特許第6776976号(P6776976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776976
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】放射妨害波測定装置、及びその判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   G01R29/08 D
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-64869(P2017-64869)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-169201(P2018-169201A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】緑 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】栗原 弘
(72)【発明者】
【氏名】本谷 智宏
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−343409(JP,A)
【文献】 特開2016−142609(JP,A)
【文献】 特許第4915050(JP,B2)
【文献】 特開平05−119090(JP,A)
【文献】 実開平05−002076(JP,U)
【文献】 特開2015−034785(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002275(US,A1)
【文献】 特開2018−169200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00−29/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射妨害波の放射源を囲む面上に形成される電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する放射妨害波測定装置であって、
前記放射妨害波を受信するアンテナと、
前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を、前記放射源を囲む面上の複数の測定点の各位置に変更する位置制御機構と、
前記複数の測定点において前記アンテナで受信した前記放射妨害波の電界強度を測定することで前記電界強度分布を測定する第1の動作と、前記アンテナの相対位置を変更している間、前記アンテナで受信した前記電界強度を測定する第2の動作と、を実行する制御部と、
前記第1の動作と前記第2の動作とで測定された電界強度を用いて前記電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する演算処理部と、
を備えることを特徴とする放射妨害波測定装置。
【請求項2】
前記演算処理部は、前記第1の動作で測定された電界強度の最大値と、前記第2の動作で測定された電界強度の最大値との差分値が所定の閾値以上である場合に、前記第1の動作で測定された前記電界強度分布が正しく測定されていないと判定することを特徴とする請求項1に記載の放射妨害波測定装置。
【請求項3】
放射妨害波を受信するアンテナを備え、前記放射妨害波の放射源を囲む面上に形成される電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する放射妨害波測定装置の判定方法であって、
前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を、前記放射源を囲む面上の複数の測定点の各位置に変更する位置制御ステップと、
前記複数の測定点において前記アンテナで受信した前記放射妨害波の電界強度を測定することで前記電界強度分布を測定する第1の動作ステップと、
前記アンテナの相対位置を変更している間、前記アンテナで受信した前記電界強度を測定する第2の動作ステップと、
前記第1の動作ステップと前記第2の動作ステップとで測定された電界強度を用いて前記電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する演算処理ステップと、
を含む判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射妨害波測定装置、及びその判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器等から放射される放射妨害波を測定する、いわゆる放射妨害波試験では、その放射妨害波の電界強度が最大となる位置において一定時間放射妨害波の電界強度を測定し、その測定した電界強度が国際的に定められた規格の許容値以下であるか否かを確認することが行われる。
【0003】
この放射妨害波試験では、30−1000MHzの周波数帯域の各周波数に対して電界強度が最大となる位置を探し出す必要があるため、広帯域にスペクトラムを測定できる、いわゆるスペクトラムアナライザが使用される。
【0004】
ところで、スペクトラムアナライザは、所定の分解能帯域幅で測定できる周波数を所定時間(サンプリング時間)毎に変化させながら(掃引しながら)周波数スペクトラムを測定する。そのため、スペクトラムアナライザでは、ある周波数をサンプリングしている最中に当該サンプリングしている周波数以外で放射妨害波が発生した場合に、その放射妨害波を捕捉することができないという問題点がある。
【0005】
すなわち、放射妨害波の発生周期がスペクトラムアナライザのサンプリング時間を超える場合には、放射妨害波の捕捉率が100%未満となるため、放射妨害波を捕捉できた測定点と放射妨害波を捕捉できない測定点が存在することになる。そのため、スペクトラムアナライザで測定して得られた電界強度からは最大電界強度が得られる位置を正しく選定することができず、正しい試験の結果を得られないため、規格不適合品を見逃す可能性がある。
【0006】
この問題を解決するために、発生周期が上記サンプリング時間を超える放射妨害波(以下、「間欠ノイズ」という。)の有無を判定することで、電界強度が正確に測定されているか否かを判定する方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の方法では、各測定点でスペクトラムアナライザの周波数掃引ごとに電界強度を測定し、周波数ごとの電界強度の時間的なレベル変化を分析することで間欠ノイズの有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4915050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、電界強度の時間的なレベル変化を分析するために、各測定点でスペクトラムアナライザの周波数掃引を複数回行う。そのため、各測定点における電界強度の測定時間が増大する。したがって、特許文献1に記載の発明では、電界強度分布が正確に測定されたか否かを判定するのに多大な時間を要す。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電界強度分布が正確に測定されたか否かを効率よく判定することができる放射妨害波測定装置、及びその判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、放射妨害波の放射源を囲む面上に形成される電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する放射妨害波測定装置であって、前記放射妨害波を受信するアンテナと、前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を、前記放射源を囲む面上の複数の測定点の各位置に変更する位置制御機構と、前記複数の測定点において前記アンテナで受信した前記放射妨害波の電界強度を測定することで前記電界強度分布を測定する第1の動作と、前記アンテナの相対位置を変更している間、前記アンテナで受信した前記電界強度を測定する第2の動作と、を実行する制御部と、前記第1の動作と前記第2の動作とで測定された電界強度を用いて前記電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する演算処理部と、を備えることを特徴とする放射妨害波測定装置である。
【0011】
本発明の一態様は、上述の放射妨害波測定装置であって、前記演算処理部は、前記第1の動作で測定された電界強度の最大値と、前記第2の動作で測定された電界強度の最大値との差分値が所定の閾値以上である場合に、前記第1の動作で測定された前記電界強度分布が正しく測定されていないと判定する。
【0012】
本発明の一態様は、放射妨害波を受信するアンテナを備え、前記放射妨害波の放射源を囲む面上に形成される電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する放射妨害波測定装置の判定方法であって、前記放射源に対する前記アンテナの相対的位置を、前記放射源を囲む面上の複数の測定点の各位置に変更する位置制御ステップと、前記複数の測定点において前記アンテナで受信した前記放射妨害波の電界強度を測定することで前記電界強度分布を測定する第1の動作ステップと、前記アンテナの相対位置を変更している間、前記アンテナで受信した前記電界強度を測定する第2の動作ステップと、前記第1の動作ステップと前記第2の動作ステップとで測定された電界強度を用いて前記電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する演算処理ステップと、を含む判定方法である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、電界強度分布が正確に測定されたか否かを効率よく判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る放射妨害波測定装置Aの概略構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る測定器4の測定原理を説明する図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置6のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】間欠ノイズの発生周期と滞留時間との関係を説明する図である。
図5】本発明の一実施形態に係る最大電界強度の位置推定方法の一連の動作のフロー図である。
図6】本発明の一実施形態に係る測定器4が測定した電界強度分布の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る検証実験の方法を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る検証実験で測定された電界強度を示した等高線図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、図面において、同一又は類似の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省く場合がある。また、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る放射妨害波測定装置を、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る放射妨害波測定装置Aの概略構成の一例を示す図である。放射妨害波測定装置Aは、例えば、EMC規格に従って、供試体である放射源100から放射される放射妨害波を測定する放射妨害波試験に利用される装置である。放射妨害波測定装置Aは、グランドプレーンから形成される金属床面を有する電波暗室内に配置される。電波暗室には、金属床面を除くシールドルームの壁面に電波吸収体が貼り付けられて構成されている。ここで、放射源100とは、放射妨害波を放射する電子機器等である。
【0018】
図1に示すように、放射妨害波測定装置Aは、受信アンテナ1、アンテナマスト2、ターンテーブル3、測定器4、駆動制御部5、及び制御装置6を備える。なお、アンテナマスト2、ターンテーブル3、及び駆動制御部5は、本発明の「位置制御機構」を構成する。
【0019】
受信アンテナ1は、アンテナマスト2に取り付けられており、放射源100から所定の距離を隔てた位置に配置される。受信アンテナ1は、放射源100から放射される放射妨害波を受信する。
【0020】
アンテナマスト2は、受信アンテナ1を支持する。アンテナマスト2は、駆動制御部5の制御により、受信アンテナ1を昇降させる。
ターンテーブル3は、例えば、グランドプレーンに取り付けられた円盤状の回転台である。ターンテーブル3は、駆動制御部5の制御により、グランドプレーンに垂直な方向の軸を中心として回転可能である。ターンテーブル3の上には、例えばテーブル200を介して供試体である放射源100が載置される。
【0021】
測定器4は、例えば、通信ケーブルを介して受信アンテナ1に接続される。
測定器4は、受信アンテナ1で受信された電界強度の周波数スペクトルを測定する。具体的には、測定器4は、放射源100を囲む面上に設定された複数の測定点において、受信アンテナ1で受信される電界強度の周波数スペクトルを所定の滞留時間で測定する。これにより、測定器4は、放射源100を囲む面上に形成される電界強度分布を測定することができる。例えば、測定器4は、スーパーヘテロダイン方式のスペクトラムアナライザである。
【0022】
例えば、図2に示すように、測定器4は、所定のサンプリング時間ごとに分解能帯域幅300で測定できる周波数を変化させながら(掃引しながら)、周波数スペクトラムを測定する。この場合に、上記滞留時間は、上述の特定の周波数におけるサンプリング時間であって、掃引時間を掃引ポイント数で割った時間である。ただし、本発明の測定器4は、スーパーヘテロダイン方式のスペクトラムアナライザに限定されず、例えば、FFTベースのスペクトラムアナライザであってもよい。この場合には、滞留時間は、時間波形のサンプリング時間である。
【0023】
ここで、測定器4は、MaxHold機能、及びClear/Write機能を備える。
MaxHold機能とは、受信アンテナ1で受信される周波数ごとの電界強度の最大値を保持して記録する機能である。
Clear/Write機能は、受信アンテナ1で受信される電界強度をサンプリング(掃引)ごとに周波数別に記録する機能である。
【0024】
駆動制御部5は、アンテナマスト2とターンテーブル3とのそれぞれに通信ケーブルを介して接続されている。また、駆動制御部5は、例えば、通信ケーブルを介して制御装置6に接続されている。
【0025】
駆動制御部5は、放射源100に対する受信アンテナ1の相対的位置を変更可能である。駆動制御部5は、制御装置6からの制御により、ターンテーブル3を所定の角度間隔で回転させる。また、駆動制御部5は、制御装置6からの制御により、アンテナマスト2を所定の高さ間隔で上昇又は下降させる。なお、アンテナマスト2を所定の高さ間隔で上昇又は下降させることは、受信アンテナ1を所定の高さ間隔で上昇又は下降させることである。
【0026】
すなわち、駆動制御部5は、測定器4が放射源100の電界強度分布を測定する場合には、放射源100に対する受信アンテナ1の相対的位置を、複数の測定点の各位置に変更する。
【0027】
以下に、本発明の一実施形態に係る制御装置6について、具体的に説明する。
【0028】
図1に示すように、制御装置6は、制御部61及び演算処理部62を備える。なお、測定器4及び制御部61は、本発明の「制御部」を構成する。
【0029】
制御部61は、測定器4の測定を制御する。また、制御部61は、駆動制御部5の駆動を制御する。すなわち、制御部61は、受信アンテナ1と位置制御機構と用いた電界強度の測定を制御する。
【0030】
制御部61は、第1の動作及び第2の動作を実行する。
第1の動作とは、位置制御機構を制御しながら、複数の測定点において受信アンテナ1で受信した放射妨害波の電界強度を測定器4で測定することで電界強度分布を測定する動作である。この第1の動作において測定される複数の測定点での電界強度は、測定器4のClear/Write機能を用いて測定される。
【0031】
第2の動作とは、位置制御機構を制御しながら、受信アンテナ1の相対位置を変更している間、受信アンテナ1で受信した電界強度を測定器4で測定する動作である。例えば、第2の動作において測定器4で測定する電界強度は、周波数ごとの電界強度の最大値であって、測定器4のMaxHold機能を用いて測定される。
なお、第2の動作は、少なくとも、受信アンテナ1の相対位置を変更している間において周波数ごとの電界強度の最大値を測定器4で測定すればよく、位置制御機構を制御している間、周波数ごとの電界強度の最大値を連続して測定してもよい。
【0032】
演算処理部62は、第1の動作と第2の動作とで測定された電界強度を用いて、第1の動作で測定された電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する。例えば、演算処理部62は、第1の動作で測定された電界強度の最大値と、第2の動作で測定された電界強度の最大値との差分値に基づいて、第1の動作で測定された電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する。例えば、演算処理部62は、その差分値が所定の閾値(以下、「差分閾値」という。)以上である場合に、第1の動作で測定された電界強度分布が正しく測定されていないと判定する。
【0033】
図3は、図2における制御装置6のハードウェア構成を示すブロック図である。制御装置6は、主制御部6101、入力装置802、出力装置803、記憶装置804、及びバス806を備える。バス806は、主制御部6101、入力装置802、出力装置803、及び記憶装置804のそれぞれを互いに接続する。
【0034】
主制御部6101は、CPU(中央処理装置)及びRAM(ランダムアクセスメモリ)を備えている。
入力装置802は、放射妨害波測定装置Aの動作に必要な情報の入力や各種の動作の指示を行うために用いられる。
出力装置803は、放射妨害波測定装置Aの動作に関連する各種の情報を出力(表示を含む)するために用いられる。
【0035】
記憶装置804は、情報を記憶できるものであれば、その形態は問わないが、例えばハードディスク装置または光ディスク装置である。また、記憶装置804は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体805に対して情報を記録し、また記録媒体805より情報を再生するようになっている。
記録媒体805は、例えばハードディスクまたは光ディスクである。記録媒体805は、図1に示した制御部61及び演算処理部62を実現するためのプログラムを記録した記録媒体であってもよい。
【0036】
主制御部6101は、例えば記憶装置804の記録媒体805に記録されたプログラムを実行することにより、図1に示した制御部61及び演算処理部62の機能を発揮するようになっている。なお、図1に示した制御部61及び演算処理部62は、物理的に別個の要素ではなく、ソフトウェアによって実現されてもよい。
【0037】
(判定原理)
ここで、演算処理部62において、第1の動作で測定された電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する判定原理について、説明する。
図4に示すように、間欠ノイズの発生周期よりも滞留時間が短い場合のハイトパターン301では、滞留時間が長い場合のハイトパターン302とは異なり、電界強度に抜けが発生することとなる。このため、第1の動作で測定して得られた電界強度分布は、正確に測定されていない可能性がある。そこで、第1の動作で測定された電界強度分布が正確に測定されているかどうかを判定する必要がある。
【0038】
ここで、第1の動作で測定された電界強度分布が正確に測定されているかどうかは、間欠ノイズの有無を判定すればよい。この間欠ノイズは、測定器4における滞留時間よりも周期が長い放射妨害波である。したがって、間欠ノイズが存在しない場合、放射妨害波の捕捉率は100%となるので、放射妨害波を漏れなく捕捉できる。この命題の対偶を考えると、放射妨害波が捕捉できなければ間欠ノイズが存在するという命題が成り立つことが分かる。
【0039】
例えば、ある二つの異なるサンプリング回数で測定し、電界強度の最大値が異なる場合は、少なくとも一方のサンプリング回数では放射妨害波が捕捉されていないと考えられるため、上記理論より間欠ノイズが存在するということになる。
【0040】
この方法を電界強度分布の測定時に間欠ノイズが存在するか否かの判定に用いることを考えると、各測定点でサンプリング回数に差をつけて測定を行うこと考えられる。しかしながら、複数回のサンプリング(掃引)を行うと測定時間が増大するという問題がある。
【0041】
この問題を解決するために単回数の周波数掃引で電界強度分布測定を行い、その後に各周波数毎に最大電界強度が得られる位置で時間波形を測定し、間欠ノイズの有無を詳細に判定する方法(以下、「詳細判定」という。)が考えられる。ただし、周波数毎に最大電界強度が得られる測定点の位置が異なる。そのため、この詳細判定を行う場合には、測定点の位置を変えるために移動時間がかかり、結果的には測定時間が長くなるという問題がある。
そのため、測定時間を短縮するには、各測定点で複数回のサンプリング、及び詳細判定の両方を行わずにサンプリング回数が異なる電界強度の最大値を比較する必要がある。
【0042】
そこで、本実施形態に係る放射妨害波測定装置Aは、ある測定点から次の測定点に移動する移動中にもサンプリングを行うことで、各測定点で複数回のサンプリングを行わずにサンプリング回数を増やす。これより、放射妨害波測定装置Aは、各測定点のみのサンプリングした電界強度の最大値と、各測定点および移動中でもサンプリングした電界強度の最大値とを比較することで、短時間に間欠ノイズの有無を判定、すなわち電界強度分布が正確に測定されているかを判定することができる。
【0043】
以下、本発明の一実施形態に係る妨害波測定装置Aにおいて、最大電界強度の位置推定方法の一連の動作について、図5を用いて説明する。
【0044】
操作者は、最大電界強度の位置推定方法における測定条件を制御装置6に入力する(ステップS101)。
測定条件とは、例えば、測定する周波数帯域(測定周波数帯域)、高さ方向の測定範囲(高さ方向測定範囲)、高さ方向測定範囲内で設定される複数の測定点の間隔(高さ間隔)、測定する回転角度範囲、回転角度範囲内で設定される複数の測定点の間隔(角度間隔)、差分閾値等である。
【0045】
制御部61は、測定器4の滞留時間を、ステップS101で操作者により入力された滞留時間に設定する(ステップS102)。
【0046】
制御部61は、測定器4のClear/Write機能とMaxHold機能とを同時に機能させ、測定器4による電界強度の測定を開始させる(ステップS103)。
【0047】
制御部61は、駆動制御部5の駆動を制御し、アンテナマスト2をステップS101で設定した高さ方向測定範囲の下限値に移動させる。また、制御部61は、駆動制御部5の駆動を制御し、ターンテーブル3を、ステップS101で設定した回転角度範囲の下限値に回転させる(ステップS104)。
【0048】
制御部61は、現在のアンテナマスト2の高さと現在のターンテーブル3の角度とを駆動制御部5より取得する。また、制御部61は、測定器4のClear/Write機能より測定値(電界強度)を取得する(ステップS105)。そして、制御部61は、取得した現在のアンテナマスト2の高さ、現在のターンテーブル3の角度、及び測定器4が測定した電界強度をそれぞれ関連付けて記憶装置804に保存する。ここで、測定器4において得られる電界強度とは、現在のアンテナマスト2の高さと現在のターンテーブル3の角度とで表される測定点において、測定周波数帯域の電界強度である。
【0049】
制御部61は、駆動制御部5の駆動を制御し、ターンテーブル3を、ステップS101で設定した角度間隔で回転させる(ステップS106)。
【0050】
制御部61は、現在のターンテーブル3の角度を駆動制御部5より取得し、取得した現在のターンテーブル3の角度を演算処理部62に出力する。そして、演算処理部62は、制御部61から取得した、現在のターンテーブル3の角度が、ステップS101で設定した回転角度範囲の上限値か否かを判定する(ステップS107)。
【0051】
演算処理部62は、制御部61から取得した、現在のターンテーブル3の角度が、回転角度範囲の上限値であると判定した場合には、ステップS108に進む。一方、演算処理部62は、制御部61から取得した、現在のターンテーブル3の角度が、回転角度範囲の上限値ではないと判定した場合には、ステップS105に戻る。
【0052】
制御部61は、駆動制御部5の駆動を制御し、アンテナマスト2を、ステップS101で設定した高さ間隔で上昇させる(ステップS108)。
【0053】
制御部61は、現在のアンテナマスト2の高さを駆動制御部5より取得し、その取得した現在のアンテナマスト2の高さを演算処理部62に出力する。そして、演算処理部62は、制御部61から取得した現在のアンテナマスト2の高さが、ステップS101で設定した高さ方向測定範囲の上限値であるか否を判定する(ステップ109)。
【0054】
演算処理部62は、制御部61から取得した現在のアンテナマスト2の高さが、高さ方向測定範囲の上限値であると判定した場合には、ステップS110に進む。一方、演算処理部62は、制御部61から取得した現在のアンテナマスト2の高さが、高さ方向測定範囲の上限値ではないと判定した場合には、ステップS105に戻る。
【0055】
上述したように、ステップS101からステップS109までの処理が完了すると測定器4により、複数の測定点において、電界強度の周波数スペクトルが測定されたことになる。すなわち、放射妨害波測定装置Aは、最大電界強度が得られる位置を探索するためには、受信アンテナ1の高さと供試体(放射源100)の角度を変えながら、図6に示すような試供体を囲むような電界強度分布400を測定したことになる。
【0056】
また、測定器4は、ステップS103からステップS109までの間において測定した電界強度のうち、周波数ごとの電界強度の最大値をMaxHold機能を用いて保持している。したがって、制御部61は、測定器4がMaxHold機能で測定した周波数ごとの電界強度の最大値を、測定器4から取得して記憶装置804に保存する(ステップS110)。
【0057】
操作者は、電界強度分布400が正しく測定されたかを判定する周波数(以下、「判定周波数」という。)を選定する(ステップS111)。以降のフローについては、この判定周波数において処理を実行する。なお、この判定周波数とは、単一の周波数を示すものではなく、判定周波数を含む所定の周波数帯域を示すものである。
【0058】
演算処理部62は、ステップS103からステップS109で測定された電界強度分布の最大値を計算する。そして、演算処理部62は、電界強度分布の最大値と、MaxHold機能で保持された電界強度の最大値との差分値を計算する(ステップS112)。
【0059】
演算処理部62は、ステップS112で計算した差分値がS101で設定した差分閾値を超えるか否かを判定する(ステップS113)。演算処理部62は、計算した差分値が差分閾値を超えてないと判定した場合には、ステップS103からステップS109で測定された電界強度分布は正しく測定できていると判定する(ステップS114)。そして、制御部61は、電界強度分布が正しく測定できていることを示す情報を制御装置6の表示画面(不図示)に表示する。
【0060】
演算処理部62は、計算した差分値が差分閾値を超えていると判定した場合には、ステップS103からステップS109で測定された電界強度分布は正しく測定できていないと判定する(ステップS115)。そして、制御部61は、電界強度分布が正しく測定できていないことを示す情報を制御装置6の表示画面(不図示)に表示する。
【0061】
なお、複数の判定周波数で上記判定を行う場合は、ステップS111からステップS115までを繰り返せばよい。
【0062】
(検証実験)
以下に、本発明の実施形態に係る放射妨害波測定装置Aにおける判定原理の妥当性を検証するために行った実験について、図7図8を参照して、説明する。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態に係る検証実験の方法を説明するための説明図である。
検証実験に用いる測定対象の放射源500は、バイコニカルアンテナ501に信号発生器502を接続したものである。バイコニカルアンテナ501は、高さ1.0m位置に配置される。信号発生器502は、バイコニカルアンテナ501に対して、90msごとに700MHzの正弦波の信号(以下、「正弦波信号」という。)を出力している。
受信アンテナ1は、バイコニカルアンテナ501から3m離れた位置に設置されている。
【0064】
上述したような実験条件下で測定器4の滞留時間を変化させて電界強度分布を測定した。なお、本検証実験では、滞留時間を、信号発生器502から出力される正弦波信号の発生周期より短い10ms、50ms、その正弦波信号の発生周期と同じ90ms、正弦波信号の発生周期よりも充分長い200msの4パターンにそれぞれ変化させて、放射源500を囲む面上に形成される電界強度分布を測定した。
【0065】
ここで、本発明の目的の一つは、放射妨害波測定装置Aに用いられる上記判定方法で間欠ノイズ内の一部の間欠ノイズの有無についてのみ判定を行い、その後に行われる詳細判定から除外することである。したがって、放射妨害波測定装置Aは、電界強度分布が正確に測定されていない場合に上記判定方法の判定が正確に行われることの一例として、電界強度分布が正確に測定された場合について必ず判定が正確に行われることを確認すればよい。
【0066】
図8は、本発明の一実施形態に係る検証実験で測定された電界強度を示した等高線図である。滞留時間が10msの時の電界強度分布(図8(a))、及び滞留時間が50msの時の電界強度分布(図8(b))は、滞留時間が200msの電界強度分布(図8(d))と比較して電界強度分布に乱れが生じており、正確に測定されていないことが分かる。一方で滞留時間が90msの電界強度分布(図8(c))は、滞留時間が200msの電界強度分布(図8(d))と同じ分布を示しており、正確に測定されていることが分かる。
【0067】
本検証実験において、差分閾値を+/−1dBとして、それぞれの滞留時間でClear/Write機能で測定された電界強度分布の最大値とMaxHold機能で測定された電界強度との差を計算すると、滞留時間が10msで−1.25dBとなっており、滞留時間が10msでは電界強度が正確に測定されていないと判断される。
一方、上記の結果から電界強度分布が正確に測定されると判断された滞留時間90msおよび200msについて、それぞれClear/Write機能で測定された電界強度分布の最大値とMaxHold機能で測定された電界強度との差を計算すると滞留時間が90msで0.00dB、滞留時間が200msで0.03dBとなり、本発明の一実施形態の放射妨害波装置Aの判定方法においても、電界強度が正確に測定されたと判断されていることが分かる。
【0068】
上述したように、本実施形態に係る放射妨害波測定装置Aは、記複数の測定点において受信アンテナ1で受信した放射妨害波の電界強度を測定することで電界強度分布を測定する第1の動作と、受信アンテナ1の相対位置を変更している間に受信アンテナ1で受信した電界強度を測定する第2の動作と、を実行する。そして、放射妨害波測定装置Aは、第1の動作と第2の動作とで測定された電界強度を用いて電界強度分布が正しく測定されたか否かを判定する。これにより、放射妨害波測定装置Aは、電界強度分布が正確に測定されたか否かを効率よく判定することができる。
【0069】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0070】
A 放射妨害波測定装置
1 受信アンテナ
2 アンテナマスト
3 ターンテーブル
4 測定器
5 駆動制御部
6 制御装置
61 制御部
62 演算処理部
100 放射源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8