(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電荷付与装置は、前記定着部材の回転軸方向に長い薄板からなる放電電極を備え、前記放電電極の先端は、その長手方向に鋸歯状に形成されていて、前記放電電極は、前記先端が前記定着部材に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の定着装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の定着装置は、上記のオフセット現象を抑制するために、電荷付与装置によって定着部材の表面に一定の電荷量を付与させている。しかしながら、記録媒体に形成されるトナー像の帯電量は一定ではないので、定着部材の電荷量は、帯電量のより低いトナー像に合わせて、より高くなるように設定されていた。例えば、画像形成装置の起動直後では、トナー像を現像する現像部での帯電の立ち上がりに時間を要するため、トナー帯電量が低くなることがある。このように定着部材が高い電荷量を有することで、トナー樹脂成分は電荷付与装置に付着してしまい、装置寿命が短くなる問題が生じる。
【0006】
また、定着装置は、定着部材に帯電した電荷が自然放電することがあり、その放電量は、定着処理間の時間が長くなるほど多くなる。そのため、時間を空けて定着処理を行うと、定着部材の電荷量が不十分なためにオフセット現象が発生することがある。
【0007】
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、定着部材におけるオフセット現象を抑制しつつ、電荷付与装置の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の定着装置は、トナー像が形成された記録媒体に接触して前記記録媒体を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材との間を通過する前記記録媒体を加圧する回転可能な加圧部材と、前記トナー像を構成するトナーと同極性の電荷を放電して前記定着部材の表面へと付与する電荷付与装置と、を備え、前記トナー像のトナー帯電量に基づいて前記電荷付与装置の放電で流れる出力電流値を調整し、前記出力電流値は、前記トナー帯電量が所定の帯電量閾値以上の場合には、通常電流値に設定され、前記トナー帯電量が所定の帯電量閾値より低い場合には、前記通常電流値よりも高い電流値に設定されることを特徴とする。
【0009】
上記の定着装置は、前記記録媒体が前記定着部材へと進入する前に前記トナー帯電量を検出するトナー帯電量検出部を更に備えるとよい。
【0010】
あるいは、本発明の定着装置は、トナー像が形成された記録媒体に接触して前記記録媒体を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材との間を通過する前記記録媒体を加圧する回転可能な加圧部材と、前記トナー像を構成するトナーと同極性の電荷を放電して前記定着部材の表面へと付与する電荷付与装置と、を備え、前記定着部材の今回使用前までの経過条件に従って前記電荷付与装置の放電で流れる出力電流値を調整し、前記定着部材の前回使用後から今回使用前までの経過時間が所定の時間閾値以上か否かを前記経過条件として、前記出力電流値は、前記経過時間が所定の時間閾値未満の場合には、通常電流値に設定され、前記経過時間が所定の時間閾値以上の場合には、前記通常電流値よりも高い電流値に設定されることを特徴とする。
【0011】
あるいは、本発明の定着装置は、トナー像が形成された記録媒体に接触して前記記録媒体を加熱する回転可能な定着部材と、前記定着部材との間を通過する前記記録媒体を加圧する回転可能な加圧部材と、前記トナー像を構成するトナーと同極性の電荷を放電して前記定着部材の表面へと付与する電荷付与装置と、を備え、前記定着部材の今回使用前までの経過条件に従って前記電荷付与装置の放電で流れる出力電流値を調整し、前記定着部材の今回使用前の定着温度が所定の温度閾値以下か否かを前記経過条件として、前記出力電流値は、前記定着温度が所定の温度閾値を超える場合には、通常電流値に設定され、前記定着温度が所定の温度閾値以下の場合には、前記通常電流値よりも高い電流値に設定されることを特徴とする。
【0012】
前記電荷付与装置は、前記定着部材の回転軸方向に長い薄板からなる放電電極を備え、前記放電電極の先端は、その長手方向に鋸歯状に形成されていて、前記放電電極は、前記先端が前記定着部材に対向するように配置されているとよい。
【0013】
前記電荷付与装置は、前記定着部材の回転方向において前記放電電極の両側に接地電極を備えるとよい。
【0014】
あるいは、前記電荷付与装置は、前記定着部材の回転方向において前記放電電極よりも上流側である片側に接地電極を備えるとよい。
【0015】
前記接地電極は、ツェナーダイオードを介して接地されているとよい。
【0016】
本発明の画像形成装置は、上記した何れかの定着装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定着部材におけるオフセット現象を抑制しつつ、電荷付与装置の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、
図1を用いて本実施形態のカラープリンター1(画像形成装置)の全体の構成について説明する。以下、説明の便宜上、
図1における紙面手前側をカラープリンター1の前側とする。各図に適宜付される矢印L、R、U、Loは、それぞれカラープリンター1の左側、右側、上側、下側を示している。
【0020】
カラープリンター1は、略箱型形状のプリンター本体2を備える。プリンター本体2の下部には、用紙を収納した給紙カセット3が設けられ、プリンター本体2の上部には、排紙トレイ4が設けられる。
【0021】
プリンター本体2の中央部には、中間転写ベルト5が複数のローラー間に架設される。中間転写ベルト5の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)からなる露光装置6が設けられる。中間転写ベルト5の下面側に沿って、4個の画像形成部7がトナーの色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色)毎に設けられる。各画像形成部7は、回転可能な感光体ドラムを備え、感光体ドラムの周囲には、帯電装置と、現像装置と、一次転写部と、クリーニング部と、除電器とが、一次転写のプロセス順に配置される。各画像形成部7の現像装置の上方には、対応するトナーコンテナ8が、トナーの色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色)毎に設けられる。
【0022】
プリンター本体2の右側部には、用紙の搬送経路10が上下方向に設けられる。搬送経路10の上流端には給紙部11が設けられる。搬送経路10の中流部には中間転写ベルト5の右端側に二次転写部12が設けられる。搬送経路10の下流部には定着装置13が設けられる。搬送経路10の下流端には排紙部14が設けられる。また、プリンター本体2内には、定着装置13の定着処理を制御する制御装置15が設けられる。制御装置15は、例えば、CPU等の制御部やROM、RAM等の記憶部を備えて構成される。制御装置15は、定着装置13に備えられてもよく、あるいは、カラープリンター1を統括制御するメイン制御装置(図示せず)が適用されてもよい。
【0023】
次に、上記のようなカラープリンター1の画像形成動作について説明する。カラープリンター1では、外部のコンピューター等から画像データが入力されると共に、印刷開始の指示がなされる。そして、各画像形成部7では、感光体ドラムが、帯電装置によって帯電された後、露光装置6によって画像データに基づいて露光されることで、感光体ドラム上に静電潜像が形成される。感光体ドラム上の静電潜像は、現像装置によって各色のトナー像に現像される。感光体ドラム上のトナー像は、一次転写部によって中間転写ベルト5の表面に一次転写される。以上の動作を4つの画像形成部7が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト5上にフルカラーのトナー像が形成される。このトナー像は、中間転写ベルト5の回転によって、所定の二次転写タイミングで二次転写部12へと供給される。
【0024】
一方、給紙カセット3又は手差しトレイ(図示せず)に収納された用紙は、給紙部11によって取り出されて搬送経路10上を搬送される。そして、搬送経路10上の用紙は、上記の所定の二次転写タイミングで二次転写部12へと搬送される。二次転写部12では、中間転写ベルト5上のトナー像が用紙に二次転写される。トナー像を二次転写された用紙は、搬送経路10において定着装置13へと搬送されて、定着装置13によってトナー像が用紙に定着される。その後、トナー像が定着された用紙は、排紙部14から排紙トレイ4へと排出される。
【0025】
次に、本実施形態の定着装置13について、
図2を用いて説明する。定着装置13は、筐体20と、定着部材21と、加圧部材22と、加熱部材23(熱源)と、電荷付与装置24と、トナー帯電量検出部25と、電圧印加部26とを備える。定着部材21及び加圧部材22は、搬送経路10を挟んで両側(左側及び右側)にそれぞれ配置され、定着部材21と加圧部材22との間に定着ニップNが形成される。加熱部材23は、定着部材21の左側を覆うように配置される。トナー帯電量検出部25や電圧印加部26は、例えば、制御装置15によって制御されて動作する。
【0026】
筐体20は、略箱型形状に形成され、定着装置13の外郭を構成する。筐体20の内部には、定着装置13の各部が設けられ、定着装置13は筐体20を介してプリンター本体2の内部に取り付けられる。筐体20は、用紙の搬送方向(上下方向)において定着ニップNよりも上流側で搬送経路10に沿って進入ガイド20aを備える。進入ガイド20aは、搬送経路10を介して二次転写部12から定着装置13まで搬送された用紙を定着ニップNへと案内するように構成される。
【0027】
定着部材21は、筐体20の内部左側に設けられ、定着ベルト30と、支持部材31と、ニップ形成部材32と、ベルトガイド33と、磁気遮蔽部材34とを備える。
【0028】
定着ベルト30は、用紙の搬送方向と直交する用紙の幅方向(前後方向)に長く、周方向には無端状の略円筒形状を有する。定着ベルト30は、前後方向に延びている回転軸の周りを回転可能に設けられる。定着ベルト30は、加圧部材22の回転に伴って摺動して回転する摺動ベルトであり、且つ、加熱部材23が発生させる磁束によって誘導加熱される発熱用ベルトも兼ねる。
【0029】
定着ベルト30は、可撓性を有し、例えば、基材層と、この基材層に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層とによって構成されるが、
図2では、これらの層の図示を省略する。例えば、基材層は、ニッケル等の金属材料で形成され、弾性層は、シリコンゴム等の弾性材料で形成され、離型層は、PFAチューブ等のフッ素系樹脂材料で形成される。
【0030】
支持部材31は、前後方向に長い略四角筒状に形成され、例えば、SUS等の金属材料で形成される。支持部材31は、定着ベルト30の内側で略中央に配置される。支持部材31の両端は、定着装置13の筐体20に固定される。
【0031】
ニップ形成部材32は、前後方向に長い略角柱状に形成された押圧部材であり、例えば、耐熱性樹脂等の材料で形成される。ニップ形成部材32は、定着ベルト30の内側で支持部材31に対して加圧部材22側(右側)に支持され、定着ベルト30の内周面を加圧部材22側(右側)に向かって押圧するように配置される。
【0032】
ベルトガイド33は、前後方向に長い略半円筒状に形成され、例えば、加熱部材23が発生させる磁束によって発熱する磁性金属等の材料で形成される。ベルトガイド33は、支持部材31に対して加圧部材22とは反対側(左側)に支持され、ベルトガイド33の外周面が定着ベルト30の内周面に接触することによって、定着ベルト30の回転軌道を補助すると共に安定させる。
【0033】
磁気遮蔽部材34は、前後方向に長く、断面逆U字状に形成され、例えば、非磁性SUS等の材料で形成される。磁気遮蔽部材34は、ベルトガイド33の内側で支持部材31に対して加圧部材22とは反対側(左側)に支持される。
【0034】
加圧部材22は、前後方向に長い円筒状に形成され、筐体20に対して回転可能に取り付けられる加圧ローラーである。加圧部材22が定着部材21(定着ベルト30)の外周面を加圧した状態で配置されることで、定着部材21と加圧部材22との間に定着ニップNが形成される。例えば、加圧部材22の後端部には、駆動ギア(図示せず)が固定され、加圧部材22は、この駆動ギアを介してモーター等の駆動源(図示せず)に接続されていて、この駆動源によって回転駆動される。
【0035】
加圧部材22は、例えば、円柱状又は円筒状の芯金と、この芯金に周設される弾性層と、この弾性層を被覆する離型層とによって構成されるが、
図2では、これらの層の図示を省略する。例えば、芯金は、アルミニウム等の金属材料で形成され、弾性層は、シリコンスポンジ等の弾性材料で形成され、離型層は、PFAチューブ等のフッ素系樹脂材料で形成される。
【0036】
加熱部材23は、定着部材21を覆うような外包形状を有し、定着部材21に対して加圧部材22とは反対側(左側)に配置される。換言すれば、加熱部材23は、定着部材21を挟んで加圧部材22とは反対側で、定着ベルト30から外側に所定間隔を空けて離間して配置される。加熱部材23は、コイル23aを備えていて、コイル23aに電流を流すことで磁束を生成し、この磁束を定着ベルト30に作用させることで定着ベルト30を誘導加熱(IH:Induction Heating)させるIH定着ユニットである。コイル23aは、定着ベルト30の回転軸方向に沿って往復するように巻き回され、定着ベルト30の曲面(外周面)形状に沿うように成形された外包型コイルである。また、コイル23aは、上記したように電流を流すことで磁束を生成するIH用コイルである。
【0037】
電荷付与装置24は、放電電極40と、2つの接地電極41とから構成される。電荷付与装置24は、用紙の搬送方向において定着部材21よりも上流側で、定着部材21の近傍に配置され、即ち、定着ベルト30の回転方向において定着ニップNよりも上流側に配置される。電荷付与装置24は、例えば、負極(マイナス)の帯電列である定着ベルト30に対して、正極(プラス)の電荷を付与することによって、定着ベルト30の表面を正極に帯電するように構成される。これにより、定着ベルト30を通過する用紙上の正極(プラス)帯電のトナー像(トナー)は、電荷付与装置24によって、より正極に帯電する。
【0038】
放電電極40は、定着ベルト30の幅方向に長く薄い金属板、例えば、厚さ0.1mmのSUS板から形成され、長手方向に鋸歯状に形成された先端40aを有する。放電電極40は、先端40aを定着ベルト30の表面に対向させると共に、先端40aを定着ベルト30の表面から所定間隔を空けて配置される。好ましくは、放電電極40は、先端40aを定着ベルト30の回転中心に向けて配置される。放電電極40は、基端40bが電圧印加部26に接続されていて、電圧印加部26からの印加電圧(各接地電極41との電位差)によって、先端40aで放電(例えば、コロナ放電)を発生させるように構成される。なお、放電電極40の放電によって流れる電流(出力電流値)は、電圧印加部26からの印加電圧(電圧値)や供給電流(電流値)によって定まる。たとえば、電圧印加部26からの供給電流値は、放電電極40の出力電流値に比べて小さな値になり、電圧印加部26からの供給電流値を増加する程、放電電極40の出力電流値を増加することができる。
【0039】
各接地電極41は、絶縁樹脂等の材料によって、定着ベルト30の幅方向に長い板状に形成される。2つの接地電極41は、定着ベルト30の回転方向において放電電極40の両側で、放電電極40を囲うように平行して配置される。放電電極40の先端40a側の各接地電極41の端部は、定着ベルト30の表面から所定間隔を空けて配置される。各接地電極41は、ツェナーダイオード42を介して接地されている。各接地電極41は、例えば、放電電極40の先端40aで生じた放電による電界が、針先のみに集中せずに、定着ベルト30の幅方向に亘って一様に発生するように作用する。
【0040】
トナー帯電量検出部25は、用紙の搬送方向において定着ニップNよりも上流側で搬送経路10の近傍に配置される。トナー帯電量検出部25は、トナー像が形成された用紙が定着部材21へと進入する前にこのトナー像を構成するトナーのトナー帯電量を検出する。例えば、トナー帯電量検出部25は、表面電位計によって用紙表面のトナー電位を計測し、その結果に基づいてトナー帯電量を検出してもよい。トナー帯電量検出部25は、電圧印加部26に接続されていて、トナー帯電量の検出結果を電圧印加部26へと通知する。
【0041】
電圧印加部26は、定電流電源等の電源(図示せず)に接続されていて、電源からの供給電力を用いて、電荷付与装置24の放電電極40に印加電圧を供給する。このとき、電圧印加部26は、定着装置13で定着処理されるトナー像を構成するトナー(即ち、各画像形成部7で使用されるトナー)と同極性の電荷を放電電極40が放電するように、このトナーと同極性の電圧を放電電極40へと印加する。換言すれば、電荷付与装置24は、放電電極40で発生される放電によって、トナー像を構成するトナーと同極性の電荷を定着部材21の表面へと印加する。例えば、用紙上のトナーが正帯電されている場合には、電荷付与装置24は正電荷を定着部材21に帯電させる。
【0042】
また、電圧印加部26は、トナー帯電量検出部25によるトナー帯電量の検出結果に基づいて、放電電極40の放電で流れる出力電流値を調整し、例えば、所定の出力電流値を得られるように放電電極40の印加電圧の電圧値を逆算して設定する。例えば、電圧印加部26は、トナー帯電量が所定の帯電量閾値以上の場合には、出力電流値を通常電流値(例えば、5μA)に設定し、トナー帯電量が所定の帯電量閾値より低い場合には、出力電流値を通常電流値よりも高い電流値(例えば、6〜8μA)に設定する。あるいは、電圧印加部26は、複数段階の帯電量閾値とこれらの閾値に対応する出力電流値とを予め設定してもよく、若しくは、トナー帯電量に基づいて出力電流値を算出可能な数式を予め設定してもよい。
【0043】
本実施形態によれば、上述のように、カラープリンター1の定着装置13は、回転可能な定着部材21と、回転可能な加圧部材22と、電荷付与装置24とを備える。定着部材21は、トナー像が形成された用紙等の記録媒体に接触して用紙を加熱する。加圧部材22は、定着部材21との間を通過する用紙を加圧する。電荷付与装置24は、トナー像を構成するトナーと同極性の電荷を放電して定着部材21の表面へと付与する。そして、定着装置13の電圧印加部26は、トナー像のトナー帯電量に基づいて、定着部材21の電荷量が定着処理に十分となるように、電荷付与装置24の放電で流れる出力電流値を調整する。出力電流値は、トナー帯電量が所定の帯電量閾値以上の場合には、通常電流値に設定され、トナー帯電量が所定の帯電量閾値より低い場合には、通常電流値よりも高い電流値に設定される。
【0044】
これにより、定着装置13では、定着部材21は、トナー像を用紙に定着する際に、トナーと同極性の電荷がトナー像のトナー帯電量に応じた適切な電荷量で帯電することになる。そのため、帯電量の不足に起因するトナーの定着部材21への付着を抑制すると共に、過剰な帯電量に起因するトナー樹脂成分の電荷付与装置24への付着を抑制することができる。また、トナー像のトナー帯電量が低くなった場合のみ、電荷付与装置24の出力(印加電圧)を上げることにより、定着部材21への電荷量を最適に調整ことができる。従って、必要最低限の構成によって、定着部材21におけるオフセット現象を抑制しつつ、電荷付与装置24の劣化を抑制することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態によれば、定着装置13は、用紙が定着部材21へと進入する前にトナー帯電量を検出するトナー帯電量検出部25を更に備える。これにより、定着処理対象のトナー像のトナー帯電量を前もって確実に把握して、定着部材21への適切な電荷付与を遅延なく行うことができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、電荷付与装置24は、定着部材21の回転軸方向に長い薄板からなる放電電極40を備え、放電電極40の先端40aは、その長手方向に鋸歯状に形成されていて、放電電極40は、先端40aが定着部材21に対向するように配置されている。これにより、鋸歯状の放電電極40は、ワイヤ状の電極に比べて、放電の位置精度が高く、低い電流値でも定着部材21の定着ベルト30に対して十分な電荷を付与することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、電荷付与装置24は、定着部材21の回転方向において放電電極40の両側に2つの接地電極41を備える。これにより、2つの接地電極41は、放電電極40を跨ぐように両側に配置されることによって、放電電極40のコロナ放電を安定化させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、接地電極41は、ツェナーダイオード42を介して接地されている。これにより、放電電極40と接地電極41との電位差を安定化して、定着部材21の定着ベルト30への放電能力をより向上することができる
【0049】
上記した実施形態では、定着装置13がトナー帯電量検出部25を備えて、電圧印加部26がトナー像のトナー帯電量に基づいて電荷付与装置24の放電で流れる出力電流値を調整する構成を説明したが、電圧印加部26による出力電流値の調整は、これに限定されない。
【0050】
例えば、他の実施形態では、電圧印加部26は、定着部材21の前回使用後から今回使用前までの経過条件に従って、定着部材21の電荷量が定着処理に十分となるように、電荷付与装置24の放電で流れる出力電流値を調整する。以下の他の実施形態の実施形態の説明において、上記した実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0051】
先ず、他の実施形態の第1実施例について説明する。第1実施例では、制御装置15が、前回の定着処理の終了時(定着部材21の前回使用後)から今回の定着処理の開始時(定着部材21の今回使用前)までの経過時間をカウントし、カウント結果の経過時間を電圧印加部26へと出力する。
【0052】
第1実施例において、電圧印加部26は、この定着処理間の経過時間が所定の時間閾値(例えば、8時間)以上か否かを上記の経過条件とする。そして、電圧印加部26は、経過時間が所定の時間閾値未満の場合には、出力電流値を通常電流値に設定し、経過時間が所定の時間閾値以上の場合には、出力電流値を通常電流値よりも高い電流値に設定する。
【0053】
定着部材21の前回使用後から今回使用前までの間に時間が掛かっている場合(例えば、間欠印刷の場合)には、前回使用時に電荷付与装置24によって定着部材21に付与された電荷が、自然放電等によって減少する可能性がある。しかしながら、この第1実施例によれば、今回使用時の電圧印加部26は、出力電流値を通常電流値よりも高い電流値に設定して、電荷付与装置24はこの高い電流値で放電を行うため、定着部材21には定着処理に十分な電荷が付与される。なお、定着部材21の前回使用後から今回使用前までの間に時間が掛かっていない場合(例えば、連続印刷の場合)には、定着部材21の電荷は殆ど減少しない。そのため、電圧印加部26が出力電流値を通常電流値に設定して、電荷付与装置24が通常電流値で放電を行うことで、定着部材21には定着処理に十分な電荷が付与されることになる。このように、第1実施例によれば、定着部材21の定着処理間の経過時間に拘らず、定着部材21には定着処理に十分な電荷を付与することができる。
【0054】
次に、他の実施形態の第2実施例について説明する。第2実施例では、
図3に示すように、定着装置13は、温度検出部28を備える。温度検出部28は、定着ベルト30の表面温度(定着温度)を検知するもので、例えば、定着ベルト30に対して非接触に配置されるサーミスタで構成される。温度検出部28は、例えば、定着ベルト30の回転方向において定着ニップNよりも上流側に配置される。温度検出部28は、電圧印加部26に接続されていて、定着温度の検出結果を電圧印加部26へと通知する。温度検出部28は、例えば、今回の定着処理の開始時(定着部材21の今回使用前)の定着温度を検出する。
【0055】
第2実施例において、電圧印加部26は、定着部材21の今回使用前の定着温度が所定の温度閾値(例えば、40℃)以上か否かを上記の経過条件とする。そして、電圧印加部26は、定着温度が所定の温度閾値を超える場合には、出力電流値を通常電流値に設定し、定着温度が所定の温度閾値以下の場合には、出力電流値を通常電流値よりも高い電流値に設定する。
【0056】
定着部材21の今回使用前の定着温度が低下している(所定の温度閾値以下である)場合には、今回使用前までの間に時間が掛かっている可能性がある。そのため、第2実施例では、今回使用前の定着温度が低下している場合、第1実施例と同様に、電圧印加部26は、出力電流値を通常電流値よりも高い電流値に設定し、電荷付与装置24はこの高い電流値で放電を行う。なお、定着部材21の今回使用前の定着温度が低下していない場合には、今回使用前までの間に時間が掛かっていない。そのため、第2実施例では、今回使用前の定着温度が低下していない場合、第1実施例と同様に、電圧印加部26が出力電流値を通常電流値に設定して、電荷付与装置24が通常電流値で放電を行う。これにより、第2実施例によれば、定着部材21の今回使用前の定着温度に拘らず、定着部材21には定着処理に十分な電荷を付与することができる。
【0057】
従って、上記した他の実施形態においても、定着部材21のオフセット現象を抑制しつつ、電荷付与装置24の劣化を抑制することができる。
【0058】
上記した実施形態では、電荷付与装置24が2つの接地電極41を備える構成を説明したが、電荷付与装置24の構成はこれに限定されない。例えば、他の実施形態では、電荷付与装置24は、定着部材21の回転方向において放電電極40よりも上流側である片側に1つの接地電極41を備えて構成されてもよい。これにより、電荷付与装置24の部品点数を少なくすると共に、小型化することができ、電荷付与装置24の低コスト化及びスペース効率の向上を図ることが可能となる。
【0059】
本実施形態では、定着部材21を加熱する熱源としてIH定着ユニットの加熱部材23を備える構成を説明したが、熱源はこの構成に限定されない。例えば、他の異なる実施形態では、ハロゲンヒーターやセラミックヒーター等の熱源を備えてもよい。
【0060】
本実施形態では、カラープリンター1に本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリ、複合機等の他の画像形成装置に本発明の構成を適用することも可能である。