特許第6776958号(P6776958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776958
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/06 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   H02K15/06
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-47368(P2017-47368)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-152992(P2018-152992A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和久
(72)【発明者】
【氏名】厚地 伸彦
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−184646(JP,A)
【文献】 特開2015−139243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のコアベースの内周面から延在する複数のティース、及び前記コアベースの周方向に隣接するティース間に形成されたスロットを有する円筒状のステータコアと、各ティースそれぞれに集中巻きで捲回されたコイルと、を有し、
各コイルが、
前記ティースの側面に沿い、かつ前記コアベースからの前記ティースの延在方向に沿って導線が配列された状態で前記ティースに捲回された第1コイル部と、
前記ティースの延在方向に沿って前記導線が配列され、前記第1コイル部に沿い、かつ該第1コイル部を外側から覆う状態に捲回された第2コイル部と、を有するステータの製造方法であって、
前記ティースに装着可能で、かつ前記コイルとなり得るプリフォームコイルを導線で予め成型しておく成型工程と、
前記プリフォームコイルを前記ティースに装着する装着工程と、を有し、
前記成型工程では、前記導線を捲回軸線を中心に捲回して第1プリフォーム部を形成するとともに、前記捲回軸線の延びる方向に沿って前記第1プリフォーム部に連続して前記導線を捲回して第2プリフォーム部を形成し、
前記装着工程では、前記第1プリフォーム部を、前記コアベースの周方向に隣接したティース間の挿入口から前記スロットに挿入していき、前記第1プリフォーム部を前記ティースに装着して前記第1コイル部を形成した後、
前記第1プリフォーム部が挿入された前記スロットに前記第2プリフォーム部を前記挿入口から挿入していき、前記第2プリフォーム部を前記第1コイル部の外側に位置させて前記第2コイル部を形成し、
前記プリフォームコイルは、前記第1プリフォーム部と前記第2プリフォーム部を連結し、かつ前記導線を前記捲回軸線を中心に1周巻いて形成された連結部を備え、前記連結部の長さは、前記第2プリフォーム部における前記導線の1周当たりの長さより長いことを特徴とするステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、永久磁石をロータに配設した永久磁石式回転電機が、電気自動車やハイブリッド自動車などの様々な分野で駆動源として利用されている。このような永久磁石式回転電機において、ステータにおけるステータコアのティースにはコイルが捲回されている。コイルの捲回方法としては、集中巻きがある。集中巻きで捲回されたコイルは、ステータコアのスロットに直線部が挿入されているとともに、ステータコアの軸線方向両端面のうち、ティースに対応したティース端面上にコイルエンドが位置している。
【0003】
集中巻きのコイルをティースに装着する方法として、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1では、断面丸形の導線を捲回してプリフォームコイルを予め成型しておく。そして、挿入機(所謂、インサータ)を用い、プリフォームコイルにおいて、コイルの直線部となる部分をスロットに挿入しつつ、コイルエンドとなる部分を、ティースの先端を乗り上げさせてコイルをティースに装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−220336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、挿入機を用いてプリフォームコイルをスロットに挿入してティースに装着する方法では、プリフォームコイルは、スロットにおけるティースの根本側から先端側に向けて順番に挿入されていき、ティースの延在方向に沿って並んで配列されていく。そして、ティースの先端付近までコイルが配列されても、挿入機によるプリフォームコイルの挿入は継続されるため、ティースの先端付近まで配列された部分をスロットへ押し込むように後からプリフォームコイルがスロットに挿入され、プリフォームコイルに大きな負荷がかかってしまう。
【0006】
本発明の目的は、スロットへのプリフォームコイルの挿入時にプリフォームコイルにかかる負荷を軽減できるステータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためのステータの製造方法は、円筒状のコアベースの内周面から延在する複数のティース、及び前記コアベースの周方向に隣接するティース間に形成されたスロットを有する円筒状のステータコアと、各ティースそれぞれに集中巻きで捲回されたコイルと、を有し、各コイルが、前記ティースの側面に沿い、かつ前記コアベースからの前記ティースの延在方向に沿って導線が配列された状態で前記ティースに捲回された第1コイル部と、前記ティースの延在方向に沿って前記導線が配列され、前記第1コイル部に沿い、かつ該第1コイル部を外側から覆う状態に捲回された第2コイル部と、を有するステータの製造方法であって、前記ティースに装着可能で、かつ前記コイルとなり得るプリフォームコイルを導線で予め成型しておく成型工程と、前記プリフォームコイルを前記ティースに装着する装着工程と、を有し、前記成型工程では、前記導線を捲回軸線を中心に捲回して第1プリフォーム部を形成するとともに、前記捲回軸線の延びる方向に沿って前記第1プリフォーム部に連続して前記導線を捲回して第2プリフォーム部を形成し、前記装着工程では、前記第1プリフォーム部を、前記コアベースの周方向に隣接したティース間の挿入口から前記スロットに挿入していき、前記第1プリフォーム部を前記ティースに装着して前記第1コイル部を形成した後、前記第1プリフォーム部が挿入された前記スロットに前記第2プリフォーム部を前記挿入口から挿入していき、前記第2プリフォーム部を前記第1コイル部の外側に位置させて前記第2コイル部を形成することを要旨とする。
【0008】
これによれば、成型工程で成型されたプリフォームコイルを装着工程でティースに装着する。装着工程において、第1プリフォーム部をスロットに挿入し、ティースに装着すると、導線は、ティースの側面に沿い、かつティースの延在方向に沿って配列され、第1コイル部がティースに装着される。プリフォームコイルは、第1プリフォーム部に連続して第2プリフォーム部を備えるため、スロットへの第1プリフォーム部の挿入、すなわちティースへの第1プリフォーム部の装着に続いて、同じスロットへの第2プリフォーム部の挿入、すなわちティースへの第2プリフォーム部の装着が行われる。第2コイル部は、第1コイル部を外側から覆う形状であるため、第2コイル部を形成し得る第2プリフォーム部は、第1コイル部の外側を通過してスロットに挿入される。このため、ティースの先端側付近にまで第1コイル部が位置していても、第1コイル部が第2プリフォーム部のスロットへの挿入の妨げにならず、スロットへのプリフォームコイルの挿入時に、プリフォームコイルにかかる負荷を軽減できる。
【0009】
また、ステータの製造方法について、前記プリフォームコイルは、前記第1プリフォーム部と前記第2プリフォーム部を連結し、かつ前記導線を前記捲回軸線を中心に1周巻いて形成された連結部を備え、前記連結部の長さは、前記第2プリフォーム部における前記導線の1周当たりの長さより長い。
【0010】
これによれば、第1プリフォーム部をティースに装着し、第1コイル部を形成した後、連結部の長さを利用して第2プリフォーム部を、スロットにおけるコアベース側(ティースの根本側)に押し込むことができ、第2プリフォーム部を、ティースにおけるコアベース側から配列させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スロットへのプリフォームコイルの挿入時にプリフォームコイルにかかる負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の回転電機を模式的に示す図。
図2】ティースに装着されたコイルを示す斜視図。
図3】ティースに装着されたコイルを示す断面図。
図4】巻芯を示す斜視図。
図5】プリフォームコイルを示す斜視図。
図6】挿入機を模式的に示す平面図。
図7】(a)は第1プリフォーム部をティースに装着する状態を示す図、(b)は連結部を示す図、(c)は第2プリフォーム部をティースに装着する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ステータの製造方法を具体化した一実施形態を図1図7にしたがって説明する。
図1示すように、回転電機10は、回転軸12を回転させるものである。回転電機10は、ロータ21とステータ31とを備えている。ロータ21は、回転軸12が挿通された状態で同回転軸12に固定されており、回転軸12と一体回転する。ロータ21は、例えば円筒形状であって、永久磁石21aを有している。
【0014】
ステータ31は、ロータ21に対して回転軸12の径方向外側に配置されており、ハウジング11に固定されている。ステータ31は、ステータコア32と、ステータコア32が有する各ティース34に捲回されたコイル35と、を有している。本実施形態の回転電機10は、u相、v相、及びw相の三相モータである。
【0015】
ステータコア32は、全体として、ロータ21よりも一回り大きい円筒状である。詳細には、ステータコア32は、円筒状のコアベース33と、コアベース33の内周面から内方(換言すれば回転軸12の径方向内側)に向けて延在する複数のティース34と、コアベース33(換言すれば回転軸12)の周方向に隣り合うティース34の間に形成された複数のスロット40と、を有する。複数のティース34は、コアベース33の周方向に配列されている。各スロット40について、コアベース33の周方向に隣接したティース34間の隙間は、コイル35をティース34に装着するときにコイル35が通過する挿入口40aとなる。ステータコア32は、回転軸12の軸線方向の端面であるコア端面32aを有している。
【0016】
図2に示すように、ステータコア32は、コア端面32aのうちティース34に対応する部分に、ティース34の側面としてのティース端面34aを備える。また、ステータコア32は、ロータ21の外周面に対向するティース34の先端面にティース先端面34bを備える。ステータコア32は、軸線方向両端のティース端面34a同士を繋ぐ面のうち、ティース先端面34b以外の面に、ティース34の側面としてのティース側端面34cを備える。
【0017】
図1に示すように、回転軸12、ロータ21及びステータコア32は、同一軸線上に配置されている。回転軸12における軸線方向、径方向及び周方向は、ロータ21の軸線方向、径方向及び周方向とも言えるし、コアベース33の軸線方向、径方向及び周方向とも言える。各相のコイル35は、各ティース34に対して1つずつ集中巻きで捲回されている。各相のコイル35は、周方向に離間して配列された同じ相のコイル35で構成されている。
【0018】
図2又は図3に示すように、コイル35は、断面丸型の導線35aを捲回して形成されている。コイル35は、第1コイル部36と、第1コイル部36を外側から覆う第2コイル部37と、第1コイル部36と第2コイル部37を繋ぐ連結部38と、を有する。図示しないが、各コイル35は、導線35aの巻始め端部に一方の引出線を備え、一方の引出線は第1コイル部36の一部である。また、各コイル35は、導線35aの巻終わり端部に他方の引出線を備え、他方の引出線は第2コイル部37の一部である。各相のコイル35の一方の引出線は中性点で結線されている。また、各相のコイル35の他方の引出線は、それぞれ同じ相の端子に接続されている。
【0019】
第1コイル部36は、ティース34の両方のティース端面34a及び両方のティース側端面34cに導線35aが沿うように捲回されて構成されている。第1コイル部36では、導線35aがティース34に複数回に亘って捲回されている。また、第1コイル部36では、導線35aが、コアベース33からのティース34の延在方向に沿って、ティース34の根本側から先端に向けて配列されている。
【0020】
第2コイル部37は、第1コイル部36を外側から覆う(オーバーラップした)状態に導線35aが捲回されて構成されている。第2コイル部37では、導線35aが複数回に亘って捲回されている。また、第2コイル部37では、導線35aが第1コイル部36の導線35aに沿う状態でティース34の延在方向に沿って、ティース34の根本側から先端に向けて配列されている。
【0021】
ティース34を1周する導線35aの長さを周長とした場合、第1コイル部36における周長の平均値は、第2コイル部37の周長の平均値より短い。本実施形態では、導線35aの周長を1周毎に見ても全ての周長について、第1コイル部36の方が第2コイル部37より短い。ただし、後述する挿入機を用いてプリフォームコイルをスロット40に挿入する際、導線35aに作用する負荷がほとんど無く、第1コイル部36の外側に第2コイル部37を配置できるのであれば、第1コイル部36において1周分又は数周分での周長が、第2コイル部37の周長より長くてもよい。すなわち、導線35aの周長は、第1コイル部36で全て同じである必要はなく、第2コイル部37でも全て同じである必要はない。
【0022】
各ティース端面34aには第1コイル部36のコイルエンド36aが配置され、このコイルエンド36aより外側には、第2コイル部37のコイルエンド37aが配置されている。コアベース33の周方向においてティース34の両隣に位置するスロット40には、第1コイル部36及び第2コイル部37の直線部36b,37bが配設されている。
【0023】
第1コイル部36と第2コイル部37を繋ぐ連結部38は、一方のティース端面34a側において、第1コイル部36のコイルエンド36aと、第2コイル部37のコイルエンド37aとの間に位置し、コアベース33の周方向においてティース34の両隣に位置するスロット40間に跨っている。連結部38は第1コイル部36におけるティース34の先端側と、第2コイル部37におけるティース34の根本側とを連結している。
【0024】
次に、ステータ31の製造方法について説明する。ステータ31の製造方法は、コイル35となり得るプリフォームコイル45の成型工程と、プリフォームコイル45をティース34に装着する装着工程と、を有する。
【0025】
まず、プリフォームコイル45の成型工程について説明する。成型工程は、ティース34に装着可能で、かつコイル35となり得るプリフォームコイル45を1本の導線35aで予め成型しておく工程である。
【0026】
図5に示すように、プリフォームコイル45は、第1コイル部36を形成し得る第1プリフォーム部46と、第2コイル部37を形成し得る第2プリフォーム部47と、第1プリフォーム部46と第2プリフォーム部47を連結する連結部38と、を有する。
【0027】
第1プリフォーム部46及び第2プリフォーム部47は、捲回軸線を中心に導線35aを長楕円状に捲回して形成されている。プリフォームコイル45において、長楕円の長手が延びる方向を長手方向とし、短手が延びる方向を短手方向とする。プリフォームコイル45は、第1プリフォーム部46と第2プリフォーム部47とが長手方向一端側で面一になるように形成されている。
【0028】
第1プリフォーム部46は、長手方向の両端に導線35aが屈曲する第1屈曲部46aを備え、第1屈曲部46aは第1コイル部36のコイルエンド36aを形成する部分である。また、第1プリフォーム部46は、第1屈曲部46a同士を繋ぐ第1直線部46bを備え、第1直線部46bは第1コイル部36の直線部36bを形成する部分である。
【0029】
第2プリフォーム部47は、長手方向の両端に導線35aが屈曲する第2屈曲部47aを備え、第2屈曲部47aは第2コイル部37のコイルエンド37aを形成する部分である。また、第2プリフォーム部47は、第2屈曲部47a同士を繋ぐ第2直線部47bを備え、第2直線部47bは第2コイル部37の直線部37bを形成する部分である。
【0030】
連結部38は、第1プリフォーム部46の長手方向一端に位置し、かつ第1プリフォーム部46の巻終わり部46cから、第2プリフォーム部47において巻き始められて長手方向一端に位置する巻き始め部47cまでの部分で形成されている。換言すると、連結部38は、第1プリフォーム部46の巻終わり部46cから1周巻かれた部分である。連結部38の周長は、第2プリフォーム部47における導線35aの1周当たり周長よりも長い。よって、連結部38の周長は、第1プリフォーム部46における導線35aの1周当たり周長よりも長くなっている。
【0031】
上記構成のプリフォームコイル45は、導線35aを巻芯50に巻き付けて形成される。
図4に示すように、巻芯50は、回転軸51が挿通された状態で同回転軸51に固定されており、回転軸51と一体回転する。巻芯50は、芯本体52を備えるとともに、回転軸51の軸線方向に沿う芯本体52の両端に一体化されたフランジ板60を備える。芯本体52は、回転軸51の径方向に沿う断面形状が長楕円状である。芯本体52において、長楕円の長手が延びる方向を長手方向とし、短手が延びる方向を短手方向とする。
【0032】
芯本体52は、回転軸51の軸線方向における一端側半分に、第1巻芯部53を有し、回転軸51の軸線方向における他端側半分に、第2巻芯部54を有する。第1巻芯部53の長手方向への寸法L1は、第2巻芯部54の長手方向への寸法L2より短い。芯本体52は、長手方向一端側では、第1巻芯部53と第2巻芯部54とが軸線方向に面一であるが、長手方向他端側では、第1巻芯部53と第2巻芯部54との間に段差52aがある。
【0033】
回転軸51の軸線方向に沿う芯本体52の一端部となる第1巻芯部53の端部に一方のフランジ板60が取り付けられ、芯本体52の他端部となる第2巻芯部54の端部に他方のフランジ板60が取り付けられている。各フランジ板60は、芯本体52に対し着脱可能である。フランジ板60は、長楕円状であり、フランジ板60の長手方向及び短手方向への寸法は、芯本体52の長手方向への寸法L1,L2及び短手方向への寸法より長い。
【0034】
そして、芯本体52にフランジ板60を取り付けた状態で、回転軸51を回転中心として芯本体52を回転させると、第1巻芯部53に導線35aが巻き付けられて第1プリフォーム部46が形成され、その後、回転軸51の軸線方向に沿って第1プリフォーム部46に連続して導線35aが第2巻芯部54に巻き付けられる。その結果、第1プリフォーム部46に連続して第2プリフォーム部47が形成され、プリフォームコイル45が形成される。その後、フランジ板60を芯本体52から取り外し、芯本体52からプリフォームコイル45を取り外す。
【0035】
このように形成されたプリフォームコイル45において、回転軸51の中心軸線が、第1プリフォーム部46及び第2プリフォーム部47の捲回軸線となる。また、プリフォームコイル45は、芯本体52に導線35aを巻き付けて形成されていることから、第1プリフォーム部46及び第2プリフォーム部47は長楕円状に形成される。
【0036】
プリフォームコイル45の形成時、導線35aのうち、第1巻芯部53から第2巻芯部54に向けて延びる部分は斜めに延び、この斜めに延びた部分によって連結部38が形成される。また、プリフォームコイル45は、導線35aの巻き始めの端部を第1プリフォーム部46に備え、巻終わりの端部を第2プリフォーム部47に備える。
【0037】
次に、装着工程について説明する。装着工程は、挿入機を用いてプリフォームコイル45をスロット40に挿入し、ティース34にプリフォームコイル45を装着する工程である。
【0038】
図6に示すように、挿入機62は、基台63と、基台63の内側に配設された円柱状の押上機64と、押上機64の周縁に配設された複数のインサータブレード65とを備える。押上機64は昇降可能である。まず、基台63上に、スロット40の数だけプリフォームコイル45を載置する。このとき、プリフォームコイル45は、第2プリフォーム部47上に第1プリフォーム部46が重なる状態で基台63に載置される。また、プリフォームコイル45は、第1プリフォーム部46の巻終わり部46c及び第2プリフォーム部47の巻き始め部47cが位置する一方の第1屈曲部46a及び第2屈曲部47aが、基台63の中心寄りに位置するように基台63に載置される。すなわち、プリフォームコイル45は、捲回軸線の延びる方向に沿って、第1プリフォーム部46、連結部38及び第2プリフォーム部47の全てが重なった一方の第1屈曲部46a及び第2屈曲部47aが、基台63の中心寄りに位置するように基台63に載置される。このため、プリフォームコイル45において、捲回軸線の延びる方向に沿って第1プリフォーム部46と第2プリフォーム部47が重なっていない他方の第1屈曲部46a及び第2屈曲部47aが、基台63の外周側に位置するように基台63に載置されている。また、プリフォームコイル45は、第1直線部46b及び第2直線部47bが隣り合う一対の組のインサータブレード65の間を通るように載置される。
【0039】
そして、第1プリフォーム部46の上方にステータコア32が配置された状態で、押上機64が押し上げられ、第1屈曲部46a側からプリフォームコイル45が引き上げられる。まず、第1直線部46bが挿入口40aを通過してスロット40に挿入されるとともに、基台63の中央寄りにあった一方の第1屈曲部46aがティース34の一方のティース先端面34bを乗り上げる。同時に、基台63の外周寄りにあった他方の第1屈曲部46aがティース34の他方のティース先端面34bを乗り越える。そして、スロット40に第1プリフォーム部46が挿入されていくと、ティース34の延在方向に沿って、ティース34の根本側から先端側に向けて導線35aが順番に配列されていく。
【0040】
その結果、図7(a)に示すように、ティース34に第1プリフォーム部46が装着されていく。そして、第1コイル部36が形成されると、図7(b)に示すように、連結部38において、第1コイル部36側に位置する巻終わり部46cは、ティース34の先端側(スロット40の挿入口40a側)に配置される。
【0041】
続けて、第2プリフォーム部47において、第2直線部47bが挿入口40aを通過してスロット40に挿入されるとともに、基台63の中央寄りにあった第2屈曲部47aがティース34の一方のティース先端面34bを乗り上げる。同時に、基台63の外周寄りにあった他方の第2屈曲部47aがティース34の他方のティース先端面34bを乗り越える。
【0042】
そして、スロット40に第2プリフォーム部47が挿入されていくと、連結部38がティース34の根本側に押し込まれる。また、第2プリフォーム部47の周長が、第1プリフォーム部46の周長より長いことから、第2プリフォーム部47は、第1コイル部36の外側を通過してスロット40に挿入される。
【0043】
その結果、図7(c)に示すように、第2プリフォーム部47は、スロット40のうち、ティース34の根本側で、かつ第1コイル部36の外側となる位置から挿入されていき、ティース34の延在方向に沿ってティース34の根本側から先端側に向けて導線35aが順番に配列されていく。そして、ティース34に第2プリフォーム部47が装着され、第2コイル部37が形成される。
【0044】
その後、各ティース34に装着されたコイル35の一方の引出線を中性点で結線すると、ステータコア32とコイル35とを有するステータ31が製造される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
(1)プリフォームコイル45は、第1プリフォーム部46と、第1プリフォーム部46より周長の長い第2プリフォーム部47とを備える。そして、ティース34にプリフォームコイル45を装着する際は、第1プリフォーム部46をティース34に装着して第1コイル部36を形成した後、第1コイル部36の外側を通過させて第2プリフォーム部47をティース34に装着できる。したがって、ティース34の先端側付近に第1コイル部36が配列されていても、第1コイル部36は、第2プリフォーム部47のスロット40への挿入の妨げにならず、プリフォームコイル45にかかる負荷を軽減できる。さらには、プリフォームコイル45を押し込む挿入機62にかかる負荷も軽減できる。
【0046】
(2)プリフォームコイル45は、巻芯50に導線35aを巻き付けて形成される。巻芯50は、芯本体52の長手方向への寸法L1,L2が異なる第1巻芯部53と第2巻芯部54とを備える。よって、巻芯50に導線35aを巻き付けることで、周長の異なる第1プリフォーム部46と第2プリフォーム部47を簡単に形成できる。
【0047】
(3)巻芯50は、芯本体52の長手方向への寸法L1,L2が異なる第1巻芯部53と第2巻芯部54とを備え、第1巻芯部53と第2巻芯部54の間には段差52aがある。この段差52aの存在により、第1巻芯部53から第2巻芯部54に導線35aが架け渡される際、導線35aは斜めに延び、周長が長くなり、連結部38が形成される。このため、巻芯50に導線35aを巻き付けるだけで、連結部38を形成できる。
【0048】
(4)プリフォームコイル45は、第1プリフォーム部46と第2プリフォーム部47を連結する連結部38を備え、この連結部38の周長は、第2プリフォーム部47の周長より長い。このため、第1プリフォーム部46をティース34に装着し、第1コイル部36を形成した後、連結部38の長さを利用して第2プリフォーム部47をティース34の根本側から配列させることができる。その結果、第2プリフォーム部47を、ティース34の根本側に位置するスロット40の奥から配列させていくことができる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、プリフォームコイル45を1本の導線35aで形成したが、複数本の導線35aを同時に巻いてプリフォームコイル45を形成してもよい。
【0050】
○ 連結部38は、芯本体52に対し導線35aを1周させた長さとしたが、2周させた長さでもよく、連結部38の長さは適宜変更してもよい。
○ 連結部38の周長は、第1プリフォーム部46における導線35aの1周当たり周長よりも長ければ、第2プリフォーム部47における導線35aの1周当たりの周長より短くてもよい。
【0051】
○ ロータ21において、永久磁石21aの配置は適宜変更してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)コアベースの内周面から延在する複数のティース、及び前記コアベースの周方向に隣接するティース間に形成されたスロットを有する円筒状のステータコアと、各ティースそれぞれに集中巻きで捲回されたコイルと、を有し、各コイルが、前記ティースの側面に沿い、かつ前記コアベースからの前記ティースの延在方向に沿って導線が配列された状態で前記ティースに捲回された第1コイル部と、前記ティースの延在方向に沿って前記導線が配列され、前記第1コイル部に沿い、かつ該第1コイル部を外側から覆う状態に捲回された第2コイル部と、を有する回転電機のステータ。
【0052】
(2)前記コイルは、前記第1コイル部と前記第2コイル部を連結し、かつ前記導線を1周巻いて形成された連結部を備え、前記連結部は前記第1コイル部のコイルエンドと第2コイル部のコイルエンドとの間に配設されている回転電機のステータ。
【0053】
(3)前記プリフォームコイルは、前記導線を巻芯に巻き付けて形成され、前記巻芯は前記第1プリフォーム部を成型する第1巻芯部と、前記第2プリフォーム部を成型する第2巻芯部とを一体に備えるステータの製造方法。
【符号の説明】
【0054】
31…ステータ、32…ステータコア、33…コアベース、34…ティース、34a…側面としてのティース端面、34c…側面としてのティース側端面、35…コイル、35a…導線、36…第1コイル部、37…第2コイル部、38…連結部、40…スロット、40a…挿入口、45…プリフォームコイル、46…第1プリフォーム部、47…第2プリフォーム部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7