特許第6776977号(P6776977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776977
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】油圧ブレーキ解除装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/68 20060101AFI20201019BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20201019BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20201019BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20201019BHJP
   B60T 7/16 20060101ALI20201019BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   B60T13/68
   B60T13/14
   B60T8/17 Z
   B60T17/18
   B60T7/16
   F15B11/08 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-64918(P2017-64918)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-167641(P2018-167641A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年11月8日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度11月から平成28年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術/維持管理ロボット・災害対応ロボットの開発/無人化施工の新展開〜遠隔操作による半水中作業システムの実現〜」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘記
(72)【発明者】
【氏名】大橋 塁
(72)【発明者】
【氏名】金島 義治
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−053027(JP,A)
【文献】 実開昭58−099137(JP,U)
【文献】 特開2002−349508(JP,A)
【文献】 特開平08−188095(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102012101212(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
B60T 13/00−17/22
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給圧源からブレーキ解除用シリンダへのブレーキ解除用油の供給と前記ブレーキ解除用シリンダから油圧タンクへのブレーキ解除用油の回収とを切替えるブレーキ制御弁を備え、蓄圧器に予め蓄圧した前記ブレーキ解除用油を前記ブレーキ解除用シリンダに供給してブレーキを解除する油圧ブレーキ解除装置であって、
前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとの間に設けられ、前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとの接続/非接続を切替える第1のノンリーク形電磁弁と、
該第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器との間に設けられ、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器との接続/非接続を切替える第2のノンリーク形電磁弁と、
駆動電流の通電/非通電を切替えることにより前記ブレーキ制御弁、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記第2のノンリーク形電磁弁を制御する制御部と
を備えることを特徴とする油圧ブレーキ解除装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2のノンリーク形電磁弁を接続状態に、かつ、前記第1のノンリーク形電磁弁を非接続状態に設定することにより、前記ブレーキ解除用シリンダを駐車ブレーキ解除状態とすることを特徴とする請求項1に記載の油圧ブレーキ解除装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2のノンリーク形電磁弁を接続状態に設定する前に前記第1のノンリーク形電磁弁を非接続状態に設定することを特徴とする請求項2に記載の油圧ブレーキ解除装置。
【請求項4】
前記駆動電流の非通電時において、前記ブレーキ制御弁は前記第1のノンリーク形電磁弁と前記油圧タンクとを接続させ、前記第1のノンリーク形電磁弁は前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとを接続させ、前記第2のノンリーク形電磁弁は、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器とを非接続とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の油圧ブレーキ解除装置。
【請求項5】
外部からの遠隔操作が自在な走行型油圧機械に備えられ、前記制御部は、外部から受信した遠隔操作指令に基づいて前記ブレーキ制御弁、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記第2のノンリーク形電磁弁を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の油圧ブレーキ解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ブレーキ解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建設機械のエンジンが停止した場合であっても走行モータのブレーキを解除できるネガティブブレーキ解除装置が開示されている。このネガティブブレーキ解除装置は、ブレーキ解除用油をアキュームレータに予め蓄圧し、エンジンが停止した場合に上記ブレーキ解除用油をブレーキ解除用シリンダに供給することにより、走行モータのブレーキを解除するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−053027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術では、駐車ブレーキ用ソレノイドバルブ(切替バルブ)及びブレーキバルブを介してブレーキ解除用油をブレーキ解除用シリンダに供給する油圧回路を採用しているが、スプール形の主弁を備える2ポジション3ポートバルブ(スプール弁)をブレーキバルブに採用しているので、ブレーキ解除用油が漏れる虞がある。このブレーキ解除用油の漏れがある場合、エンジン停止後において走行モータのブレーキを解除できる時間が短くなるので、ブレーキ解除用油の漏れは、建設機械の用途によっては重大な問題である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ブレーキ解除用油の漏れを従来よりも抑制あるいは解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、油圧ブレーキ解除装置に係る第1の解決手段として、給圧源からブレーキ解除用シリンダへのブレーキ解除用油の供給と前記ブレーキ解除用シリンダから油圧タンクへのブレーキ解除用油の回収とを切替えるブレーキ制御弁を備え、蓄圧器に予め蓄圧した前記ブレーキ解除用油を前記ブレーキ解除用シリンダに供給してブレーキを解除する油圧ブレーキ解除装置であって、前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとの間に設けられ、前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとの接続/非接続を切替える第1のノンリーク形電磁弁と、該第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器との間に設けられ、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器との接続/非接続を切替える第2のノンリーク形電磁弁と、駆動電流の通電/非通電を切替えることにより前記ブレーキ制御弁、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記第2のノンリーク形電磁弁を制御する制御部とを備える、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、油圧ブレーキ解除装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御部は、前記第2のノンリーク形電磁弁を接続状態に、かつ、前記第1のノンリーク形電磁弁を非接続状態に設定することにより、前記ブレーキ解除用シリンダを駐車ブレーキ解除状態とする、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、油圧ブレーキ解除装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記制御部は、前記第2のノンリーク形電磁弁を接続状態に設定する前に前記第1のノンリーク形電磁弁を非接続状態に設定する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、油圧ブレーキ解除装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記駆動電流の非通電時において、前記ブレーキ制御弁は前記第1のノンリーク形電磁弁と前記油圧タンクとを接続させ、前記第1のノンリーク形電磁弁は前記ブレーキ制御弁と前記ブレーキ解除用シリンダとを接続させ、前記第2のノンリーク形電磁弁は、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記ブレーキ解除用シリンダと前記蓄圧器とを非接続とする、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、油圧ブレーキ解除装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、外部からの遠隔操作が自在な走行型油圧機械に備えられ、前記制御部は、外部から受信した遠隔操作指令に基づいて前記ブレーキ制御弁、前記第1のノンリーク形電磁弁及び前記第2のノンリーク形電磁弁を制御する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1のノンリーク形電磁弁と第2のノンリーク形電磁弁とを備えるので、ブレーキ解除用油の漏れを従来よりも抑制あるいは解消することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置の構成を示す油圧回路図である。
図2】本発明の一実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置の駐車ブレーキ解除準備状態を示す油圧回路図である。
図3】本発明の一実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置の駐車ブレーキ解除状態を示す油圧回路図である。
図4】本発明の一実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置において、エンジン回転時の駐車ブレーキ解除状態を示す油圧回路図である。
図5】本発明の一実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置において、アキュームレータからのブレーキ解除用油のアンロード状態を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置は、図1に示すようにフィルタ1、ブレーキ制御弁2、逆流防止弁3、供給制御弁4、アキュームレータ5、圧力計6、油圧タンク7及び制御部8を備えている。
【0014】
この油圧ブレーキ解除装置は、建設機械等の走行型油圧機械に備えられるものであり、走行モータ(油圧モータ)に設けられたブレーキ解除用シリンダX(油圧シリンダ)の動作状態、つまりブレーキ状態とブレーキ解除状態とを択一的に設定する。なお、走行型油圧機械は、通常動作時にはエンジンによって回転駆動される油圧ポンプによって圧油が生成され、油圧ブレーキ解除装置に供給される。上記油圧ポンプは、本発明における給圧源である。
【0015】
フィルタ1は、油圧ポンプから供給される圧油に含まれる不純物を除去する油圧機器であり、不純物を除去した圧油をブレーキ制御弁2に供給する。ブレーキ制御弁2は、図示するように3ポート2ポジション電磁弁である。このブレーキ制御弁2は、主弁の位置をソレノイドによって2つの何れかに設定することにより、3つの内部流路を切替える。なお、このブレーキ制御弁2における主弁の構造は、スプール形あるいはポペット形の何れでもよい。
【0016】
このようなブレーキ制御弁2は、図示するように第1マニホールドM1内に形成された流路を介してフィルタ1、逆流防止弁3及び油圧タンク7に接続されている。すなわち、このブレーキ制御弁2は、フィルタ1から供給される圧油の逆流防止弁3への供給/供給停止を切替えると共に、逆流防止弁3から供給された圧油の油圧タンク7への供給/供給停止を切替える。
【0017】
逆流防止弁3は、図示するように2ポート2ポジション電磁弁である。この逆流防止弁3は、主弁の位置をソレノイドによって2つの何れかに設定することにより、導通状態と遮断状態とに切替わる。この逆流防止弁3は、主弁の構造がポペット形のノンリーク形電磁弁(第1のノンリーク形電磁弁)である。なお、この逆流防止弁3に代えて、導通状態と遮断状態とに切替わる切替弁を採用してもよい。
【0018】
ここで、本願で使用する「ノンリーク形電磁弁」という用語は、圧油の漏れが従来の2ポジション3ポートバルブ(スプール弁)よりも少ないことを意味しており、圧油の漏れが全くないことを意味するものではない。
【0019】
このような逆流防止弁3は、図示するように第2マニホールドM2内に形成された流路を介して供給制御弁4及びブレーキ用シリンダXに接続され、また第1マニホールドM1内に形成された流路及び第2マニホールドM2内に形成された流路を介してブレーキ制御弁2に接続されている。すなわち、この逆流防止弁3は、ブレーキ制御弁2と供給制御弁4及びブレーキ用シリンダXとの接続/非接続を切替える。
【0020】
供給制御弁4は、図示するように2ポート2ポジション電磁弁である。この供給制御弁4は、主弁の位置をソレノイドによって2つの何れかに設定することにより、導通状態と遮断状態とに切替わる。この供給制御弁4は、主弁の構造がポペット形のノンリーク形電磁弁(第2のノンリーク形電磁弁)である。なお、この供給制御弁4に代えて、導通状態と遮断状態とに切替わる切替弁を採用してもよい。
【0021】
このような供給制御弁4は、第2マニホールドM2内に形成された流路を介して逆流防止弁3、ブレーキ用シリンダX、アキュームレータ5及び圧力計6に接続されている。すなわち、この供給制御弁4は、逆流防止弁3及びブレーキ用シリンダXとアキュームレータ5及び圧力計6との接続/非接続を切替える。
【0022】
アキュームレータ5は、第2マニホールドM2内に形成された流路を介して供給制御弁4及び圧力計6に接続されている。このアキュームレータ5は、ブレーキ制御弁2、逆流防止弁3及び供給制御弁4を介して油圧ポンプ(給圧源)から供給される圧油をブレーキ解除用油として蓄圧する蓄圧器である。また、このアキュームレータ5は、油圧ポンプに代わる給圧源としても機能し、このブレーキ解除用油を供給制御弁4を介してブレーキ用シリンダXに供給する。
【0023】
圧力計6は、第2マニホールドM2内に形成された流路を介して供給制御弁4及びアキュームレータ5に接続されている。この圧力計6は、アキュームレータ5におけるブレーキ解除用油の圧力を計測して表示する。油圧タンク7は、所定容量を有する圧油の容器であり、第1マニホールドM1内に形成された流路等を介してブレーキ制御弁2に接続されている。この油圧タンク7は、ブレーキ制御弁2から圧油を回収して貯留する。
【0024】
制御部8は、上述した3つの電磁弁、つまりブレーキ制御弁2、逆流防止弁3及び供給制御弁4を制御する電子装置である。この制御部8は、ブレーキ制御弁2、逆流防止弁3及び供給制御弁4への駆動電流の供給/非供給を切替えるこにより、ブレーキ制御弁2、逆流防止弁3及び供給制御弁4を接続状態/非接続状態に設定する。また、この制御部8は、外部との通信機能を備えており、外部から受信した遠隔操作指令に基づいて作動する。すなわち、本実施形態における走行型油圧機械は、外部からの遠隔操作が自在に構成されている。
【0025】
次に、このような油圧ブレーキ解除装置の時系列的な動作について、図2図5をも参照して詳しく説明する。なお、これら図2図5では、駆動電流が通電されていない状態(非通電状態)の電磁弁を実線で示し、駆動電流が通電されている状態(通電状態)の電磁弁を点線で示している。
【0026】
ここで、上述した図1は、ブレーキ制御弁2、逆流防止弁3及び供給制御弁4の非通電状態を示している。すなわち、3つの電磁弁の非通電状態において、ブレーキ制御弁2は逆流防止弁3と油圧タンク7とを接続状態とし、逆流防止弁3はブレーキ制御弁2とブレーキ用シリンダXとを接続状態とし、また供給制御弁4は、逆流防止弁3及びブレーキ用シリンダXとアキュームレータ5とを非接続とする。
【0027】
このような非通電状態において、ブレーキ用シリンダXの圧油は、逆流防止弁3及びブレーキ制御弁2を介して油圧タンク7に回収され、またアキュームレータ5は孤立状態となる。例えば走行型油圧機械のエンジンが完全に停止した場合、ブレーキ用シリンダXの圧油は、油圧タンク7に回収される。この結果、ブレーキ用シリンダXは、走行型油圧機械の走行モータに駐車ブレーキをかけた状態(駐車ブレーキ状態)となる。また、アキュームレータ5は、蓄圧状態が保持される。
【0028】
エンジンが停止して走行型油圧機械の主機能が停止した状態であっても、制御部8はバッテリから給電によって外部から遠隔操作指令を受信することが可能である。したがって、制御部8は、ブレーキ用シリンダXを駐車ブレーキ状態から駐車ブレーキ解除状態に移行させる遠隔操作指令を受信すると、図2に示すように逆流防止弁3への駆動電流の通電を行うことにより、ブレーキ制御弁2とブレーキ用シリンダXとを非接続状態とする。
【0029】
この結果、ブレーキ用シリンダXと油圧タンク7との接続が解消され、両者は非接続状態となる、この逆流防止弁3のみの通電状態は、ブレーキ用シリンダXを駐車ブレーキ状態から駐車ブレーキ解除状態に移行させる際の準備状態(駐車ブレーキ解除準備状態)である。
【0030】
このような駐車ブレーキ解除準備状態になると、制御部8は、図3に示すように逆流防止弁3への駆動電流の通電に加えて、供給制御弁4への駆動電流の通電を行う。すなわち、逆流防止弁3及び供給制御弁4への通電によって、逆流防止弁3は非接続状態に設定され、供給制御弁4は接続状態に設定される。
【0031】
この結果、走行型油圧機械が完全停止する前段階でアキュームレータ5に蓄えられたブレーキ解除用油が図示するようにブレーキ用シリンダXに供給される。すなわち、走行型油圧機械は、駐車ブレーキ解除準備状態から駐車ブレーキ解除状態となる。
【0032】
このように本実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置では、制御部8は、供給制御弁4(第2のノンリーク形電磁弁)を接続状態に、かつ、逆流防止弁3(第1のノンリーク形電磁弁)を非接続に設定することにより、アキュームレータ5のブレーキ解除用油をブレーキ用シリンダXに供給させ、以ってブレーキ解除用シリンダXを駐車ブレーキ解除状態とする。したがって、この油圧ブレーキ解除装置によれば、ブレーキ解除用油の漏れを従来よりも抑制あるいは解消することが可能である。
【0033】
また、この油圧ブレーキ解除装置では、ブレーキ解除用油の漏れが少ないので、アキュームレータ5の蓄圧状態を従来よりも長時間化することが可能である。また、油圧ポンプ(給圧源)からブレーキ解除用の圧油が得られない状態(すなわち、何らかの異常でエンジンが停止した(起動不可能になった)状態、油圧系統等に何らかの異常が生じた状態など)になり、その状態で時間が経過しても、アキュムレータ5から油を供給してブレーキを解除することができる。さらには、油圧機械(車両)が何らかの異常で停止した場合などに、当該油圧機械を牽引する牽引車が到着するまでに時間がかかるなど、牽引作業などを始めるまで時間がかかっても、アキュムレータ5から油を供給してブレーキを解除することが可能であり、よってブレーキ解除状態を長時間維持することが可能である。
【0034】
ここで、本実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置では、走行型油圧機械を駐車ブレーキ状態から駐車ブレーキ解除準備状態を経由して駐車ブレーキ解除状態に移行させる。すなわち、制御部8は、供給制御弁4を接続状態に設定する前に逆流防止弁3を非接続に設定するが、駐車ブレーキ解除準備状態は、逆流防止弁3と供給制御弁4とに同時通電した場合に、逆流防止弁3と供給制御弁4の個体差等から逆流防止弁3の切替動作が供給制御弁4の切替動作よりも遅れる場合があることを考慮したものである。
【0035】
すなわち、逆流防止弁3の切替動作が供給制御弁4の切替動作よりも遅れた場合、短い時間ではあるが、アキュームレータ5のブレーキ解除用油がブレーキ用シリンダXだけではなく油圧タンク7にも供給されることになる。このようなブレーキ解除用油の油圧タンク7への供給は、ブレーキ解除用油の圧力低下を招き、ブレーキ用シリンダXを完全に駆動し得ない状態、つまり走行型油圧機械を完全な駐車ブレーキ解除状態に移行させ得ない。
【0036】
したがって、逆流防止弁3の供給制御弁4に対する動作遅れを考慮すると、駐車ブレーキ解除準備状態を経由することが好ましい。ただし、逆流防止弁3の供給制御弁4に対する動作遅れが極めて小さい場合、あるいはアキュームレータ5の圧力や容量に十分な余裕がある場合には、駐車ブレーキ解除準備状態を省略しても良い。
【0037】
また、本実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置によれば、何らかの異常で、各電磁弁に対して電気が供給できなくなった場合に、各電磁弁のばねの弾性力などによって図1に示すブレーキ状態になる。したがって、この油圧ブレーキ解除装置によれば、油圧機械(車両)が勝手に移動しなくなり、よって安全性が高い。
【0038】
図4は、走行型油圧機械のエンジン回転時、つまり油圧ポンプが給圧源として十分に機能する場合における駐車ブレーキ解除状態を示している。この場合、制御部8は、ブレーキ制御弁2のみに駆動電流を通電することによって、油圧ポンプをブレーキ制御弁2及び逆流防止弁3を介してブレーキ用シリンダXに接続させる。したがって、走行型油圧機械は、油圧ポンプから供給される圧油がブレーキ解除用油としてブレーキ用シリンダXに作用することによって駐車ブレーキ解除状態となる。
【0039】
また、この図4の状態では、供給制御弁4の左側(油圧ポンプ側)から右側(アキュームレータ5側)に油が流れることができるため、給圧源からの圧油がアキュムレータ5にも供給されて蓄積される。そして、アキュムレータ5に蓄積された圧油は、図3に示すようにブレーキ用シリンダXに供給され、走行型油圧機械は、駐車ブレーキ解除準備状態から駐車ブレーキ解除状態となる。
【0040】
また、図5は、ブレーキ解除用油をアキュームレータ5からアンロードする状態(アンロード状態)を示している。このアンロード状態を実現する場合、制御部8は、供給制御弁4のみに駆動電流を通電することにより、アキュームレータ5を供給制御弁4、逆流防止弁3及びブレーキ制御弁2を介して油圧タンク7に接続させる。この結果、アキュームレータ5に蓄えられたブレーキ解除用油は、供給制御弁4、逆流防止弁3及びブレーキ制御弁2を介して油圧タンク7に回収される。
【0041】
例えば、油圧ブレーキ解除装置をメンテナンスする場合において、アキュームレータ5にブレーキ解除用油が蓄えられた状態になっていると、メンテナンス作業の妨げになる。したがって、本実施形態に係る油圧ブレーキ解除装置では、走行型油圧機械のエンジンが停止することにより油圧ポンプが給圧源として機能し得ない場合であっても、供給制御弁4に通電することにより、アキュームレータ5のブレーキ解除用油を油圧タンク7に回収し、アキュームレータ5を略空状態にすることができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、第1のノンリーク形電磁弁として逆流防止弁3を採用し、また第2のノンリーク形電磁弁として供給制御弁4を採用したが、本発明はこれに限定されない。従来のスプール弁(2ポジション3ポートバルブ)よりもブレーキ解除用油の漏れが少ないノンリーク形電磁弁であれば、他の電磁弁を採用しても良い。
【0043】
(2)上記実施形態では、遠隔操作によってエンジンが停止した走行型油圧機械のブレーキ用シリンダXを駐車ブレーキ状態から駐車ブレーキ解除状態に移行させたが、本発明はこれに限定されない。運転手の手動操作によって走行型油圧機械が動作している状態において、例えば運転席に設けられたブレーキ解除ボタンを運転手が操作することにより制御部8に駐車ブレーキ解除指示を入力しても良い。
【0044】
(3)上記実施形態では、単一のアキュームレータ5(蓄圧器)を設けたが、冗長性を持たせるためにアキュームレータ5を複数設けても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 フィルタ
2 ブレーキ制御弁
3 逆流防止弁(第1のノンリーク形電磁弁)
4 供給制御弁(第2のノンリーク形電磁弁)
5 アキュームレータ(蓄圧器)
6 圧力計
7 油圧タンク
8 制御部
M1 第1マニホールド
M2 第2マニホールド
図1
図2
図3
図4
図5