(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記アセンブリの製造では、複数の電線をまとめて保持しながら当該複数の電線のそれぞれの端末において導体が露出した部分を複数の端子の表面の上に載せて両者のはんだ付けが行われるので、各端子に対する各電線の端末の相対位置が不安定である。このように、各端子に対して各端末をはんだ付けする位置が不安定であることは、当該端子と当該端子との接続の信頼性の向上の妨げとなる。この課題は、電線の細径化及び端子の小型化が進むにつれてより深刻となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数本の電線とコネクタとを備えた電気接続アセンブリを構成するコネクタ及びこれを備えた電気接続アセンブリを製造するための方法であって、当該複数本の電線と当該コネクタに含まれる端子との相対位置を安定させて高い接続信頼性を確保することが可能なものを提供することを目的とする。
【0008】
提供されるのは、それぞれが導体を含む複数の電線と接続されることにより、当該複数の電線を含む電気接続アセンブリを構成するコネクタであって、前記複数の電線のそれぞれに対応する複数の端子と、はんだからなり、前記複数の端子のそれぞれに付与される複数の接続部材と、前記複数の電線がその長手方向と直交する電線配列方向に間隔をおいて並んだ状態で前記複数の端子にそれぞれ前記接続部材を介して導通可能に接続されることを可能にするように前記複数の端子が前記電線配列方向に並ぶ配列で前記複数の端子を一括して保持する絶縁ハウジングと、を備える。前記複数の端子のそれぞれは、前記絶縁ハウジングの表面よりもさらに外側に突出する外側突出部を含み、当該外側突出部は、前記絶縁ハウジングの表面よりも前記絶縁ハウジングの外側に離れた位置で前記電線の導体と接続可能な電線接続面を有し、当該電線接続面上に前記接続部材が固着される。前記複数の端子のうちの少なくとも一部の端子の前記電線接続面上に固着される前記接続部材の表面は、前記電線の前記電線配列方向の両側に位置して前記電線接続面に対する前記電線の前記電線配列方向の相対変位を規制する規制部を含む凹凸形状を有する。
【0009】
前記のようにはんだからなる接続部材の表面に形成された規制部は、前記電線配列方向について、前記電線の両側に位置してこれを拘束することにより、当該接続部材及び当該接続部材が固着された前記電線接続面に対する前記電線の相対位置を安定させることができる。そして、この状態で当該接続部材を溶融させることにより、当該接続部材を媒介として前記電線の導体と前記電線接続面とを接続することができ、その後の当該接続部材の固化により、高い接続信頼性をもつ電気接続アセンブリを得ることができる。つまり、本発明によれば、前記端子の電線接続面とこれに対応する電線の導体とを接続するための接続部材を利用して当該電線接続面に対する当該電線の位置決め、特に前記電線配列方向についての位置決め、を達成することができる。
【0010】
前記接続部材の表面の形状は、これに対応する前記電線が嵌まり込むのを受け入れることにより当該電線の前記電線配列方向の変位を規制する形状の凹部を含み、当該凹部の内側面が前記規制部を構成するものが、好適である。当該凹部は、当該凹部への電線の嵌まり込みを受け入れることにより、前記接続部材及び当該接続部材が固着される前記電線接続面に対する前記電線の前記電線配列方向についての相対位置をより安定させることができる。
【0011】
前記凹部は、前記電線の長手方向と平行な方向に延びる凹溝であることが、好ましい。当該凹溝は、前記接続部材が固着される前記電線接続面に対する前記電線の電線配列方向についての相対位置だけでなく、当該電線接続面上での当該電線の姿勢(当該電線が延びる方向)も安定させることができる。
【0012】
具体的に、前記凹溝は、前記規制部として、当該凹溝の底部に向かうに従って互いに前記電線配列方向と平行な方向に近づく向きに傾斜する一対の位置決め傾斜面を有するものが、好適である。当該一対の位置決め傾斜面は、当該一対の位置決め傾斜面同士の間の前記凹溝に嵌まり込む電線に対して確実に接触することが可能であり、当該接触によって当該電線の電線接続面に対する位置決めを確実に行う。
【0013】
また、本発明によれば、複数の電線及び前記コネクタを備えた電気接続アセンブリを製造するための方法が提供される。この方法は、前記コネクタを用意するコネクタ用意工程と、前記複数の電線が前記電線配列方向に互いに間隔をおいて配列された状態で当該複数の電線のそれぞれの導体において設定されている接続対象部位とこれに対応する前記電線接続面とを電気的に接続する接続工程と、を含む。当該接続工程は、前記接続部材のうち前記規制部を含む接続部材に対応する前記電線の前記接続対象部位の前記電線配列方向への相対変位が前記規制部によって規制されるように当該接続部材と当該電線とを係合することにより当該接続部材が固着された前記電線接続面に対する前記電線の相対位置を決めることと、前記係合がなされている状態で前記接続部材を構成する前記はんだを加熱して溶融させることにより当該接続部材を介して前記接続対象部位と前記電線接続面とを電気的に接続することと、を含む。
【0014】
この方法によれば、規制部を有する接続部材と電線の接続対象部位とを係合することにより当該接続部材が固着された端子の電線接続面に対する前記接続対象部位の相対位置を安定させることができるのに加え、その状態のまま前記接続部材を構成するはんだを加熱して溶融させることにより当該接続部材を媒介として前記接続対象部位と前記電線接続面とを効率よく電気的に接続することができる。
【0015】
前記コネクタ用意工程は、前記複数の端子の電線接続面のそれぞれに前記接続部材を固着させることと、前記複数の端子を前記絶縁ハウジングに保持させることと、前記複数の端子のうちの少なくとも一部の端子の電線接続面に固着されている前記接続部材を塑性変形させて当該接続部材の表面に前記規制部を形成することと、を含むものが、好ましい。この方法では、前記接続部材を構成するはんだの特性を利用して、当該接続部材の塑性変形により好ましい形状の規制部を容易に形成することができる。
【0016】
前記規制部を形成することは前記複数の端子が前記絶縁ハウジングに保持された後に行われることが、より好ましい。このように前記絶縁ハウジングによる前記複数の端子の保持によって当該絶縁ハウジングに対する当該複数の端子の位置決め及び当該複数の端子同士の位置決めが行われた状態で前記規制部の形成が行われることにより、当該規制部をもつ接続部材が固着される端子の電線接続面に対する電線の位置決めだけでなく、前記絶縁ハウジングに対する前記電線の位置決めの精度及び複数の電線同士の位置決めの精度も高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、複数本の電線とコネクタとを備えた電気接続アセンブリを構成するコネクタ及びこれを備えた電気接続アセンブリを製造するための方法であって、はんだにより構成される接続部材を有効に利用して当該複数本の電線と当該コネクタに含まれる端子との相対位置を安定させることにより高い接続信頼性を確保することが可能なものが、提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1〜
図16は本発明の実施の形態に係る電気接続アセンブリ及びその製造方法を示す。前記電気接続アセンブリは、複数本の電線10と、当該複数本の電線10を他のコネクタに接続するためのコネクタCNと、を備える。
【0021】
前記複数本の電線10のそれぞれは、
図10及び
図13にも示すように、導体12と、当該導体12を被覆する絶縁被膜14と、を有する。前記複数本の電線10は、その長手方向と直交する電線配列方向に間隔をおいて互いに平行に並んだ状態で前記コネクタCNに接続される。本発明において用いられる電線は、前記絶縁被膜14を有しない、いわゆる裸電線であってもよい。あるいは、互いに隣接する電線の絶縁被覆同士が薄板部分を介して相互に一体に連なることにより、いわゆるリボン電線を構成するものであってもよい。
【0022】
前記コネクタCNは、前記複数の電線10のそれぞれに対応する複数の端子20と、当該複数の端子20をまとめて保持する絶縁ハウジング30と、それぞれがはんだからなり、前記複数の端子20にそれぞれ付与される複数の接続部材70と、を備える。
【0023】
この実施の形態に係る前記複数の端子20のそれぞれは、単一の長尺な金属板により構成された雄型端子であり、
図4に示すような被保持部22、電気接触部23及び外側突出部24を有する。前記被保持部22は後述のように前記絶縁ハウジング30に保持される部位である。前記電気接触部23は、この実施の形態では雄型の接触部であって相手方端子の雌型の接触部と嵌合可能な形状を有する。具体的には、前記被保持部22から後述の第1方向に直線状に延びる形状を有する。前記外側突出部24は、前記被保持部22から前記電気接触部23と反対の側に突出して前記複数の電線10のうちの対応する電線10に接続される部位である。当該外側突出部24については後に詳述する。
【0024】
前記絶縁ハウジング30は、合成樹脂等の絶縁材料により成形されたもので、端子保持部32と、フード33と、電線保持部34と、を一体に有する。
【0025】
前記端子保持部32は、前記複数の端子20のそれぞれの前記被保持部22を保持する部位であり、この実施の形態ではブロック状をなす。当該端子保持部32は、電線10が前記の電線配列方向に間隔をおいて並んだ状態で前記複数の端子20の外側突出部24にそれぞれ導通可能に接続されることを可能にするように前記複数の端子20を当該複数の端子20が前記電線配列方向に並ぶ配列で一括して保持する。
【0026】
具体的に、当該端子保持部32は、当該端子保持部32を前記各端子20が前記第1方向と平行な方向に貫通する状態で当該端子20の被保持部22を保持する。前記第1方向は、前記端子20に前記電線10が接続された状態において当該電線10の長手方向及び電線配列方向の双方に対して直交する方向であり、
図12に示される姿勢では上方向である。つまり、
図12に示される姿勢において前記端子20のうち前記被保持部22を含む部分が前記端子保持部32を上下方向に貫通する。当該端子保持部32への当該被保持部22の固定は、当該端子保持部32に設けられた貫通孔への当該被保持部22の圧入により行われてもよいし、接着剤等により行われてもよい。
【0027】
前記各端子20の電気接触部23は、前記のように被保持部22が前記端子保持部32に保持された状態で当該被保持部22から前記第1方向と反対の方向(
図12に示される姿勢では下方向)に延び、当該方向に前記相手方端子の雌型接触部と嵌合する。前記フード33は、前記端子保持部32と一体につながり、前記電気接触部23の軸方向(
図12に示される姿勢では上下方向)と直交する方向の外側で当該電気接触部23を囲む筒状をなす。
【0028】
前記各端子20の外側突出部24は、
図4,
図5及び
図13に示すような第1突出部26及び第2突出部27を一体に有する。前記第1突出部26は、前記端子保持部32の表面(
図13では上面32a)から前記第1方向(
図13では上方向)に突出する。前記第2突出部27は、前記第1突出部26の上端から前記第1方向よりも前記端子保持部32の表面と平行な方向に近い方向であって前記電線配列方向と直交する第2方向(この実施の形態では前記上面32aと平行な方向;
図13では左右方向)に延びる。
【0029】
前記第2突出部27の表面のうち、前記端子保持部32の表面(
図13では上面32a)と反対側の面である外側面(
図13では上面)は電線接続面27aを構成する。当該電線接続面27aは、その上に前記電線10の導体12の特定の部位である接続対象部位が前記接続部材70を介して載せられた状態で当該接続対象部位といわゆるはんだ付けにより(つまり前記接続部材70を接続媒体として)電気的に接続されることが可能な面である。この実施の形態に係る電線接続面27aは、前記端子保持部32の上面32aと平行な方向に延びる。
【0030】
前記複数の接続部材70は、前記複数の端子20の電線接続面27aにそれぞれ固着される。当該接続部材70は、前記電線接続面27aから上向きに膨出するような断面形状を有し、前記電線10の長手方向に沿って延びるように前記電線接続面27aの上にセットされている。
【0031】
さらに、このコネクタCNの特徴として、前記接続部材70の表面に特別な凹凸形状、具体的には
図6に示すような凹溝72を含む形状が与えられている。当該凹溝72は、前記電線10の長手方向に延びる凹部であり、当該凹溝72に
図10に示すように前記電線10が嵌まり込むのを受け入れることにより当該電線10の前記電線配列方向(端子20の幅方向;
図10では左右方向)の相対変位を規制する形状を有する。
【0032】
図6に示すように、前記各凹溝72は、当該凹溝72の底部に向かうに従って互いに前記電線配列方向と平行な方向に近づく向きに傾斜する一対の位置決め傾斜面73,74を有する。当該位置決め傾斜面73,74は、前記電線配列方向について前記電線10の両側に位置して当該電線10の前記電線接続面27aに対する前記電線配列方向の相対変位を規制する規制部として機能する。
【0033】
前記第1突出部26が前記端子保持部32の上面32aから突出する寸法は、適宜設定される。この実施の形態では、前記第2突出部27の表面のうち前記端子保持部32の上面32aと対向する面、つまり前記電線接続面27aと反対側の面である内側面(
図13では下面)27b、が当該端子保持部32の上面から外側(
図13では上側)に離間した位置で前記第2突出部27が前記第2方向に延びるように当該第2突出部27を位置させる寸法に設定されている。当該寸法は、全ての端子20について同一の寸法に設定されている。従って、当該端子保持部32は、前記各端子20の電線接続面27aが同一平面上に並ぶように当該端子20を保持する。逆に、当該電線接続面27a同士の間に特定の高低差が与えられてもよい。
【0034】
前記複数の端子20の配列も自由に設定されることが可能である。この実施の形態に係る端子保持部32は、前記複数の端子20の前記電線接続面27aが前記電線配列方向に間隔をおいて並ぶのに加え、前記複数の端子20のうち前記電線配列方向に隣接する端子20の電線接続面27aが前記電線10の長手方向(
図2の上下方向)に互いに位置をずらして並ぶように、当該複数の端子20の被保持部22を保持する。具体的に、
図2に示される配列では、それぞれが前記電線接続面27aをもつ複数の外側突出部24が前記電線10の長手方向と平行な方向に並ぶ3本の列に沿って配列され、かつ、各列に配置される外側突出部24の電線接続面27aの位置が当該列に隣接する列に配置される外側突出部24の電線接続面27aの位置に対して前記電線配列方向にそれぞれずれている。
【0035】
前記電線保持部34は、前記端子保持部32から前記第2方向と平行な方向に沿って延び、前記複数の電線10のそれぞれを当該複数の電線10が前記第2方向に沿って延びる姿勢で保持する。この実施の形態に係る電線保持部34は、前記各電線10に対応した複数本の平行な電線保持溝34aを有し、当該電線保持溝34aに前記各電線10が嵌まり込んだ状態で当該電線10を下から支持する。
【0036】
この実施の形態に係る前記コネクタCNは、さらに、
図16に示すようなカバー40を備える。当該カバー40は、前記端子20の外側突出部24及びこれに接続される前記各電線10を上から覆うように前記絶縁ハウジング30に着脱可能に装着される。具体的に、この実施の形態に係るカバー40は、前記端子保持部32を覆う端子カバー部42と、前記電線保持部34を覆う電線カバー部44と、を一体に有する。
【0037】
前記電線保持部34は、当該電線保持部34の上面すなわち前記電線保持溝34aが形成される面が前記第2方向の中間位置において下向きに凹むように湾曲する湾曲部36を有する。一方、前記カバー40の電線カバー部44の下面は、前記湾曲部36に対応して下向きに膨出する湾曲部46を有する。当該湾曲部46と前記湾曲部36は、前記各電線10の中間部位を下向きに湾曲させた状態で当該中間部位を拘束することが可能な形状を有し、これにより、当該各電線10の導体12の接続対象部位と前記電線接続面27aとの接続箇所に電線10の張力が作用することを有効に抑止する。
【0038】
前記電線保持部34及び前記カバー40は本発明において必須のものではなく、省略されることが可能である。逆に、前記各電線10の導体12の接続対象部位が当該電線10の端末付近ではなく長手方向中間部位に設定される場合には、当該電線10の長手方向について前記端子保持部32の両側にそれぞれ前記電線保持部34及びこれに対応する前記カバー40の電線カバー部44が設けられてもよい。
【0039】
次に、前記電気接続アセンブリを製造するための方法について説明する。当該電気接続アセンブリは、例えば次の1)電線用意工程、2)コネクタ用意工程、3)接続工程、及び4)切断工程を含む方法によって製造されることが可能である。
【0040】
1)電線用意工程
上述した複数の電線10が予め用意される。この実施の形態では、前記複数の電線10として、各電線10の絶縁被膜14が特定の合成樹脂からなるものが用意される。当該特定の合成樹脂とは、常温で絶縁性を有する一方、前記接続部材70を構成するはんだの溶融温度(例えば380〜400°C)において溶融または分解されることが可能な合成樹脂である。当該特定の合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン等が好適である。前記絶縁被膜14の厚みは、常温状態で絶縁状態を確保しながら前記加熱によって当該絶縁被膜14の除去及び前記導体12の露出を達成できるような厚みに設定されている。当該厚みには、例えば通常のエナメル線における絶縁被覆の厚みに近似した寸法が適用されることが可能である。
【0041】
2)コネクタ用意工程
この工程では上述したコネクタCNが用意される。この工程は、次の2−1)接続部材付与工程、2−2)端子セット工程、及び2−3)凹溝形成工程を含む。
【0042】
2−1)接続部材付与工程
前記コネクタCNを構成する複数の端子20のそれぞれの電線接続面27aに、それぞれ前記接続部材70が固着される。この段階での接続部材70の形状は自由に設定されることが可能である。一般には当該接続部材70が
図7及び
図8に示すように前記電線接続面27aの幅方向(電線配列方向と平行な方向)の中央部が盛り上がるような断面形状をもつように前記電線接続面27aに固着される。前記端子20への前記接続部材70の付与は、当該接続部材70を構成するはんだを固形状態のまま前記電線接続面27aに固着させることにより行われてもよいし、ペースト状のはんだ(接続部材70)が各電線接続面27aに塗布されることにより行われてもよい。
【0043】
2−2)端子セット工程
この工程は、前記複数の端子20を前記絶縁ハウジング30に固定する工程、つまり当該絶縁ハウジング30に当該複数の端子20を保持させる工程である。具体的に、この実施の形態では、前記絶縁ハウジング30の端子保持部32に予め形成された複数の貫通孔に対して上から端子20が挿通されて圧入される(つまり当該貫通孔を囲む端子保持部32の内周面に当該被保持部22を食い込ませる)、あるいは、接着剤等の他の手段により端子保持部32に被保持部22を固着させることにより、当該端子保持部32の所定の位置に前記複数の端子20がそれぞれ固定される。
【0044】
前記端子セット工程は、前記接続部材付与工程の前に行われてもよい。つまり、前記絶縁ハウジング30に前記複数の端子20がそれぞれ保持された状態で前記接続部材70の付与が行われてもよい。しかし、当該接続部材70の付与が当該接続部材70の加熱(はんだの融点を超える加熱)を伴って行われる場合、前記各端子20が既に絶縁ハウジング30に保持されている状態では当該絶縁ハウジング30に前記加熱に耐えるだけの耐熱性が求められ、その分当該絶縁ハウジング30の材質に制約が与えられることになる。従って、前記接続部材付与工程は前記端子セット工程の前に行われること、つまり、前記複数の端子20が前記絶縁ハウジング30にセットされる前に当該複数の端子20にそれぞれ前記接続部材70が付与されること、がより好ましい。
【0045】
2−3)凹溝形成工程
この工程は、
図8に示される状態の前記接続部材70のそれぞれを塑性変形させて
図10に示すような形状に整形する工程、つまり、当該接続部材70に前記凹溝72を形成する工程、である。前記のようにはんだからなる各接続部材70の塑性変形は、例えば、前記接続部材70に前記凹溝72に対応する形状の型(この実施の形態では略V字状の型)を押付けることにより、容易に生じさせることが可能である。換言すれば、前記型の形状の選定により、前記凹溝72の形状を自由に設定することが可能である。
【0046】
この凹溝形成工程は、前記端子セット工程や前記接続部材付与工程の前あるいは同時に行われてもよい。例えば、各端子20に接続部材70が付与されてから当該端子20が絶縁ハウジング30に保持される前に凹溝72が形成されてもよいし、あるいは、既に凹溝72が形成されている接続部材70が端子20の電線接続面27aに固着されてもよい。しかし、前記接続部材付与工程及び前記端子セット工程の後に凹溝形成工程を行うこと、つまり、前記絶縁ハウジング30による前記複数の端子20の保持によって当該絶縁ハウジング30に対する当該複数の端子20の位置決め及び当該複数の端子20同士の位置決めが既に行われている状態で前記凹溝72を形成すること、は、各端子20とこれに対応する電線10との位置決めだけでなく、前記絶縁ハウジング30に対する前記各電線10の位置決めの精度及び複数の電線10同士の位置決めの精度も高めることを可能にする利点がある。後者の場合、例えば、前記複数の端子20のそれぞれに対応する複数の型を一体に包有する金型を前記各接続部材70に押し当てることにより、前記凹溝27のそれぞれを一括して効率よく形成することが可能である。
【0047】
前記凹溝形成工程は、前記コネクタCNに含まれる全ての端子20について行われてもよいし、当該全ての端子20のうちの一部の端子20についてのみ行われてもよい。つまり、一部の接続部材70にのみ前記凹溝72が形成されてもよい。例えば、複数の端子の電線接続面及びこれに固着される接続部材の幅が当該端子によって異なる場合に、特に高い位置決め精度が要求される小幅の接続部材にのみ前記凹溝が形成されてもよい。
【0048】
3)接続工程
この工程は、前記複数の電線10が前記電線配列方向に互いに間隔をおいて配列された状態で当該複数の電線10のそれぞれの導体12において設定されている接続対象部位とこれに対応する前記各端子20の電線接続面27aとを電気的に接続する工程である。この実施の形態に係る接続工程は、次の3−1)電線係合工程及び3−2)接続部材溶融工程を含む。
【0049】
3−1)電線係合工程
この工程は、前記接続部材70のうちその表面が前記規制部を含む接続部材(この実施の形態では前記凹溝72が形成された全ての接続部材70)に対応する前記電線の前記接続対象部位と前記凹溝72とを係合することにより、前記接続部材70に対する前記電線配列方向への前記電線10の相対変位を規制する工程、つまり前記各端子20の電線接続面27aに対する前記電線10の相対位置を決める工程、である。
【0050】
この実施の形態では、前記複数の電線10が
図1に示されるように前記電線配列方向に互いに間隔をおいて配列された状態を保持しながら、当該複数の電線10の長手方向中間領域において設定されている前記接続対象部位を、当該接続対象部位を前記絶縁被膜14が覆ったままの状態で、前記各凹溝72内に嵌め込むことが行われる。
【0051】
前記複数の電線10の保持は、前記接続対象部位を挟んでその両外側の位置、より好ましくは前記コネクタCNの前後方向(前記第2方向及び電線長手方向と平行な方向)の両端よりも両外側の位置を保持することにより、行われる。当該保持では、前記複数の電線10のそれぞれに適度の張力が与えられながら当該電線10が前記各凹溝72内に嵌め込まれることが好ましい。当該保持は、例えば、前記複数の電線10が巻き付けられるボビンや、前記各電線10をその長手方向及び電線配列方向の双方に直交する方向の両側から挟み込む挟持具等によって、行われることが可能である。
【0052】
この実施の形態では、前記凹溝72が左右一対の位置決め傾斜面73,74を有するので、前記各電線10の接続対象部位は前記位置決め傾斜面73,74同士の間に誘い込まれるようにして凹溝72内に円滑に嵌入され、かつ、その嵌入後の状態では電線接続面27a上の適当な位置(一般には当該電線接続面27aの幅方向つまり電線配列方向の中央位置)に位置決めされるとともに当該位置から電線配列方向に逸脱することが規制される。このことは、当該電線10と当該電線接続面27aとの間の接続の信頼性を高める。特に、前記凹溝72は、前記電線10の長手方向と平行な方向(第2方向)に延びるので、前記電線配列方向についての電線10の接続対象部位の位置決めだけでなく、当該接続対象部位の姿勢も好ましい姿勢(つまり前記第2方向に延びる姿勢)に保持することが可能である。
【0053】
3−2)接続部材溶融工程
この工程は、前記係合がなされた状態、つまり前記接続部材70の凹溝72に前記電線10の(導体12の)接続対象部位が嵌め込まれた状態、のままで当該接続部材70を構成するはんだを加熱して溶融させることにより、当該接続部材70を媒介として前記接続対象部位と前記電線接続面27aとを電気的に接続する工程である。この実施の形態では、前記各電線10の絶縁被膜14のうち前記導体12の接続対象部位を覆う部分が前記接続部材70とともに加熱され、これにより、当該接続対象部位を覆う前記絶縁被膜14の溶融または分解による前記導体12の表面からの除去と、当該絶縁被膜14の除去により露出する前記導体12と前記凹溝72を含む接続部材70が固着された電線接続面27aとの当該接続部材70を媒介とする電気的接続と、が同時に達成される。
【0054】
前記電線接続面27aに対する電線10の押圧及び加熱は
図11〜
図13に示されるヒータ50を用いて効率的に行われることが可能である。当該ヒータ50は、加熱面52を構成する平坦な下面を有する。前記各電線接続面27a上に前記接続部材70を介してセットされた前記各電線10に対して前記加熱面52が上から押付けられること、つまり、前記加熱面52と前記各電線接続面27aとの間に当該複数の電線接続面27aにそれぞれ対応する複数の接続対象部位及び前記接続部材70を挟んだ状態で当該加熱面52が前記複数の電線接続面27aに向けて押圧されること、により、前記ヒータ52による前記接続部材70の加熱による溶融と、前記接続対象部位を覆う前記絶縁被膜14の加熱による当該絶縁被膜14の溶融または分解と、が同時に行われる。当該絶縁被膜14の溶融または分解は、当該絶縁被膜14を前記導体12の表面から除去することを可能にする。
【0055】
このようにして溶融した前記接続部材70は、その後の自然冷却または強制冷却によって固化することにより、
図14及び
図15に示すように前記導体12の接続対象部位に直接接触した状態で当該接続部材70を保持しながら当該接続対象部位と端子20との電気的接続を形成する形状に固定される。つまり、当該接続部材70は、その加熱の前に電線接続面27aに対する電線10の位置決めを行う位置決め部材として機能するとともに、当該加熱によって当該電線接続面27aと当該電線10の導体12とを接続するための接続媒体として機能する。しかも、その位置決め状態から接続状態への移行を当該接続部材70の加熱による溶融という簡単な操作で効率よく行うことを可能にする。
【0056】
特に、この実施の形態では、前記各電線接続面27aが同一平面上に並ぶように前記絶縁ハウジング30の端子保持部32が前記各端子20を保持している、つまり前記各端子20は前記平面配列端子を構成している、ので、単一の平面状の加熱面52を用いて前記複数の接続部材70を同時に均等に加熱して各電線接続面27aと各電線10の導体12の接続対象部位との同時接続を良好に行うことが可能である。
【0057】
また、この実施の形態では、前記各電線接続面27aが端子保持部32の上面32aから当該端子保持部32の外側(
図13等では上側)に突出する外側突出部24に設けられているので、前記端子20の外側突出部24を挟んでその両側の位置で前記電線10を前記絶縁ハウジング30の表面(好ましくは端子保持部32の上面32a)に押付けることにより、当該電線10を
図13に示すように当該外側突出部24で外向きに凸となる形状に変形させる状態で前記接続工程を行うことが可能である。具体的に、
図11〜
図13に示される例では、前記ヒータ50において予め設けられた押付け部54であって前記加熱面52よりもさらに外側に突出する部位と、前記ヒータ50とは別に用意された押え部材60と、の協働によって行われる。
【0058】
4)切断工程
前記のようにして接続工程が完了した後、電線10の長手方向についてその適当な部位が切断される。この切断は、例えば、一対の切断具により前記電線10の長手方向及び電線配列方向と直交する方向に当該電線10を適当な切断位置で挟んでせん断することによって効率的に行われることが可能である。前記実施の形態に係るコネクタCNは前記複数の電線10の端末に接続されるものであり、よって、前記各電線10は前記端子保持部32を挟んで前記電線保持部34と反対側の位置(好ましくは端子保持部32の外側面のすぐ近傍の位置)で切断される。
【0059】
当該切断工程の後、必要に応じて
図16に示すようなカバー40が装着されることにより、電気接続アセンブリが完成する。なお、当該切断工程や当該カバー40の装着は、本発明において必須ではなく、適宜省略されることが可能である。
【0060】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような形態を含む。
【0061】
A)接続部材の形状について
接続部材に形成される凹部の具体的な形状は限定されない。当該形状は、当該凹部に電線が嵌まり込むことを許容することにより当該電線の電線配列方向の変位を規制する規制部を含む形状であればよい。当該凹部は、例えば、平面上の底壁と当該底壁の幅方向の両端から立ち上がる一対の側壁とによって囲まれた凹溝、つまり上向きに開口する矩形状断面をもつ凹溝、であってもよい。ただし、前記実施の形態に示されるような一対の位置決め傾斜面を有する凹溝は、当該位置決め傾斜面が確実に電線の外周面に接触してその位置決めをより正確に行うことができる利点を有する。
【0062】
また、本発明に係る接続部材の表面形状は、前記のように電線の導体が嵌まり込む凹部を含むものに限定されず、電線配列方向への電線の相対変位を規制する規制部を含む凹凸形状であればよい。当該規制部は、例えば、電線の両側において電線長手方向に間隔をおいて形成された突起であってもよい。あるいは、電線の一方の側において立直する第1の壁と、当該第1の壁から電線長手方向にずれた位置で電線の他方の側において立直する第2の壁と、を含むものでもよい。
【0063】
さらに、前記電線接続面の幅方向についての前記規制部の位置も制限されない。例えば、前記接続部材の一部が前記電線接続面の幅方向両端の外側にそれぞれはみ出るように当該接続部材を塑性変形させてそのはみ出し部分に前記規制部を形成することにより、前記電線接続面の幅よりも大きな直径をもつ電線を保持することも可能である。
【0064】
B)規制部の形成について
接続部材における規制部の形成は、当該接続部材を構成するはんだの塑性変形によるものに限定されない。当該規制部の形成は、例えば、接続部材の除去加工、金型による予備成形、あるいは電線接続面上での複数のはんだピースの並設によっても可能である。
【0065】
C)電線接続面と接続対象部位との接続について
前
記実施の形態では、ヒータによる加熱によって接続部材70の溶融と同時に絶縁被膜14の溶融または分解による導体12の表面からの除去が行われるが、当該絶縁被膜14の除去は加熱の前に予め行われてもよい。すなわち、複数の電線のそれぞれにおいて設定された導体の接続対象部位を露出させるように絶縁被覆がいわゆる皮剥ぎ処理によって接続工程の前に予め除去され、前記接続工程において前記のように露出した導体と電線接続面とのはんだ付けが直接的に行われてもよい。この場合、前記絶縁被覆を構成する材料は、必ずしも溶融または分解されるものでなくてもよい。各電線が裸電線の場合には前記絶縁被覆の除去を要しないことはいうまでもない。