の演算強度分布を模式的に説明する図である。
【0023】
図2(a)に示すように、管Pの周方向位置P1、P2から送信された超音波は、それぞれ内面微小凹凸F1、F2によって散乱するため、内面微小凹凸F1、F2の存在する管Pの内面から反射した底面エコーBの強度は、内面微小凹凸の存在しない管Pの内面(例えば、管Pの周方向位置P3、P4から管Pの外面に対して垂直に送信された超音波が入射する内面)から反射した底面エコーBの強度よりも小さくなる。このため、
図2(b)に示すように、内面微小凹凸F1、F2がそれぞれ存在する管Pの周方向位置P1、P2において、底面エコー信号の強度は減衰する。一方、
図2(b)に示すように、内面微小凹凸が存在しない管Pの内面についての底面エコー信号の強度(管Pの周方向位置P1、P2以外の位置から送信された超音波についての底面エコー信号の強度)も、管Pの偏芯や偏肉の影響によって緩やかに変動する。例えば、管Pの周方向位置P3、P4における底面エコー信号の強度が互いに異なるものとなる。このため、単純に底面エコー信号の強度の大小で内面微小凹凸を検出(例えば、底面エコー信号の強度が所定のしきい値未満である場合に内面微小凹凸が存在すると判定)しようとすると、例えば、管Pの偏芯や偏肉に起因した底面エコー信号の強度の減衰箇所を内面微小凹凸であると誤検出するおそれがある。
【0024】
そこで、本発明者らは、上記管Pの偏芯や偏肉の影響を低減して内面微小凹凸を検出可能にするため、まず底面エコー信号の強度分布に管Pの周方向の微分処理を施すことを考えた。具体的には、
図2(b)に示すような底面エコー信号の強度分布を構成する複数の点の各強度に対して、注目点から所定の点数の範囲内での強度の最大値から最小値を減算し、該減算した結果を当該注目点の微分強度とする演算を、注目点を順次ずらして実行することにより、
図2(c)に示すような底面エコー信号の微分強度分布を作成することを考えた。底面エコー信号の微分強度分布においては、底面エコー信号の強度分布のような管Pの偏芯や偏肉に起因した強度の緩やかな変動成分が低減されるため、管Pの偏芯や偏肉の影響を低減した状態で内面微小凹凸を検出可能である。例えば、
図2(c)に示すように、底面エコー信号の微分強度を所定のしきい値Thと比較することで、同寸法の内面微小凹凸F1、F2の双方を検出可能である。
【0025】
しかしながら、
図3(a)に示すように、管Pの偏芯、偏肉が大きい場合には、例えば、偏芯方向(
図3(a)の紙面左右方向)と直交する方向の位置(管Pの周方向位置P2、P4)から送信された超音波は、管Pの内面への入射角が90°から大きくずれることになる。このため、内面微小凹凸の存在しない管Pの内面で反射する場合であっても、超音波の送信方向と同方向に反射する底面エコーBの強度が大きく減衰することになる。また、偏芯方向と同方向の位置(管Pの周方向位置P1、P3)から送信された超音波については、偏芯の向き(
図3(a)の紙面右方向)と同じ向きの位置(管Pの周方向位置P1)であるか、逆向きの位置(管Pの周方向位置P3)であるかによって、底面エコーBが受信されるまでの伝搬距離が変わることになる。このため、内面微小凹凸の存在しない管Pの内面で反射する場合であっても、底面エコーBの強度が変動することになる。
【0026】
したがい、
図3(b)に示すように、管Pの偏芯や偏肉に起因した底面エコー信号の強度の変動成分が、
図2(b)に示す場合の変動成分と比べて大きくなる。このため、管Pの偏芯や偏肉に起因して底面エコーBの強度が減衰する管Pの周方向位置P2に内面微小凹凸F2が存在する場合の底面エコー信号の強度の振幅(周辺の底面エコー信号との強度差)は、管Pの偏芯や偏肉が大きくても底面エコーBの強度が減衰しない管Pの周方向位置P1に内面微小凹凸F1が存在する場合の底面エコー信号の強度の振幅よりも、かなり小さくなる。すなわち、同寸法の内面微小凹凸F1、F2であっても、存在する位置に応じて、底面エコー信号の強度の振幅が大きく異なることになる。この底面エコー信号の強度の振幅差に応じて、
図3(c)に示すように、底面エコー信号の微分強度にも差が生じることになる。このため、例えば、底面エコー信号の微分強度を所定のしきい値Thと比較する場合、同寸法の内面微小凹凸F1、F2であっても、一方の内面微小凹凸F1は検出可能であるが、他方の内面微小凹凸F2は検出できないという状況が生じ得る。
【0027】
そこで、本発明者らは、上記の微分処理よりも管Pの偏芯や偏肉の影響をより一層低減できる処理について更に鋭意検討した結果、底面エコー信号の強度分布に対して前述の演算処理を施せば良いことに想到した。前述の演算処理は、微分処理のように注目点から所定の点数の範囲内での底面エコー信号の強度の最大値から最小値を減算するのではなく、最大値を最小値で除算する処理であるため、たとえ、偏芯、偏肉が大きく、同寸法の内面微小凹凸F1、F2に底面エコー信号の強度の振幅差が生じていたとしても、
図3(d)に示すように、作成される底面エコー信号の演算強度は、同寸法の内面微小凹凸F1、F2であれば同等になることが期待できる。このため、例えば、
図3(d)に示すように、底面エコー信号の演算強度を所定のしきい値Thと比較することで、同寸法の内面微小凹凸F1、F2の双方を検出可能である。
図2(d)に示すように、管Pの偏芯、偏肉が小さい場合も当然に、同寸法の内面微小凹凸F1、F2の双方を検出可能である。
【0028】
本実施形態に係る内面検査方法では、上述のようにして作成した底面エコー信号の演算強度分布に統計処理を施し、該統計処理によって得られた統計値の大小に基づき、内面微小凹凸を検出する(本発明の第4ステップに相当)。統計処理としては、平均値や標準偏差を算出する処理も考えられるが、本実施形態では、好ましい態様として、平均値×標準偏差を算出する処理を施している。また、本実施形態では、管Pの1周分(管Pの1回転分)の演算強度分布(約400点の演算強度)毎に統計値(平均値×標準偏差)を算出している。
【0029】
図4及び
図5は、以上に説明した本実施形態に係る内面検査方法と、参考例に係る内面検査方法(底面エコー信号の強度分布に微分処理を施して作成した微分強度分布に、本実施形態に係る内面検査方法と同じ統計処理を施し、該統計処理によって得られた統計値の大小に基づき、内面微小凹凸を検出する方法)とを比較した試験結果の一例を示す。
図4は、管Pの偏芯、偏肉が小さい(実質的に無い)場合に得られた試験結果の一例を示す。
図5は、管Pの偏芯、偏肉が大きい場合に得られた試験結果の一例を示す。各図の(a)は、試験に用いた管Pの内面をITVカメラで撮像した撮像画像の一例を示す。各図の(b)は、本実施形態に係る内面検査方法によって得られる統計値(平均値×標準偏差)の管Pの軸方向についての分布を示す。各図の(c)は、参考例に係る内面検査方法によって得られる統計値(平均値×標準偏差)の管Pの軸方向についての分布を示す。各図の(b)及び(c)には、内面微小凹凸が発生している部位と、内面微小凹凸が発生していない健全な部位との双方について得られた統計値の分布を示している。なお、
図4及び
図5に示す試験結果は、以下の試験条件で取得したものである。
(1)超音波探触子1の探傷周波数:5MHz
(2)管Pの回転速度:64m/min
(3)管Pの搬送速度:4.4m/min(管Pの1回転当たり、管Pの軸方向に10mm搬送することに相当)
【0030】
図4に示す管Pの偏芯、偏肉が小さい場合には、
図4(b)に示す本実施形態に係る内面検査方法であっても、
図4(c)に示す参考例に係る内面検査方法であっても、内面微小凹凸が発生している部位で得られた統計値は、健全な部位で得られた統計値よりも大きくなっている。このため、例えば、両部位の統計値の間に所定のしきい値を設定し、このしきい値以上であれば内面微小凹凸が存在すると判定することで、内面微小凹凸を検出可能である。
【0031】
一方、
図5に示す管Pの偏芯、偏肉が大きい場合には、
図5(c)に示す参考例に係る内面検査方法では、内面微小凹凸が発生している部位で得られた統計値と健全な部位で得られた統計値との間に有意差が生じない。このため、両部位の統計値の間にしきい値を設定することができず、内面微小凹凸を検出できない。これに対し、
図5(b)に示す本実施形態に係る内面検査方法では、内面微小凹凸が発生している部位で得られた統計値は、健全な部位で得られた統計値よりも大きくなっているため、管Pの偏芯、偏肉が小さい場合と同様に、内面微小凹凸を検出可能である。